前立腺肥大・前立腺ガン

寺さんのもっと健康セミナー
(その12)
前立腺肥大・前立腺ガン
男性の夜間頻尿や放尿力低下は 40・50 代で症状が出始め、60 歳を過ぎると半数以
上の人が、そして 80 歳までに 80%の人がこの症状を自覚します。 これは男性の更
年期症状とか老化現象とも言えます。
排尿障害は前立腺の肥大にともなうものです
が、なかには前立腺ガンもあります。
そこで今回は親鴨会会員諸氏(男性のみ)の悩みを解決できるよう、前立腺肥大と前立腺ガンに関し
て特集してみましょう。 面倒ですが、プリントアウトして読むと理解が深まります。 なお本セミナ
ーは前に説明したことを繰り返すことがあるので、すべてプリントアウトして保存していただくと、見
返すことができます。
文中でわかりにくい用語には (*) がつけてあり、末尾に説明を書いておきました。
1.前立腺肥大
前立腺は精巣から出るテストステロン(*)(男性ホルモンの一つ)の命令に従い精液の一部(前立腺
液(*))を作っています。 テストステロンは前立腺に取り込まれてジヒドロテストステロンに変わりま
す。 このジヒドロテストステロンが過剰に貯蔵されるとタン白質受容体に結合して、前立腺が肥大し
ます。 これが前立腺肥大と呼ばれる症状です。 前立腺の真ん中には尿道が通っているため、前立腺
の肥大によって尿道が圧迫され排尿に支障がでてくるわけです。
(下図参照) 前立腺はクルミ位で 20g
程度の大きさですが、40 歳代から肥大が始まり、80 歳までには 80%の男性が前立腺肥大症になると言
われています。
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代表的な症状
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前立腺肥大・前立腺ガン
説明
1.排尿開始遅延
出るまでに時間がかかること
2.尿線細小
尿線がほそくチョロチョロしか出ない状態
3.尿線分裂
尿が散るため便器を汚してしまう状態
4.排尿終末時滴下
尿の最後の方がポタポタしか出ない状態
5.残尿感
排尿直後にまだ出し足りない感じがすること
6.尿意頻拍
常に尿意が襲ってくる状態
7.頻尿
尿意のため足繁くトイレで排尿すること
8.夜間頻尿
頻繁な尿意のために夜3回以上トイレで排尿すること
9.尿混濁
黄色透明の正常な尿が混濁し汚れた状態
ひどくなると
10.尿閉
尿がほとんど出なくなる
11.腎機能低下
閉塞の影響により血清クレアチニン(*)が上昇する
こうやって症状を書いてくると、ほとんどの年配男性に心当たりがあるか、深刻な悩みになって
いると思います。 また前立腺肥大は飲酒、自転車乗り、便秘、胃潰瘍の薬 などで悪化します。
症状の進行は比較的ゆっくりで、自分では大丈夫と油断してしまいがちな病気ですが、放置してい
ると、場合によっては尿路感染症、膀胱結石、血尿、腎機能障害 などといった合併症を引き起こす
ことがあります。 場合によっては前立腺ガンの可能性もあります。
診断
排尿障害の程度、前立腺の大きさ、前立腺ガンとの区別
1.尿検査
2.直腸診
3.超音波エコー検査
断面のサイズが左右径 35mm、前後径 20mm、上下径 25mm 程度が正常上限とされる。
前立腺容積は 20mL 未満が正常とされる。
4.尿流量測定ウロフロメトリー検査
5.残尿量測定検査
正常ではほぼ 0mL であるが、残尿量 50mL 未満が許容範囲とされる。
6.PSA 血液検査 (前立腺ガン腫瘍マーカー)
7.内視鏡検査
8.血清クレアチニン (1.04mg/dl 以上で脱水、心不全、腎炎、尿路異常症などがある。)
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前立腺肥大・前立腺ガン
治療方法
1.内服薬
交感神経遮断薬(*)、ジヒドロテストステロン生成阻害剤(*)、抗アンドロゲン剤(*)、
漢方(八味地黄丸)
2.注射薬
抗アンドロゲン剤
3.高温度治療
4.レーザー光線治療
5.電気メス治療
6.開腹手術
7.栄養療法
ノコギリヤシエキス(*)
ノコギリヤシエキスはよくサプリで宣伝されています。 一般的にサプリは医薬品と比べて
信頼度が低いと考えられています。 これは厚生労働省が天然物から作られた薬品を医薬品
と認めない(漢方薬は認めているが)ため、私たちもサプリを1ランク低いものとみなして
います。 サプリと言っても値段と品質がまちまちで、どれがいいのか判断がつかないのが
現状なので、怪しいものと考えてしまうわけです。
ところがノコギリヤシエキスはヨーロッパでは医薬品として登録されています。 従って
決していかがわしいものではなく、りっぱに疾患を治すことができるのです。
市販品でどこのサプリがいいのかわかりませんが、試してみる価値はあります。
私もこれを摂り始めて切迫尿がなくなりました。
2.前立腺ガン
70 歳以上の方の集まりに出ると、前立腺ガンのため前立腺
を切除したという人が結構出てきます。 そう聞けば自分も夜
間頻尿や放尿力低下があって、ひょっとしてガンで前立腺を失
うのではないかと不安になります。 前立腺を失っても性生活
がなくなった人には影響はありませんが、まだ現役であるとか、
せめて可能性だけでも持っておきたいという希望がある方も
多いと思います。
前立腺ガンの患者数は急増中で、10 年後には男性のガン死
亡者数が肺ガンについで2位になると予測されています。
(右図)
国立がん研究センター資料
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前立腺肥大・前立腺ガン
前立腺ガンも自覚症状は前立腺肥大と同じです。 ただ前立腺肥大が前立腺ガンに進行するわけで
はないので、切り分けは PSA 検査になります。
前立腺肥大は尿道を取り巻く内腺に多く発症
するのに対し、前立腺ガンは前立腺の外側にある
外腺に沿って発症します。
初期は自覚症状が
ほとんどなく、血液検査の PSA 高値で発見され
ます。 進行すると排尿が困難になります。
前立腺ガンの原因について、国立がん研究センターが追跡調査を行った結果では
①乳製品(高脂肪)の摂りすぎ
②カルシウムや飽和脂肪酸(*)の摂取
となりました。
ただカルシウムと言ってもサプリでの摂取は問題なくて、乳製品に入っているものだけがリスクを
高めます。 驚くことに健康のために飲んでいる牛乳(特にカルシウム強化の牛乳)が前立腺ガンの
原因になっていると言うことです。 それじゃ何を飲めばいいのでしょうか??
豆乳なら大丈夫
でしょうね。 豆乳にはイソフラボン(*) も含まれているので更にいいでしょう。
若い人のガンは家族性で、血縁に前立腺ガン患者がいる場合は、罹患率が上がっています。
前立腺ガンは周囲のリンパ節や骨盤、脊椎に転移をするため、放っておくと死に至ります。
従って早期発見・早期治療が勧められます。
前立腺ガンは進行が比較的遅く、進行する前ならほぼ 100%感知でき、PSA によりガンの中でも特
に早期発見しやすいガンです。
3.PSA 検査
前立腺ガンを早期に発見する検査は PSA という血液検査です。
これは前立腺だけでつくられる
PSA(前立腺特異抗原)というタン白質が、ガンになると血液中に放出されることを利用しています。
PSA は前立腺から精漿中に分泌されて、精子が体外に放出される時に、精漿中のゼリー化成分であ
るタン白質を分解して精子の運動を高める役割を果たしています。 健常男性なら血液中に PSA が
入ることは稀ですが、前立腺に疾患があると血液中にも PSA が浸出し、血液検査で測定ができるよ
うになります。
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PSA には結合型 PSA と遊離型 PSA(Free PSA) があります。
前立腺肥大・前立腺ガン
結合型 PSA とは PSA にアンチキ
モトリプシンとかマクログロブリンといったタン白質が結合したもので、分子が大きい。 一方 Free
PSA は分子の大きさが小さい。 PSA 測定試薬は PSA の入っているもの全てを測定する(結合型+
遊離型)もの(Total PSA)と、Free PSA を測定するものがあります。
(結合型 PSA だけを測定する試薬はありません。)
臨床試験の結果 Free PSA / Total PSA 比(右
図では %fPSA)がガンを早期に検出しやすい
ことが分かったため、
F/T<25% の場合ガンの可能性が疑われる状態
としています。 遊離型が少ないほどガンの可能
性が高いといえます。
右図は PSA 検査後の診断分類を示しています。
PSA < 4ng/mL
異常なし
PSA 4-10 ng/mL
PSA F/T ≤ 25% なら精密検査(図では生検と書いてあります)
PSA F/T > 25% なら異常なし
PSA > 10ng
精密検査(図では生検と書いてあります)
PSA 値が 4 – 10 ng/mL の人の PSA F/T 比別のガン
確率は右図のように表わされます。
F/T 比が低い人(遊離型 PSA が少ない)ほどガンの
確率が高くなっています。
PSA 検査を受ける方法
1.地域や会社の健康診断のオプションで受ける
2.人間ドックのオプションで受ける
3.内科や泌尿器科に相談して受ける
50 歳を過ぎたら年に一度 PSA 検査を受けるよう日本泌尿器科学会では推奨しています。
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前立腺肥大・前立腺ガン
ところがこんな報告があります。
PSA に対する注意事項
PSA 検査が死亡率減少に役立つかどうかの検証を進めていた米国予防医学作業部会は、2011 年 10
月に、健康な人が検査を受けることを推奨しないとする報告書をまとめた。
これは PSA 検査を受け
た人の健康状態を長期間追跡した、欧米の 5 種類の大規模疫学調査を分析して得られた結果です。 検
査後に手術などの治療を受けて死亡したり、尿失禁などの副作用を患うなどの不利益を被る人の数が無
視できないほど多いことも判明しました。
国内では日本泌尿器学会は PSA 検査を推奨していますが、厚生労働省の研究班は、効果を判断する根
拠が不十分として、集団検診には勧めないと報告をまとめています。
結局 PSA は集団検診で行うものではなく、排尿障害がある場合に PSA 検査をするということになり
ますね。
PSA の値が高いからと言ってすぐにガンというわけではありません。
その次には問診、直腸診、
エコー検査を行います。 ここでガンが疑わしい場合は前立腺の組織を針で取り出して、精密に調べる
「生検」という検査をさらに受け、ガンかどうかの確定診断(グリソンスコア評価)をします。 ただ
生検は検出確率が低く(25~30%)、これで見つからなかったと言って安心はできません。
前立腺ガンは骨転移をしやすいので、血液検査の ICTP(骨腫瘍マーカー)で骨転移をしているかど
うかを調べます。 ICTP が 5.5 以上だと、骨転移が疑われます。
4.前立腺ガンの治療法
前立腺ガンは進行が遅いため、早期なら経過観察する例も多いです。
1.手術療法
開腹による前立腺の全摘手術ですが、患者の負担を減らすため腹腔鏡による手術が増えて
います。 一部だが手術支援ロボットを導入している病院もあります。 滋賀県では大津市民
病院に経験が多く、患者の 90%が腹腔鏡手術を受けています。
後遺症: 約 5%に尿失禁、5~10%に勃起機能不全で再手術
2.放射線療法
外部から放射線を当ててガンを叩く治療法で、近年は強度変調放射線治療(IMRT)という
ガンの形に合わせて多方向から強弱をつけて照射する方法がでてきました。
しかしこれが
出来る放射線医師が日本に 400 人しかいないため、自分で病院を探さなければなりません。
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前立腺肥大・前立腺ガン
滋賀県では県立医大付属病院と成人病センターに装置がありますが、技術が伴っているかは
わかりません。
また金属を前立腺のガンのある部分に埋め込んでガンを叩く「小線源療法」と呼ばれる治療
法もあります。 これは局所に当たるため合併症が少ないという長所があります。
3.ホルモン療法
前立腺ガンの細胞は男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けて増殖します。
性ホルモンを完全に断ち、ガンの増殖を抑える治療法です。
そこで男
これは定期的に脳下垂体ホル
モンを注射します。
ガンが進行してから発見された場合、4、5 のような治療法が考えられます。
4.抗ガン剤療法
ドタキセルという抗ガン剤を使います。 この抗ガン剤の副作用は白血球の減少と浮腫、爪
の変性です。
5.その他の外科的療法 (前立腺組織の破壊)
経尿道的高温度療法
経尿道的針療法
焦点式高密度超音波療法
経尿道的電気蒸散療法
レーザー療法
6.栄養療法は5章で
5.前立腺ガンの栄養療法
女性の更年期障害を防ぐ物質にイソフラボン(*)がありますが、これが 1998 年に男性の前立腺ガン
細胞の増殖を抑制することが分かりました。 男性であっても女性ホルモン(エストロゲン)を少し
作っており、加齢でこれが少なくなるとガン細胞が増殖するとみられています。
筆者もご多分にもれず、排尿障害が出てきて、一昨年 7 月の血液検査でかねてから高めに出ていた
PSA が 4.54
で PSA F/T 比が 12%となったため、早期ガンの疑いが出てきました。 幸いにも骨転
移マーカーの ICTP は低くガンの転移までは見られないので、今のうちにガンを抑え込むため放射線
治療を勧められました。 それは強度変調放射線治療なのですが、いかんせん紹介先が東京お台場で、
1週間泊まり込んで照射を受けるというものだったため、乗り気にならず栄養療法でやってみること
にしました。 その結果をここで発表します。
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前立腺肥大・前立腺ガン
血液検査結果
栄養療法の栄養素と1日当たりの摂取量は:
ノコギリヤシエキス
ビタミン A
1,800 mg
150,000 IU
イソフラボン
400 mg
亜鉛
1.2 mg
(=45 mg)
これを 2011 年 8 月末から3カ月続けるというものでした。
分子整合栄養医学協会の会長もこれで
完治したとのことで、話を信用して栄養療法に取り組んだわけです。
2011 年 12 月の血液検査では成果が出ず、アルブミン(*) も 4.43 と下がっていたので、おかしいとい
うことになりました。 実はこの間タン白質の補給をしなかったため、アルブミンが下がったのです。
アルブミンは肝臓で作られるタン白質ですが、血液中でビタミンやミネラル、水、薬剤などと結合
して体全体に運びます。 炎症がおこるとアルブミンが低くなります。
2012 年 1 月からタン白質の補給を行ったのですが、
6 月には基準値以下に下がってしまいまし
た。 これは新たに発見された胃ガンの炎症によるものでした。 胃ガン治療後の 11 月の結果では、
PSA の F/T 比は少しあがったため、改善されたとみなされています。 11 月に ICTP が増えたのは
抗ガン剤の影響とみなしています。 (私の胃ガンに関してはそのうち体験談として報告するつもり
です。
)
ノコギリヤシエキスは以前から 1,100mg 飲んでいましたが、1,800mg にしてから尿の頻度が驚
くように減っただけでなく、冬でも逼迫尿がなくなり 40 歳代になったような状態になっています。
ノコギリヤシエキスは手放せなくなりました。 しばらく飲むのをさぼっていると、たちどころに尿
の出が悪くなります。 でも飲んでいる限りは、長時間のドライブでも平気です。 以前は運転中に
トイレに行きたくなって、何度もつらい思いをしていました。 ノコギリヤシの効果を見つけたアメ
リカ・インディアンの人に感謝しています。
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5.
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前立腺肥大・前立腺ガン
参考文献
分子整合栄養学概論
インターネット検索
Wikipedia
前立腺ガンホームページ
病院の放射線科
6.
用語の説明
テストステロン: 精巣内で作られ血液中に放出される男性ホルモンで、筋肉増大や体毛増加を促す。
卵巣でも作られるが量は少ない。 前立腺に取り込まれてジヒドロテストステロ
ンに変わる。 このジヒドロテストステロンが過剰に貯蔵されるとタン白質受容
体に結合して、前立腺が肥大する。
前立腺液: 前立腺内壁から分泌される乳白色の弱アルカリ性液体で、精液の3割を占めて精子に活
性を与える働きをしている。 前立腺液に含まれるスペルミンという物質が精液特有の
匂いの元になっている。
血清クレアチニン: クレアチニンは筋肉で作られて血中に入り、糸球体で濾過された後、ほとんど
再吸収されず速やかに尿中に排出される。 血清クレアチニン値が高いという
ことは、濾過に支障をきたすほど腎機能が落ちていることを示す。
交感神経遮断薬: 興奮を促す交感神経のアドレナリン受容体のうちα受容体だけに遮断作用を持つ
薬剤である。
ジヒドロテストステロン生成阻害剤: テストステロンは前立腺細胞内で還元酵素の働きを受けてジ
ヒドロテストステロンに変わる。 この変換を阻害して前立
腺肥大を抑える薬剤である。
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(その12)
前立腺肥大・前立腺ガン
抗アンドロゲン剤: 男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑制する薬物で、前立腺肥大の治療に
なるが、性欲減退にもなる。
テストステロンはアンドロゲンの一つ。
ノコギリヤシエキス: 北米南部に広く分布するヤシの木の一種でヨーロッパでは医薬品として認可
され、前立腺肥大症患者の排尿障害の改善に有効であるとして使われている。
ノコギリヤシはテストステロンをジヒドロテステステロンに変化させる酵
素(5αリダクターゼ)の働きを抑制するため、前立腺肥大の予防をする。
上記のジヒドロテストステロン生成阻害剤と同じ働きをする。
飽和脂肪酸: 炭素間の結合に二重結合のないもので、動物性脂肪がそれにあたる。 常温では固体
である。
イソフラボン: 大豆に含まれている3種類の成分で分子の形がエストロゲンと似ているため、
人体はこれをエストロゲンとみなしてしまう。 これが更年期障害を解消する
理由です。
前立腺ガン細胞も同じように騙されて増殖が抑えられるようです。
アルブミン: 血漿中にあるタン白質でビタミン、ミネラル、水、薬剤と結合して運ぶ。 血液の浸
透圧を調節していて、アルブミンが低いと水を蓄えられず、腹水がたまる。
低アルブミンでは薬剤の副作用が大きく出ます。
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