IEA 水力実施協定:専門部会-2(小水力発電)と カナダ天然資源省

IEA 水力実施協定:専門部会-2(小水力発電)と
カナダ天然資源省 CANMET エネルギー技術センターによる
中小水力発電技術に関する共同ワークショップの開催
2006年7月31 - 8月4日にアメリカ ポートランドにて開催されたHYDROVISION2006コンファレンス
に合わせて、表記ワークショップを開催したので、各プレゼンテーションの概要を紹介する。
開催場所
Oregon Convention Center, Por tland, Oregon USA
開催日時
8月1日 08:00∼17:00
ワークショッププログラム
第1部 既設発電施設の機能改善・刷新 (その1)
1. 小水力開発の課題: 北アメリカにおける機能改善・刷新の事例
(Mr. Munger、カナダ)
2. 小水力の将来: 課題と機会
(Mr. Pelikan、ヨーロッパ小水力協会、オーストリア)
第2部 既設発電施設の機能改善・刷新 (その2)
3. 水力発電施設の機能改善のための調達契約と建設
(Mr. Christensen、アメリカ)
4. 小水力発電所における規格化された自動化の適用
(Mr. Montmorency、カナダ)
5. 日本における小水力発電の促進策と新規技術
(礒野 新エネルギー財団、日本)
第3部 小水力発電機器とその評価
6. 水力地点の設計・積算のためのソフトウエア<HydroHelp>
(Mr. Gordon、カナダ)
7. <Hudos Software>
(Mr. Howard、カナダ)
8. 水力エネルギー資源の開発計画用ツール
(Mr. Hall、エネルギー省、アメリカ)
第4部 開発途上国での小水力開発の事例
9. 経済発展と小水力‐開発者の展望
(Mr. Evans、カナダ)
10. ニカラグア国における小水力に関する刷新的取組み
(Mr. Kozobolidis、カナダ)
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1. 小水力開発の課題: 北アメリカにおける機能改善・刷新の事例 【Mr. Munger 、カナダ 】
カナダの水力分野の専門コンサルタントである〈SCP社+BPR社〉連合の業務とコンサルタント実
績が紹介された。 特に、小水力発電施設における自動制御や遠距離通信設備の設計や建設マネ
ジメントを得意分野として、Hydro Quebecを始め大小発電事業者を顧客としている。
コンサルタント実績の紹介では、Abenaquis SHP(3MW: Quebec)のE&M機器の全面的改修
(C$3.2M)、Fraser SHP(2.1MW: Quebec)のE&M機器の全面的改修(C$1.7M)、遺棄されていた
Saint-Raphael SHP(3.5MW: Quebec)の全面改修(C$4.7M)など、海外の事例としては、Khudi小水力
発電所(3.8MW: Nepal)の新設(C$8.5M)、Galogi SHP(2.75MW: India)の全面改修などの概要が紹
介された。
2. 小水力の将来: 課題と機会 【Mr. Pelikan、ヨーロッパ小水力協会、オーストリア】
EU-15 ( 先 の 加 盟 15 カ 国 ) 、 EU-10 ( 後 の 加 盟 10 カ 国 ) お よ び EU加 盟 候 補 3 カ 国 (Bulgaria,
Romania, Turkey)の3つに区分して、再生可能エネルギー起源の電力目標(2010年、22%:?:?)、発
電 電 力 量 に 占 め る 小 水 力 の 比 率 (1.5%:0.7%:0.6%) 、 水 力 発 電 に 占 め る 小 水 力 の 比 率
(11%:13%:2%)、包蔵水力に対する開発済み水力の比率(82%:36%:6%)、水力地点の数と平均出力
規模などが報告された。
小水力発電施設を機能改善・刷新することは、新たな開発に比較して様々な利点(少ない環境
影響、少ない履行リスク、少ない世論の反対、より正確な経済性評価など)がある。
オーストリアにおける促進策として、EUの支援、3つの視点からの評価(経済社会的認容、技術、
生態環境)、発電電力量の増加抑制、投資額の補助(15-30%)、発生電力の固定買取制度などが
挙げられる。
3. 水力発電施設の機能改善のための調達契約と建設 【Mr. Chr istensen、アメリカ】
水力発電施設の機能改善・刷新には、非常の多くの工種(発電機器、機器類のバランス、ダムと
貯水池、その他土木構造物、環境保全など)があり、内部資源による継続的な改善と外部資源によ
る大規模な改善・刷新とに区分され、オーナーは機能改善・刷新の目的を明確にし、外部資源を用
いる際には様々な調達方式を検討すべきである。
TVAは、1992-2015の間にUS$875Mの予算で26ヶ所のダムと92ヶ所の水力発電所の機能改善・
刷新を実施し、施設の耐用年数を50-60年延ばし、750MWの出力増強を実施中である。
外部資源を用いる場合の建設マネジメント方式・問題点・リスク分担などが紹介された。
4. 小水力発電所におけるSCADAシステムの適用 【Mr. Montmorency、カナダ】
プログラマブルロジックコントローラ(PLC: programmable logic controller)を用いた発電所の遠隔
監視制御システム方式(SCADA System)の事例が紹介された。
1947年に建設された“High Fall小水力発電所(800kW)”が、2005年に改装・拡張(800→
1000kWへの改装と1800kWの新規)された際に導入されたSCADAシステムに用いられたPLCの概
要が紹介された。
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5. 日本における小水力発電の促進策と新規技術 【礒野 新エネルギー財団、日本】
導入部で、包蔵水力の現況(特に未開発地点の小規模化)および水力開発の課題と促進策の
紹介がなされ、本論では新規技術として、サイホン取水式の水力発電(東京発電)、農業用水路に
設置できる開水路落差工用発電システム(電源開発)および浄水場内の配水管路内に設置するイン
ライン型発電水車(クボタ)の概要が紹介された。
発表の最後に、再生可能エネルギーとしての小水力発電の普及・啓発を目的として設置された
都留市家中川小水力市民発電所の取組みが紹介された。
6. 水力地点の開発可能性評価用ソフトウエア<HydroHelp> 【Mr. Gor don、カナダ】
Microsoft Office Excel 2003を用いた水力地点の予備的開発可能性評価用ソフトウエアが紹介
された。
当該ソフトは、50MW以下の小水力用と出力規模に制限のない大出力用とがあり、それぞれ(1)
タービンの選択、(2)フランシスタービン用、(3)インパルスタービン、(4)カプランタービン、が用意され
ている。 当該プログラムは、カナダ天然資源省CANMETエネルギー技術センターの援助を受け
て、比較的経験の浅い初級水力技術者を対象として開発されたものである。 プログラムは、入力デ
ータに基づき工事数量およびコストも算定することができる。
配布CDにデモ用Excel ワークシートが含まれている。
7. 水力発電機最適化ソフトウエア<Hydroelectr ic Unit Dispatching Optimization Software:
Hudos> (Mr. Howar d、カナダ)
Microsoft Office Excel 2003を用いた水力発電効率の最大化のためのソフトウエアが紹介され
た。
発電所に複数の発電機が設置されている場合には、しばしば非効率な運転がなされていること
が多いことから、カナダ天然資源省CANMETエネルギー技術センターの援助を受けて、発電効率
の最大化を求める計算ソフトが開発された。 ”Dynamic Programme”によって発電機最大出力の%
表示で最大効率を表示することができる。
配布CDにデモ用Excel ワークシートが含まれている。
ウエブサイト<http://www.cddhoward.com>からもデモ用Excel ワークシートを見ることができる
8. 水力エネルギー資源の開発計画用ツール 【Mr. Hall、INL、DOE、アメリカ】
アイダホ国立工学環境研究所によって開発された<Virtual Hydropower Prospector:VHP>が紹
介された。
地理情報システム<GIS>を用いたこのVHPは、USA内の河川の水力地点の探索・評価用のツー
ルとなる。 約500,000箇所の水力地点及び約130,000箇所の実施可能性を有する水力地点を表示
することができる。 開発の予備的評価を実施するために道路網・送電線網・土地利用形態なども表
示できる。 このVHPは、アイダホ国立工学環境研究所のウエブサイトから見ることができる。
<http://hydropower.inl.gov/prospector>
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9. 発展途上国での小水力‐開発者からの観点 【Mr. Evans、カナダ】
中部アメリカに位置するベリーズ国においてカナダ資本の現地法人が開発・建設した“Chalilloダ
ム発電プロジェクト(7.5MW)”の計画・建設中に遭遇した様々な課題(特に、環境や文化について)が
紹介された。
環境アセスに要する費用は出力規模に比例しないので、時と場合によっては小水力開発にとっ
て非常な重荷となる、第3国からの請負者が工事に携わると契約上の解釈・文化・言語の差異によっ
て問題解決に時間が必要になる等、実際の工事に従事した経験が紹介された。
10. ニカラグア国における小水力に関する刷新的取組み 【Mr. Kozobolidis、カナダ】
1990年代に国際NGOの一員としてニカラグア北部の農村地帯の水力発電による電化プロジェク
トに従事した際の経験および建設過程が紹介された。
(1) 人口2000人の村落に100kWの水力発電所を建設した際には、地元住民を教育・訓練し発電
所の運転・維持管理要員に充てた。 (2) 別の村落では、ペルトンバケットをペルーから輸入し、水
車(235kW)を地元住民の手で製作した。(3) 1MWの小水力発電の建設過程が紹介された。 土
嚢とじゃ籠による仮締切、PVC ホースを用いたサイホン式の排水、伐採木によるコンクリート用型枠
の製造、河川からコンクリート用骨材に採取、手練りコンクリートの製造、400mの導水用PVCパイプラ
インの人力敷設などが多数の写真で紹介された。
添付資料
1. ワークショッププログラム
2. 日本のプレゼンテーション
以上
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