新規機能性ペット用素材 ~お口の健康と鶏卵抗体(IgY)~ 1 歯周病の発症メカニズム 食物の残さ物と細菌による歯垢(プラーク)の形成 カルシウム沈着により歯垢が硬くなり、歯石を形成 歯のポケットに嫌気性菌が増殖し、歯周炎を起こす 炎症が進行して歯茎組織が破壊 歯牙脱落 日本の家庭犬の調査結果 3才の犬において、約80%が歯周病を発症している。 (猫では、約70%) 2 歯周病の病原因子 歯周病は、歯周病菌という細菌の感染が原因である。 ペットにおける歯周病菌は、Porphyromonas属の菌種 P. gulae 、P.gingivalis 、P. denticanis 、P. salivosa 歯周病菌は、ジンジパインと呼ばれる 非常に強いプロテアーゼ(ペプチド結合 加水分解酵素)を産生し歯茎の組織 (タンパク質)を破壊して歯周炎を進行させる。 30 犬口腔フローラ中の Porrhyromonas属 総菌数に対する割合 25 % Porphyromonas 20 15 10 5 5 歳 以 上 歳 - 5 2 1 - 2 歳 歳 1 月 6 ヶ 月 ヶ 3 ヶ .5 1 ヶ 月 未 満 月 0 1 ジンジパインは歯周病の病原因子 35 年齢 3 ジンジパインは歯周病の重要な病原因子 Biofilm(プラーク) を形成 口腔細菌 共凝集 間質蛋白質 フィブリノーゲン分解 フィブリン 口腔内組織、歯茎組織を破壊 ジンジパイン 作用機序 マクロファージ、好中球 レセプターの破壊 サイトカイン、補体の分解 宿主の免疫防御機構の阻害 4 抗ジンジパイン鶏卵抗体(IgY) 歯周病の病原因子であるジンジパインを歯周病菌より粗精製して、 鶏に接種することで抗ジンジパイン抗体を卵に多く含有させる 受動免疫システムを応用。 病原因子の不活化 歯周病菌から産生されるジンジパインに、抗体が特異的に結合して、 酵素、毒素活性をなくします。 特異性が非常に高い。 ジンジパインのみを不活化し、宿主生体系及び、善玉菌には影響しない。 結合スピードが非常に速い。 親和性(アフィニティー)が強いことから、瞬時に抗原抗体反応が成立する。 薬剤耐性に関与しない。 薬剤耐性菌を作らない、薬剤耐性菌に対しても効果がある。 安全であり、嗜好性が良い。 卵黄を粉末化した原料で、原料としての実績があり、安全です。 5 抗ジンジパイン抗体の 基礎評価試験 Porphyromonas 属 gingipain に対する 抗ジンジパイン抗体のIn vitro 効果確認試験 北海道医療大学 口腔衛生学講座 日本大学 歯学部保存学教室 歯周病学講座 株式会社 ゲン・コーポレーション 抗体事業カンパニー 研究開発部 (イーダブルニュートリション旧社名) 6 ジンジパイン酵素活性 抑制試験 試験方法 抗ジンジパイン IgY Control IgY Gingipain (250 mg/mL) 1 h r反応 基質にBapNA を用いOD405 で酵素活性の測定 7 Enzyme activity(%) Enzyme inhibition (P. gingivalis gingipain) 120 100 80 60 40 20 0 Anti-gingipain IgY conc. Cont. IgY 47 94 188 375 750(ug/ml) Enzyme activity(%) Enzyme inhibition (P.gulae gingipain) 120 100 80 60 40 20 0 Anti-gingipain IgY conc. Cont. IgY 47 94 188 375 750(ug/ml) 8 歯周病菌による細胞障害活性抑制試験 試験方法 口腔上皮細胞(FaDu細胞)をプレートに培養 試験区 IgY コントロール区 抗ジンジパイン抗体 コントロール抗体 感染 菌種 陽性対照区 陰性対照区 PBS PBS P. gingivalis PBS P. gulae PBS 37 ℃で1時間培養 FaDu生細胞数測定 9 P. gulaeの細胞障害性に対する抑制効果 陰性対照区 (PBSのみ) コントロール区 (P. gulae +control IgY) 陽性対照区 (P. gulae + PBS) 試験区 (P. gulae + Anti-gingipain IgY) 10 細胞障害性抑制効果による生細胞数 PBS処理のみ (非感染) P.gingivalis (感染) FaDu細胞 生存率 PBS 17.5 3.9 22 % コントロール抗体 16.5 4.5 27 % 抗ジンジパイン抗体 16.0 12.5 78 % PBS処理のみ (非感染) P.gulae (感染) FaDu細胞 生存率 PBS 17.5 4.5 28 % コントロール抗体 16.5 5.5 24 % 抗ジンジパイン抗体 16.0 10.8 68 % ( 生 FaDu 細胞数: ×104 / mL ) 11 P. gingivalis による A. naselundii との 共凝集抑制評価試験 試験方法 P. gingivalis Strain ・ FDC 381 ・ GAI 7802 ・ ATCC 33277 ・ ATCC 49417 ・ ATCC 53977 抗ジンジパイン抗体 コントロール抗体 60 min 反応 + Actinomyces. naselundii WV 627 60 rpm 30 min 凝集判定 12 P. gingivalis による A. naselundii との 共凝集抑制試験 抗ジンジパイン抗体 コントロール抗体 FDC 381 1 2 GAI 7802 1 2 ATCC 33277 3 3 ATCC 49417 1 2 ATCC 53977 1 2 P. gingivalis Strain (数値 : 菌体凝集スコア) P. gingivalis とA. naeslundii の凝集塊はKolenbrander,Cisarの方法にて0~4で判定 0 : 全く凝集が認められない, 1 : 混濁した浮遊液中に細かく小さな凝集体が散在が認められる, 2 : 混濁した浮遊液中に小さな凝集塊が認められる, 3 : 浮遊液が透明で大きな凝集塊が認められる, 4 : 浮遊液が透明で凝集塊が中心で一塊となるもの 13 基礎評価試験 小括 ・抗ジンジパイン抗体は、P. gingivalis 及びP. gulae から産生されるジンジパイン (タンパク分解酵素)の酵素活性を阻害した。 ・抗ジンジパイン抗体は、P. gingivalis 及びP. gulae の口腔上皮細胞に対する 細胞障害を抑制した。 ・抗ジンジパイン抗体は、P. gingivalis と一般口腔細菌との共凝集を抑制した。 In vitro基礎評価試験にて、歯周病の重要な病原因子である ジンジパインの活性及び、その作用を抑制することが明らかとなった。 14 歯周病罹患犬を用いた評価試験 抗ジンジパイン抗体添加 ドライペットフードの 8週間投与による歯周病罹患犬に対する 有効性及び安全性評価試験 試験実施機関 : 株式会社 京都動物検査センター 15 試験プロトコール 供試動物 犬種 : ビーグル・ ミニチュアダックス・キャバリ ア 年齢 : 5~7歳及び飼育歴5年以上の年齢不詳犬 体重 : 6.6~10.2kg 選定基準: 歯周病罹患犬で左右歯肉溝にポケットが確認され、口臭が中度(明らかに匂う) 以上である犬。 郡設定 試験群 : 10頭 (ビーグル8頭、キャバリア1頭、M.ダックス1頭) ; 平均体重7.9±1.3 kg 対照群 : 5頭 (ビーグル4頭、 M.ダックス1頭) ; 平均体重8.3±1.9 kg フード 試験群 : 市販犬用ドライフードに、抗ジンジパイン抗体を0.1%添加 対照群 : 市販犬用ドライフードのみ 給与量 : 各個体毎の体重より算出された1日当たりの所用量 給与期間 : 8週間 観察項目 口腔内臨床スコア:口臭、歯肉充血、歯肉出血、歯肉腫脹、歯肉潰瘍、流涎、歯根膜炎 歯周ポケット測定 開始時、4週時、8週時観察、測定 一般臨床 :元気、糞便性状、食欲(残餌量の計量) 試験期間中毎日観察 体重測定 開始時、4週時、8週時測定 16 口腔臨床症状観察項目と判定基準 スコア 観察項目 0 1(軽度) 2(中度) 3(重度) 口臭 なし わずかに臭う 明らかに臭う かなり臭う 歯肉充血 なし わずかに赤色が認めら れる 軽度と重度の中間のも の 明らかに強い赤色が認 められる 歯肉出血 強く圧迫しても出血し ない 強く圧迫すると僅かに出 血する 軽く圧迫すると出血す る そっと圧迫しただけでも 出血する。又は自然出 血している 歯肉腫脹 なし 軽度の腫脹が辺緑歯肉 に認められる 腫脹が付着歯肉部に 及ぶ 激しく腫脹し、歯冠部の 一部を被う 歯肉潰瘍 なし 局所に米粒大の潰瘍が 認められる 小豆大の潰瘍又は多 数の米粒大の潰瘍が 認められる 小豆大以上の潰瘍また は多数の小豆大の潰瘍 が認められる 流涎 なし 僅かに認められる 少量認められる(軽度 と重度の中間) 多量に認められる 歯根膜炎 歯肉溝の深さが2mm 以下のもの 歯肉溝の深さが2mmよ り深いもの 複歯根において歯周ポ ケットが歯槽骨頂部に 達するもの 歯の動揺があるもの 17 口腔内臨床合計スコア 平均値 口腔内臨床症状観察スコアの推移結果 20 15 10 5 8.2 * * 0w 10 6.2 2.8 7.8 3.2 4w 8w 0 試験群 対照群 * In Compare to 0w, P < 0.01 (Anova + Tukey test) 口腔内臨床合計スコアは、個体別に下記項目スコアを合計した値 口臭、歯肉充血、歯肉出血、歯肉腫脹、歯肉潰瘍、流涎、歯根膜炎 青字は、項目別にて有意なスコア減少を認めた。 18 歯肉充血 臨床スコア推移 歯肉充血 臨床スコア変化量 P=0.03 (T-test) 2.0 0.0 1.2 試験区 対照区 0.8 0.4 臨床スコア変化値 臨床スコア値 1.6 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 0.0 0w 歯肉出血 8w 臨床スコア推移 ⊿8w(8w-0w) 試験区 歯肉出血 対照区 臨床スコア変化量 P=0.003 (T-test) 2.0 0.0 1.2 試験区 対照区 0.8 0.4 臨床スコア変化値 臨床スコア値 1.6 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 0.0 0w 8w ⊿8w(8w-0w) 試験区 対照区 19 歯肉腫脹 臨床スコア推移 歯肉腫脹 臨床スコア変化量 2.0 0.0 1.2 試験区 対照区 0.8 0.4 臨床スコア変化値 臨床スコア値 1.6 0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 0w 歯根膜炎 2.0 8w 臨床スコア推移 ⊿8w(8w-0w) 試験区 歯根膜炎 対照区 臨床スコア変化量 P=0.05 (T-test) P=0.002 (Wilcoxon) 1.2 試験区 対照区 0.8 0.4 0.0 0w 臨床スコア変化値 臨床スコア値 1.6 0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 -1.2 -1.4 -1.6 ⊿8w(8w-0w) 試験区 対照区 8w 20 歯石剥離の様子 試験開始時 4週時 8週時 試験群 No.2 PD : 3mm Score : 5 PD : 1mm Score : 2 PD : 1mm Score : 0 PD : 3mm Score : 8 PD : 3mm Score : 2 PD : 3mm Score : 2 PD : 5mm Score : 9 PD : 4mm Score : 2 PD : 4mm Score : 4 試験群 No.5 試験群 No.7 試験群のみで10頭中3頭で確認された。 PD: Pocket depth 21 一般臨床観察の結果 試験期間の56日間の全日において、 試験群及び対照群の全15頭は、元気、糞便性状、食欲(残餌無し)に 異常を認められなかった。 Body Weight(Kgs) 12 試験期間中の犬体重推移結果 10 8 対照群 6 試験群 4 2 0 0w 4w 8w 22 歯周病罹患犬を用いた評価試験 小括 ・抗ジンジパイン抗体 を添加したドライフードを給与したことで 下記の有効性を認めた。 (1)歯周病罹患犬の口腔内臨床症状を有意に改善した。 (2)歯周病による、歯肉充血、歯肉出血、歯根膜炎を有意に改善した。 (3)10頭中3頭の強固な歯石の剥離が認められた。 ・抗ジンジパイン抗体の犬における安全性及び嗜好性を確認した。 23
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