万年カレンダーを作ろう!

万年カレンダーを作ろう!
1
課
題
【図1]
万年カレンダーは、数十年にわ
たって利用できるカレンダーで、
これまでいろいろなものが開発さ
れている。ここで取り上げる万年
昭
昭
カレンダーは、中学生にもしくみ
53
54
が理解できる単純なものである。
授業では、万年カレンダーを持
昭
55
卜
昭 昭
55
3− 56
昭
昭
昭 昭 呵
雪空 §竺 6 0
昭
昭
61
62
昭 昭
曾至 §至
平
平
平
晋
1
2
9
5 丁 58
平 平
4
1− 3 − 6
平
8
参して、生徒の生年月日が何曜日
であったかを言い当て、しっかり
生徒を驚かせて興味・関心を喚起
したい。∫そして、「みんなもカレ
ンダーのしくみを学習して、万年
カレンダーを作ろう!」と投げか
け、これからの学習が意欲的に進
むように課題を提示したい。
3
10
17
24
31
4
11
18
25
5
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19
之8
6
13
20
2T
7
14
21
之8
▲
1
8
15
22
考g
2
9
16
23
30
暦のしくみを理解することは、
数学的な考え方を深めることでも
ある。したがって、指導にあたっては、生徒に暦のしくみを十分理解させたい。さらに、作った
万年カレンダーを利用することで、数学を学習することのよさにも気づかせたい。
2
課蓮の解説
万年カレンダーは、[図1一】のように、自を表す数を書いたカードA、月を表す数を春いたカ
ードB、年と曜日が書いてある台耗のカードCからできている。カードAとBをそれぞれ動かし、
位置を合わせることによって、過去や未森のある日の曜日を知ることができるようになっている。
学習にあたっては、生徒に万年カレンダーとはどのようなものかを見せておき、ほほ概略を把
瞳させておくことが大切である。授業では、次の(1ト(3)の流れで学習を進めた。
(1).日のカードAの作り方
(2)月のカードBの作り方
(3)年のカードCの作り方
また、数年分のカレンダーを準備しておくと、カレンダーを見ながら発見したり、確認したり
するのに好都合である。
カレンダーのしくみと万年カレンダーの製作の方法1ま、次の通りである。
(り カードAの作り方
私たちがふだん日にするカレ
ンダーを、その月の1日は何曜
【図2】
日かで分類すると、曜日の数と
同じ数の7種類あることに気づ
1
2
3 .
4
5
8
7
7
8
9
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ll
12
13
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13
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2 3
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2 5
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之7
2 8
・2 9
く。したがって、【図2】のよ
2
8
4
5
8
9
10
1 1
12
うなカードAを用意し、その月
■16
17
18
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23
3d
2 4
25
2 6
の1日の曜日を合わせれば、月
3 0 ミ3 1
3 1
l
l
ごとのカレンダーができるわけ
である。このカードでは、2月
や4月なども31日まで表示されてしまうという不都合があるが、E=こちから曜日を調べるには
十分である。また、日にちを表す数字が重複して書いてあるが、これはカードAを動かしたと
きに、上の曜日の枠に日にちが常に納まるよう工夫したものである。
(2)カードBの作り方
カードAだけでも、その月の日にちの曜日は調べられるが、数カ月前や数カ月後の曜日を調
べる場合には不便である。そこで、他の月も調べられるように、カードAに圭角の目印▲を付
けて、曜日の上に奮いた月を表す数を指し示すようにしておく。[図3]の目印▲は、1日が
金曜日から始まるのは、1月とtO月であることを示している。
ここで問題となるのは、月を−表す数の配置の仕方である。1年分のカレンダーを用意して、
それぞれの月が何曜日から始まるかを調べて、月を表す数を埋め込んでいく方法もあるが、で
きたらどうし七そういう配置になるのかについても生徒に考えさせたい。その月の1日が何曜
日から始まるかに注目すると、同じグループになる月やグループどうしの曜日のずれについて
の理解が容易になる。
(3)年のカードの作り方
日にちを表すカードAから月を表すカードBを作ったように、今度は年を表すカードCを作る。
カードCは、カードAとBをはさむ台紙で、【函4]のように年を表す欄を作っておく。
平年の1月1日が金曜日とすると、次の年の1月1日は金曜日の次の土曜日になる。カレン
ダーを見れば確認できることであるが、
365日÷7日=52・・・1日
という計算結果から、平年の翌年の1月1日の曜日は、前年の同じ日の曜日に比べ1日ずれて、
次の曜日になる。
そこで、カードCの年を記入する欄に、順に年を表す数を記入しておけばよい。カードBに
は、どの年のカレンダーかを指し示す目印▲を付けておく。
[図3]
2
豆 ̄ 8
8
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tl
1
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7
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1 ● 2
3
4
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29 ・ 30
31
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31
.7
【図4]
l
l
l
l
l
l
l
l
l
I
8
2
3
il
4 −5
2 .3
9
10 1 1 1 2
16 17 18 19
23 2 4 25 26
30 31 .
l
8∴ 9
12
8
13
20
27
平
平
l
l
l
l
l
;
5
6
;
4
7 ・
▲
1
7
8
14 15
2 1 22
2 8 −29
▲
1
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5
2
9
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3 .4
10 1 1
17 18
24 25
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I
8
2
3
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6
5
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19
26
8
7
13 14
2 0 ・2 1
2 7 28
9
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4
7
1
10
閏年は、2月が平年の28日より1日多い29日になる。したがって、閏年の3月以降は1日ず
つ曜日がずれることになる。例えば、平成4年は閏年であったから、【図5]のように1月1
日は水曜日、2月1日は土曜日で平年と同様に万年カレンダーが利用できるが、3月以後は
[図5】の曜日より1日ずれた曜日、つまりカードBを右に1つ動かした曜E=こなっている。
以上のことから、閏年では万年カレンダーのカードCの年の欄を【図6】のように1月から
2月までと3月から12月までの2つに分ければよいことになる。
[図5]
8
2
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1
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7 ÷
5
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1
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5
﹈
6
トL
図
6
2
8
3
11
し
_
ノ1
10
2
3
11
1
5
なお、現行のグレゴリオ暦では、閏年について、
① 西暦年数が4で割り切れる年は閏年とする。
◎ ただし、①の年でも100で割り切れる年は閏年とせず、400で割れ切れる年は閏年とする。
となっている。(むによって西暦1600年や2000年は閏年だが、1900年は平年ということになる。
3
数学的な見方、考え方
万年カレンダーの製作を通して、生徒は身近な生活の中にも、数学が役立っている蓬酎土気づ
く。さらに、万年カレンダーの利用を通して、数学を学習することのよさを体験するとをもでき
る。このことは、数学に対する興味・関心を高めることに役立つとともに、数学を学ぶ動線づけ
にもなるといえよう。
同じものをまとめて表示する月のカレンダーを考えることで、統合的なものの見方を深めるこ
とができるし、閏年の処理や毎年便えるように工夫することで、拡張の考え方を身につけること
もできる。数学的な見方や考え方を具体的に学習できる格好の課題だといえよう。
4 学習計画一.(全2時間)
この課題は、一斉指導でも扱えるが、作業をともない個人差が大きくなるので、生徒たちが数
え合い、協力しながら学習する班学習で実施した。ただ、カレンダーの基本的なしくみの理解と
万年カレンダーの製作という2つの学習内容があるので、プリント学習でカレンダーに関する質
問に答えながら、それに関与した万年カレンダーの部分を作っていくという学習の流れにした。
(り 今年のカレンダーを作る・…・…・第1時
1時間目は、一斉学習でカレンダーの基本的なしくみを理解し、【図7]のような今年のカ
レンダーを作る。
[図7】
▲
1
2
9
3
4
5
6
7
8
10
11
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1 5 ・1 6
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Z6
Z7
28
22
29
23
30
(2)閏年も考慮した万年カレンダーを作る……‥・第2時
2時間目は、前時に作った今年のカレンダーを来年も使うにはどうしたらよいかと考え、閏
年も考慮した毎年使えるカレンダーに仕上げていく。
毎年カレンダーができたら、使い方を練習して、作った万年カレンダーが正しく作られてい
るか確認する。
<学習プリント>
万年カレンダーを作ろう!
2
年
組
番
氏
名
12汝つづりの年間カレンダーは、何種類ありますか。たたし、視察日のちがいは鞍
に入れません。
平成5年(1993年)1月のカレンダーをもとにして、図8のような移動式カレン
ダーをつくります。他の月のカレンダーも表示できるように、ますめに必要な数字を
記入して一年間使えるように切り取っておきましょう。
図a
1
2
8
.
4
5
8
7
8
9
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12
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24
2与 2 6
27
28
29
3P
31
平年(閏年以外の年)は、2月と3月の同じ日の曜日は同じです。
このように、同じ日の曜日が一致する月の組を見つけましょう。
また、どうして一致するのか考えて見ましようい
回
図8のカードAを移動しても、カレンダーが何月のものであるかわかるように月を表
すカードBを追加しました。▲印は、指し示す月の1日が何曜日から始まるかを表し
ています。(図b)
カードAを移動して確総をしながら、他の月も記入しておきましょう。
カード
2■ 8
4
5
8
1
8
15
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9
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1P
11・ 1写 13
7
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18
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Z4
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24 25
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Z8
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.
9
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B
4
11
5
12
8
13
7
14
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19
26
20
21
25
27 28
平成5年(1999年)の1月1日は金叫日です。平成8年(1994年)の1月1
日は、何曜日でしょう。一般に、1月1日の曜日は、平年の場合一年ごとにどうかわ
▲りますか。
図eのような年を表す部分を加えょした。カード8とAを動かして、平成8年1月の
カレンダーをつくってみましょう。上の▲印は、指し示す年の1月1日の曜日を示し
ています。
1
2
9
16
3
10
17
23
2 4 2 5 . 26
3i
30
4
5
1 1 12
18 19
8
13
2q
2ナ
3
4
5
7
14
21
8
9
15 16
22 23
2
10
17
24
11
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12 1 3
19 2 0
2年 ̄ 2 7
28
29
31
30
8
7
14
21
28
カード
A
閏年では、2月が平年より1日多い29日です。平成4年(1992年)は閏年で1
月1日は水曜日でした。次の年の平成5年の1月1日は何曜日ですか。
閏年の平成4年(1992年)をカードCの年の欄に記入し、カーードAとBを動かし
て平成4年1月のカレンダーをつくってみましょう。
さらに、平成4年12月31日の曜日を調べてみましょう。
カードCの年をたくさん記入して、万年カレンダーを完成しましよう。
使いやすいように、いろいろエ美してみてください。
そして、恵父さんやお母さんに生年月日の曜日を教えてあげましょう。
5
生徒の学習活動
同じ万年カレンダ」を作るのだが、生徒
によって理解度や取り組み方はさまざまで
あった。製作過程が日に見えることもあっ
てか、ほとんどの生徒が熱心に取り組んだ。
ただ、生徒の中には、.友人がやっているこ
とを、ほとんど考えもしないでまる写しし
ている生徒もいた。これは、学習内容がや
や難しいということもあるが、理解しなが
ら作業する学習なので、理解が遅れてしまうと、遅れを取り戻すのが難しいということでもあろ
う。
いずれにしても、クラスの全員が、どうにか万年カレンダーを作り上げたことは、高く評価で
きよう。
6
実践の反省
力ードAまでのカレンダーの仕組みは、ほとんどの生徒がたやすく理解した。これに対し、カー
ドBやカードCのしくみの理解は、一部の生徒には難しかったようだも
この課題は、暦のしくみが理解でき、万年カレンダーが作れるので、ほとんどの生徒が興味を
示すと思って取り上げたが、あまり興味を示さない生徒もクラスに数人いた。この生徒たちは、
「いつも見慣れたカレンダーの方が、きれいで見やすい。」とか「いちいちセットするのが、めん
どうだ。」と言っていたが、ものごとのしくみや原理を知ることのおもしろさを、しっかり敢え
ていく必要があると痛感した。また、万年カレンダーの色や形を工夫させると、生徒の興味や関
心を高めるのに効果があったかもしれない。
数カ月後、ある生徒が、「万年カレンダー、まだ使ってますよ!」と言ってきた。「この授業を
やってよかった」と思い、教師としての喜びを感じた一瞬であった。
<参考図書> 算数ゲーム・パズル 大須賀康宏 東洋館出版社