トウモロコシを用いた遺伝の法則の実感

平成 25 年 8 月 28 日 版
トウモロコシを用いた遺伝の法則の実感
鷲辺
1
章宏
ねらい、目的
中学3年では単元「生命の連続性」の中で、メンデルの実験を基にして、優性や劣性の形質がある
ことや、分離の法則をはじめとする遺伝の規則性について学習する。ここでの学習は、遺伝子の組み
合わせとその結果現れる形質についての理論的な学習になりがちである。そこで、今回は遺伝の法則
を実感させるための教材として、身近に手に入るトウモロコシを利用した実験とその結果について紹
介する。
2
教材の内容
(1) 準備物
・トウモロコシ(ゆでて真空パックしているもの)
※スイートコーンとしてスーパーに売られているもの。
黄色と白色の粒(種子)が混在しているものを選ぶ。
今回は1本を2班(8 名)で分け、1クラスあたり5
本を使用している。
・アルミカップ(各班のトウモロコシをさらに 1 人 1 人
に小分けするためのもの)
図1
今回使用したトウモロコシ
(2)作成手順(授業での流れ)
① 分離の法則や優性と劣性の形質について確認。
② 袋に入った状態のトウモロコシを班に1本ずつ配る。
③ トウモロコシを見て気がついたことを発表させる。
(黄色と白色の粒があるということに気づかせる)
④ なぜ粒に違いがあるのかを考えさせる。
(黄色と白色は対立形質ではないか。黄色が優性で白色
は劣性ではないか。
)
⑤ 黄色と白色の粒の比率について予想させる。
⑥ トウモロコシを切り分け、粒の数を手分けして数えてい
く。
(粒が半分に切れているものは 0.5 としてカウントす
る)
⑦ クラス全員の数を合計し、黄色と白色の粒の比率を明ら
かにする。
⑧ この実験からわかったことを、遺伝の法則と関連づけな
がら自分の言葉でまとめる。
(3)工夫・コツ
図2、3
黄色と白色の粒の数を
数えている様子
自分 1 人分での黄色と白色の粒の比率、班での比率、クラスでの比率をそれぞれ計算させることで、
信頼性を高めるためには、数多くのデータを集めることが重要であるという科学の基本的な考え方に
平成 25 年 8 月 28 日 版
ついても学習することができる。メンデルが法則を見つけ出すために種子の形について約 7300 粒、
子葉の色について約 8000 粒もの種子を調べたことは、どのような意味があったのかについてもあわ
せて考えさせる。
表1
3
教材の使用方法、活用例
班 黄色(粒) 白色(粒)
1
252
88.5
2
177
67
あるクラスの結果を表1にまとめた。
3
250.5
80.5
<自分 1 人> 黄色(64 粒)
:白色(26 粒)=2.5:1(ある生徒の例)
4
262
60
<班の合計> 黄色(240 粒)
:白色(78 粒)=3.1:1(7班の例)
5
218
82
6
194.5
71.5
<学級の合計> 黄色(2195 粒)
:白色(724 粒)=3.0:1
7
240
78
他のクラスでも 学級の比率を出すと 黄色:白色=2.8:1、
8
176
72
黄色:白色=2.9:1 となり、どのクラスもおおむね優性の形質と
9
200
60.5
10
225
64
劣性の形質が 3:1 の割合であることが確認できた。
合計
2195
724
① 授業の実際
② 授業後の生徒の感想
・実際に自分たちでトウモロコシの粒をわけて考えることで、遺伝の法則が身近に感じられました。
多少の誤差はあったものの、やっぱり3:1に近いんだなぁと思いました。
・ほぼ3:1に優性と劣性の性質があらわれたので驚きました。でも、優性の形質と劣性の形質は常
に3:1の割合で存在するのか知りたいです。
・トウモロコシという植物でやっても3:1というのができた。メンデルはエンドウだけでないすべ
てのものにあてはまる法則を見つけたんだなぁと確信しました。
・1 人 1 人で数えたときは51:14とか、全然3:1になりそうになかったのに、全部を合計する
とだいたい3:1になっていてびっくりしました。
・トウモロコシの黄色の粒と白色の粒の割合がこんなにきれいに3:1になってびっくりしました。
もし、この遺伝の法則が成り立たないものがあるなら、それは成り立つものと何が違うか実験してみ
たい。
4
まとめ
生徒の中には、遺伝の法則は理解できているが、実感として感じられていないものも多い。今回の実
験を取り入れることで、感想にもあるように、生徒はより身近に遺伝の法則を感じることができる。ま
た、遺伝の学習を通して、生徒の中には「劣性の遺伝子はなくなっていくのではないか」
「なぜ、常に
3:1になるのか」といった疑問をもつものがいる。そこで、発展として「劣性の形質がなくなってい
くことはないのか?」という課題で様々な組み合わせから優性と劣性の形質がどのような割合で現れる
かをレポートにまとめさせた。生徒の中には、教科書で取り扱われている孫の世代(純系から3代目)
からさらに発展させ、純系から4代目、5代目の遺伝子の組み合わせを考え、それらの結果をもとにな
ぜ劣性がなくならないのかについて根拠を持って説明を行うものもいた。このように、実験からさらに
疑問が生まれ、それを次の探究へとつなげることも重要である。
参考文献:Web ページ Mr.Taka 中学理科の授業記録
「実習 11 ピーターコーンの種子」
http://www.ons.ne.jp/~taka1997/education/2008/3-grade/index/
(2013 年 8 月)