埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) テーマ C06: 運動方程式の解き方-1/6 運動方程式の解き方 1.ニュートンの運動の第 2 法則 ニュートンの運動の第 2 法則 (the second law of motion)より,質量 m の物体に外力 F が作 用するとき,物体には加速度 a が生じ,物体は加速度運動をすることになります.F が物 体の速度を加速させる方向に作用すれば,a の符号は正 a 0 となり,減速させる方向に 作用すれば,a の符号は負 a 0 になります.これを式で表わすと,次のようになります. ma F (1) 2.自由落下する物体の運動方程式 自由落下する物体には,外力 F として重力 mg が作用します.自由落下する物体の運動 を考える場合,図 1 のように,高さの座標 y を鉛直下向きに正とする方が落下距離を表す うえで便利です.この場合,外力 F は y を増加させる方向に作用するため,正の値となり, 運動の第 2 法則は F mg (2) と書くことができます. y y0 y m v0 自然落下 v 図1 自由落下の座標の向き 加速度 a は,落下距離 y を時間 t で 2 階微分したものなので,次式で表されます. d2y dt 2 (2)式と(3)式を(1)式に代入すると a (3) d2y mg dt 2 よって,両辺を m で割ると m d2y (4) g dt 2 となり,この式を運動方程式と呼んでいます.落下距離 y を時間 t で微分したものは落下 速度 v になります. v dy dt 落下速度 v を時間 t で微分したものが加速度なので, (5) 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 運動方程式の解き方-2/6 d 2 y d dy dv dt 2 dt dt dt となるため,運動方程式は dv g dt (6) と書くことができます.変数を分離して両辺を積分すると,次のように速度と時間の関係 式を得ることができます. dv gdt dv g dt よって,積分結果は v gt c (7) c は積分定数で,初期条件から決定できます.たとえば,時刻 t=0 で v v0 とすると,(7)式 に代入して v0 g 0 c c v0 よって,落下速度は v gt v0 (8) と決定できます.つぎに, v dy gt v0 dt より dy gt v0 dt dy gt v dt 0 y 1 2 gt v0t d 2 よって,積分結果は y 1 2 gt v0 t d 2 (9) d は積分定数で,初期条件から決定できます.時刻 t=0 で y y0 とすると,(9)式に代入して y0 1 g 0 2 v0 0 d d y 0 2 よって,落下距離は y 1 2 gt v0t y0 2 (10) 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 運動方程式の解き方-3/6 となります. 例題 1.初速度 v0 0 ,初期位置 y0 0 としたときの自由落下の式を求めよ. 解答.落下速度と落下距離は次の式で表されます.これらは自由落下の式として高校物理 で学習した式です. v gt y 1 2 gt 2 例題 2.初速度 0 で自由落下した場合,10 秒後の落下距離はいくらか? 解答 y 1 2 1 gt 9.81 10 2 490 .5 491 m 2 2 3.投げ上げる物体の運動方程式 物体を投げ上げる場合,図 2 のように,高さの座標 y を上向きに正とする方が到達点を 表すうえで便利です.この場合,外力 F は y を減少(落下)させる方向に作用するため, 負の値となり,運動の第 2 法則は F mg (11) と書くことができます. v y 投げ上げ v0 y y0 m 図2 投げ上げの座標の向き d2y mg dt 2 より,運動方程式は m d2y g dt 2 (12) となります.これを初期条件として時刻 t=0 で y y0 および v v0 として解くと v gt v0 (13) 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 運動方程式の解き方-4/6 1 y gt 2 v0t y0 2 (14) が得られます.速度の向きは,上方向が正になります.自由落下の場合の式とは正反対に なるので,初速度をあたるときに注意しなければなりません. 例題 3.初速度 10.0m/s で,初期位置 y0 0 から真上に投げ上げたとき,最高到達点の高さ と所要時間を求めよ. 解答.真上に投げ上げるので,初速度は v0 10.0 m/s となります.したがって,速度と距離 は次の式で表されます. v gt 10 .0 1 y gt 2 10 .0t 2 最高到達点に達したとき,速度は 0 となるので 10.0 10.0 0 gt 10.0 t 1.0194 1.02 s g 9.81 したがって,到達点の高さは 1 y 9.81 1.02 2 10 .0 1.02 5.0968 5.10 m 2 例題 4.初速度 10.0m/s で,地面から物体を真上に投げ上げたとき,物体が再び地面に到達 するのは何秒後か? 解答.真上に投げ上げるので,初速度は v0 10.0 m/s となります.したがって,距離は次の 式で表されます. 1 y gt 2 10 .0t 2 再び初期位置に戻ったとき, y 0 とおくことができるので,代入すると 1 1 0 gt 2 10 .0t t gt 10 .0 2 2 これを解くと, t0 もしくは 1 gt 10 .0 0 2 より t 20 .0 20 .0 2.0387 2.04 s g 9.81 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 運動方程式の解き方-5/6 と答えが 2 つ得られますが, t 0 は無意味なので,答えは 2.04s 後となります. 4.斜めに投げ上げる物体の運動方程式 斜めに投げ上げる場合,水平方向と鉛直方向の運動に分けて考え,それぞれの運動方程 式を解き,水平方向の座標 x と鉛直方向の座標 y を独立して求める必要があります. y v u x 水平方向に関しては,等速度運動と仮定すると, u u0 (15) x u0 t (16) 鉛直方向に関しては,前節の投げ上げの式と同じため,運動方程式は d2y g dt 2 (17) となり,初期条件を時刻 t=0 で y y0 および v v0 とすると,速度と y 座標は次の式で与え られます. v gt v0 (18) 1 y gt 2 v0t y0 2 (19) 例題 5.高さ 1.00m の位置から初速 100m/s で地面から 30.0°の方向に物体を投げた場合, 物体が最初に地面に到達するのは何秒後で,飛行距離は何 m か? 解答 初速度の y 成分は v0 100 sin 30.0 50.0 m/s (19)式より 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 運動方程式の解き方-6/6 1 0 9.81t 2 50 .0t 1.00 2 2 9.81t 100 t 2.00 0 t 10 .0 100 2 4 9.81 2.00 10 .0 100 .39 5.6264 2 9.81 2 9.81 or 4.6070 t 0 なので,時間は t 4.6070 4.61 s 初速度の x 成分は u0 100 cos 30.0 86.6 m/s (16)式より,到達距離は x 86.6 4.61 399 .226 399 m となります. http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/HowToSolveEquationOfMotion.pdf Copyright ⓒ 2011, 2013 小西克享, All Rights Reserved. 個人的な学習の目的以外での使用,転載,配布等はできません. お願い: 本資料は,埼玉工業大学在学生の学習を支援することを目的として公開しています.本資料 の内容に関する本学在学生以外からのご質問・ご要望にはお応えできません.
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