Ⅲ.一般原則 A.第2条(差別の禁止) (a)憲法又は児童関連の国内法

Ⅲ.一般原則
A.第2条(差別の禁止)
(a)憲法又は児童関連の国内法における差別の禁止の原則・条約に定める権利が差別な
く保障されるためにとられた措置
89.第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答14.参照。
具体的には、以下の例が挙げられる。
(1)憲法の精神に則り、児童福祉法が、その第1条第2項において、「すべて児童は、
ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定している。
(2)児童福祉法をはじめ、児童手当法、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法等の支
給に関する法律等には国籍要件はなく、国籍によって取り扱いに差異は設けられていな
い。
(3)児童買春・児童ポルノ法は、国籍等を問わず、すべての18歳未満の児童に買春行
為等をした者を処罰している。
(4)第1回政府報告パラグラフ48で述べたとおり、国による児童に対するあらゆる形
態の差別が禁じられており、少年鑑別所、少年院、行刑施設のいずれにおいても、収容
された少年を公平に処遇することを基本理念とし、差別的な取扱いがなされることのな
いよう配慮がなされている。
(5)2000年12年12月には、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が公
布、施行され、基本理念として、国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、
学校、地域、家庭、職域その他様々な場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権
尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供
、効果的な手法の採用等を旨として行わなければならないとされている。文部科学省で
は、関係機関等に対し、本法律の公布・施行にあわせ、学校教育・社会教育における人
権教育を進めるに当たって、本法律の基本理念に則って一層適切に行われるよう、周知
を行ったところである。
(b)差別があった場合に対抗できる措置
90.第1回政府報告51から53参照。
(c)最も不利な立場におかれている児童への差別防止
91.第1回報告書審査児童の権利委員会からの質問に対する回答15.参照。
92.障害者基本法第3条において、すべての障害者の個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳
にふさわしい処遇を保障される権利を有し、あらゆる分野の活動に参加する機会を与え
ることが定められている。
93.法務省の人権擁護機関では、児童の人権を含め、人権を尊重することの重要性を広く
国民一般に認識させ、人権尊重思想の普及高揚を図るため、講演会・座談会の開催、テ
レビ・ラジオの放送、パンフレットの配布など積極的な啓発活動を展開しており、これ
らの活動は児童の人権問題発生の予防に寄与している。また、児童を含めたアイヌの人
々、障害者、外国人に対する偏見・差別をなくすため、日常的な啓発活動のほか、人権
週間(毎年12月10日の「人権デー」を最終日とする1週間を「人権週間」と名付け、
大規模な啓発活動を行っている)、人権擁護委員の日(6月1日)などに街頭啓発、講演
会などを通じて全国的な啓発活動を実施している。
また、児童を含めた嫡出でない子、アイヌの人々及び障害者に対する具体的な差別事象
が発生した場合には、人権侵犯事件として、侵害の排除に向けて適切な措置を採るなど
して対処している。
94.1951年の難民の地位に関する条約(難民条約)及び1967年の難民の地位に関
する議定書(同議定書)で定義された難民(条約難民)及び条約難民認定申請者につき、
国籍、氏名等人定事項については、難民認定を行う法務省においては、本人のプライバ
シー保護及び安全の確保の観点から、一切明らかにしておらず、条約難民又は右申請者
(の児童)という事実をもって、直ちに社会的差別を受けるものではない。
なお、我が国は1981年の難民条約及び1982年の同議定書への加入にあたって、
右条約の誠実な履行を確保するために国内法の整備を行い、国民年金法、児童手当法、
児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の支給に関する法律から、国籍要件を撤廃して
おり、原則として自国民あるいは一般外国人と同じように右受給資格を得られることと
なっている。
(d)女児への差別根絶のための措置、第4回世界女性会議のフォローアップとしてとら
れた措置
95.我が国は、第4回世界女性会議において採択された「北京行動綱領」の要請を受け、
1996年12月に「男女共同参画2000年プラン」を策定し、「北京行動綱領」で提
示された新たな国際規範・基準を国内に取り入れ、諸施策を進めてきた。
1999年6月に、男女の個人としての尊厳が重んじられること、男女が性別による差
別的な取扱を受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることな
ど、男女の人権の尊重を基本理念の1つとする「男女共同参画社会基本法」を制定した。
2000年12月には、同法に基づき男女共同参画基本計画を策定し、政府は施策を総
合的かつ計画的に推進している。
同計画の中では、意識の改革等の目標も掲げている。男女共同参画を実現するに当たっ
ての大きな障害の一つは、人々の意識の中に長い時間をかけて形作られてきた性別に基
づく固定的な役割分担意識であり、このような意識は、時代と共に変わりつつあるもの
の、国民個々の生活には未だに根強く残っていることから、国民すべてに男女平等及び
人権尊重の意識を深く根づかせるため、多様な媒体を通じた広報・啓発活動を積極的に
展開している。
96.第4回世界女性会議のフォローアップ会合である国連特別総会「女性2000年会議
」に我が国より岩男壽美子男女共同参画審議会会長を首席代表とする、NGO(岩男代表
を含め4名)、顧問議員団(5名)、外務省、人事院、総理府、文部省、厚生省、農水省
、
労働省等約40名からなる代表団が出席した。
また、我が国は、JUSCANZ(日、米、加、豪、NZ、ノールウェー、アイスラン
ド、スイス、リヒテンシュタイン、韓国、サン・マリノ)の一員として協議に参加し、性
別データの整備、教育の充実、農山漁村における女性の地位の向上等の事項が成果文書
に盛り込まれるよう努力した。
(e)被差別集団に関するデータ収集
97.パラグラフ29.参照。
(f)社会・民族的緊張、レイシズム及び外国人蔑視に資するような児童に対する態度や
偏見を防止・根絶
98.パラグラフ91.から94.参照。
(g)児童が差別や処罰をうけることからの保護
99.パラグラフ89.参照。
また、外国人児童に対する人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、関係機関と連
携しつつ、被害児童の救済を図り、あるいは関係者に対して人権尊重の思想を啓発する
などして、問題の解決に向けて積極的に取り組んでいる。
(h)第2条の実施の際の主要な問題点・その問題の解決のための計画・差別防止におけ
る進捗状況の評価
100.障害者基本法第7条の2に基づき障害者基本計画を定め、実施状況を適宜点検し、
計画の着実な実施を図っているところである。
101.法務省の人権擁護機関が取り扱った外国人に対する人権侵犯事件の中には、「公衆浴
場における入浴拒否」事案、「外国人を中傷する噂の流布」の事案などがある。また、永
住の外国人に対する差別言辞事案や差別落書き事案等の発生が見られる。
法務省の人権擁護機関は、国内に在留する外国人に関する相談に対応するため、特に英
語や中国語等の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を東京、大阪、名古屋、広
島、福岡、高松の各法務局と神戸及び松山の各地方法務局に設置している。ちなみに外
国人のための相談所における相談内容は、労働条件、婚姻・離婚、夫婦関係、帰化・国
籍取得、損害賠償、刑事関係など多岐にわたっている。
法務省の人権擁護機関は、人権侵犯事件の調査・処理や人権相談を通じて関係者に人権
尊重の思想を啓発するなどして、問題の解決に向けて積極的に取り組んでいる。
法務省に設置された人権擁護推進審議会から、2001年5月に人権救済制度の在り方
についての答申がなされた。
答申では、政府からの独立性を有する人権委員会(仮称)を中心とする新たな人権救済
制度を創設し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病,性的指向等を理由
とする社会的生活における差別的な取扱いを含む一定の人権侵害に関して、より実効性
の高い調査手続と救済手法を整備した積極的救済を図るべきであると提言している。
政府としては、同審議会の答申を最大限尊重し、提言された新たな人権救済制度の確立
に向けて、全力を尽くしていく考えである。
B.第3条(児童の最善の利益)
(a)「児童の最善の利益」の原則の憲法及び関連国内法、規則への反映
102.児童福祉法第1条は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、育成され
るよう努めなければならない」と規定されているほか、同法第2条、3条及び母子保健法
第3条等の法律等において各々児童の最善の利益を考慮することが前提とされている。
また、1997年の児童福祉法の改正においては、下記のような改正が行われ、行政府
が児童の最善の利益を一層考慮することとなった。
(1)児童相談所が施設入所などの措置を行う場合の専門性と客観性を高めるため、児童
本人の意向を聴くことを明確化した。
(2)児童若しくはその保護者の意向が児童相談所の措置方針と一致しないとき、又は児
童相談所が必要と認めるときには、医療や法律などの専門家からなる審議会の意見を聴
くこととした。
(3)保育に関する情報の提供に基づき、保護者が希望する保育所を選択できる仕組みに
改めた。
さらに、児童福祉法においては、児童の最善の利益を確保するため、都道府県は家庭裁
判所の承認を得て、児童を児童養護施設等へ入所させることができること、児童相談所
長は、家庭裁判所に対し、親権者の親権を喪失させるよう請求できることが規定されて
いる。
103.児童買春・児童ポルノ法1条は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰すると
ともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を
定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする」と規定するとともに、
同法は、捜査及び公判における配慮、児童に係る記事等の掲載等の禁止、心身に有害な
影響を受けた児童の保護の規定等を設けている。
(b)「児童の最善の利益」の原則への考慮
(児童福祉施設)
104.児童福祉施設の設備及び運営についての基準については、厚生労働大臣が定める「児
童福祉施設最低基準」(省令)により規定されており、児童福祉法に基づき、児童福祉施
設の設置者はこれを遵守しなければならないこととなっている。
児童福祉施設最低基準では、第1章総則で、児童福祉施設の構造設備の一般原則、非常
災害、職員の一般的要件、衛生管理、給食、入所した者及び職員の健康診断等を規定す
るとともに、第2章から第11章までのそれぞれの児童福祉施設ごとに設備の基準、職
員の数、資格等につき詳細に規定している。
更に、都道府県知事は、最低基準を維持するため児童福祉施設の長に対して必要な報告
を求め、定期的に施設に立ち入り、設備・運営等を検査でき、必要な改善を勧告し命令
することができ、また、事業の停止を命令することができることとなっている。
(新エンゼルプラン)
105.パラグラフ34.参照。
(家事審判)
106.家事審判法1条及び家事審判規則1条は、各々児童の最善の利益を考慮することが
前提とされている。家事審判は、これらの規定にしたがって行われており、児童の最善
の利益が考慮されているといえる。
(少年審判)
107.少年法1条及び少年審判規則1条は、各々児童の最善の利益を考慮することが前提
とされている。少年審判は、これらの規定にしたがって行われており、児童の最善の利
益が考慮されているといえる。
(矯正施設)
108.上記のとおり、少年法第1条において児童の最善の利益を考慮することが前提とさ
れている。矯正施設について詳細に述べれば以下のとおりである。
少年鑑別所においては、少年を明るく静かな環境に置いて少年が安んじて審判を受けら
れるようにすることとされており(少年鑑別所処遇規則第2条)、少年院においては、少
年の心身の発達程度を考慮して、明るい環境のもとに、心身ともに健全な少年の育成を
期して処遇を行わなければならないとされており(少年院処遇規則第1条)、また、行刑
施設では少年の心身の発達程度に応じて教育、職業訓練等を実施し、健全な少年の育成
を図ることに配慮しており、それぞれの施設に収容された少年の処遇の目的に照らして
少年にとって何を行うことが最も利益となるかを考慮しながら処遇を行っている。
(養子縁組)
109.我が国においては、未成年者を養子とする養子縁組としては、民法に基づく普通養
子縁組及び特別養子縁組とがある。
普通養子縁組は、養親と養子との間に嫡出子としての法定親子関係を生ぜしめる行為で
あるが、養子となるべき者が未成年者であるときは、原則として家庭裁判所の許可が縁
組成立の要件とされ、養子となるべき未成年者が満15歳以上であれば,未成年者自身
が当事者となり、満15歳未満であるときは、法定代理人が当事者となるが、家庭裁判
所は、職権で、未成年者の意見を聴取することができる。この許可に当たっては、家庭
裁判所は、養子縁組が未成年者の福祉に合致するかどうかという基準により判断してい
る。
また、特別養子縁組は、養親と養子との合意ではなく、養親となる者の請求に基づき、
家庭裁判所の審判により成立することとされており、子となる者は原則として請求時に
6歳未満の者に限り、特別養子縁組によって、養子と実方の父母及びその血族との親族
関係が終了する。このことから、特別養子縁組の成立には、実父母による養子となる者
の監護が著しく困難又は不適当であること等の事情があって、子の利益のために特に必
要があると認められることを要し、また、父母が意思を表示することができない場合又
は父母による虐待等、養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合を除いては、
実父母の同意が要件とされる。
以上のように、養子縁組に当たっては、養子となるべき未成年者の利益に最大限の考慮
が払われている。
(政策の立案・決定に際しての調査)
110.国内の各種政策の立案・決定に当たり、児童の育成という施策分野の特質ゆえに、
無作為抽出対照実験のような調査を行うことはできない場合が多いが、児童及び親や教
師などの関係者の意識・生活の動向等について常に調査研究が行われ、また、人口、世
帯、社会基盤など児童に密接にかかわる統計や指標も整備されていることから、これら
が各種政策の立案・決定に積極的に活用されているものと理解している。
なお、各種施策の立案・決定に当たっては、多くの場合、事前に審議会や研究会などに
おいて、行政官以外の様々な分野の専門家が、豊富な統計・調査データ等を基に多角的
な検討を行っており、こうした過程を通じて、施策対象となる児童の最善の利益が予め
考慮されていると考える。
(c)児童の保護・養護の確保
111.第1回政府報告書パラグラフ55参照。
112.児童福祉法に基づき、保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を
発見した者は、児童相談所等へ通告しなければならないこととなっている。児童相談所
では、児童福祉法に基づき、保護者たる親権者又は後見人が著しくその監護を怠るなど
、保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害する場合には、当該児童を乳児院や
児童養護施設等に入所させる等の措置をとることができる。なお、施設への入所措置等
が保護者の意に反する場合は、家庭裁判所の承認を得た上でかかる措置をとることがで
きることとされている。
113.児童相談所への児童虐待に係る相談件数が急増するなど、児童虐待に関する問題が
深刻化していることから、児童虐待の防止等に関する法律が2000年11月に施行さ
れた。この法律に基づき児童虐待の早期発見・早期対応及び被虐待児童の保護等を促進
する施策を一層推進している。
(d)第3条の3に基づきとられた措置
114.第1回政府報告書パラグラフ56参照。
パラグラフ104.参照。
(e)「児童の最善の利益」の原則に係わる専門家に対する研修
115.パラグラフ44.から52.参照。
C.第6条(生命、生存及び発達に対する権利)
(児童の生命に対する権利を保障し、児童の生存及び発達を確保するための環境の創出)
116.児童福祉法第1条第2項は「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護され
なければならない」と規定している。さらに、母子保健法第3条が「乳児及び幼児は、心
身ともに健全な人として成長してゆくために、その健康が保持され、かつ、増進されな
ければならない」と規定しており、これに基づき周産期・小児医療体制の整備等により、
小児の健康保持を増進しているところでる。
(児童の自殺防止及びそのモニター)
117.少年期は、悩んだり、不安を抱いたりするものであり、学校の成績や友人関係等の
問題について、誰にも相談できないまま解決策を見出せず、自ら命を絶ってしまう場合
がある。警察では、街頭補導活動や少年相談活動等あらゆる警察活動を通じて、自殺企
図少年の早期発見を行うとともに、当該少年を発見した際には少年相談専門職員や少年
補導職員等による専門的なカウンセリングを実施するとともに、保護者等と連携した支
援活動等を行い、少年の自殺防止に努めている。
また、都道府県警察の少年サポートセンター等に、ヤングテレホンコーナー等の相談窓
口を設け、非行問題、学校問題、家庭問題のほか、自殺に関する少年相談を常時受け付
けるなどの対応をしている。
118.児童が自ら生命を絶つということは、理由の如何を問わず決してあってはならない
ことであり、文部科学省では、心の教育を重視し、各学校において、学校教育活動を通
じ、お互いに思いやり、尊重し、生命や人権を大切にする態度を育成し、生きることの
すばらしさや喜び等について児童に適切に指導するよう、教育委員会を通して指導の徹
底に努めているところである。
また、悩みを持った児童が、いつでも気軽に相談できる体制を充実させるため、文部科
学省では、スクールカウンセラーの配置の拡充や、「心の教室相談員」の配置など学校に
おける相談体制の充実を図るほか、児童のための24時間電話相談の配置を推進してい
るところであり、各都道府県においても、教育センター等に児童を対象とした相談機関
を設置するなど、地域における相談体制の充実に努めている。
(児童の生存及び特定の年齢層が特に強く晒されている危険(性感染症、ストリート・バ
イオレンス)の防止)
119.増加する犯罪被害から児童を守るために、警察庁では、1999年12月、「女性・
子どもを守る施策実施要綱」を制定し、児童を犯罪から守るための対策を強化していると
ころである。
具体的には、
(1)通学路・公園等を重点としたパトロール等警戒活動の強化
(2)防犯ブザー等防犯機器の無料貸出、防犯講習会の実施等
(3)児童が被害者となる事案の発生状況に係る情報(地域安全情報)の提供
(4)児童の緊急避難先となる「子ども110番の家」などの自主的防犯活動への支援
(5)児童が行方不明となった場合に捜索、発見活動を行う「子ども発見ネットワーク」
の構築
等に取り組んでいる。
また、防犯灯、防犯ベル等の整備、死角となる草むらの除去等により犯罪被害に遭いに
くい環境整備を図る「安全・安心まちづくり」についても市町村等と連携して実施してお
り、この一環として、2000年度予算において、パイロット事業として、街頭緊急通
報システム(いわゆるスーパー防犯灯)を全国10箇所に設置することとしている。
(学校における性感染症防止対策)
120.1998年に改訂した学習指導要領において、中学校の保健体育科で、新たにエイ
ズ及び性感染症を取り上げることを明記するなど、性感染症等の予防に関する指導内容
を充実した。また、小・中・高等学校における児童生徒用教材の作成・配布、推進地域
における実践研究、教職員対象の研修会の開催などの施策を実施しており、さらに、2
001年度に、新たに教師用参考資料の作成・配布を行うこととしている。
D.第12条(児童の意見の尊重)
(a)児童の意見の尊重への考慮
121.第1回政府報告パラグラフ61・62参照。
(b)立法その他の措置
(学校)
122.学校において児童生徒に対し、懲戒を行う際には、当該児童生徒等から事情や意見
をよく聞く機会を持つなど児童生徒等の個々の状況に十分留意し、その措置が単なる制
裁にとどまることなく真に教育的効果を持つものとなるよう配慮することについて、教
育委員会等に指導してきたところである。一方、他の児童生徒の教育を受ける権利を保
障するための制度である出席停止は、児童生徒の権利・義務に直接関わる処分であるこ
とから、その適用については適正な手続を踏むことが重要であり、従来から通知におい
て当該児童生徒や保護者の弁明を聴く機会をもつことが望ましいこと、文書の交付によ
り行うことが適当であることなど指導してきたところである。
また、文部科学省では、第151回通常国会において、学校教育法を改正し、出席停止
制度について、要件及び手続の明確化並びに出席停止期間中の児童生徒の学習の学習支
援等について規定したところである。
(矯正施設)
123.少年鑑別所では、資質の鑑別の際に、少年の鑑別の妥当性確保の観点から、必要に
応じ、得られた資料を少年に説明し、少年に自由に意見を述べさせ、これをもとに面接
を進めている。少年院では、少年から処遇又は一身上の事情に関する申立をきくため、
院長は随時在院者に面接するよう努めなければならないとされており(少年院処遇規則第
4条)、行刑施設でもその施設の措置や一身上の事情について少年が申立を行いたいと願
い出た場合は面接を実施することとされている(監獄法施行規則第9条)。また、これら
施設の長が行うもののほか、矯正施設においては、職員が少年との日々の接触の中で日
常生活や処遇の内容について少年の意見を聴取することが実務上行われている。
(大学)
124.パラグラフ55.参照。
(施設入所等)
125.児童福祉法(第26条)及びこれに基づく政令により、児童の意見が尊重されるよう
、以下のような措置が採られている。
(1)都道府県知事(又はその権限の委任を受けた児童相談所)が施設入所等を決定する
に当たり、児童若しくはその保護者の意向が当該措置と一致しないときは、法律・医学
等の専門家が参加する都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならないこと。
(2)施設入所等に際し、児童の意向を尊重するべきことを明文の規定に置いたこと。
さらに、施設生活においては、
(1)2000年6月より施行された社会福祉法に基づき、利用者からの苦情解決に係る
社会福祉事業の経営者の努力義務を規定するとともに、都道府県が社会福祉協議会に運
営適正化委員会を設置し、利用者からの苦情の相談に応じ、苦情の解決の斡旋等を行う
仕組みを設けることとし、
(2)児童福祉施設については、児童福祉施設最低基準を改正し、2000年9月から、
施設は入所児童等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるため
の窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない等とした。
(児童相談所における措置等)
126.児童相談所が児童に対して児童福祉法に基づく措置を採る場合や解除する場合には
、児童及び保護者の意向を確認することを児童福祉法第27条第8項で定めている。
(c)司法上及び行政上の手続において児童の意見を聴取される機会等
(司法上の手続)
127.司法上の手続に関して、我が国では、一般的に、自らが裁判の当事者又は利害関係
人となる場合には、自己の意見を述べる機会が保障されている。
しかし、人事訴訟、身分関係の発生、変更、消滅に関する家事審判及び家事調停の各手
続においては、事理弁識能力を欠く未成年者は法定代理人を通じて手続上の行為をしな
ければならず、また、民事訴訟(人事訴訟を除く。)、行政訴訟及び民事調停の各手続に
おいては、未成年者(20歳未満)は法定代理人を通じて手続上の行為をしなければなら
ない。
少年審判手続・刑事訴訟手続に関して、
(1)被告人等としての意見表明
少年審判については、審判期日には、少年及び保護者を呼び出さなければならないとさ
れているとともに(少年審判規則第25条第2項)、審判期日を付添人に通知しなければ
ならないこととされたことから(同規則第28条第5項)、少年、保護者及び付添人は、
審判の席において、裁判長の許可を得て、意見を述べることができるほか(同規則第30
条)、裁判長は、審判の席には、少年の親族、教員その他相当と認める者の在席を許すこ
とができるとされ(同規則第29条)、審判は懇切を旨として和やかに行うこととされて
いる(少年法第22条第1項)ことから、少年、保護者等が自由な雰囲気の中で意見を陳
述することができるような配慮がなされている。また、少年等に意見を陳述する機会が
与えられていることを前提として、少年等の陳述要旨の調書への記載に関する規定(同規
則第12条、第33条第2項第4号、第5号)等が置かれており、児童の意見聴取の機会
は与えられている。なお、我が国では、少年が罪を犯した場合には、少年法等により、
すべての事件について、保護手続を行う家庭裁判所により保護処分が適当か否か検討さ
れるが、犯行時14歳以上の少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件を犯した
者で、刑事処分に付するのが相当と判断された場合には、刑事手続に移行する。そして
、刑事手続においても、刑事訴訟法に基づき、冒頭手続で被告人及び弁護人に対し、被
告事件について陳述する機会を与えなければならないとされ、証拠調べが終わった後、
被告人及び弁護人は、意見を陳述することができるとされている。また、被告人が任意
に供述する場合には、裁判長はいつでも必要とする事項につき被告人の供述を求めるこ
とができるとされている。
(2)被害者としての意見陳述
少年審判においては、2000年に少年法の一部が改正され、家庭裁判所は、犯罪少年
又は触法少年に係る事件の被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合に
おけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹から、被害に関する心情その他の事件
に関する意見の陳述の申出があるときは、自らこれを聴取し、又は家庭裁判所調査官に
命じてこれを聴取させるものとすることとされた(少年法第9条の2)。
また、刑事訴訟手続においては、2000年に刑事訴訟法の一部が改正され、裁判所は
、被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者,直系の親
族又は兄弟姉妹)から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出が
あるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとすることとされた(刑事訴
訟法第292条の2)。
(矯正施設に収容された少年)
128.矯正施設に収容された少年について、その少年に影響を与える手続を行う際にその
少年の意見を聴取する機会の付与については、第1回政府報告パラグラフ71に述べた
とおりであるが、更に懲戒及び懲罰の際の手続について詳細に述べれば、以下のとおり
である。
少年院において懲戒を行う場合及び行刑施設において懲罰を行う場合には、少年院では
、少年院法第15条に基づいて定めた院内規則に基づき、行刑施設では法務大臣訓令に
基づいて、あらかじめ、本人に規律違反行為の容疑事実を告げた上、事情聴取の過程で
少年から事情を聞き,懲戒又は懲罰について審査する場に少年を出席させて弁解の機会
を与え、少年が出席しない場合にはその者の弁解を記載した書面を提出させることとし
ており、弁解の機会を十分に与えている。
(d)児童が意思決定過程に参加する権利を有する機関及び機会についての情報
129.近年、国民に広く関わりを持つ政策立案に当たっては、例えば各種審議会等が調査
審議の過程で広く国民の意見の公募を行ったり、内閣総理大臣あてに電子メール、ファ
ックス等による意見表明の機会が常時用意されるなど、国民から直接意見を聴取する機
会を設けることがしばしば行われており、児童も国民の一部として、こうした意見表明
の機会に積極的に参加することが期待されている。
児童に直接関係のある政策分野においても、児童は重要な利害関係者の一部であり、そ
うした政策の立案には児童も参加させるべきであるとの認識は、政策立案に携わる公務
員の間で浸透しつつある。
130.学習指導要領では、小・中・高等学校段階において、学級活動・ホームルーム活動
(学級を単位として、学級の生活の充実と向上等に資する活動として、児童生徒が話し
合い、協力して学級内の組織作りや仕事の分担処理等の活動を行うもの)や児童会活動・
生徒会活動(学校の全児童生徒をもって組織する児童会・生徒会において、学校生活の充
実と向上に資する活動を行うもの)を実施することを定めており、各学校において児童生
徒が意思決定に参加している。
(e)児童関連の専門家に対する児童の意思表明を促すための研修
131.パラグラフ44.から52.参照。
(f)世論、協議及び陳情の評価から得られた児童の意見の法律、政治、司法決定への反
映
132.児童福祉施設最低基準(省令)において、児童福祉施設は、処遇に関する入所してい
る者又はその保護者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付ける
窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないと規定されている。
133.ストックホルムで開催された第1回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議にお
いて、日本からの児童ポルノの発信や、日本人による海外での児童買春が批判されたこ
となど、国内外からの児童買春、児童ポルノを規制すべきであるとの声の高まりを受け
、児童の権利に関する条約の精神を踏まえ、より一層児童の保護を図るために児童買春
・児童ポルノ法が制定された。
Ⅳ.市民的権利及び自由(第7条、8条、13∼17条及び37条(a))
A.氏名及び国籍(第7条)
(出生の登録)
134.第1回政府報告パラグラフ72、73参照。
(出生届)
135.出生届は、出生の日から14日以内にしなければならず(戸籍法第49条)、第1次
的に父又は母に対して届出義務を課し、これらの者が届出をすることができない場合に
は、2次的に、①同居者、②出産に立ち会った医師、助産婦又はその他の者の順に届出
義務を課している。さらにこれらの届出義務者が届出をすることができない場合には、
その者以外の法定代理人も届出をすることができる(同法第52条)。これらの出生届に
よって、日本国民たる子は戸籍に記載されることになる。
また、届出をすべき者が届出をしない場合には市町村長は当該者に催告をし、その後に
おいても届出しない場合又はできない場合には,市町村長が職権で戸籍に記載する(同法
第44条)。
さらに、正当な理由がなくこの期間内に届出をしない届出義務者は、3万円以下の過料
に処せられることとなっている(同法第120条)。
なお、外国人であっても、日本国内で出生した場合には戸籍法が適用され、上記届出義
務が生じる。
(児童の出生登録に関わる職員への適切な訓練)
136.出生登録をすることによって初めて、様々な社会保障制度の恩恵に浴することがで
きることとなるなど、その必要性については、国民には、既に十分周知されていると思
われるが、母子手帳を始め、様々な媒体を通して、さらに周知を図っているところであ
る。戸籍法第3条には、戸籍事務を管掌する市町村長に対する法務局・地方法務局の長
の関与が規定されており、当該関与の一形態として、市町村の戸籍事務担当者に対する
研修や現地指導等を行っている。
(出生登録に含まれる児童の身元に係る構成要素)
137.出生登録に含まれる児童の身元に係る構成要素として、嫡出子の場合では、氏名・
生年月日・父母の氏名・父母との続柄・出生地・出生届出人等がある。
非嫡出子の場合では、上記のうち、父に関する情報は記録されないが、父からの任意の
認知届出又は子からの裁判認知確定による認知届出がされた場合には、父の情報を記録
する。
(非嫡出子の地位)
138.非嫡出子も、法律上の親との間で、扶養の権利及び義務並びに第一順位の相続権な
ど、民法が親子関係について定める権利及び義務を有している。
もっとも、我が国の民法等の中には、嫡出子と非嫡出子との間で、次のような差異が設
けられている。
(1)嫡出子は、原則として、懐胎時における母の夫の子と推定されるのに対し、非嫡出
子はそのような推定はなく、法律上の父は認知により認めれる(民法第772条、第77
9条)。
(2)嫡出子は、父母の共通の氏を称するのに対し、非嫡出子は、母の氏を称する(同法
第790条)。
(3)相続人中に嫡出子と非嫡出子がある場合には、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の
1である(同法第900条第4号但書)。
(4)出生届には、嫡出子、非嫡出子の別が記載され、戸籍には、嫡出子は「長男」「長
女」等と記載されるのに対し、非嫡出子は「男」「女」と記載される(戸籍法第13条、
第49条第2項)。
以上の差異は、次の理由によるものであり、不合理な差別ではない。
(1)父を確定する方法の差異は、嫡出子は、母の婚姻中に懐胎したものであって、母の
夫の子である蓋然性が高いのに対し、非嫡出子は、特定の男性の子である蓋然性が高い
ということができないという差異によるものであって、これは、子の父母が婚姻関係に
あったかどうかにより必然的に生ずるものである。
(2)子が称する氏の差異も、我が国では、夫婦は共通の氏を称するものとされているこ
とから、嫡出子である子の父母は共通の氏を称しているのに対し、非嫡出子の父母は共
通の氏を称していないという差異によるものであって、これも、子の父母が婚姻関係に
あるかどうかにより必然的に生ずるものである。
(3)相続分についての差異は、法律上の婚姻により成立する夫婦とその間の子からなる
家族を保護する目的で設けられたものであり、不合理な差別ではない。
(4)戸籍上の取り扱いの差異は、戸籍が私法上の身分関係を正確に登録・公証すること
を目的としているものであることから、法律的な事実に基づく区別をそのまま記載して
いるものであって、やはり不合理な差別ではない。
(児童の親を知る権利及び親により養育される権利)
139.第1回政府報告パラグラフ76から79参照。
我が国の戸籍には、氏名、出生の年月日、実父母の氏名、実父母との続柄等が記載され
ているので(戸籍法第13条)、戸籍の謄抄本によってこれを確認することが可能である
ところ、戸籍の謄抄本の交付請求について、特に年齢による制限を設けていない。
(児童の国籍を取得する権利の確保等)
140.我が国の国籍法は、出生による日本国籍の取得について、原則として父母両系血統
主義を採用し、出生の時に父又は母が日本国民であるときは日本国民になると規定して
いる(国籍法第2条第1号)。しかし、この主義を貫くと、我が国で出生した子が無国籍
となる場合も生じうることから、これを防止するため、補充的に出生地主義を採り、子
が日本で生まれた場合で、出生のとき父母がともに知れないとき、又は父母が国籍を有
しないときは子は日本国民になるとされている(国籍法第2条第3号)。この措置によっ
ても、限られた範囲で、なお、無国籍を生ずる場合があり得るが、国籍法第8条第4号
により、日本で生まれ、かつ、出生の時から3年以上日本に住所を有するものについて
は、帰化許可条件のうち、能力条件及び生計条件を免除するとともに、住所条件も緩和
し、帰化によって日本国籍を取得することができるものとしている(第1回政府報告パラ
グラフ75参照。)。
また、子が婚姻中の子であるか否かにかかわらず、出生時に日本国民との間に法律上の
親子関係があれば、子は出生によって日本国籍を取得する(同第2条第2号)。
亡命申請者及び難民の子の日本国籍の取得については、親の所属する国の国籍法が血統
主義を採る場合であると、出生地主義を採る場合であるとにかかわらず、日本で生まれ
、かつ、出生の時から国籍を有しない者で、その時から引き続き3年以上日本に住所を
有するものについては、国籍法第8条第4号により帰化許可条件のうち、能力条件及び
生計条件を免除するとともに、住所条件も緩和された条件で帰化によって日本国籍を取
得することが可能であり、日本国籍の取得が極めて容易になっている。
B.身元関係事項の保持(第8条)
(身元関係事項保持等)
141.戸籍の謄抄本の交付請求をする者は、本人と一定の親族関係がある場合を除き、請
求事由を明らかとしなければならず、当該請求事由が不当な目的によることが明らかな
ときには、市町村長は交付を拒むことができる(戸籍法第10条第2項、第3項)。また
、除籍謄本等は、本人と一定の身分関係のある者からの請求や弁護士等の有資格者が職
務上請求する場合、又は裁判所その他の官公署に提出する場合若しくは正当な利害関係
がある場合に限って交付請求ができることとされており(同法第12条の2、戸籍法施行
規則第11条の2、第11条の3)、第三者が不法に児童の身元関係事項を取得すること
を防ぐようになっている。
また、不法に戸籍謄抄本等の交付を受けた者には、5万円以下の過料の制裁が科せられ
ていることとなっている(同法第121条の2)。
C.表現の自由(第13条)
(表現の自由の権利の確保)
142.第1回政府報告パラグラフ83参照。
(校則)
143.校則については、児童生徒の実態、保護者の考え方等を踏まえて絶えず見直しを行
い、教育的に見て適切なものとすることが大切であり、文部科学省としてもこのような
観点に立ち、教育委員会等に対し指導してきたところである。
D.思想、良心及び宗教の自由(第14条)
(思想、良心及び宗教の自由の権利行使・児童の発達しつつある能力への考慮)
144.第1回政府報告パラグラフ100参照。
思想、良心及び宗教の自由については、児童生徒の発達段階に応じて適切に指導するこ
ととしている。具体的には、小学校第6学年においては、日本国憲法は国民の権利及び
義務などの国家や国民生活の基本を定めていること、中学校においては、個人の尊厳と
人権の尊重の意義などについて学習することとしている。高等学校においては、生徒の
興味・関心等に応じてそれらの学習をさらに深めることとしている。
(公立学校における宗教の授業との関係)
145.我が国では、教育基本法第9条第1項において、宗教に関する寛容の態度及び宗教
の社会生活における地位は、教育上これを尊重することとしているが、同時に、同条第
2項において、国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育そ
の他宗教的活動をしてはならないと規定しており、児童生徒の宗教の自由を確保してい
る。また、私立学校については、宗教の授業を行うことができることとしている。
E.結社及び平和的集会の自由(第15条)
(第15条の2に適合する当該権利行使の制限)
146.破壊活動防止法においては、内乱、外患、政治目的の殺人等の暴力主義的破壊活動
を行った団体については、一定の要件の下に団体活動の制限処分又は解散指定の処分を
課されることと規定されているが,これは、児童の権利条約第15条2の「法律で定める
制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、…又は他の者の権利及び自由の
保護のため民主的社会において必要な…もの」に当たる。
F.私生活の保護(第16条)
(私生活の保護)
147.第1回政府報告書パラグラフ102、103参照。
(名誉及び信用の保護)
148.第1回政府報告書パラグラフ105参照。
(少年被疑者の任意同行)
149.少年被疑者を任意同行する場合は、
(1)警察施設へ呼び出すよりも、警察職員が自ら家庭、学校、職場等へ出向く又は警察
施設以外の施設に呼び出すことが適切であると認められる場合においては、その方法に
よること。
(2)面接時刻はできる限り、少年の授業中若しくは就業中の時間又は夜間遅い時刻を避
けるとともに、面接時間は、長過ぎないようにすること。
など、少年警察活動要綱に呼び出しあるいは面接上の留意すべき事項等に関して規定さ
れており、これらに基づいて少年の特性に配意した呼び出し等を行っている。
(矯正施設)
150.第1回政府報告の審査後に児童の権利に関する委員会で採択された最終見解では各
種施設における児童の私生活の保護について勧告されているが(パラグラフ36)、少年
鑑別所では、入所当初は原則として単独室に収容することとし、その後、集団生活が可
能と判断された場合は共同室に収容することとなるが、その場合でも、性格や年齢、共
犯関係等の身上関係を総合的に斟酌して居室を指定するほか、個人用の物品の保管箱、
衣類・寝具、生活用品、学習用品等が給貸与され、規律の維持又は衛生上問題がないも
のについては、自弁物品の使用を認めるなど(少年鑑別所処遇規則第24条、第24条の
2)、少年の人権に配慮し、その尊厳及び価値を尊重した取扱いをすることにより、少年
の私生活の保護に努めている。
少年院に入院した少年は、入院当初は個室に収容され、落ち着いた環境の中で心身の状
況等の身上に関する調査を行い、最も効果的な教育プログラムが作成される。その後、
通常集団室での処遇に移行するが、その場合も個人用の物品の保管箱、衣類・寝具、生
活用品、学習用品等が給貸与され、必要に応じて自弁の物品の使用もできるなど(少年院
処遇規則第37条、第38条)、少年の私生活を十分に尊重した環境を用意している。
また、行刑施設に収容された少年については、少年法上、成人の被収容者と分離する必
要があるため、単独室に収容することとしているほか、少年のみで集団室に収容する場
合にも、その者の犯罪内容、性格、年齢等を考慮して同一室に収容する者を決定するな
ど、各処遇場面において配意しており、拘禁の目的に反したり、施設内の規律及び秩序
の維持に支障がない限り、少年の私生活について十分に尊重しているところである。
G.適切な情報の利用(第17条)
(学校図書館の充実)
151.学校には、学校図書館が設置されており、司書教諭の養成・配置、学校図書館の情
報化、図書館ボランティアの推進など、学校図書館の充実に努めている。
(児童文化財の推薦)
152.第1回政府報告パラグラフ87参照。
1999年度における推薦件数は、出版物112点、音響・映像等48点、舞台芸術2
8点であった。なお、2001年から社会保障審議会福祉文化分科会が設置され、そこ
で児童文化財の推薦業務が行われることになる。
(国際協力)
153.第1回政府報告パラグラフ92、93参照。
(資料)ユネスコ・アジア文化センターへの助成
年
度
助
成
額
(千円)
1997
392,201
1998
353,259
1999
326,498
2000
295,022
2001
269,809
(資料)文化無償協力における教育文化放送分野での協力実績
年
度
件
数
協力実績(予算ベース)(万円)
1996
5
23,520
1997
9
40,090
1998
2
1999
3
4,230
10,970
(有害情報からの少年の保護)
154.性や暴力等に関する過激な情報を内容とする雑誌、ビデオ、コンピュータ・ソフト
等が一般書店やコンビニエンスストア等で販売されており、少年でも簡単に入手できる
ことから、関係機関・団体や地域住民等と協力して、関係業界による自主的措置の促進
を図るとともに、個別の業者に対する指導、取締りに努めている。
また、最近では、インターネット等コンピュータ・ネットワークを通じて、少年でも有
害な情報に容易にアクセスできる状況が出現していることから、児童ポルノ、わいせつ
図画等の禁制情報に対する取締りの強化、プロバイダーの自主的措置の促進等、ネット
ワーク上の少年に有害な情報に関する総合的な対策を推進している。1999年4月か
らインターネット等を利用して客にポルノ画像を見せる営業である映像送信型性風俗特
殊営業を風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の規制対象に加えたところ
であり、その適切な運用に努めている。
また、特定性風俗物品販売等営業者が、わいせつ物頒布又は児童ポルノ頒布等の罪を犯
した場合の、風俗営業等の規制及び業務の適性化等に関する法律による営業規制を定め
たところである。
(放送分野における有害情報からの保護)
155.放送分野においては、総務省(当時郵政省、以下同じ)が、1998年5月から青少
年と放送の在り方に関する施策の方向性を検討するため「青少年と放送に関する調査研究
会」を開催。同年12月取りまとめられた報告書では、①青少年向け放送番組の充実、②
メディア・リテラシーの向上、③第3者機関の活用、④青少年と放送に関する調査の推
進、⑤放送時間帯の配慮、⑥番組に関する情報提供の充実、が提言された。
これら提言の具体化に向け、1999年1月、総務省は、放送事業者と共同で、「青少
年と放送に関する専門家会合」を開催。1999年6月に発表された同会合取りまとめで
は、青少年と放送の問題を取り扱う第3者機関の新設(NHK、民放連)、青少年の視聴
に配慮する時間帯(17時∼21時)の設定(民放連)等、各機関による自主的な取組の
方針が示されている。
これらの取組のうち、第3者機関については、2000年4月、「青少年と放送に関す
る委員会」が設立され、その他の施策についても、放送事業者により順次取り組まれてい
る。
また、総務省では、1999年11月から2000年6月まで、「放送分野における青
少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会」を開催し、メディア・リテラシーの向
上に向けた施策の方向性について検討を行った。本研究会の提言を受け、小、中学生を
主たる対象としたメディア・リテラシー教材等の開発にも取り組んでいる。
(インターネットにおける違法・有害な情報からの保護)
156.総務省(当時郵政省)では、2000年5月から「インターネット上の情報流 通の適
正確保に関する研究会」(座長:堀部政男中央大学教授)を開催し、同年 12月に取り
まとめられた報告書では、インターネットサービスプロバイダ(ISP)等の責任の明確
化や発信者情報の開示の手続等について法制度を含め、ISP等の自主規制の支援のた
めに必要な方策についての検討を進めていくととも に、受信者側での対応として受信す
ることを望まない情報へのアクセスを遮断する技術であるラベリング・フィルタリング
の普及促進に向けた取組の支援をするなどの提言がなされた。この提言を受け、ISP
等の責任の明確化及び発信者情報の開示のための法制度の整備について更に検討を進め
るとともに、ラベリング・フィルタリングの普及促進に資する活動を行う体制の整備を
図る予定である。
また、総務省の認可法人である通信・放送機構では、総務省からの出資を受け、199
8年1月からコンテンツのレイティングを支援する技術等、レイティング・フィルタリ
ング技術の高度化のための研究開発を2001年3月まで実施するとともに、1999
年度からISP等の違法・有害情報対策を支援するシステムやインターネットによる迷
惑通信を抑制するシステムなど情報通信の不適正利用対策に資するシステムの研究開発
を行っている。
(有害情報の自主規制等)
157.政府は、社会環境の変化に応じて、関係業界に対し、有害な情報の提供の自粛・自
制の要請等を行い、関係業界の協力を得て、有害な情報からの児童の保護を推進してい
る。
(資料)関係業界の自主規制の状況
関係業界
マスコミ全般
内
容
等
○新聞、放送、出版、映画、広告塔及びレコードの各業界により
マスコミ倫理懇談会全国協議会が設置され、マスコミと青少年と
の関わり方に関する研究協議会等を実施。
出
版
○出版倫理協議会が、有害出版物の扱いについて独自の自主規制
措置を実施(同協議会に加入している4団体もそれぞれの倫理綱領
を定めている。)。
○出版問題懇話会(成人娯楽雑誌等を刊行する31社により組織)
が、青少年の保護育成を勘案した自主規制の編集倫理綱領を定め
活動。
○露骨な性描写を内容とした少年少女向けコミック誌、単行本等
の出版物について、販売店における区分けを可能にするための帯
紙措置の実施。
○青年コミックマークや青年向け雑誌マークの表示。
○成人コーナーの設置。
○対面販売の実施。
映画・ビデオ・
○映画倫理活動の自主管理機関として映倫管理委員会が設置され
コンピューター
、その中の審査部門が、「映画倫理規定」に基づき映画の審査を実
ソフト等
施(青少年に影響を及ぼすと認めれらるものについて、R−18(
18歳未満入場禁止)、R−15(15歳未満入場禁止)、PG−
12(12歳未満は親又は保護者の同伴が望ましい)に指定する等
)。
○ビデオソフト倫理活動のため、日本ビデオ倫理協会(業界の自主
審査機関としての組織)において、「映像ソフト倫理規定」を設け
、独自の審査を実施(成人指定(18歳未満映示、貸出、販売禁止
)、R指定(15歳未満映示、貸出、販売禁止)、一般(規制無し
)の3区分に指定する等)。
○その他、
・一般向けのオリジナルビデオや劇場未公開のビデオ関係では、
映像倫理協議会(映倫管理委員会と日本ビデオ倫理協会で構成)
・パーソナルコンピュータソフト関係では、コンピュータソフト
ウェア倫理機構
・ゲームセンター設置ゲーム機及び同ソフト関係では、日本アミ
ューズメントマシン工業協会
・家庭用ゲームソフト関係では、コンピュータエンタテイメント
ソフトウェア協会
が、それぞれ倫理綱領等を定め活動
放
送
○日本放送協会及び(社)日本民間放送連盟は、視聴者から寄せら
れる青少年に対する放送の在り方や放送番組への意見を受け付け
る第三者機関「放送と青少年に関する委員会」を設置し、自主的な
対応を実施。また、メディア・リテラシーの向上に資する番組の
制作・放送を実施。
○(社)日本民間放送連盟では、「放送時間帯に応じ、児童及び青
少年の視聴に十分、配慮する」との放送基準を新設、少なくとも週
3時間「青少年に見てもらいたい番組」を決定・発表するなど、放
送と青少年問題への対応策を取り決め公表。
○CSデジタル放送においては、(社)衛星放送協会が倫理委員会
を設け「成人向けエンターテイメント放送基準」を制定し放送倫理
の高揚に努めるほか、毎年「青少年と放送」をテーマに研究会・講
演会を開催。
○CS放送成人番組倫理委員会(成人向け番組を提供するCS放送
事業者により組織)において、「放送番組倫理規定」及び「番組審
査基準」を制定し自主審査を実施するほか、専門的な部会を設け倫
理基準の維持、高揚に努めている。
広
告
○各関係団体が、自主規制基準をそれぞれ設けているほか、広告
主、新聞、放送、出版、広告制作、広告業の各社が共同して日本
広告審査機構(JARO)を設立し、青少年問題の観点を含めた広
告に対する苦情の処理等を実施。
興
行
○全国興行環境衛生同業組合連合会(映画、演劇、演芸の各業種で
結成)が、一般向け映画とPG−12・R−15・R−18制限付
映画の併映禁止、制限付映画の上映の際における組合の定める注
意書の掲示及び制限該当者の立ち入りの禁止等を内容とした自主
規制遵守事項を制定。
○映画産業団体連合会(映画関係団体によって組織)が、制限付映
画への制限該当者の観覧及び18歳未満の者の深夜興行館への立
ち入りを禁止すること等を内容とした「深夜興行等に関する申合せ
」を制定。
カラオケボックス ○日本カラオケスタジオ協会が、青少年の利用時間の制限、未成
年の飲酒・喫煙防止、薬物の乱用防止、内鍵の不設置、外部から
室内が見渡せる窓の取付け等を内容とした自主規制基準の制定や
全国各地で管理者等を集め講習会を実施。
インターネット
○(社)テレコムサービス協会が、「インターネット接続サービス
等に係る事業者の対応に関するガイドライン」を公表。
○電子ネットワーク協議会が、情報の受信者側でアクセスできる
情報を主体的に選択できる仕組み(フィルタリングシステム)を教
育現場等に配布。
(青少年を取り巻く有害情報対策のためのPTAなどへの支援等)
158. 文部科学省では、メディア上の性・暴力表現をはじめとする青少年を取り巻く有害
情報対策のため、1998年4月以降、関係省庁及び関係団体に対し、自主規制の徹底
の要請を行うとともに、PTAが実施するテレビ番組の全国モニタリング調査に対して
支援するなどしてきたところであり、2001年度には、NPO等の活動への効果的支
援を図るため、テレビ番組に関する海外のNPOの先進的取組事例についての調査研究
を行う予定である。
また、政府は、有害な情報等からの児童の保護のために実施される、地域の団体、住民
等による地域活動の促進を図っている。
(青少年の保護育成に関する条例)
159.都道府県では、青少年に有害な図書、ビデオ、映画、広告物等を規制するために、
それぞれの地域の実情に基づき、青少年の保護育成に関する条例を制定しており、19
99年度においては、条例による有害指定件数は、23,685件であった。政府とし
ては、これらの条例の効果的な運用を図っている。
(資料)青少年の保護育成に関する条例による有害指定件数の推移
年
1995
1996
1997
1998
総数
65,451
75,840
52,464
28,797
23,685
映画
2,666
2,888
1,191
1,192
雑誌
20,474
17,908
10,953
8,764
7,953
広告
0
21
18
41
6
42,311
55,070
38,605
18,801
14,534
2,841
1999
物
ビデオ
等
*個別指定方式による件数
H.拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱
い若しくは刑罰を受けない権利(第37条(a))
(児童への拷問等)
160.第1回政府報告書パラグラフ107から110参照。
(矯正施設における体罰)
161.第1回政府報告の審査後に児童の権利に関する委員会で採択された最終見解は各種
施設における体罰の禁止について勧告されているが(パラグラフ45)矯正施設に収容さ
れた少年が拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑
罰を受けない権利が保障されていることは、第1回政府報告パラグラフ107から11
0で述べたとおりである。
(児童福祉施設における体罰)
162.児童福祉施設の体罰は、入所児童に対する重大な権利侵害であり、決してあっては
ならないものである。
このため、厚生労働省では、これまで、
(1)1998年2月に児童福祉施設最低基準を改正し、施設長が懲戒に係る権限を乱用
することを禁止する規定を明記し、その徹底を図るとともに、
(2)2000年6月に成立した社会福祉法により、利用者からの苦情解決に係る社会福
祉事業の経営者の努力義務を規定するとともに、都道府県が社会福祉協議会に運営適正
化委員会を設置し、利用者からの苦情の相談に応じ、苦情の解決の斡旋等を行う仕組み
を設けることとし、
(3)児童福祉施設については、児童福祉施設最低基準を改正し、2000年9月から、
施設は入所児童等からの苦情に迅速化かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるた
めの窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない等とした。
また、
(4)入所児童に対して体罰などの児童の権利を侵害する行為を行った施設に対しては、
施設運営の改善について、児童福祉法に基づく改善勧告などを行い、再発防止の徹底に
向けた指導を行っている。
(学校における体罰)
163.学校における体罰については、学校教育法第11条において厳に禁止されており、
研修、会議等のあらゆる機会を通じ、教育関係者に対しその趣旨の徹底を図っている。
なお、国レベルの研修を一元的、総合的に実施する独立行政法人教員研修センターにお
いては、各都道府県市において中心的役割を果たす教員を対象として実施される研修に
おいて教育関係法規に関する講座が開設されており、このなかで児童・生徒に対する懲
戒・体罰に関する内容が扱われている。会議においては、毎年行われる生徒指導担当者
の会議で、生徒指導教員等に対し、その趣旨の周知を図っているところである。
また、我が国においては、学校において、教育上必要があると認められるときには、児
童生徒に対して懲戒を加えることができるものとされているが、学校において児童生徒
に対し懲戒を行う際には、当該児童生徒等から事情や意見をよく聞く機会を持つなど児
童生徒の個々の状況に十分留意し、その措置が単なる制裁にとどまることなく真に教育
的効果を持つものとなるよう配慮することについて、繰り返し、教育委員会等に指導し
てきたところである。
(裁判例)
164.児童が拷問等の犠牲となったと認定された裁判例はない。