競技用 EV カーにおける駆動系の見直し -1 モータによる 2 系統の減速機構-

競技用 EV カーにおける駆動系の見直し
-1 モータによる 2 系統の減速機構長野県工科短期大学校
制御技術科
13A204
大塚 優聖
1. はじめに
制御技術科では例年「Ene-1 GP SUZUKA」に出場し
ている.この競技は,単三型充電式乾電池 40 本を電源と
する自作電気自動車に乗り,一周のタイムで競う「ONE
LAP タイムアタック」を三回行い、その合計タイムで競
う.さらに今年度は,同じ電気自動車の競技会である,
「Ene-1 GP MOTEGI」に初出場した.こちらは「ONE
LAP タイムアタック」と,90 分間の周回数で競う「90
図 1 鈴鹿用の駆動系
分ロングディスタンス」という二つの競技を行う.
これらの競技で記録を伸ばすためには,車両を軽量化
し,余分なエネルギー消費を減らす必要がある.
本研究では,エネルギーの消費量を減らすため,車両
を大会規定重量である 35kg に近づけることを目的とし,
モータ軸
特に重量の多い駆動系の見直しを行った.
2.研究内容
車両に搭載されている部品の中で特に重いものがモー
駆動輪用スプロケット
タである.これまで鈴鹿用の車両には,競技コースの登
り勾配に対応するため,登坂用と高速用の二つのモータ
図 2 試作したモータ正逆転による駆動伝達部分
を搭載していた,しかし二つ搭載していることにより,
その分重くなってしまう.この駆動系を図 1 に示す.
初出場のもてぎの競技コースは勾配が小さいため,一
つのモータで十分と考え,モータ一つの駆動系を製作し
正転逆転はトグルスイッチにより切り替え,モータ正転
時が高速用,逆転時が登坂用となるように減速比を求め
た.
た.その結果,車両全体で 2.28kg 軽量化させることがで
製作にあたり計算したところ,車輪側のスプロケット
きた.ただし,レースにおいてはギア比を高速寄りにし
の歯数が 100 を超え,その分直径も大きくなる.同時に
すぎたためか,速度を上げようとすると,すぐにブレー
チェーンも長く,重くなる.そこでチェーンのサイズを
カーが落ちてしまった.
今まで使っていた 35 から 25 に変更した.このチェーン
今回,もてぎ用の改良をふまえ鈴鹿用も一つのモータ
は 35 よりピッチが小さく軽いため,チェーンラインが
だけで登坂用,高速用を両立できる駆動系を考えた.方
二本に増えても以前より軽くすることができる.なお,
法としてはモータの正転,逆転を利用するものである.
使用するモータはもてぎのレースで使ったマクソン製の
車両の進行方向は一方向であるため,これまでモータの
RE50(減速比 4.3:1)である.試作したモータ正逆転
逆転側は用いていなかった.そこで,チェーンラインを
による駆動伝達部分を図 2 に示す.
一列追加し,モータ正転時にはモータの軸に直接取り付
3.まとめ
けているスプロケットのチェーンラインが駆動し動力を
以前の鈴鹿用の駆動系と今回の新駆動系の質量を計
伝え,モータ逆転時は一段歯車を介したもう一方のチェ
算すると,旧駆動系が 5303g に対し新駆動系は設計上
ーンラインにより駆動する.どちらも一方が駆動してい
3422g となる.よっておよそ 1881g 車両全体の質量を軽
る際,もう一方は車輪側のスプロケットに取り付けたフ
くでき,38kg であった車両を 36.119kg にすることがで
リーホイールにより,空転する仕組みである.モータの
きる.