違法ダウンロードが犯罪に!? セーフ とアウト×の境界は?

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違法ダウンロードが犯罪に!?
─セーフ○とアウト×の境界は?
栗田祐太郎
クレド法律事務所 弁護士 http://credolaw.ne.jp/
平成 24 年の著作権法改正は、ネット上をはじめ非常に大きな注目を集
めました。改正内容は多岐にわたりますが、
話題の中心はなんといっても、
衆議院の審議で追加された“違法ダウンロードの刑事罰化”でしょう(本
年 10 月 1 日施行)
。
改正法により刑事罰化されたのは、著作権等を侵害する違法サイトか
ら、音楽・映画などの録音または録画された有償著作物等につき、私的使
用の目的をもって、それが海賊版だと知りながら自分のパソコン等にダウ
ンロードする行為です。イメージしやすい例では、市販の音楽CDのデー
タがアップされている違法サイトから、データをダウンロードして自分の
パソコンに保存する行為がこれに当たります。このような行為はこれまで
も民事上は違法とされてきましたが、改正法により 2 年以下の懲役もし
くは 200 万円以下の罰金、またはこれの併科という刑事罰が科されるこ
とになりました。
インターネットを利用するわれわれからすれば、どこまでがセーフでど
こからがアウトなのか、いろいろな疑問が湧いてくるところです。文化庁
が公開したQ&A(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/
download_qa/pdf/dl_qa_ver2.pdf)を見ると、①「有償著
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─セーフ○とアウト×の境界は?
作物」である必要から、単に無料放送された(DVD 化等さ
れていない)テレビ番組のダウンロードは含まれないとされ
ています。また、②違法にアップされた映像等を視聴するだ
けでは、通常はダウンロード(複製)を伴わないので、処罰
の対象ではないとされています。また、③ YouTube 等の動画投稿サイト
において投稿コンテンツを閲覧する場合は、閲覧の際にキャッシュが作成
されるものの、これ自体は法が許した利用行為の範囲内であるため、やは
り処罰の対象ではないとされています。
もっとも、
上記のような若干の想定ケースの扱いが公開されたとはいえ、
ネットの利用形態はさまざまであり、この行為が果たして処罰されるのか
否か、判断に迷うケースも生じてくるものと思われます。今後、違法ダウ
ンロードについての取り締まりが厳しくなったとして、万一違反して刑事
罰に問われることがあれば、勤務先における懲戒処分の対象となる可能性
も十分あるところです。他方、経営者にとっても、今回のダウンロード刑
事罰化の周知を含め、Twitter や Facebook を含めたソーシャルメディア
の利用に関するガイドラインを整備し、従業員によるネット利用が適正な
ものとなるよう配慮することが必要な時代となっています。
今回の刑事罰化は、法令の運用もまだ固まっておらず流動的といえます
が、今後も法改正や実務の動向について十分フォローしていく必要がある
でしょう。
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