教育学部 MIYAWAKI HIROMI 宮脇 博巳 教授 「インドネシアなど世界のチャシブゴケの分類学的研究」 「生物指標地衣類を使った大気汚染調査」 「佐賀県産教材植物の研究」 [キーワード] 地衣類,大気汚染調査,環境評価,教材植物,地衣成分 世界各地で収集した 16,000 点の地衣類を,教育や産業に活かす 研究紹介 ◆研究概要 ◆佐賀の植生の教材化 当研究室は地衣類の分類学を専門として,これをベースに 環境保護の問題や地元の植物に関して広く研究しています. また,世界各地で収集した 16,000 点を超える地衣類標本 より「面白い地衣成分を持つ地衣類」を薬科大学などへ提供 しています. 当研究室では, 「佐賀の子どもたちが,身の回りの自然環境 を観察する習慣をつけ,自分たちのふるさとに自信を持つた めに,身近な植物を取り上げることが重要である」という考 えのもと,郷土佐賀に生育する植物を研究し,それらの教材 化を試みています. 吉野ヶ里繁栄の時代より面々と続く在来種のカンサイタン ポポ,シロバナタンポポ,オニバス,シチメンソウ,ナンゴク アオウキクサなど,対象植物の枠を広げて研究しています. ◆地衣類を対象にした研究 地衣類とは,菌類と藻類の共生体で菌と藻の細胞から構成 されるものです.地衣類には,ウメノキゴケなど(写真 1, 2),名前に「コケ」がついているものがありますが,緑色植 物に分類される「コケ」とは異なります.当研究室では,南 極(昭和 63 年第 30 次南極地域観測隊生物医学担当夏隊 員)から熱帯雨林にいたる世界中の地衣類を採集し,「地衣 類の分類」を行い,これをベースとした環境保護に関する研 究を行ってきました.具体的には,地衣類は大気汚染や環境 の変化に影響されやすい種類が多く,最も優れた生物指標と されていることを利用して大阪府,唐津市などで環境調査を 実施しています. また,地球環境に関する研究や環境悪化を原因と考えられ る絶滅危惧植物の調査も取り組んでいます.1997 年・ 1998 年のエルニーニョ現象により,インドネシアのスマ トラ島やカリマンタン島で大規模な森林火災が起きました. 地球温暖化防止を目的とした調査に,2001 年から,日本と インドネシアの合同調査団に 7 年間加わり,東カリマンタ ン島において計 8 回,自然回復の現地調査に従事,そこで地 衣類を使った環境調査法を考案し,本論文は国際誌に掲載さ れました. ◆他学部及び他機関との共同研究 地衣類の持つ独特の有機化合物を,農学部とテロメラーゼ 阻害,抗がん剤,抗菌剤,抗ウイルス剤への活用を共同研究し ましたが,結果的には上手く行きませんでした.しかし,今後 もそのような分野への共同研究には興味があります.2013 年には神戸薬科大学と共同研究を実施しました. (特許等,固有技術) 「粒状塩及びその製塩方法」特許第 5754038 号 (実施可能な企業業種) 教育関連企業,環境アセスメント関連企業 園芸関連企業,製薬会社 等 写真 3 クロボシゴケ(Pyxine subucinerea)佐賀大学附属中学校 (左)ストロボ光(右)375nm の紫外線で黄色い蛍光を発するクロボシゴケ 写真 1 ウメノキゴケ(唐津市虹ノ松原) 写真 2 掲載情報 2016 年 11月現在 コアカミゴケ(奥日光) 社会へ 一言アピール 地衣類は世界に 18,000 種以上あるといわれています.2013 年には共同研究者 と一緒に地衣類の一種モジゴケの仲間から新規化合物を発見しました.リトマスゴ ケ(地衣類)で作られるリトマス試験紙だけでなく,地衣成分の可能性は無限です. 産学・地域連携機構より 宮脇教授は,2012 年本学附属中学校校庭のソメイヨシノにブラックライトを照射し「クロボ シゴケ」を発見しました(写真3) .県内での採取は 1889 年に多良岳で採取して以来となり, 長らく見逃されていました.蛍光を発する植物は珍しく,教材に取り上げることで,子どもた ちが理科に興味を持つきっかけになることを期待しています. 佐賀大学研究室訪問記 2016 佐賀大学 産学・地域連携機構 (佐賀県佐賀市本庄町1番地) (お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL:0952-28-8416 E-mail:[email protected]
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