《点検商法・次々販売》長編

芝居を使った啓発講座のシナリオ
《点検商法・次々販売》長編
消費者啓発劇団「アドコン座」
登場人物
梅ばあさん
販売員A
家屋診断士
販売員B(助手)
販売員C
販売員D
孫娘
テレビのアンテナを直す
屋根瓦修理(15 万円)
販売員A
販売員A
家屋診断士
販売員B
販売員C
販売員D
音楽
ナレーター
梅さん
販売員A
梅さん
販売員A
梅さん
(販売員A
販売員A
梅さん
販売員A
屋根裏耐震工事(350 万円)
床下換気扇(150 万円)
ある町の一軒家に梅ばあちゃんが一人で暮らしていました。
息子も孫も、忙しいのか、一向に遊びに来ないのぉー。
じーさんが他界してからというもの、寂しくなったものじゃ。
ごめんください。
裏の田中さんところの屋根の工事をしている業者ですが、
お宅の屋根を拝見したら、アンテナが少し傾いているみたいでした。
こないだの台風でやられたんだと思います。
もしよろしかったら、見させていただきましょうか。
えー、
ついでですから、もちろん無料です。
無料だったら見てもらおうかのぉー。
ぐるっと回って)
おばあちゃん、アンテナやっぱり傾いていました。
テレビが見れなくなると、つらいでしょう。
無料で直しておきましたからね。
ご親切に、助かりました。
いえいえ。
ただ少し気になったんですが、瓦が数枚めくれそうになっていました。
梅さん
販売員A
梅さん
(音楽)
ナレーター
販売員A
このままでは大雨が降ると雨漏りします。
その前に、直しておいた方がいいと思います。
ご家族の方に直せる人はいますか。
私は一人暮らしじゃからのー。
息子も、とんと最近ご無沙汰じゃ。
じゃー、おばあちゃん、さびしいね。
僕にもおばあちゃんがいたけど、もう亡くなってしまったんだ。
だから、梅さんを僕の本当のおばあちゃんと思っていいですか。
瓦の修理、本当なら100万円かかるんだけど、
僕のおばあちゃんだから15万円でしてあげるよ。
礼儀正しく、親切な人だね。
それくらいで済むんじったら、お願いしておこうかね。
あのドラ息子や孫より、ずーと、頼りがいがあるってもんよ。
梅さんは、その場で屋根の修理をしてもらい、その日は15万円を支払
いました。
数日後、大雨の日に同じ業者がまた梅さん宅にやってきました。
おばあちゃん、大丈夫かい。
大雨だから、おばあちゃんの事が気になって
これ、みたらし団子、おばあちゃん好きだろ。
梅さん
ああ、先日の業者さん。
この雨の中、わざわざ来てくれたんだね。
お土産まで持って。
びしょ濡れじゃないか。
風邪ひいてしまうよ。
熱いお茶でも、どうじゃ。
販売員A
いえ、仕事ですから。
先日、修理した屋根瓦見てきますね。
大雨だから、気になって。
(屋根を見に行く)
梅さん
仕事熱心じゃのー。
おーおー、大雨の中、私のために。
気の毒に。
販売員A
おばあちゃん、屋根瓦は大丈夫だったよ。
それより、屋根の上を歩いていたら少しキシミがあったので、
屋根裏が心配です。
一度、家のスペシャリストの先生に見てもらった方がいいと思うんだ。
どうだろう。
(販売員A タオルで濡れた体を拭く)
梅さん
かわいい、あんたが、そう言うのなら。
販売員A
じゃー、さっそく連絡とってみるよ。
(携帯電話をかける)
もしもし、先生、かくかくしかじかで、来ていただきたいのですが。
はいはいはーい。
おばあちゃん、ラッキーだよ。
先生、今から来てくれるって。
梅さん
そーかー。
(家屋診断士と販売員B登場)
家屋診断士
こんにちは。
販売員A
おばあちゃん、この方は修理が必要なところがすぐわかるという
家屋診断士の偉い先生だよ。
家屋診断士
そうです。
私がこの道 30 年の家屋診断士です。
この家は築 40 年ですね。
梅さん
あたってるわ。
息子が 10 歳の時に、じーさんが建てたから。
家屋診断士
では、ふむふむ、何だか嫌な虫が飛んでいるね。
( 黒子 白蟻の絵出して回る)
その上、かびくさい臭いもしているし。
(黒子 臭い、臭いの絵出して回る)
ちょっと、点検させてもらいますね。
(家屋診断士と販売員B、家を点検する)
(カメラと懐中電灯を持ち点検する)
販売員B
梅さん、大変です。
今日、点検してよかったよすね。
ほら、これ見てください。
(屋根裏と床下の写真を見せる)
家屋診断士
お宅の家をカメラで撮った写真です。
屋根裏で柱が何本か腐っています。
めくれた瓦の隙間から少しずつ雨水がしみていたみたいですね。
床下も湿っていてシロアリの巣があちこちにあります。
土台の柱がぼろぼろです。
築 20 年を超えたお宅は耐震工事をしなければ、
また大震災が起こったら家の下敷きになるかもしれません。
販売員B
今の内に工事をされておいた方がいいですよ。
いや、何もうちでしてくれと催促している訳ではないんです。
でもね、うちなら親切で丁寧な工事をします。
うちは梅さんのお宅から近いので、何かと便利です。
そーですね。屋根と床の耐震工事一式で 400 万円ぐらいになりますが、
梅さんは特別だから 350 万円にしておきます。
家屋診断士
梅さん、正直な話、このお家、お手入れをしなければ、
よくもって後 1 年です。
後悔することになりますよ。
梅さん
そんな状態なんだ。
困ったのー。
販売員A
おばあちゃんの事が心配だよ。
今度、地震が来たら危ないよ。
今、決めておいた方がいいと思うよ。
梅さん
そーか。
あんたたちが、そういうなら、やっておこうか。
(350 万円の契約書出してサイン)
えーと、350 万円はどうやって支払うのかのぉー。
販売員A
僕が車で銀行に連れて行ってあげるから、大丈夫だよ。
梅さん
じゃー丸菱銀行に送ってくれるかい。
助かるのぉー。
(音楽)
ナレーター 梅さんは床下耐震工事と屋根裏耐震工事の350万円の契約をしました。
代金は一時金で支払い、工事が終わった頃、全く別の業者がやってきまし
た。
販売員C
(販売員C,D登場 名簿を見ながら)
はっはーん。
ここは一人暮らしのばーさんか。
最近、違う業者が耐震工事したとカモリストに書かれているよ。
販売員D
うちも、ちょっくら儲けさせてもらいまひょ。
販売員C
こんちにちは。
近くを通りかかったもんだから、寄ってみたんですが。
梅さん
はいはい。その声は、あの工事の子かな。
販売員C
そうです。そうです。おばあちゃん、元気でしたか。
販売員D
どうですか。その後、何か不都合ありますか。
梅さん
目が悪いのでよく分からんけど、あんた、ちょっと太ったのか?
販売員C
まあ、まあ、ちょっとね。
梅さん
以前、大雨の時、びしょびしょになって風邪なんぞひかんかったか?
販売員C
うん。大丈夫だよ。
今日もちょっと点検してあげるね。
(二人点検をする)
販売員C
おばあちゃん、地震対策はばっちりだね。
でもね、床下換気扇をつけた方がいいよ。
建築基準法で家の中の換気が義務づけられたんだ。
床下換気扇をつければ、安心して生活できるよ。
販売員D
どうです、床下換気扇、この機会につけませんか。
床下は湿気が大敵。
今日、決めてくれたら、300 万円のところ 150 万円にしておきますよ。
ぼったくりする業者が多いですが、うちは良心的です。
梅さん
こんなに割り引きしてもろて、申し訳ないのぉー。
今回もお願いしようかね。
(150 万円の契約書出してサイン)
販売員D
うちはあの大手の○○電工と提携しているので、絶対信用できるから
安心してください。
では早速工事の手配をしますね。
明日から工事できそうです。
お支払いはどうしますか。
梅さん
前みたいに駅前の丸菱銀行に車で送ってくれれば、いいじゃないか。
販売員C
分かりました。
これ契約書の控えです。
販売員D
材料や職人の手配をしたので、キャンセルはできませんからね。
どうもありがとうございました。
(販売員C,D立ち去る)
梅さん
何だか、今回、あの子、いつもと様子がちがっていたのぉー。
おばあちゃん、おばあちゃんって優しかったのに、
今日は、忙しいから、愛想がないのかなぁ。
お父さんが建ててくれた、このお家、私の代でつぶしては、
いかん・いかん。
これでよかったんや。
(音楽)
ナレーター
梅さんは床下換気扇150万円の契約をしました。
代金はまたもや一時金で支払いました。 業者が帰って間もなく孫娘が
やってきました。
孫娘
(ロン毛で茶髪のいけいけ娘登場)(独り言)
バイク、ママが買ってくれないから、おばあちゃんにおねだりしよっ
と。
孫娘
梅さん
孫娘
梅さん
孫娘
梅さん
孫娘
梅さん
孫娘
梅さん
バイクの免許とっても、バイクがなきゃ、いやだ。
12 万円ぐらいだったら、おばあちゃん、買ってくれるよ、絶対。
だって、友達みんな乗ってるのに。
高校生は勉強一番でしょってママが言うけど、
勉強するにはバイクが必要なのよね。
おばあちゃん、どうしたの。
今、大きなトラックが止まっていたけど、なんかの工事?
まぁ、そんなところじゃー。
ところで、おばーちゃん、バイク買ってー。
友達みんな持ってるのに、私だけ無いのが、い・や・だー。
ばーちゃんは、そんなお金ないよ。
家が地震や大雨でつぶれないよう、いろいろ手をいれたからのー。
最近、あちこちでリフォーム詐欺っていうのが
マスコミで取り上げられているよ。
一人暮らしのお年寄りが狙われているんだって。
契約をすすめる時はとても親切らしいよ。
まぁ、おばあちゃんは、しっかりしているから大丈夫と思うけど。
広報誌にも、高額な契約をさせる悪質リフォーム業者が
この地域を回っているので気をつけましょうって載っていたよ。
もしかして。どないしょ。私だまされたんやろか。
今日、契約したんやろ。
契約書や見積書はもらった?
契約書はもらったけど、見積書はもらってない。
契約したら、キャンセルでけへんって業者の人言ってた。
(契約書見ながら)それはそうと、おばあちゃん、いろんな業者と契約
してるねんなぁ。
えー、何回か契約しているけど、同じ業者のはずやで。
孫娘
何言ってるの、おばあちゃん、しっかりしてやー。
困ったら消費生活センターに相談するようにと広報誌に書いてあっ
たよ。
相談してみたら。
梅さん
ほんなら あんたついていってくれるか。
孫娘
ついていったるからー バイク買って。
梅さん
それとこれとは別です。
(梅ばあさんと孫娘 立ち去る)
(音楽)
クーリング・オフの解説