直接基礎の支持力計算法 ㈱第一コンサルタンツ 右城 猛 1.支持力は受働土圧とおなじ 1.1 受働土圧とすべり線 先ず,受働土圧について説明する。受働土圧がわかっていれば支持力を理解するのが容易になるから である。 受働土圧の計算には一般にクーロンの方法が用いられている。クーロンの土圧計算法とは,図1(a) に示すようにすべり線を直線と仮定した上で,すべり角ωを種々変化させて壁面土圧 PP を計算し,PP が最小となるすべり角を探索し,その時の PP を受働土圧と見なすものである。これは,擁壁のなす仕事 量が最小となるすべり線を探索していることに他ならない。自然現象は常に仕事を最小化するように運 動する。土圧も例外でない。 すべり線を直線と仮定しているのは,計算を簡単にするための便宜的方法にすぎない。一般に,擁壁 のなす仕事量が最小となるすべり線は曲線となる。このため,図 1(b)のように運動学的にあり得るいろ いろなすべり面に対して計算し,PP の最小値を探索しなければならない。そのようにして求められた PP がより正解値に近いと言える。 すべり線を直線と見なせるのは,壁面が鉛直で,壁面の摩擦がない (δ=0) 場合に限られる。 図2は,すべり線を直線と仮定した場合と折れ線の多角形で近似した場合の解析結果である。壁面が 前方に傾斜している場合は,直線と仮定しても解析誤差は少ないが,壁面が背後に傾斜し,かつ壁面摩 擦角を有する場合は誤差が大きくなることか理解されよう。 最小値 PP Hcotω PP H δ H ω PP δ 直線すべり線 曲線すべり線 (b)すべり線を曲線と仮定 (a)すべり線を直線と仮定(クーロン) 図 1 受働土圧の計算法 1 n=10(KP=4.37) H PP PP H δ n=10(KP=13.42) δ n=1(KP=4.76) クーロン n=1(KP=72.56) クーロン (c)α= −20゚,δ=30゚ (a)α=20゚,δ=30゚ 極限平衡法による主働土圧の計算例(φ=δ=30゜) n=10(KP =5.08) H PP H n=10(KP=2.27) n=1(KP=2.27) PP n=1(KP =5.34) クーロン クーロン (d)α= −20゚,δ=0゚ (b)α=20゚,δ=0゚ 図 2 受働土圧とすべり線 1.2 壁面傾斜角が緩くなると支持力問題になる 図 3 を見ていただきたい。(a)のように壁面傾斜角がα=90゜(鉛直)の場合に PP を求める問題は受働土 圧問題であり,(c)のように壁面傾斜角がα=0゜(水平)の場合に Qu を求める問題は支持力問題である。で は,(b)の場合はいずれであろうか。受働土圧問題と支持力問題とに区別があるわけではなく,両者は全 く同じ問題なのである。 φ=30゚ c=10kN/m2 γ=20kN/m 3 α=90゚ PP(受働土圧) 1.0m 600 支持力Q u (α=0゚) Qu, PP (kN/m) (a)受働土圧問題 α 500 m 1.0 400 受働土圧PP (α=90゚) 300 (b)受働土圧?支持力? Q u(支持力) 1.0m 200 0 30 60 90 α(度) (d) 壁面の傾斜角と土圧の関係 (c) 支持力問題 図 3 支持力問題と受働土圧問題は同じ 1.3 クーロンの土圧理論で支持力が計算できる (1)受働土圧の計算法 図2で示した受働土圧はクーロンの土圧理論で計算している。まず,図 4(a)のように,極限状態で想 定されるすべり線 aedc を仮定し,すべり土塊 abcde を n 個(この例では n=3 個)の適当なブロックに分 割し,各ブロックの形状寸法を仮定する。 1 番目のブロック①において,bd を壁面と見なせば,クー ロンの土圧理論により壁面 bd の反力 Q1,S1 を決定することができる。次は,2 番目のブロック②につ いて考える。bd を地表面,be を壁面,そして Q1,S1 を地表面載荷重と見なせば,クーロンの土圧理論 2 で壁面の反力 Q2,S2 を決定することができる。順次左隣のブロックへと同様の計算を進めていけば,最 後のブロックの左側面力 Q3 と S3 が求められる。Q3 と S3 の合力が壁面 ab に作用する土圧合力である。 ただし,最後のブロックの左側面(ab 面)だけは破壊条件式をたてるときにせん断抵抗角としてδ(壁 面摩擦角,一般には 2/3φ),粘着力として cB(壁面付着力,一般には 0)を用いなければならない. すべり線を適当に仮定して求まった Q3 と S3 の合力は,真の受働土圧合力ではない。すべり線の形状 を種々変化(図 4 の場合では,c 点を左右に,d 点と e 点を上下左右に移動)させて計算し, Q3 が最も 小さくなる幾何形状を探索した時に得られる合力がの真の(正解により近い)受働土圧合力である。 この数値計算の精度は,分割数 n を多くするほど高まる。Q3 を最小化するすべり線を探索するのは, 一見複雑そうに思えるが,Microsoft Excel などの表計算ソフトに組み込まれている Solver 機能を利用す れば簡単に最適解を求めることができる。 Q0(上載荷重) b θ1 θ2 θ3 ① ③ ω1 Q1 S 1 Q2 H3 N1 S2 b T3 N1 ② Q2 S2 θ3 N3 N2 e 変化させる点 ω2 W3 S3 T3 ω3 a (a) ブロック分割 T2 S2 Q2 ③ H3 Q3(max) 固定する点 d W2 H2 a ω3 ω1 Q1 θ2 ω2 T1 W1 d 1 S1 c S1 H b N2 e ① Q1 T2 W3 S3 θ1 d W2 Q3(min) Q0 b T1 W1 ② c e (b) 各ブロックに作用する力 N3 図 4 クーロンの土圧理論を用いた受働土圧の計算法 (2)支持力の計算法 図 5 にクーロンの土圧理論を用いた支持力の計算法を示している。説明をするまでもなく受働土圧と 全く同じように支持力を計算できることが理解されよう。 B 固定する点 変化させる点 Q5(min) a Q0 b ⑤ W5 N5 S4 Q4 T5 W4 d ④ S1 S2 W1 T1 Q1 Q2 Q3 N4 ① ③ ② S3 c N1 W2 W3 T4 T2 f N3 T3 e d N2 図 5 クーロンの土圧理論による支持力の計算法 3 2.浅い帯状基礎(連続基礎)の支持力公式 帯状基礎とは,長さが無限で二次元問題として取り扱うことができる基礎である。実際の基礎は有限 であり,基礎両側面の地盤のせん断抵抗を受けるため,帯状基礎に比べて支持力は大きくなる。実用上 は,帯状基礎の支持力に割り増し係数を乗じることで側面抵抗を考慮している。 また,基礎は通常図 6(a)のように地盤に根入れされ,根入れ部分のせん断抵抗を受けるが,浅い帯状 基礎ではその影響を無視し,単に上載荷重として取り扱う。 V qd = 上載荷重 V B ⋅L q=γDf Df (γ) B B (a) 基礎形状 (b) 帯状基礎解析モデル 図 6 浅い帯状基礎 2.1 プラントルの式 B = 2r 2 2r 2 2r 2 qd a e’ π 4 π 4 e b P P π 4 r/2 d’ 2 r 2 ⋅ pV c・r r r c d P = rpV P π⋅ r c 2 図 7 プラントル型すべり線 プラントル(Prandtl,1920)は,粘性土地盤(c>0,φ=0)においては図 7 のようなすべり線が発生すると 仮定し,極限支持力度を求める式(1)を提案した。 qd = (2 + π )c ≈ 5. 14c ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 1) この式は,極限平衡法によっても簡単に誘導できる。基礎幅を B = 2r 2 ,極限荷重を qd とすると, 極限荷重が bc 面に作用する分力は P = rqd である。すべりに抵抗する力は,すべり線 cd 区間が1 / 2πrc , de 区間が c ⋅ r である。扇形の土塊 bcd に作用する力について,b 点回りのモーメントのつり合いを考え ると, 回転モーメント Mo = P × r 1 = qd r 2 2 2 1 1 粘着力による抵抗モーメント Mr = πr 2c + cr 2 = r 2 (2 + π )c 2 2 Mo=Mr とおけば式(1)となる。この解が塑性理論の正解であることは,下界法やすべり線法からも証 4 明されている。 プラントルの支持力公式は,ライスナー(Reissner,1924)によって c=0,φ>0 の砂地盤に拡張された。 さらにそれをカコー(Caquot,1934)が c>0,φ>0 の一般土に拡張した。式(2)あるいは式(5)のように拡張さ れた支持力式は,一般にプラントルの支持力公式と呼ばれている。図 8 はプラントルの支持力式に対す るすべり線である。φ >0 の場合には地盤の自重の影響を受けるが,プラントル式では重量が無視されて いる。その分,支持力は小さく与えられることに注意する必要がある。 B qd a q b π φ + 4 2 π φ − 4 2 θ π −φ 2 π φ − 4 2 e π +φ 2 r0 c d r = r0eθ tanφ 図 8 プラントルのすべり線 π φ π φ qd = c cot φ tan 2 + eπ tanφ − 1 + q tan 2 + eπ tanφ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 2) 4 2 4 2 ここで, π φ N q = tan2 + eπ tanφ , N c = N q − 1 cot φ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 3) 4 2 ( ) とおけば,式(2)は次のように表される。Nq,Nc は支持力係数と呼ばれている。 qd = c ⋅ N c + q ⋅ N q ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 4) 2.2 テルツァギー式 わが国で広く利用されている支持力公式にテルツァギー(Terzaghi ,1942) 式がある。テルツァギーは, すべり線を図 9 のように仮定し,地盤の自重を無視して得られる粘着力と根入れに対する支持力係数 Nc, Nq を導いた。また,フーチング直下のくさび面 ac,bc を剛体の壁面と見なし,この面の受働土圧を求 め,これより自重に関する支持力係数 Nγを求めた。 B qd q a φ φ c b q π φ − 4 2 π φ − 4 2 d 図 9 テルツァギーの破壊モード 5 e qd = cNc + qN q + ( N c = cotφ N q − 1 γB Nγ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 5) 2 ) 1 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 6) Nq = exp π − φ tan φ 1 − sin φ 2 式(5),式(6)は地盤が全般せん断破壊を生じるときの解である。地盤が緩く局所せん断破壊(進行性破 壊)を生じる場合は,c’=2/3c,tanφ’=2/3tanφとして求められる支持力係数 Nc’,Nq’,Nγ’を用いるべき であるとして,式(7),式(8)を提案した。 qd ' = cN c ' +qN q ' + γB Nγ ' ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 7) 2 2 cotφ (Nq '−1) 3 1 3 Nq ' = exp π − φ ' tan φ ' ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 8) 1 − sin φ ' 2 2 φ ' = tan −1 tan φ 3 Nc ' = なお,Nγ,Nγ’は受働土圧係数を含むため解析解の形では表せない。テルツァギーは,図解法で Nγ, Nγ’を求めている。 表 1 テルツァギーの支持力係数 全般せん断破壊 φ(゜) 局所せん断破壊 Nc Nq Nγ Nc' Nq' Nγ ' 0 0.0 1.0 0.0 0.0 1.0 0.0 5 7.3 1.6 0.0 4.5 1.4 0.0 10 9.6 2.7 1.2 5.3 1.9 0.0 15 12.9 4.4 2.4 6.4 2.7 1.2 20 17.7 7.4 4.6 7.9 3.9 2.0 25 25.1 12.7 9.2 9.9 5.6 3.3 30 37.2 22.5 20.0 12.7 8.3 5.4 35 57.8 41.4 44.0 16.8 12.8 9.6 40 95.7 81.3 114.0 23.2 20.5 19.1 45 172.3 173.3 320.0 34.1 35.1 27.0 テルツァギー式には次の問題点がある。 [問題1]フーチング直下のくさび面と水平面のなす角の仮定 テルツァギーは,フーチング直下のくさび面と水平面のなす角をφと仮定したが,このように仮定す ると,フーチングからの外力 qd による仕事が 0 となり,仮想仕事の原理を無視することになる。 [問題2]支持力の重ね合わせ テルツァギーは式(6)で示したように,地盤の自重を 0 と仮定して求められる粘着力およ上載荷重によ る支持力 qd1=cNc+qNq と粘着力と上載荷重を無視して求められる自重による支持力 qd2=1/2γBNγを重ね 合わせて求められるとした。しかし,図 10 に示すように地盤のせん断抵抗角が同じでも粘着力や自重 6 を無視したときのすべり線とこれらを考慮したときのすべり線は異なる。このため,式 (6)のような重ね 合わせは成り立たない。 φ = 30 ゜ ,q = 0 0 1 2 3 4 5 6 7 1 γ = 0, c = 0 γ = 0, c = 10 kN/m 2 2 γ = 20 kN/m 3 , c = 10 kN/m 2 図 10 すべり線の形状 これらの問題点についてはテルツァギーも認め,著書 SOIL MECHANICS ENGINEERING PRACTIE 2nd Edition(1967)では,式(8)が削除され,代わりに式(9)が示されている。また,支持力係数の数値表も 式(9)で計算された値に改められている。 π φ N q = tan 2 + eπ tanφ 4 2 N c = N q − 1 cot φ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 9) Nγ ≈ N q − 1 tan (1. 4φ ) ( ( ) ) Nc,Nq はライスナーとカコーによって,Nγをはマイヤホフ(Meyerhof,1963)によって提案された式であ る。 3.支持力公式の実際問題への適用 3.1 有限長基礎への適用 L 簡単のため粘性土地盤上にある長方形基礎(B×L)が一長 B 辺を軸として半円筒状にせん断破壊するものと仮定する。 粘着力を c とし,0 点に関するモーメントのつり合いを考 えると,円筒周面の粘着力による抵抗モーメントは, πB 2 Lc である。両側面の粘着力による抵抗力モーメントは, 1 B πB 2 c 1 πB 3 c 2 × B ×2 = である。したがって,全抵抗モーメ 2 2 2 ントと周面の抵抗モーメントの比αは,式(10)となる。す なわち,側面抵抗を考慮した粘着力による支持力は,二次 o πBLc πB 2 c 2 図 11 三次元支持力問題における側面効果 元問題として求められる支持力の(1+0.5B/L)倍となる。 α= π B 3c 2 = 1 + 0.5 B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 10) 2 L πB Lc πB 2 Lc + 式(10)では,すべり面を半円と仮定したが,実際は半円よりも小さい扇形になる。 7 これに対して,地盤の自重による支持力は,摩擦力成分によって発揮されるが,三次元破壊は二次元 破壊に比べて土粒子の拘束性が少なく塑性場のでる範囲が小さくなる。 テルツァギーは実際との対比結果も考慮して,式(10)の係数 0.5 の代わりに 0.3 を用いた。また,自重 による支持力の低減率βを式(11)のように考えた。α,βは基礎の形状係数と呼ばれている。押さえ荷 重によっても三次元効果による支持力の増加が期待されるが,これについては無視した。 B β = 1 − 0.2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 11) L 式(10),式(11)を考慮すると,地盤の極限支持力度は式(12)のように表される。 B B qd = 1 + 0.3 cNc + qNq + 0.5 − 0.1 γBNγ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 12) L L 正方形基礎では,B=L であるので,式(12)は次のようになる。 qd = 1.3cN c + qN q + 0. 4γBN γ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 13) 3.2 根入れ効果に対する割り増し係数 D fcotω ξB B P sin ω γD f + ξB g f g f P Df Df b ω=45-φ/2 a Df d Pq sin ω φ ω c e Pc ω c φ R d W= 1 γD f 2 cot ω 2 図 12 根入れ効果 式(5)では根入れ効果として ad 面上の土砂の重量しか考慮していないが,実際にはこれ以外に図 12 に 示すように dg 面に受働土圧 P が作用し,P の鉛直分力 Psinωが上載荷重と同様に支持力を増加させる。 gd 面に作用する受働土圧は,土塊 dfg に作用する力の極限平衡から次のように求められる。 P = Pc + Pq = Df sin ω c+ 1 2 sin(ω + φ ) γD f 2 tan ω cos ω 受働土圧の鉛直成分を ad 面上のサーチャージに換算すると, 1 D f sin (ω + φ ) sin φ ∆q = ∆qc + ∆qq = c+ γ ⋅ ξB sin ω 2 ξB tan ω cosω 2 Df 右辺の第1項は粘着力による換算サーチャージ,第2項は摩擦による換算サーチャージである。 (1)根入れ部の粘着力による支持力割り増し係数κc 換算サーチャージを考慮した粘着力による支持力 qdc を κ c cN c とおくと, qdc = κ c cN c = cN c + ∆qc N q これより, κc = 1+ Nq Df ∆qc N q ∆q tan φ ⋅ = 1+ c ⋅ =1+ ⋅ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 14) c Nc c N q − 1 cot φ ξ 1 −1/ Nq B ( ) ( 8 ) ここで, π φ N q = tan 2 + exp (π tan φ ) 4 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 15) π φ π ξ = tan + exp tan φ 4 2 2 (2) 根入れ部の摩擦による支持力割り増し係数κq 換算サーチャージを考慮した摩擦力による支持力 qdq を κ q qN q とおくと, ( ) qdq = κ q qN q = q + ∆qq N q これより, κq =1 + ∆qq q =1+ sin (ω + φ ) sin φ D f ⋅ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 16) 2ξ tan ω cosω B 地盤のせん断抵抗角φと(κc-1),(κq-1)の関係を示せば図 13 となる。φが大きくなるほど根入れ効果 は小さくなることがわかる。 なお,道路橋示方書ではφに関係なく,κ c,κq を式(17)で求めるものとしている。また,山口柏樹 はκc を式(18)で求めることを提案している。 κ c = κ q = 1 + 0. 3 κ c = 1+ 0.2 Df B Df B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 17) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 18) 0.4 (κ q, c − 1) DB = 0.3[道示] f 0.3 (κ c − 1) 係数 (κ − 1) B Df B = 0. 2[山口] Df 0.2 (κ c − 1) 0.1 B [右城] Df (κ q − 1) DB [右城] f 0.0 0 10 20 30 せん断抵抗角φ(度) 40 図 13 根入れ効果 3.3 荷重の傾斜による補正係数 ライスナーやカコーらによって求められた支持力係数は,鉛直荷重 V を対象にしたものであるが,実 際の構造物は土圧や地震などにより水平荷重 H も同時に受ける。このため,基礎に作用する荷重は tan θ=H/V だけ傾斜する。この結果,支持力係数は小さくなる。 荷重の傾斜を考慮した支持力係数は数値計算を行えば求めることができるが,解析解として定式化す ることは困難である。こうしたことから,道路橋示方書では数値計算によって求めた支持力係数をグラ フにし実用化している。 9 一方,マイヤーホフ(1965)は,鉛直荷重に対する支持力係数を補正するための経験式を次のように提 案している。ただし,i c,iq,i γはそれぞれ Nc,Nq,Nγに対する補正係数である。 2 2 θ θ ic = iq = 1 − , iγ = 1 − ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 19) 90 φ φ=35゛の場合について,マイヤーホフの式で求めた補正係数と,道路橋示方書の支持力係数から求 めた補正係数を比較すれば図 14 となる。iγに関しては両者の相違はほとんどないが,iq,i c については 荷重傾斜角が大きいとマイヤーホフの式では補正係数を過大に評価することになる。 1.2 1.2 φ=35゜ 1.0 1.0 マイヤーホフ 0.8 iγ iq = iγ = 0.6 0.4 道示 iq Nγ (θ ) N γ (0 ) ic 0.4 0.0 0.0 20 30 N c (θ ) N c (0 ) 0.6 0.2 10 ic = N q (0 ) マイヤーホフ iq =i c 0.8 0.2 0 N q (θ ) 40 道示ic φ=35゜ 0 道示i q 10 荷重の傾斜角θ(度) 20 30 40 荷重の傾斜角θ(度) (b) Nq,Ncに対する補正係数(φ=35゜の場合) (a) Nγに対する補正係数(φ=35゜の場合) 図 14 荷重の傾斜に対する補正係数 3.4 偏心荷重を受ける基礎への適用 偏心荷重のため基礎に作用する荷重が等分布とならない場合には,実際の荷重を等分布荷重に置き換 える必要がある。このことに関して,ゲルセバノフは下記の提案を行っている。 基礎に作用する実際の荷重と置き換えられた等分布荷重は,静的に等価でなければならない。つまり, 仮想的等分布荷重 p0 の合力と実際の荷重の合力が等しく,両者の合力の作用点が等しくなければならな い。もしも基礎に作用する荷重が台形状であり,荷重強度の大きい方にすべり面が発生する場合には, 図 15(a)のように,荷重強度の小さい方にすべり面が発生する場合には(b)図のように基礎の有効幅 B’を 考えて仮想的等分布荷重 p0 を算出すればよい。 B’=B-2e V p0 B’=B+2e p1 p0 p2 V p1 p2 B/2 e B/2-e B B/2-e り線 すべ e B/2 B り線 すべ (a)荷重の偏心がすべる方向と同じ (b)荷重の偏心がすべる方向と反対 図 15 基礎の有効幅 B’ 10 3.5 旧建築基準法の式 旧建築基準法では,テルツァギーが初期に提案した支持力公式が用いられていた。 ( ) qa = 1 αcN c + βγ 1BN γ + γ 2 D f N q [長期許支持力度] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 20) 3 qa = 2 1 [短期許支持力度] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 21) αcN c + βγ 1BN γ + γ 2 D f N q 3 2 表 2 形状係数 基礎底面 の形状 a ß 連続 正方形 長方形 円形 1 1.3 1.0+0.3B/L 1.3 0.5 0.4 0.5-0.1B/L 0.3 200 支持力係数 Nc Nγ Nq Nq'=Nq-2 0 5.3 0 3.0 1.0 5 5.3 0 3.4 1.4 10 5.3 0 3.9 1.9 15 6.5 1.2 4.7 2.7 20 7.9 2 5.9 3.9 支持力係数 100 φ(゜) 50 10 25 9.9 3.3 7.6 5.6 28 11.4 4.4 9.1 7.1 32 20.9 10.6 16.1 14.1 36 42.2 30.5 33.6 31.6 40以上 95.7 114 83.2 81.2 Nc Nq’=Nq -2 Nγ 1 0 10 20 30 40 せん断抵抗角φ(度) 50 図 16 旧建築基準法の支持力係数 基礎の形状効果を考慮したテルツァギーの極限支持力度は式(22)である。 qd = αcN c + βγ1 BN γ + γ 2 D f N q ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 22) この式は地表面から Df の深さの極限支持力度を表している。この位置は上載土砂によってγ2Df の圧 力を受けているので,基礎底面の荷重に対する実質的な極限支持力度は qd’=qd−γ2Df である。したが って,式(22)の両辺から,γ2Df を除せば次式が得られる。 ( ) qd − γ 2 D f = αcN c + βγ1 BN γ + γ 2 D f N q − 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 23) 長期の支持力に対する安全率を 3 とすると,許容支持力度 qa は式(24)となる。 qa − γ 2 D f = { ( )} 1 αcNc + βγ1 BN γ + γ 2 D f N q − 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 24) 3 γ2Df を右辺へ移項すると,式(25)が得られる。 11 qa = { ( )} 1 αcN c + βγ1BN γ + γ 2 D f N q + 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 25) 3 図 16 では,Nq を Nq’,Nq+2 を Nq と置き換えて表記してある。 テルツァギーは,全般せん断破壊に対する支持力係数と局所せん断破壊に対する支持力係数の2種類 を与えている。建築基準式では,φ<28゜では局所せん断破壊,φ >40゜では全般せん断破壊の支持力を 採用し,28゜<φ<40゜の間では図 17 のように両者の摺り付けを行って支持力係数を決定している。 1000.0 1000.0 1000.0 95.7 114 全般せん断破壊 10.0 全般せん断破壊 81.2 全般せん断破壊 10.0 10.0 11.4 5.3 100.0 100.0 支持力係数 Nq 支持力係数 Nγ 支持力係数 Nc 100.0 7.1 局所せん断破壊 局所せん断破壊 4.4 局所せん断破壊 1.0 1.0 1.0 0 10 20 30 40 50 せん断抵抗角φ(度) 0 10 20 30 せん断抵抗角φ(度) 40 50 0 10 20 30 40 50 せん断抵抗角φ(度) 図 17 支持力係数の算出方法 3.6 新建築基準式 平成 12 年に改正された建築基準法では,式(26),式(27)によって許容支持力度を算定するものとして いる。 ( ) qa = 1 ic αcNc + iγβγ 1BN γ + iq γ 2 D f Nq [長期許支持力度] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 26) 3 qa = 2 1 [短期許支持力度] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 27) ic αcNc + iγβγ 1BN γ + iq γ 2 D f N q 3 2 ここに,α,βは形状係数であり,表 2 と同じである。 ic , iγ , iq は荷重の傾斜角θに対する補正係数 であり,式(19)で求められる。 支持力係数を表 3 に示す。この支持力係数は,式(10)で求めることができる。道路橋示方書でもケー ソン基礎の支持力の算定にはこの支持力係数が用いられている。 12 表 3 新建築基準の支持力係数 φ( ゜) Nc Nγ Nq φ( ゜) Nc Nγ Nq 0 5.14 0.00 1.00 21 15.81 3.42 7.07 1 5.38 0.00 1.09 22 16.88 4.07 7.82 2 5.63 0.01 1.20 23 18.05 4.82 8.66 3 5.90 0.02 1.31 24 19.32 5.72 9.60 4 6.19 0.04 1.43 25 20.72 6.77 10.66 5 6.49 0.07 1.57 26 22.25 8.00 11.85 6 6.81 0.11 1.72 27 23.94 9.46 13.20 7 7.16 0.15 1.88 28 25.80 11.19 14.72 8 7.53 0.21 2.06 29 27.86 13.24 16.44 9 7.92 0.28 2.25 30 30.14 15.67 18.40 10 8.34 0.37 2.47 31 32.67 18.56 20.63 11 8.80 0.47 2.71 32 35.49 22.02 23.18 12 9.28 0.60 2.97 33 38.64 26.17 26.09 13 9.81 0.74 3.26 34 42.16 31.15 29.44 14 10.37 0.92 3.59 35 46.12 37.15 33.30 15 10.98 1.13 3.94 36 50.59 44.43 37.75 16 11.63 1.37 4.34 37 55.63 53.27 42.92 17 12.34 1.66 4.77 38 61.35 64.07 48.93 18 13.10 2.00 5.26 39 67.87 77.33 55.96 19 13.93 2.40 5.80 40 75.31 93.69 64.20 20 14.83 2.87 6.40 41 75.31 93.69 64.20 100 90 80 70 60 50 40 30 20 支持力係数 Nc 10 9 8 7 6 5 Nq 4 3 2 Nγ 1 0 10 20 30 せん断抵抗角φ(度) 図 18 新建築基準の支持力係数 13 40 50 3.7 道路橋示方書式 道路橋示方書では,荷重の偏心傾斜を考慮した次式によって極限支持力 Qu を算定するものとしてい る。 Qu = A' qd ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 28) 1 qd = ακcNc + κqNq + γ 1βB' N γ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 29) 2 ここに,qd は極限支持力度,A’は基礎の有効載荷面積,α, βは基礎の形状係数,κは支持層への根入れ効果に対する割 り増し係数,B’は基礎の有効載荷幅である。 V A' = B'⋅ L' B' = B − 2eB , L' = L − 2eL q = γ 2D f ( 30) Df ' κ = 1 + 0. 3 B' θ 根入れ層 Df D f’ 支持層 γ2 H qd γ1, φ, c eB B/2 B’=B-2eB B ここに,B は基礎幅,L は基礎長,eB は基礎幅方向の偏心量, 図 19 記号の説明 eL は基礎長手方向の偏心量,Df は基礎の根入れ深さ,Df’は支持層への根入れ深さである。 表 4 基礎の形状係数 基礎底面 の形状 a ß 帯状 正方形 長方形 円形 1.0 1.3 1.0+0.3B'/L' ≧1 1.3 1.0 0.6 1.0-0.4B'/L'≧1 0.6 B’ θ qd qh q b ω a π −φ 2 ψ π φ − 4 2 π φ − 4 2 e c d 図 20 道路橋示方書の支持力 道路橋示方書でも,テルツァギーの支持力公式のように,粘着力と上載荷重による支持力と,自重の みによる支持力を別々に求め,両者を足し合わせる方法を採用している。支持力係数 Nc と Nq は,駒田 敬一らがプラントル系の支持力公式を傾斜荷重に拡張して求めた式によって算出している。Nγは解析的 に求めることができないため,ソコロフスキーskolovesky がケッター式を差分法で解いて求めた値を採 用している。道路橋示方書の支持力係数を表 5 に示す。示方書では,利用の便宜を図るためこれがグラ フ化されている。 14 表 5 道路橋示方書式の支持力係数 荷重傾斜 θ(゜) 0 0.00 1.00 5.14 Nγ 0 Nq Nc Nγ 5 Nq Nc Nγ 10 Nq Nc Nγ 15 Nq Nc Nγ 20 Nq Nc Nγ 25 Nq Nc Nγ 30 Nq Nc Nγ 35 Nq Nc Nγ 40 Nq Nc Nγ 45 Nq Nc N γ はソコロフスキーの数値解 5 0.17 1.57 6.49 0.09 1.24 5.81 − − 5.05 − − 4.25 − − 3.43 10 0.56 2.47 8.34 0.38 2.16 7.42 0.17 1.50 6.42 − − 5.38 − − 4.35 − − 3.37 せん断抵抗角φ(゜) 15 20 25 1.40 3.16 6.92 3.94 6.40 10.70 10.98 14.83 20.71 0.99 2.31 5.02 3.44 5.56 9.17 9.67 12.56 17.86 0.62 1.51 3.42 2.84 4.65 7.65 8.30 11.02 15.06 0.25 0.89 2.16 1.70 3.64 6.13 6.93 9.14 12.38 0.32 1.19 − 2.09 4.58 − 5.60 7.35 9.90 0.38 − − − − 2.41 4.35 5.71 7.66 − − − − − − 3.24 4.24 5.70 − − 4.03 30 15.32 18.40 30.12 11.10 15.60 25.63 7.46 12.90 21.34 7.93 10.40 17.36 2.92 7.97 13.75 1.50 5.67 10.57 0.43 2.75 7.84 − − 5.56 − − 3.71 35 35.19 33.30 46.08 24.38 27.90 38.59 17.40 22.80 31.66 11.34 18.10 25.40 6.91 13.90 19.88 3.85 10.20 15.13 1.84 6.94 11.15 0.47 3.08 7.88 − − 5.29 − − 3.31 40 86.46 64.20 75.23 61.38 52.70 62.09 41.78 42.40 49.79 27.61 33.30 39.27 16.41 25.40 30.26 9.58 18.70 22.72 4.96 13.10 16.54 2.21 8.43 11.61 0.49 3.42 7.78 − − 4.91 道路橋示方書の支持力係数のうち,Nc と Nq は式(31)で求めることができる。この式は,右城が上界法 を用いて誘導したものである。式中のωは図 20 に示す主働塑性場が水平面となす角である。ωは未知 量であるので,Nq が最小となるような値を探索しなければならない。θは荷重の傾斜角である。 ( ) N c = N q − 1 cot φ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 31) cos(ω − φ ) 2ψ tanφ Nq = (1 + sin φ )e cosφ cosω (1 + tan ω tan θ ) qh qd ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 32) 3 φ ψ = π + −ω 4 2 θ = tan−1 = 15 3.8 建築基準法式と道路橋示方書式の比較 表 6 建築基準法式と道路橋示方書式の比較 比較項目 建築基準法 ( ) 時) qa = 1 icαcN c + iγ βγ 1 BN γ + i qγ 2 D f N q 3 短期(地震時) qa = 2 1 i cαcN c + iγ βγ 1 BN γ + i q γ 2 D f N q 3 2 長期(常 支持力公式 Nq Nγ 形状係数 根入れ効果 1 1 qa = ακcN c + κqN q + γ 1βB' Nγ 3 2 1 1 qa = ακcN c + κqN q + γ 1βB ' N γ 2 2 ライスナーの式 マイヤーホフの近似式で補正 カコーの式 マイヤーホフの近似式で補正 マイヤーホフの近似式 マイヤーホフの近似式で補正 ライスナーの式 駒田敬一らの式 カコーの式 駒田敬一らの式 ソコロフスキーの式 ソコロフスキーの式 β 1. 0 + 0.3B / L ≥ 1.0 0. 5 − 0. 1B / L ≥ 1. 0 κ なし 1.0 + 0.3B' / L' ≥ 1.0 1. 0 − 0.4 B' / L' ≥ 1.0 1 + 0.3D f ' / B' なし マイヤーホフの方法 B’=B-2e tanθ=0 tanθ>0 tanθ=0 tanθ>0 tanθ=0 tanθ>0 α Nc 支持力係数 道路橋示方書 荷重の偏心 4.上界法(速度場法)を用いた支持力計算法 4.1 上界法とは 上界法(速度場法,極限解析法とも言う)とは,仮想仕事の原理に基づいた塑性理論解を求める近似解 法の一つである。運動学的にあり得るすべり線について,外力(基礎に作用する荷重,上載荷重,すべり 土塊の自重)のなす仕事が,地盤破壊時にすべり線上で消費されるエネルギー(摩擦と粘着力による消費 エネルギー)に等しいと置き,外力による仕事が最小となるすべり線を探索し,そのときの基礎に作用す る荷重 qd を極限支持力度と見なすものである。 以下,基礎が平坦地盤上にある場合と斜面上にある場合の支持力算定式を示す。これは,上界法によ って右城が導いた式である。 4.2 平坦地盤における支持力 B θ qd qH q b ε a φ V0 cos(ω − φ) V0 sin (ω − φ) ω V0 ρ ψ r0 ζ η V1 V0 r1 V1 φ ϕ V1 c d V0 V1 sin ζ V sin (ω +ψ ) V cos(ω + ψ ) V1 cos ζ V 図 21 地盤自重を考慮したときの可容速度場 16 e 地盤の自重を考慮した可容速度場は図 21 で表され,極限支持力度は式(33)となる。 1 qd = cNc + qN q + γBNγ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 33) 2 ここに, ( ) Nc = cosφ sin ω 1 sin ζ 2ψ tanφ + e2ψ tanφ − 1 + e ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 34) X sin ε sin φ sinη Nq = sin ϕ cosζ 2ψ tanφ e ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 35) X sinη Nγ = sin ε sin ϕ sin ζ cosζ 3ψ tanφ sin ω sin ρ sin(ε − φ ) e − X sin ρ sinη sin ε e3ψ tanφ {sin(ω + ψ ) + 3 tan φ cos(ω + ψ )} − sin ω − 3 tan φ cos ω − 9 tan 2 φ + 1 ・・・・・・・・・・・・・ ( 36) ただし, X = sin ρ {sin (ε − φ ) + tanθ cos(ε − φ )} ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 37) sin ε ρ= π −φ , 2 ϕ= π +φ, 2 ε = π − (ω + ρ ), ζ = π − (ω + ψ ), η = π − (ζ + ϕ ) ・・・・・・・・( 38) qd が極限支持力度である条件は式(39)で表される。ωとψを変化させ,qd の最小値を探索すればそれが 求める極限支持力度となる。 ∂qd = 0, ∂ω ∂qd = 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 39) ∂ψ ただし,地表面が水平である場合には, π φ − 4 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 40) 3 φ ψ = π + −ω 4 2 ζ =η = であるので, qd をωについてのみ最小化すれば極限支持力度を決定することができる。さらに地盤の 自重が無視 (γ=0) でき,荷重の傾斜がない(θ=0)場合は, ω= ε = π φ + ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 41) 4 2 となるので,qd を最小化することなく,直接に極限支持力度が計算できる。 4.3 斜面上における支持力 基礎の前方に水平区間 S を有し,地盤面がβで傾斜している場合の可容速度場は図 22 のように表さ れる。また,このときの極限支持力度は式(42)となる。 17 B S θ qd qh b a ε ω φ V0 ρ V 0 cos(ε − φ ) ψ r0 e q V1 V0 V1 r1 c V0 sin(ε − φ ) β ζ−β ζ V1 η φ V1 φ f ϕ d g V1 cos ζ V1 sin ζ 図 22 斜面上の基礎の可容速度場 1 qd = cNc + qN q + γBNγ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 42) 2 ここに, Nc = cos φ sin ω 1 df + fg ψ tanφ + e 2ψ tanφ − 1 + e ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 43) X sin ε sin φ r0 Nq = 1 ψ tanφ e S + eg cos β cosζ + eg sin β sin ζ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 44) X ⋅ r0 Nγ = sin ε X sin ρ ( {( ) ) } 1 ψ tanφ sin ω sin ρ sin(ε − φ ) cosζ r1 + ef S sin ζ + eg ⋅ fg sinη − 2e sin ε r0 ・・・・・ ( 45) e3ψ tanφ {sin (ω + ψ ) + 3 tan φ cos(ω +ψ )} − sin ω − 3 tan φ cos ω − 9 tan 2 φ + 1 {( ) } ただし, X = sin ρ {sin (ε − φ ) + tanθ cos(ε − φ )} ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 46) sin ε ρ= π π − φ , ϕ = + φ , ε = π − (ω + ρ ), ζ = π − (ω + ψ ), η = π − (ζ + ϕ − β ) ・・・・・・・( 47) 2 2 r0 = sinε B r1 = r0eψ tanφ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 48) sin ρ ac = sin ω sin ζ r0 df = S ef = r1 + S {sin ζ tan φ − cosζ } ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 49) sin ε cosφ eg = sin ϕ sin(ζ − β ) ef fg = ef ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 50) sinη sinη qd が支持力である条件は式(51)で表される。ωとψを変化させ,qd の最小値を探索すればそれが求める 支持力となる。 ∂qd = 0, ∂ω ∂qd = 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 51) ∂ψ 18
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