2012 年 8 月配信 【第 8 号】 名銀「アジアビジネスクラブ」 アジアクラブ通信 ― CONTENTS (第 8 号) ― ○ トピックス タイのビール市場について ○ 次号のトピックス予告 ベトナムの現地情報をご紹介する予定です。 1 タイの首都バンコクの年間平均気温は約 28℃、高温多湿で年中蒸し暑く、最も暑い 3~5 月の最高気温は 40℃ を超えることもあります。そんな暑さのせいかタイではビールがよく飲まれています。今回はビールにスポットを 当て、タイのお酒の事情についてレポートします。 1. タイでのお酒についての慣習 (1) スーパー・コンビニやレストランでの酒類販売(提供)が禁止になる日がある。 ① 仏教関連の祝日: 「万仏祭(3/7)」「仏誕節(6/4)」「三宝祭(8/2)」「入安居(8/3)」 ※( )内の日付はいずれも 2012 年の場合 ② 選挙投票日当日・選挙投票日前日・不在者投票日期間 但し、その日に飲酒をしてはいけないという事ではないので、自宅やホテルの部屋にストックして ある酒類は飲んでも構いません (2) 酒類の販売時間に制限がある。 「午前 11 時~午後 2 時」、「午後 5 時~午前 0 時」までの間だけが販売店の販売許可時間 (3) ガソリンスタンドに併設されているコンビニ等には常時酒類は置いていない 写真:ガソリンスタンドに併設されたセブンイレブン 2. タイのビール市場 (1) 2010 年国別ビール『消費量』においてタイは 171.1 万kℓ(国別構成比 0.9%)で世界第 22 位。アジアで は中国(4,468.3 万kℓ・同第 1 位)、日本(581.3 万kℓ・同第 7 位)、ベトナム(244.1 万kℓ・同第 13 位)、韓 国(201.5 万kℓ・同第 17 位)に次いで第 5 位 東南アジアでは、それまで首位だったタイを 2008 年にベトナムが逆転し、以降同国がトップ 2 (2) 一方、2010 年国別ビール『生産量』においてタイは 199.8 万kℓ(国別構成比 1.1%)で世界第 18 位。ア ジアでは中国(4,483 万kℓ・同第 1 位)、日本(585 万kℓ・同第 7 位)、ベトナム(265 万kℓ・同第 13 位)に 次いで第 4 位。東南アジアでは消費量同様、それまで首位だったタイを 2009 年にベトナムが逆転 消費量 生産量 <タイ国内ビール消費量・生産量> (単位:万kℓ) 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 145.0 162.5 163.0 188.0 195.0 183.5 175.8 171.1 152.3 161.3 170.3 202.0 217.0 213.5 194.5 199.8 (3) タイのビール市場は消費量・生産量ともに 2007 年をピークに減少傾向 規制の強化に加え、2009 年にビールの税率が改正され、小売価格が 5%程度上昇 酒類の広告や販促が制限されている為、ビールメーカー各社は、国民的に人気のある欧州サッカーチ ームとスポンサー契約を結ぶことにより、間接的に広告を行っている。例えば、シンハー社は 2010 年 に英国プレイアリーグのビッグクラブである「マンチェスター・ユナイテッド FC」と契約。タイ・ビバレッジ 社も英国プレミアリーグの「エバートン FC」とのスポンサー契約に加えて、2012 年 2 月からスペインリー グの「FC バルセロナ」と「レアル・マドリード」の 2 クラブとスポンサー契約を締結し、アジア各国で両チ ームを通じたビールの広告宣伝を展開している (4) タイのビール市場は価格帯によってエコノミー(低価格帯)、ミディアム(中価格帯)、 プレミアム(高価 格帯)に分けられ、プレミアムビールの値段はエコノミービールの 1.5 倍以上 欧州や日本のビール各社はプレミアムビール価格帯ビールに参入している (5) 東南アジア諸国連合(ASEAN)域内主要国間のビールの関税は現在、ゼロ%。 タイのビールメーカーが輸出攻勢をかける一方で、輸入品も多く入ってきている 輸入ビールとしては、日本のサッポロビールの他に、デンマークのカールスバーグがベトナム工場から の輸出でタイ市場に再参入している 3. タイのビール < タイ国内で製造されている主なビール(缶330ml) 店頭販売価格 > 会社名 シン ハーコーポレーショ ン ブランド名(商品名) シンハー SINGHA シンハーライト SINGHA Light 国別ブラン ド リオ LEO アサヒスーパードライ Asahi SUPER DRY チャーンクラシック Chang CLASSIC (2012 年 7 月 8 日現在 店頭調べ) ビックC (地元大手スーパー) タイ タイ 5.0% 36 31 3.5% 27 26 タイ 日本 タイ タイ タイ タイ タイ タイ 5.0% 31 27 5.0% 40 38 6.4% 29 25 5.0% 31 27 Chang Export チャーンライト Chang Light タイ・ビバレッジ チャーンドラフト Chang Draught アーチャー ARCHA フェダーブロイ FEDERBRAU シン ガポール タイガー Tiger アジアパシフィックブリュワリー ハイネケン Heineken オランダ フィリピン サンミゲル San Miguel サンミゲル San Miguel LIGHT フィリピン サンミゲルライト チャーンエキスポート (単位:バーツ ) アルコール度数 セブン イレブン 4.2% 25 5.0% 5.4% 25 25 24 5.0% 36 31 5.0% 42 4.7% 32 5.0% 5.0% 39 33.5 36 33.5 1 バーツ=約 2.5 円 3 < タイ国内ビール販売上位10ブランド > ブランド名 1 リオ 生産会社 シンハー (単位:万kℓ) 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 68.00 77.93 82.27 87.76 85.55 86.64 2 チャーンクラシック タイ・ビバレッジ 82.20 64.55 61.62 46.55 44.91 45.10 3 シンハー 16.55 17.52 17.99 18.44 18.99 19.55 8.39 29.56 13.60 8.55 8.10 8.16 9.38 9.50 9.60 7.30 7.48 7.69 6 チャーン・ドラフト タイ・ビバレッジ 1.85 1.84 1.76 1.45 1.44 1.48 7 チアーズ アジアパシフィックブリュワリー 0.85 1.02 1.09 1.10 1.03 1.04 8 サンミゲル サンミゲル 0.15 0.44 0.72 0.83 0.92 0.97 9 タイガー アジアパシフィックブリュワリー 0.69 0.83 0.87 0.85 0.89 0.93 タイ・ビバレッジ 0.50 0.64 0.50 0.41 0.41 0.42 4 アーチャー シンハー タイ・ビバレッジ 5 ハイネケン アジアパシフィックブリュワリー 10 チャーン・ライト 写真:タイ国内で販売されているビール スーパードライは『辛口』入りの日本と同じ缶で売られている 4. 日本のビール大手各社のタイ戦略 (1) アサヒビール: 日本のビール会社として初めてタイで自社ブランド(スーパードライ)を生産。2002 年 2 月にタイのブーンロート・グループ(現:シンハーコーポレーショングループ)に 生産委託形式で生産開始。場所は当初から東北部コンケンのブーンロート・グルー プのビール工場の一つであるコンケーン・ブリュワリー社で生産。2009 年にバンコ ク北郊パトゥムタニ県のパトゥムタニ・ブリュワリーに生産移管。2011 年販売量 350 万ℓ(0.35 万kℓ)、とタイ市場全体の 1%未満ながら、2 年連続で前年比 4 割程度の 伸び率。 (2) サッポロビール: 2011 年 11 月に日本のビール会社としては初めてベトナムにビール工場を建設し東 南アジアにおいて、委託生産ではなく自社生産のビールを手掛ける唯一の日系ビ ール会社となる。国際戦略商品である「サッポロ プレミアム」を製造。タイへは樽 生や缶・瓶ビールの輸出を 2012 年 4 月から開始。 (3) キリンビール: 2009 年に 48%を出資したフィリピンのビール最大手サンミゲルビールのタイ工場 (バンコク北郊パトゥムタニ県)で年内にも「一番搾り」の生産・販売を開始する。 4 5. タイの 2 大国産ビール会社 (1) ブーンロート・ブリュワリー社(現シンハーコーポレーション社:以下シンハー社): 1933 年創業のタイ国産初のビール会社。自社ブランドに「シンハー」「リオ」「タイ」があり、「アサヒスー パードライ」の生産委託先でもある。 シンハーとはサンスクリット語で『力強さを象徴する獅子』の事であり、当社は古代神話に登場する伝 統的なタイの獅子をシンボルとする。 1994 年まではタイのビール市場の 9 割以上のシェアを持っていたが、1995 年に登場した廉価ビール 「チャーンビール」によってシェアは低下し首位陥落。 1998 年に低価格ビールの「リオ」を投入。リオは 2011 年までブランド別で 5 年連続首位。2008 年にシ ンハー社が国内シェア首位奪還し、2011 年のタイでの同社シェアは約 59%。 (2) タイ・ビバレッジ社 メコンウィスキーの製造で有名なタイのウイスキー王ジャルーン・シリワタナパクディ氏が 1995 年の規 制緩和に伴い、それまでシンハー社が独占してきたビール市場に参入。安さを武器に「チャーンビー ル」で市場を拡大、2007 年まで約 10 年間タイのビール市場で同社がシェア首位となった。 チャーンはタイ語で象を表す。自社ブランドに「チャーン」「アーチャー」「フェダーブロイ」がある。2011 年 のタイでの同社シェアは約 31%。シンハー社とタイ・ビバレッジ社の 2 社でタイ国内販売シェアの実に 9 割近くを占める。 写真:向かって左がシンハービール、右がチャーンビール 5 名古屋銀行の中国拠点 ■ 南通支店 中国江蘇省南通市経済技術開発区 通盛大道 188 号 創業外包服務中心C楼2F TEL:<86>513-8919-2280 FAX:<86>513-8919-2281 ■ 上海駐在員事務所 中国上海市延安西路 2201 号 上海国際貿易中心 1809 号室(18階) TEL:<86>21-6275-4207 FAX:<86>21-6275-9461 <ご注意> ■ 法律上、会計上の助言:本誌記載の情報は、法律上、会計上、税務上の助言を含むものではありません。 法律上、会計上、税務上の助言を必要とされる場合は、それぞれの専門家にご相談ください。 ■ 秘密保持:本誌記載の情報の貴社への開示は貴社の守秘義務を前提とするものです。当該情報について は貴社内部の利用に限定され、その内容の第三者への開示は禁止されています。 ■ 免責:本誌記載の情報は、弊行が信頼できると考える各方面から取得しておりますが、その内容の正確性、 信頼性、完全性を保証するものではありません。弊行は当該情報に起因して発生した損害については、そ の内容如何にかかわらず一切責任を負いません。 ■ 著作権:本誌記載の情報の著作権は原則として弊行に帰属します。いかなる目的であれ本誌の一部ま たは全部について無断で、いかなる方法においても複写、複製。引用、転載、翻訳、貸与等を行うこ とを禁止します。 【事務局】 名古屋銀行 国際部国際業務推進グループ 電話052-962-9522 FAX052-962-6043 6
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