6 月号(3) 横浜市立荏田南中学校 校長室だより 平成 27 年 6 月 17 日 企画・編集 校長 榎 登志裕 (3学年主任 近藤 悦子) 目で見て、風を感じて、味わいました 京都・奈良 3学年は、半年かけて準備を進めてきた『修学旅行:京都・奈良』に、行ってきました。 梅雨前の5月30日~6月1日という中で、3日間とも好天に恵まれたのは幸いでした。少し体調を崩す生徒 もいましたが、用意した保健室を使うこともなく、参加した全員が3日間の行程をこなすことができました。 さて、京都・奈良といえば、国宝指定のものも多く、ユネスコ世界文化遺産にも登録されている古都であり、 日本を代表する伝統文化のまちです。 ですから、ただの観光旅行に終わってしまってはもったいない! きちんと学んでそれを確かめに行く旅にしようよ、ということで、主な目的は『古都の伝統文化を体感しよう』 にしました。 そのために2年生より実行委員を中心に、全員で事前学習を積みあげ てきました。実行委員の生徒は、学習や決まり作りの中心となり、人前 でプレゼンテーションできるまでになりました。 また、見学地が豊富なので「ここが見たい!ここに行くのが楽しみだ!」 というワクワク期待感をもった修学旅行にするために、生徒一人ひとりが 「テーマ」をもち、テーマに沿った見学地を選択していくことにしました。 一応、ざっくりとしたテーマ案として、以下の6つを設定しました。 テーマ一覧 Aテーマ = ギネスに近づこう 「世界遺産をめぐる旅」 有名で、日本一・世界一のものをきわめるテーマ。世界遺産、国宝のものを調べます。 Bテーマ = 仏像をきわめよう このテーマを選ぶ班はスグレ者ぞろい!手や顔がいっぱいついている仏さま。横向きに寝ている仏さま、 うしろを向いている仏さま。 Cテーマ 正座している仏さま。 どこにあるでしょう。 = 美を追究しよう 庭園の美、建築の美、自然の美、街並みの美・・・。たくさんの美を集めて紹介しましょう。 Dテーマ = 歴史上の人物をおいかけよう 歴史上の人物を選び、それにちなんだ名所をめぐる、ザ・おっかけの旅。豊臣秀吉、織田信長、平氏 足利氏、聖徳太子、新撰組、坂本龍馬・・・。みんな京都をめざしました。 Eテーマ = 御利益(←さあ、何と読むでしょう)にあずかろう ①成績向上(やっぱり 3 年だもの) ④交通安全 Fテーマ ⑤美人・イケメン願望 ②縁結び(いや、やっぱりこっちかなあ) ③芸事・技術向上 ・・・。神社が多いので、拝観料がタダ!が多いのもうれしい。 = ゾクゾクスポットを探究しよう 古都にはきまってある、コワイ話。昔の人々は何よりも「もののけ」を恐れていた・・・。 それらを追いかけ、時にはドキドキゾクゾクし、でも昔の人の思いにワクワクして欲しい人にピッタリのテーマかも。 と、このようにカバンに荷物を、頭に知識を、胸に期待を抱いて 2 泊 3 日の修学旅行が始まりました。 一日目 1. 始まる 5 月 30 日は晴天に恵まれ、 「ああよかった・・・。傘を持っていかずにすむ。 」 荷物は前日に送ってしまったので軽装ですが、京都では班別の自主行動なので、雨降りではかわいそう。でも、 皆の行いが良いおかげ(?)で、その心配はなくなりました。7:10 の集合でしたが、早い人は 6:45 前から 来ていました。実行委員による出発会の後、新幹線に乗り込みました。 2. まず食べる 朝早く起きたので小腹がすいています。時間は守る「青学年」なので、きちんと待ってから担任の「おやつO K~!」の合図と同時にガサガサッ!バリバリッ!そしてあっちでもこっちでもおやつ交換です。胃袋の若さが うらやましい・・。 用があって車両を移動して行くと、あちこちの子どもたちが「先生~お菓子あげる~。 」 「こんなにもらっちゃったよ。 」と両手いっぱいにグミやらポテチやらを分けてもらい、困っちゃったと言いな がらも満面の笑みの職員達でした。生徒の皆さん、お裾分けと気持ちをありがとうね。 3. 京都を知ろう 向かって左に東寺の五重塔、右手に京都タワー。新幹線を降りると、そこはもう京都です。 「暑いなあ~。 」同じ晴れでも、横浜の空気とは何か違います。蒸し暑いような暑さは盆地 だからでしょうか。さて、初めて見る街に人にワクワクしながら班別自主行動開始です。 人気№1スポット “清水の舞台から飛び降りた気持ちで…” 思い切ったことをしようとする時のたとえに 清水寺 使われる舞台。京都の市街地が一望できます。 班別行動では、クラスのいつもの行動班で行いました。だいたいが男子 3 名女子 3 名合計 6 名の班編成です。 見学地は前もって決めておいたのですが、一番人気がここ『清水寺』。ほとんどの班がここをめざすので、 チェックポイントになりました。初めての街に行くわけですから、まずはどうやって行くのかがまず課題。 バス停を探す班、清水寺の前に三十三間堂に行きたいからと、他のルートを探す班。「乗り物酔い」が多い班 は、とりあえず「歩いてみる!」 (ごくろうさん…。)と、手段もさまざまです。きっと彼らなりに、不安と期待 でドキドキなのでしょう。 生徒の感想 ○清水寺は高いところにあった。観光客が大勢いて坂の途中はすごい人混みだった。途中、八坂神社にも寄った。 ○京都の街は、全体的に朱色と茶色が多くてキレイに感じました。 (←こういう気づきが大切ですね) ○途中、男女ではぐれたり落し物を探したりしたけれど、文句を言わず皆で協力することができて絆が深まった。 人気№2スポット “どこまでも続く奉納された鳥居の参道” 写真で見るとその風景に目を奪われます。 伏見稲荷 お稲荷さんに、商売繁盛を祈願します。 チェックポイントではないのに、なぜか青学年の子ども達のハートをつかんだのが、この伏見稲荷。 奉納された赤い鳥居の続くさまが、何だか異空間に誘われるように感じるのでしょうか、清水寺と前後して訪 れるのが多かったのがここでした。 事前学習の頃からここに行くのを楽しみにしていた生徒もいました。身近な“お稲荷さん”ですが「商売繁盛」 の祈願だけではなく、オールマイティーに何のお願いでもOK!という神様ですから、横浜から来た子ども達に、 いろいろなお願いごとをされたのでしょうね。 生徒の感想 〇着いたらこれをみよう、と思っていた伏見稲荷に行けたのが嬉しかった。鳥居の列がどこまでも続いていた。 ○有名な神社だけでなく、歩いて行く中で出会えた地元の個性的なお寺にまで行くことができて楽しかったです。 人気№3スポット 金閣寺といいますが、正確には鹿苑寺金閣。 室町幕府 3 代将軍 足利義満が建てた、もと 金 閣 別荘であったと言われています。慈照寺銀閣と 並んで、修学旅行生がよく行くスポットです。 意外や意外、さぞみんな希望するだろうと思ったのに、金閣を選んだ班はあまりいませんでした。 近くには北野天満宮や嵐山もあり、観光客でにぎわう場所です。 生徒の感想 ○やはり金閣はキラキラきれいだった。世界遺産になるのも当然だと思った。 ○最初道に迷ったが、お店の人や地元の人に教えてもらい、無事に着くことができました。ありがとう! ○外国人と英語で会話できた。お互いに写真を撮りあったりもできた。感激です。 さて、この日は 5 月最後の土曜日で、やはり道路も街もひどい混雑でした。宿では部屋ごとに夕食を食べ、友 達とテレビを見たり語り合ったりと、自由に過ごしました。消灯時間後は、 職員の見回りがあっても実は午前 1 時過ぎまで布団の中でヒソヒソと打ち 明け話をしていた、という生徒が今になって何人も出てきました。暑い日 に初めての街を歩き回ってさぞ疲れていたでしょうが、若さでふっとばし て翌日を迎えたのでした。 二日目 4. 奈良を体験しよう 午前中:コース別クラス見学 2 日目はクラスごとにバスに乗車して奈良に向かいました。 京都よりも歴史の古い都であった奈良にも、見るべきものはたくさんあります。京都と違って見学地が散在し ているのが難点なので、方面ごと、4コースを立ててクラスで希望を取りました。その結果、1・3 組は「平等 院を経て、平城宮跡見学コース」で、2・4・5・6・7 組は「法隆寺と薬師寺見学コース」になりました。 奈良も盆地で同じく暑い!行きの移動はバスで楽ですが、広い境内を歩くと汗がじわ~っと出ます。 そんな中、一服の清涼剤になったのが薬師寺の僧侶の講話でした。中学生に合った、わかりやすい話題と絶妙 の間、冗談を交えながらもビシッとお説教を決める! さすがです。 中学生であっても、人としてある以上必要なのは『挨拶』と『感謝』 。 何事にも「つまらない」とか「くだらない」とか思って顔(面)を伏せる(倒す)と、『面倒』。反対に「あ、 楽しい」 「おもしろい」と感じて顔(面)を上げると、 『面白い』。 漢字の知識も教えてもらいながら、知らず知らずに心が洗われていくようでした。 生徒達も感銘を受けたらしく、その後見学したお堂の中の仏様一体一体に、きちんと手を合わせているのが何 だかほほえましかったです。 生徒の感想 ○平等院では、十円玉の表の絵と見比べながら楽しんで見学できた。平城宮の立派な建物をみて驚いた。 ○薬師寺のお坊さんの話に感動した。挨拶と感謝は基本だし、大切なことだと思う。 5. 奈良を体験しよう 午後:奈良公園周辺 班別自主行動 昼食では、青学年全員が集合してカツカレーを食べた後、元気に奈良公園に向かいました。 東大寺大仏殿から班行動を開始し、他に「ならまちめぐり」や「興福寺」「春日大社」などなど、周辺の選ん だ見学地を1~2か所回ってから、近鉄奈良駅から京都駅まで電車で帰りました。 大きな鹿に鹿せんべいをあげたり「ならまち」でお餅や飴を食べたりと、普段とは違うことを体験できました。 帰りの電車は乗り換えが多く、日曜日ということもあって宿に帰るまでに時間がかかりましたが、とにかく全 員無事で帰ることができました。 三日目 6.京都を深めよう テーマ別タクシー行動 いよいよ修学旅行も最終日です。この 3 日間とも晴天に恵まれ、日焼けをした子ども達も多かったです。 今日は、8:00 に宿を出発して自分の選んだテーマに沿った見学地をタクシーで移動します。タクシーだな んてぜいたくなようですが、効率の良さからすればベスト。観光地らしく、歴史中心に教養のある運転手さんば かりで、いろいろテーマを“極めたい”場合は移動に時間を取られずに済むのです。 だいたい 3~4 人のグループが同じテーマで行動するのですが、事前に見学地は選んでいますので、それを運 転手さんの案内で 14:30 まで見学することになります。 グループによって、テーマによって見学地はバラバラですが、その中のいくつかを紹介します。 Bテーマ:仏像を極めよう 宿 ⇒ 三十三間堂 ⇒ 東寺 ⇒ 永観堂 ⇒ 広隆寺 ⇒ 駅 このコースで、千手観音、大日如来、見返り阿弥陀、弥勒菩薩などのたくさんの仏様を見学します。 Eテーマ:御利益にあずかろう 宿 ⇒ 北野天満宮 ⇒ 野宮神社 ⇒ 白峯神社 ⇒ 御金神社 このテーマで、合格祈願、縁結び、球技の上達、金運アップ の御利益が受けられます。 生徒の感想 ○銀閣寺がよかった。わび・さびを見事に演出していて、美にふさわしかった。 (テーマC:美を追究しよう) ○北野天満宮がよかった。おみくじで大吉が出たし、なで牛があったりパワースポットだから。 (テーマE) ○龍安寺がきれいだった。角度によって石の数が変化する石庭がとてもきれいだったから。 (テーマA:ギネス) ○源光庵。迷いの窓、悟りの窓そして血天井の茶色いしみに、ゾクゾクしました。(テーマF:ゾクゾク) タクシーは全車無事に子ども達を京都駅まで送ってくれ、青学年は帰りの新幹線に乗って帰途につきました。 3 日間を通して、大きく体調を崩した生徒はなく保健室として用意した部屋を一度も使うことなく、全員が行 程をこなすことができたのが嬉しかったです。 京都や奈良が古都であり世界に誇る観光地であることを、横浜の子ども達も実感できたと思います。道に迷っ た時、落とし物をした時、いずれの時にも地元の方々のあたたかい手助けをいただくことができました。 事前に学習したことを実際に見た時の感動、住み慣れた横浜と違う古都としてのたたずまい、そして観光地で 暮らす人々のふるさとへの誇りと責任。いろいろなことを実感できたことでしょう。 「つまらないかと思ったけど、すごく楽しかった!もっと行きたい!」こんな声があちこちからあがる中、新幹 線は新横浜に無事到着しました。
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