論理学入門 水曜 1 時間目 9:00–; 1402 教室 ・ 金曜 5 時間目 16:20–;1502 教室 真理値分析 1 1.1 真理値 われわれはこれまでに以下のことを確認してきた。 1. 推論とはいくつかの前提と一つの結論から成る文の集まりである。 2. 意味論の観点からは、「前提がすべて真となる(成り立つ)状況では、必ず結論も真 となる(成り立つ)」推論が妥当な(正しい)推論である。 3. 推論の妥当性には「否定詞と接続詞(連言・選言・含意)」が関わっている。 そこでここでは、否定詞や接続詞はどのような性質をもっているのか、また推論におい てどのような役割を果たすのか、意味論の観点から考えてみる。 意味論的な妥当な推論の基準が、文の真・偽に基づいて設定されているため、否定詞や 接続詞の性質も、「文の真・偽にどのように働きかけるか」という観点から分析される。 文の真・偽のことをそれぞれ T と F という記号で表し、文の真理値と呼ぶ。 1.2 否定詞 まず、以下のような否定詞を含む文について検討する。 太郎は家にいない。 この文は「太郎は家にいる」という原子文に否定詞をくっつけて得られる複合文であると 考えられる。この原子文と元の複合文(の真理値)は、以下のような関係にある。 1. 「太郎は家にいる」という文が真である(太郎が実際に家にいる)ときには、「太郎 は家にいない」という文は偽であり、 2. 「太郎は家にいる」という文が偽である(太郎が留守である)ときには、「太郎は家 にいない」という文は真である。 したがって以下のような表になると考えられる。 太郎は家にいる(P ) 太郎は家にいない(¬P ) T F F T 1 このような、原子文の真理値に対して複合文のとる真理値を記述した表を真理表(真理 値表)という。この真理表によると否定詞は、文の真理値にどのように働きかけるかとい う観点からは、文の真理値を反転させるという性質を持っていることが分かる。 この否定の性質は、「太郎は家にいる」というような原子文に対してのみ成り立つ性質 ではなく、一般の複合文(たとえば「太郎が家にいるか花子が家にいる」など)に対して も同様に成り立つ。すなわち、以下のような表も得られる。 太郎が家にいるか花子が家にいる P ∨Q 太郎が家にいるか花子が家にいる、ということはない ¬(P ∨ Q) T F F T 上の表を一般化すれば、任意の論理式(文)A について ¬A がどのような時に真となる かについての否定詞の真理条件が得られる。 1. A が偽である場合は ¬A は真であり、 2. その他の場合(A が真であるとき)は ¬A は偽である。 定義 1 (否定の真理条件) 任意の論理式 A について、¬A が真であるのは、A が偽で あるとき、かつそのときに限る。 ¬A F T A T F 「かつそのときに限る」という言い方は、上の「2. その他の場合は ¬A は偽である」を省 略した言い方である。 1.3 連言:並列的接続詞 次は連言について見てみる。 • 太郎は英語も話せ、かつドイツ語も読める。 • 太郎は家にいて、花子は出かけている。 • 太郎は留守であり、しかも花子も留守だ。 • 太郎も家にいるし、花子も家にいる。 • 太郎と花子が家にいる。 • 太郎も花子も家にいる。 • 太郎はよく働いた、そしてよく眠った。 • 太郎は家にいるが、花子は留守だ。 • 太郎は家にいるけれども、花子は家にいない。 • 太郎が家にいるにも関わらず、花子は家にいない。 2 ここでは、以下の文について検討する。 太郎は英語も読め、かつドイツ語も読める。 この文は次の二つの原子文からなる複合文である。 • 太郎は英語が読める。 • 太郎はドイツ語が読める。 これら二つの原子文の真理値と、「太郎は英語も読め、かつドイツ語も読める」という 複合文の真理値は、以下のような関係にあることが分かる。 • 実際に太郎という人間が英語も読めて、ドイツ語も読めるときには、 「太郎は英語も 読め、かつドイツ語も読める」という文は真となり、 • 太郎という人間が実際には、英語を読めないか、またはドイツ語が読めないときに は、「太郎は英語も読め、かつドイツ語も読める」という文は偽となる。 このような原子文と複合文の真理値の関係を表にまとめると以下のようになる。 太郎は英語が読める 太郎はドイツ語が読める 太郎は英語も読め、かつドイツ語も読める T T F F T F T F T F F F したがって「かつ」という接続詞は、文の真理値にどのように働きかけるかという観点 からは、上の表のような性質を持っていると考えられる。 否定詞のときと同様に、この連言の性質は原子文のみに限られることなく、一般の複合 文に対しても成り立つ。上の表を一般化すれば、任意の文 A, B について 1. A と B の両方ともが真であるときに A ∧ B は真であり、 2. その他の場合(A が偽であったり、B が偽である場合)はすべて A ∧ B は偽である。 定義 2 (連言の真理条件) 任意の文 A, B について、A ∧ B が真であるのは、A と B の両方ともが真であるとき、かつそのときに限る。 A T T F F A∧B T F F F B T F T F かつそのときに限る、という言い方は、これによって「2. その他の場合(A が偽であった り、B が偽である場合)はすべて A ∧ B は偽である」を省略する言い方である。 3 1.4 真理値分析 否定詞や連言の分析で見たように、一般の論理式(複合文)の真理値は、それを構成し ている論理式の真理値によって定まる。ある論理式がどのような真理値を取るのか、すな わちどのような場合に真になったり偽になったりするのかを知りたいときには、その論理 式に含まれる原子論理式(原子文)P や Q 等の全ての真理値の組み合わせについて当の 論理式の真偽を調べれば良い。このように、与えられた論理式がどのような真理値を取る のかを明らかにする作業を、与えられた論理式に対する真理値分析と呼ぶ。 例 1 実際に論理式 ¬(P ∧ ¬Q) について真理値分析を行ってみる。 1. まず、与えられた論理式がどような論理式から構成されているかを確認する。 上の論理式は、原子論理式 P と Q から、論理結合子 ¬ と ∧ を用いて構成されている。 Q P ¬Q P ∧ ¬Q ¬(P ∧ ¬Q) 2. 分析対象となる論理式に含まれる原子論理式を表の左側に書き出す。 ここでは、P と Q である。 3. 原子論理式の取り得る真理値の組み合わせをすべて列挙する。 P の取り得る真理値は Tか Fかの 2 通りであり、そのそれぞれに対して Q の取り得 る真理値も Tか Fの 2 通りである。従って、P と Q の取り得る真理値の組み合わせ は、(T, T), (T, F), (F, T), (F, F) の 4 通りである。 4. 分析対象となる論理式を構成している論理式について、真理表に従って真理値分析 を行う。 (a) まず Q の真理値を基に ¬ の真理表を適用して、¬Q の真理値を書き込む。 (b) 次に P と ¬Q の真理値を基に ∧ の真理表を適用して、P ∧ ¬Q の真理値を書く。 5. 最後に、分析対象となる論理式の真理値を求める。 P ∧ ¬Q の真理値を基に ¬ の真理表を適用して、¬(P ∧ ¬Q) の真理値を書き込む。 P T T F F Q T F T F ¬Q F T F T P ∧ ¬Q F T F F ¬(P ∧ ¬Q) T F T T 練習問題 1 以下の論理式の真理値分析をしてください。 1. ¬P ∧ ¬Q 4. (P ∧ ¬Q) ∧ ¬P 2. ¬(P ∧ Q) 5. ¬¬P 3. ¬¬(P ∧ Q) 6. P ∧P 4 1.5 選言:選択的接続詞 次に選言について考えてみる。 • 太郎か花子が家にいる。 • 太郎が家にいるか、あるいは花子が家にいる。 • 彼はアメリカへ行くか、それともヨーロッパへ行くかのどちらかだ。 ここでは、以下の文について検討する。 太郎か花子が家にいる。 この文は次の二つの原子文からなる複合文である。 - 太郎は家にいる。 - 花子は家にいる。 この二つの原子文と元の複合文との真理値の関係を検討すると、 「太郎か花子が家にいる」 という文は、太郎も花子も 2 人とも家にいない場合を除いては真であると考えられる。し たがって以下のような真理表になると考えられる。 太郎は家にいる 花子は家にいる 太郎か花子が家にいる T T F F T F T F T T T F ここで、 「太郎か花子が家にいる」という文は、太郎か花子のどちらか一方しか家にいな い、ということまでは主張していないと考え、太郎と花子が 2 人とも家にいたとしても、 この文自体が否定されるわけではなく、真であると考える。 定義 3 (選言の真理条件) 任意の文 A, B について、A ∨ B が真であるのは、A か B が真であるとき、かつそのときに限る。 A T T F F A∨B T T T F B T F T F 練習問題 2 以下の論理式の真理値分析をしてください。 1. ¬P ∨ ¬Q 3. ¬(P ∨ Q) 5. (P ∨ Q) ∧ ¬(P ∧ Q) 2. ¬(P ∧ Q) 4. ¬P ∧ ¬Q 6. P ∨ ¬¬P 5 1.6 補足:排他的選言 選択的接続詞のうちには、「どちらか一方のみ」ということを明確にして用いたい場合 もある。例えば「太郎は今、ヨーロッパかアメリカにいる」については、太郎がヨーロッ パとアメリカの両方にいるような場合はあり得ず、偽になると考えるのが自然である。す ると、先の選言の真理条件は間違っているのではないか、と思われるかもしれない。ここ では、先のような選言の真理条件を保持し、 「太郎は今、ヨーロッパかアメリカにいる」な どの文については、「どちらか一方のみである」ことを明示して以下のように表現するこ ととする。 太郎か花子のどちらか一方のみが家にいる このような選言は「排他的選言」と呼ばれ、記号では P ▽ Q と表す。排他的選言につ いては、以下のような表を考えることができる。 太郎は家にいる 花子は家にいる 太郎か花子のどちらか一方のみが家にいる T T F F T F T F F T T F 定義 4 (排他的選言の真理条件) 任意の文 A, B について、A ▽ B が真であるのは、A か B のどちらか一方のみが真であるとき、かつそのときに限る。 P T T F F P ▽Q F T T F Q T F T F P ▽ Q(P か Q のどちらか一方である)は、意味を考えれば、「通常の選言 P ∨ Q で あって、P と Q が共に成り立つことはない(¬(P ∧ Q))」ということであり、 (P ∨ Q) ∧ ¬(P ∧ Q) と同じ意味であることがわかる。 論理式 A と B の真理表を一緒に作成したときに、真理表のすべての行で A と B が同じ 真理値をもつとき、A と B は同値な論理式であるという。 練習問題 3 P ▽ Q と (P ∨ Q) ∧ ¬(P ∧ Q) は同値な(同じ真理値を持つ)論理式であるこ とを示してください。 6 1.7 さらに練習 例 2 タロウが家にいるか、もしくはジロウとハナコの二人が家にいる。P ∨ (Q ∧ R) 1. まず、分析対象となる論理式に含まれる原子論理式を表の左側に書き出す。 ここでは、P と Q と R である。 2. 原子論理式の取り得る真理値の組み合わせをすべて列挙する。 P の取り得る真理値は Tか Fかの 2 通りであり、そのそれぞれに対して Q の取り得 る真理値も Tか Fの 2 通りである。従って、P と Q の取り得る真理値の組み合わせ は、(T, T), (T, F), (F, T), (F, F) の 4 通りである。さらにそのそれぞれに対して、R の 取り得る真理値も Tか Fかの 2 通りである。従って、P と Q と R の取り得る真理値 の組み合わせは、 ((T, T), T), ((T, T), F), ((T, F), T), ((T, F), F), ((F, T), T), ((F, T), F), ((F, F), T), ((F, F), F) の 8 通りである。 3. 次に、分析対象となる論理式に含まれる、より単純な論理式について、真理表に従っ て真理値を求める。 4. 最後に、分析対象となる論理式の真理値を求める。 P T T T T F F F F Q T T F F T T F F R T F T F T F T F Q∧R P ∨ (Q ∧ R) 練習問題 4 以下の論理式の真理値分析をしてください。 1. P ∨ ¬P 5. (P ∨ Q) ∧ (P ∨ R) 2. P ∧ ¬P 6. P ∧ (Q ∨ R) 3. ¬(P ∧ ¬P ) 7. (P ∧ Q) ∨ (P ∧ R) 4. ¬¬P ∨ ¬P 8. ((P ∧ ¬Q) ∨ (Q ∧ ¬R)) ∨ (¬P ∨ R) 定義 5 原子論理式の真理値によらず恒に真となる論理式をトートロジーと呼ぶ。また、原 子論理式の真理値によらず恒に偽となる論理式を矛盾式と呼ぶ。 トートロジーはどのような状況においても必ず真になる(成り立つ)論理式、と考えら れる。 7 1.8 練習問題:4 枚カード問題(改:飲酒年齢規則) あなたは勤務中の警官であると想像してください。あなたの仕事は、人々がある規則を 守っているかどうかを確かめることです。あなたの前にあるカードには、テーブルについ ている 4 人の人々についての情報が書かれています。カードの片面には人の年齢、カード のもう一方の面にはその人が飲んでいるものが書かれています。規則は次の通りです。 「もしある人がビールを飲んでいるならば、その人は 20 歳以上でなければならない」 人々が規則に違反しているかどうかを決定するために明らかに必要なカードを選んでくだ さい。 ビ コ | ル | ラ 24 歳 17 歳 Remark 1 (2013 年度) 水 金 合計 % ビールと 17 72 42 114 67 % すべて 0 0 0 0% ビールと 24 1 0 1 1% ビールと 24 と 17 0 0 0 0% ビール 19 9 28 17 % 17 6 12 18 11 % その他 7 1 8 5% 1. 「ビール」について ビールを飲んでいる人が 20 歳以上なら規則に抵触 ビール しないが、20 歳未満だったら規則に反する。つま り、 「ビール」の裏が「20 歳以上」なら規則に沿っ ているが、 「ビール」の裏が「20 歳未満」だった場 コーラ(ビールでない) 合、規則に反する。従って「ビール」は裏返して みないとならない。 24 歳 2. 「24 歳」について 合計 105 64 169 20 歳以上 ⃝ 20 歳未満 20 歳以上 × ⃝ 20 歳未満 ビール ⃝ ⃝ コーラ(ビールでない) 20 歳以上の人がコーラを飲もうがビールを飲もう ビール が飲酒規則には抵触しない。つまり、 「24 歳」の裏 17 歳 は「ビール」でも「コーラ」でも(「ビール」でな コーラ(ビールでない) くても)どちらでも構わない。従って「24 歳」は 裏返す必要はない。 3. 「コーラ」について コーラを飲んでいる人が 20 歳以上でも 20 歳未満でも飲酒規則には抵触しない。つまり、 「コーラ」の 裏は「24 歳」でも「17 歳」でもどちらでも構わない。従って「コーラ」は裏返す必要はない。 4. 「17 歳」について 17 歳の人がコーラを飲んでいても規則に反しないが、17 歳の人がビールを飲んでいたら規則に反す る。つまり、「17 歳」の裏が「コーラ」なら規則に抵触しないが、「ビール」なら規則に反する。従っ て「17 歳」は裏返さなければならない。 「ビールを飲んでいるなら、その人は 20 歳以上でなければならない」を ビール → 20 歳以上 と表して、上の表をさらにまとめると以下のようになる。(これが含意結合子の真理表。) ビール ⃝ ⃝ × × ビール → 20 歳以上 20 歳以上 ⃝ × ⃝ × ⃝ × ⃝ ⃝ 8 ⃝ × ⃝ 練習問題:4 枚カード問題(ウェイソンの選択課題) 1.9 A D 3 7 • 片面に英文字が 1 つ(A ∼ Z )、逆面に数字が 1 つ(1 ∼ 9)書かれたカードがある。 • 「もしカードの片面が A であれば、その裏面は 3 である」という文が真であるか偽 であるか、を確かめるためには、どのカードを裏返す必要があるか?(複数可。) Remark 2 (2013 年度) 水 金 合計 % Aと7 27 17 44 23 % すべて 9 3 12 6% Aと3 47 29 76 40 % Aと3と7 6 1 7 4% A 11 10 21 11 % 7 0 0 0 0% その他 23 7 30 16 % 合計 123 67 190 1. A について:A の裏が 3 なら「A の裏が 3」という主張に沿っているが、A の裏が 3 でな かった場合、「A の裏が 3」という主張に反することになる。従って A は裏返してみないと ならない。 2. 3 について:「A の裏は 3」という主張は、 「D の裏が 3 でない」ということは意味しない。 つまり、D の裏が 3 であっても構わない。従って、3 の裏は A でも D でも(A でなくても) 構わない。つまり 3 は裏返す必要はない。 3. D について:「A の裏は 3」という主張は、D の裏に関して何も主張していない。つまり、 D の裏は 3 であっても 3 でなくても構わない。従って D は裏返す必要はない。 4. 7 について:7 の裏が D であっても「A の裏が 3」という主張に反することはないが、7 の 裏が A であった場合、A の裏が 3 でなくなってしまい、主張に反する。従って 7 は裏返さ なければならない。 A D (¬A) 3 7 (¬3) 1.10 3 ⃝ ¬3 3 × ⃝ ¬3 A ⃝ ⃝ ¬A A ⃝ × ¬A ⃝ 「もしカードの片面が A であれば、その裏面は 3 である」 を A → 3 と表して、上の表をさらにまとめると含意結合子 の真理表が得られる。 A ⃝ ⃝ × × 3 ⃝ × ⃝ × A→3 ⃝ × ⃝ ⃝ 練習問題:4 枚カード問題(改:都市と交通手段) 大 阪 新 幹 線 福 岡 飛 行 機 • 片面に 1 つの都市名、逆面に 1 つの交通手段が書かれたカードがある。 • 各カードはわたしがこれまでに行った旅行を表している。 • 「大阪に行くときはいつも新幹線で行く」という文が真であるか偽であるか、を確 かめるためには、どのカードを裏返す必要があるか?(複数可。) 練習問題 5 上の問題に回答し、説明してください。 9 1.11 含意:条件法:仮定的接続詞 • 太郎が家にいれば、花子は留守だ。 • 太郎が家にいるなら、花子は留守だ。 • 太郎が家にいるならば、花子は留守だ。 • 太郎が家にいるときはいつも花子は留守だ。 • もしも太郎が家にいるならば、花子は留守だ。 ここでは、「太郎が家にいるならば花子は家にいる。」という文について検討する。この 文は「太郎は家にいる」 (条件文の前提部分は前件と呼ばれる)と「花子は家にいる」 (条 件文の結論部分は後件と呼ばれる)という二つの原子文からなる複合文である。この二つ の原子文と元の複合文との真理値の関係を検討すると以下のようになると考えられる。 太郎は家にいる 花子は家にいる 太郎が家にいるならば花子は家にいる T T F F T F T F T F T T − 実際に太郎が家にいるという条件が満たされていて(前件が真で)、花子も家にいる とき(後件も真)には、確かに「太郎が家にいるならば花子は家にいる」という条 件文は真になると認められる。 − また、太郎が家にいるという条件が満たされているのに(前件が真)、花子が家にい ない(後件が偽)場合には、 「太郎が家にいるならば花子が家にいる」という条件文 は偽になると考えられる。 − 4 枚カードのときに見たように、太郎が家にいない(前件が偽)場合については、 「太 郎が家にいるなばら花子が家にいる」という条件文全体は真になる。 上の真理表のような含意(条件法)の意味の規定は、通常の含意(条件法)の一側面を 取り出したものであり、必ずしもわれわれが普段使っている含意「ならば」がすべてこの ような真理表に沿っているというわけではない。しかし、とくに数学で用いられる「なら ば」は上の真理表のような使われ方をするのである。 定義 6 (含意の真理条件) 任意の文 A, B について、A → B が真であるのは、A が偽 であるか、B が真であるとき、かつそのときに限る。 言い換えれば、A → B が偽であるのは、A が真で、B が偽であるとき、かつそのと きに限る。 A T T F F B T F T F A→B T F T T 10 1.12 補足:双条件 P → Q と Q → P の両方を合わせたもの、すなわち (P → Q) ∧ (Q → P ) を P ↔Q と書く。日本語(数学)では、↔ は「双条件」と呼ばれ、「かつそのときに限る」と表現 される。たとえば、「太郎が家にいるのは、花子が家にいるときかつそのときに限る」と いう文は、「太郎が家にいる」を P 、「花子が家にいる」を Q とすると、P ↔ Q と記号化 される。 練習問題 6 (P → Q) ∧ (Q → P ) の真理表を書いてください。 1.13 まとめ A T T F F B T F T F A∧B T F F F A∨B T T T F A→B T F T T ¬A F F T T 原子論理式の真理値によらず恒に真となる論理式をトートロジーまたは恒真式と呼ぶ。 また、原子論理式の真理値によらず恒に偽となる論理式を矛盾式と呼ぶ。 言い方を変えれば、トートロジーはどのような状況においても必ず真になる(成り立つ) 論理式、と考えられる。 練習問題 7 次の論理式の真理値分析をし 練習問題 8 次の論理式の真理値分析をし てください。 てください。 1. ((P → Q) ∧ P ) → Q 1. P ∨ ¬P 2. ¬P → Q 2. (P → Q) → (¬Q → ¬P ) 3. (P ∧ ¬Q) → R 3. ¬(P ∧ (Q ∨ R)) → ¬P 4. (P → Q) → (Q → P ) 4. (¬P ∧ (P ∨ Q)) → Q 5. ((P → Q) ∧ (Q → R)) → (P → R) 6. (¬P ∧ Q) → (P → Q) 5. ((P → Q) → P ) → P 7. (P → ¬Q) ∧ (Q ∧ P ) 6. (¬Q ∧ (P → Q)) → ¬P 8. (P → Q) ∧ (P → ¬Q) 7. (P → (Q → R)) → ((P ∧ Q) → R) 9. (P → Q) ∨ (¬P → Q) 1.14 8. ((P ∧ Q) → R) → (P → (Q → R)) 真理表を用いた推論分析 真理表を使うと、どれほど複雑な推論でも妥当な推論かそうでないかを機械的に判定す ることができる。その手順は以下のようなものである。 11 1. まず、推論に現れる文を記号化する。 2. 次に、前提となる文および結論となる文の真理値分析を行う。 3. 正しい推論の基準に照らし合わせて、前提がすべて真となる場合(原子論理式の真 理値の組合せ)を列挙し、そのときの結論の真理値を確認する。 4. 真理表で、前提が真となるすべての行で結論が真となっていれば、それは妥当な推 論であり、そうでないとき、前提が真であるのに結論が偽になるような行があれば、 それは妥当でない推論である。 例 3 次の推論は妥当な推論だろうか? 前提 1 太郎はテストで 100 点をとれば、単位をもらえる。 前提 2 ところが、太郎は単位をもらえなかった。 結論 それゆえ、太郎は 100 点をとれなかった。 1. まず、推論に現れる文を記号化する。 「太郎がテストで 100 点をとる」という原子文を P 、「太郎は 単位をもらえる」という原子文を Q とすると、上の推論は右の ように記号化することができる。 2. 次に、前提となる文および結論となる文の真理値分析を行う。 前提 1 P → Q 前提 2 ¬Q 結論 ¬P 3. 正しい推論の基準に照らし合わせて、前提がす 前提 1 前提 2 結論 べて真となる場合を列挙し、そのときの結論の P Q P →Q ¬Q ¬P 真理値を確認する。 T T T F F この真理表を見ると、前提 1、2 がともに真で T F F T F あるのは、真理表の 4 行目だけである。このと F T T F T き、結論 ¬P について見てみると、確かに真に F F T T T なっている。 4. 前提が真となる時に必ず結論も真となっていれば、それは妥当な推論であり、前提 が真であるのに結論が偽になるような場合があれば、それは妥当でない推論である。 上の真理表から、前提がすべて真であるときには結論も真となっており、妥当な推 論の基準を満たしているため、この推論は妥当である。 練習問題 9 以下の推論について、妥当かどうか判定してください。 1. 前提 P ∨ Q 2. 前提 P → Q 3. 前提 P → (Q → R) 前提 P → Q 前提 P ∨ R 前提 P ∧ Q 結論 Q 結論 Q ∨ R 結論 R 4. 前提 1 太郎が家にいるならば、花子も家にいる。 前提 2 太郎か次郎が家にいる。 結論 それゆえ、花子が家にいないならば、次郎が家にいる。 12 さらに次の例を考えてみる。 例 4 以下の推論は正しい推論だろうか? 前提 1 太郎はテストで 100 点をとれば、単位をもらえる。 前提 2 太郎は単位をもらえた。 結論 それゆえ、太郎は 100 点をとれなかった。 1. まず、推論に現れる文を記号化する。 「太郎がテストで 100 点をとる」という要素文を P 、 「太郎は単 位をもらえる」という要素文を Q とすると、上の推論は以下の ように記号化することができる。 2. 次に、前提となる文および結論となる文の真理値分析を行う。 前提 1 P → Q 前提 2 Q 結論 ¬P 3. 正しい推論の基準に照らし合わせて、前提がすべて真となる場合を列挙し、そのと きの結論の真理値を確認する。 P T 前提 2 Q T 前提 1 P → Q ¬Q T F T F F T F T F F T 結論 ¬P F T F F T T T 4. すると、前提がすべて真であるときにも、この推論の結論は必ずしも真とはならな い(1 行目で偽となっている)。P が真で、Q が真のとき、すなわち、太郎がテスト で 100 点をとり、単位をもらえたという状況を考えると、このとき前提はすべて真 であるが、 「太郎がテストで 100 点をとれなかった」という結論は偽であり、妥当な 推論の基準を満たさない。したがってこの推論は妥当でない。 妥当な推論の基準を満たさない例となる状況(上では「太郎がテストで 100 点をとり、 単位をもらえたという状況)を反例と呼ぶ。妥当な推論でないときには、必ずこのような 反例を挙げて説明しなければならない。 練習問題 10 次の推論について、妥当かどうか判定してください。 1. 前提 1 太郎が家にいるならば、花子も家にいる。 前提 2 太郎か次郎が家にいる。 結論 それゆえ、花子が家にいないならば、次郎が家にいる。 2. 前提 P ∨ Q 3. 前提 P → Q 4. 前提 P → Q 前提 P → Q 前提 ¬Q 前提 P ∨ R 結論 Q 結論 P ∨ Q 結論 Q ∨ R 13 1.15 練習 8. 前提 1 花子が O 型であるか花子の娘が B 型である。 練習問題 11 以下の推論が妥当かどうか判定し てください。 前提 2 花子が O 型ならば、花子の娘は B 型である。 結論 それゆえ、花子の娘は B 型である。 1. 前提 1 地球が破滅しないならば、人間は 生き延びる。 9. 前提 1 人類が存続するか地球が滅びる かのどちらかである。 前提 2 人間が生き延びるならば、地球は 破滅する。 前提 2 人類は存続しない。 結論 それゆえ、地球は破滅する。 結論 それゆえ、地球は滅びる。 2. 前提 1 太郎が家にいるならば、花子も家 にいる。 10. 前提 1 花子は A 型か B 型である。 前提 2 花子は A 型でない。 前提 2 太郎か花子のどちらかは家にい ない。 結論 それゆえ、花子は B 型である。 結論 それゆえ、花子は家にいない。 11. 前提 1 太郎が高校生なら太郎はジュース をもらえる。 3. 前提 1 彼はフランス人かイタリア人で ある。 前提 2 彼がイタリア人なら彼はイタリ ア語を話せる。 前提 3 彼はイタリア語を話せない。 結論 従って彼はフランス人である。 前提 2 太郎が高校生でないなら太郎は ジュースをもらえる。 結論 それゆえ、太郎はジュースをもら える。 12. 前提 1 この液体には化学物質 A か化学 物質 B が入っている。 4. 前提 1 花子が訪ねるといつも太郎か次 郎が家にいる。 前提 2 この液体に化学物質 B が入って いるなら、必ず化学物質 C も入っ ている。 前提 2 太郎が家にいないときは次郎も 家にいない。 前提 3 この液体に化学物質 C が入って いない。 結論 それゆえ、花子が訪ねるといつも 太郎が家にいる。 結論 それゆえ、この液体には化学物質 A が入っている。 5. 前提 1 太郎が高校生ならば、太郎はジ ュースをもらえる。 13. 前提 1 この液体に化学物質 A が入って いるならば、化学物質 B も化学物 質 C も入っている。 前提 2 太郎はジュースをもらえた。 結論 それゆえ、太郎は高校生である。 前提 2 この液体に化学物質 C が入って いるならば、B は入っていない。 6. 前提 1 もし花子が O 型であるなら花子 の娘は B 型である。 結論 それゆえ、この液体には化学物質 A が入っていない。 前提 2 花子の娘は B 型でない。 結論 それゆえ、花子は O 型でない。 14. 前提 1 この液体に化学物質 A と B が入 っていれば、C も入っている。 7. 前提 1 花子が O 型であるか花子の娘が B 型である。 前提 2 この液体には化学物質 A が入っ ている。 前提 2 花子が O 型ならば、花子の娘は B 型でない。 結論 それゆえ、この液体に化学物質 B が入っていれば C が入っている。 結論 それゆえ、花子の娘は B 型である。 14 練習問題 12 以下の推論が正しいか、正しくないかを判定し、その理由を説明して下さい。 1. タロウ君が日大のオープンキャンパスに行ったとき、 「高校生ならジュースをもらえ ます」と言われた。しかし「タロウ君はジュースをもらえなかった」。 このとき、「タロウ君は高校生でない」と考えていい? 2. タロウ君が日大のオープンキャンパスに行ったとき、 「高校生ならジュースをもらえ ます」と言われた。しかし「タロウ君は高校生ではない」。 このとき、「タロウ君はジュースをもらえない」と考えていい? 練習問題 13 中華料理屋「上海亭」について、次の (a) が分かっているとき、そこから正 しく結論できるものを選んでください。また正しくないものについては、反例を挙げてく ださい。 (a) 午後 10 時を過ぎたならば、上海亭はやっていない。 1. 上海亭がやっていないならば、午後 10 時を過ぎている。 2. 午後 10 時を過ぎていないならば、上海亭はやっている。 3. 上海亭がやっているならば、まだ午後 10 時過ぎではない。 練習問題 14 A → B が成り立っているとき、次のうちどれが成り立つか?真理表を用い て説明してください。 (1) B → A (2) ¬A → ¬B (3) ¬B → ¬A 練習問題 15 中華料理屋「上海亭」について、次の (a) が分かっているとき、そこから正 しく結論できるものを選んでください。また正しくないものについては、反例を挙げてく ださい。 (a) 平日ならば、上海亭は開店している。 1. 上海亭が開店していないなばら、平日ではない。 2. 上海亭が開店しているならば、平日である。 3. 平日ではないならば、上海亭は開店していない。 練習問題 16 次の (a) が分かっているとき、そこから正しく結論できるものを選んでくだ さい。また正しくないものについては、反例を挙げてください。 (a) 祝日は上海亭も来々軒も休みだ。 1. 上海亭も来々軒も休みなら、祝日だ。 2. 祝日でないなら、上海亭か来々軒がやってる。 3. 上海亭がやってるか来々軒がやっているなら、祝日でない。 練習問題 17 次の (a) が分かっているとき、そこから正しく結論できるものを選んでくだ さい。また正しくないものについては、反例を挙げてください。 (a) 彼女がぼくを嫌いならプレゼントは受け取ってもらえないだろう。 1. プレゼントを受け取ってもらえないなら彼女はぼくを嫌いなのだろう。 2. 彼女がぼくを嫌いでないのなら、プレゼントを受け取ってもらえるだろう。 3. プレゼントを受け取ってもらえるなら、彼女はぼくを嫌いではないのだろう。 15 1.16 復習 真理表を使った推論分析を、より具体的に考えてみる。イントロで挙げたナミヘイさん の推論は以下のものであった。 前提 1 前提 2 結論 サザエかカツオが犯人だ。 サザエが犯人なら、カツオも犯人だ。 故にカツオは犯人だ。 このナミヘイの推論が正しいということは、次のようにして示すことができる。 サザエとカツオについて、あり得る状況を全て考えてみると サザエ カツオ (1) (2) (3) (4) 犯人 犯人 無実 無実 犯人 無実 犯人 無実 • まず(2)の場合はあり得ない。なぜなら、サザエが犯人なら、前提 2 からカツオも 犯人でなければならないため、前提 2 に矛盾する。 • また(4)の場合はあり得ない。なぜなら、サザエもカツオも犯人でないことから、 前提 1 と矛盾する。 • (1)の場合は、サザエとカツオの両方が犯人であるから、前提 1 のどちらかが犯人 であることに矛盾しない。また、サザエが犯人のときにはカツオも犯人であること にも矛盾しない。 • (3)の場合は、サザエが犯人でないために前提 2 が真であることには矛盾せず、ま たカツオが犯人であることから、前提 1 が真であることにも矛盾しない。 結局、考えられる状況、即ち前提 1 と前提 2 に矛盾しないような状況は、 (1)と(3)の 2 つの状況である。が、このどちらの場合が真実であったとしても、結 局カツオが犯人であることには変わりはない。つまり、前提 1 と前提 2 が成り立つ場合に は、カツオが犯人でないという状況は考えられないのである。 従って、前提 1 及び前提 2 が真であるようなあり得る状況をすべて列挙すると、その場 合は必ずカツオが犯人という結論が成り立っている。このために、上の推論は正しい推論 であり、カツオはナミヘイに怒られる。 上の説明は、以下のような真理表を言葉で説明したものに過ぎない。 (「サザエが犯人で ある」を S 、「カツオが犯人である」を K とする。) S T T F F 結論 K 前提 1 S∨K 前提 2 S→K T F T F T T T F T F T T 16 1.17 トートロジーと妥当な推論 意味論の観点に基づく正しい推論の基準とは、 前提がすべて真となるときには、必ず(いつでも)結論が真である というものである。例えば以下のような推論は妥当である。 前提 1 P → Q 前提 2 ¬Q 結論 ¬P ここで、すべての前提(前提 1 及び 2)が真であるということは、 (P → Q) ∧ ¬Q が真であることと等しい。従って、正しい推論の基準をこの推論に当てはめると (P → Q) ∧ ¬Q が真であれば、¬P も必ず真である と言い換えることができる。 ここで前提と結論を → で結んだ論理式 ((P → Q) ∧ ¬Q) → ¬P についての真理値分析を行うと以下のようになる。 P T T F F Q T F T F 前提 1 P →Q 前提 2 ¬Q 結論 ¬P T F T T前提 F T F F F T T前提 T結論 (P → Q) ∧ ¬Q F F F T ((P → Q) ∧ ¬Q) → ¬P T T T T この真理表より、 ((P → Q) ∧ ¬Q) → ¬P はどのような状況下でも真となるトートロジー(恒真式)であることが分かる。このよう に、推論の前提を ∧ で結んで、それと結論とを → で結んでできる論理式を推論式と呼ぶ ことがある。 同様に、以下の例についても検討する。 前提 1 P → Q 前提 2 P ∨ R 結論 ¬Q → R 17 前提を ∧ で結んでできる論理式と結論を → で結んだ論理式 ((P → Q) ∧ (P ∨ R)) → (¬Q → R) についての真理表は以下のようになる。 P T T T T F F F F Q T T F F T T F F R T F T F T F T F ¬Q F F T T F F T T 前提 1 P →Q T T F F T T T T 前提 2 P ∨R T T T T T F T F 結論 ¬Q → R T T T F T T T F (P → Q) ∧ (P ∨ R) T T F F T F T F ((P → Q) ∧ (P ∨ R)) → (¬Q → R) T T T T T T T T また、正しくない推論の例について見てみると、 前提 1 P → Q 前提 2 Q 結論 ¬P ((P → Q) ∧ Q) → ¬P P T T F F 前提 2 Q 前提 1 P →Q T F T F T F T T ¬Q F T F T 結論 ¬P F F T T (P → Q) ∧ Q T F T F ((P → Q) ∧ Q) → ¬P F T T T 推論の正しさとは、「前提が全て正しいとき、必ず結論も正しくなっている」という点 にある。それゆえ、 前提 1 A1 前提 2 A2 .. . 前提 n An 結論 それゆえ C が正しい推論であるかどうかは、これに対応する推論式 (A1 ∧ A2 ∧ · · · ∧ An ) → C がトー トロジーであるかどうかによって調べられる。 この推論式がトートロジーであれば、前提 A1 , . . . , An が全て真のとき、結論 C は必ず 真になり、それゆえ推論は正しい。逆に、(A1 ∧ A2 ∧ · · · ∧ An ) → C がトートロジーでな 18 い場合には、 「前提 A1 , . . . , An が全て真なのに、結論 C が偽」ということが起こりうるこ とになる。そして、前提が全て真であるのに結論が偽になる可能性がある場合、その推論 は誤りである。 従って、推論が正しい推論の基準を満たしていることと、その推論を 1 つの論理式で表 した推論式がトートロジーとなることとは一致するのである。 発展問題 1 以下の推論に対応する推論式を作り、それがトートロジーであるかどうかを 判定することにより、もとの推論が妥当であるかどうか示してください。 1. 前提 P ∨ Q 前提 P → Q 結論 Q 2. 前提 P → Q 前提 ¬Q 結論 ¬P 3. 前提 P → Q 前提 ¬P 結論 ¬Q 19 1.18 パズル 以下では、登場人物は全員「正直者」か「嘘つき」であり、正直者は本当のことしか言 わないし、嘘つきは間違ったことしか言わない。 彼らに関する基本的な事実として、彼らに何を聞いたとしても、「わたしは嘘つきであ る」ということは絶対にない、とする。 練習問題 18 正直者か嘘つきが、 「わたしは嘘つきである」と言ったとすると、何が困る? 例 5 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」と聞い たところ、「両方とも嘘つきだよ」と夫が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? このような問題は、真理表を使って解くことができる。 1. 「男が正直者である」ことを Hm、「女が正直者である」ことを Hf 、と表すことに する。 2. すると夫の発言は、¬Hm ∧ ¬Hf と記号化できる。 3. この論理式の真理表を作ると以下のようになる。 Hm T T F F Hf T F T F ¬Hm F F T T ¬Hf F T F T ¬Hm ∧ ¬Hf F F F T 4. 上の真理表で、1 行目は Hm が真、すなわち男が正直者である場合を表しているが、 そのときの男の発言 ¬Hm ∧ ¬Hf は偽である。しかし、正直者は間違ったことを言 うことはあり得ない。したがって、このような場合(Hm が T で Hf が T の場合) はあり得ない。 2 行目も同じく、男が正直者の場合で、その発言が間違うことはあり得ない。 4 行目は、Hm が F すなわち、男が嘘つきである場合だが、このとき男の発言は T である。しかし、嘘つきが正しいことを言うことはあり得ない。したがってこの場 合もあり得ない。 5. 残る場合は 3 行目の男が嘘つきで、その発言も偽の場合だが、これはとくに矛盾は ない。(整合的である。) 6. したがって、考えられる場合としては、Hm が F で Hf が T の場合、すなわち男が 嘘つきで女が正直者の場合しかない。 練習問題 19 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「少なくとも片方は嘘つきだよ」と男が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 20 練習問題 20 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「片方は正直者さ」と男が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 21 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「両方とも嘘つき、というわけではない」と男が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 22 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「わたしも妻も嘘つきではないよ」と夫が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 23 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「わたしが正直者か、妻が嘘つきだよ」と夫が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 24 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「もしわたしが正直者ならば、妻も正直者です。」と夫が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 25 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「もしわたしが正直者ならば、夫も正直者です。」と妻が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 26 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「もしわたしが嘘つきなら、妻は正直者です。」と夫が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 27 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「もしわたしが正直者なら、妻は嘘つきだ。」と夫が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 28 道で会った男女に「あなた方はそれぞれ正直者と嘘つきのどちらですか?」 と聞いたところ、「われわれは同じ種類だ。つまり両方とも正直者か両方とも嘘つきだ。」 と男が答えた。 男と女はそれぞれ正直者と嘘つきのどっち? 練習問題 29 • A「もしわたしと B が両方とも正直者なら、ウーナはこの島にいる。」 • B「もしわたしと A が両方とも正直者なら、ウーナはこの島にいる。」 さて、ウーナはこの島にいるのか? 練習問題 30 21 • A「もしわれわれの少なくとも片方が正直者なら、ウーナは島にいる。」 • B「そのとおり。」 さて、ウーナはこの島にいるのか? 練習問題 31 • A「B は正直者で、ウーナは島にいる。」 B がなんと言ったのかははっきりしない。「A は嘘つきで、ウーナは島にいない」と言っ たか、「A は嘘つきで、ウーナは島にいる」と言ったかのどちらかである。 さて、ウーナはこの島にいるのか? 22
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