株式会社 ハヤブサドットコム

Top Interview
Sustainable No.43
訪問先企業
株式会社
ハヤブサドットコム
「いい会社」を目指す。
「いい会社」
とは、
お客様、
従業員、会社が喜ぶ会社。
業界での圧倒的な存在感は、
代表取締役社長 野田 和郎 氏
個性ある社員を創る環境に
あった。
おり、電装業者も一般のお客様が入りやすい
売上に占める割合は 9:1 の割合で、ほぼ携帯
環境を整備することが必要と、国内でも先駆
電話が占めている。
けてお客様用の待合室やトイレを整備してい
今年、埼玉県に新店舗を出店したが、出店
た。それらの活動が大手通信会社の目にふれ
の為のプレゼンテーション資料を、1 週間会
自動車電話の縁があったが、父の先見性や行
社に泊まり込みで作成した。約 100 枚に及ぶ
動力があったからこそ、今があると思ってい
膨大なものであったが、おかげさまで最高の
る。2 代目としてありがたい環境で仕事をさせ
評価をもらい、埼玉県外の代理店として店舗
てもらっていることに感謝している。
をオープンすることが出来た。宇都宮の田舎
の代理店の発想が、埼玉の都心部の販売戦略
にマッチしたものだ。
●電装から携帯へ
携帯電話販売店として県内トップクラスです
野田 父が社長の時に、栃木県で 2 番目に携
帯電話の販売店を始め、一気に 3 店舗まで拡
大させた。
私が就任した当初は通信キャリア 2 社の代
理店 4 店舗を運営し、従業員が 80 名で約 20 億
円の売上高であったが、すべてのメーカーの
電装部門
携帯電話を取扱いたいとの思いで国内メー
カーすべてと契約を結び、最大 13 店舗まで拡
大した。
●「超一流」から「いい会社」へ
当社は栃木県宇都宮市に本社を置く小売業者。携帯電話事業と自動車電装品事業を中心に、県
事業面で意識していることは
底には、個性をもった社員を創る環境があった。
一流」の定義は非常に難しく、自分自身も「超
野田 「超一流」になりたいと考えている。
「超
内でも圧倒的なシェアを誇る。
「いい会社」を目標に、顧客に感動を与えるサービスを展開する根
一流」とは何なのか分からない。しかし、日
2
●父の先見性・行動力
にエアコンは自動車への標準装備となり、取
本一巨大な会社には成れないが、「超一流」
付は生産ラインに組み込まれ、外付けオプショ
の会社には成れると思っている。「超一流」
創業からの足取りを教えて下さい
ンでの取付は減少することを経営課題として
を追求していきたいとおぼろげに思いなが
野田 昭和 35 年に父である会長が、
「隼電機
認識し、危惧していた。
ら、本を読んだり、人と会ったりする中で、
商会」として創業したのが始まりだ。町の電
そんな時、大手通信会社から、当時出始め
機屋からスタートしたが、大手電装会社との
ていた自動車電話の取付の仕事の相談があっ
取引開始を契機に自動車の電装品に切り替え、
た。カーエアコンの取付が多忙を極めていた
現 在 は 従 業 員 270 名、 売 上 約 56 億 円 で、
就くことになった。会社として「超一流」を
「ハヤブサ電装㈱」に社名変更をした。昔は、
ことから、当時の担当者はその仕事を断った
NTT ドコモ社の販売店を当社で務め、他通
目指している中で、経済同友会の活動として
自動車にはエアコンが付いておらず、自動車
が、報告を受けた父は担当者を一喝し、大手
信大手 2 社については関連会社で取扱ってい
も「超一流」を追求出来るので、その研究会
保有者でエアコン装備を希望する顧客へのエ
通信会社に「是非やらせてほしい」と頭を下
る。ドコモショップは栃木県内で 6 店舗を運
のテーマを「経営者としての人間力向上」と
アコンの販売・取付が当社の主な業務であっ
げに行ったと聞いている。
営し、今年 3 月には埼玉県戸田市に新店舗を
して掲げ、日本全国や海外の元気な企業から
た。業務は多忙を極めていたが、時代ととも
父は、常々「きれいな店を作る」と言って
オープンさせた。携帯電話と自動車電装品の
学ぶことにした。
さすてなぶる(=サステナブル):「持続可能性」という意味。
サステナブルという言葉には、単に維持・持続できるということだけでなく、
次世代に向けた発展を追求し続けるという意味合いが含まれている。
本項では、あしぎん総合研究所の会員企業の中から、毎月1社訪問インタビュー
させていただき、その企業の特徴や強み、今後の課題等を紹介させていただく
コーナーである。
あしぎん経済月報 Vol.63 2014年8月号
携帯電話販売店
昨年、栃木県経済同友会の「未来経営研究会」
の代表世話人として活動を行っていく立場に
あしぎん経済月報 Vol.63 2014年8月号
3
●コミュニケーションで「心」の整備を
社員制度は暫定的にご子息の小学校入学まで
“お客様よし、従業員よし、会社よしの三方
女性活用について積極的です
延ばしたいと考えている。
よし” を掲げ取組んでいる。
野田 よく人材育成、社員教育はどうされて
ハード、ソフトの整備は整ってきたが、ま
経営理念についても、私が社長に就任した
いますかと聞かれるが、一切行っていない。
だまだ運用上の課題は多く、これからは「心」
時に初めて行った仕事であり、経営理念策定
そのかわり、毎日朝礼で超一流とはなど長い
の整備が必要と考えている。そのためには、
委員会をつくり、全従業員から “どんな会社
時間をかけて話をする。従業員は皆、熱い思
従業員の目線になって、現場とコミュニケー
で働きたいか、どんな会社に当社をしたいか”
いを持った “すばらしい人財” である。
ションをとり、経営者の考えと現場の考えが
とのアンケートを自由記述で行った。そこか
託児所付のショップを作ったが、作りたい
融合できるように、経営者自らがアプローチ
ら出たキーワードを集約し、先代である父か
と思ったのは 10 年以上前である。補助金の関
していくことだ。従業員とはこれからもっと
ら「心」の一文字を貰ったものが、今の経営
係等もあって、その時は見送ったが、当時か
対話をしてコミュニケーションをとり、お互
理念である「創造・感動・幸福」である。常
ら従業員には必ず作ると約束していた。今で
いがお互いを助け合い、共感・共鳴を生み出
に経営理念に真摯に向き合って経営して行く
こそ、アベノミクスの成長戦略で女性活用が
す文化のある会社にしていきたい。それが
「い
ことが、永遠のテーマだ。
掲げられているが、決して時流に乗って女性
い会社」に繋がるのだ。
のことを、当たり前にやる” との定義を掲げ
何十年と継続してきたが、「いい会社」では、
としてあるが、将来は小学校 3 年生位までに
活用の為に託児所を作った訳では無く、すべ
て経営理念に基づくものである。
最初の例会に、長野県の伊那食品工業㈱※ 1
女性従業員は妊娠すると退職してしまう
に行き話を聞く計画を立てたが、訪問にあた
ケースが多く、出来る女性ほど早く退職して
り、塚越会長の書かれた「年輪経営」の本を
しまっていた。彼女達が子供を預けながら働
次の一手は
読んだところ、伊那食品工業㈱の社是が「い
けたら良いと考えて託児所を作ったが、実際
野田 当社は自動車電装の業務も行っている
い会社をつくりましょう」で、私の考える「超
は託児所を利用するための社内制度が整備さ
が、中心は携帯電話の販売会社となっている。
一流」と共鳴・共感するものがあった。それ
れていなかったので、最初は上手く行かな
本社を構える宇都宮市内の再開発も見込める
がきっかけで、当社内にも「いい会社づくり
かった。
なかで、宇都宮市の発展とともに、日本で最
委員会」を私のトップダウンで立ち上げ、
「い
すぐに育児短時間正社員制度など、社内制
先端のサービスが出来る最先端の携帯販売店
い会社」を目指す活動を始めることにした。
度の整備に取り掛かり、産休制度整備では、
を市内好立地に出店していきたい。栃木県以
「いい会社づくり委員会」では、全従業員
全店長・副店長に対して “妊娠している女性
外にも是非出店したいと考えている。
にアンケートをとり、全従業員が何を考えて
がいかに大変か” の研修も実施した。他の従
しかし、当社は大手通信会社の代理店であ
いるのかを知ることから始め、委員会メン
業員の負担も大きくなることから、短時間正
り、当社の意向だけで出店できるものではな
バーがすべてのアンケートを読み込んだ。す
い。出店計画の際に声が掛かるためには、今、
べての従業員の問いかけに回答し、良い提案
元気な会社であることが最低条件である。そ
に関しては深堀りを行い、単純な改善から、
のためには、全力で走り続け、大手通信会社
部署をまたいだ改善まで、業歴 50 年の溜まっ
の代理店として、
「日本でいちばん大切にし
ている “経営の垢” を落とす活動を行った。
たい会社※ 2」
(坂本光司氏著)に載せてもら
その後、伊那食品工業㈱へ訪問し、対談形式
のディスカッションをさせていただいたこと
えるような会社となり “選ばれる代理店” と
経営理念
なることが必要であると考えている。従業員
全員で協力して真の「いい会社」となるべく、
を契機に「いい会社づくり委員会」を当社で
本格稼働させた。「超一流」では、“当たり前
※1 伊那食品工業㈱:長野県伊那市にある寒天、ゲル化剤の製造業者。創業
以来48年間増収増益を達成し、一流企業の経営者の関心が高い。
4
●
「日本でいちばん大切にしたい会社」
となる
あしぎん経済月報 Vol.63 2014年8月号
社内風景
会社として戦略的に動いている。
※2 日本でいちばん大切にしたい会社:あさ出版より刊行された書籍。著者
は坂本光司氏。
あしぎん経済月報 Vol.63 2014年8月号
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会社概要
おかげさまで、全国の代理店の順位で常に
お客様の「にこにこ」と「わくわく」が
私たちの喜びです。
トップクラスに入るお店がいくつもある。個
人成績でも上位を占める従業員が多く、当社
株式会社 ハヤブサドットコム
には「タカマツ方式」や「ムラタ方式」等、
従業員の名前がついた販売手法がいくつもあ
代表取締役社長 野田 和郎
る。これはいい意味での競争意識と良い手法
本 社/栃木県宇都宮市上横田町 853
電 話/ 028-659-8823
創 業/昭和 35 年 8 月
資 本 金/ 31 百万円
年 商/ 4,603 百万円(2013 年 5 月現在)
従 業 員/ 270 名(グループ)
事業内容/移動体通信事業(NTT ドコモの携帯電話の販売)
自動車電装事業(ETC、NAVI 等自動車電装商品の販売、取付、修理等)
を共有する風土が根付いるからである。従業
員の高いモチベーションと競争環境が生み出
した成果である。
かつては、従業員には「情熱」を持ってほ
しいと伝えていたが、今は、固有の能力を引
聞き手:あしぎん総合研究所 主席研究員 豊田晃
き出す環境を整備してあげることだと考えて
いる。皆それぞれ固有の能力を有しており、
それを最大限引き出せれば、その人の幸せに
足利銀行江曽島支店 小池支店長 より一言
繋がる。以前はある意味で “携帯電話販売ロ
このたびはたいへんお忙しい中取材をお受けいただきまして、ありがとうございました。
ボット” を育成していたような気がするが、
ホノルルや各地のフルマラソンへの参加など日頃お聞きしているお話に加え、今回経営の
ご方針や組織運営のお話をお聞きし、リーダーとしてエネルギッシュに環境変化を突破して
ロボットから個性を持った魅力的な人間を育
行く姿勢を見せていただき、たいへん勉強になりました。
成するべく、能力を発揮しやすい環境を整備
強い行動力と意思を持つ社長のリーダーシップで個性あふれる「いい会社」を目指し、
し、いろいろな経験・研修を通じて総合的に
時代とともにまた定義も変化して行くと思われる「超一流」に向かっていただけることを心か
教えてあげることが会社の責任であると考え
ている。
本社
らお祈り申し上げ、お礼とさせていただきたいと存じます。ありがとうございました。
表彰(優秀経営者賞)
取材後記
5 ~ 10 年の一昔前、今日のスマートフォンの普及をいったい誰が想像できたでしょうか?携帯通信機器は、今やライ
フラインの一つともなっています。
そして今もなお、端末やタブレットも含めた通信機器のスペックは日々刻々と進化を遂げており、新機種へのモデルチェ
ンジも後を絶ちません。そのため、これらの商品を「難しい」というイメージを持たれる方も正直多いのではないでしょ
うか。
しかし、ハヤブサドットコムの提案にかかれば、そんな難しいイメージはたちまち一転、便利で魅力あるものに変わり、
“にこにこ” “わくわく” してくることでしょう。
このように、同じ商品を売っている携帯ショップの中でも、なぜハヤブサドットコム様は違うのでしょう?なぜ販売実
績全国トップクラスの店舗や社員を輩出できるのでしょうか?それは、野田社長のお言葉にある「お客様、従業員、会社、
三方よしの “いい会社づくり”」がいろいろな形で実践され、社員の皆さまも実感しているからではないでしょうか。例
えば、
「未来開発室」の新設による最新情報の収集・発信、全国初の「ケータイショップ併設の託児所」設置による働
きやすい環境づくり、成功事例や販売手法の社員間の「共感・共有」、社長の情熱が社員一人ひとりに伝わる「コミュニ
ケーション」、各 “人財” 固有の能力を引き出す「環境の整備」などなど・・・。書ききれないほど参考になるお話でいっ
ぱいの取材でした。
今後通信業界がどのような進化を遂げようとも、ハヤブサドットコム様は止まることなく「にこにこ」と「わくわく」を
発信し続けます!(菅原)
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あしぎん経済月報 Vol.63 2014年8月号
あしぎん経済月報 Vol.63 2014年8月号
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