第02章 「ディジタル伝送と誤り発生モ デル」

目次
1.ディジタル変調
2.ディジタル伝送系モデル
3.符号判定誤り確率
4.2元対称通信路
第02章
「ディジタル伝送と誤り発生モ
デル」
参考文献
安達著:通信システム工学,朝倉書店,2007年
安達:コミュニケーション符号理論
安達:コミュニケーション符号理論
1
2
変調とは?
基底帯域(ベースバンド)伝送の信号波形は零周波数付
近のスペクトルを持っている.
しかし,現実の大部分の通信路は零周波数付近を殆ど
伝送することができない帯域通信路とみなされる.無線
通信路はまさにそういう通信路である.
ベースバンド信号を通信路に最適な周波数帯域へ移す
技術が変調である.
変調された信号(被変調信号)の表現
第02章
「ディジタル伝送と誤り発生モデル」
1.ディジタル変調
s (t )  Ac (t ) cos2f c t   (t ) 
振幅変調
安達:コミュニケーション符号理論
3
位相あるいは
周波数変調
安達:コミュニケーション符号理論
4
ディジタル被変調信号の生成
等価低域表現
送信2値(0,1)データ系列に対応したI(t)とQ(t)の波形
を生成し,搬送波成分cos(2fct)とsin(2fct)とに乗積
する.
s (t )  Re(t ) exp( j (t ))Ac exp( j 2f c t )
搬送波に関係しない項(t ) exp( j (t ))は,被変調信号の

等価低域表現と呼ばれる.

s(t )  Re I (t )  jQ(t ) 2P exp j 2f ct
ここで
 2P I (t ) cos(2f ct )  Q(t ) sin(2f ct )
(t ) exp( j (t ))  I (t )  jQ (t )

 P  Ac2 / 2
とおくと
発振器 ~ cos(2fct)
2P
{an} 送信フィルタ I(t)
s (t )  2 P Re[{I (t )  jQ (t )}exp( j 2f c t )]
 2 P ReI (t )  jQ (t )cos(2f c t )  j sin(2f c t )
2値(0,1)
データ
系列
I (t ) cos(2f c t )  Q(t ) sin(2f c t ) 
 2 P Re 

 j I (t ) sin(2f c t )  Q(t ) cos(2f c t )
HT(f)
s(t)
データ
変調器
{bn}
送信フィルタ Q(t)
HT(f)
電力増幅器
- sin(2fct) /2
 2 P I (t ) cos(2f c t )  Q(t ) sin( 2f c t )
安達:コミュニケーション符号理論
位相シフト
安達:コミュニケーション符号理論
6
11
多値PSKと多値QAM
2~16PSKの信号点配置(sn= an + jbn)
bn
16QAMの信号点配置(sn= an + jbn)
16QAMでは直交する2つの搬送波を振幅変調(ASK)す
る.
010
11
01
110
an
1
111
001
1
0
011
10
00
(a) 2PSK
(b) 4PSK
000
3 / 10
0011
0010
0000
0001
1 / 10
 1 / 10
1110
1111
1011
1010
1000
1001
0110
101
100
(c) 8PSK
0101
0100
1101
1100
0110
0111
0100
11
 3 / 10
(d)16PSK
01
10
00
0111
10
00
01
16QAM
安達:コミュニケーション符号理論
12
11
0011
0010
0000
0001
0101
1101
1100
1110
1
1111
1011
1010
1000
1001
16PSK
安達:コミュニケーション符号理論
14
多値PSKのI(t)とQ(t)の波形(その1)
Q
帯域幅一定のまま伝送レートを高速化
送信する2値データ
1
1
0
1
0
 I (t )  jQ (t )
0
+1
t
(a)2PSK I(t)
(t ) exp( j (t ))
I
1
0
-1
t
Q(t)
11
01
11 01 00
 1/ 2
I(t)
 1/ 2
(b)4PSK
10
00
Q(t)
第02章
「ディジタル伝送と誤り発生モデル」
2.2PSK伝送系モデル
010
110 100
 1/ 2
I(t)
高速伝送 (c)8PSK
011
110
111
Q(t)
001
-1
000
100
101
安達:コミュニケーション符号理論
安達:コミュニケーション符号理論
15
2PSK信号表現
同期検波
● 送信シンボルsn  an  jbn 
●an  1が送信されたのか, 1が送信されたのかを判定.
●受信信号の搬送波に位相同期した局部発信信号2 cos2f c t  を受信信号に乗算
2PSK変調のとき,bn  0なので,snは次式のようになる.
hT(t)
sn  an  1
1
● 矩形インパルス応答を有する送信フィルタ
r (t )  2 cos2f c t    2 P an 2 cos 2 2f c t    n(t )  2 cos2f c t  , nT  t  (n  1)T
●上式は次式のように変形できる.
r (t )  2 cos2f c t    2 P an cos2(2 f c )t  2  1
 nc (t ) cos2f c t   2 cos2f c t    ns (t ) sin 2f c t   2 cos2f c t  
t
0  t  Tのとき
1,
hT (t )  
0, その他
2PSK変調のI (t )  jQ(t )
● I (t )  an  1, Q(t )  0,
0
T
 2 P an cos2(2 f c )t  2  1
矩形インパルス応答hT(t)
 nc (t )cos2(2 f c )t    cos   ns (t )sin 2(2 f c )t    sin 
Q
nT  t  (n  1)T  2 P an  nc (t ) cos   ns (t ) sin 
 2 P an cos2(2 f c )t  2  nc (t ) cos2(2 f c )t    ns (t ) sin 2(2 f c )t  
● 搬送波振幅Ac
I
送信電力をPとすると,Ac  2 P
0
同期検波
1
(a)同期検波器入力
2PSK信号
● r(t)
anを送信している時間(nT  t  (n  1)T )の2PSK信号の表現
s (t )  2 P an cos(2f c t ),
18
(2fc成分を遮断)
nT  t  (n  1)T
安達:コミュニケーション符号理論
低域通過
フィルタ
(b)同期検波出力
rˆ(t )  2 P an  nˆ (t )
2cos(2fct+)
19
安達:コミュニケーション符号理論
22
符号判定
an= + 1が送信されたのか,an= -1 が送信されたのか如何にして
判定したらいいか.
同期検波出力には雑音が含まれている.雑音を低減するために時
間区間[nT~(n+1)T]で積分する.
この積分フィルタは積分放電フィルタ(Integrate & Dump filter)
と呼ばれる.
フィルタ出力が正ならan= +1が送信された,負であればan= -1が
送信されたと判定する.
●搬送波周波数の2倍の成分をフィルタで遮断すると,次式が得られる.
rˆ(t )  2 P an  nˆ (t )
ここで,
nˆ (t )  nc (t ) cos   ns (t ) sin 
は,両側電力スペクト ル密度がN 0の零平均白色ガウス性雑音である.
積分フィルタ出力rnは次式のようになる.
同期検波
(a)同期検波器入力
低域通過
フィルタ
r(t)
rn 
(b)同期検波出力
(2fc成分を遮断)
rˆ(t )  2 P an  nˆ (t )
1
T
( n 1)T
nT
rˆ(t )dt
ここで,rˆ(t )  2 P an  nˆ (t )であるから,軟判定値は
1 ( n 1)T
nˆ (t )dt  2 P an  nn
T nT
である.第2項nnは雑音成分である.ところで,nˆ (t )は両側電力スペクトル密度N 0の
rn  2 P an 
2cos(2fct+)

零平均白色ガウス雑音であるから,雑音成分nnは零平均のガウス変数になる.
安達:コミュニケーション符号理論
安達:コミュニケーション符号理論
23
26
rˆ(t )  2 P an  nˆ (t )
2 P an
nT
t
(n+1)T
2 P a n 1
2 P an 1
第02章
「ディジタル伝送と誤り発生モデル」
rn
rˆ(t )

1
T
( n 1)T
nT
rn
rˆ(t )dt
積分フィルタ
aˆ n
  1, if rn  0

  1, otherwise
正負判定
aˆ n  1  dˆ n  1
aˆ  1  dˆ  0
n
3.符号判定誤り確率
dˆ n  {1,0}
n
符号変換
安達:コミュニケーション符号理論
27
安達:コミュニケーション符号理論
28
積分フィルタ出力の条件付き確率密度
関数
積分フィルタ出力の統計的性質
●rnは平均 2 P anのガウス変数である.その分散 2は
●rnは次式で与えられている.
2
 2  E  rn  2 P an   E nn2


2
 1 ( n 1)T
1 ( n 1)T ( n 1)T
ˆ
n(t )dt   2
E nˆ (t )nˆ (t )dtdt 
 E 
nT
nT
 T
 T nT
ここで,E[.]は期待値を求める操作である.E nˆ (t )nˆ (t )は雑音nˆ (t )
の自己相関関数Rnn (  t  t )である.
rn  2 P an  nn


 


●anが送信されたとき,rnは平均 2 P anで標準偏差の正規分布
にしたがって変動する.

●anが送信されたときのrˆnの確率は条件付き確率と呼ばれる.
条件付き確率密度関数p (rn an )は
p (rn an ) 
●nˆ (t )が両側電力スペクトル密度N 0の零平均白色ガウス性
雑音であることから
E nˆ (t )nˆ (t )  Rnn (  t   t )  N 0 (t  t )

 r  2P a
n
exp  n

2 2
2

1
 
2


である.
an  1のとき
p (rn an )
an  1のとき
となる[通信システム工学参照].(.)はデルタ関数である.
●したがって
 2 
1
T2
( n 1)T
nT
( n 1)T
nT
N 0 (t  t )dtdt  
1
T2
( n 1)T
nT
N 0 dt 
N0
T
rn
安達:コミュニケーション符号理論
0
 2P
29
誤り領域
 2P
安達:コミュニケーション符号理論
30
判定誤り確率
rnが負になる
●an  1が送信されたときの判定誤り確率pは,~
確率であるから
an  1のとき
p (rn an )
p  
an  1のとき
rn
an  1のとき
の誤り領域
0
 
p (rn an  1)drn 
 2P
 
 
 dr
2


n
1
 P / 2
  
1


  P/
exp  x 2 dx 
2
 
exp  x 2 dx 

 r  2P 2 
dr  1 erfc P 
p  
exp  n
2

 n 2
 2 
0
2
2




ここで,erfc y は誤差補関数である.

an  1のとき
の誤り領域

1
1
1
erfc y  
2

安達:コミュニケーション符号理論

 r  2P
exp  n

2 2
2

1
0
 P 
1

erfc
 2 
2


●同様にして,an  1が送信されたときの判定誤り確率pは

 2P
0
31
2
y exp t dt

安達:コミュニケーション符号理論
32
2PSKのビット誤り率
●ところで, 2  N 0 / Tであるから
P
PT E b


2 N 0 N 0
ここで,E b  PTは1ビット当たりの信号エネルギーである.
-1
10
2PSKの判定誤り率
2PSKのビット誤り率
 Eb 
1

p  erfc
 N0 
2


●以上より,a n  1と  1の判定誤り確率は等し くなり(つまり
ビット誤り率p
Error probability
p   p   p),次式で表される.
-2
10
 Eb 
1
1
1

p  p   p   erfc
 N0 
2
2
2


これは,ビット誤り率 と呼ばれている.
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
0
2
4
6
8
10
Eb/N0 (dB)
安達:コミュニケーション符号理論
安達:コミュニケーション符号理論
33
34
Eb/N0とは?
電力スペクトル密度
片側電力スペクトル密度N0 (Watt/Hz)の白色雑音を考
える.(数学的には-∞から+∞にわたる周波数領域に
N0/2で一様に分布しているとして扱う.)
Eb/N0は情報1ビットあたりの信号エネルギー対雑音電
力スペクトル密度比のことであり,受信信号がどのくらい
雑音より強いかを表わす指標である.
第02章
「ディジタル伝送と誤り発生モデル」
0
4.2元対称通信路
N0
白色雑音
f
安達:コミュニケーション符号理論
35
安達:コミュニケーション符号理論
37
第03章
「通信路符号化方式の概要」
通信路符号化の目的
符号と符号語
誤り検出・誤り訂正符号
2PSK伝送のとき,“1”→“0”に誤る場合と “0”→“1”に誤
る2つの場合があるが,この2つの判定誤り確率(ビット誤
り率)は等しい.
誤り訂正符号化
誤りパターン
誤りの検出と訂正
符号化の概念
符号化率(Code rate)
 Eb 
1

p  p  p  erfc
 N0 
2


こういう通信路を2元対称通信路と言う.
ビット誤り率をpとすると,送信データと受信データとは次
のような確率的関係にある.
1-p
“1”
dn= “1”
p
(an=+1)
受信
送信
p
(an= 1)
“0”
dn= “0”
1-p
安達:コミュニケーション符号理論
ユークリッド距離とハミング距離
1ビット誤りを検出する符号
単一パリティ検査符号 水平垂直パリティ検査符号
1ビット誤りを訂正する符号
(7,4)ハミング符号 –
符号化データのインタリーブ
自動再送
Stop-and-wait ARQ
Go-Back-N ARQ
Selective-repeat ARQ
38
安達:コミュニケーション符号理論
39