20-HETEの活性を調節することによって血管新生を制御 する方法が開示

JP 2007-511522 A 2007.5.10
(57)【要約】
20-HETEの活性を調節することによって血管新生を制御
する方法が開示される。更に、がん及び腫瘍細胞を20-H
ETE阻害剤に接触させることによってがん及び腫瘍細胞
増殖を阻止する方法が開示される。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
20-HETE合 成 阻 害 剤 又 は 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト か ら 選 ば れ る 薬 剤 を 、 組 織 中 に お け る 血
管新生を減少させるのに十分な量、ヒト又は非ヒト哺乳類に投与する工程
を含む、ヒト又は非ヒト哺乳類の組織中の血管新生を減少させる方法。
【請求項2】
前 記 薬 剤 が 20-HETE合 成 阻 害 剤 で あ る 、 請 求 項 1 の 方 法 。
【請求項3】
前 記 20-HETE合 成 阻 害 剤 が 、 N-ヒ ド ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ノ ー ル )-ホ ル ム
ア ミ ジ ン ( HET0016) 、 ジ ブ ロ モ ド デ セ ニ ル メ チ ル ス ル ホ ン イ ミ ド ( DDMS) 、 N-(3-ク ロ
10
ロ -4-モ ル ホ リ ン -4-イ ル )フ ェ ニ ル -N'-ヒ ド ロ キ シ イ ミ ド ホ ル ム ア ミ ド ( TS-011) 、 1-ア
ミ ノ ベ ン ゾ ト リ ア ゾ ー ル ( ABT) 、 17-オ ク タ デ シ ン 酸 ( 17-ODYA) 、 ケ ト コ ナ ゾ ー ル 、 ミ
コ ナ ゾ ー ル 、 フ ル コ ナ ゾ ー ル 、 又 は 10 ウ ン デ シ ニ ル サ ル フ ェ ー ト ( 10-SUYS) か ら 選 ば
れる、請求項2の方法。
【請求項4】
前 記 20-HETE合 成 阻 害 剤 が HET0016又 は TS-011で あ る 、 請 求 項 3 の 方 法 。
【請求項5】
前 記 薬 剤 が 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト で あ る 請 求 項 1 の 方 法 。
【請求項6】
前記方法が、成長因子によって誘導される血管新生を減少させるために用いられる、請
20
求項1の方法。
【請求項7】
前 記 成 長 因 子 が 、 血 管 内 皮 成 長 因 子 ( VEGF) 、 基 本 線 維 芽 細 胞 成 長 因 子 ( bFGF) 、 及 び
上 皮 細 胞 成 長 因 子 ( EGF) か ら 選 ば れ る 、 請 求 項 6 の 方 法 。
【請求項8】
前記方法が、がん又は腫瘍細胞によって誘導される血管新生を減少させるために用いら
れる、請求項1の方法。
【請求項9】
前記方法が、非筋肉組織中における血管新生を減少させるために用いられる、請求項1
の方法。
30
【請求項10】
前記方法が、ヒト又は非ヒト哺乳類における異常かつ過剰な血管の発達を伴う疾病又は
症状を、治療又は予防するために用いられる、請求項1の方法。
【請求項11】
前記疾病ががんである、請求項10の方法。
【請求項12】
前記疾病が異常かつ過剰な血管の発達を伴う眼病である、請求項10の方法。
【請求項13】
組 織 中 で の 血 管 新 生 を 減 少 さ せ る の に 十 分 な 量 で 、 N-(3-ク ロ ロ -4-モ ル ホ リ ン -4-イ ル )
フ ェ ニ ル -N'-ヒ ド ロ キ シ イ ミ ド ホ ル ム ア ミ ド ( TS-011) 、 N-ヒ ド ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル -2-
40
メ チ ル フ ェ ノ ー ル )-ホ ル ム ア ミ ジ ン ( HET0016) 、 又 は ジ ブ ロ モ ド デ セ ニ ル メ チ ル ス ル
ホ ン イ ミ ド ( DDMS) を 哺 乳 類 に 投 与 す る 工 程
を含む、ヒト又は非ヒト哺乳類の組織中での血管新生を減少させる方法。
【請求項14】
20-HETE又 は 20-HETEア ゴ ニ ス ト か ら 選 ば れ る 薬 剤 を 、 組 織 中 で 血 管 新 生 を 促 進 す る の に
十分な量でヒト又は非ヒト哺乳類に投与する工程
を含む、ヒト又は非ヒト哺乳類の組織中における血管新生を誘導又は促進する方法。
【請求項15】
前 記 薬 剤 が 20-HETEア ゴ ニ ス ト で あ る 、 請 求 項 1 4 の 方 法 。
【請求項16】
50
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前記方法が、非筋肉組織中における血管新生を促進するために用いられる、請求項14
の方法。
【請求項17】
前記方法が、ヒト又は非ヒト哺乳類における不十分な血管の発達又は血管の退行を伴う
疾病又は症状を、治療又は予防するために用いられる、請求項14の方法。
【請求項18】
組 織 中 で 血 管 新 生 を 誘 導 又 は 促 進 す る の に 十 分 な 量 で 、 20 ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ -6(Z)
、 15(Z)-ジ エ ン 酸 を 哺 乳 類 に 投 与 す る 工 程
を含む、ヒト又は非ヒト哺乳類の組織中における血管新生を誘導又は促進する方法。
【請求項19】
10
が ん 又 は 腫 瘍 細 胞 の 増 殖 を 阻 止 す る の に 十 分 な 量 の 、 20-HETE合 成 阻 害 剤 又 は 20-HETEア
ンタゴニストから選ばれた薬剤にがん又は腫瘍細胞を接触させる工程
を含む、がん又は腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項20】
前 記 薬 剤 が 20-HETE合 成 阻 害 剤 で あ る 、 請 求 項 1 9 の 方 法 。
【請求項21】
前 記 20-HETE合 成 阻 害 剤 が 、 N-ヒ ド ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ノ ー ル )-ホ ル ム
ア ミ ジ ン ( HET0016) 、 ジ ブ ロ モ ド デ セ ニ ル メ チ ル ス ル ホ ン イ ミ ド ( DDMS) 、 N-(3-ク ロ
ロ -4-モ ル ホ リ ン -4-イ ル )フ ェ ニ ル -N'-ヒ ド ロ キ シ イ ミ ド ホ ル ム ア ミ ド ( TS-011) 、 1-ア
ミ ノ ベ ン ゾ ト リ ア ゾ ー ル ( ABT) 、 17-オ ク タ デ シ ン 酸 ( 17-ODYA) 、 ケ ト コ ナ ゾ ー ル 、 ミ
20
コ ナ ゾ ー ル 、 フ ル コ ナ ゾ ー ル 、 又 は 10 ウ ン デ シ ニ ル サ ル フ ェ ー ト ( 10-SUYS) か ら 選 ば
れる、請求項20の方法。
【請求項22】
前 記 20-HETE合 成 阻 害 剤 が HET0016又 は TS-011で あ る 、 請 求 項 2 1 の 方 法 。
【請求項23】
前 記 薬 剤 が 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト で あ る 、 請 求 項 1 9 の 方 法 。
【請求項24】
前記がん又は腫瘍細胞がヒト又はラットのグリオーマ細胞である、請求項19の方法。
【請求項25】
前記方法が、ヒト又は非ヒト哺乳類に薬剤を投与することにより、ヒト又は非ヒト哺乳
30
類におけるがん又は腫瘍を治療又は予防するために用いられる、請求項19の方法。
【請求項26】
前記がんが、グリオーマ(神経膠腫)、アストロサイトーマ、腸がん、乳がん、皮膚が
ん、肺がん、胃がん、前立腺がん、甲状腺がん、肝がん、膵臓がん、腎がん、大腸がん、
又は卵巣がんから選ばれる、請求項25の方法。
【請求項27】
前記がんが、グリオーマ(神経膠腫)、乳がん、皮膚がん、前立腺がん、膵臓がん、又
は大腸がんから選ばれる、請求項26の方法。
【請求項28】
腫 瘍 又 は が ん 細 胞 の 増 殖 を 阻 止 す る の に 十 分 な 量 の 、 N-(3-ク ロ ロ -4-モ ル ホ リ ン -4-イ
40
ル )フ ェ ニ ル -N'-ヒ ド ロ キ シ イ ミ ド ホ ル ム ア ミ ド ( TS-011) 、 N-ヒ ド ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル
-2-メ チ ル フ ェ ノ ー ル )-ホ ル ム ア ミ ジ ン ( HET0016) 、 又 は ジ ブ ロ モ ド デ セ ニ ル メ チ ル ス
ル ホ ン イ ミ ド ( DDMS) に 、 腫 瘍 又 は が ん 細 胞 を 接 触 さ せ る 工 程
を含む、腫瘍又はがん細胞の増殖を阻止する方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
こ の 出 願 は 、 米 国 仮 出 願 60/520,172( 2003年 11月 14日 出 願 ) の 利 益 を 主 張 す る が 、 参 考
までに述べると、その基礎出願のすべての内容は、本出願に含まれている。
【連邦政府により援助を受けた研究又は開発に関する記述】
50
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【0002】
こ の 発 明 は 、 次 の 政 府 機 関 : NIH EY014385及 び HL036279に よ り 裁 定 さ れ 、 米 国 政 府 の
援助のもとで行われた。米国政府は、この発明についてある権利を有している。
【発明の背景】
【0003】
アラキドン酸の代謝に由来する産物は、血管及び細胞増殖の調節に関係している。アラ
キ ド ン 酸 の 代 謝 が シ ト ク ロ ム P450に よ り 触 媒 さ れ て い る と す れ ば 、 そ れ ら の 主 要 代 謝 産 物
は 、 位 置 的 − 及 び 立 体 的 に 特 異 性 を 有 す る 、 エ ポ キ シ エ イ コ サ ト リ エ ン 酸 ( EETs) 、 そ れ
ら の 対 応 す る ジ ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ ト リ エ ン 酸 ( DHETs) 、 及 び 20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ ト
リ エ ン 酸 ( 20-HETE) で あ る 。 シ ト ク ロ ム P450は 、 同 様 に ア ラ キ ド ン 酸 を 16-、 17-、 18-及
10
び 19-HETEに 代 謝 さ せ 得 る 。 CYP450の す べ て の ア イ ソ マ ー の 中 で は 、 ア ラ キ ド ン 酸 の ω −
水 酸 化 に よ る 20-HETEへ の 移 行 に 関 与 す る 主 た る 酵 素 は 、 CYP450 4A( CYP4A) 及 び CYP450
4F( CYP4F) フ ァ ミ リ ー で あ る ( Roman RJ., Physiol. Rev 82: 131-185, 2002) 。
【0004】
生理的状態における血管新生は、細胞間の相互作用、細胞間質分子、細胞移動を最大に
する液性因子、分裂及び内皮細胞の分化等の相互作用が関与する複雑な過程をたどる。血
管新生の経過は、先在する血管が関与するが、その先在する血管は、新しい血管を伸長さ
せ る た め に 毛 細 血 管 を お く り 出 し て い る ( Hanahan Dら 、 Sciene 277: 48-50, 1997) 。
血 管 内 皮 細 胞 増 殖 因 子 ( VEGF) 、 基 本 的 な 繊 維 芽 細 胞 増 殖 因 子 ( bFGF) 、 表 皮 細 胞 増 殖 因
子 ( EGF) の よ う な 数 種 の サ イ ト カ イ ン と 成 長 因 子 に よ り 、 イ ン ビ ト ロ 及 び イ ン ビ ボ で 血
20
管 新 生 を 調 節 す る 系 が 確 立 さ れ て お り 、 こ れ ら の 増 殖 因 子 の 中 で 、 VEGFが 最 も 効 果 の 高 い
有 効 な 誘 導 剤 で あ る と 考 え ら れ て い る ( Ferrara N, Am J Physiol Cell Physiol 2
80: C1358-C1366, 2001) 。 最 近 の 研 究 は 、 骨 格 筋 に お け る 血 管 新 生 の 重 要 な 調 節 因 子 と
し て 、 VEGFの 役 割 が 更 に 支 持 し て い る が 、 こ れ は 、 VEGF-中 和 抗 体 が 電 気 的 刺 激 及 び 運 動
に 反 応 す る 血 管 新 生 を 阻 止 し た か ら で あ る ( Amaral SLら 、 Microcirculation 8: 57-67
, 2001; Amaral SLら 、 Am J Physiol Heart Circ Physiol 281: H1163-H1169, 20
01) 。
【0005】
アラキドン酸のエポキシゲナーゼ代謝物は内皮細胞の遊走及び培養細胞の管形成に関係
す る と さ れ て い る ( Natarajan Rら 、 Am J Physiol Heart Circ Physiol 273: H22
30
24-H2231, 1997: Natarajan R.ら 、 Proc Natl Acad Sci USA 90: 4947-4951, 1993
; 及 び Rieder MJら 、 MicrovaSC Res 49: 180-189, 1995) 。 最 近 の 研 究 は 、 骨 格 筋 細
胞 及 び ラ ッ ト の 精 巣 挙 筋 動 脈 に お い て 、 ω − 水 酸 化 酵 素 で あ る チ ト ク ロ ム P450A( CYP4A)
が 発 現 す る 証 拠 が 提 供 さ れ た 。 20-HETEが 、 脳 及 び 腎 の 循 環 の 小 動 脈 に お い て ミ オ シ ン の
活 性 化 に お い て 役 割 を 演 ず る こ と が 示 さ れ た ( Harder DRら 、 J VaSC Res 34: 237-24
3, 1997; Harder DRら , Acta Physiol Scand 168: 543-549, 2000; 及 び Ma YHら 、 A
m J Physiol Heart Circ Physiol 280: H1066-H1074, 2001) 。 Frisbeeら ( Am J
Physiol Heart Circ Physiol 280: H1066-H1074, 2001) 及 び Kunertら ( Microcirc
ulation 8: 435-443, 2001) は 、 20-HETEが 壁 を 越 え て 血 管 収 縮 神 経 の 反 応 を 高 め 骨 格 筋
の 抵 抗 性 動 脈 に 酸 素 分 圧 ( PO2 ) を 上 昇 さ せ る こ と を 示 し た 。
40
【0006】
最 近 の 研 究 は 、 ノ ル エ ピ ネ フ リ ン と ア ン ギ オ テ ン シ ン II( ANG II) が 、 平 滑 筋 細 胞 の
血 管 内 で 20-HETEの 合 成 と 放 出 を 促 進 す る こ と を 示 唆 し た ( Muthalif MMら 、 J Bil Che
m 271: 30149-30157, 1996) そ し て シ ト ク ロ ム P450阻 害 剤 は 、 MAPK系 活 性 化 、 及 び 培 養
血 管 平 滑 筋 細 胞 ( VSM) に 対 し て ノ ル エ ピ ネ フ リ ン と ANG IIの 効 果 を 阻 止 し た 。 20-HETE
が 、 ANG IIの 血 管 収 縮 作 用 の セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ー と し て 働 く こ と ( Alosnso-Garci
a Mら 、 Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 283: R60-R68, 2002) 、 そ し
て、局所のレニン−アンギオテンシン系は、電気刺激により誘導される血管形成における
臨 界 的 な 役 割 を 演 ず る ( Amaral SLら 、 Microcirculation 8: 57-67, 2001) 。 し か し な
が ら 、 筋 肉 の 電 気 刺 激 に 続 い て 起 こ る ANG IIの 血 管 形 成 効 果 を 仲 介 す る 20-HETEの 役 割 は
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明らかではない。
【0007】
20-HETEは 、 培 地 中 で 増 殖 し た 腫 腫 の タ イ プ の 正 常 な 細 胞 増 殖 を 促 進 す る 役 割 を 演 ず る
と 考 え ら れ て い る 。 例 え ば 、 20-HETEは 、 VSM細 胞 に お い て ( Muthalifら 、 Hypertension 36: 606-609, 2000; 及 び Uddinら 、 Hypertension 31: 242-247, 1998) 及 び 、 中 心 に 近
い 細 尿 管 上 皮 細 胞 に お い て ( Linら 、 Am. J. Physiol. 269: F806-F816, 1995) 、 チ ミ ジ
ン の 取 り 込 み を 促 進 し た 。 こ れ ら の 細 胞 の 両 方 に お い て 、 イ ン ビ ト ロ で の EGFの マ イ ト ジ
ェ ン 活 性 は 、 20-HETEの 産 生 増 加 を 伴 っ た ( Muthalif MMら 、 Proc Natl. Acad. Sci. US
A 1998, 95: 12701-12706; 及 び Linら 、 Am J Physiol 1995, 269: F806-16) 。 20-HE
TEの 産 生 を 阻 止 す る と 、 血 清 、 ノ ル エ ピ ネ フ リ ン 、 及 び EGFへ の 増 殖 反 応 が 弱 め ら れ た ( L
10
inら 、 Am J Physiol 1995, 269: F806-16; Roman RJ, Physiol Rev 2002, 82: 131
-85; Sacerditu Dら 、 Prostaglandins Other Lipid Mediat 2003, 72: 51-71; Zhao
X及 び Imig JD, Curr Drug Metab 2003, 4: 73-84) 。 種 々 の タ イ プ の 細 胞 に お い て
20-HETEに よ る 細 胞 増 殖 の 刺 激 に は 、 数 種 の シ グ ナ ル ト ラ ン ス ダ ク シ ョ ン 経 路 の 関 与 が あ
る か も し れ な い ( Muthalif MMら 、 Proc Natl. Acad. Sci. USA 1998, 95: 12701-1270
6; Uddinら 、 Hypertension 31: 242-247, 1998; Harder DRら 、 J VaSC Res 34: 237
-243, 1997; Langeら 、 Biol. Chem 272: 27345-27352, 1997; Linら , Am J Physiol Renal Physiol 269: F806-F816, 1995; Sunら 、 Hypertension 33: 414-418, 1999) 。
ム タ リ フ ( Muthalif) ら は 、 血 管 内 平 滑 筋 細 胞 に お け る NEと ア ン ギ オ テ ン シ ン IIに よ る MA
PKの 活 性 化 は 、 20-HETEの 形 成 に 依 存 す る も の で あ る と 報 告 し て い る 、 そ れ は 、 カ ル シ ウ
20
ム / カ ル モ ジ ュ リ ン 依 存 性 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ IIに よ り cPLA2 の 刺 激 を 引 き 続 い て 生 じ さ
せ る 。 20-HETEに よ る Ras/MAPK経 路 の 活 性 化 は 、 cPLA2 活 性 を 増 強 し 、 そ し て 、 ポ ジ テ ィ ブ
フ ィ ー ド バ ッ ク 機 構 に よ り ア ラ キ ド ン 酸 の 更 な る 放 出 を も た ら す 。 ム タ リ フ ( Muthalif)
らは、この機構は、細胞分裂と増殖に関与する別の細胞性シグナル分子を調節する役割を
演 じ て い る か も し れ な い と 提 唱 し た ( Muthalif MMら 、 Proc Natl. Acad. Sci. USA 19
98, 95: 12701-12706) 。
【0008】
アラキドン酸代謝物の産生が血管新生を刺激する成長因子により影響を受けることや、
20-HETEが イ ン ビ ト ロ に お い て 正 常 細 胞 の あ る 種 の タ イ プ の 増 殖 促 進 に お け る 役 割 を 演 ず
る と い う 証 拠 は 存 在 し た に も か か わ ら ず 、 こ の 出 願 に 記 述 し た 研 究 の 以 前 に は 、 20-HETE
30
が イ ン ビ ボ で 血 管 新 生 に 直 接 的 に 関 与 す る 証 拠 は な く 、 ま た 、 20-HETEが 、 が ん 細 胞 の 分
裂や腫瘍性のがん細胞増殖における役割を演ずるという証拠はなかった。
【本発明の要約】
【0009】
あ る 見 方 に お い て 、 本 願 発 明 は 、 20-HETE合 成 阻 害 剤 又 は 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト を 組 織
中で血管新生を減少させるに十分な量を、ヒト又は非ヒト哺乳類に投与することにより、
ヒト及び非ヒト哺乳類組織の血管新生を減少させる方法に関するものである。
【0010】
別 の 見 地 で は 、 本 発 明 は 、 血 管 新 生 が 誘 導 さ れ 、 促 進 さ れ る 組 織 に お い て 、 20-HETE活
性の十分な増加によりヒト又は非ヒト哺乳類組織における血管新生を誘導し促進する方法
40
に関するものである。
【0011】
更に、別の観点からは、本発明は、がん又は腫瘍細胞の分裂を阻止するのに十分な量の
20-HETE合 成 阻 害 剤 又 は 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト か ら 選 ば れ た 薬 剤 に が ん 又 は 腫 瘍 細 胞 を 接
触 (exposing)さ せ る こ と に よ り が ん 又 は 腫 瘍 細 胞 の 分 裂 を 阻 止 す る 方 法 に 関 す る も の で あ
る。
【発明の詳細な説明】
【0012】
血 管 新 生 は 、 20-HETEの 活 性 を 修 飾 す る こ と に よ り 、 調 節 で き る こ と を 開 示 し た 。 が ん
及 び 腫 瘍 細 胞 の 増 殖 は 、 20-HETE及 び そ の ア ゴ ニ ス ト に よ り 刺 激 さ れ 、 20-HETEの 合 成 阻 害
50
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剤、及びそのアンタゴニストにより阻止されることを開示した。
【0013】
ラ ッ ト 骨 格 筋 及 び ラ ッ ト 角 膜 を 例 に 用 い て 、 少 な く と も 3種 の 化 学 的 に 又 は 作 用 面 か ら
異 な っ た 20-HETE合 成 阻 害 剤 に よ る 、 20-HETEの 合 成 阻 害 が 、 種 々 の 成 長 因 子 に よ る 刺 激 で
誘導された血管の成長を弱めたことを、本発明者らは示した。この観察は、本発明者らが
、 20-HETEア ゴ ニ ス ト の 投 与 が 、 新 生 血 管 の 成 長 を 促 進 す る 成 長 因 子 の 効 果 に 似 る も の で
あると示したことと、一致する。これらの発見は、異常で過剰な血管成長を伴う疾病や状
態を治療し又は予防するための血管新生を阻止する戦略を提供するものであり、また、不
十分な血管の発達や血管の退化に伴う疾病や状態を治療し予防するための血管新生を誘導
し促進する戦略を提供するものである。
10
【0014】
ヒトグリオーマ(神経膠腫)及びラットグリオサルコーマ(神経膠肉腫)がん細胞を例
に 用 い て 、 本 発 明 者 ら は 、 化 学 的 に 又 は 作 用 機 作 面 で 異 な る タ イ プ の 20-HETE合 成 阻 害 剤
が 、 イ ン ビ ト ロ 及 び イ ン ビ ボ で が ん 細 胞 の 増 殖 を 阻 止 し 、 そ し て こ の 阻 害 が 20-HETEア ゴ
ニ ス ト で 逆 転 す る こ と を 示 し た 。 本 発 明 者 ら は 、 さ ら に 、 20-HETE合 成 阻 害 剤 が 、 正 常 細
胞 の 基 礎 的 な 増 殖 に は 、 影 響 を 与 え な い こ と を 見 出 し た 。 し か し 、 20-HETE合 成 阻 害 剤 は
、 こ れ ら の 細 胞 の 増 殖 が 種 々 の 成 長 因 子 ( EGF、 bFGF、 及 び VEGF) を 用 い て 異 常 に 刺 激 さ
れた後の正常なヒト血管内皮細胞の異常な増殖を阻止した。これらの発見は、がん治療(
付属した治療を含む)及び予防にとって新しい戦略を提供する。
【0015】
20
20-HETEの 活 性 と 合 成 は 、 哺 乳 動 物 に よ く 保 存 さ れ て い る 。 例 え ば 、 CYP4Aと CYP4Fフ ァ
ミ リ ー の 酵 素 が 発 現 し 、 20-HETEが 、 現 在 ま で 研 究 さ れ た す べ て の 哺 乳 動 物 種 に お い て 、
白 血 球 と 血 管 内 で 産 生 さ れ る ( Roman RJ, Physiol Rev 82: 131-85, 2002) 。 そ れ ゆ
え、ラット動物、ラット細胞、ヒト細胞を用いて実施例において示した観察は、ヒト、犬
、ラット、マウス、及びウサギのようなすべての哺乳類動物に適用される。
【0016】
あ る 見 方 か ら す れ ば 、 本 発 明 は 、 血 管 が 退 行 す る よ う な 組 織 に お い て 20-HETE活 性 を 十
分な阻止により、ヒト又は非ヒト哺乳動物の組織において血管新生を退行させる方法に関
するものである。
【0017】
30
一つの態様では、本発明の方法は、成長因子によって誘導された血管新生を弱めるため
に使用できる。当業者は、このような成長因子をよく知っている。実施例には、含まれて
い る が 、 VEGF、 bFGF、 EGF、 イ ン シ ュ リ ン 、 イ ン シ ュ リ ン 様 成 長 因 子 ( IGF-1) 、 及 び PDGF
のようなチロシンキナーゼ依存性成長因子や、アドレナリン作働性、コリン作働性、オキ
シトシン、エンドセリン、アンギオテンシン、ブラジキニン、ヒスタミン、トロンビン、
及 び そ の 他 多 く の Gタ ン パ ク 質 結 合 受 容 体 に 限 定 さ れ る も の で は な い 。
【0018】
別の態様では、本発明の方法は、腫瘍又はがん細胞による成長因子から分泌され誘導さ
れる、アンギオテンシンを減少させるために用いることができる。さらに、別の態様では
、本発明の方法は、眼における非筋肉組織(例えば、新生児への高酸素の暴露により続く
40
もの、傷害、炎症、糖尿に続くもの)のような非筋肉組織でのアンギオテンシンの減少に
用いることができる。さらに、別の態様では、本発明の方法は、喘息、リウマチ性関節炎
、骨関節症、皮膚感染、及び肺線維芽症、における非筋肉組織での血管新生を減少させる
ことに用いることができる。
【0019】
ヒ ト 又 は 非 ヒ ト 哺 乳 類 の 組 織 中 の 20-HETE活 性 を 阻 害 す る 一 つ の 適 当 な 手 段 は 、 ヒ ト 又
は 非 ヒ ト 哺 乳 動 物 で 血 管 新 生 を 減 少 さ せ る に 十 分 な 量 の 20-HETE合 成 阻 害 剤 を 投 与 す る た
め に 用 い る こ と が で き る 。 「 20-HETE合 成 阻 害 剤 」 と は 、 本 発 明 者 ら に よ れ ば ア ラ キ ド ン
酸 か ら 20-HETEへ の 転 換 に 関 与 す る 酵 素 阻 害 剤 を 意 味 す る 。 こ の よ う な 酵 素 と し て は 、 CYP
4A11、 CYP4F2及 び CYP4F3の よ う な CYP4及 び CYP4Fフ ァ ミ リ ー の 酵 素 群 を 含 む も の が 知 ら れ
50
(7)
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て い る ( Christmas Pら 、 J. Biol. Cliem., 276: 38166-38172, 2001) 。
【0020】
20-HETE合 成 阻 害 剤 の 多 く の 種 類 が 当 業 者 に 知 ら れ て お り 、 そ の す べ て が 本 発 明 の 方 法
に 用 い ら れ て い る 。 こ れ ら の 阻 害 剤 は 、 U.S.20040110830; WO02/36108; WO01/32164; Nak
amura Tら 、 Bioorg Med Cliem. 12: 6209-6219, 2004; Nakamura Tら 、 Bioorg Med
Cliem Lett. 14: 5305-5308, 2004; Nakamura Tら 、 Bioorg Med Chem Lett. 14:
333-336, 2004; Nakamura Tら 、 J Med Chez. 46: 5416-5427, 2003; Sato Mら 、 Bioo
rg Med Che7n Lett. 11: 2993-2995, 2001; Miyata Nら 、 Br J Pharmacol. 133: 3
25-329, 2001; Xu Fら 、 J Pharmacol Exp Ther. 308: 887-895, 2004; Xu Fら 、 Am
J Physiol Regul Integr Comp Physol 28: R710-720, 2002; Roman RJ., Physi
10
ol Rev. 82: 131-185, 2002、 の 開 示 に 含 ま れ て お り 、 こ れ ら の す べ て が 、 こ こ で 完 全 に
参考として取り込まれている。
【0021】
こ れ ら の 阻 害 剤 の 例 と し て は 、 N-ヒ ド ロ キ シ -N-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ニ ル )-ホ ル ム
ア ミ ジ ン ( HET0016) 、 N-(3-ク ロ ロ -4-モ ル ホ リ ン 4-イ ル )フ ェ ニ ル -N'-ヒ ド ロ キ シ イ ミ ド
ホ ル ム ア ミ ド ( TS-011) 、 ジ ブ ロ モ ド デ セ ニ ル メ チ ル ス ル ホ ン イ ミ ド ( DDMS) 、 1-ア ミ
ノ ベ ン ゾ ト リ ア ゾ ー ル ( ABT、 Sigma Chemical Corp.( St.Louis, MO) ) か ら 入 手 で き
る 。 ) 、 17-オ ク タ デ シ ン 酸 ( 17-ODYA) 、 ミ コ ナ ゾ ー ル ( Sigma Chemical Corp.( St.L
ouis, MO) か ら 入 手 で き る 。 ) 、 ケ ト コ ナ ゾ ー ル 、 フ ル キ オ ナ ゾ ー ル 及 び 10 ウ ン デ シ ニ
ル サ ル フ ェ ー ト ( 10-SUYS) 。 HET-0016、 TS-011及 び DDMSは 、 20-HETEの 特 異 的 阻 害 剤 で あ
20
り 、 17-ODYA、 1-ABT及 び ミ コ ナ ゾ ー ル は 、 や や 特 異 性 の 低 い 阻 害 剤 で あ る ( WO02/36108)
。 HET0016、 1-ABT、 及 び 17-ODYAは 、 イ ン ビ ボ で 20-HETEの レ ベ ル ( 濃 度 ) を 低 下 さ せ る こ
と が 示 さ れ て い る ( WO02/36108; Dos Santos EAら 、 Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 287: R58-68, 2004; Hoagland KMら 、 Hypertension 42: 669-673, 200
3; Cambj-Sapunar Lら 、 Stroke 34: 1269-1275, 2003; 及 び Hoagland KMら 、 Hyperten
sion 41: 697-702, 2003) 。 HET0016を 合 成 す る 方 法 は 、 WO01/32164に 記 載 さ れ て い る 。
20-HETEを 合 成 阻 害 す る 類 似 し た 性 質 を も つ HET0016の 数 多 く の ア ナ ロ グ の 合 成 が 、 既 に 記
述 さ れ て い る ( Nakamura Tら 、 Bioorg Med Chem. 12巻 : 6209-6219頁 , 2004年 ; Nakam
ura Tら ., Bioorg Med Chem Lett. 14: 5305-5308, 2004年 ; Nakamura Tら 、 Bioorg
Med Chem Lett. 14巻 : 333-336頁 , 2004年 ; Nakamura Tら 、 J Med Chem. 46巻 : 5
30
416-5427頁 , 2003年 ; 及 び Sato Mら ., Bioorg Med Chem Lett. 11巻 : 2993-2995頁 ,
2001年 ) 。 17-ODYA、 ABT及 び ミ コ ナ ゾ ー ル は 、 Sigma Chemical Corp.( St.Louis, MO)
か ら 入 手 で き る 。 本 発 明 の 目 的 の た め の 好 ま し い 阻 害 剤 は 、 HET0016、 TS-011及 び DDMSで
ある。
【0022】
U.S.20040110830は 、 ア ラ キ ド ン 酸 か ら 20-HETE合 成 を 阻 害 す る こ と が で き る ヒ ド ロ キ シ
ホルムアミジン誘導体を開示しており、そして、これらのすべての誘導体は、本発明にお
いて用いることができる。
【0023】
抗体は、動物体内に投与したときに標的タンパク質の機能を阻害すると一般には示され
40
て い る の で 、 20-HETE合 成 酵 素 に 対 す る ( モ ノ ク ロ ー ナ ル 又 は ポ リ ク ロ ー ナ ル ) 抗 体 は 、
同 じ よ う に 、 20-HETEの 合 成 阻 害 剤 と し て 用 い る こ と が で き る ( Dahly, A.J., FASEB J.
14: A133, 2000; Dahly, A.J., J. Am. Soc. Nephrology 11巻 : 332A, 2000年 ) 。 CYP4A
と CYP4Fフ ァ ミ リ ー の 全 て の 既 知 の メ ン バ ー の DNAと タ ン パ ク ア ミ ノ 酸 配 列 は 、 公 表 さ れ て
お り 、 利 用 で き る 。 当 業 者 は 、 20-HETE合 成 酵 素 に 対 す る ヒ ト 化 抗 体 を 含 む 抗 体 を こ の よ
う に 作 製 す る こ と が で き る 。 例 え ば 、 CYP4A1と CYP4A10に 対 す る 抗 体 は 、 既 に 作 製 さ れ て
お り 、 CYP4A1と CYP4A10の 酵 素 活 性 を 阻 害 で き る こ と が 明 ら か に さ れ て い る ( Amet, Y. et
al., Biochem Pharmacol. 54( 8) : 947-952, 1997; Amet, Y. et al., Biochem. Ph
armacol. 53( 6) : 765-771, 1997; Amet, Y. et al., Alcohol Clin. Exp. Res. 22(
2) : 455-462, 1998) 。
50
(8)
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【0024】
ヒ ト 又 は 非 ヒ ト 哺 乳 動 物 の 組 織 に お い て 20-HETE活 性 を 阻 害 す る 別 の 適 切 な 方 法 は 、 組
織 中 で 血 管 新 生 を 減 少 さ せ る に 十 分 な 量 の 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト を 投 与 す る こ と で あ る
。 既 知 の す べ て の 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト を 用 い る こ と が で き る 。 こ れ ら は 、 米 国 特 許 第 6
,395,781号 ; Yu Mら 、 Eur J Pharmacol. 486: 297-306, 2004; Yu Mら 、 Bioorg Med
Chem. 11: 2803-2821, 2003; 及 び Alonso-Galicia Mら 、 Am J Physiol. 277: F790796, 1999に 開 示 さ れ て い る も の を 含 ん で お り 、 す べ て の も の が 、 こ こ で 、 す べ て を 参 照
で き る よ う に 取 り あ げ て あ る 。 例 に は 、 19 ヒ ド ロ キ シ ノ ナ デ カ ノ イ ン 酸 、 20 ヒ ド ロ キ
シ エ イ コ サ -5(Z),14(Z)-ジ エ ン 酸 、 及 び N-メ チ ル ス ル ホ ニ ル -20-ヒ ド ロ キ シ -5(Z),14(Z)ジエンアミド。
10
【0025】
異常な又は過剰な血管の発達を伴う病気及び状態は、本発明の方法により、処置して防
ぐことができる。疾病を治療することにより、疾病が進んだ後は、疾患の重篤さを弱め、
又は疾患の症状を消し去ることを意図している。疾病を予防することにより、疾病の進行
を防ぎ、その始まりにおいてその重篤度を減少させることを意図している。治療又は予防
し得る病気や症状の例は、がん(例えば、脳腫瘍、固形腫瘍)に限られず、高酸素圧下に
おかれた新生児の角膜の血管新生、又は傷害や感染後の眼、皮膚、他の器官の血管新生が
含まれる。傷害や感染の結果としてもたらされる血管新生に付け加えて、調節できない血
管形成により引き起こされた新生血管性の眼病のような他の眼病は、同様に治療し、予防
し得る。この場合、網膜性の、そして、脈絡膜の循環からの病的な血管新生が、多くの眼
20
病において重篤な結果となっていることが注目されている。網膜の新生血管形成は、糖尿
病 性 網 膜 症 、 鎌 状 赤 血 球 網 膜 症 、 網 膜 静 脈 閉 鎖 ( retinal vein occulusion( ROP) ) 、
中心網膜静脈閉鎖、又はその枝静脈閉鎖は、網膜性新生血管形成の後遺症を伴う、視力の
急速な低下に導かれる。脈絡膜系に由来する、視神経への血管の供給は、前方(腹側)の
眼の虚血性末梢神経障害において、閉ざされている。脈絡膜の毛細血管に由来する新しい
血 管 形 成 は 、 加 齢 に 関 連 す る 黄 斑 変 性 及 び 数 種 の 斑 点 病 ( macular disease) を 引 き 起 こ
す脈絡膜性の新しい血管新生へと導かれる。
【0026】
不適当な血管新生は、同じように、アテローマ性動脈硬化症、再狭窄、特発性肺線維芽
症、急性成人性呼吸窮迫症候群及び喘息の再造形に関連している。付け加えると、新しい
30
血管新生は、リウマチ性関節炎等の関節炎にも関連するとされていた。これらの疾病のす
べてが、本発明の方法により、治療又は予防することができる。上述の疾病又は症状に付
け 加 え て 、 治 療 又 は 予 防 し 得 る 他 の 疾 病 又 は 症 状 は 、 表 1に 掲 げ た そ れ ら を 含 む も の で あ
る が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ る も の で は な い ( Carmeliet P, Nature Medicine 9: 653-660
, 2003; 及 び Carmeliet P, J. Intern. Med. 255: 538-561, 2004, both are incorpo
rated by reference in their entirety) 。 疾 病 に 関 す る 他 の 情 報 が 、 Storgard C
M, et al., J Clin Invest. 103: 47-54( 1999) お よ び Greene AS and Amaral SL
, Curr Hypertens Rep. 4: 56-62( 2002) に お い て 見 出 し 得 た が 、 そ れ ら の す べ て を 参
考のために、ここに掲載する。
【0027】
40
(9)
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【表1】
10
20
30
【0028】
別 の 局 面 か ら は 、 本 発 明 は 、 HET0016又 は DDMSを 哺 乳 類 動 物 に 組 織 の 血 管 新 生 を 減 退 さ
せるに十分な量を投与することにより、ヒト又は非ヒト哺乳動物の組織中の血管新生を減
少させる方法に関連している。
【0029】
別 の 局 面 に お い て は 、 本 発 明 は 、 TS-011を 組 織 中 の 血 管 新 生 を 減 少 さ せ る に 十 分 な 量 を
哺乳動物に投与することによりヒト又は非ヒト哺乳動物の組織中の血管新生を減少させる
方法に関するものである。
40
【0030】
別 の 局 面 に お い て は 、 本 発 明 は 、 血 管 新 生 が 誘 導 さ れ 、 促 進 さ れ る 組 織 中 で 20-HETE活
性を十分に増強することによりヒト及び非ヒト哺乳類の組織中で血管新生を誘導し促進す
るための方法に関するものである。一つの態様においては、その方法は、非筋肉組織にお
いて血管新生を促進するために用いることができる。
【0031】
ヒ ト 又 は 非 ヒ ト 哺 乳 動 物 の 組 織 中 に お け る 20-HETE活 性 を 上 昇 さ せ る た め に 適 し た 方 法
は 、 組 織 中 で 血 管 新 生 を 誘 導 し 、 促 進 さ せ る に 十 分 な 量 の 20-HETE又 は そ の ア ゴ ニ ス ト の
一 つ を ヒ ト 又 は 非 ヒ ト 哺 乳 動 物 に 投 与 す る こ と で あ る 。 公 知 に な っ て い る す べ て の 20-HET
Eの ア ゴ ニ ス ト を 用 い る こ と が で き る 。 こ れ ら に は 、 米 国 特 許 第 6,395,781号 ; Yu Mら 、 E
50
(10)
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ur J Pharmacol. 486: 297-306, 2004; Yu Mら 、 Bioorg Med Chem. 11: 2803-2821
, 2003; 及 び Alonso-Galicia Mら 、 Am J Physiol. 277: F790-796, 1999に お い て 開 示
さ れ て い る も の が 含 ま れ る 。 実 施 例 に は 、 20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ ン 酸 、 20-ヒ ド ロ キ シ -6
(Z),15(Z)-ジ エ ン 酸 ( WIT0003) 、 及 び N-メ チ ル ス ル ホ ニ ル -20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ -6(Z)
,15(Z)-ジ エ ン ア ミ ド を 含 む 。
【0032】
不十分な血管新生や血管の退行を伴う疾病や症状は、ここに提案した方法により予防し
、治療することができる。例えば、糖尿病、虚血性心疾患を伴う末梢血管病は、予防や治
療をすることができる。化学療法による血管形成は、末梢血管病を伴う患者の肢の切断の
必要性や、心臓血管の再建する場合を減らすのに役立つに違いない、また、この治療は心
臓発作後の生存を増加させバイバス手術後の生存を増加させるか、バイバス手術に代わる
も の と な る に 違 い な い 。 同 様 に 、 血 管 形 成 を 増 加 さ せ る た め の 20-HETE又 は そ の ア ゴ ニ ス
トの投与は、脳の領域の血管形成減少を伴う状態(例えば、アルツハイマー病)や、虚血
性発作に続く細胞死や神経の欠損を軽減するに違いない。予防、治療できる他の病気や症
状 に は 、 表 2に 掲 げ た も の が 含 ま れ る が 、 そ れ ら に 限 定 さ れ る も の で は な い ( Carmeliet P, J. Intern. Med. 255: 538-561, 2004) 。
【0033】
10
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【表2】
10
20
30
40
【0034】
別 の 観 点 か ら は 、 本 発 明 は 、 20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ -6(Z),15(Z)-ジ エ ン 酸 を 哺 乳 類 に
血管新生を組織中で誘導と促進させるに十分な量を投与することによりヒト又は非ヒト哺
50
(12)
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乳動物の組織中で血管新生を促進させる方法に関する。
【0035】
別 の 観 点 か ら は 、 本 発 明 は 、 腫 瘍 細 胞 又 は が ん 細 胞 の 増 殖 を 阻 止 す る の に 十 分 な 量 の 20
-HETE合 成 阻 害 剤 又 は 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト か ら 選 ば れ た 阻 害 剤 に 、 腫 瘍 又 は が ん 細 胞 を
接触させ、腫瘍又はがん細胞の増殖を阻止する方法に関する。一つの態様は、がん細胞又
は腫瘍をもつヒト又は非ヒト哺乳動物に薬剤を投与する。別の態様では、その薬剤を、が
ん又は腫瘍の成長を防ぐために投与する。
【0036】
がん細胞は、その異常な増殖に貢献する自己が分泌する成長因子を産生する能力をもつ
こ と が 知 ら れ て い る 。 下 記 の 実 施 例 で は 、 発 明 者 ら は 、 20-HETEが 成 長 因 子 に 対 し て 細 胞
10
性のマイトジェン活性を仲介する役割を演じていることを示した。理論に制限されるとい
う 意 図 は な く 、 発 明 者 ら は 、 20-HETE合 成 阻 害 剤 及 び 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト が 、 成 長 因 子
のシグナルトランスダクション経路を阻害することにより、がん細胞又は腫瘍の増殖を抑
制することを信じている。付け加えると、上記のがん細胞又は腫瘍の増殖は、同様に、血
管新生を刺激し、腫瘍への血液の供給をまかなう成長因子の分泌に依存している。今回の
開 示 は 、 20-HETEの 合 成 及 び 作 用 の 阻 害 剤 が 、 少 な く と も 2つ の 異 な る イ ン ビ ボ の モ デ ル シ
ステムにおいて、成長因子に誘導される血管新生を防止することを示している。それゆえ
に 、 そ の こ と は 、 20-HETE合 成 阻 害 剤 及 び そ の ア ン タ ゴ ニ ス ト に よ っ て 腫 瘍 が 誘 導 す る 血
管新生を阻止することがインビボでの抗癌活性にも同様に貢献することをさらに理論づけ
る も の で あ る 。 よ り 好 ま し い 態 様 で は 、 20-HETE合 成 阻 害 剤 及 び 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト は
20
、ある種のタイプの腸管がん、乳がん(例えば、管性の乳がん)、皮膚がん、肺がん、胃
がん、前立性がん、甲状腺がん、肝臓がん、すい臓がん、腎がん、大腸がん、子宮がん、
のごとき上皮組織のがん(カルシノーマ)と同様に、グリア細胞由来(グリオーマ)、ア
ストロサイト由来(アストロサイトーマ)等の脳腫瘍の予防及び治療に用いることができ
る。より好ましい態様では、乳がん、前立腺がん、大腸がん、皮膚がん、すい臓がん、と
い う 、 グ リ オ ー マ や カ ル シ ノ ー マ が 、 予 防 又 は 治 療 し 得 る 。 適 切 な 及 び 好 ま し い 20-HETE
合 成 阻 害 剤 と 20-HETEア ン タ ゴ ニ ス ト は 、 上 述 し た ご と き も の で あ る 。
【0037】
別 の 観 点 で は 、 本 発 明 は 、 腫 瘍 又 は が ん 細 胞 の 増 殖 を 阻 止 す る の に 十 分 な 量 の HET0016
又 は DDMSに 腫 瘍 又 は が ん 細 胞 を 接 触 さ せ る こ と に よ り 腫 瘍 又 は が ん 細 胞 の 増 殖 を 阻 止 す る
30
方 法 に 関 す る 。 一 つ の 態 様 で は 、 HET0016は 又 は DDMSは 、 が ん 又 は 腫 瘍 の 治 療 の た め に が
ん 又 は 腫 瘍 を も つ ヒ ト 又 は 非 ヒ ト 哺 乳 動 物 に 投 与 さ れ る 。 別 の 態 様 で は 、 HET0016又 は DDM
Sは 、 が ん 又 は 腫 瘍 の 成 長 を 防 ぐ た め に 投 与 さ れ る 。
【0038】
別 の 態 様 で は 、 本 発 明 は 、 腫 瘍 又 は が ん 細 胞 の 増 殖 を 阻 止 す る た め に 十 分 な 量 の TS-011
に腫瘍又はがん細胞を接触させることにより、腫瘍又はがん細胞の増殖を阻止する方法に
関 す る 。 一 つ の 態 様 で は 、 が ん 又 は 腫 瘍 を も つ ヒ ト 又 は 非 ヒ ト 哺 乳 動 物 に TS-011を 投 与 す
る 。 別 の 態 様 で は 、 が ん 又 は 腫 瘍 の 成 長 を 防 止 す る た め に TS-011を 投 与 す る 。
【0039】
特 定 の 疾 病 や 症 状 の 予 防 又 は 治 療 と し て 本 発 明 の 特 定 の 適 用 と し て は 、 20-HETE合 成 阻
40
害 剤 、 20-HETEア ゴ ニ ス ト 又 は ア ン タ ゴ ニ ス ト の 特 定 の 至 適 用 量 は 、 特 定 の 投 与 経 路 に お
いて、当業者により容易に決定される。本発明は、特別な投与経路により制限されるもの
ではない。投与の適した経路は含まれるが、経口、静脈内、皮下、筋肉内、及び特定の器
官又は組織への注射には、限定されるものではない。
【0040】
その発明は、これより後に続く実施例に限定されないことを考慮することを、十分に理
解されるべきである。
【実施例1】
【0041】
20-HETEに よ る 骨 格 筋 血 管 新 生 の 調 整
50
(13)
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20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ テ ト ラ エ ン 酸 ( 20-HETE) が 骨 格 筋 に お け る 電 気 刺 激 に よ り 誘 導
される血管新生にとって重要であることをこの実施例は示している。ラットの頚骨腹側の
長 指 伸 筋 を 7日 間 刺 激 し た 。 電 気 刺 激 は 、 筋 肉 中 の 20-HETEの 産 生 と 血 管 新 生 を 有 意 に 増 加
さ せ 、 そ の 増 加 は 、 N-ヒ ド ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ニ ル )ホ ル ム ア ミ ド ( HET00
16) 又 は 1-ア ミ ノ ベ ン ゾ ト リ ア ゾ ー ル ( ABT) に よ る 長 期 に わ た る 治 療 に よ り 阻 止 さ れ た
。 HET-0016又 は ABTの い ず れ の 長 期 治 療 で も 、 両 方 の 筋 肉 内 で VEGFタ ン パ ク 質 の 発 現 の 増
加 を 阻 止 し な か っ た 。 20-HETE産 生 に 対 す る VEGFの 役 割 を 分 析 す る た め に 、 追 加 し た ラ ッ
ト に VEGF中 和 抗 体 ( VEGF Ab) を 処 置 し た 。 VEGF Abは 、 刺 激 に よ り 誘 導 さ れ る 20-HETE
の 産 生 増 加 を 阻 止 し た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 血 管 新 生 の た め の シ グ ナ ル 経 路 の 下 流 に 20-HET
Eが 置 か れ て い る ( VEGF下 流 ) 。
10
【0042】
材料と方法
動 物 の 手 術 : す べ て の プ ロ ト コ ル ( 計 画 書 (protocol)) は 、 ウ イ ス コ ン シ ン 医 科 大 学
の 動 物 施 設 使 用 委 員 会 ( Institutional Animal Care and Use Committee of Medi
cal College of Wisconsin) に よ り 承 認 さ れ た 。 ラ ッ ト は 、 ウ イ ス コ ン シ ン 医 科 大 学
の ア ニ マ ル ・ リ ソ ー ス ・ セ ン タ ー ( Animal Resource Center of the Medical Coll
ege of Wisconsin) で 飼 育 さ れ 、 飼 料 と 水 は 、 無 制 限 に 与 え た 。 32匹 の ス プ ラ グ -ダ ウ
レ イ ( Sprague-Dawley) ラ ッ ト 、 7週 齢 を 、 ケ タ ミ ン ( 100mg/kg) 及 び ア セ プ ロ マ ジ ン ( 2
mg/kg) の 混 合 液 の 筋 肉 内 注 射 に よ り 麻 酔 さ せ た 。 胸 腰 部 を 皮 膚 切 開 し 、 小 型 バ ッ テ リ ー
で 出 力 さ れ る 刺 激 器 ( miniature battery-powered stimulator) 、 こ れ は 予 め 計 画 し て
20
いたもので、長期試験に有用なものであるが、それを埋め込み、適所におき安全にした。
別の切開は、右後肢の膝関節(通常の腓骨神経の領域の上)の外側を包む皮膚と筋膜に行
った。一組の電極は、前記刺激器から皮下に導き、通常の腓骨神経近接した膝の周囲の筋
肉 に 固 定 し た ( Ma YHら 、 Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 267: R579R589, 1994) 。 電 極 は 、 生 体 に 適 合 す る ア ク リ ル セ メ ン ト を 用 い て 局 所 に 固 定 し ( Loctit
e; Rocky Hill, CT) 、 精 密 な 縫 合 に よ り 末 端 で 固 め た ( size 5-0, Ethicon; Somervil
le, NJ) 。 両 切 開 部 に か ぶ せ た 皮 膚 は 、 縫 合 に よ り 閉 じ 、 そ し て 、 ラ ッ ト は 、 そ の 後 に 続
いて刺激する期間が始まるまでは、回復にまかせた。
【0043】
実 験 プ ロ ト コ ル と 組 織 標 本 : 24時 間 の 回 復 期 間 後 、 埋 め 込 め ら れ た 刺 激 器 は 、 小 さ な
30
手で持てる磁石を用いた磁石性のリードスイッチの瞬時に閉じることにより活性化される
。 そ の 刺 激 器 は 、 0.3msの 持 続 期 間 に 10Hzの 振 動 数 で 、 そ し て 3Vの 電 圧 で 矩 形 波 に よ り 、
総腓骨神経を刺激することにより、下肢筋肉において電気的に誘導された筋収縮をもたら
す ( Linderman JRら 、 Microcirculation 7: 119-128, 2000) 。 長 指 伸 筋 ( EDL) と 前 脛
骨 筋 ( TA) の 収 縮 は 、 自 動 的 に 毎 日 午 前 9時 に 始 ま り 、 一 日 8時 間 、 連 続 し て 7日 間 続 け た
。 刺 激 し た 期 間 の 終 わ り に 、 ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル ナ ト リ ウ ム の 過 剰 量 ( 100mg/kg、 腹 腔 内
) に よ り 安 楽 死 さ せ 、 EDLと TA筋 を 前 述 の 方 法 に よ り 解 剖 に よ り 採 取 し た ( Greene ASら
、 Hypertension 15: 779-783, 1990; 及 び Parmentier JHら 、 Hypertension 37: 623-6
29, 2001) 。
【0044】
40
ラ ッ ト を 4つ の グ ル ー プ に 分 け た 。 VEGFタ ン パ ク 質 の 発 現 と 骨 格 筋 で の 血 管 新 生 の 貢 献
に お け る 20-HETEの 役 割 を 評 価 す る た め に 、 第 一 群 の 9匹 の ラ ッ ト に CYP4A酵 素 の 有 効 な 選
択 的 阻 害 剤 で あ る 、 [ N-ヒ ド ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ノ ー ル )ホ ル ム ア ミ ド ( H
ET0016) 、 大 正 製 薬 ( ミ ヤ タ N. ら 、 Br J Pharmacol 133: 925-929, 2001) ] を 電
気 刺 激 期 間 中 、 各 注 射 に つ き 、 1mg/kgを 毎 日 2回 投 与 し た 。 こ の 投 与 量 は 、 本 発 明 者 ら の
以 前 の 結 果 に 基 づ い て 選 択 し た ( Kehl Fら 、 Am J Physiol Heart Circ Physiol 2
82: H1556-H1565, 2002) 。 そ の 試 験 に お い て は 、 10mg/kgの 静 脈 内 投 与 は 、 長 時 間 血 漿 中
で HET0016の 有 効 な 阻 害 濃 度 を は る か に 超 え る ( 10倍 高 い ) 血 漿 中 濃 度 を も た ら し た 。
【0045】
よ り 普 通 に 用 い ら れ て い る が 、 特 異 性 の 低 い 阻 害 剤 と HET0016の 効 果 を 比 較 す る た め に
50
(14)
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、 4匹 の ラ ッ ト を 1-ア ミ ノ ベ ン ゾ ト リ ア ゾ ー ル ( ABT;第 2群 ) を 、 50mg/kg/day腹 腔 内 電 気
刺激の期間中投与した。
【0046】
電 気 刺 激 に よ り 誘 導 さ れ る 血 管 新 生 へ の VEGFの 貢 献 を 検 討 す る た め 、 6匹 の ラ ッ ト ( 第 3
群 ) に VEGF中 和 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 3mg/kg腹 腔 内 注 射 に よ り 電 気 刺 激 の 期 間 中 投 与 し た
( Texas Biotechnology; Houston, TX) 。 VEGF中 和 抗 体 の 投 与 プ ロ ト コ ル は 、 ゼ ン グ ( Z
heng W) ら ( Circ Res 85: 192-198, 1999) の 方 法 を 修 正 し 、 本 発 明 者 ら の 以 前 の 結
果 に 基 づ き 、 こ の 用 量 を 基 本 と し た ( Amaral SLら 、 Microcirculation 8: 57-67, 2001
) 。 刺 激 を 始 め た 後 、 第 3、 5、 及 び 7日 に ( 0.6mg/g) を 腹 腔 内 投 与 し た 。
【0047】
10
第 4群 に は 、 HET0016用 の ヴ ィ ー ク ル ( 溶 液 ) 、 レ シ チ ン ( n= 9) 、 又 は VEGF抗 体 用 の 生
理 食 塩 水 、 PBS( n= 4) を 投 与 し た 。 い ず れ の ヴ ィ ー ク ル 処 理 で も 結 果 に 有 意 差 は な か っ
たので、これらの群からの結果は合わせた。
【0048】
尿 中 排 泄 の 20-HETEの 測 定 : 電 気 刺 激 最 後 の 日 に 、 食 餌 か ら 尿 を う ま く 分 離 で き る 代
謝ケージに入れた。尿を採取し始める前に、尿との混入を避けるために、食餌は取り除い
た 。 24時 間 対 照 尿 と 処 理 尿 の サ ン プ ル を 、 氷 を 詰 め た ガ ラ ス 瓶 中 に 採 取 し た 。 尿 サ ン プ ル
中 の HET0016の 濃 度 を 、 前 述 し た 方 法 に よ り 蛍 光 HPLCに て 測 定 し た ( Maier KGら 、 Am J
Physiol Heart Circ Physiol 279: H863-H871, 2000) 。 25ngの 内 部 標 準 [ 20-5(Z)
,12(Z)-ヒ ド ロ キ シ -エ イ コ サ ジ エ ン 酸 ( WIT-002) ; 大 正 製 薬 、 埼 玉 、 日 本 ] を 添 加 し た
20
後 、 サ ン プ ル を 蟻 酸 で pH4に 酸 性 化 し 、 エ チ ル ア セ テ ー ト ( 酢 酸 エ チ ル ) で 抽 出 し 、 有 機
層 を ア ル ゴ ン ガ ス を 用 い て 乾 燥 し た 。 サ ン プ ル を 20% ア セ ト ニ ト リ ル 1mlに 再 溶 解 さ せ 、
カ ラ ム ( Sep-Pak Vac column( Waters; Milford, MA) ) に 載 せ た 。 カ ラ ム は 、 30% ア
セ ト ニ ト リ ル で 2度 洗 浄 し 、 HETE及 び EETを 含 む 画 分 を 90% ア セ ト ニ ト リ ル 400μ lで 溶 出 し
た 。 サ ン プ ル ( 複 数 ) は 水 で 希 釈 し 、 カ ラ ム ( Sep-Pak Vac column) に 適 用 し 、 酢 酸 エ
チ ル 500μ lで 溶 出 し 、 次 い で 乾 燥 さ せ た 。 脂 質 画 分 は 、 2-(2,3-ナ フ タ ル イ ミ ノ )エ チ ル ト
リ フ ル オ ロ メ タ ン ス ル ホ ネ イ ト 36.4mMを 含 む ア セ ト ニ ト リ ル 20μ lで 標 識 し た 。 反 応 を 触
媒 す る た め に 、 N,N-ジ イ ソ プ ロ ピ ル エ チ ル ア ミ ン ( 10μ l) を 加 え た 。 過 剰 の 色 素 は 、 Sep
-Pak Vac抽 出 ( Sep-Pak Vac extraction( Maier KGら 、 Am J Physiol Heart Cir
c Physiol 279: H863-H871, 2000) ) に よ り 分 離 し 、 サ ン プ ル は 、 ア ル ゴ ン ガ ス で 乾 燥
30
さ せ 、 100μ lの メ タ ノ ー ル に 再 懸 濁 さ せ 、 逆 相 HPLC( Waters) に よ り 、 蛍 光 検 出 器 ( mode
l number L-7480; Hitachi, Naperville, IL) を 用 い て 分 析 し た 。 サ ン プ ル 中 の 20-HET
Eの 量 は 、 20-HETEの ピ ー ク の 面 積 と 内 部 標 準 の そ れ と を 比 較 し て 求 め た 。
【0049】
組織の採取と容器の密度の形態学的な分析: 刺激した側の筋肉とその対側の筋肉を分
離 し 、 秤 量 し 、 生 理 食 塩 水 で 濯 い だ 。 TA筋 の 吻 側 ( 頭 側 ) か ら 300mgの サ ン プ ル を 得 て 、 V
EGFタ ン パ ク 発 現 の 測 定 と 20-HETE産 生 の 測 定 の 分 析 の た め 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト ( 100mg
) 、 HPLC( 200mg) 用 に 、 液 体 窒 素 に 凍 結 保 存 し た 。 残 り の TAと EDL筋 は 、 0.25% ホ ル マ リ
ンで軽く固定した。その筋肉は、腱を固定し、筋線維の長軸方向に平行にスライスするこ
と で 、 約 100μ mの 厚 さ に 手 動 ミ ク ロ ト ー ム に よ り 切 片 に し た 。 す べ て の 動 物 か ら 、 EDL筋
40
の 2切 片 、 と 各 TA筋 肉 の 3切 片 を 作 製 し た 。 切 片 は 、 ロ ー ダ ミ ン 標 識 し た グ リ フ ォ ニ ア シ
ン プ リ シ フ ォ リ ア I ( Griffonia simplicifolia I; GS-I) レ ク チ ン の 25μ g/ml溶 液 に 2
時 間 、 浸 し た ( Sigma; St.Louis, MO( Greene ASら 、 Hypertension 15: 779-783, 1990
) ) 。 こ の GS-Iレ ク チ ン に 2時 間 接 触 さ せ た 直 後 、 そ の 筋 肉 を 生 理 食 塩 水 で 洗 っ た 。 洗 浄
の 方 法 は 、 15分 後 と 30分 後 に 繰 り 返 し 、 そ し て 、 そ の 筋 肉 は 、 生 理 食 塩 水 溶 液 で 12時 間 (
一 晩 、 4℃ ) 洗 浄 し た 。 次 の 日 、 切 片 は 顕 微 鏡 用 の ス ラ イ ド に 、 ト ル エ ン と ア ク リ ル 樹 脂
か ら な る 水 溶 性 マ ウ ン ト 用 液 で 封 入 し た ( SP ACCU-MOUNT 280, Baxter Scientific)
。
【0050】
標 識 し た 切 片 は 、 ビ デ オ 蛍 光 顕 微 鏡 シ ス テ ム ( Olympus ULWD CD Plan, × 20objecti
50
(15)
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ve, 1.6cm作 動 距 離 お よ び 0.4開 口 値 ) 、 を 用 い て 、 エ ピ − イ ル ミ ネ ー シ ョ ン に よ り 、 前 述
の よ う に 可 視 化 し た ( Parmentier JHら 、 Hypertension 37: 623-629, 2001) 。 本 研 究
で は 、 10∼ 15、 及 び 20∼ 25の 代 表 的 な 視 野 を 、 EDLと TA筋 の そ れ ぞ れ の 切 片 の 試 験 た め に
選 ん だ 。 各 視 野 は 、 デ ジ タ ル 化 し た イ メ ー ジ に 変 換 し ( DT2801 Data Translation; Mar
lboro, MA) 、 512× 512ピ ク セ ル の 解 像 度 を も つ 8ビ ッ ト / ピ ク セ ル イ メ ー ジ と し て 保 存
し た 。 走 査 検 討 し た 組 織 化 学 的 断 面 の 体 型 測 定 分 析 を 前 述 の 方 法 で 行 っ た ( Parmentier JHら 、 Hypertension 37: 623-629, 2001) 。 血 管 − 格 子 交 差 ( vessel-grid intersecti
on) は 、 血 管 密 度 の 正 確 で 、 定 量 的 な 見 積 も り を 提 示 で き る こ と を 前 述 し た ( Parmentier
JHら 、 Hypertension 37: 623-629, 2001) 。
【0051】
10
VEGFタ ン パ ク の 存 在 を 検 出 す る た め の ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト : 100mgの TA筋 肉 片 を ホ モ
ジ ナ イ ズ し 、 そ の タ ン パ ク 質 を リ ン 酸 緩 衝 液 ( 10mM) に 懸 濁 し た 。 VEGFを 過 剰 発 現 す る こ
と が 知 ら れ て い る TA及 び 既 知 の 腫 瘍 細 胞 ( C6 , American Type Culture Collection, 1
07-CCL) か ら 、 タ ン パ ク 質 5μ g( Bio-Rad; Hercules, CA、 の タ ン パ ク 定 量 キ ッ ト に よ り
測 定 し た ) を 、 変 性 さ せ 得 る 12% の ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 上 で 分 離 し た 。 ゲ ル を ニ ト
ロ セ ル ロ ー ス 膜 に 移 し 、 0.08% Tween 20( Bio-Rad) を 含 有 す る ト リ ス 緩 衝 液 ( 50mM Tris、 750mM NaCl, pH 8) 中 で 希 釈 し た 脱 脂 乳 5% 中 で 一 晩 ブ ロ ッ ク し た 。 ブ ロ ッ ト は
、 ヒ ト VEGF配 列 由 来 の ペ プ チ ド に 対 す る ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( 1:1000希 釈 、 clone G143850、 Pharmingen) で 2時 間 室 温 で イ ン キ ュ ー べ シ ョ ン し た 。 洗 浄 し た ブ ロ ッ ト は 山 羊 抗 マ
ウ ス 2次 抗 体 と と も に 、 希 釈 率 1:1000で 室 温 で 1時 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し 、 そ の 次 は 、 ス
20
ー パ ー シ グ ナ ル ・ ウ エ ス ト ・ デ ュ ラ 化 学 発 光 基 質 (SuperSignal West Dura chemilumin
escence substrate)( Pierce; Rockford, IL) 検 出 系 に 従 っ た 。 膜 は 、 X線 フ ィ ル ム ( Fu
ji Medical; Stamford, CT) で 15∼ 30秒 被 爆 さ せ 、 現 像 は 、 Kodak M35 X-Omat proce
ssorで 行 っ た 。 VEGFの 定 量 的 な 分 析 の た め に 、 全 部 の シ グ ナ ル が フ ィ ル ム 検 出 の 直 線 的 な
範 囲 内 で あ る こ と を 確 認 で き た 期 間 内 で フ ィ ル ム を 常 に 被 爆 さ せ た 。 VEGFの バ ン ド の 強 さ
は 、 モ ル ホ メ ト リ ー 画 像 系 ( Metamorph, Universal Imaging; West Chester, PA) を 用
い て 定 量 し 、 そ し て 値 は 、 標 準 化 さ れ た C6 腫 瘍 細 胞 の 百 分 率 で あ ら わ し た 。
【0052】
20-HETEの 測 定 の た め の 筋 肉 標 本 : 100-200mgの 凍 結 し た TA筋 肉 を 1mlの 酸 性 化 し た 水
と 50μ lの 内 部 標 準 WIT-002、 こ れ は 、 大 正 製 薬 の 好 意 で 提 供 さ れ た も の で あ る 、 を 含 む 溶
30
液 で ホ モ ジ ナ イ ズ し た 。 酢 酸 エ チ ル ( 3ml, Fisher Scientific; Pittsburgh, PA) を 加
え て 、 ゆ っ く り 渦 を 巻 い て 混 ぜ た 。 ホ モ ジ ナ イ ズ し た 組 織 は 、 次 に 3000回 転 / 分 で 遠 心 を
2分 間 行 っ た 。 ガ ラ ス 製 の パ ス ツ ー ル ピ ペ ッ ト で 、 上 層 を 分 離 し 、 滅 菌 し た ガ ラ ス 製 バ イ
ア ル に 移 し 、 サ ン プ ル は 窒 素 ガ ス 下 で 乾 燥 さ せ 、 -80℃ で 保 存 し た 。
【0053】
サ ン プ ル の 標 識 化 と 20-HETEの 蛍 光 検 出 : 20-HETEの 検 出 は 、 前 述 し た 方 法 に よ り 行 っ
た ( Ma YHら 、 Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 267: R579-R589, 1994
) 。 サ ン プ ル は 、 抽 出 さ れ 、 ア ル ゴ ン ガ ス で 乾 燥 さ せ た も の で あ る が 、 36.4mMの 2-(2,3ナ フ タ ル イ ミ ノ )エ チ ル ト リ フ ル オ ロ メ タ ン ス ロ ホ ネ イ ト の 20μ l及 び N,N-ジ イ ソ プ ロ ピ ル
エ チ ル ア ミ ン ( 10μ l) を 触 媒 と し て 加 え た 。 サ ン プ ル は 、 30分 室 温 で 反 応 さ せ 、 ア ル ゴ
40
ン で 乾 燥 し 、 40% ア セ ト ニ ト リ ル 水 1mlで 再 懸 濁 し 、 そ し て カ ラ ム ( Sep-Pak Vac colum
n) に 適 用 し た 。 カ ラ ム は 、 反 応 し て い な い 染 料 を 分 離 す る た め に 6mlの 50% ア セ ト ニ ト リ
ル 水 で 洗 浄 し 、 500μ lの 酢 酸 エ チ ル で 溶 出 し 、 ア ル ゴ ン で 乾 燥 さ せ 、 再 び 100 μ l of the HPLC移 動 層 [ メ タ ノ ー ル 、 水 、 酢 酸 の 、 82:18:0.1( vol/vol) ] に 再 懸 濁 さ せ た 。
サ ン プ ル の 一 部 25μ lを と り 、 カ ラ ム ( 4.6× 250mm Symmetry C18 reverse-phase HPL
C column( Waters) ) に 1.3ml/分 の 速 度 で 、 移 動 層 と し て メ タ ノ ー ル − 水 − 酢 酸 ( 82:18
:0.1( vol/vol) ) を 用 い 、 ア イ ソ ク ラ チ ッ ク に (isocratically)、 一 定 条 件 下 で 適 用 し た
。 蛍 光 強 度 は 、 蛍 光 検 出 器 ( model number L-7480, Hitachi; Naperville, IL) を 用 い
て 、 媒 体 獲 得 感 度 ( medium gain sensitivity) で 測 定 し た 。 サ ン プ ル 中 の 20-HETE量 は
、 20-HETEの ピ ー ク 面 積 を 内 部 標 準 ( WIT-002) の そ れ と を 比 較 し て 決 定 し た 。
50
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【0054】
デ ー タ 分 析 と 統 計 処 理 : 各 筋 肉 に お い て 、 選 択 し た 視 野 ( 各 EDL筋 に つ き 10-15ス キ ャ
ン 、 x2切 片 ; 各 TA筋 に つ き 、 20-25ス キ ャ ン x3切 片 ) を 、 単 一 の 血 管 密 度 に 平 均 化 し た
2
。 血 管 密 度 は 、 顕 微 鏡 視 野 ( 0.224mm ) 毎 に 血 管 − 格 子 交 差 の 数 の 平 均 に よ り 表 し た 。 各
々 の 試 験 群 に と っ て 、 刺 激 し た 筋 肉 で の 測 定 し た 血 管 密 度 と 20-HETE産 生 は 、 無 刺 激 の 対
応 と 週 齢 で 対 応 さ せ て 比 較 し た 。 す べ て の 値 は 、 平 均 値 ± SEで 表 し た 。 同 じ 動 物 に お い て
測 定 し た 値 の 有 意 差 は 、 一 要 因 ( 刺 激 ) に 対 し て 繰 り 返 し 測 定 し た 2要 因 ANOVA( 薬 剤 x刺
激 ) を 用 い て 評 価 し た 。 有 意 差 は 、 さ ら に 、 ポ ス ト ホ ッ ク テ ス ト ( Tukey’ s) を 用 い て 検
討した。
【0055】
10
結果
CYP4A酵 素 の 阻 害 効 果 を 評 価 す る た め に 、 本 発 明 者 ら は 、 HET0016処 理 7日 間 の 20-HETEの
尿 中 排 泄 を 測 定 し た 。 20-HETEの 分 離 を 示 す 代 表 的 な HPLCク ロ マ ト グ ラ ム は 、 図 1に 表 し た
。 図 1に 示 す よ う に 、 20-HETEに 極 め て 近 接 し た 他 の ピ ー ク が 存 在 す る 。 標 準 物 質 と の 共 存
移 動 に 基 づ い て 、 ク ロ マ ト グ ラ フ 中 の 前 の ピ ー ク を 19-HETEと し て 、 20-HETEの 後 の ピ ー ク
を 18-HETEと し て 同 定 し た 。 次 の ピ ー ク は 16-HETEで あ り 、 15-HETEが 後 に 続 く 。 各 ピ ー ク
の 面 積 を 分 析 す る た め に 、 「 材 料 と 方 法 」 に 記 載 し た よ う に 、 逆 重 畳 積 分 (deconvolution
)法 ( Hitachi software) を 用 い て シ ョ ル ダ ー ピ ー ク (shouldering peak)を 差 し 引 い た
。
【0056】
20
図 2に 示 す よ う に 、 HET0016の 長 期 治 療 は 、 レ シ チ ン の み の 対 象 群 に 比 べ 、 20-HETEの 24
時 間 尿 中 へ の 排 泄 は 、 有 意 に 減 少 ( 36% ) し た ( P< 0.05) 。
【0057】
7日 間 の 電 気 刺 激 は 、 図 3に 示 す よ う に 、 骨 格 筋 中 で の 20-HETEの 産 生 は 、 有 意 に 増 加 さ
せ た ( 69.52± 31.3∼ 177.58± 54.4ng/g、 各 々 、 非 刺 激 筋 肉 及 び 刺 激 し た 筋 肉 、 P< 0.05)
。 7日 間 の HET0016の 治 療 は 、 骨 格 筋 で の 20-HETEの 基 礎 的 な 産 生 に 影 響 を 与 え な か っ た ( 1
10.26± 28.36及 び 69.52± 31.3ng/g、 各 々 筋 肉 内 処 置 及 び 対 照 、 P> 0.05; 図 3) ;し か し 、
HET0016の 長 期 投 与 は 、 骨 格 筋 で 電 気 刺 激 に よ り 増 加 し た 20-HETE量 を 完 全 に 阻 止 し た ( 11
0.26± 28.3∼ 102.1± 22.3ng/g、 各 々 、 非 刺 激 及 び 刺 激 側 の 筋 肉 ; 図 3) 。
【0058】
30
前に示したように、電気刺激は、レシチン投与の対照群では、血管密度に増加をもたら
し た ( 107.0± 1.6∼ 121.0± 4.5及 び 100.4± 8.4∼ 132.0± 9.9、 EDL及 び TAの 各 投 与 に お け
る 血 管 の 交 差 数 、 P< 0.05) 。 図 4に 示 す よ う に 、 HET0016の 長 期 投 与 は 、 骨 格 筋 で の 7日 間
の 電 気 刺 激 で 誘 導 さ れ た 血 管 密 度 の 増 加 を 完 全 に 阻 止 し た ( 116.0± 1.0∼ 118.0± 10.1及
び 105.7± 4.9∼ 110.5± 1.1、 各 々 、 EDL及 び TA処 理 に お け る 血 管 交 差 ( vessel intersect
ion) の 数 ) 。 ABTを 用 い た 20-HETE産 生 の 長 期 阻 害 は 、 骨 格 筋 で 電 気 刺 激 に よ り 誘 導 さ れ
た 血 管 密 度 の 増 加 を 同 様 に 減 弱 さ せ た ( 111± 7.4∼ 121± 4.35及 び 99.7± 4.72∼ 119.5± 4.
51、 各 々 、 EDL及 び TAに お け る 血 管 交 差 数 ) 。
【0059】
VEGFが 、 骨 格 筋 で の 血 管 形 成 に 重 要 な 役 割 を 演 ず る こ と を 示 す こ と が で き た の で 、 本 発
40
明 者 ら は 、 VEGFタ ン パ ク の 発 現 に 対 す る HET0016又 は ABTの 効 果 を 実 証 す る た め に 、 ウ エ ス
タ ン ブ ロ ッ ト 分 析 を 行 っ た 。 図 5は 、 HET0016投 与 動 物 又 は 対 照 動 物 の 全 て に つ い て 電 気 刺
激 7日 後 の VEGFの タ ン パ ク 発 現 の 反 応 を 比 較 す る た め に 用 い た ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 分 析 の
定 量 的 デ ン シ ト メ ト リ ー を 示 す 。 図 5に 示 す よ う に 、 VEGFタ ン パ ク 量 は 、 対 照 動 物 で 刺 激
に よ り 有 意 に 増 加 し た ( P< 0.05) 。 HET0016と 別 の CYP4A阻 害 剤 の 効 果 を 比 較 す る た め に
、 本 発 明 者 ら は 、 電 気 刺 激 期 間 中 の 7日 間 、 一 群 に ABTを 投 与 し 、 結 果 は 図 5に 表 し た 。 HET
0016及 び ABTの い ず れ に お い て も 、 VEGF発 現 の 基 礎 的 な 量 に 影 響 を 与 え な か っ た 。 電 気 刺
激 に よ る VEGFタ ン パ ク 発 現 の 増 加 は 、 HET0016又 は ABTに よ り 阻 止 さ れ な か っ た 。
【0060】
補 足 的 な 試 験 に お い て 、 20-HETEの 産 生 に 対 す る VEGFの 役 割 を 分 析 す る た め に 、 VEGF中
50
(17)
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和 抗 体 又 は PBS( 対 照 ) を ラ ッ ト に 投 与 し た 。 図 6に 示 す よ う に 、 VEGF抗 体 は 、 完 全 に 電 気
刺 激 7日 間 で 誘 導 さ れ た 20-HETE産 生 の 増 加 を 阻 止 し た 。
【実施例2】
【0061】
ラ ッ ト 角 膜 に お け る 20-HETEに よ る 成 長 因 子 誘 導 に よ る 血 管 新 生 の 調 節
CYP4A酵 素 は 、 ア ラ キ ド ン 酸 を 20-HETEに 代 謝 す る 。 こ の 実 施 例 で は 、 本 発 明 者 ら は 、 イ
ン ビ ト ロ 内 皮 細 胞 で 20-HETEが マ イ ト ジ ェ ニ ッ ク ( 分 裂 誘 発 性 ) で あ る こ と 、 ま た 、 イ ン
ビ ボ で 血 管 新 生 能 が あ る こ と を 示 す も の で あ る 。 本 発 明 者 ら は 、 さ ら に 、 高 度 に CYP4Aの
選 択 的 阻 害 剤 で あ る HET0016が 、 内 皮 細 胞 で VEGFに よ る マ イ ト ジ ェ ン ( 分 裂 誘 発 ) 活 性 を
阻 止 す る こ と を 示 し た 。 DDMSは 、 CYP4Aの 別 の 選 択 的 な 阻 害 剤 で あ る 。 本 発 明 者 は 、 HET00
10
16及 び DDMSが 、 イ ン ビ ボ で VEGFの 血 管 新 生 反 応 を 阻 止 す る こ と を 示 し た 。 本 発 明 者 ら は 、
ま た 、 ヒ ト グ リ オ ー マ 細 胞 株 で あ る 、 U251に よ り 誘 導 さ れ た 血 管 新 生 を 減 弱 さ せ る こ と を
示す。
【0062】
材料と方法
試薬:
HET0016[ N-ヒ ド ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ニ ル )ホ ル ム ア ミ ジ ン ] は 、 Miyata
ら ( Br J Pharmacol 2001, 133: 325-9) 、 及 び サ ト ー Mら ( Bioorg Med Chem Le
tt 2001, 11: 2993-5) に よ る 記 述 に 従 っ て 合 成 し 、 両 者 は 、 そ れ ら の 内 容 の 全 て が 参 照
で き る よ う に 含 ま れ て お り 、 そ れ ら は 、 大 正 製 薬 ( 埼 玉 、 日 本 ) に よ り 提 供 さ れ た 。 CYP4
20
A阻 害 剤 で あ る DDMS及 び そ の 安 定 な 20-HETEア ゴ ニ ス ト で あ る 、 WIT003[ 20-ヒ ド ロ キ シ -6(
Z),15(Z)-ジ エ ン 酸 ] は 、 テ キ サ ス 大 学 サ ザ ン ウ エ ス タ ン メ デ ィ カ ル セ ン タ ー の JR フ ァ ル ッ ク 博 士 に よ り 合 成 さ れ た ( Capdevila JH and Falck JR, Prostaglandins O
ther Lipid Mediat 2002, 68-69: 325-44) 、 そ し て 以 前 に 用 い ら れ て い る ( Alonso-G
alicia Mら 、 Am J Physiol 1999, 277: F790-6; Wang MHら 、 J Pharmacol Exp T
her 1998, 284: 966-73; 及 び Yu Mら 、 Eur J Pharmacol 2004, 486: 297-306) 。 VE
GF、 bFGF及 び EGFは 、 R& Dシ ス テ ム ( Minneapolis, MN) か ら 購 入 し 、 ハ イ ド ロ ン ( Hydon
) タ イ プ NCCは 、 イ ン タ ー フ ェ ロ ン 社 ( New Brunswick, NJ) か ら 得 た 。 PCRの プ ラ イ マ ー
は 、 ク イ ア ゲ ン 社 ( Valencia, CA) で 合 成 し た 。 ヒ ト 臍 の 静 脈 内 皮 細 胞 ( HUVEC) 及 び 関
連 培 養 試 薬 は 、 キ ャ ン ブ レ ッ ク ス ( Walkerville, MD) か ら 購 入 し た 。 そ の 他 の 全 て の 培
30
養 試 薬 は 、 イ ン ビ ト ロ ゲ ン か ら 購 入 し た ( Carlsbad, CA) 。 パ ル ミ チ ン 酸 と 他 の 全 て の 試
薬 は 、 シ グ マ ケ ミ キ ャ ル ( Sigma Chemical Corp( St.Louis, MO) ) か ら 購 入 し た 。
【0063】
動物:
実 験 は 、 7∼ 8週 齢 の ス プ ラ グ -ダ ウ レ イ ( Sprague-Dawley) 雄 ラ ッ ト 、 体 重 200-250g( C
harles River Laboratories, Wilmington, MA) で 行 っ た 。 ラ ッ ト は 、 12時 間 / 12時 間
の明/暗の周期の環境に収容し、餌と水は無制限に与えた。全ての方法は、眼と視野につ
い て の 動 物 の 使 用 に お け る ARVO声 明 ( statement) に 従 っ た 。 動 物 使 用 の 認 可 は 、 ヘ ン リ
ー ・ フ ォ ー ド ・ ヘ ル ス ・ シ ス テ ム ( Detroit, MI) の 施 設 の 動 物 の 飼 育 と 使 用 に 関 す る 委
員 会 ( Institutional Animal Care and Use Committee( IACUC) ) の 承 認 を 得 た 。
40
【0064】
HUVECsの 増 殖 試 験
4
HUVECs( 細 胞 ) は 、 1× 10 cells/wellの 密 度 で 96穴 プ レ ー ト に 播 種 し 、 培 養 を 一 晩 行 い
、 次 に 10μ Mの HET0016、 1μ Mの WIT003又 は 250ng/mlの VEGF、 単 独 又 は HET-0016又 は WIT003
の い ず れ か と の 併 用 、 の い ず れ か と 接 触 さ せ た 。 HET0016又 は WIT0013の 両 者 は 、 エ タ ノ ー
ル に 溶 解 さ せ た 。 有 機 溶 媒 濃 度 は 、 全 培 地 量 の 0.1% を 決 し て 超 え な い こ と と し た 。 細 胞
増 殖 は 、 増 殖 中 の 生 細 胞 数 を 測 定 に 信 頼 で き る 比 色 法 で あ る 、 セ ル タ イ タ ー 96ア ク エ ス ワ ン リ ー ジ ェ ン ト (CellTiter96 Aqueous One reagent; Promega, Madison, WI) を
用 い て 24時 間 後 に 測 定 し た 。 各 穴 に 100μ lの 培 養 液 に 20μ lの ア ク エ ス ワ ン リ ー ジ ェ
ン ト ( Aqueous One reagent) を 添 加 し た 。 プ レ ー ト を 湿 潤 し た イ ン キ ュ ベ ー タ 中 37℃
50
(18)
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、 2時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 96穴 バ イ オ ・ カ イ ネ テ ィ ッ ク ス ・ リ ー ダ ー EL340(96-well Bio Kinetics Reader EL340)( Bio-TEK, Winooski, VT) を 用 い て 490nmで 吸 光 度 を 測
定した。データは、対照細胞と比較した処理培養の吸光度を百分率での変化を表している
。 3回 の 異 な る 試 験 を 行 い 、 そ し て 、 各 値 は 、 3回 重 複 に よ り 決 定 し た 。
【0065】
角膜ポケット血管新生試験
( i) ポ リ マ ー の 持 続 放 出 物 : ポ リ マ ー の 持 続 放 出 ペ レ ッ ト は 、 ポ リ マ ー ( ポ リ ヒ ド
ロ キ シ エ チ ル メ タ ア ク リ レ ー ト ハ イ ド ロ ン ( Hyron) ) の 12% エ タ ノ ー ル 溶 液 と 成 長 因
子 を 含 む 生 理 食 塩 水 液 の 混 合 ( 1:1) に よ り 調 製 し た 。 成 長 因 子 、 bFGF、 VEGF及 び EGFは 12
5ng/μ lの 濃 度 で 溶 解 し た 。 HET0016及 び WIT003( Yu Mら 、 Eur J Pharmacol 2004, 48
10
6: 297-306) は 、 10μ g/mlの 濃 度 で エ タ ノ ー ル に 溶 解 し 、 DDMSは 、 5ng/μ lの 濃 度 で エ タ
ノ ー ル に 溶 解 し た 。 こ れ ら の 溶 液 2μ lを 各 ペ レ ッ ト に 加 え た 。 こ の よ う に 、 単 一 の 成 長 因
子 250ngを 含 む ペ レ ッ ト は 、 ラ ン ダ ム に 右 又 は 左 の 眼 に 移 植 し た 。 他 方 の 眼 に は 、 成 長 因
子 の 同 量 と HET0016を 含 む ペ レ ッ ト を 注 入 し た 。 あ る ラ ッ ト で は 、 ペ レ ッ ト は 、 VEGF単 独
、 及 び VEGFと DDMSを 含 む も の と し た 。 20μ gの 安 定 な HETEア ゴ ニ ス ト ア ナ ロ グ で あ る WIT00
3は 、 血 管 新 生 を 誘 導 す る か 否 か を 調 べ る た め に 眼 に 注 入 し た 。 エ タ ノ ー ル を HET0016、 DD
MS及 び WIT003の ヴ ィ ー ク ル と し て 用 い た の で 、 他 の す べ て の ペ レ ッ ト に も エ タ ノ ー ル を 添
加 し た 。 9μ lの 1:1ハ イ ド ロ ン / 処 置 剤 混 合 物 が 、 1.5cmの 棒 の 端 に 付 け た 。 各 ペ レ ッ ト は
、 そ れ ぞ れ の 成 長 因 子 25ngを 含 ま せ た 。 bFGFを 安 定 化 さ せ る た め に ス ク ラ ル フ ァ ー ト を 用
い 、 こ の 成 長 因 子 の 持 続 放 出 を さ せ た ( Volkin DBら 、 Biochim Biophys Acta 1993,
20
1203: 18-26) 。 ペ レ ッ ト を 1時 間 乾 燥 さ せ て 、 そ れ ら は 、 ラ ッ ト 角 膜 に 移 植 用 と し た 。
【0066】
( ii) ペ レ ッ ト の 移 植 : ラ ッ ト は 、 ケ タ ミ ン ( 80mg/kg) と キ シ ラ ジ ン ( 10mg/kg) の
筋 肉 内 注 射 に よ り 麻 酔 さ せ た 。 眼 は 、 局 所 的 に 0.5% プ ロ パ ラ カ イ ン ( Ophthetic, Alcon
, TX) で 麻 酔 し た 、 眼 球 は 、 鉗 子 を 用 い て 突 出 し た 。 顕 微 鏡 を 操 作 し な が ら 、 器 官 ( 眼 )
内 の 直 線 的 な 角 膜 切 開 が 、 約 1.5mmの 長 さ で 、 外 科 用 刀 ( Bard-Parker #11; Becton Dic
kinson, Franklin Lake, NY) で 、 外 側 直 筋 の 着 点 へ 平 行 に 行 っ た 。 曲 が っ た 、 虹 彩 ヘ ラ
( No.10093-13, Fine Science Tools( Belmont, CA) ) 幅 約 1.5mm長 さ 5mmを 、 切 開 し た
片の下に挿入し、間質を通して、眼の側頭縁の方向へゆっくりと押した。ポケットのベー
ス と ( 眼 の ) 縁 の 距 離 は 、 1.0± 0.1mmに 保 っ た 。 ペ レ ッ ト は 、 ポ ケ ッ ト の 側 頭 の 端 へ 進 ん
30
だ。抗生物質の軟膏(エリスロマイシン)を眼の前方表面に適用した。
【0067】
( iii) U251ヒ ト グ リ オ ー マ 細 胞 、 楕 円 形 状 : U251ヒ ト グ リ オ ー マ 細 胞 は 、 ス テ フ ァ
ン ブ ラ ウ ン 博 士 ( Dept. of Radiation Oncology, ヘ ン リ ー ・ フ ォ ー ド ・ ヘ ル ス ・ シ
ス テ ム ( Detroit, MI) ) か ら 好 意 で 提 供 さ れ た 。 細 胞 は 、 加 熱 不 活 性 化 し た 10% 牛 胎 児
血 清 、 ペ ニ シ リ ン ( 10 IU/ml) 、 ス ト レ プ ト マ イ シ ン ( 10μ g/ml) 、 非 必 須 ア ミ ノ 酸 を
添 加 し た DMEM( Invitrogen) で 維 持 し 、 37℃ 、 5% 炭 酸 ガ ス を 含 む 湿 潤 下 の イ ン キ ュ ベ ー
タ で 培 養 し た 。 U251楕 円 細 胞 は 、 カ ー ル ソ ン 及 び ユ ー ハ ス ( Carlsson and Yuhas) の 改
良 方 法 に よ り 得 た ( Carlsson J and Yuhas JM, Recent Results Cancer Res 198
6
4, 95: 1-23) 。 手 短 に い え ば 、 楕 円 形 が ん 細 胞 を シ ン グ ル セ ル の 懸 濁 液 ( 5x10 ) と し て
40
, 播 種 に よ り 調 製 し 、 0.8% 寒 天 ( Noble agar; Difco, Livonia, MI) に 置 い た 。 細 胞 は
、 楕 円 形 が 形 成 さ れ る ま で 、 2, 3日 間 培 養 し た 。 直 径 が 同 程 度 の 楕 円 形 細 胞 を 選 ん で 、 細
胞 培 養 器 に 移 し 、 PBSで 洗 浄 し 、 微 量 の 血 清 を 除 去 し た 。 定 規 付 の 解 剖 顕 微 鏡 で 楕 円 形 細
胞 の 直 径 を 測 定 し た 。 各 々 直 径 約 200μ mの 5∼ 8の 楕 円 形 細 胞 が 、 シ リ ン ジ に 取 り 付 け た 鈍
角 の 27ゲ ー ジ 針 に 吸 い 込 み 、 角 膜 ポ ケ ッ ト に 挿 入 し た 。 こ の 試 験 で は 、 一 方 の 眼 に は 、 楕
円 形 細 胞 と エ タ ノ ー ル ( HET0016の 溶 媒 ) 入 り ペ レ ッ ト を 含 有 さ せ 、 他 方 の 眼 に は 、 楕 円
形 細 胞 と 20μ gの HET0016入 り ペ レ ッ ト を 含 ま せ た 。
【0068】
( iv) 角 膜 内 で の 新 生 血 管 新 生 の 定 量 : ペ レ ッ ト 移 植 7日 後 、 ラ ッ ト を 前 述 の よ う に
ケ タ ミ ン と キ シ ラ ジ ン で 深 く 麻 酔 し た 。 左 心 室 に カ ニ ュ ー レ を 入 れ 、 20-25mlの 生 理 食 塩
50
(19)
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水 で 潅 流 し 、 続 い て 、 20-25mlの イ ン デ ア ン イ ン ク ( waterproof drawing ink, Sanford
, Bellwood, IL) で 行 っ た 。 眼 は 、 定 位 置 を 決 め る た め 印 を 付 け 、 摘 出 し 、 4% ホ ル マ リ
ン 中 に 24時 間 放 置 し た 。 角 膜 は 、 そ れ を 取 り 巻 く 眼 球 か ら 解 剖 で 分 離 し 、 虹 彩 の 下 に 置 き
、 2分 割 し て 、 ゆ る や か に 2枚 の ガ ラ ス ス ラ イ ド の 間 に マ ウ ン ト ( 抱 埋 ) し 、 こ の よ う に 、
角 膜 を ゆ っ く り 平 板 化 し た 。 こ の よ う な 平 板 化 し た マ ウ ン ト を 、 CCDビ デ オ カ メ ラ 付 の ニ
コ ン ダ イ ア フ ォ ー ト エ ピ フ ル オ ー ル 2顕 微 鏡 ( Nikon Diaphot Epi-fluor 2 microsc
ope) を 用 い て 顕 微 鏡 的 に 検 査 し た 。 画 像 は デ ジ タ ル 化 し 、 コ ン ピ ュ ー タ に 保 存 し た 。
【0069】
新生血管は、対照と試験眼の全血管長を比較することにより求めた。血管の長さは、縁
(眼の角膜と結膜の連接部)からペレットまで各血管をトレースすることにより決定した
10
。 全 長 は 、 ピ ク セ ル に お け る こ れ ら の 値 の 合 計 で あ り 、 簡 易 画 像 解 析 ソ フ ト ウ エ ア ( Sigm
a Scan Pro, SPSS, Chicago, IL) を 用 い て 決 め た 。
【0070】
群:
すべての場合において、ペレットは、両方の眼に移植した。一方の眼を対照とし、他方
を試験群とした。以下の分を試験した。
【0071】
第 1群 . 対 照
2μ lの エ タ ノ ー ル を 含 む ペ レ ッ ト を ラ ッ ト の 角 膜 に 移 植 し た 。 あ る 試 験 で は 、 本 発 明 者
らは、ペレット中の脂肪酸の単なる存在により引き起こされる非特異的な影響を試験した
20
。 こ れ ら の 試 験 で は 、 ペ レ ッ ト に は 、 40μ gま で の パ ル ミ チ ン 酸 を 含 ま せ た ( n= 4) 。 エ
タ ノ ー ル 単 独 に 対 し て 、 パ ル ミ チ ン 酸 を 含 む エ タ ノ ー ル 処 理 の 眼 で は 、 VEGFへ の 血 管 新 生
の反応には、差が見られなかった。
【0072】
第 2群 . CYP4A阻 害 剤 HET0016の 効 果
対 照 に 対 し て 、 20μ gの HET0016又 は 10μ gの DDMS。 こ れ ら の 用 量 は 、 下 記 の 用 量 反 応 試
験 ( n= 4) に 基 づ い て 選 ん だ 。 こ の 群 は 、 阻 害 剤 が 、 明 ら か に 毒 性 が あ る か 、 又 は 血 管 新
生 効 果 が あ る か を 決 定 す る た め に 含 め て い る 。 あ る ラ ッ ト ( 複 数 ) で は 、 DDMS( 10μ l/ペ
レット)の効果を試験した。
【0073】
30
第 3群 . VEGFの 血 管 新 生 反 応 の HET0016阻 害 の 用 量 反 応 性
a. VEGF対 VEGF+5μ gHET0016( n= 4)
b. VEGF対 VEGF+20μ gHET0016( n= 4)
c. VEGF対 VEGF+40μ gHET0016( n= 4)
【0074】
第 4群 . HET0016の 抗 血 管 新 生 効 果
こ れ ら の ラ ッ ト で は 、 本 発 明 者 ら は 、 VEGF、 bFGF、 及 び EGFに 対 す る 血 管 新 生 に お け る H
ET0016の 効 果 を 試 験 し た 。
a. VEGF対 VEGF+ 20μ gHET0016( n= 6)
b. bFGF対 bFDF+ 20μ gHET0016( n= 6)
40
c. EGF対 EGF+20μ gHET0016( n= 8)
【0075】
第 5群 . 第 二 の CYP4A阻 害 剤 の 抗 血 管 新 生 効 果
こ れ ら の ラ ッ ト で は 、 本 発 明 者 ら は 、 VEGFの 血 管 新 生 効 果 に 対 す る DDMSの 効 果 を 試 験 し
た。
VEGF対 VEGF+ 10μ gDDMS( n= 7) 。 こ の 用 量 は 、 20μ gの HET0016で 効 果 が 得 ら れ た パ イ
ロット試験の後、選択した。
【0076】
第 6群 . 20-HETEの プ ロ (pro)血 管 新 生 効 果
こ れ ら の ラ ッ ト で は 、 本 発 明 ら は 、 安 定 な 20-HETEの ア ナ ロ グ で あ る 、 WIT003が 血 管 新
50
(20)
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生能を有するか否かを試験した。
対 照 対 20μ gWIT003( n= 7)
【0077】
第 7群 . HET0016の 抗 血 管 新 生 効 果
こ れ ら の ラ ッ ト で は 、 本 発 明 者 ら は 、 が ん 細 胞 誘 導 の 血 管 新 生 反 応 に 対 す る HET0016の
効果を試験した。これらの試験では、本発明者らは、がん細胞のグリオブラストーマ(グ
リ ア 芽 細 胞 腫 ) U2561株 を 用 い た 、 こ れ は 、 血 管 新 生 性 の も の で あ る こ と が 知 ら れ て い る
( Hsu SCら 、 Cancer Res 1996, 56: 5684-91) 。 楕 円 形 細 胞 及 び HET0016を 含 む ペ レ ッ
ト は 、 同 じ 角 膜 ポ ケ ッ ト に 注 入 し た 。 血 管 新 生 反 応 は 、 楕 円 形 細 胞 ス フ ェ ロ イ ド 移 植 後 14
日後に評価した。
10
U251楕 円 形 細 胞 対 U251楕 円 形 細 胞 +20μ gの HET0016( n= 8) 。
【0078】
角 膜 CYP4mRNAの 発 現 :
( i) mRNAの 抽 出 と cDNA合 成 : 血 管 新 生 中 に お け る 角 膜 内 で の CYP4A1 mRNAの 発 現 を R
T-PCRに よ り 測 定 し た 。 角 膜 は 、 分 離 し て 、 液 体 窒 素 中 で 急 速 凍 結 し た 。 角 膜 は 、 後 に 解
凍 し 、 ト ラ イ ゾ ル ( TRIzol) 中 で ホ モ ジ ナ イ ズ し た 。 総 RNAは 、 操 作 手 順 書 ( Invitorgen
) に 従 い 、 TRIzolか ら 抽 出 し た 。 RNAの 品 質 は 、 260/280nm吸 光 度 率 に よ り 評 価 し た 。 1.8
∼ 2.0の 範 囲 内 の サ ン プ ル の み を 使 用 し た 。 全 1∼ 3μ g mRNAを フ ァ ー ス ト ス タ ン ダ ー ド 合
成 キ ッ ト ( FirstStrand synthesis kit; Invitrogen) を 用 い て 逆 転 写 に 用 い た 。 1μ g
の DNAを PCRに よ り 増 複 し た 。
20
【0079】
( ii) PCR分 析 : 本 発 明 者 ら は 、 次 の 特 別 な 、 CYP4A1 mRNAプ ラ イ マ ー を 用 い て 、 CYP
4A1mRNAを 増 複 し た : セ ン ス ( Sense) : TTCCAGGTTTGCACCAGACTCT( SEQ ID NO:1) 及 び
ア ン チ セ ン ス ( antisense) : TTCCTCGCTCCTCCTGAGAAG( SEQ ID NO:2) 。 内 部 標 準 の 対
照 と し て β − ア ク チ ン の 増 複 を 用 い た 。 プ ラ イ マ ー は 、 ア プ ラ イ ド バ イ オ シ ス テ ム 社 ( Ap
plied Biosystems; Foster City, CA) の ソ フ ト ウ エ ア を 用 い て デ ザ イ ン し た 。 CYP4A1
の mRNA配 列 は 、 ア ク セ ス 番 号 NM_175837及 び ラ ッ ト β ア ク チ ン の ア ク セ ス 番 号 NM_031144に
よ り GeneBankか ら 得 た 。
【0080】
CYP4A及 び β ア ク チ ン を 増 複 す る た め に 用 い た PCRの 条 件 は 、 95℃ 3分 の プ レ サ イ ク ル を
30
行 い 、 次 に 95℃ 45秒 、 57℃ 1分 、 72℃ 1分 の 周 期 で 35サ イ ク ル を 回 し 、 そ し て 最 終 伸 長 と し
て 72℃ 10分 を 行 っ た 。 PCR産 物 は 、 10% ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 を 行 い 、 エ チ ジ ウ ム
ウ ム ブ ロ マ イ ド で 可 視 化 し た 。 適 当 な 対 照 を 用 い て 、 ゲ ノ ム DNAを 含 ま な い サ ン プ ル を 増
複して確認を行った。
【0081】
統 計 分 析 : 対 照 の ラ ッ ト の 眼 と 試 験 し た ラ ッ ト の 眼 の 統 計 上 の 有 意 差 は 、 2群 比 較 t検定により行った。各群間の反応の差は、ポストホック検定に従ったアノーバにより行っ
た 。 Ap< 0.05は 、 有 意 差 と 考 え た 。
【0082】
結果
40
HUVECsの 増 殖 に 対 す る VEGFの 効 果 を 図 7に 表 し た 。 VEGFは こ れ ら の 細 胞 で 増 殖 を 刺 激 し
、 こ の 反 応 は 、 HET0016と の 培 養 で の 同 時 処 理 に よ り 失 わ れ た 。 HET0016は 、 HUVECsの 基 礎
的な増殖の速度を変えることはなかった(データを示さず)。
【0083】
本 発 明 者 ら は 、 次 に イ ン ビ ボ で の ラ ッ ト 角 膜 の 血 管 新 生 試 験 を 用 い て VEGFに 対 す る 血 管
新 生 反 応 に 対 す る HET0016の 効 果 を 検 討 し た 。 HET0016に つ い て も DDMSに つ い て も 、 生 理 食
塩 水 と の 差 は 見 ら れ な か っ た ( 図 8B 及 び 図 11B ) 。 HET0016の 至 適 用 量 を 求 め る た め に 、
本 発 明 者 ら は 、 VEGFと HET0016の 異 な っ た 用 量 を 含 む ペ レ ッ ト を 角 膜 に 移 植 し た 用 量 反 応
試 験 を 行 っ た 。 20μ g及 び 40μ gの HET0016は 、 VEGFの 血 管 新 生 反 応 を 殆 ど 完 全 に 失 わ せ た
。 5μ gの HET0016は 、 VEGFの 血 管 新 生 反 応 を 約 50% 減 少 さ せ た 。 本 発 明 者 ら は 、 比 較 で き
50
(21)
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る 分 子 量 と 溶 解 性 を も つ の で 、 そ れ ゆ え 、 HET0016又 は 関 連 物 質 に つ い て の ペ レ ッ ト あ た
り で 20μ gの 用 量 を 選 択 し た 。 脂 肪 酸 の 非 特 異 的 効 果 の た め の 対 照 と し て 、 本 発 明 者 ら は
、 あ る 試 験 で パ ル ミ チ ン 酸 を 用 い た 。 パ ル ミ チ ン 酸 は 、 そ れ 自 身 で は 効 果 が な く 、 VEGF又
は試験に用いた他の血管新生因子のいずれに対する血管新生反応に対しても影響する力を
もたなかった(データ示さず)。
【0084】
ペ レ ッ ト に VEGFを 含 有 さ せ る と 顕 著 な 血 管 新 生 反 応 を も た ら し た 、 そ の 反 応 は HET0016
に よ り 末 梢 さ れ た 。 図 8A は 、 VEGF単 独 及 び VEGF+ HET0016で 処 理 し た 角 膜 の 代 表 的 な 写 真
を 示 し 、 図 8B は 、 グ ラ フ 化 し た 血 管 を 示 す 。 他 の 実 験 で は 、 本 発 明 者 ら は 、 他 の 成 長 因
子 の 血 管 新 生 反 応 に 対 す る CYP4A活 性 阻 止 効 果 の 影 響 を 試 験 し た 。 本 発 明 者 ら は 、 HET0016
10
に よ る 血 管 新 生 が 、 VEGFを 抑 制 し て い る の か 、 又 は そ れ と も bVGF及 び EGFの 反 応 を も 同 様
に 抑 制 し て い る の か を 検 討 し た 。 HET0016を 含 ん だ ペ レ ッ ト は 、 劇 的 に bFGF( 図 9A 及 び 9
B ) 及 び EGF( 図 10A 及 び 10B ) の 両 反 応 に 対 す る 血 管 新 生 反 応 を 減 少 さ せ た 。
【0085】
こ れ ら の デ ー タ は 、 血 管 新 生 反 応 を 引 き 起 こ す 血 管 新 生 成 長 因 子 に と っ て は 、 CYP4A活
性 が 必 要 で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 こ の 考 え を 補 足 す る た め に 、 本 発 明 者 ら は 、 CYP4A
の 化 学 的 に 似 て い な い 阻 害 剤 で あ る DDMSが 、 ラ ッ ト 角 膜 ポ ケ ッ ト 血 管 新 生 試 験 で VEGFの 血
管 新 生 反 応 を 同 様 に 抑 制 す る か ど う か を 試 験 し た 。 こ れ ら の 試 験 の 結 果 は 、 図 11A 及 び 図
11B に 示 す が 、 そ し て 、 DDMSは 同 様 に 、 完 全 に VEGFの 血 管 新 生 反 応 を 阻 害 す る こ と を 示 し
た。
20
【0086】
CYP4Aが 、 ア ラ キ ド ン 酸 か ら 20-HETEを 合 成 す る ω − ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ で あ る た め 、 HET0
016は 、 20-HETEの 合 成 を 阻 害 と し て 働 く と 思 わ れ る 。 20-HETEが CYP4A阻 害 剤 の 抗 血 管 新 生
作 用 に 貢 献 す る こ と を 検 討 す る た め に 、 本 発 明 者 ら は 、 安 定 な 20-HETEア ナ ロ グ で あ る WIT
003の 効 果 を 、 HUVECs細 胞 の 増 殖 に 対 す る 効 果 を イ ン ビ ト ロ で 、 及 び 、 新 し い 血 管 の 発 達
( 成 長 ) に 対 し て イ ン ビ ボ で 、 試 験 し た 。 WIT003は 、 HUVECsの 増 殖 速 度 を 上 昇 さ せ た ( 図
12) 、 そ し て 、 ラ ッ ト 角 膜 ポ ケ ッ ト 血 管 新 生 試 験 で 血 管 新 生 反 応 を 誘 導 し た ( 図 13A 及 び
13B ) 。
【0087】
本 発 明 者 ら は 、 HET0016が 腫 瘍 細 胞 に よ り 誘 導 さ れ る 血 管 新 生 を 阻 害 す る か ど う か を 同
30
様 に 試 験 し た 。 角 膜 ポ ケ ッ ト に 移 植 し た ヒ ト グ リ オ ブ ラ ス ト ー マ ( グ リ ア 芽 細 胞 腫 ) U251
株 、 の 立 体 的 な 楕 円 形 細 胞 は 、 2週 間 後 に は 、 著 し い 血 管 新 生 を も た ら し た 。 角 膜 の 新 生
血 管 形 成 は 、 HET0016の 存 在 に よ り 有 意 に 阻 害 さ れ た ( p< 0.001) ( 図 14A 及 び 14B ) 。
【0088】
ラ ッ ト 角 膜 の CYP4A mRNAの 発 現 を 調 べ る た め の 試 験 の 結 果 は 、 対 照 の 角 膜 に お い て 予
期 し た サ イ ズ の バ ン ド が 検 出 さ れ た 。 VEGF処 理 角 膜 で は 、 変 化 は み ら れ な か っ た 。
【0089】
要 約 す れ ば 、 本 研 究 は 、 VEGFに 対 す る HUVECs細 胞 の マ イ ト ジ ェ ン ( 細 胞 分 裂 ) 反 応 に 対
す る 、 及 び 、 イ ン ビ ボ で の 角 膜 で の 成 長 因 子 が 誘 導 す る 血 管 新 生 に お け る CYP4A阻 害 剤 の
効 果 を 試 験 し た も の で あ る 。 そ の 結 果 は 、 HET0016に よ り CYP4A活 性 の 妨 害 が 、 HUVECs細 胞
40
で の VEGFに 対 す る 既 に 知 ら れ て い る 分 裂 反 応 を 阻 止 し た こ と を 示 し た ( Kurzen Hら 、 Inh
ibition of angiogenesis by non-toxic doses of temozolomide, Anticancer D
rugs 2003, 14: 515-22) 。 ア ラ キ ド ン 酸 代 謝 物 が 、 VEGF誘 導 細 胞 分 裂 に お い て 、 役 割 を
演 じ て い る と い う さ ら な る 証 拠 は 、 安 定 な 20-HETEア ナ ロ グ WIT003を 用 い た 試 験 に よ り 示
唆 さ れ た 。 WIT003処 理 に よ る HUVECsの 処 理 は 、 VEGFで 内 皮 細 胞 を 処 理 で 得 ら れ た と 同 様 な
変化をもって、細胞の分裂を上昇させた。
【0090】
インビボでの血管新生反応は、内皮細胞増殖よりも多くのことが関与しているが、それ
は、細胞遊走、マトリックス(隔壁)の崩壊、内皮細胞の分裂、及び血管壁周辺からの細
胞 の 補 充 (recruitment of perimural cells)な ど 他 の 経 過 過 程 を 含 む か ら で あ る 。 血
50
(22)
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管新生過程の複雑さのために、血管新生のなんらかの有用な阻害剤が、インビボで、十分
に 形 成 さ れ た 血 管 の 生 成 に 影 響 を 与 え る こ と を 示 す こ と が 必 要 と さ れ て い る 。 CYP4Aの 阻
害がインビボで血管新生に影響するであろうと本発明者らは仮説を立てたので、本発明者
らは、この仮説をラット角膜ポケット血管新生試験である、血管新生のインビボモデルで
試験した。この評価は、血管新生誘導剤(本発明者らのケースでは、血管の又はがん細胞
の成長因子)を含むペレットを角膜の間質の中に切開したポケットの中に入れることに関
するものである。ペレットは、ゆっくり、持続的に、血管新生因子を放出し、濃度勾配に
したがって、これが順次、末梢に局在する末端の血管系からペレットへ向けての成長を刺
激する。他のインビボ評価系と比較しても、角膜は当初無血管であり、透明だから、新生
血 管 の み を 測 定 す る 便 利 な 方 法 で あ る ( Kenyon BMら 、 Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.
10
1996, 37: 1625-1632) 。
【0091】
VEGF、 bFGF又 は EGFが ラ ッ ト 角 膜 に 移 植 さ れ た と き に 、 活 発 な 血 管 新 生 反 応 が 観 察 さ れ
た 。 こ れ ら す べ て の 成 長 因 子 に 対 す る 血 管 新 生 反 応 は 、 HET0016の 存 在 に よ り 抹 消 さ れ た
。 CYP4Aの 有 効 な 阻 害 剤 が 存 在 す る と 、 事 実 上 、 血 管 新 生 反 応 が 消 失 す る の で 、 CYP4Aが 血
管 新 生 の 決 定 的 な 調 節 因 子 で あ る こ と を こ の こ と は 、 示 唆 し て い る 。 オ レ フ ィ ン 系 物 質 DD
MSは 、 構 造 と 作 用 機 作 が HET0016の そ れ と は 関 連 し て い な い CYP4Aの 有 効 な 阻 害 剤 で あ る と
報 告 さ れ て い る ( Wang MHら 、 J Pharmacol Exp Ther 1998, 284: 966-73) 。 角 膜 の
新 生 血 管 形 成 に 対 す る VEGFの 効 果 は 、 同 様 に DDMSに よ り 消 失 す る 。 こ の よ う に 、 2つ の 異
な っ た 阻 害 剤 が 、 VEGFに よ り 誘 導 さ れ る 血 管 新 生 反 応 を 消 失 さ せ た が 、 こ の こ と は 、 結 果
20
的には、これらの阻害剤が血管形成過程における必須なステップに影響を与えているとい
う 考 え を 強 め る も の で あ る 。 CYP4Aの 阻 害 は 、 HET0016と DDMSの 間 で 明 ら か に 共 通 し た つ な
が り で あ る の で 、 本 発 明 者 ら は 、 CYP4Aの 酵 素 活 性 の 一 つ の 産 物 は 、 メ デ ィ エ ー タ ー で あ
るか、又は血管形成が進むために必須な成分のいずれかであると結論した。
【0092】
血管新生は、創傷の治癒、女性の再生産周期のような生理的状況において、また、糖尿
病網膜症、黄斑変性、慢性の炎症病等のような病的な状況においても同様に、決定的な現
象 で あ る 。 特 に 、 1∼ 2mm以 上 の が ん の 成 長 に は 、 決 定 的 な 要 因 で あ る 血 管 新 生 に 、 腫 瘍 の
拡大は依存しているのである。その結果、新しい血管を生成する能力を抑えることは、治
療標的として興味を引くものである。
30
【0093】
そ れ ゆ え 、 本 発 明 者 ら は 、 HET0016が 、 腫 瘍 誘 導 の 血 管 新 生 に 影 響 を 与 え る か 否 か を 探
求した。このために、本発明者らは、高い血管新生で知られている悪性のグリオーマ(神
経 膠 腫 ) 細 胞 モ デ ル 、 グ リ ア 芽 細 胞 腫 U251株 を 選 ん だ 。 こ れ は 、 グ リ ア 芽 細 胞 腫 の 多 形 は
真 性 の 血 管 新 生 と は 区 別 さ れ る た め 、 臨 床 的 に は 適 切 な も の で あ る ( Hsu SCら 、 Cancer
Res 1996, 56: 5684-91) 。 本 発 明 者 ら は 、 HET0016又 は 対 照 ( パ ル ミ チ ン 酸 又 は 生 理
食 塩 水 ) の ど ち ら か を 含 む ペ レ ッ ト と 一 緒 に ラ ッ ト 角 膜 の 間 質 に U251楕 円 形 細 胞 を 移 植 し
た 。 す べ て の 対 照 の 眼 は 、 顕 著 な 角 膜 の 新 生 血 管 形 成 を 示 し た ; し か し 、 HET0016は 有 意
に 約 70% 血 管 新 生 を 抑 制 し た 。
【実施例3】
40
【0094】
HET0016は 、 ヒ ト グ リ オ ー マ が ん 細 胞 の 細 胞 分 裂 を 抑 制 す る
こ の 実 施 例 は 、 20-HETEが ヒ ト が ん 細 胞 の 成 長 に 重 要 で あ る こ と を 示 し て い る 。 安 定 な 2
0-HETEア ゴ ニ ス ト 、 20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ -5(Z),14(Z)-ジ エ ン 酸 、 1μ Mは 、 ヒ ト グ リ オ
ー マ U251細 胞 分 裂 を 約 20% 上 昇 さ せ た 。 用 量 反 応 試 験 は 、 10μ Mの HET0016の 48時 間 処 理 は
3
、 U251の 細 胞 分 裂 を 約 60% 阻 止 し 、 そ れ に 伴 い 、 [ H]-チ ミ ジ ン の 取 り 込 み で 65% を 減 少
さ せ た 。 ジ ブ ロ モ ド デ セ ニ ル メ チ ル ス ル ホ ン イ ミ ド ( DDMS, 同 様 に 、 N-メ チ ル ス ル ホ ニ
ル -12,12-ジ ブ ロ モ ド デ セ ニ ル -11-エ ナ ミ ド ) 、 CYP4Aの 構 造 上 異 な る 阻 害 剤 は 、 同 様 に 約
60% の 細 胞 分 裂 を 阻 止 し た 。 DDMS又 は HET0016の ど ち ら も 正 常 な ヒ ト 血 管 内 皮 細 胞 や 角 化
細 胞 の 基 礎 的 な 成 長 に 影 響 を 与 え な か っ た 。 フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー の 研 究 は 、 HET0016が
50
(23)
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、 細 胞 周 期 の G0 /G1 期 を 拘 束 す る こ と に よ り ヒ ト U251が ん 細 胞 の 分 裂 を 特 異 的 に 阻 害 す る
こ と を 示 し た 。 20-HETEア ゴ ニ ス ト ( 1μ M) の 添 加 は 、 HET0016の 約 70% 細 胞 分 裂 阻 止 を 取
り 消 し た 。 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 試 験 は 、 HET0016処 理 24時 間 か ら 48時 間 で み ら れ る 阻 害
を も た ら し て い る U251が ん 細 胞 に お い て 、 HET0016が チ ロ シ ン り ん 酸 化 に 影 響 す る こ と を
示 し て い る 。 さ ら な る 研 究 は 、 HET0016の 添 加 が p42/p44MAPK及 び SAPK/JNKの り ん 酸 化 を 特
異的に阻害することを示している。
【0095】
材料と方法
細 胞 株 と 試 薬 : U251ヒ ト グ リ オ ー マ 細 胞 は 、 ス テ フ ァ ン L.ブ ラ ウ ン 博 士 ( Dr. Stephe
n L. Brown, Dept. of Radiation Oncology, ヘ ン リ ー ・ フ ォ ー ド ・ ヘ ル ス ・ シ ス テ ム
10
, Detroit, MI) か ら 得 た 。 ヒ ト 臍 静 脈 内 皮 細 胞 ( HUVECs) は 、 キ ャ ン ブ レ ッ ク ス ( Cambr
ex( East Rutherford, NJ) ) か ら 購 入 し た 。 初 代 の 角 化 細 胞 は 、 ジ ョ ー ジ ム ラ カ ワ 博
士 ( Dr. George Murakawa, Dept. of Dermatology, Wayne State University, Detro
it, MI) か ら 得 た 。 HET0016[ N-ヒ ド ロ キ シ -N
‘
-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ニ ル )ホ ル ム ア
ミ ジ ン ] は 、 大 正 製 薬 ( 日 本 ) か ら 贈 ら れ た 。 DDMS、 パ ル ミ チ ン 酸 、 及 び EGFは 、 シ グ マ
社 ( Sigma( St.Louis, MO) か ら 購 入 し た 。 WIT003[ 20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ -6(Z),15(Z)ジ エ ン 酸 ] は 、 ジ ョ ン R. フ ァ ル ク 博 士 ( Dr. John R. Falck, Department of Biochem
istry, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, Texas) ら が
合 成 し た 。 他 の す べ て の 細 胞 培 養 試 薬 は 、 イ ン ビ ト ロ ゲ ン 社 ( Invitrogen( Carlsbad, CA
))から購入した。
20
【0096】
培 養 条 件 : 細 胞 は 、 日 常 の 型 に は ま っ た 手 順 で 、 10% 加 熱 非 働 化 し た 牛 胎 児 血 清 、 ペ
ニ シ リ ン ( 10 IU/ml) 、 ス ト レ プ ト マ イ シ ン ( 10μ g/ml) 及 び 10% 非 必 須 ア ミ ノ 酸 ( 全
て は 、 イ ン ビ ト ロ ゲ ン 社 か ら 購 入 ) 添 加 し た DMEM( イ ン ビ ト ロ ゲ ン 社 ) で 維 持 し た 。 細 胞
は 、 5% 炭 酸 ガ ス を 含 む 湿 潤 し た 培 養 器 で 37℃ で 維 持 し た 。 そ れ ら は 、 10% FBSを 含 む 培 地
で 培 養 し た 、 そ れ は 、 U251細 胞 を 対 数 期 に 培 養 す る と き は 、 無 血 清 培 地 に 置 き 換 え た 。 処
置は、血清を除去した後第一日に始めた。
【0097】
細胞分裂試験: 細胞分裂試験は、供与された物質の種々の濃度をとり、少なくとも5
日 間 の 培 養 で 対 数 増 殖 の 密 度 に な る よ う な 培 養 で 行 っ た 。 培 養 に 供 し た 培 地 は 、 24時 間 培
30
養 後 、 通 常 は 、 無 血 清 培 地 に 置 き 換 え た 。 細 胞 は 、 「 方 法 」 で 記 載 し た よ う に 24時 間 又 は
48時 間 、 供 与 さ れ た 物 質 の 種 々 の 濃 度 で 処 理 し た 。 HET0016、 DDMS及 び WIT003は 、 全 て 溶
解 し 、 エ タ ノ ー ル ( ETOH) で 希 釈 し た 。 有 機 溶 媒 は 、 全 培 地 容 量 に 対 し 0.1% を 超 え て い
な い 。 細 胞 は 、 0.05% ト リ プ シ ン / EDTA処 理 に よ り 採 取 し 、 血 球 測 定 器 を 用 い て 計 測 し た
。
【0098】
3
[ H]チ ミ ジ ン の 取 り 込 み 試 験 : チ ミ ジ ン の 取 り 込 み 試 験 は 、 35mm培 養 皿 中 で 培 養 し た
3
細 胞 で 行 っ た 。 培 養 は 、 HET0016で 処 理 1時 間 後 、 [メ チ ル - H]チ ミ ジ ン ( 1μ Ci/ml培 養 液
) を 種 々 の 時 間 で パ ル ス し た 。 パ ル ミ チ ン 酸 と エ タ ノ ー ル ( EtOH) を 各 々 脂 肪 酸 及 び ヴ ィ
ー ク ル 対 照 と し た 。 パ ル ス の 終 わ り に 、 培 地 を 吸 引 し 、 細 胞 は 、 2度 、 冷 却 し た り ん 酸 緩
40
衝 生 理 食 塩 水 ( PBS) に す す ぎ 洗 っ た 。 す す い だ 培 養 物 は 、 一 晩 、 4℃ 、 5% ト リ ク ロ ロ 酢
酸 の 処 理 に よ り 固 定 し 、 固 定 し た 細 胞 は 、 前 述 し た 方 法 に よ る 抽 出 に 供 し た ( Schollerら
、 Mol. Pharmacol. 45: 944-954, 1994) 。 固 定 処 理 を し て い な い 第 2番 目 の 一 組 の 培 養 皿
3
は 、 0.05% ト リ プ シ ン / EDTA処 理 し て 、 細 胞 数 計 測 に 供 し た 。 [ H]チ ミ ジ ン は 、 シ ン チ レ
3
ー シ ョ ン カ ウ ン タ ー で 検 出 し 、 dpm/10 で 表 し た 。
【0099】
フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー : 細 胞 は 、 採 取 時 に 対 数 増 殖 期 が 確 認 さ れ る 密 度 に な る ま で 10
0mm培 養 皿 で 培 養 し た 。 ヨ ウ 化 プ ロ ピ ジ ウ ム ( PI) を 用 い た フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー に よ る D
NA検 出 に 用 い た 採 取 及 び 操 作 プ ロ ト コ ル は 、 前 述 し た ( Reinersら 、 Carcinogenesis 20
: 1561-1566, 1999) 。 細 胞 は 、 べ ク ト ン デ ッ キ ン ソ ン ( Becton Dickinson FACScan
50
(24)
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in the Wayne State University Flow Cytometry Core Facility, Detroit, M
I) を 用 い て 分 析 し た 。 細 胞 周 期 の G0 /G1 、 S、 及 び G2 /M期 の 細 胞 数 の 百 分 率 ( % ) は 、 DNA
ヒ ス ト グ ラ ム 用 プ ロ グ ラ ム に よ り 行 っ た ( DNA histogram-fitting program( MODFIT; V
4
erity Software, Topsham, ME) ) 。 最 低 、 サ ン プ ル 当 た り 、 10 ( 件 / サ ン プ ル ) 、 を
集めた。
【0100】
DNAの 分 画 と TUNEL試 験 : HET0016処 理 培 養 物 を 1xPBSで 2度 洗 浄 し 、 溶 解 緩 衝 液 ( 20mM
ト リ ス 塩 酸 、 10mMEDTA、 0.3% ト ラ イ ト ン X-100) で イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 。 染 色 体 DNA
が 抽 出 さ れ 、 2% ア ガ ロ ー ス ゲ ル 上 で 分 離 し た 。 分 離 し た DNAは 、 エ チ ジ ウ ム ブ ロ ミ ド ( ET
Br) で ゲ ル 染 色 に よ り 可 視 化 し た 。 同 時 に 、 U251培 養 物 は 、 カ バ ー ス リ ッ プ 上 に 播 種 し 、
10
TUNEL試 験 の た め に HET0016で 処 理 し た 。 カ バ ー ス リ ッ プ は 、 PBSで 3度 洗 浄 し 、 空 気 乾 燥 さ
せ た 。 サ ン プ ル は 、 次 に 、 TUNEL試 験 の た め に 、 用 事 新 し く 調 製 し た 固 定 液 ( 4% PBS中 パ
ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド 、 pH 7.4) で 室 温 で 1時 間 固 定 し 、 新 鮮 な 浸 透 液 ( 0.1% ク エ ン 酸 ナ
ト リ ウ ム 中 0.1% ト ラ イ ト ン X-100) で 氷 中 2分 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 。 最 後 に 、 サ ン
プルは、製造業者の勧めに従い、インサイチュウ(細胞のままの状態での)細胞死検出キ
ッ ト ( in situ Cell Death Detection Kit, AP ( Roche Diagnostics, Indianapo
lis, IN) を 用 い て 操 作 し た 。
【0101】
RNAの 単 離 と 、 逆 転 写 − ポ リ メ ラ ー ゼ 鎖 反 応 ( RT-PCR) : 培 養 物 は 、 10μ Mの HET0016
又 は 100μ Mの DDMSの ど ち ら か で 24時 間 又 は 48時 間 、 各 々 処 理 し た 。 要 す る に 、 全 RNAは 、
20
ト ラ イ ゾ ル ( Trizol) 試 薬 ( Invitrogen社 ) で 単 離 し 、 1-2μ gRNAを 、 フ ァ ー ス ト ス ト
ラ ン ド 合 成 キ ッ ト ( First Strand synthesis kit; Invitrogen) を 用 い て 、 cDNAの 合
成 に 供 し た 。 本 発 明 者 ら は 、 特 異 的 に CYP4Aを 認 識 す る PCRプ ラ イ マ ー 、 及 び β − ア ク チ ン
特 異 的 な プ ラ イ マ ー を 用 い た 。 サ ン プ ル 当 た り 1μ Ciの
3 2
Pを プ ラ チ ナ ム PCRス ー パ ー ミ ッ
ク ス ( Platinum PCR Supermix; Invitrogen) に 添 加 し た 。 CYP4A及 び β ア ク チ ン を 増 複
す る た め に 用 い た PCRの 条 件 は 、 95℃ 3分 の プ レ サ イ ク ル の 後 に 、 95℃ 45秒 、 52℃ 30秒 、 72
℃ 2分 か ら な る 35サ イ ク ル を 回 し 、 最 終 伸 長 と し て 72℃ 10分 間 行 っ た 。 用 い た プ ラ イ マ ー
は 、 : β − ア ク チ ン フ ォ ワ ー ド プ ラ イ マ ー は 、 5'-TGC GTG ACA TTA AGG AGA AG3'( SEQ ID NO:3) ; β − ア ク チ ン リ バ ー ス プ ラ イ マ ー は 、 5'-GCT CGT AGC TCT
TCT CCA -3'( SEQ ID NO:4) ; CYP4A11 フ ォ ワ ー ド プ ラ イ マ ー は 、 5'-CCA CCT
30
GGA CCA GAG GCC CTA CAC CAC C-3'( SEQ ID NO:5) ; CYP4A11 リ バ ー ス
プ ラ イ マ ー は 、 5'-AGG ATA TGG GCA GAC AGG AA-3'( SEQ ID NO:6) 。 PCR産 物 は
、 5% ビ ス − ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル で 電 気 泳 動 し 、 オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ ィ ー で 可 視 化 し た
。
【0102】
核 抽 出 標 本 と ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト : 細 胞 は 、 10μ Mの HET0016で 種 々 の 時 間 処 理 し 、 氷
冷 1xPBSで 2度 洗 浄 し た 。 そ れ ら は 4℃ 5分 間 1000gで 遠 心 に よ り ペ レ ッ ト に し た 。 細 胞 は 、 R
IPA緩 衝 液 [ 20mM HEPES( pH 7.4) , 100mM NaCl, 1% ノ ニ デ ッ ト P-40, 0.1% SDS
, 1% デ オ キ シ コ ー ル 酸 , 10% グ リ セ ロ ー ル , 1mM EDTA, 1mM NaVO3 , 50mM NaF, 及 び
プ ロ テ ア ー ゼ 阻 害 剤 セ ッ ト 1( Set 1、 Calbiochem, La Jolla, CA) ] を 添 加 し 溶 解 し た
40
。 培 養 プ レ ー ト は 、 1.5ml遠 心 管 に 集 め 、 そ の 後 30分 間 冷 却 下 で イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た
。 細 胞 懸 濁 液 の ホ モ ジ ネ ー ト は 、 4℃ 、 14000g、 10分 間 遠 心 し ; ペ レ ッ ト は 捨 て 、 上 清 中
の タ ン パ ク 質 濃 度 を ビ シ ン コ ニ ン 酸 ( BCA) に よ り タ ン パ ク 質 定 量 を 行 っ た 。
【0103】
代 表 的 に は 、 20μ gの タ ン パ ク 質 が 、 14% ト リ ス − グ リ シ ン ゲ ル ( イ ン ビ ト ロ ゲ ン 社 )
で 分 離 さ れ 、 PVDF膜 上 ( Biotrace, Bothell, WA) で エ レ ク ト ロ ブ ロ ッ ト に よ り 行 っ た 。
膜 は 、 停 止 緩 衝 液 中 の 一 次 抗 体 で ( 4℃ 一 晩 ) イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン す る 前 に 、 停 止 液 [ 0.2
% I-Block reagent ( Tropix, Bedford, MA) , 0.1% ツ イ ー ン -20 in 1x PBS]
を 用 い て 、 室 温 で 1時 間 、 停 止 さ せ た 。 リ ン 酸 チ ロ シ ン ( Y102) , リ ン 酸 化 セ リ ン /ス レ オ
ニ ン − プ ロ MPM2、 リ ン 酸 化 -p42/p44 MAPK( T202/Y204) ( 20G11) 、 及 び リ ン 酸 化 − SAPK
50
(25)
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/JNK( T183/Y185) ( 98F2) モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 は 、 ア ッ プ ス テ イ ト ( Upstate, Waltham
, MA) か ら 購 入 し た 。 付 け 加 え て 、 CYP4Aポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 は 、 CYP4Aタ ン パ ク 質 を 検 出
す る た め に 、 リ サ ー チ デ ィ ア グ ノ シ ス ッ ク 社 ( Research Diagnostics ( Flanders, N
J) ) と ケ ミ コ ン 社 ( Chemicon ( Ternecula, CA) ) の 両 社 か ら 購 入 し た 。 リ ン 酸 タ イ ロ
シ ン ( Y102) と リ ン 酸 セ リ ン − ス レ オ ニ ン − プ ロ MPM2は 、 対 応 の 抗 体 の 1:20000倍 希 釈 で
検 出 し た が 、 リ ン 酸 -p44/p42MAPK及 び リ ン 酸 -SAPK/JNKは 、 抗 体 の 1:1000倍 希 釈 で 検 出 し
た 。 CYP4A抗 体 は 、 1:100倍 の 希 釈 で 用 い た 。 洗 浄 緩 衝 液 [ 1xTBS及 び 0.1% ツ ィ ー ン 80] で
三 度 洗 浄 し た 後 、 膜 は 、 パ ー オ キ シ ダ ー ゼ 結 合 山 羊 抗 マ ウ ス 又 は 抗 ウ サ ギ 抗 体 ( 1:4000倍
に 停 止 緩 衝 液 で 希 釈 ) ( Upstate, Waltham, MA) で 、 室 温 で 1時 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し
た 。 膜 は 、 次 い で 、 洗 浄 緩 衝 液 で 3度 洗 浄 し 、 化 学 蛍 光 の 検 出 を 操 作 手 順 書 に 従 い 増 強 化
10
学 蛍 光 キ ッ ト ( enhanced chemiluminescence kit; Upstate) に よ り 行 っ た 。 ア ク チ ン
を積載対照として用いた。
【0104】
統 計 分 析 : デ ー タ は 、 タ ー キ ー HSDテ ス ト に よ り 分 析 し た 。 こ れ ら の 計 算 を 行 う た め
に 、 ス タ チ ス チ カ 5.0ソ フ ト ウ エ ア ( Statistica 5.0 software package ( StaSoft,
Tulsa, OK) を 用 い た 。
【0105】
結果
細 胞 増 殖 に 対 す る CYP4A阻 害 の 効 果 : U251細 胞 増 殖 の 調 節 に お け る 20-HETEの 役 割 を 検
討 す る た め 、 本 発 明 者 ら は 、 イ ン ビ ト ロ で の ヒ ト U251グ リ オ ー マ ( 神 経 膠 腫 ) が ん 細 胞 の
20
分 裂 と 増 殖 に 対 す る CYP4A阻 害 剤 で あ る HET0016の 効 果 を 試 験 し た 。 本 発 明 者 ら は 、 種 々 の
濃 度 の HET0016で 培 養 物 を 2日 間 処 理 し 、 次 い で 細 胞 を 計 測 し た 。 U251の 基 礎 的 な 増 殖 は 、
HET0016に よ り 濃 度 依 存 的 に 抑 制 さ れ た ( 図 15A ) 。 ト リ パ ン ブ ル ー 排 泄 で は 、 細 胞 の 活
性 は HET0016に よ り 影 響 受 け て い な い こ と を 示 し た の で 、 こ れ は 静 細 胞 的 な 効 果 で あ る と
考 え ら れ た 。 さ ら に 、 EGFに よ り 誘 導 さ れ た 細 胞 増 殖 は 、 同 様 に HET0016に よ り 抑 制 さ れ た
( 図 16) 。 用 量 反 応 試 験 は 、 10μ Mの HET0016が 、 U251細 胞 の 増 殖 を 約 60% 阻 害 し 、 こ の 濃
度 を 以 下 の 全 て の 試 験 に 処 理 濃 度 と し て 用 い た 。 HET0016が こ れ ら の 細 胞 内 で ア ポ ト ー シ
ス を 誘 導 し て い る か 否 か を 調 べ る た め に 、 DNA分 画 と チ ュ ー ネ ル ( TUNEL) 試 験 を 行 っ た 。
こ れ ら は 、 否 定 的 な 結 果 で あ っ た の で ( デ ー タ は 示 さ ず ) 、 本 発 明 者 ら は 、 HET0016が こ
れ ら の 細 胞 で ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 し な い と 結 論 し た 。 U251が ん 細 胞 に 対 し て 示 し た よ う な
30
効 果 を 正 常 細 胞 に 対 し て も HET0016が 示 す か 否 か を 検 討 す る た め に 、 本 発 明 者 ら は 、 HUVEC
s細 胞 と ヒ ト 初 代 の 角 化 細 胞 を 10μ Mの HET0016で 処 理 し た 。 HET0016は 、 こ れ ら の 正 常 な 細
胞 の タ イ プ の い ず れ に 対 し て も 基 礎 的 な 分 裂 及 び 増 殖 に 効 果 は な か っ た ( 図 17) 。
【0106】
3
[ H-チ ミ ジ ン ]の 取 り 込 み 試 験 は 、 培 地 中 へ の HET0016の 添 加 後 、 約 24時 間 及 び 48時 間 で
、 DNA合 成 の 50% 及 び 66% を 阻 害 を 示 し た ( 図 15B ) 。 20-HETE合 成 の 構 造 上 異 な る 阻 害 剤
で あ る DDMSは 、 用 量 依 存 的 に U251が ん 細 胞 の 増 殖 を 同 様 に 阻 害 し ( 図 18) 、 そ れ は HET001
6と 同 様 で あ っ た 。
【0107】
フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー : HET0016の 細 胞 増 殖 抑 制 効 果 が 細 胞 周 期 の 特 定 の 時 点 で 停 止
40
を も た ら し て い る か 否 か を 調 べ る た め に 、 細 胞 中 の DNA量 の フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー 試 験 を
行 っ た ( 図 15C ) 。 G0 /G1 DNAを 含 む 細 胞 が HET0016の 24時 間 及 び 48時 間 処 理 で 蓄 積 し 、 S及
び G2 /M期 の 両 細 胞 の 消 失 を 伴 っ た 。
【0108】
mRNAと タ ン パ ク 質 レ ベ ル で の CYP4Aの 発 現 : 本 発 明 者 ら は 、 U251細 胞 で CYP4Aが 、 発 現
し て い る か を 確 認 す る た め に 、 RT-PCRと ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 試 験 を 行 っ た 。 対 照 の U251
細 胞 で CYP4A11 mRNAの 発 現 が 、 DNAシ ー ク エ ン シ ン グ に よ り 確 認 さ れ た 。 10μ Mの HET0016
処 理 24時 間 後 で は 、 転 写 レ ベ ル は 減 少 し た が 、 一 方 、 100μ Mの DDMS処 理 し た 培 養 で は 影 響
を 受 け な か っ た 。 こ の よ う に 、 CYP4A11遺 伝 子 は 転 写 さ れ 、 そ の ( 転 写 さ れ た ) メ ッ セ ー
ジ が 、 U251細 胞 で 発 現 し た 。 付 け 加 え る と 、 2つ の 商 業 的 な 出 所 か ら 得 た 、 2 つ の 異 な る C
50
(26)
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YP4Aポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 用 い た ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト の 試 験 は 、 両 方 の 抗 体 が 、 約 55kDa
に 免 疫 的 に 反 応 す る タ ン パ ク 質 を 検 出 し た が 、 そ れ は 、 CYP4Aと し て 期 待 す る 分 子 量 と 一
致 す る も の で あ っ た 。 こ の よ う に 、 ヒ ト U251が ん 細 胞 は 、 mRNAと タ ン パ ク 質 の 両 レ ベ ル で
CYP4Aを 発 現 す る 。
【0109】
U251が ん 細 胞 の 増 殖 に 及 ぼ す ア ゴ ニ ス ト の 活 性 を も つ 20-HETEア ナ ロ グ の 影 響 : 本 発
明 者 ら は 、 培 地 で 増 殖 し た U251が ん 細 胞 の 増 殖 に 対 し て 、 ア ゴ ニ ス ト の 性 質 を も つ 安 定 な
20-HETEア ナ ロ グ WIT003の 効 果 を 試 験 し た 。 無 血 清 培 養 は 、 20-HETEア ゴ ニ ス ト の 0.1及 び 1
.0μ Mで 48時 間 処 理 し 、 細 胞 数 を 続 い て 計 測 し た 。 EGFは U251細 胞 に と っ て 最 大 の 増 殖 を も
た ら す こ と が わ か っ て い る の で 、 陽 性 対 照 と し て EGFを 用 い た 。 0.1μ Mの 濃 度 の WIT003は E
10
GF50ng/mlよ り も U251の 増 殖 に 刺 激 を 与 え な か っ た が 、 一 方 、 WIT003の 1.0μ Mは U251が ん
細 胞 の 増 殖 を 20% 増 強 さ せ た 。 こ の 効 果 の 程 度 は 、 EGF200ng/mlに よ り 誘 導 さ れ る 刺 激 効
果 と 比 較 で き る も の で あ る ( 図 19) 。
【0110】
HET0016の 抗 増 殖 効 果 の 20-HETEア ゴ ニ ス ト に よ る 逆 転 : 本 発 明 者 ら は 、 HET0016に よ
る 20-HETEの 内 因 的 合 成 阻 害 を も た ら さ れ た U251の 増 殖 阻 害 が 、 20-HETEの ア ゴ ニ ス ト WIT0
03の 外 か ら の 投 与 で 逆 転 す る か 否 か を 試 験 し た 。 こ の 試 験 で は 、 U251の 培 養 は 、 1μ Mの WI
T003、 10μ Mの HET0016又 は こ の 両 物 質 で 同 時 に 処 理 し た 。 細 胞 は 、 処 理 2日 後 に 細 胞 数 を
計 測 し た 。 WIT003と HET0016の 両 物 質 の 存 在 下 で は 、 U251の 増 殖 は 、 HET0016単 独 処 理 培 地
に 比 較 し て 約 70% 増 加 し た ( 図 20) 。 こ れ ら の 発 見 は 、 U251が ん 細 胞 の HET0016に よ る 増
20
殖 阻 害 効 果 を 安 定 な 20-HETEア ゴ ニ ス ト の 添 加 が 逆 転 し た こ と を 示 す 。
【0111】
U251s細 胞 に お け る シ グ ナ ル ト ラ ン ス ダ ク シ ョ ン の 蛋 白 質 の リ ン 酸 化 に 対 す る CYP4A阻 害
の 効 果 : U251細 胞 で HET0016処 理 に よ る 20-HETE産 生 阻 害 に 伴 う 下 流 の シ グ ナ ル 伝 達 の 影
響 を 解 明 す る た め に 、 種 々 の 時 間 で HET0016処 理 し た U251細 胞 か ら 蛋 白 質 抽 出 物 を 単 離 し
た 。 U251細 胞 に お け る タ ン パ ク 質 の チ ロ シ ン 及 び セ リ ン / ス レ オ ニ ン 蛋 白 リ ン 酸 化 状 態 に
お け る HET0016で 誘 導 さ れ た 変 化 を 検 討 す る た め に 、 フ ォ ス フ ォ チ ロ シ ン ( Y102) 抗 体 及
び リ ン 酸 化 セ リ ン / ス レ オ ニ ン − プ ロ リ ン MPM2抗 体 を 用 い て ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト を 行 っ た
。 本 発 明 者 ら は 、 HET0016が U251細 胞 に お け る チ ロ シ ン リ ン 酸 化 に 影 響 を 与 え 、 HET0016処
理 24時 間 又 は 48時 間 で 有 意 な 減 少 を 導 く こ と を 見 出 し た 。 し か し な が ら 、 セ リ ン / ス レ オ
30
ニ ン 蛋 白 質 リ ン 酸 化 に は 有 意 な 変 化 を 与 え な い こ と を HET0016処 理 U251細 胞 に お い て 見 い
た し た 。 P42/p44MARK及 び SARK/JNKの リ ン 酸 化 に HET0016が ど の よ う に 影 響 す る か を 検 討 す
る た め に 二 つ の 更 な る 抗 体 を 用 い た 。 HET0016は 、 24時 間 後 及 び 48時 間 後 に 、 P42/p44MARK
及 び SARK/JNKの 両 方 の リ ン 酸 化 を 阻 害 し た 。 こ の よ う に MAPR及 び SARK/JNK経 路 が 、 CYP4A
阻害に起因するシグナルトランスダクションにおいて重要な役割を演じているにちがいな
い。
【実施例4】
【0112】
イ ン ビ ト ロ 及 び イ ン ビ ボ に お い て 20-HETE阻 害 に よ る ラ ッ ト グ リ オ サ ル コ ー マ の 細 胞 分
裂の阻害
40
こ の 実 施 例 は 、 イ ン ビ ト ロ で の 9L及 び イ ン ビ ボ で 9Lに よ り ラ ッ ト 脳 腫 瘍 を も た ら す 細 胞
増 殖 に 対 す る CYP4A阻 害 剤 HET0016の 効 果 を 示 す 。 CYP4A遺 伝 子 は 、 RT-PCRに よ る 検 出 で は
、 9L細 胞 に お い て 高 度 に 発 現 し て い る 。 高 度 な 選 択 的 阻 害 剤 HET0016で の CYP4A活 性 阻 害 は
、 用 量 に 関 連 し て 9L細 胞 の 増 殖 を 低 下 さ せ た 。 10μ Mの HET0016の 添 加 は 、 48時 間 後 で 60%
の 9L細 胞 の 増 殖 を 減 少 さ せ た 。 CYP4Aの 構 造 上 異 な る 阻 害 剤 で あ る DDMSは 、 同 様 に 9L細 胞
の 増 殖 を 60% 阻 害 し た 。 20-HETEの 安 定 な ア ゴ ニ ス ト 、 WIT003は 1μ Mで 約 70% 細 胞 増 殖 阻
害 を 救 済 し た 。 EGF( 200ng/ml) は 9L細 胞 の イ ン ビ ト ロ で の 増 殖 を 30% 増 加 さ せ た 。 同 様
な 程 度 の 刺 激 が 、 1μ Mの WIT003で も 得 ら れ た 。 HET0016は 、 EGFに よ り 誘 導 さ れ た 9Lの 増 殖
を ほ と ん ど 破 棄 さ せ た 。 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 分 析 で は 、 HET0016が P42/p44MARK及 び SARK/J
NKの リ ン 酸 化 を 減 少 さ せ た こ と を 示 し た 。 ラ ッ ト に お け る イ ン ビ ボ 脳 腫 瘍 は 、 前 脳 へ の 直
50
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接 的 な 9L細 胞 の 注 入 に よ り 誘 導 さ れ た 。 HET0016( 1mg/ kg/ 日 / 腹 腔 内 ) で 約 2週 間 の ラ
ッ ト の 治 療 は 、 脳 腫 瘍 の 容 積 を 80% だ け 減 少 さ せ た 。 こ れ は 、 増 強 さ れ た ア ポ ト ー シ ス と
同 様 に 、 注 入 さ れ た 9L細 胞 の 有 糸 分 裂 の 減 少 に 起 因 す る も の で あ る 。
【0113】
材料と方法
培 養 条 件 : 9Lラ ッ ト 神 経 膠 肉 腫 ( グ リ オ サ ル コ ー マ ) 細 胞 は 、 ATC( ゲ ッ テ ィ ス バ ー
ク 、 Gaithersburg, MD) か ら 購 入 し 、 10% 加 熱 非 働 化 し た 牛 胎 児 血 清 ( FBS) 、 ペ ニ シ リ
ン ( 10 IU/ml) 、 ス ト レ プ ト プ ト マ イ シ ン ( 10μ g/ml) 及 び 10% 非 必 須 ア ミ ノ 酸 ( 全 て
イ ン ビ ト ロ ゲ ン 社 か ら 購 入 ) を 添 加 し た DMEM( イ ン ビ ト ロ ゲ ン 社 、 Invitrogen) で 維 持 し
た 。 細 胞 は 、 37℃ 、 湿 潤 化 し た 5% 炭 酸 ガ ス イ ン キ ュ ー ベ ー タ で 維 持 し た 。 そ れ ら は 、 10
10
% FBS含 有 培 地 で 増 殖 さ せ た が 、 9L細 胞 が 対 数 的 に 増 殖 し た 時 点 で 、 無 血 清 培 地 ( 供 与 さ
れたタイプ及び原料)に置き換えて増殖させた。
【0114】
細 胞 増 殖 試 験 : 増 殖 試 験 は 、 少 な く と も 5日 間 対 数 増 殖 し た こ と が 確 認 さ れ た 細 胞 密
度 で 、 播 種 し た 培 養 培 地 で 行 っ た 。 増 殖 用 培 地 は 、 播 種 24時 間 後 に ゆ っ く り と 無 血 清 培 地
に 置 き 換 え た 。 細 胞 は 、 HET0016( 大 正 製 薬 、 日 本 ) 、 DDMS、 パ ル ミ チ ン 酸 ( 非 特 異 的 脂
肪 酸 対 照 ) 、 EGF( シ グ マ 、 セ ン ト ル イ ス 、 MO) 、 又 は WIT003( 20-HETEア ゴ ニ ス ト ) の
い ず れ か で 24時 間 又 は 48時 間 処 理 し た 。 HET0016、 DDMS、 及 び WIT003は 全 て エ タ ノ ー ル ( E
tOH) に 溶 解 し た 。 培 地 へ 添 加 し た エ タ ノ ー ル の 濃 度 は 、 0.1% を 超 え る こ と は 無 か っ た 。
細 胞 は 、 0.05% ト リ プ シ ン / EDTAの 溶 液 に 接 触 さ せ て 採 取 し 、 血 球 計 算 器 を 用 い て カ ウ ン
20
トした。
【0115】
3
[ H]-チ ミ ジ ン の 取 り 込 み 試 験 : チ ミ ジ ン の 取 り 込 み 試 験 は 、 35mmデ ィ シ ュ で 培 養 し
3
た 細 胞 で 行 っ た 。 培 養 物 は 、 HET0016処 理 1時 間 後 、 種 々 の 時 間 で [メ チ ル H]-チ ミ ジ ン ( 1
μ Cu/ ml培 養 培 地 ) パ ル ス し た 。 パ ル ミ チ ン 酸 、 エ タ ノ ー ル 、 を 非 特 異 的 脂 肪 酸 及 び ヴ ィ
ー ク ル ( 溶 媒 ) 対 照 と し て 、 各 々 を 用 い た 。 パ ル ス の 終 末 に 、 培 地 を 吸 引 し 、 細 胞 を 1xリ
ン 酸 緩 衝 液 生 理 食 塩 水 ( PBS) で 2回 洗 浄 し た 。 洗 浄 し た 培 養 物 は 、 5% ト リ ク ロ ロ 酢 酸 で 4
℃一晩接触させて固定し、固定した細胞は、前述にしたがって抽出に供した(スコラーら
、 Mol. Pharmacol. 45: 944-954, 1994) 。 第 2番 目 の 未 固 定 の 培 養 物 は 、 細 胞 数 を 計 測 す
3
る た め に 0.05% ト リ プ シ ン / EDTAで 処 理 し た 。 [ H]-チ ミ ジ ン の 取 り 込 み は 、 シ ン チ レ ー
30
3
シ ョ ン カ ウ ン タ ー で 検 出 し 、 dpm/10 細 胞 で 表 し た 。
【0116】
DNA断 裂 と チ ュ ー ネ ル ( TUNEL) 試 験 : HET0016処 理 9L培 養 物 は 、 1xPBSで 2度 洗 浄 し 、
溶 解 緩 衝 液 [ 20mMト リ ス -塩 酸 、 10mMEDTA、 0.3% ト ラ イ ト ン X] で イ ン キ ュ ー べ ー ト し た
。 染 色 体 DNAを 抽 出 し 、 2% ア ガ ロ ー ス ゲ ル で 分 離 し た 。 分 離 し た DNAは 、 エ チ ジ ウ ム ブ ロ
マ イ ド ( EtBr) で ゲ ル を 染 色 し て 可 視 化 し た 。 同 時 に 9L培 養 物 は 、 カ バ ー ス リ ッ プ 上 に 播
種 し 、 チ ュ ー ネ ル (TUNNEL)試 験 用 に HET0016で 処 理 し た 。 カ バ ー ス リ ッ プ は PBSで 3度 洗 浄
し 、 空 気 乾 燥 さ せ た 。 サ ン プ ル は 、 次 い で 新 し く 調 製 し た 固 定 液 ( PBS中 4% パ ラ ホ ル ム ア
ル デ ヒ ド 、 pH7.4) 1時 間 室 温 で 固 定 し 、 次 い で 、 新 し く 調 製 し た 浸 透 液 ( 0.1% ク エ ン 酸
ナ ト リ ウ ム 液 中 0.1% ト ラ イ ト ン X) で 、 氷 冷 中 2分 間 イ ン キ ュ ー べ ー シ ョ ン し た 。 最 後 に
40
、 サ ン プ ル は 、 イ ン サ イ チ ュ ウ 細 胞 死 検 出 キ ッ ト ( In situ Cell Death Detection Kit, AP ( ロ ッ シ ュ デ ィ ア グ ノ ス テ ィ ク ス 、 イ ン ジ ア ナ ポ リ ス 、 IN) を 用 い て 、 製 造
元の推奨に従って操作を進めた。
【0117】
RNAの 単 離 と 逆 転 写 -ポ リ メ ラ ー ゼ 鎖 反 応 ( RT-PCR) : 培 養 物 は 、 10μ Mの HET0016又 は
100μ Mの DDMSの い ず れ か で 48時 間 処 理 し た 。 エ タ ノ ー ル 処 理 培 養 物 は 、 溶 媒 対 照 と し て 用
い た 。 次 に 、 全 RNAを ト ラ イ ゾ ル 試 薬 ( Trizol reagent; イ ン ビ ト ロ ゲ ン 社 ) で 単 離 し 、
1∼ 2μ gRNAを フ ァ ー ス ト ス ト ラ ン ド シ ン セ シ ス キ ッ ト ( First Strand Synthesis
Kit; Invitrogen) に よ り 、 cDNA合 成 に 用 い た 。 本 発 明 者 ら は 、 特 異 的 に CYP4A1を 認 識
し 、 ま た 、 β -ア ク チ ン 特 異 的 な プ ラ イ マ ー を 用 い た 。 プ ラ チ ナ ム PCRス ー パ ー ミ ッ ク ス (
50
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Invitorgen) を 反 応 混 液 と し て 用 い た 。 CYP4A1/2/3及 び β ア ク チ ン の 増 複 に 用 い た PCRの
条 件 は 、 95℃ 3分 間 の プ レ サ イ ク ル の 後 、 95℃ 45秒 、 52℃ 30秒 を 35サ イ ク ル を 行 い 、 最 後
に 、 72℃ 10分 間 の 伸 長 を 行 っ た 。 用 い た プ ラ イ マ ー は 、 β ア ク チ ン フ ォ ワ ー ド プ ラ イ マ
ー 、 5'-TTC AAC ACC CCA GCC ATG T-3'( SEQ ID NO:3) ; β -ア ク チ ン リ バ ー
ス プ ラ イ マ ー 、 5'-GTG GTA CGA CCA GAG GCA TAC A-3'( SEQ ID NO:4) ; CYP4
A1/2/3 フ ォ ワ ー ド プ ラ イ マ ー , 5'-TTC CAG GTT TGC ACC AGA CTC T -3'( SEQ
ID NO:5) ; CYP4A1/2/3 リ バ ー ス プ ラ イ マ ー , 5'-TTC CTC GCT CCT CCT GAG
AAG-3'( SEQ ID NO:6) 。 PCR産 物 は 、 5% ビ ス ー ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 に 供
し、オートラジオグラフィーで可視化した。
【0118】
10
核 抽 出 物 標 品 及 び ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 操 作 : 9L細 胞 は 、 10μ Mの HET0016で 種 々 の 時 間
処 理 し 、 氷 冷 PBSで 2度 洗 浄 し た 。 そ れ ら は 、 1000g4℃ 5分 間 の 遠 心 に よ り ペ レ ッ ト に し た
。 細 胞 は 、 RIPA緩 衝 液 [ 20mM HEPES ( pH 7.4) 、 100mM食 塩 、 1% ノ ニ デ ッ ト P-40、 0.
1% SDS、 1% デ オ キ シ コ ー ル 酸 、 10% グ リ セ ロ ー ル 、 1mM EDTA、 1mM NaVO3 、 50mMフ ッ 化
ナ ト リ ウ ム 、 及 び プ ロ テ ア ー ゼ 阻 害 剤 セ ッ ト 1( Calbiochem, La Jolla, CA) ] 。 培 養 器
か ら 掻 き 集 め て 、 細 胞 は 1.5mlの 遠 心 管 に 集 め 、 冷 却 下 30分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 細 胞
ホ モ ジ ネ ー ト を 14000gで 10分 間 4℃ で 遠 心 し た 。 ペ レ ッ ト は 捨 て 、 上 清 の 蛋 白 濃 度 を ビ シ
ンコニン酸蛋白定量により測定した。
【0119】
代 表 的 な 例 で は 、 細 胞 ホ モ ジ ネ ー ト か ら 得 た 20μ gの 蛋 白 を ト リ ス − グ リ シ ン ゲ ル (
20
イ ン ビ ト ロ ゲ ン ) 上 に 分 離 し 、 PVDFメ ン ブ ラ ン ( バ イ オ ト レ ー ス 社 、 ボ テ ル 、 MA) 上 に 移
し た 。 そ の メ ン ブ ラ ン は 、 停 止 緩 衝 液 [ 0.2% の I− 停 止 試 薬 ( Tropix, Bedford, MA) , 0
.1% ツ イ ー ン 20、 1xPBS中 ] を 用 い て 室 温 に て 1時 間 で ( 反 応 を ) 停 止 さ せ 、 4℃ 一 晩 、 停
止 緩 衝 液 中 で 一 次 抗 体 で イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 リ ン 酸 化 -p42/p44 MAPK( T202/Y204) ( 2
0G11) 及 び リ ン 酸 化 -SAPK/JNK( T183/Y185) ( 98F2) モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 は 、 リ サ ー チ デ ィ ア グ ノ シ ス ( フ ラ ン ダ ー ス 、 NJ) か ら 購 入 し 、 ケ ミ コ ン ( テ ル ネ ク ラ 、 CA) を CYP4A
タ ン パ ク 質 の 検 出 に 用 い た 。 リ ン 酸 化 -p42/p44 MAPK( T202/Y204) ( 20G11) 及 び リ ン 酸
化 -SAPK/JNK( T183/Y185) ( 98F2) の 両 方 は 、 1: 1000の 抗 体 希 釈 率 で 検 出 し た 。 CYP4A抗
体 は 1: 100の 抗 体 希 釈 率 を 用 い た 。 洗 浄 緩 衝 液 ( 1xTBS及 び 0.1% ツ イ ー ン 20) で 3度 メ ン
ブランを洗浄した後、メンブランは、パーオキシダーゼ結合山羊抗マウス又は抗ウサギ抗
30
体 ( ア ッ プ ス テ イ ト ) ( 停 止 緩 衝 液 で 1: 4000倍 に 希 釈 し た 。 ) で 、 室 温 で 1時 間 イ ン キ ュ
ベ ー ト し た 。 そ の メ ン ブ ラ ン は 、 次 に 、 3度 洗 浄 し 、 増 強 化 学 蛍 光 キ ッ ト ( ア ッ プ ス テ イ
ト)を用いて現像した。そのメンブランは、次いで剥ぎ取り、積載対照(ローディング コントロール)として供したβアクチン一次抗体で再度検査した。
【0120】
腫 瘍 移 植 : 移 植 前 に 、 90% コ ン フ ル エ ン ト の 9L細 胞 は ト リ プ シ ン 処 理 後 、 遠 心 し た 。
細 胞 ペ レ ッ ト は 、 DMEM+ 10% FBSに 再 懸 濁 し 、 血 球 計 算 器 を 用 い て 計 測 し た 。 9L細 胞 の 濃
4
度 は 、 1× 10 細 胞 / 5μ l培 地 に 調 整 し た 。
【0121】
脳 腫 瘍 は 、 9L細 胞 懸 濁 液 を 、 チ ャ ー ル ス リ バ ー ラ ボ ラ ト リ ー ( ウ イ ル ミ ン ト ン 、 MA)
40
か ら 購 入 し た フ ィ ッ シ ャ ー 344ラ ッ ト の 前 頭 大 脳 皮 質 に 注 入 す る こ と に よ り 、 以 下 に 示 す
よ う に 植 え つ け た 。 ラ ッ ト は 、 ケ タ ミ ン ( 80mg/kg、 筋 肉 内 ) 及 び キ シ ラ ジ ン ( 13mg/kg)
で 麻 酔 さ せ 、 頭 は 定 位 置 に 固 定 し ( ダ ビ ッ ド 、 コ ッ プ イ ン ス ト ル メ ン ト 、 ツ ジ ュ ン ガ 、 CA
) 、 頭 骨 を 露 出 さ せ た 。 小 孔 を 、 頭 骨 2mm側 方 、 前 頂 の 腹 側 2.5mmに あ け 、 9Lグ リ オ サ ル コ
ー マ 懸 濁 液 5μ lを 、 25ゲ ー ジ 針 を 付 け た 10μ lハ ミ ル ト ン シ リ ン ジ ( # 2701) を 用 い て 5分
間 を か け て 大 脳 皮 質 上 3.5mmの 部 位 に 注 射 し た 。 孔 は 、 ボ ー ン ワ ッ ク ス で 塞 ぎ 、 切 開 部 位
は 閉 じ た 。 腫 瘍 を 増 殖 さ せ 、 2日 間 で 確 立 し 、 次 い で 、 ラ ッ ト は 、 一 日 2回 HET0016又 は 10m
g/Kg/日 の 量 の ヴ ィ ー ク ル レ シ チ ン を 皮 下 注 射 し た 。 HET0016又 は ヴ ィ ー ク ル 処 置 15日 後
に 、 ラ ッ ト を 80mg/Kgで 麻 酔 し 、 心 臓 穿 刺 に よ り 脳 を 250mlの 滅 菌 生 理 食 塩 水 で 潅 水 洗 浄 し
、 次 い で 、 生 理 的 塩 溶 液 中 10ホ ル マ リ ン 250mlで 潅 流 固 定 し た 。 脳 を 取 り 外 し て 10% ホ ル
50
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マリン液で保存した。
【0122】
腫瘍容積の評価: ホルマリン固定脳を冠状ラット脳マトリックス(脳の冠状切片を作
製 す る 装 置 ) に 置 き 、 3mmブ ロ ッ ク に ス ラ イ ス し た 。 こ れ ら の ブ ロ ッ ク は 、 パ ラ フ ィ ン で
包 埋 し 、 6μ Mの 厚 さ の 切 片 を 作 製 し た 。 H& E染 色 用 の 切 片 は 、 コ ー テ ィ ン グ し て い な い ス
ライド上に置いた。免疫組織化学試験用の切片は、陽性に荷電した超凍結スライド上に置
い た 。 連 続 切 片 は 、 腫 瘍 の 大 き さ を 評 価 す る た め の H& E染 色 か 、 又 は 、 増 殖 の 程 度 を 評 価
す る た め の Ki-67抗 原 用 免 疫 組 織 化 学 的 操 作 の い ず れ か で あ っ た 。
【0123】
腫 瘍 を 含 む H& E染 色 の 画 像 は 、 2倍 の 対 物 レ ン ズ を 用 い た ソ ニ ー CCDカ メ ラ を 用 い て 捉 え
10
た 。 AISイ メ ー ジ ア ナ リ シ ス シ ス テ ム ( Imaging Research, St.Catherine, ON, Cana
da) ソ フ ト ウ エ ア を 用 い て 、 各 切 片 に お け る 腫 瘍 面 積 を 手 動 で 大 ま か に 捉 え 、 そ し て 平 方
ミリメートルで面積を測定した。切片の容積を計算するためにその面積に切片の厚さを乗
じた。
【0124】
免 疫 組 織 化 学 試 験 用 の 切 片 は 、 ク エ ン 酸 緩 衝 液 ( pH 6.0) 中 で 切 片 を 10分 間 ホ ッ ト プ
レートで煮沸することにより脱パラフィンした。切片は、室温に冷やし、停止緩衝液[2
% 正 常 血 清 、 1% BSA、 PBS中 ] に 1時 間 入 れ 、 洗 浄 緩 衝 液 [ 0.05ツ イ ー ン -20、 PBS中 ] 中 で
2度 洗 浄 し 、 過 酸 化 水 素 の 10分 間 処 理 で 停 止 さ せ 、 洗 浄 緩 衝 液 で 洗 浄 し た 。 切 片 は 、 次 に
、 ウ サ ギ ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 Ki-67抗 体 ( Abcam Inc., Cambridge, MA; 1.0% BSAを PBSで 1:
20
200に 希 釈 ) で 30分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 そ の 切 片 は 、 洗 浄 緩 衝 液 で 洗 浄 し 、 ビ オ チ ン
化 し た 抗 ウ サ ギ -山 羊 IgG( Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA; 1:500 PBS中
) で 30分 間 、 イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 そ し て 洗 浄 し た 。 DAB基 質 ( Vector Laboratories, Inc
., Burlingame, CA; 2滴 の 基 質 緩 衝 液 、 4滴 の DAB、 2滴 の 過 酸 化 水 、 5mlの 蒸 留 水 ) は 、 切
片 に 8分 間 、 適 用 さ れ た 。 切 片 は 、 次 に 、 洗 浄 し 、 5秒 間 メ イ ヤ ー の ヘ マ ト キ シ リ ン で 対 比
染色し、アンモニア水で青色にし、水で洗浄し、乾燥し、透明化し、包埋した。
【0125】
インサイチュウ アポトーシス試験: 他の切片は、前述した方法で脱パラフィン化し
、 ア ポ プ タ グ パ ー オ キ シ ダ ー ゼ 検 出 キ ッ ト ( ApopTag peroxidase detection kit; C
hemicon International Inc., Temecula, CA) を 用 い て ア ポ ト ー シ ス を 分 析 し た 。 要 す
30
る に 、 再 度 脱 水 乾 燥 し た 切 片 を 、 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ K( 20μ g/ml) 15分 間 室 温 で 消 化 さ
せ た 、 次 い で 、 3% の 過 酸 化 水 素 水 で 5分 間 ク エ ン チ ン グ し 、 洗 浄 し た 。 そ れ か ら 、 切 片 は
、 37℃ 湿 潤 化 し た チ ャ ン バ ー 中 で 1時 間 、 TdT酵 素 で 標 識 し 、 抗 ジ ゴ キ シ ゲ ニ ン 抱 合 体 で 室
温 で 30分 間 処 理 し た 。 切 片 は 洗 浄 し 、 過 酸 化 水 素 の 気 質 で 現 像 し 、 0.5% メ チ ル グ リ ー ン
で 10分 間 対 染 色 し 、 脱 水 乾 燥 し 、 光 学 顕 微 鏡 用 に 包 埋 し た 。
【0126】
統 計 分 析 : デ ー タ は 、 ア ノ ー バ ( ANOVA) を 用 い て 分 析 し 、 次 い で タ ー キ ー の t-テ ス
ト を 行 っ た 。 差 は 、 P< 0.05で 統 計 的 な 有 意 差 と 判 断 し た 。
【0127】
結果
40
CYP4Aの RT-PCR: HET0016が 、 CYP4Aと 4F酵 素 が 触 媒 す る 20-HETE合 成 の 高 度 な 選 択 的 阻
害 剤 で あ る と 報 告 さ れ て 以 来 、 本 発 明 者 ら は 、 CYP4Aの mRNAが 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ 細 胞 で
発 現 さ れ る か 否 か を RT-PCRに よ り 検 討 し た 。
【0128】
イ ン ビ ト ロ で の 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) 細 胞 の 増 殖 に 及 ぼ す CYP4A阻 害 の 影
響 : 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) 細 胞 増 殖 に 及 ぼ す HET0016の 種 々 の 濃 度 の 影 響
を 図 21に 表 し た 。 細 胞 数 計 測 に よ る 直 接 的 評 価 し た 場 合 、 培 地 中 に 増 殖 し た 9L細 胞 の 増 殖
に HET0016は 用 量 依 存 的 な 阻 害 を も た ら し た ( 図 21A ) 。 CYP4Aの あ る 種 の ア イ ソ フ ォ ー ム
の 阻 害 と し て 、 報 告 の あ る こ の 物 質 の IC50値 に 近 い 10nMと い う 大 変 低 い 濃 度 に お い て さ え
、 対 照 と の 差 は 有 意 で は な か っ た が ( P= 0.056) 、 細 胞 増 殖 の あ る 程 度 を 阻 害 し た こ と は
50
(30)
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明 白 で あ っ た 。 1又 は 10μ M濃 度 の HET0016は 、 24時 間 と 48時 間 の 両 時 点 で 30∼ 40% に 細 胞
数を明らかに減少させた。
【0129】
追 加 試 験 で は 、 本 発 明 者 ら は 、 9L細 胞 増 殖 に 対 す る HET0016の 高 濃 度 ( 100μ M) の 効 果
を試験した。これは、細胞数に劇的な減少をもたらした。しかしながら、引き続いて起こ
る細胞の剥離と培地中への死細胞の浮遊を本発明者らは観察したが、このことは、この濃
度 で は HET0016は 、 直 接 的 な 細 胞 毒 性 効 果 を も つ か も 知 れ な い こ と を 示 唆 し た 。 し た が っ
て 、 本 発 明 者 ら は 、 以 下 の 全 て の 試 験 で は 10μ Mの HET0016を 用 い る こ と に 決 め た 。 図 21B
で 表 し た よ う に 、 HET0016( 10μ M) は 、 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) 細 胞 培 養 に お
い て 、 チ ミ ジ ン の 取 り 込 み を 60% 減 少 さ せ た 。 図 21B に 示 す 増 殖 曲 線 の 試 験 は 、 HET0016
10
がこの関係の曲線をもたらすことは、細胞集団を殺して、その関係で期待基準値の変動を
もたらすというよりは、細胞の増殖に影響することを示している。
【0130】
イ ン ビ ト ロ で の 9L細 胞 増 殖 に 及 ぼ す DDMSの 効 果 : DDMSは 、 CYP4Aの 高 度 に 選 択 的 な 自
殺 基 質 阻 害 剤 で あ る が 、 化 学 構 造 と 作 用 機 作 が HET0016と は 大 変 異 な っ て い る 。 イ ン ビ ト
ロ で の 9L細 胞 増 殖 率 に 及 ぼ す 種 々 の 濃 度 の DDMSの 効 果 を 図 22に 表 し た 。 10μ Mの 濃 度 、 こ
れ は 、 CYP4A酵 素 活 性 阻 害 の IC50値 に 近 い の で あ る が 、 DDMSは 、 細 胞 数 に 有 意 な 減 少 を も
た ら し た 。 高 濃 度 ( 100μ M) で は 、 DDMSは 、 こ れ ら の 細 胞 の 増 殖 を 減 少 す る と い う HET001
6( 10μ M) と 類 似 し た 効 果 を 示 し た 。
【0131】
20
イ ン ビ ト ロ で の 9L細 胞 の EGFに よ り 刺 激 さ れ た 増 殖 に 対 す る HET0016の 効 果 : 9L細 胞 の
EGF( 200ng/ml) へ の 処 理 は 、 24及 び 48時 間 の 両 時 点 で の 細 胞 数 を 増 加 さ せ た ( 図 23) 。 H
ET0016( 10μ M) の 添 加 は 24時 間 で の 細 胞 増 殖 に 対 す る EGFの 効 果 を 妨 げ 、 48時 間 に お け る
細 胞 数 を 減 少 さ せ た ( 図 23) 。 増 殖 曲 線 の 勾 配 を 比 較 す る と 、 HET0016の 阻 害 効 果 は 、 24
時 間 と 48時 間 の 間 で 小 さ く な っ た 。
【0132】
HET0016の 増 殖 阻 害 効 果 に 対 す る 20-HETEア ナ ロ グ の 効 果 : 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経
膠 肉 腫 ) 細 胞 の 増 殖 の 抗 増 殖 効 果 が 20-HETEの 合 成 阻 害 に 関 連 す る か 否 か を 決 定 す る た め
に 、 本 発 明 者 ら は 、 WIT003と い う 安 定 な 20-HETEア ゴ ニ ス ト の 外 的 添 加 が 、 HET0016の 抗 増
殖 作 用 を 妨 げ る か 否 か を 試 験 し た 。 図 24に 示 し た 結 果 は 、 培 養 培 地 へ の WIT003( 1μ M) の
30
添 加 は 、 HET0016の 阻 害 作 用 か ら 部 分 的 に 9L細 胞 を 救 済 し た こ と を 示 し て い る 。 HET0016単
独 処 理 で も た ら さ れ た 阻 害 を 100% と し た 場 合 、 HET0016+ WIT003で 処 理 し た 細 胞 は 増 殖 に
お い て わ ず か 60% の 改 善 を 示 し て い る 。
【0133】
MAPK及 び JNKの チ ロ シ ン リ ン 酸 化 に 及 ぼ す HET0016の 効 果 : HET0016が 9L細 胞 の 増 殖 を
阻 害 す る と い う 機 構 の 理 解 を 深 め る た め に 、 本 発 明 者 ら は 、 9L細 胞 の 分 裂 と 増 殖 の 調 節 に
重要な役割を演じていることで知られている、マイトジェンで活性化されるプロテインキ
ナ ー ゼ ( MAPK) の リ ン 酸 化 及 び 活 性 化 に 対 し て HET0016の 効 果 を 検 討 し た 。 HET0016( 10μ
M) で の 9L細 胞 の 4時 間 処 理 は 、 p42/p44 MAPK及 び SAPK/JNKの 両 者 の リ ン 酸 化 を 有 意 に 減
少 さ せ た 。 p42/p44 MAPKの リ ン 酸 化 の 減 少 は 、 HET0016処 理 24時 間 後 に お い て さ え 大 き か
40
っ た 。 HET0016の 24時 間 処 理 よ り も む し ろ 48処 理 で 、 そ の 阻 害 ピ ー ク が み ら れ た に も か か
わ ら ず 、 同 様 な 傾 向 が JNKの リ ン 酸 化 に お い て も 観 察 さ れ た 。
【0134】
イ ン ビ ボ で の ラ ッ ト 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) 脳 腫 瘍 の 増 殖 に 対 す る CYP4A及
び 4F阻 害 剤 の 効 果 : 正 常 な 、 免 疫 応 答 の 正 常 な ラ ッ ト の 前 脳 に 9L細 胞 を 移 植 し た 後 、 定
めた境界まで急速な腫瘍の成長が形成された。本実験条件下では、もし何の治療せず放置
す れ ば 、 2及 び 3週 間 で 通 常 動 物 は 死 亡 す る 。 本 試 験 で は 、 腫 瘍 移 植 後 17日 に 、 HET0016処
理ラットは、健康そうに見え、無処理対照ラットで見られるよりも剖検ではより小さな腫
瘍 が 診 ら れ た ( 図 25) 。 腫 瘍 容 積 の 比 較 に 並 べ て 対 照 及 び HET0016処 理 ラ ッ ト に お け る 腫
瘍 の 中 央 面 を 切 っ た 代 表 的 な 切 片 を 図 26に 示 し た 。
50
(31)
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【0135】
イ ン サ イ チ ュ ウ ア ポ ト ー シ ス 分 析 : 9L腫 瘍 の 切 片 を 、 細 胞 増 殖 と ア ポ ト ー シ ス の 面
積 を 決 め る た め に 、 抗 体 を 用 い て 免 疫 染 色 し た 。 HET0016の 長 期 間 の 投 与 は 、 Ki67抗 体 で
陽 性 に 染 色 さ れ る 9L腫 瘍 の 分 裂 期 の 細 胞 数 を 著 し く 減 少 さ せ た 。 対 照 的 に 、 ヴ ィ ー ク ル 又
は HET0016投 与 ラ ッ ト で 陽 性 に 染 色 さ れ た 9L腫 瘍 中 の ア ポ ト ー シ ス の 死 細 胞 数 に お い て 、
有 意 な 差 は な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 HET0016で の 20-HETE合 成 阻 害 は 、 ア ポ ト ー シ ス や
がん細胞のプログラムされた細胞死を刺激するよりもむしろ、細胞分裂の停止による腫瘍
増殖を制限していることを示している。
【0136】
本発明は、前述した実施例に限定されるものではなく、むしろ、添付した請求の範囲の
10
範囲内に入るものとしてこのような改良やバリエーションを包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【 図 1 】 図 1は 、 前 脛 骨 筋 (TA)か ら 採 取 し た 、 蛍 光 標 識 し た 20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ テ ト ラ
エ ン 酸 ( 20-HETE) の 分 離 を 代 表 的 な 逆 相 HPLCク ロ マ ト グ ラ ム で 示 し て い る 。 WIT-002、 20
-5(Z),14(Z)-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ ジ エ ン 酸 を 内 部 標 準 と し て 用 い た 。
【0138】
【 図 2 】 図 2は 、 ラ ッ ト 尿 中 の 20-HETE濃 度 に 対 す る 選 択 的 チ ト ク ロ ム P450阻 害 剤 [ N-ヒ ド
ロ キ シ -N'-(4-ブ チ ル -2-メ チ ル フ ェ ニ ル )-ホ ル ム ア ミ ジ ン ( HET-0016) ] 処 理 の 影 響 を 示
す 。 値 は 、 ヴ ィ ー ク ル ( レ シ チ ン ) 処 理 の 5匹 の ラ ッ ト 及 び HET0016処 理 5匹 の ラ ッ ト の 平
20
*
均 値 ( ± SE) で あ る 。 P< 0.05vsレ シ チ ン 。
【0139】
【 図 3 】 図 3は 、 刺 激 プ ロ ト コ ル の 7日 後 の ラ ッ ト 筋 中 に お け る 20-HETE生 成 に 対 す る 選 択
的 シ ト ク ロ ム P450( CYP4A) 処 理 の 効 果 を 示 す 。 PBS、 リ ン 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水 。 値 は 、 レ シ
*
チ ン 処 理 ラ ッ ト 5匹 及 び HET0016処 理 ラ ッ ト 5匹 の 各 々 の 平 均 値 ( ± SE) で あ る 。 P< 0.05
対 非刺激側部位。
【0140】
【 図 4 】 図 4は 、 長 指 伸 筋 ( EDL) 及 び TA筋 の 血 管 密 度 の 変 化 を 、 対 照 ラ ッ ト ( n= 4) 、 選
択 的 CYP4A阻 害 剤 ( HET0016、 2mg/kg/dayレ シ チ ン 中 、 n= 4) 、 及 び CYP4Aの 非 選 択 的 阻 害
剤 [ 1-ア ミ ノ ベ ン ゾ ト リ ア ゾ ー ル ( ABT) 、 50mg/kg/day、 PBS中 、 n= 4] 電 気 刺 激 プ ロ
30
*
ト コ ル の 7日 後 に 投 与 し た ラ ッ ト に つ い て 示 す 。 値 は 、 平 均 値 ( ± SE) で あ る 。 P< 0.05
vs 非 刺 激 側 。
【0141】
【 図 5 】 図 5は 、 電 気 刺 激 プ ロ ト コ ル で 7日 後 の 、 レ シ チ ン 処 理 又 は HET0016( 2mgkg
yレ シ チ ン 中 ) 及 び ABT( 50mgkg
- 1
、 day
- 1
- 1
、 da
PBS中 、 n= 4) 処 理 ラ ッ ト か ら 電 気 刺 激 ( S)
及 び 無 刺 激 ( U) の TA筋 肉 中 の 血 管 内 VEGFの 発 現 を 示 す 。 各 々 の サ ン プ ル で 、 総 タ ン パ ク
質 の 50mgを 積 載 し た 。 VEGFを 貪 欲 に 発 現 す る た め C6 腫 瘍 細 胞 を 陽 性 対 照 に 用 い た 。 電 気 刺
激 プ ロ ト コ ル 7日 後 に お け る 対 照 群 ( n= 5) と 選 択 的 CYP4A阻 害 剤 HET0016( n= 7) 処 理 の V
EGFタ ン パ ク 質 の 定 量 的 濃 度 計 測 を 示 す 。 値 は 、 平 均 値 ( ± SE) で あ る 。 P< 0.05対 非 刺 激
側部位。
40
【0142】
【 図 6 】 図 6は 、 刺 激 試 験 手 順 の 7日 後 、 ラ ッ ト 筋 肉 内 に 生 成 さ れ る 20-HETEに 対 す る VEGF中 和 抗 体 ( VEGF抗 体 ; 0.6mg/100g体 重 、 腹 腔 内 PBS) 処 理 の 効 果 を 示 す 。 値 は 、 PBS処 理 (
対 照 ) 5匹 ラ ッ ト と VEGF抗 体 投 与 の 4匹 ラ ッ ト の 、 各 平 均 値 ( ± SE) を 示 す 。 値 は 、 C6 腫 瘍
*
細 胞 で み ら れ る VEGFの 発 現 の パ ー セ ン ト と し て 表 わ し た 。 P< 0.05対 非 刺 激 側 部 位 。
【0143】
【 図 7 】 図 7は 、 培 養 ヒ ト 血 管 内 皮 細 胞 ( HUVECs) で の VEGFの 細 胞 分 裂 反 応 に 対 す る HET00
16の 効 果 を 示 す 。 HUVECs細 胞 が 、 VEGF250ng/ml単 独 で 及 び 10μ Mの HET0016存 在 下 で イ ン キ
ュ べ ー シ ョ ン し 、 細 胞 分 裂 を 24時 間 後 に 調 べ た 。 HET0016は 、 VEGF( n= 3、 各 々 3回 重 複 )
へ の 細 胞 分 裂 の 反 応 性 を 放 棄 し た が 、 し か し 、 HUVECs細 胞 の 基 礎 的 な 細 胞 分 裂 に は 影 響 し
50
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*
な か っ た ( 示 さ ず ) 。 P< 0.05、 対 照 対 VEGF; P< 0.05、 VEGF対 VEGF+ HET0016。
【0144】
【 図 8 】 図 8A 及 び 8B は 、 イ ン ビ ボ で の VEGFに よ っ て 引 き 起 こ さ れ た 血 管 形 成 反 応 に 対 す
る HET0016の 効 果 を 示 す 。 血 管 新 生 の 変 化 を ラ ッ ト ポ ケ ッ ト 角 膜 法 血 管 形 成 法 を 用 い て 測
定 し た 。 VEGF単 独 ( 250ng/ペ レ ッ ト ) 又 は VEGFと HET0016( 20μ g) を 含 む ペ レ ッ ト を ラ ッ
ト 角 膜 の 間 質 中 に 埋 め 込 ん だ 。 そ の ラ ッ ト は 、 7日 後 犠 牲 死 さ せ 、 イ ン デ ア イ ン ク を 用
いて、新生血管を可視化させた。血管の全長である、新生血管反応の定量的測定値を、血
管をトレースすることにより測定し、そして、その視野における全血管の長さの数値を得
る た め に 、 画 像 解 析 ソ フ ト ウ エ ア を 用 い て 測 定 し た 。 図 8A は 、 ペ レ ッ ト を 移 植 し た 代 表
的 な 角 膜 フ ラ ッ ト マ ウ ン ト ( 平 坦 な 盛 り 上 が り ) で あ る 。 図 8B は 、 全 部 の 試 験 の 平 均 値
10
( ± SE) と し て 血 管 の 全 長 を 示 す 。 ( n= 6、 P< 0.01、 bFGF対 bFGF+ HET0016) 。
【0145】
【 図 9 】 図 9A 及 び 9B は 、 イ ン ビ ボ で bFGFに よ り 引 き 起 こ さ れ る 血 管 新 生 反 応 に 対 す る HE
T0016の 効 果 を 示 す 。 bFGF単 独 ( 250ng/ペ レ ッ ト ) 又 は bFGF及 び HET0016( 20μ g) を 含 む
ペ レ ッ ト を ラ ッ ト 角 膜 の 間 質 に 注 入 し た 。 図 9A は 、 代 表 的 な 角 膜 フ ラ ッ ト マ ウ ン ト ( 平
坦 な 盛 り 上 が り ) を 示 す 。 図 9B は 、 図 8で 示 し た と 同 様 に 、 血 管 新 生 反 応 に お け る 変 化 を
示 す ( n= 6、 p< 0.001、 EGF対 EGF+ HET0016) 。
【0146】
【 図 1 0 】 図 10A 及 び 10B は 、 イ ン ビ ボ で の EGFに よ っ て 引 き 起 こ さ れ た 血 管 新 生 反 応 に
対 す る HET0016の 効 果 を 示 す 。 EGF単 独 ( 250ng/ペ レ ッ ト ) 及 び EGF及 び HET0016( 20μ g)
20
を 含 む ペ レ ッ ト を ラ ッ ト 角 膜 の 間 質 に 注 入 し た 。 図 10A は 、 代 表 的 な 角 膜 フ ラ ッ ト マ ウ ン
ト ( 平 坦 な 盛 り 上 が り ) を 示 す 。 図 10B は 、 血 管 新 生 反 応 に お け る 変 化 を 示 す ( n= 7、 p
< 0.001、 EGF対 EGF+ HET0016) 。
【0147】
【 図 1 1 】 図 11A 及 び 11B は 、 20-HETEの 生 成 の 化 学 的 に 機 械 的 に 似 て い な い 阻 害 剤 で あ
る ジ ブ ロ モ ド デ シ ル メ チ ル ス ル ホ ン イ ミ ド ( DDMS, 同 様 に 、 N-メ チ ル ス ル ホ ニ ル -12、 12ジ ブ ロ モ ド デ シ ル -11-エ ナ ミ ド ) の イ ン ビ ボ で VEGFに 対 す る 血 管 新 生 の 反 応 に 対 す る 効 果
を 示 す 。 VEGF単 独 ( 250ng/ペ レ ッ ト ) 又 は VEGF及 び DDMS( 10μ g) を 含 む ペ レ ッ ト を ラ ッ
ト 角 膜 の 間 質 に 移 植 し た 。 図 11A は 、 代 表 的 な 例 示 を 示 す 。 図 11B は 、 血 管 新 生 反 応 に お
け る 相 違 を 示 す ( n= 6; p< 0.001、 VEGF対 VEGF+ DDMS) 。
30
【0148】
【 図 1 2 】 図 12は 、 20-HETEの よ り 安 定 し た ア ナ ロ グ で あ る 、 20-ヒ ド ロ キ シ エ イ コ サ -6(Z
)、 15(Z)-ジ エ ン 酸 ( WIT003) の 培 養 HUVECs細 胞 増 殖 に 対 す る 効 果 を 示 す 。 HUVECs細 胞 を 4
0μ Mの パ ル ミ チ ン 酸 ( 不 活 性 脂 肪 酸 、 対 照 ) 又 は エ タ ノ ー ル ア ミ ン ( ヴ ィ ー ク ル 対 照 ) の
いずれかと培養した。これらに差は認められなかったので、両グループのデータを併せた
。 実 験 グ ル ー プ は 、 1μ Mの WIT003と 共 に 48時 間 培 養 し 、 増 殖 を 試 験 し た 。 WIT003は 、 HUVE
*
Cs細 胞 に お い て 増 殖 を 増 強 し た ( n= 3、 各 3回 重 複 ; p< 0.05及 び #p< 0.01、 対 照 対 WIT00
3) 。
【0149】
【 図 1 3 】 図 13A と 13B は 、 イ ン ビ ボ で の ラ ッ ト 角 膜 ポ ケ ッ ト ア ッ セ イ 法 で の 血 管 新 生 に
40
対 す る 20-HETEの ア ナ ロ グ WIT003の 効 果 を 示 す 。 WIT003の 20μ gを 含 む ペ レ ッ ト を ラ ッ ト 角
膜 間 質 に 注 入 し た 。 ラ ッ ト は 、 そ の 7日 後 に 犠 牲 死 さ せ 血 管 新 生 を 測 定 し た 。 図 13A は 、
フ ラ ッ ト マ ウ ン ト ( 平 坦 な 盛 り 上 が り ) を 示 す 。 図 13B は 、 WIT003に 対 す る 血 管 新 生 の 反
応 を 示 す ( n= 6、 p< 0.01、 対 照 対 WIT003) 。
【0150】
【 図 1 4 】 図 14A と 14B は 、 イ ン ビ ボ で の U251が ん 細 胞 の 血 管 新 生 反 応 に 対 す る HET0016
の 効 果 を 示 す 。 ヒ ト グ リ オ ブ ラ ス ト ー マ ( グ リ ア 芽 細 胞 腫 ) 細 胞 株 U251の 細 胞 塊 が 、 0.
8% 寒 天 層 上 に 低 い 密 度 の 単 一 の 細 胞 懸 濁 液 に し て 播 種 し た 。 約 200μ m長 の 5∼ 8細 胞 塊 が
両 方 の 眼 の 角 膜 ポ ケ ッ ト 切 開 さ れ て 埋 め 込 ん だ 。 20μ gの HET0016又 は ヴ ィ ー ク ル ( エ タ ノ
ー ル ) を 含 む ペ レ ッ ト を 細 胞 塊 に 隣 接 し て 置 い た 。 ラ ッ ト は 、 が ん 細 胞 移 植 2週 間 後 に 犠
50
(33)
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牲 死 さ せ 、 新 生 血 管 反 応 を 測 定 し た 。 図 14A は 、 こ の シ リ ー ズ で の す べ て の ラ ッ ト の 細 胞
塊 / ペ レ ッ ト 移 植 部 位 に お け る 角 膜 を 示 す 。 図 14B は 、 血 管 新 生 反 応 の 変 化 を 示 す ( n= 8
; p< 0.01、 対 照 細 胞 塊 対 細 胞 塊 + HET0016) 。
【0151】
【 図 1 5 】 図 15は 、 20-HETEの 合 成 阻 害 剤 で あ る HET0016の 、 増 殖 パ タ ー ン に 及 ぼ す 影 響 と
、 イ ン ビ ト ロ で の ヒ ト U251グ リ オ ブ ラ ス ト ー マ が ん 細 胞 の 細 胞 周 期 プ ロ フ ィ ー ル へ の 影 響
4
を 示 す 。 パ ネ ル A は 、 等 し い 数 の U251細 胞 ( 0.75x10 ) を 播 種 し 、 種 々 の 濃 度 の HET0016
3
に 接 触 さ せ る 1日 前 か ら 無 血 清 と し 、 24時 間 毎 に 細 胞 数 を 計 測 し た 。 パ ネ ル B は 、 [ H]チ
3
ミ ジ ン の DNAへ の 取 り 込 み を 対 照 培 地 と 10μ Mの HET0016処 理 培 地 に お い て 計 測 し た 。 [ H]
3
の 取 り 込 み デ ー タ は 、 d.p.m./ 10 細 胞 、 で 計 算 し 、 そ し て エ タ ノ ー ル を 対 照 と し て 標 準
10
化 し た 。 パ ネ ル C は 、 U251細 胞 を 播 種 し 、 エ タ ノ ー ル 中 10μ Mの HET0016又 は エ タ ノ ー ル 単
独(対照)処理した。細胞は、プロピジウムヨード(細胞増殖の指標)で染色し、そして
細 胞 周 期 の 分 布 は 、 FACSに よ り 染 色 さ れ た 細 胞 の 全 DNA含 量 の 分 析 に よ り 定 め た 。 細 胞 周
期 の 種 々 の ス テ ー ジ の お け る 細 胞 の 比 率 は 各 図 に 示 し た 。 3回 重 復 ( ト リ プ リ ケ ー ト ) で
の 別 々 の 3回 か ら 4回 の 試 験 の 平 均 値 ± SEを 各 パ ネ ル に 示 し た 。 パ ネ ル C は 、 3回 の 別 々 に
行 っ た 代 表 例 を 示 す 。 矢 印 は 、 培 地 へ の HET0016添 加 時 を 時 間 ゼ ロ と し て 示 し た 。
【0152】
【 図 1 6 】 図 16は 、 HET0016が 、 培 養 U251が ん 細 胞 の 増 殖 と 分 裂 を 刺 激 す る EGFの 効 果 を 阻
止 す る こ と を 示 し て い る 。 U251は 、 血 清 を 枯 渇 さ せ 、 次 い で 、 EGF200ng/ml、 10μ M HET0
016又 は そ の 両 方 で 処 理 し た 。 細 胞 増 殖 は 48時 間 後 に 測 定 し た 。
20
【0153】
【 図 1 7 】 図 17は 、 HUVECs細 胞 、 初 代 の 角 化 細 胞 、 U251細 胞 の 増 殖 に 対 す る HET0016の 効
果 の 比 較 を 示 す 。 HUVECs細 胞 、 初 代 ヒ ト 角 化 細 胞 、 ヒ ト U251細 胞 、 グ リ オ ブ ラ ス ト ー マ (
グ リ ア 芽 細 胞 腫 ) が ん 細 胞 を 96穴 プ レ ー ト に 播 種 し 、 HET0016で 48時 間 処 理 し た 。 HET0016
は 、 正 常 HUVECs細 胞 又 は 角 化 細 胞 の 増 殖 に 対 し 効 果 が な か っ た が 、 U251の が ん 細 胞 の 増 殖
を 約 50% 阻 止 し た 。 3回 の 別 々 の 実 験 の 平 均 値 ± SEを 表 し た 。
* * *
は 、 p< 0.001 各 々 の 対
照群に対する比較。
【0154】
【 図 1 8 】 図 18は 、 ヒ ト 251が ん グ リ オ ー マ ( 神 経 節 腫 ) の 培 地 培 養 に お け る 増 殖 に 対 す
る DDMSの 効 果 を 示 し た 。 化 学 的 に も 、 作 用 的 に も HET0016と は 異 な る DDMSと い う 第 二 の CYP
30
4Aと 20-HETE合 成 阻 害 剤 を U251細 胞 の 処 理 に 用 い た 。 DDMSは 、 濃 度 依 存 的 に U251の 増 殖 を
阻 止 し た 。 各 回 を 3回 重 複 で 行 っ た 3回 の 別 々 の 試 験 か ら の 平 均 値 ± SEを 表 し た 。
【0155】
【 図 1 9 】 図 19は 、 イ ン ビ ト ロ で の ヒ ト 神 経 節 腫 が ん 細 胞 の 増 殖 に 対 す る 20-HETEの 安 定
な ア ナ ロ グ で 、 ア ゴ ニ ス ト の 性 質 を も つ WIT003の 効 果 を 示 す 。 U251細 胞 は 、 0.1μ M又 は 1
μ Mの WIT003の 添 加 又 は 比 較 の た め の こ れ ら の 細 胞 の 増 殖 に 最 大 の 刺 激 を も た ら す も の と
さ れ て い る EGFの 種 々 の 濃 度 を 添 加 1日 前 か ら 血 清 を 枯 渇 し て 培 養 し た 。 結 果 は 、 WIT003の
1μ Mは EGF200ng/mlと 同 程 度 に U251細 胞 の 増 殖 を 増 強 し た 。 細 胞 数 は 、 48時 間 後 に 計 測 し
、 ヴ ィ ー ク ル (エ タ ノ ー ル ) 単 独 処 理 し た 対 照 で 得 ら れ た 値 で 標 準 化 し た 。 各 試 験 を 3回 重
*
複 し て 行 っ た 、 3回 の 実 験 の 平 均 値 ± SEを 表 し た 。 p< 0.05;
* *
p< 0.01;
* * *
p< 0.001。
40
【0156】
【 図 2 0 】 図 20は 、 20-HETEア ゴ ニ ス ト で あ る WIT003が 、 20-HETEの 合 成 阻 害 剤 、 HET0016
に よ る 抗 増 殖 効 果 か ら 細 胞 を 救 助 で き る こ と を 示 す 。 そ の 培 養 で は 、 血 清 を 枯 渇 さ せ 、 10
μ Mの HET0016単 独 又 は 1μ Mの WIT003を 併 用 処 理 し た 。 細 胞 増 殖 は 、 処 理 48時 間 後 に 細 胞 数
の 計 測 に よ り 評 価 し た 。 各 試 験 は 3回 重 複 し て 行 っ た 、 各 々 別 の 3回 の 実 験 か ら 求 め た 平 均
値 ± SEを 表 し た 。
【0157】
【 図 2 1 】 図 21は 、 イ ン ビ ト ロ で の 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) の 増 殖 に 対 す る HE
4
T0016の 効 果 を 示 す 。 パ ネ ル A は 、 9L細 胞 ( 0.75x10 ) の 等 し い 数 を 播 種 し 、 種 々 の 濃 度
の HET0016で 接 触 さ せ る 1日 前 か ら 血 清 を 枯 渇 さ せ 、 細 胞 数 計 測 は 、 24時 間 毎 に 行 い ; パ ネ
50
(34)
3
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3
ル B は 、 [ H]チ ミ ジ ン の DNAへ の 取 り 込 み を 10μ Mの HET0016処 理 培 地 で 評 価 し た 。 [ H]チ
3
ミ ジ ン の 取 り 込 み デ ー タ は 、 10 細 胞 あ た り の d.p.m.と し て 計 算 し 、 エ タ ノ ー ル 対 照 で 標
準 化 し た 。 A − B パ ネ ル の デ ー タ は 、 各 試 験 を 3回 重 複 操 作 に よ る 。 別 々 の 3回 の 実 験 の 平
均 値 ± SEで 表 し た 。
【0158】
【 図 2 2 】 図 22は 、 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) 細 胞 の イ ン ビ ト ロ で の 増 殖 に 対 す
4
る DDMSの 効 果 を 示 す 。 9L細 胞 ( 0.75x10 ) の 等 し い 細 胞 数 を 播 種 し 、 種 々 の 濃 度 の DDMS又
は ヴ ィ ー ク ル に 接 触 さ せ る 1日 前 か ら 血 清 を 枯 渇 さ せ 、 細 胞 数 の 計 測 は 、 24時 間 及 び 48時
間 後 に 行 っ た 。 各 3回 重 複 し た 操 作 の 試 験 を 別 々 に 3回 実 験 を 行 っ て 求 め た 平 均 値 ± SEを 表
した。
10
【0159】
【 図 2 3 】 図 23は 、 EGFで 刺 激 さ れ た 9L細 胞 の 増 殖 に 対 す る HET0016の 効 果 を 示 す 。 9L細 胞
培 養 は 、 EGF200ng/ml単 独 又 は EGFと 10μ Mの HET0016で 処 理 し た 。 細 胞 増 殖 は 、 24時 間 後 と
48時 間 後 に 測 定 し た 。
【0160】
【 図 2 4 】 図 24は 、 HET0016の イ ン ビ ト ロ で の 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) の 増 殖
阻 止 効 果 に 対 す る 20-HETEの ア ゴ ニ ス ト WIT003の 効 果 を 示 す 。 パ ネ ル A : 血 清 を 枯 渇 し た
培 養 に お い て 、 0.1μ M又 は 1μ Mの WIT003で 処 理 し た 。 細 胞 数 は 、 48時 間 後 に 測 定 し た 。 デ
ー タ は 対 照 に 対 す る 百 分 率 と し て 示 し た 。 パ ネ ル B : 9L細 胞 は 、 10μ Mの HET0016単 独 又 は
1μ Mの WIT003と の 併 用 処 理 を し た 。 細 胞 増 殖 は 、 処 理 後 24時 間 、 48時 間 で 細 胞 計 測 に よ り
20
評 価 し た 。 阻 止 率 ( % ) で 示 し た デ ー タ 。 3回 重 複 し て 行 っ た 別 々 の 3回 の 実 験 の 平 均 値 ±
SEを 表 し た 。
【0161】
【 図 2 5 】 図 25は 、 9Lグ リ オ サ ル コ ー マ ( 神 経 膠 肉 腫 ) の イ ン ビ ボ で の 増 殖 に 対 す る HET0
4
016の 効 果 を 示 す 。 9L細 胞 ( 1x10 ) を ラ ッ ト の 脳 内 に 注 射 し た 。 ラ ッ ト に 腫 瘍 が 確 立 す る
、 注 射 2日 後 の ラ ッ ト に HET0016( 10mg/ kg/ 日 ) 又 は レ シ チ ン ( ヴ ィ ー ク ル ) を 15日 間 処
理した。パネルA:レシチン(ヴィークル)を注射した対照のラットの脳組織を示す。パ
ネ ル B : HET0016で 15日 間 処 理 し た ラ ッ ト の 脳 組 織 を 示 す 。 写 真 は 、 対 照 5匹 、 HET0016で 5
匹処置動物の代表的な画像を示す。
【0162】
【 図 2 6 】 図 26は 、 イ ン ビ ボ で の 9L腫 瘍 の 増 殖 に 対 す る HET0016の 長 期 間 投 与 の 効 果 を 示
す 。 パ ネ ル A は 、 ヴ ィ ー ク ル 又 は HET0016処 理 ラ ッ ト の 腫 瘍 の 中 点 か ら の HE切 片 を 表 す 。
パ ネ ル B は 、 AIS画 像 解 析 ソ フ ト ウ エ ア を 用 い て 連 続 切 片 に お い て 測 定 し た 対 照 又 は HET00
16処 理 ラ ッ ト に お け る 腫 瘍 の 容 積 比 較 を 示 す 。 各 群 に つ き 5匹 の ラ ッ ト か ら の 平 均 値 ± SE
を表した。
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(35)
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図12】
【図14】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
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【図18】
【図20】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
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【図24】
【図25】
【配列表】
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【図26】
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【国際調査報告】
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101 (2006.01)
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A61P 27/02
A61P 31/00
(2006.01)
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A61P 29/00
101 A61P 35/00
(2006.01)
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A61P 37/00
A61P 43/00
111 C12N 15/00
A
A61P 17/06
A61P 19/02
A61P 27/02
A61P 31/00
A61P 31/18
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 37/00
A61P 43/00
C12N 15/09
(81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),
EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,
CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,
CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L
V,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW
(72)発明者 グリーン, アンドリュー
アメリカ合衆国 53188 ウイスコンシン州 ウォーケシャ テムズ コート エヌ7 ダブ
リュ29615
(72)発明者 アマラル, サンドラ
ブラジル国 ベラ ビスタ アベニュー ブリガデイロ ルイス アンチオニオ 1910 アパ
ートメント 72ビー
(72)発明者 サイクリ, ギエルモ
アメリカ合衆国 48009 ミシガン州 バーミンガム ウエスト リンカーン 2301
(72)発明者 ブラウン, スティーブン エル.
アメリカ合衆国 48202 ミシガン州 デトロイト フォード プレイス 1 4ディー
(72)発明者 チェン, ピン
カナダ国 N9A 5B4 オンタリオ ウィンザー キャロン アベニュー 576
(72)発明者 グオ, メン
アメリカ合衆国 48180 ミシガン州 テイラー チェスナット ストリート 25147
Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 CA05 CA09 HA11
4C084 AA02 AA17 BA44 CA18 DB52 DB53 DB54 DB57 MA02 NA14
ZA331 ZA421 ZA441 ZA451 ZA591 ZA661 ZA671 ZA681 ZA701 ZA811
ZA891 ZA961 ZB151 ZB211 ZB212 ZB261 ZB351 ZC202 ZC211 ZC412
ZC751
4C086 AA01 AA02 BC61 MA01 MA02 MA04 NA14 ZA33 ZA42 ZA44
ZA45 ZA59 ZA66 ZA67 ZA68 ZA70 ZA81 ZA89 ZA96 ZB15
(49)
JP 2007-511522 A 2007.5.10
ZB21 ZB26 ZB35 ZC21 ZC41 ZC75
4C206 AA01 AA02 HA30 MA01 MA02 MA04 NA14 ZA33 ZA42 ZA44
ZA45 ZA59 ZA66 ZA67 ZA68 ZA70 ZA89 ZA96 ZB15 ZB21
ZB26 ZB35 ZC21 ZC41 ZC75