日本消化器病学会関東支部第328回例会 プログラム・抄録集

日本消化器病学会関東支部第328回例会
プログラム・抄録集
当番会長:群馬大学大学院 保健学研究科 教授 長 嶺 竹 明
〒371-8514 群馬県前橋市昭和町 3-39-22
TEL 027 220 8127/FAX 027 220 8136
期 日:平成26年2月22日(土)
会 場:海運クラブ
〒102 0093 東京都千代田区平河町2 6 4
TEL 03 3264 1825
http://kaiunclub.org/
<発表者,参加者の皆様へ>
1.発表者は日本消化器病学会の会員に限ります。
2.発表はすべてPCでのプレゼンテーションとなります。
口演30分前までに,PC受付にてデータ登録・動作チェックを済ませてください。
1)会場に用意するPCのアプリケーションは,Microsoft PowerPoint 2003/2007/2010/
2013となります。発表データはUSBメモリにてお持ちください。また,
事前に必ず,
作成したPC以外のPCでも正常に動作することを確認してください。
※データ作成の際は,文字化けを防ぐため次の標準フォントをご使用ください。
日本語:MSゴシック,MS Pゴシック,MS明朝,MS P明朝
英語:Arial,Century,Century Gothic,Times New Roman
※スライド作成時の画面サイズはXGA(1024×768)であることをご確認の上,
作成してください。
2)Macintosh使用,及びWindowsでも動画を含む場合は,必ずPC本体をお持込みく
ださい。データでのお持込みには対応いたしかねますのでご注意ください。なお,
液晶プロジェクタへの接続はMini D-SUB 15pinにて行います。変換コネクタを必
要とする場合は必ずご自身でお持込みください。また,バッテリのみでの稼動はト
ラブルの原因となるため,外部電源用アダプタを必ずお持ちください。
3)音声出力には対応いたしません。
4)発表は枚数ではなく時間で制限させていただきます。
5)発表時は,演台に置かれたモニタを見ながらご自身で操作して画面を進めていただ
きます。
3.発表に際しては,患者さんのプライバシーの保護(日付の記載は年月までとする,等)に
十分配慮してください。
4.演題発表時には,利益相反状態の開示が必要になります。開示基準・規定の書式に従って
利益相反の有無を必ず開示してください。
5.演者は前演者の口演開始後,直ちに「次演者席」へご着席ください。
6.専修医セッション,研修医セッション及び一般演題は,1題口演4分,追加討論2分です。
時間厳守でお願いします。
7.質問される方は,所属と氏名を明らかにしてからお願いします。
8.専修医・研修医セッションの発表者あるいは同施設の方は,奨励賞表彰式に出席してくだ
さい。
(第1会場 12:50 ∼)
9.当日の参加費は2,000円です。
10.当日はこのプログラム・抄録集をご持参ください。なお当日ご希望の場合は,1部1,000
円にて販売いたします。(数に限りがございますので予めご了承ください)
会 場 案 内 図 海運クラブ
〒102-0093 東京都千代田区平河町2 6 4
海運ビル
TEL 03−3264−1825
JA共済
ビル
旧赤坂
プリンス
ホテル
(再開発中)
赤坂エクセルホテル
東急
地下鉄 有楽町線,半蔵門線,南北線:永田町駅4,
5,
9番出口 2分
銀座線,丸ノ内線:赤坂見附駅D
(弁慶橋)
出口 5分
―1―
日本消化器病学会関東支部第328回例会
平成26年2月22日
(土)
8:45∼8:50 開 会 の 辞(第1会場)
第1会場(午前の部)
演 題
時 間
第2会場(午前の部)
座 長
演 題
時 間
座 長
・胃・
(1)
専修医Ⅰ(食道
十二指腸) 1∼4
8:50∼9:14 川田 晃世 (12)研修医Ⅰ(胃・十二指腸)42∼45 8:50∼9:14 神田 大輔
(2)
専修医Ⅱ(胃・十二指腸)5∼8
9:14∼9:38 市川 武 (13)研修医Ⅱ(胃・十二指腸・
46∼48 9:14∼9:32 長沼 篤
小腸 )
(3)
専修医Ⅲ(小腸・大腸・
その他 )9∼12
9:38∼10:02 田中 寛人 (14)研修医Ⅲ(大腸) 49∼52 9:32∼9:56 富澤 琢
(4)
専修医Ⅳ(肝1)13∼15
10:02∼10:20 高山 尚 (15)研修医Ⅳ(肝) 53∼56 9:56∼10:20 山崎 勇一
(5)
専修医Ⅴ(肝2)16∼18
・胆・
10:20∼10:38 渡邊 俊司 (16)研修医Ⅴ(肝
その他)57∼60 10:20∼10:44 佐々木 隆
(6)
専修医Ⅵ(肝・胆)19∼22
10:38∼11:02 吉澤 海 (17)研修医Ⅵ(胆) 61∼64 10:44∼11:08 田原 純子
(7)
専修医Ⅶ(膵・その他)23∼26
11:02∼11:26 安岡 秀敏 (18)研修医Ⅶ(膵) 65∼68 11:08∼11:32 岩野 博俊
12:05∼12:50 ランチョンセミナー(第1会場)12:00 ∼ 12:30
評議員会
「胃癌に対する低侵襲治療と胃切除術後の消化管機能障害」
埼玉医科大学総合医療センター 消化管一般外科 持木 彫人 先生
共催:大鵬薬品工業株式会社 12:50∼13:05 専修医・研修医奨励賞表彰式(第1会場)
13:05∼14:00 特 別 講 演(第1会場)
「E型肝炎ウイルスの基礎的・臨床的研究」
自治医科大学医学部 感染・免疫学講座ウイルス学部門 岡本 宏明 先生
第1会場(午後の部)
演 題
時 間
第2会場(午後の部)
座 長
演 題
時 間
座 長
(8)
肝1
27∼30 14:05∼14:29 川村 祐介 (19)食道
69∼72 14:05∼14:29 加藤 正之
(9)
肝2
31∼34 14:29∼14:53 渡辺 貴子 (20)食道・胃・十二指腸 73∼75 14:29∼14:47 小野里康博
(10)
肝・胆
35∼37 14:53∼15:11 阿部 雄太 (21)小腸・大腸 76∼79 14:47∼15:11 小川 博臣
(11)
膵・その他
38∼41 15:11∼15:35 山田 俊哉 (22)大腸
80∼83 15:11∼15:35 藤井 孝明
15:35∼15:40 閉 会 の 辞(第1会場)
第6回専門医セミナー
15
:55∼17:25
(第1会場)
★日本消化器病学会3単位取得できます
「胃・大腸症例検討」
1.胃症例
2.大腸症例
群馬大学医学部附属病院 光学医療診療部 富澤 琢
群馬大学医学部附属病院 消化器内科 佐川 俊彦
専修医・研修医セッションの発表者あるいは同施設の方は,奨励賞表彰式に出席してください。
(第1会場 12:50 ∼)
―2―
特 別 講 演 (第1会場 13:05∼14:00)
「E型肝炎ウイルスの基礎的・
臨床的研究」
自治医科大学医学部 感染・免疫学講座ウイルス学部門 岡本 宏明 先生
司会 群馬大学大学院 保健学研究科 長嶺 竹明
・・・・・・演者の先生ご紹介・・・・・
岡本 宏明 先生
自治医科大学医学部 感染・免疫学講座 主任教授
厚労省研究班「経口肝炎班」班長
学歴及び職歴
昭和54年 東北大学医学部卒業
昭和54年 いわき市立総合磐城共立病院内科にて臨床研修医・医員
昭和58年 自治医科大学医学部(予防生態学;真弓 忠教授)の
研究生、助手、講師、助教授
平成15年 自治医科大学医学部感染・免疫学講座ウイルス学部門 教授
主な受賞
平成4年 第2回日経BP技術賞大賞
平成9年 第1回日本肝臓学会賞(織田賞)
平成12年 「ISI Citation Laureates Award」(引用最高栄誉賞)
平成20年 第44回小島三郎記念文化賞
―3―
ランチョンセミナー (第1会場 12:05∼12:50)
「胃癌に対する低侵襲治療と
胃切除術後の消化管機能障害」
埼玉医科大学総合医療センター 消化管一般外科 持木 彫人 先生
司会 群馬大学大学院 病態総合外科学 桑野 博行
共催:大鵬薬品工業株式会社
・・・・・・演者の先生ご紹介・・・・・
持木 彫人 先生
埼玉医科大学総合医療センター 消化管一般外科
学歴、職歴
昭和63年 群馬大学医学部卒業
昭和63年 群馬大学医学部附属病院第1外科研修医
平成元年 大宮赤十字病院外科医員
平成4年 群馬大学医学部附属病院第1外科医員
平成6年 群馬大学大学院医学研究科外科学系入学
群馬大学生体調節研究所(伊藤漸教授)
平成9年 大学院卒業(医学博士 群馬大学)
平成9年 群馬大学医学部附属病院第1外科医員
平成11年 群馬大学医学部附属病院・周産母子センター助手
平成14年 群馬大学医学部附属病院・消化器外科I助手
平成16年 群馬大学大学院病態総合外科(第1外科)医局長、医学部内講師
平成18年 Duke University, Department of Surgery
Visiting Assistant Professor
平成19年 群馬大学医学部附属病院・消化器外科助教、医学部内講師
平成21年 群馬大学医学部附属病院・消化器外科(病態総合外科) 講師
平成25年 埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 教授
表彰
平成9年 群馬大学大学院医学研究科学術優秀賞
平成24年 胃外科術後障害研究会優秀演題賞
―4―
第6回専門医セミナー
(第1会場 15:55∼17:25)
「胃・大腸症例検討」
総合司会 群馬大学医学部附属病院 光学医療診療部 草野 元康
1.胃症例
演者 群馬大学医学部附属病院 光学医療診療部 富澤 琢 司会 群馬大学医学部附属病院 消化器内科 河村 修 コメンテーター
国立国際医療研究センター病院 第一消化器内科 秋山 純一 先生
横浜市立大学附属病院 消化器内科・臨床研修センター 稲森 正彦 先生
順天堂大学医学部附属順天堂医院 消化器内科 永原 章仁 先生
2.大腸症例
演者 群馬大学医学部附属病院 消化器内科 佐川 俊彦 司会 筑波大学附属病院 光学医療診療部 鈴木 英雄 先生
コメンテーター
社会保険中央総合病院 内科・炎症性腸疾患センター 河口 貴昭 先生
自治医科大学附属病院消化器センター 内科 佐藤 博之 先生
獨協医科大学病院 消化器内科 富永 圭一 先生
―5―
第1会場(午前の部)
8:45〜8:50
―開会の辞―
専修医セッション評価者
埼玉医科大学総合医療センター
群馬大学大学院
消化器・肝臓内科
臓器病態外科学
竹吉
がん・感染症センター都立駒込病院
( 1 )専修医Ⅰ(食道・胃・十二指腸) 8:50〜9:14
加藤
肝臓内科
林
真吾
泉
星舟
座長 群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科学 川 田 晃 世
1.食道好酸球浸潤により特異な内視鏡像を呈した好酸球性胃腸炎の一例
日本医科大学
消化器内科学
日本医科大学 消化器内科学
日本医科大学千葉北総病院 消化器内科
○大森
順,川見
典之,竹之内菜菜,梅澤まり子
坂本
長逸
岩切
勝彦,星野慎太朗
2.急速な転帰をとった多発肝腫瘤の一例
社会保険中央総合病院
同
消化器内科
病理診断科
○松野
高久,齋藤
聡,岩田
裕子,福士
剛蔵
葉山
惟信,平山
敦大,小野
真史,三浦
英明
畑田
康政,山田
春木
謙治,小泉和三郎,田邊
聡
飯原久仁子
3.粘膜下腫瘍様の形態を呈した特発性肉芽腫性胃炎の1例
北里大学東病院
消化器内科
○佐々木哲三,石戸
樋口
勝彦,佐々木
成毛
哲,三枝
徹,堅田
親利,東
瑞智
信
4.当院健診における便中ピロリ菌検査導入後の初期評価について
日立製作所日立総合病院
内科
○竹内
綿引
隆久,大河原
平井
信二,岡
谷中
昭典
筑波大学附属病院 日立社会連携教育研究センター
( 2 )専修医Ⅱ(胃・十二指腸)
9:14〜9:38
千尋,鴨志田敏郎,佐々木翔一,浜野由花子
座長
悠,大河原
敦,柿木
信重
裕爾
板橋中央総合病院
消化器科
市
川
武
5.消化管閉塞を来した十二指腸水平部進行癌の1例
東京女子医科大学
同
消化器内科
消化器外科
○久礼
里江,岸野真衣子,貝瀬
智子,長尾
健太
田原
純子,小木曽智美,中村
真一,橋本
悦子
白鳥
敬子
谷口
清章,山田
剛,山本
雅一
―6―
卓司,笹川
6.十二指腸潰瘍にアニサキス症を合併し、球部狭窄を来たし胃石を合併した1例
君津中央病院
○今井
雄史,亀崎
秀宏,大和
睦実,稲垣
千晶
矢挽
眞士,妹尾
純一,藤本
竜也,山田
博之
大部
誠道,藤森
基次,吉田
有,駒
嘉宏
畦元
亮作,鈴木
紀彰,福山
悦男
7.消化管出血で発症し内視鏡的切除しえた Brunner 腺過形成の1例
戸田中央総合病院
消化器内科
○竹内
啓人,羽山
弥毅,青木
勇樹,山本健治郎
吉益
悠,永谷
菜穂,竹内
眞美,田中
山田
昌彦,堀部
俊哉,原田
容治
○草野
祐実,片山
裕視,須田
季晋,豊田
紘二
北濱
彰博,関山
達彦,寺内
厳織,玉野
正也
麗奈
8.上腹部症状を契機に発見された胃石の一症例
獨協医科大学越谷病院
消化器内科
( 3 )専修医Ⅲ(小腸・大腸・その他) 9:38〜10:02
座長 国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 田 中 寛 人
9.術前診断に難渋した小腸 GIST の一例
順天堂大学附属順天堂医院
同
消化器内科
人体病理学講座
○芳賀
慶一,浅岡
大介,澁谷
長田
太郎,野村
収,渡辺
八尾
隆史
智義,村上
敬
純夫
10.日本住血吸虫症に合併した同時多発性大腸腺腫症の一例
横浜船員保険病院
○河合
恵美,天野
塩沢
牧子,内藤
仁至,石井
泰明,井出野奈緒美
実
11.化学療法が著効し、切除可能となった S 状結腸癌+肝転移の2症例
群馬大学医学部
臓器病態外科学講座
○生方
泰成,高橋
憲史,須納瀬
豊,吉成
大介
小川
博臣,塚越
浩志,平井圭太郎,山崎
穂高
高橋
研吾,五十嵐隆通,稲川万里江,竹吉
泉
12.特異な形態変化を認めた炎症性偽腫瘍の一例
済生会前橋病院
消化器内科
同 外科・腹腔鏡外科センター
群馬大学医学部附属病院
( 4 )専修医Ⅳ(肝1)
病態制御内科学
10:02〜10:20
○山崎
節生,大山
達也,加藤恵理子,椎名
平野
裕子,田中
良樹,蜂巣
吉永
輝夫
藍原
龍介,細内
山田
正信
座長
前橋赤十字病院
陽子,矢田
啓介
豊
康男
消化器内科
高
山
尚
13.胆嚢との交通を有した感染性肝嚢胞の一例
千葉市立海浜病院
同
消化器内科
外科
○南金山理乃,齋藤
野本
裕正,北
芦澤
陽介,吉岡
―7―
博文,薄井
和彦
茂
正俊,太和田勝之
14.若年 B 型慢性肝炎症例に対する PEG-IFN 治療の検討
がん・感染症センター都立駒込病院
肝臓内科
○遠藤
林
佑香,今村
潤,木村
公則,佐伯
俊一
星舟
15.肝寄生虫症の1例
船橋市立医療センター
○明杖
東郷
( 5 )専修医Ⅴ(肝2) 10:20〜10:38
直樹,水本
英明,今関
聖子,関
厚佳,小林
洋,高城いぶき
照宗,安藤
健
座長 自治医科大学内科学講座 消化器内科学部門 渡 邊 俊 司
16.肝硬変による難治性腹水に対するトルバプタンの検討
虎の門病院
肝臓センター
○秋山慎太郎,池田
健次,瀬崎ひとみ,宗林
裕史
福島
泰斗,川村
祐介,小林
正宏,斉藤
聡
保坂
哲也,芥田
憲夫,鈴木
文孝,鈴木
義之
荒瀬
康司,熊田
博光
17.左心膜横隔静脈が主流出路の胃静脈瘤に対してバルン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)が奏功した
1例
東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器・肝臓内科
○石本
詩子,山田真里江,關
伸嘉,宮崎
民浩
杉田
知典,会田
雄太,板垣
宗徳,石黒
晴哉
安部
宏,須藤
訓,相澤
良夫
18.サプリメント(金時しょうが®)による薬物性肝障害の1例
群馬大学大学院
病態制御内科
○鈴木
同
保健学研究科
長嶺
佐藤
( 6 )専修医Ⅵ(肝・胆)
10:38〜11:02
悠平,山崎
勇一,橋爪
洋明,堀口
昇男
賢,柿崎
暁,草野
元康,山田
正信
竹明
座長
町田市民病院
消化器科
吉
澤
海
19.biliary microhamartoma の一例
前橋赤十字病院
消化器内科
同
孝慶,新井
弘隆,松井
綾子,長坂
昌子
上野
敬史,関口
雅則,佐藤
洋子,大塚
修
戸島
洋貴,飯塚
賢一,豊田
満夫,高山
尚
阿部
毅彦
鉄平
病理部
伊藤
秀明
内科
滝澤
大地
消化器内科
高木
均
伊勢崎市民病院
高崎総合医療センター
○須賀
20.Fibropolycystic disease に合併した胆管癌の1例
東京女子医科大学病院
同
消化器内科
消化器外科
○神林
玄隆,徳重
克年,貝瀬
智子,大森
岸野真衣子,橋本
悦子,白鳥
敬子
樋口
雅一
亮太,山本
21.ERCP 困難症例に対し Rendezvous 法による胆管アプローチが有効であった3例
佐野厚生総合病院
内科
○上岡
直史,佐伯
恵太,小林
真介,片山
正
白石
貴久,寺元
研,東澤
俊彦,岡村
幸重
―8―
22.消化管出血を呈した胆嚢十二指腸瘻の一例
公立昭和病院
消化器内科
○大野
一将,太田
永田
紘子,山地
小島
茂,武田
同
予防検診科
川口
淳
同
放射線科
白田
剛
( 7 )専修医Ⅶ(膵・その他) 11:02〜11:26
博崇,平昭
衣梨,矢内
真人
統,浦牛原幸治,小野
圭一
雄一,野内
俊彦
座長 群馬大学医学部附属病院 消化器内科 安 岡 秀 敏
23.病態の改善と共に著明高値を示した腫瘍マーカーが低下した自己免疫性膵炎の1例
横須賀共済病院消化器病センター
内科
○三好
正人,石井
玲子,佐藤
綾子,松田
浩紀
野澤さやか,小島
直紀,山本奈穂子,幾世橋
伊田
春奈,田邊
陽子,渡邊
秀樹,新井
鈴木
秀明,小林
史枝,池田
隆明
佳
勝春
24.悪性を否定できず腹腔鏡下膵中央切除術を施行した膵体部膵内副脾の1例
日本医科大学
消化器外科
○栗山
翔,松下
晃,中村
慶春,住吉
宏樹
神田
知洋,清水
川野
陽一,吉岡
哲也,柿沼
大輔,水口
義昭
正人,谷合
信彦,真々田裕宏
内田
英二
25.膵神経内分泌腫瘍切除後に門脈内腫瘍栓および肝転移再発を来たした1例
慶應義塾大学医学部
一般消化器外科
同
病理
○高木
知聡,日比
泰造,阿部
雄太,板野
理
篠田
昌宏,北郷
実,八木
洋,香月
優亮
岸田
憲弘,北川
雄光
真杉
洋平,坂元
亨宇
26.術前診断が困難であった,IgG 4関連動脈周囲炎の1切除例
千葉徳洲会病院
内科
○富田
俊也,浅原
同
外科
高森
繁,鶴田
同
病理
宍倉
―9―
有里
新吾,松村
祐志
好彦,白部多可史,川上
英之
第1会場(午後の部)
特別講演
13:05〜14:00
E 型肝炎ウイルスの基礎的・臨床的研究
自治医科大学医学部 感染・免疫学講座ウイルス学部門
司会
( 8 )肝1
群馬大学大学院
保健学研究科
14:05〜14:29
座長
長
岡本
嶺
虎の門病院
竹
宏明 先生
明
肝臓センター
川
村
祐
介
27.C 型慢性肝炎のインターフェロン+リバビリン併用療法に合併する貧血の解明―大気マイクロ PIXE
を使用して
群馬大学大学院
同
保健学研究科
○富岡
智,長嶺
医学系研究科 病態制御内科
橋爪
洋明,堀口
柿崎
日本原子力研究開発機構
高崎量子応用研究所
28.肝細胞癌に対するダブルプラチナ療法
佐藤
竹明
昇男,山崎
勇一,佐藤
昌志,神谷
冨裕
賢
暁
博隆,江夏
(ミリプラチン肝動脈化学塞栓術+シスプラチン肝動注併用
療法)の使用経験
前橋赤十字病院
群馬大学医学部
消化器内科
○上野
敬史,松井
綾子,須賀
孝慶,長坂
昌子
佐藤
洋子,関口
雅則,大塚
修,飯塚
賢一
尚,阿部
毅彦
豊田
満夫,新井
弘隆,高山
西群馬病院
長島
多聞,田原
博貴
病態制御内科学
柿崎
暁,佐藤
賢
29.当院における C 型肝炎合併透析患者の予後と IFN 治療に対する有効性および安全性についての検討
東邦病院
内科
○細沼
賢一,廣川
朋之,青木
隆
30.当院における C 型慢性肝炎に対する Peg-IFN/Ribavirin/Telaprevir 3剤併用療法の治療成績
○戸島
洋貴,上野
敬史,豊田
満夫,須賀
長坂
昌子,佐藤
洋子,関口
雅則,大塚
修
飯塚
賢一,新井
弘隆,高山
尚,阿部
毅彦
西群馬病院
長島
多聞,田原
博貴
長野原町へき地診療所
小林
剛
柿崎
暁,佐藤
前橋赤十字病院
独立行政法人国立病院機構
群馬大学大学院医学系研究科
病態制御内科
― 10 ―
賢
孝慶
( 9 )肝2
14:29〜14:53
座長
東京医科歯科大学
消化器内科
渡
辺
貴
子
31.術後7年で肝転移を来たした眼球脈絡膜悪性黒色腫の一例
帝京大学医学部
内科
○三浦幸太郎,高森
木村
総,安達
江波戸直久,三浦
同
病理
相磯
光彦,山本
田中
篤,久山
笹島ゆう子,福里
頼雪,川島
悠,青柳
仁
運,白井
告,磯野
朱里
亮,阿部浩一郎,立澤
直子
貴嗣,石井
太郎,喜多
泰,滝川
宏人
一
利夫
32.部分的脾動脈塞栓術(PSE)を施行し、TVR/PEG-IFN/RBV 3剤併用療法により SVR が得られた1例
内科
○嶋田
靖,鈴木
悠平,畑中
病態制御内科学
柿崎
暁,山田
正信
伊勢崎市民病院
群馬大学大学院
健,滝澤
大地
33.肝細胞癌に対するミリプラチン動注療法及びラジオ波焼灼術後に発症した急性間質性肺炎の1例
くすの木病院内科
群馬大学大学院医学系研究科
○小曽根
病態制御内科
佐藤
隆,高草木智史
賢,柿崎
暁
34.ミリプラチンの TACE から TAI への切り替え後より著効が得られた肝細胞癌の一例
桐生厚生総合病院
群馬大学大学院医学系研究科
(10)肝・胆
14:53〜15:11
内科
○竝川
昌司,新井
洋介,飯塚
圭介,古谷
健介
山田
俊哉,野中
真知,飯田
智広,丸田
栄
柿崎
暁,佐藤
賢,山田
病態制御内科学
座長
慶應義塾大学医学部
正信
一般・消化器外科
阿
部
雄
太
35.Gardner 症候群に多発する胆管癌を合併した一例
桐生厚生総合病院
内科
○山田
俊哉,新井
洋佑,古谷
健介,飯塚
同
外科
野中
真知,竝川
昌司,飯田
智広
待木
雄一
しらかわ診療所
上牧温泉病院
内科
鏑木
大輔
内科
丸山
秀樹
圭介
36.閉塞性黄疸にて発症した後腹膜腫瘍に対し EUS-FNA が有用であった1例
自治医科大学
消化器肝臓内科
同
血液内科
同
病理診断部
○吉田
友直,渡邊
牛尾
純,畑中
森
田中
俊司,原
恒,玉田
鉄人,沼尾
規且
喜一,菅野健太郎
政樹
亨
37.無水エタノール注入により改善した腹腔鏡下胆嚢摘出後の離断型胆汁瘻の1例
新座志木中央総合病院
外科
長嶋
隆,西田
同
内科
新戸
禎哲,古市
消化器・一般外科
大坪
毅人
聖マリアンナ医科大学
○奈良橋喜芳,谷島
― 11 ―
義章,吉野
美幸,岡田
了祐
二郎,佐藤
滋,吉田
紘一
好宏,澤田
孝繁,松浦
直孝
(11)膵・その他
15:11〜15:35
座長
桐生厚生総合病院
内科
山
田
俊
哉
38.左側門脈圧亢進症をきたした IgG 4関連自己免疫性膵炎の一例
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター内科
○松井
哲平,中野
茂,荻野
悠,佐藤
綾
松井
太吾,松清
靖,高亀
道生,金山
政洋
篠原
美絵,岡野
直樹,池原
孝,籾山
浩一
篠原
正夫,永井
英成,渡邉
学,石井
耕司
五十嵐良典,住野
泰清
39.出血性横行結腸静脈瘤を合併した膵頭部癌切除後再発患者に対して人工肛門造設術後に化学療法を実
施した1例
国立がん研究センター東病院
肝胆膵内科
○西田
保則,光永
修一,桑原
明子,奥山
浩之
高橋
秀明,大野
泉,清水
怜,池田
公史
○若松
喬,長尾
玄,蓮井
宣宏,藤原
愛子
小暮
正晴,渡邉
武志,阿部
展次,森
俊幸
正木
忠彦,杉山
政則
40.胃癌術後に発症した特発性腸腰筋出血の1例
杏林大学医学部付属病院
消化器・一般外科
41.化膿性尿膜管嚢胞を成因として汎発性腹膜炎に至った成人の1例
旭中央病院
同
外科
臨床病理科
○川崎
圭史,櫻岡
祐樹,田中
信孝,野村
幸博
永井 元樹,古屋
隆俊,吉田
幸弘,石田
隆志
赤井
淳,市田
晃彦,小池
大助,瀬尾
明彦
福元
健人,山田
直也,伊藤
橋司,須賀
悠介
山本真理子,大谷
将秀,大橋
雄一,菅原弘太郎
鈴木
― 12 ―
良夫
第2会場(午前の部)
研修医セッション評価者
東京慈恵会医科大学附属病院
東京女子医科大学
消化器病センター
聖マリアンナ医科大学病院
(12)研修医Ⅰ(胃・十二指腸)
消化器・肝臓内科
消化器内科
消化器・肝臓内科
8:50〜9:14
座長
猿田
雅之
徳重
克年
前畑
忠輝
東大宮総合病院
総合内科
神
田
大
輔
42.肥満に伴う巨大食道裂孔ヘルニア付近の胃粘膜傷害(Cameron lesion)による慢性鉄欠乏性貧血の
一例
自治医科大学附属病院
消化器肝臓内科
○宇賀神ららと,矢野
牛尾
純,三浦
砂田圭二郎,山本
智則,北村
義正,林
絢,井野
裕治
芳和,佐藤
博之
博徳,菅野健太郎
43.粘膜下腫瘍様形態を呈した Epstein-Barr Virus 関連にリンパ球浸潤癌を ESD にて切除した1例
こうかん会日本鋼管病院
○浅井
真,大塚
征爾,神崎
拓磨,志波
俊輔
染矢
剛,中村
篤志,奥山
啓二,吉岡
政洋
鈴木
修,朝倉
○山口
晴臣,武田
剛志,小田島慎也,山道
信毅
均
44.早期胃癌 ESD 中に頚部食道穿孔をきたした1例
東京大学医学部附属病院
同
同
消化器内科
小池
和彦
新美
惠子,藤城
○神野
雄一,高橋
正純,朴
石井
洋介,中川
和也,藪野
消化器内科
光学医療診療部
光弘
45.無回転型腸回転異常を伴ったスキルス胃癌の1例
横浜市立市民病院
消化器外科
同
炎症性腸疾患科
同
病理診断科
杉田
峻,南
宏典
太一,望月
康久
昭
村上あゆみ
(13)研修医Ⅱ(胃・十二指腸・小腸) 9:14〜9:32 座長 高崎総合医療センター 消化器病センター 長 沼
篤
46.閉塞性黄疸を来した十二指腸濾胞性リンパ腫の1例
国立病院機構災害医療センター
消化器内科
○佐藤
慧,田中
匡実,林
原田
舞子,佐々木善浩,上市
川村
紀夫
― 13 ―
昌武,島田
祐輔
英雄,平田
啓一
47.慢性的な水様便および発熱を契機に発見された小腸原発 perpheral T-cell lymphoma, not otherwise
specified(PTCL-NOS)の一例
東京医科歯科大学
消化器内科
○福与
涼介,鈴木
康平,斎藤
詠子,水谷
知裕
和田
祥城,藤井
俊光,井津井康浩,大島
茂
中川
美奈,岡本
隆一,土屋輝一郎,柿沼
東
正新,永石
宇司,大岡
真也,長堀
中村
哲也,荒木
昭博,大塚
和朗,朝比奈靖浩
俊樹,岡崎
明佳,山川
元太
慎二,佐藤
芳之
渡辺
清
正和
守
48.腸閉塞にて発症した回腸 inflammatory fibroid polyp の1例
東京厚生年金病院
(14)研修医Ⅲ(大腸)
9:32〜9:56
消化器内科
座長
○佐久間信行,二口
吉良
文孝,湯川
明浩,森下
松本
政雄,新村
和平
群馬大学医学部附属病院
光学医療診療部
富
澤
琢
49.(演題取下げ)
50.自己免疫関連蛋白漏出性胃腸症に後天性 vonWillebrand 症候群を合併し、ステロイドが著効した1例
埼玉医科大学
総合診療内科
泰樹,山岡
稔,米野
和明,大庫
秀樹
草野
武,芦谷
啓吾,野口
哲,小林
威仁
有馬
博,木下
俊介,飯田慎一郎,井上
清彰
山本
啓二,今枝
○林
博之,中元
同
血液内科
脇本
直樹
同
リウマチ膠原病内科
横田
和浩,三村
俊英
同
病理診断部
本間
琢,茅野
秀一
秀友
51.内視鏡的整復後に短期間で再発した横行結腸軸捻転症の1例
横須賀市立うわまち病院
消化器内科
同
外科
○酒井
和也,妹尾
孝浩,森川瑛一郎,湯山
高邑
知生
中谷
研介,岡田晋一郎,菅沼
晋
利行
52.mFOLFOX 6療法施行中に高アンモニア血症をきたした1例
(公財)東京都保健医療公社東部地域病院
外科
○武田
武文,岸根
健二,矢崎
悠太,大久保悟志
佐藤
剛,内藤
滋俊,吉野
耕平,中谷
晃典
北島
政幸,渡部
智雄,落合
匠,西村
和彦
二川
俊二
― 14 ―
(15)研修医Ⅳ(肝)
9:56〜10:20
座長
群馬大学医学部附属病院
肝臓代謝内科
山
崎
勇
一
53.胆管微小過誤腫に併存した肝未分化癌の1例
東大宮総合病院
消化器内科
○白石夏太郎,市原広太郎,安達
江川
優子,鳥谷部武志,南雲
多田
正弘,風間
金
達浩
同
外科
同
病理診断科
小川
史洋
同
総合内科
神田
大輔
哲史,村田
継佑
大暢,齋藤
訓永
博正
54.高齢男性に発症した薬剤起因性自己免疫性肝炎の1例
東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科 ○宗友
洋平,松井
寛昌,石田
仁也,天野
克之
上竹慎一郎,有廣
誠二,穗苅
厚史,石川
智久
高木
久雄
一郎,田尻
55.アルコール多飲患者に発症した変異ウイルスを伴う de novo B 型劇症肝炎の一例
筑波記念病院
消化器内科
○森川
裕史,添田
敦子,小林真理子,越智
大介
杉山
弘明,本橋
歩,設楽佐代子,池澤
和人
中原
同
病理
臺
朗
雄一
とき田クリニック
八子
徹
自治医科大学 感染・免疫学講座ウイルス学部門
岡本
宏明
56.肝静脈の段階的な血栓化により肝不全死した Budd-Chiari 症候群の1例
国立病院機構高崎総合医療センター 消化器病センター
崇,林
絵理
直美,工藤
智洋
(16)研修医Ⅴ(肝・胆・その他) 10:20〜10:44 座長 東京大学医学部附属病院 消化器内科 佐々木
隆
同
○湯浅絵理奈,長沼
小柏
剛,上原
高木
均,石原
研究検査科
小川
晃
公立藤岡総合病院附属外来センター 消化器内科
壁谷
建志
篤,星野
早苗,宮前
弘
57.発症早期の持続的血液濾過透析が著効したアルコール性ケトアシドーシスの1例
公立富岡総合病院
消化器科
○富澤
中山
彩智,齋藤
秀一,増田
智之,渋澤
恭子
哲雄,吉田佐知子,仁平
聡
○竹内
優志,岩崎
栄典,星野
舞,瀧田麻衣子
石山
由佳,岸野
竜平,酒井
船越
信介,中澤
敦,塚田
58.高 Ca 血症と白血球増多をともなった進行胆嚢癌の一例
東京都済生会中央病院
内科
元,泉谷
幹子
信廣
59.頸椎転移を契機に発見された胆嚢癌の一例
水戸済生会総合病院
消化器内科
○重政
濱中
理恵,鹿志村純也,仁平
紳策,大川原
浅野康治郎
― 15 ―
健,渡辺
武,中村
琢也
孝治,柏村
浩
60.低侵襲性治療によりいずれも根治し得た、胃、肝、上行結腸の3重癌症例
高崎総合医療センター消化器病センター 消化器科 ○八木
直樹,高木
均,星野
上原
早苗,宮前
直美,長沼
外科
戸谷
裕之,清水
尚,茂木
群馬大学重粒子線医学研究センター
小山
佳成,渋谷
圭
高崎総合医療センター消化器病センター外科
群馬大学重粒子線医学研究センター
大野
達也
同
崇,林
絵理
篤,工藤
智洋
陽子
(17)研修医Ⅵ(胆) 10:44〜11:08 座長 東京女子医科大学消化器病センター 消化器内科 田 原 純 子
61.悪性との鑑別に苦渋した進行性の閉塞性黄疸を呈した Mirizzi 症候群の1例
群馬大学医学部
臓器病態外科学
○須藤
佑太,須納瀬
豊,平井圭太郎,吉成
大介
小川
博臣,塚越
浩志,山崎
穂高,高橋
憲史
高橋
研吾,五十嵐隆通,田中
和美,竹吉
泉
62.ADPKD に伴う肝動脈瘤破裂による胆道出血に対して動脈塞栓術が奏功した1例
湘南鎌倉総合病院
消化器病センター
○中野秀比古,魚嶋
晴貴,市田
増田
作栄,佐々木亜希子,小泉
江頭
秀人,賀古
親正,所
晋之助
一也,金原
猛
豊一,月永真太郎,梶原
幹生
眞
63.急性胆管炎と膵炎を繰り返し発症した Lemmel 症候群の1例
東京慈恵会医科大学附属柏病院 消化器・肝臓内科 ○福栄
同
内視鏡部
東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科
亮介,湯川
小林
亮太,高見信一郎,小林
寛子,伊藤
善翔
松本
喜弘,高倉
一樹,小田原俊一,内山
幹
小井戸薫雄,大草
敏史
斎藤
恵介,小山
誠太,安達
荒川
廣志
田尻
久雄
世,今津
博雄
64.急性胆石胆嚢炎に併発した十二指腸穿通により結石イレウスを来した一例
東邦大学医療センター佐倉病院
内科
○宋本
尚俊,古川
竜一,宮村
美幸,佐々木大樹
勝俣
岩佐
雅夫,平山
圭穂,菊地
秀昌,新井
典岳
亮太,山田
哲弘,曽野
浩治,長村
愛作
中村健太郎,青木
博,吉松
竹内
健,高田
伸夫,鈴木
安嗣,津田裕紀子
康夫
(18)研修医Ⅶ(膵) 11:08〜11:32 座長 埼玉医科大学国際医療センター 消化器内視鏡科 岩 野 博 俊
65.自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎に下肢深部静脈血栓症を伴う後腹膜線維症を同時合併した
全身性 IgG 4関連疾患の一例
桐生厚生総合病院
内科
○萩原
弘幸,山田
俊哉,新井
洋佑,古谷
健介
飯塚
圭介,野中
真知,竝川
昌司,飯田
智広
しらかわ診療所
内科
鏑木
大輔
上牧温泉病院
内科
丸山
秀樹
― 16 ―
66.術前画像で solid pseudopapillary neoplasm が疑われた膵体部癌の一切除例
東京大学医学部
肝胆膵外科
○塩田
沙織,山本
訓史,青木
琢,石沢
武彰
金子
順一,阪本
良弘,長谷川
潔,菅原
寧彦
國土
典宏
67.後腹膜線維症と鑑別を要した膵鉤部癌後腹膜浸潤の1例
国立病院機構高崎総合医療センター 消化器病センター内科
○工藤
千佳,宮前
小柏
剛,星野
直美,小板橋絵理,上原
崇,長沼
高木
均,石原
弘
○甲賀
達也,安岡
佐川
俊彦,水出
山田
正信
早苗
篤,工藤
智洋
秀敏,橋爪
洋明,栗林
志行
雅文,下山
康之,河村
修
68.重症膵炎を発症した十二指腸乳頭部癌の一例
群馬大学医学部附属病院
消化器内科
群馬県済生会前橋病院
消化器内科
加藤恵理子,田中
伊勢崎市民病院
消化器内科
小畑
力
光学医療診療部
富澤
琢,草野
群馬大学医学部附属病院
― 17 ―
良樹
元康
第2会場(午後の部)
(19)食道
14:05〜14:29
座長
一般演題
東京慈恵会医科大学
内視鏡科
加
藤
正
之
69.ヘリコバクターピロリ菌 感染による逆流性食道炎および胃悪性腫瘍(胃がん・MALT リンパ腫)への
影響
御成橋栄クリニック
NTT 東日本伊豆病院
○小林
栄孝,松浦
貴彦
70.上部消化管内視鏡検査が誘因となり剥離性食道炎を来した水疱性類天疱瘡の1例
群馬大学医学部附属病院
同
消化器内科
光学医療診療部
○栗林
志行,川田
晃世,保坂
浩子,石原
眞悟
安岡
秀敏,水出
雅文,下山
康之,河村
修
山田
正信
俊彦,草野
元康
富澤
琢,佐川
71.イマチニブ投与後に胸膜炎・膿胸を発症するも著効した切除不能巨大食道 GIST の一例
横浜市立みなと赤十字病院
○河村
貴広,浅川
剛人,金城
美幸,高浦
健太
真子
西尾
匡史,勝倉
暢洋,小橋健一郎,橋口
先田
信哉,有村
明彦,熊谷
二朗
72.進行食道癌における食道気道瘻に対してステント留置を行った4例の検討
君津中央病院
(20)食道・胃・十二指腸 14:29〜14:47
消化器科
○亀崎
秀宏,畦元
亮作,今井
雄史,大和
睦実
稲垣
千晶,矢挽
眞士,妹尾
純一,藤本
竜也
大部 誠道,藤森
基次,吉田
有,駒
嘉宏
鈴木
悦男
紀彰,福山
座長 しらかわ診療所 群馬消化器内視鏡医療センター 小野里 康 博
73.再発食道裂孔ヘルニアに対して腹腔鏡下に再手術を施行した1例
東京慈恵会医科大学
同
消化管外科
外科学講座
○秋元
俊亮,矢野
星野
真人
矢永
勝彦
文章,小村
伸朗,坪井
一人
浩一,福田臨太郎,桑原
明菜
74.家族性大腸腺腫症症例に合併した胃底腺ポリープの癌化による多発胃癌の1例
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科
○齊藤
正昭,清崎
高田
理,力山
敏樹
75.Stage 4(CY 1)の胃癌で術後長期生存をはたしている1症例
東京警察病院
○徳山
鈴木
― 18 ―
信行,中田和智子,須山
剛,小椋
啓司
由紀,松原
三郎
(21)小腸・大腸
14:47〜15:11
座長
群馬大学大学院
臓器病態外科学
小
川
博
臣
76.貧血精査中に無症候性腸重積にて発見された小腸血管腫の1例
大森赤十字病院
外科
○寺井
恵美,佐々木
原田真悠水,金子
同
愼,中山
学,渡辺
検査部
坂本
第一内科
○佐川
俊彦,安岡
秀敏,栗林
下山
康之,河村
修,山田
洋,石丸
和寛
俊之
穆彦
77.クローン病に合併した痔瘻癌の2例
群馬大学医学部附属病院
同
光学医療診療部
富澤
国立病院機構沼田病院
石原
琢,草野
志行,水出
雅文
正信
元康
眞悟
78.顆粒球吸着療法(G-CAP)が奏功した腸管ベーチェットの一例
東京医療センター
消化器科
○作野
隆,佐藤
道子,高取
祐作,成瀬
智康
菊池
美穂,西澤
俊宏,藤山
洋一,中村
光康
金子
博,高橋
智洋,小板橋絵理,上原
早苗
正彦
79.初診時にサイトメガロウイルス感染を合併した Crohn 病の1例
国立病院機構高崎総合医療センター 消化器病センター内科
(22)大腸
15:11〜15:35
座長
○宮前
直美,工藤
小柏
剛,星野
石原
弘
群馬大学大学院
崇,長沼
病態総合外科学
篤,高木
均
藤
明
井
孝
80.ポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)が関与したと考えられる急性出血性直腸潰瘍の2症例
東京労災病院
消化器内科
○植木
紳夫,西中川秀太,團
宣博,朝井
靖二
山内
芳也,武田
悠希,大塚
隆文,和久井紀貴
大場
信之,児島
辰也
81.大腸癌が先行し Cronkhite-Canada 症候群の治療中に肝転移を来した1例
自治医科大学内科学講座
消化器内科学部門
○宮田
康史,三浦
義正,北村
竹澤
敬人,坂本
博次,新畑
絢,井野
佐藤
博之,矢野
智則,砂田圭二郎,佐藤
大澤
博之,山本
博徳,菅野健太郎
博英,林
裕治
芳和
貴一
82.トリクロロエチレンの関与が疑われた腸管嚢胞性気腫症の1例
大森赤十字病院
消化器内科
○須藤
拓馬,河野
直哉,芦苅
圭一,関
鶴田
晋佑,高橋
昭裕,千葉
秀幸,井田
諸橋
大樹,後藤
志帆子
智則
亨
83.肝硬変に合併し経鼻酸素投与により改善するも再燃を繰り返した腸管嚢胞様気腫症の一例
横浜市立みなと赤十字病院
○河村
貴広,浅川
剛人,金城
美幸,高浦
健太
西尾
匡史,勝倉
暢洋,小橋健一郎,橋口
真子
先田
信哉,有村
明彦,熊谷
― 19 ―
二朗
平成26年度 日本消化器病学会関東支部例会開催期日
例会回数
329
330
331
332
333
当 番 会 長
伊 東 文 生
(聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科)
内 田 英 二
(日本医科大学 消化器外科)
森 山 光 彦
(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野)
佐 田 尚 宏
(自治医科大学 消化器・一般外科)
今 関 文 夫
(千葉大学総合安全衛生管理機構)
開 催 日
5月10日(土)
7月26日(土)
9月20日(土)
12月13日(土)
会 場 演題受付期間
2月5日
東 京
海運クラブ ∼ 3月5日予定
4月23日
東 京
海運クラブ ∼ 5月21日予定
6月18日
東 京
海運クラブ ∼ 7月16日予定
9月10日
東 京
海運クラブ ∼ 10月8日予定
平成27年
2月予定
未定
未定
演題の申込はインターネットにてお願いいたします。
詳細につきましては「URL:http://www.jsge.or.jp/member/member.html」をご覧ください。
平成26年度 日本消化器病学会関東支部教育講演会開催期日
講演会回数
24
25
当 番 会 長
開 催 日
会 場
申込締切日
國 崎 主 税
東 京
6月22日(日)
6月6日
(金)
(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
シェーンバッハ・サボー
宮 招 久
東 京
11月3日(祝・月)
未 定
(順天堂大学医学部附属練馬病院)
シェーンバッハ・サボー
次回(第329回)例会のお知らせ
期 日:平成26年5月10日(土)
会 場:海運クラブ
〒102-0093 東京都千代田区平河町2 6 4 TEL 03
(3264)1825
【交通のご案内】地下鉄 有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町駅」4,5,9番出口…徒歩2分
銀座線・丸ノ内線「赤坂見附駅」D(弁慶橋)出口……徒歩5分
特別講演:「これからの肝癌診療:成因、病態、治療」
演者:東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教 授 小池 和彦
司会:聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科 教 授 伊東 文生
ランチョンセミナー:「早期胃癌に対する内視鏡治療−ガイドラインに則った管理−」
演者:東京医科大学 消化器内科 准教授 後藤田卓志
司会:聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科 病院教授 安田 宏
当番会長:伊東 文生(聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科 教授)
〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1
TEL 044(977)
8111/FAX 044
(977)8924
E-mail : [email protected]
連絡先:前畑 忠輝(聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科)
◆研修医・専修医セッションについて◆
研修医(例会発表時に卒後2年迄)および専修医(例会発表時に卒後3∼5年迄)セッションを設け,優秀演
題を表彰する予定です。演題申込時,講演形態は【研修医セッション】または【専修医セッション】から選び,
会員番号は,学会未入会の場合は,番号(99)で登録して下さい。なお,応募演題数が多い場合は,規定の受
付期間内で先着順とし,一般演題に変更させていただく場合がございます。また研修医・専修医セッションへ
の応募は,各々1施設(1診療科)
,1演題に制限させていただきます。
お問い合せについて
次回例会については,上記の当番会長の先生へ,その他の事務上のことは,下記関東支部事務局
へお願いいたします。
〒181-8611 東京都三鷹市新川6 20 2
杏林大学医学部外科学教室(消化器・一般外科)
日本消化器病学会関東支部事務局 TEL 0422
(71)5288 FAX 0422(47)5523
E-mail:[email protected]
日本消化器病学会関東支部 支部長 峯 徹哉
― 20 ―
1
食道好酸球浸潤により特異な内視鏡像を呈した好酸
球性胃腸炎の一例
日本医科大学 消化器内科学1) ,
日本医科大学千葉北総病院 消化器内科2)
大森 順1) ,川見典之1) ,岩切勝彦1, 2) ,竹之内菜菜1) ,星野慎太朗1, 2) ,
梅澤まり子1) ,坂本長逸1)
症例は81歳男性。4か月程前よりつかえ感あり、他院で上部消化管内
視鏡検査施行し食道癌が疑われたため精査目的で当科紹介となった。
当科で施行した上部消化管内視鏡検査にて切歯27〜31cmに一部白苔
付着し発赤した粘膜を認め、表面凹凸不整で、6時方向中心に粘膜の平
坦な隆起があり食道内腔の狭小化を認めた。NBI観察ではIPCLの拡
張・蛇行あり、ルゴール染色でまだらに淡染する所見を認めた。食道
造影検査では胸部中部〜胸部下部食道にかけて3cm長の狭窄、口側に
バリウムの貯留を認め、胸部CTにても食道内腔の狭小化を認めたが明
らかな腫瘤像や壁肥厚像はみられなかった。食道癌が疑われたが病理
検査では炎症像のみで悪性を示唆する結果は得られなかった。2週間
後に内視鏡を再検したところ粘膜隆起、食道内腔の狭小化は軽減し、
不整な粘膜像はみられなかった。再検した病理検査でも悪性を示唆す
る所見はなかったが、食道粘膜に20個以上/ HPFの著明な好酸球浸潤を
認 め た。血 液 検 査 で は 好 酸 球 数 が 最 大 で 1126/ μ L ( 17. 6%) 、
IgE2382IU/ mLと上昇を認めた。既往歴に陳旧性心筋梗塞、心房細動
を認めるが気管支喘息などのアレルギー歴はなく好酸球増加をきたす
アレルギー疾患、薬剤アレルギー、寄生虫感染、好酸球増多症候群な
ど否定され胃、十二指腸粘膜にも好酸球浸潤を認めたことから食道病
変を中心とした好酸球性胃腸炎と診断した。つかえ感が強く食道運動
機能の評価で食道内圧検査も施行したが食道蠕動運動の低下を認めた。
治療は食道病変が中心であり、全身状態を考慮し副作用の少ないステ
ロイド食道局所投与を選択した。budesonide吸入薬の内服を400μg×2
回/ 日より開始し、400μg×3回/ 日に増量し症状の改善、血中好酸球数
の低下を認めた。食道好酸球浸潤により特異な内視鏡像を呈した好酸
球性胃腸炎の一例を経験した。好酸球性消化管障害(好酸球性食道炎、
好酸球性胃腸炎)の実態は不明な点が多く、好酸球性消化管障害を理
解するうえで本症例は貴重な症例であると考えるため文献的考察を加
え報告する。
3
北里大学東病院 消化器内科
佐々木哲三,石戸謙治,小泉和三郎,田邊 聡,樋口勝彦,
佐々木徹,堅田親利,東 瑞智,成毛 哲,三枝 信
症例は70歳代女性。自覚症状はなく、近医にて検診目的で上部
消化管内視鏡検査を施行したところ、胃窮窿部大弯に粘膜下腫
瘍様の病変を認め、生検にて非乾酪性肉芽腫を呈していたため、
当院消化器内科に紹介受診となった。上部消化管内視鏡検査を
施行したところ胃窮隆部大弯に約10mmの発赤を伴う立ち上が
りなだらかな粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた。超音波内視
鏡検査( EUS) では第1、2層の壁肥厚のみであった。生検にて乾
酪壊死を伴わない多核巨細胞を有する類上皮細胞性肉芽腫を認
め、サルコイドーシスが疑われた。血清Hp IgG抗体は陰性で、
高γグロブリン血症や血清ACE上昇はなく、ツベルクリン反応
も陰性であった。また胸腹部造影CT検査でも明らかな肺門部
リンパ節腫大や肺病変はなく、Gaシンチも異常集積は認めな
かった。そして神経所見や皮疹、眼病変もないため、全身症状
を有さない胃に限局した病変として、特発性肉芽腫性胃炎と診
断された。現在、明らかな自覚症状はなく、外来で経過観察さ
れている。特発性肉芽腫性胃炎は稀な疾患であるが、粘膜下腫
瘍様の隆起性病変を認めた場合には、鑑別診断の1つとして挙
げる必要がある。
好酸球性胃腸炎,食道好酸球浸潤
2
特発性肉芽腫性胃炎,類上皮細胞性肉芽腫
4
急速な転帰をとった多発肝腫瘤の一例
社会保険中央総合病院 消化器内科1) ,同 病理診断科2)
松野高久1) ,齋藤 聡1) ,岩田裕子1) ,福士剛蔵1) ,葉山惟信1) ,
平山敦大1) ,小野真史1) ,三浦英明1) ,畑田康政1) ,山田春木1) ,
飯原久仁子2)
【症例】69歳 男性。
【主訴】右季肋部痛。
【現病歴】入院1ヶ月前から心窩部から右季肋部痛を認めたため当院内科外来を
受診した。内服薬を処方され一旦帰宅したが、翌日痛みが増強したため救急要
請した。血液検査で炎症反応と肝胆道系酵素上昇を認め、食欲不振もあること
から,精査加療目的で入院となった。
【既往歴】50歳 関節リウマチ。
【生活歴】たばこ 5本/ 日 40年間、飲酒なし、アレルギーなし。
【入院時現症】身長 157cm、体重 48kg ( BMI 19. 4) 。意識清明、体温36. 7℃、脈
拍 98回/ 分 整、血圧154/ 98mmHg。腹部右肋骨弓下に肝5横指触知、圧痛あり。
【入院時腹部造影CT検査所見】肝臓は腫大しており、造影後期相で肝臓に多数
の辺縁不明瞭な低濃度結節を認めた。
【入院後経過】入院後精査で上部消化管内視鏡検査を施行したところ、食道切歯
列30cm4時方向にルゴール淡染の隆起性病変を認めた。生検の結果、小細胞癌
であった。その後肝生検施行予定であったが、入院第8病日に食欲不振と黄疸
が出現、腹痛が増強し、急激な肝不全の進行を認め、血液検査上AST/ ALTの乖
離、LDHとカリウムの急激な上昇を呈し、腫瘍崩壊症候群が疑われた。黄疸の
出現から6日後の、入院第14病日に永眠した。その後病理解剖を施行し、食道原
発の神経内分泌癌と診断された。
【考察】食道神経内分泌癌は稀であり、全食道癌中に占める割合は0. 6%である。
医学中央雑誌で、1983年〜2013年のうち、キーワード「食道」「神経内分泌癌」
で検索すると190例の報告があり、
「肝転移」を追加すると6症例の報告があった。
手術、化学療法、放射線療法を併用し、CRが得られ無再発生存している報告が
2例あったが、その他では再発を認めるなどして死亡の転帰をとっている。食
道神経内分泌癌は粘膜下腫瘍の形態をとって発育するため早期に粘膜下層以深
に腫瘍が浸潤しやすく、扁平上皮癌よりも高率で早期に転移しやすい。5年生
存率は9%、50%生存期間は6ヶ月と予後は極めて不良であるため、早期診断、治
療が重要であると考えた。
粘膜下腫瘍様の形態を呈した特発性肉芽腫性胃炎の
1例
当院健診における便中ピロリ菌検査導入後の初期評
価について
日立製作所日立総合病院 内科1) ,
筑波大学附属病院 日立社会連携教育研究センター2)
竹内千尋1) ,鴨志田敏郎1) ,佐々木翔一1) ,浜野由花子1) ,綿引隆久1) ,
大河原悠1) ,大河原敦1) ,柿木信重1) ,平井信二1) ,岡 裕爾1) ,
谷中昭典2)
【目的】当院の健診はこれまで胃透視による判定を施行している.
2013年2月に慢性胃炎に対するピロリ菌除菌が保険適応となり、
オプション検診として便中ピロリ菌抗原検査を6月より導入し
た.健診データから現在のピロリ菌感染の疫学傾向、並びに諸
背景因子の相関を解析するとともに、その後に当院で加療を希
望された受診者については、内視鏡画像と健診での胃透視画像
の比較とその後のピロリ菌除菌の結果を検討する。【方法】当
院での健診は年間16000人の受診者がいるが, 2013年6月〜10
月にかけての便中ピロリ菌抗原検査を施行した796人を解析対
象とした.ピロリ菌陽性群と陰性群について,年齢、性別、BMI、
生化学検査値,胃透視判定等について比較検討した.また,当
院で内視鏡施行した患者について腫瘍性病変の有無について検
討した.有病変患者については内視鏡治療を施行した.【成績】
796人中328人(41. 2%)に便中ピロリ菌抗原陽性を認め、男性
199名( 60. 7%) ・女性129名( 39. 3%) と男性で多く,また平均年
齢も高齢であった.328人中111例が当院での精査加療を指摘さ
れ,うち3例においては早期胃癌含む腫瘍病変を診断し内視鏡
的粘膜下層切除術を施行された.【結論】ピロリ菌感染患者は
多く,除菌適応が拡大され除菌治療を施行される患者は急激に
増加していると考えられる.今回ピロリ菌陽性と判定された患
者については経年健診で胃透視を施行されていても,内視鏡で
腫瘍性病変を指摘されることからも,除菌時の内視鏡検査の併
用は妥当であり注意深い観察が必要であると考えられた。
食道神経内分泌癌,肝転移
― 22 ―
便中ピロリ菌,健診
5
7
消化管閉塞を来した十二指腸水平部進行癌の1例
東京女子医科大学 消化器内科1) ,同 消化器外科2)
久礼里江1) ,岸野真衣子1) ,貝瀬智子1) ,長尾健太1) ,田原純子1) ,
小木曽智美1) ,谷口清章2) ,山田卓司2) ,笹川 剛2) ,山本雅一2) ,
中村真一1) ,橋本悦子1) ,白鳥敬子1)
62歳、女性。20日前から上腹部痛と嘔吐が出現した。近医から
の内服薬による治療では改善せず、徐々に症状が増悪したため
当院総合診療科を受診した。腹部X線検査では明らかなイレウ
ス所見は認めなかった。外来で施行した上部消化管内視鏡検査
で十二指腸下行部まで観察したが、逆流性食道炎を認めるのみ
であった。酸分泌抑制薬と胃粘膜保護剤の内服で嘔吐はやや改
善したが食餌量は減少し倦怠感が増強、血液データ上、腎障害
も認めた。腹部単純CTで胃と十二指腸下行部の拡張を認め、
BMI16. 6kg/ cm2の痩せ型であったことからSMA症候群が疑わ
れ当科に紹介となった。当科に入院後の検査で腎障害は脱水に
よる腎前性障害と診断し補液を行った。胃拡張に対しては経鼻
胃管を挿入し排液を行った。腹部造影CTではSMA症候群は否
定的で、十二指腸水平部に腫瘤性病変を認めた。十二指腸造影
検査を行ったところ十二指腸水平部の閉塞、閉塞部より口側の
腸管の拡張を確認した。内視鏡検査を施行したところ十二指腸
水平部より肛門側に発赤した腫瘤性病変と病変による狭窄を認
めた。生検によりAdenocarcinomaが疑われた。消化器外科に転
科 し 十 二 指 腸 切 除 術 を 施 行 し た。病 理 組 織 学 的 検 査 で
Advanced cancer of the duodenum: 24x22mm, type 2, well
differentiated adenocarcinoma , depth: SS, int, INFb, ly2, v0, pPM
( -) , pDM( -) , pRM( -) であった。現在、補助化学療法を継続し
ている。十二指腸水平部、上行部は通常の上部消化管内視鏡検
査では観察されにくい場所であり、従って同部位の悪性病変は
スクリーニング検査で見つかることがきわめて少ない。今回、
来院時に施行した内視鏡所見を見直すと、十二指腸下行部に腸
管拡張を認めており、その肛門側に閉塞性の病変の存在を迅速
に疑うべきであったと考える。
戸田中央総合病院 消化器内科
竹内啓人,羽山弥毅,青木勇樹,山本健治郎,吉益 悠,永谷菜穂,
竹内眞美,田中麗奈,山田昌彦,堀部俊哉,原田容治
【症例】45歳男性【主訴】黒色便【既往歴】特になし【現病歴】
2013年11月上旬に黒色便が出現した。当科受診し、上部消化管
出血の疑いで緊急入院となった。【経過】上部消化管内視鏡では、
十二指腸球部前壁に径約25mm大の有茎性ポリープを認めた。
茎部に潰瘍形成し、露出血管より湧出性出血( Forrest分類Ib) を
認めた。後にEMRの可能性を考慮しクリップでの止血はせず、
バイポーラ止血鉗子にて凝固止血を施行した。ポリープの生検
結果はBrunner’s gland hyperplasiaであった。内視鏡下ポリープ
切除術が可能と判断し、EMRにて切除した。
【まとめ】Brunner
腺過形成は比較的頻度の高い疾患であるが、サイズが大きくな
ると出血等の合併症のリスクが増すため治療の対象となる。今
回消化管出血で見つかったBrunner腺過形成を内視鏡的切除し
た1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
十二指腸水平部,進行癌
6
十二指腸潰瘍にアニサキス症を合併し、球部狭窄を
来たし胃石を合併した1例
君津中央病院
今井雄史,亀崎秀宏,大和睦実,稲垣千晶,矢挽眞士,妹尾純一,
藤本竜也,山田博之,大部誠道,藤森基次,吉田 有,駒 嘉宏,
畦元亮作,鈴木紀彰,福山悦男
【症例】55歳、男性【主訴】心窩部痛、嘔吐【既往歴】十二指腸
潰瘍【現病歴】1週間前より心窩部不快感を認めていた。今回、
イカ・マグロの刺身を摂取した翌日に、心窩部痛とコーヒー残
渣様の嘔吐を繰り返したため当院受診となった。上部消化管内
視鏡検査を施行したところ、胃内には食物残渣を大量に認めた。
十二指腸球部は浮腫により幽門から胃内へと突出し、潰瘍を
伴っていた。さらに潰瘍底にはアニサキス虫体を認め、鉗子に
て摘出した。経過より、十二指腸潰瘍にアニサキス症を合併し、
球部狭窄を来たしたものと考えられた。2日後に内視鏡検査を
再検したところ、胃内には食物残渣が残存し、また、3mm程度
の胃石も数個認められた。十二指腸球部の腫脹は改善傾向では
あった。1週間後に内視鏡検査を再検したところ、通過障害は
著明に改善し、胃石も消失していた。その後、経過良好のため
退院となった。【考察】胃石は糖尿病・消化性潰瘍・幽門側胃切
除術後などの胃蠕動不良の原因となる基礎疾患や、胃癌・幽門
狭窄などの通過障害の原因となる基礎疾患を背景に発生すると
言われている。本症例は、十二指腸アニサキス症に球部狭窄を
合併し胃石を形成したものと推測された。胃石の発生過程を考
える上で示唆に富む症例と考え報告する。
消化管出血で発症し内視鏡的切除しえたBrunner腺
過形成の1例
Brunner腺過形成,十二指腸ポリープ
8
上腹部症状を契機に発見された胃石の一症例
獨協医科大学越谷病院 消化器内科
草野祐実,片山裕視,須田季晋,豊田紘二,北濱彰博,関山達彦,
寺内厳織,玉野正也
患者は76歳女性。平成25年3月、胃部不快感を主訴に近医受診
し上部消化管内視鏡検査を施行された。胃内に胃石の存在をを
疑われ当科に紹介された。再検査の上部消化管内視鏡検査では、
胃体下部から前庭部にかけて5cmを超える黒色調の結石を認め
た。深部への内視鏡挿入はスムースであった。鉗子で押すと結
石は可動性はあるもののサイズが大きく非常に硬いため、内視
鏡的な処置は困難であった。把持鉗子で一部破砕し検体を成分
分析検査に提出したところ、結石の成分は98%がタンニンであ
り、自宅で採取できる柿の摂食が原因と思われた。CTでは胃
石の描出は困難であったが、胃透視にて前庭部から体下部にか
けて5×3cm大の透亮像を認めたが造影剤の流出障害は認めな
かった。治療にコーラが有効であるという報告が散見される為、
患者に摂取を推奨して経過観察を行った。その時点で、胃部不
快感・通過障害などの症状は認めなかった。途中H. pyloriを除
菌し成功した。5月・10月に経過観察のための上部消化管内視
鏡検査を行ったところ、胃石の大きさは若干縮小しているよう
に思われた。現在も外来にて経過観察を行っているが体重増
加・耐糖能障害・高脂血症などの合併症は認めていない。胃石
の治療に対してはコーラ溶解療法・内視鏡的治療・手術などが
挙げられるが、若干の文献的考察を含めて報告する。
アニサキス,胃石
― 23 ―
胃石,タンニン
9
11
術前診断に難渋した小腸GISTの一例
順天堂大学附属順天堂医院 消化器内科1) ,
同 人体病理学講座2)
芳賀慶一1) ,浅岡大介1) ,澁谷智義1) ,村上 敬1) ,長田太郎1) ,
野村 収1) ,八尾隆史2) ,渡辺純夫1)
【症例】65歳、男性【既往歴】虫垂炎術後、高血圧症、前立腺肥
大症【経過】生来健康の方。他院で前立腺肥大を指摘され、腹
部CT及び腹部MRI検査施行したところ骨盤内に腫瘤性病変を
認めたため当科紹介受診となった。腹部造影CT及びMRI検査
では直腸膀胱窩に45mm大の小腸に接する腫瘤性病変を認め、
腫瘍内部は大半が血腫性部分から成っており一部充実領域を
伴っていた。腹部3DCT及び血管造影検査を施行したところ上
腸間膜動脈の分岐枝である空腸動脈と連続しており、豊富な血
管構造を呈していた。経肛門ダブルバルーン内視鏡を施行した
が、可視範囲内に有意な所見は認めなかった。以上の所見より
動静脈奇形が原因で慢性に経過した血腫が疑われ、腹腔鏡下小
腸部分切除術を行った。腫瘍は暗赤色・軟で、漿膜面に突出す
るように認め、内部に一部充実成分を伴っているが、大部分は
嚢胞状で凝血塊が貯留していた。腫瘍は粘膜下で固有筋層と連
続しており、腸管粘膜面には異常所見は認めなかった。免疫染
色ではc-kit( +) , CD34( +) , S-100( -) , SMA( -) , MIB-1 index<
5%であり、最終病理診断は小腸より発生した管外発育型のlow
riskのGastrointestinal stromal tumorであった。術後経過は良好で
あり、術後7日で退院となった。low-riskであったため現在外来
で経過観察となっている。【考察】小腸管外発育型GISTは無症
状であった場合術前に診断されることは稀であり、腫瘤形成の
場合には卵巣腫瘍や血腫との鑑別が重要である。本症例は低悪
性であり、腫瘍の広範な壊死性変化よりは、腫瘍内血管の一部
破綻による血腫形成が考えられた。無症状の骨盤内腫瘤の症例
では小腸GISTも念頭に置く必要がある。
群馬大学医学部 臓器病態外科学講座
生方泰成,高橋憲史,須納瀬豊,吉成大介,小川博臣,塚越浩志,
平井圭太郎,山崎穂高,高橋研吾,五十嵐隆通,稲川万里江,
竹吉 泉
今回我々は切除不能と診断されたS状結腸癌・多発肝転移に対し
Cetuximab+FOLFIRI療法を施行し著明な縮小により、切除可能となっ
た2症例を経験したため、報告する。症例1は47歳男性。平成24年11月
に前医でS状結腸癌・多発肝転移と診断された。CFではS状結腸に深達
度MP、最大径約1. 5cmの5型腫瘍を認め、CTでは肝両葉にまたがる最
大径約28cmの巨大な腫瘍を認めた。切除不能と診断され、12月より
Cetuximab+FOLFIRI療法が開始された。6コース終了時点で化学療法
が著効していたため手術目的に当院当科紹介となった。CFでは原発
腫瘍は壁肥厚を伴う瘢痕を残すのみ、CTでは肝腫瘍の最大径は15cm
まで縮小して、正常肝が代償性に肥大していた。切除可能と診断して
平成25年5月腹腔鏡下にS状結腸切除+拡大肝左葉切除を施行した。手
術はS状結腸切除を先行して、後に肝切除を行った。症例2は78歳男性。
平成23年2月、腹部膨満のため近医を受診した。精査の結果、S状結腸
癌イレウス+多発肝転移と診断された。CTではS状結腸癌は周囲のリ
ンパ節腫脹を伴い、壁肥厚が著明で口側腸管が拡張していた。また、
肝転移は左葉・尾状葉から前区域にまたがる広汎な腫瘍で、門脈が腫
瘍に接するほか、肝静脈が完全に巻き込まれて切除不能と考えられた。
イレウス解除を目的に同年3月にS結腸切除を施行した。術後は、肝転
移に対する治療として、Cetuximab+FOLFIRI療法を施行した。6コース
終了時点で腫瘍は著明に縮小していた。平成24年1月まで、合計15コー
スの治療を行った。総合効果判定はPRで、当初は左葉から前区域にお
よび、下大静脈と肝静脈を巻き込んでいた腫瘍が、尾状葉を中心に小
範囲を占拠するのみで、縮小率は80%以上と考えられた。主要脈管の
温存が可能と考え、平成24年1月に肝左葉・尾状葉切除を施行した。大
腸癌における化学療法は分子標的薬の開発により目覚ましい進歩がみ
ら れ、診 断 時 に 切 除 不 能 と 判 断 さ れ た 症 例 に お い て も conversion
therapyが可能となることも少なくない。
S状結腸癌肝転移,化学療法
小腸GIST,骨盤内腫瘤
10
日本住血吸虫症に合併した同時多発性大腸腺腫症の
一例
横浜船員保険病院
河合恵美,天野仁至,石井泰明,井出野奈緒美,塩沢牧子,
内藤 実
症例は74歳男性。平成25年3月四肢の疼痛、掻痒、表皮剥離が出
現し近医を受診した。6月症状が継続するため当院皮膚科を紹
介受診され掌蹠角化症と診断された。その後、SCC軽度高値 ( 2.
9 ng/ ml) 、便潜血陽性であり当科に紹介受診となった。精査の
結果、下部消化管内視鏡検査で横行結腸にIs型ポリープがあり、
S状結腸に5-20mm大のLST様な大腸ポリープを多数認めた。S
状結腸のポリープは粘膜が浮腫状で不整形、黄色調であった。
これらの大腸ポリープに対して内視鏡的粘膜切除術を施行した。
病理診断でTubular adenomaであり、S状結腸のポリープのみ間
質内に多数の住血吸虫卵を認めた。14歳時に山梨県甲府市に在
住していたことがあり、また日本住血吸虫症の治療歴があるた
め日本住血吸虫卵と考えられた。便虫卵検査で虫卵を認めず、
採血や腹部超音波検査でも明らかな住血吸虫症を示唆する所見
を認めなかったため日本住血吸虫症に対する治療は行わなかっ
た。日本住血吸虫症に合併した大腸ポリープでは粘膜の浮腫や
萎縮、血管透見像の異常、血管拡張性赤色斑、不整形黄色斑な
どの肉眼的特徴がある。中でも不整形の黄色斑は他の所見より
も住血吸虫卵が多いと報告されている。また、S状結腸や直腸
のような下部大腸の粘膜下層に虫卵が多く存在することも特徴
であり、本症例と一致した所見である。日本住血吸虫症と大腸
癌の関連を示唆する報告はあるが、日本住血吸虫症に合併した
大腸腺腫症の症例報告はまれである。本邦では中間宿主である
ミヤイリガイが駆除されたことにより1977年に山梨県で虫卵排
泄者が見られたのを最後に新規の日本住血吸虫症の発症はない
が、高齢者の中には既往のある患者がいるため、本症例のよう
な不整形で扁平な黄色調のポリープを認めた場合は日本住血吸
虫症を考慮する必要があると考えられた。
化学療法が著効し、切除可能となったS状結腸癌+肝
転移の2症例
12
特異な形態変化を認めた炎症性偽腫瘍の一例
済生会前橋病院 消化器内科1) ,
同 外科・腹腔鏡外科センター2) ,
群馬大学医学部附属病院 病態制御内科学3)
山崎節生1) ,大山達也1) ,加藤恵理子1) ,椎名啓介1) ,平野裕子1) ,
田中良樹1) ,蜂巣陽子1) ,矢田 豊1) ,吉永輝夫1) ,山田正信3) ,
藍原龍介2) ,細内康男2)
【はじめに】今回, 我々は特異な形態変化を認めた炎症性偽腫
瘍の一例を経験したので, 報告する. 【症例】65歳男性. 2013年
7月下旬より右背部の疼痛を自覚していた. 自己判断で湿布塗
布にて経過をみていたが改善せず, 同部位の腫瘤に気づいたた
め, 10月に当院整形外科を受診した. 初診時, 右腰背部に圧痛
を伴う径4cm大の腫瘤を認めた. 腹部造影CTでは, 肝後区域〜
後腹膜に不整形の6×4cm大の腫瘤性病変を認め, 一部は肝実
質への浸潤が疑われた. 血液検査では炎症反応の軽度上昇を認
めるものの, 肝胆道系酵素は基準値内であり, 肝炎ウイルス
マーカーや腫瘍マーカーは陰性であった. 経皮経肝針生検を試
みるも診断確定には至らなかった. その後も腫瘤は増大傾向を
認め, 熱感や疼痛も出現したため, 再度腹部造影CTを撮影した
ところ, 病変の主座は腹壁へ移動し, 一部膿瘍を形成している
ことから, 腫瘍よりも慢性炎症性変化が疑われた. さらなる精
査目的に小切開下に外科的組織生検を行った. 病理検査では明
らかな腫瘍細胞は認めず, 組織球や好中球の浸潤が主体である
ことから, 後腹膜の炎症性偽腫瘍と診断した. 細菌感染の可能
性を考慮し, 抗生剤内服を開始し, 現在も経過観察中である.
【考察】特異な形態変化を認めた炎症性偽腫瘍の一例を経験し
た. 周囲に浸潤増殖する病変であることから悪性腫瘍との鑑別
が必要だったが, 複数回の生検と継時的変化を追うことで診断
を得ることができた. 炎症性偽腫瘍の確定診断はしばしば困難
であり, 後腹膜腫瘤の鑑別診断としても重要である. 本症例の
その後の経過, および文献的考察を加えて報告する.
日本住血吸虫症,大腸腺腫
― 24 ―
炎症性偽腫瘍,後腹膜腫瘤
13
15
胆嚢との交通を有した感染性肝嚢胞の一例
千葉市立海浜病院 消化器内科1) ,同 外科2)
南金山理乃1) ,齋藤博文1) ,薄井正俊1) ,太和田勝之1) ,野本裕正1) ,
北 和彦1) ,芦澤陽介2) ,吉岡 茂2)
【症例】71歳男性【現病歴】平成25年5月頃より右側腹部痛・全
身倦怠感を自覚し近医受診し、高度の炎症を認め腹部感染症の
疑いで精査加療目的のため当院外科に紹介となった。CTで感
染性肝嚢胞が疑われ同日入院した。SBT/ CPZにて加療するも
CDTR内服に変更したところ炎症再燃したため、肝嚢胞ドレ
ナージ目的で当科転科となった。
【経過】外科入院時のCTで感
染性肝嚢胞と胆嚢底部との間に交通が疑われた。経皮的肝嚢胞
ドレナージ術直後のCTでは肝嚢胞から胆嚢内への造影剤の流
入が確認され、肝嚢胞と胆嚢との交通が証明された。術後CMZ
投与を行い、排液量は徐々に減少し、DIC-CTにて交通が消失し
たことを確認し、術後12日目にドレーン抜去した。以後抗生剤
LVFX内服に変更したが、炎症増悪なく経過、術後19日目に退
院となった。後日、外科的胆嚢摘出術を行った。【考察】本症例
は、胆嚢炎からの炎症波及で肝嚢胞に穿通したのか、あるいは
感染性肝嚢胞から胆嚢に穿通したのかという2説が考えられた
が、摘出後の胆嚢病理結果は、高度の炎症細胞浸潤・黄色肉芽
腫様変化を認めるものであり、また2年前のCTでも肝嚢胞と接
する胆嚢内に結石の存在を疑わせる所見があり、病理や画像所
見からも以前より慢性胆嚢炎があったことが示唆された。その
結果、慢性的な胆嚢炎症が波及した結果、薄い壁をもつ肝嚢胞
へ穿通し感染性肝嚢胞を来たしたと考えるのが妥当と思われた。
【結語】慢性胆嚢炎の穿通により感染を来たした肝嚢胞の一例
を経験したので、多少の文献を含めて報告する。
船橋市立医療センター
明杖直樹,水本英明,今関
小林照宗,安藤 健
若年B型慢性肝炎症例に対するPEG-IFN治療の検討
がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科
遠藤佑香,今村 潤,木村公則,佐伯俊一,林
星舟
【背景】HBV持続陽性患者における抗ウイルス療法の長期目標
はHBs抗原の陰性化であり、その治療方針は年齢、挙児希望の
有無、血清ALT値、血中HBVDNA量、HBe抗原、genotype、感染
経路、肝組織所見などを総合的に評価して決定されている。特
に挙児希望のある若年のHBe抗原陽性B型慢性性肝炎患者に対
してはIFN治療が第一選択となっている。今回、当院で経験し
た若年B型慢性肝炎に対するPEG-IFN治療の治療経過とその効
果について検討した。【対象・方法】対象はPeg-IFNα2a投与を
行った若年B型慢性肝炎症例5例。男性2人、女性3人、年齢は24
歳〜37才、全例genotype C。治療前のHBV DNAは平均6. 8 log
copy/ ml( 3. 1/ 5. 1/ 8. 1/ 8. 8/ 8. 9) 。5例中2例に過去のIFN治療
歴を認めた。1例はエンテカビル短期投与後に4週の重複期間を
経てPeg-IFNα2a治療にスイッチ、1例はIFNα長期投与より
Peg-IFNα2a治療へのスイッチ、3例はPeg-IFNα2a単独初回治
療であった。Peg-IFNα2aの治療期間は44週〜48週が4人、38週
(治療継続中)が1人。治療によるHBV DNA、HBs抗原・抗体、
HBe抗原・抗体および肝機能の推移について検討した。【結果】
1)HBV DNAはPEG-IFNα2a治療開始後に全例で低下し、3例で
検出感度以下となった。HBe抗体は5例中3例が治療開始時に陽
性であり、陰性であった2例では治療期間中にHBe抗体の陽性
化を認めた。AST/ ALTは全例で治療期間中に正常域内となり、
治療終了後の4例は現時点(終了後観察期間4−10カ月)で正常
域内に止まっている。HBs抗体が出現した症例はいなかった。
【結語】若年B型慢性肝炎に対するPEG-IFNα2a治療は症例に
よっては治療期間中のHBV DNAの低下、HBe抗体の陽性化、肝
機能障害の改善、投与終了後の一定期間の治療効果持続をもた
らしうる。
洋,高城いぶき,東郷聖子,関
厚佳,
【はじめに】 肝寄生虫症は比較的まれな疾患であり診断に苦
慮する症例も多い。今回は画像所見で肝細胞癌との鑑別が困難
であった肝寄生虫症の1例を経験したので報告する。【症例】60
歳男性。【現病歴】C型慢性肝炎のため外来通院中であった。定
期検査の腹部超音波検査で肝に低エコー病変を指摘された。
CT検査では単純で低吸収域、造影の動脈相で部分的な造影効
果をみとめ、門脈相では一部低吸収であり、平衡相で再度淡く
造影効果をみとめた。造影超音波検査ではvascular imagingで一
部に軽度の造影効果をみとめたが、その後は病変の一部が低エ
コーを示した。MRI検査では、T1 in-phase、opposed-phaseでは
淡い低信号域、T2強調像では高信号域となり、拡散強調画像で
は高信号域となった。EOBの動脈相では軽度の造影効果がみと
められ、肝細胞相では病変全体が低信号域となった。病状の経
過と画像所見からは肝細胞癌の可能性を否定できず、本人と相
談のうえ手術をおこなった。病理組織は幼虫移行症が原因と考
えられる好酸球性肉芽腫という結果であった。手術後の血液検
査では好酸球数は正常であったがIgEの著明な高値をみとめ、
各種寄生虫に対する抗体検査ではブタ回虫がクラス2弱陽性で
あった。後に患者は牛の生レバーを食する習慣を有していたこ
とが確認された。【考察】国内では地鶏や牛レバーの生食によ
るブタ回虫感染の成人症例が増加しているとされている。また、
ヒト回虫とブタ回虫は形態的には鑑別不可能で、肉眼的にヒト
回虫と同定されていた症例のうち一定の比率でブタ回虫症が生
じていると考えられている。内臓幼虫移行症による肝病変は肝
細胞癌と類似の画像を呈する場合があり、診断の際には注意が
必要であると考える。
感染性肝嚢胞,胆嚢穿通
14
肝寄生虫症の1例
肝寄生虫症,肝細胞癌
16
肝硬変による難治性腹水に対するトルバプタンの検
討
虎の門病院 肝臓センター
秋山慎太郎,池田健次,瀬崎ひとみ,宗林裕史,福島泰斗,
川村祐介,小林正宏,斉藤 聡,保坂哲也,芥田憲夫,鈴木文孝,
鈴木義之,荒瀬康司,熊田博光
【目的】肝硬変による体液貯留に対して、バゾプレシンV2 受容体阻害
薬であるトルバプタンが使用可能となった。そこで、当施設でのトル
バプタンを使用した肝硬変による難治性腹水の症例について治療成績、
有害事象を検討した。【対象・方法】対象は2013年9月から現在までに
トルバプタンを導入した肝硬変による難治性腹水12例とした。症例は、
男性7人、女性5人、年齢は56-79歳、原疾患は、C型7例、アルコール性
4例、NASH1例であた。Child Pugh分類は、Bが6症例、Cが6症例であっ
た。既存の利尿薬に抵抗性を示す難治性腹水症例に対してトルバプタ
ン1日量3. 75mgから開始した。体重推移に応じて7. 5mgまで増量した。
導入後7日間の体重、電解質異常( 特に高Na血症) 、腎機能、尿量の変化
を追跡した。4日間で3kg以上体重が減少した群を著効、著効基準を満
たさず7日間で体重が減少した症例を有効、7日間で体重が増加した症
例を無効と定義した。【成績】( 1) 著効は4例、有効は6例、無効は2例で
あった。無効例2例ともに特発性細菌性腹膜炎( SBP) を認めた。著効
例、有効例では体重が1日あたり平均0. 41kg減少した。無効例では、1
日あたり平均0. 25kg増加した。( 2) 有害事象として電解質異常につい
て評価した。血清Na推移については、投与前12症例の平均が136.
6mmol/ l ( n=12) であり、投与7日目137. 6mmol/ l( n=7) で、高Na血症を
呈した症例はなかった。( 3) 腎機能について評価した。平均血清クレ
アチニン濃度については、投与前1. 24mg/ dl ( n=12) であり、投与7日目
1. 28mg/ dl ( n=6) であった。腎機能障害を呈した症例はなかった。平
均尿量は、投与前1448ml/ 日( n=10) 、投与2日目2133ml/ 日( n=9) が最大
尿量であり、投与7日目1202ml/ 日( n=7) が最少尿量であった。【結論】
トルバプタンは、既存の利尿薬を使用している肝硬変による難治性腹
水検討症例のうち83. 3%に体重減少効果を認めた。高Na血症や腎不全
が進行した症例はなく、比較的安全に使用できる薬剤であると考える。
しかし、SBPのような感染症がある場合、不応であることが分かった。
B型慢性肝炎,PEG-IFN
― 25 ―
トルバプタン,難治性腹水
17
左心膜横隔静脈が主流出路の胃静脈瘤に対してバル
ン下逆行性経静脈的塞栓術( BRTO) が奏功した1例
東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器・肝臓内科
石本詩子,山田真里江,關 伸嘉,宮崎民浩,杉田知典,会田雄太,
板垣宗徳,石黒晴哉,安部 宏,須藤 訓,相澤良夫
【症例】81歳男性【主訴】胃静脈瘤治療目的【既往歴】25歳肺結核, 78歳
甲状腺機能低下症【現病歴】1995年よりHCV陽性のため他院にて経過
観察中であった. 2005年にHCCを認めPEIT施行. 2009年5月, HCC再発
のため加療目的で当科紹介. TACE+RFA施行し, その後インターフェ
ロン治療を行うもうつ症状にて中止. その後3度のTACEを行う一方で,
2013年6月の上部消化管内視鏡検査( GIF) で食道静脈瘤( Lm, F3, Cb,
RC2) , 胃静脈瘤( Lg-cf, F3, Cw, RC0) 認め, Intra EIS+EVL施行するも十
分な効果は得られなかった. 造影CTでは, 胃静脈瘤は左胃静脈, 後胃静
脈への逆流を主体とする側副血行路により形成され, 流出血行路は左
心膜横隔静脈が主体であることが確認できた. 小さなviable HCCは散
見されるが, 消化管出血の可能性を考え, 胃静脈瘤に対するBRTO目的
で入院となった. 【身体所見】血圧139/ 64 mmHg, 脈拍82回/ 分, 体温 36.
2度, 貧血・黄疸なし, 胸腹部異常なし, 下腿浮腫なし【検査所見】WBC
4600/ μl, Hb 12. 4g/ dL, Plt 6. 4×104 / μL, PT 72%, AST 33 IU/ l, ALT
15 IU/ l, T-Bil 1. 3mg/ dl, Alb 2. 9g/ dL, UN 17mg/ dL, Cr 0. 80mg/ dL,
AFP 29ng/ mL, PIVKA-II 651mAU/ mlと肝予備能はChild-Pugh B, 腫瘍
マーカーの上昇を認めた.【経過】左内頚静脈からのアプローチで左心
膜横隔静脈に挿入し, バルン下逆行性経静脈造影( BRTV) 施行したが,
Down gradingは困難であった. 下横隔膜動脈の側副血行路をマイクロ
コイルにて塞栓し, その他細かい側副血行路を閉塞するため, グルコー
ス注入したところBRTVにて胃静脈瘤の大部分が描出されたため
Ethanolamine Oleateを注入し, 停滞を確認し, 終了となった. BRTO施行
6日目の造影CTにて胃静脈瘤および心膜横隔静脈の血栓化を確認し, 7
日目, 35日目のGIFでは, 胃静脈瘤のブロンズ調の色調変化と縮小を認
めた. 治療後は, 腹水軽度増悪認める以外大きな合併症なく経過し, 退
院となった. 【考察】BRTOは孤立性胃静脈瘤に対して有用な治療であ
るが, 本症例のような左心膜横隔静脈が主流出路の胃静脈瘤に対して
BRTOを施行した報告は稀であり, 文献的考察を加え報告する.
19
前橋赤十字病院 消化器内科1) ,同 病理部2) ,
伊勢崎市民病院 内科3) ,
高崎総合医療センター 消化器内科4)
須賀孝慶1) ,新井弘隆1) ,松井綾子1) ,長坂昌子1) ,上野敬史1) ,
関口雅則1) ,佐藤洋子1) ,大塚 修1) ,戸島洋貴1) ,飯塚賢一1) ,
豊田満夫1) ,高山 尚1) ,阿部毅彦1) ,伊藤秀明2) ,滝澤大地3) ,
高木 均4)
【症例】53歳、男性。
【主訴】健診による食道静脈瘤指摘。【現病
歴】人 間 ド ッ グ の 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 で 食 道 静 脈 瘤
(LmF2CbRC1)を指摘され、精査加療目的に当院消化器内科紹
介となった。入院のうえ内視鏡的食道静脈瘤硬化療法を施行し
た。門脈圧亢進症の原因としては肝硬変が背景にあると疑われ
たが、飲酒歴なく各種ウイルス感染および自己免疫抗体も陰性
であった。過去に二度、胆管炎による発熱のため当院受診歴あ
り、その際に施行したMRCPで肝臓内に微小なT2WI高信号域を
多数認め、biliary microhamartoma(胆管性微小過誤腫)の可能性
が指摘されていた。門脈圧亢進症の原因精査目的に肝生検を施
行 し た と こ ろ、門 脈 域 の 線 維 化 と 胆 管 増 生 所 見 が 見 ら れ、
biliary microhamartomaとして矛盾しないと考えられた。しかし
生検組織内のすべての門脈域に同様の変化を認めた点において
典型的ではなかった。【考察】biliary microhamartomaは胎生期に
おけるductal plateの発生異常に起因する肝・胆道系の嚢胞性病
変の一種であり、通常は無症状で経過するため剖検時に偶然発
見されることが多い。一方で多発性biliary microhamartomaでは
癌化の報告もされている。本症例では肝生検組織内すべてに門
脈域の線維化と胆管増生所見を伴っていたことから、多発性
biliary microhamartomaとして胆管炎や門脈圧亢進症状が引き起
こされた可能性が考えられた。
biliary microhamartoma,門脈圧亢進症
BRTO,胃静脈瘤
18
サプリメント(金時しょうが®)による薬物性肝障害
の1例
群馬大学大学院 病態制御内科1) ,同 保健学研究科2)
鈴木悠平1) ,山崎勇一1) ,橋爪洋明1) ,堀口昇男1) ,佐藤
柿崎 暁1) ,草野元康1) ,山田正信1) ,長嶺竹明2)
賢1) ,
【症例】70歳女性【主訴】黄疸、褐色尿【現病歴】1997年より洞
性頻脈にて前医通院中であった。2013年4月から末梢の冷感、
痺れに対してサプリメント(金時しょうが®)の内服を開始した。
6月初旬上腹部違和感、食欲低下、褐色尿出現したため、金時しょ
うが®の内服を中止したが倦怠感強く、中止10日後皮膚黄染を
自覚した。中止12日後前医受診し、肝胆道系酵素の上昇を認め
たため当科紹介、精査加療目的に当科入院となった。【入院時
現症】体温36. 8℃、血圧158/ 88mmHg、皮膚、眼球結膜に黄染あ
り、肝脾触知せず。【入院時検査成績】T-Bil:10. 8mg/ dl,AST:
2219U/ L,ALT:2052U/ L,LDH:586U/ L,γ-GTP:331U/ L,ALP:
784U/ L,PT:60%.【入院後経過】腹部CT、MRIで閉塞性黄疸は
否定された。ウィルス性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性
肝硬変などを除外した。金時しょうが®の薬剤リンパ球刺激試
験を提出し陽性であった。DDW2004の薬物性肝障害のスコア
リングにて肝細胞障害型9点より金時しょうが®による薬物性肝
障害と診断した。入院後よりグリチルリチン製剤、ウルソデオ
キシコール酸による治療を行った。AST、ALTは入院時をピー
クに、黄疸は第9病日、T-Bil 14. 6mg/ dlをピークに徐々に改善
した。第23病日、施行した肝生検では、肝細胞傷害と胆汁うっ
滞の混合型の急性肝炎に相当する組織像を呈し、好酸球を含む
多彩な細胞浸潤を認め、薬物性肝障害に矛盾しない所見であっ
【考察】薬物
た。第28病日、肝障害、黄疸改善し退院となった。
性肝障害の原因としては近年サプリメントによる肝障害の報告
が増加しており、原因不明の肝障害を診断する際には、鑑別診
断として健康食品やサプリメントによる肝障害も念頭に置く必
要がある。過去に1例のみ症例報告があるため稀であるが、金
時しょうが®が原因薬物と考えられた薬物性肝障害の1例を報告
する。
biliary microhamartomaの一例
20
Fibropolycystic diseaseに合併した胆管癌の1例
東京女子医科大学病院 消化器内科1) ,同 消化器外科2)
神林玄隆1) ,徳重克年1) ,貝瀬智子1) ,大森鉄平1) ,岸野真衣子1) ,
橋本悦子1) ,白鳥敬子1) ,樋口亮太2) ,山本雅一2)
Fibropolycystic diseaseとは、カロリー病・先天性肝線維症・胆管
過誤腫などの一連の肝胆道系の線維性多嚢胞性疾患の総称であ
る。今回、fibropolycystic diseaseの経過中に胆管癌を合併した症
例を経験したので報告する。【症例】61歳、男性【既往歴】外傷
性てんかん、虫垂炎手術後、高血圧、高尿酸血症【主訴】心窩
部不快感【現病歴】2012年4月頃より心窩部圧迫感が出現し、近
医受診。腹部エコーにて肝全体に小嚢胞および胆嚢内にdebris
を認めた。その後月に3-4回程度食後に出現する心窩部-右上腹
部痛を認めたため、精査目的に当科紹介となった。初診時、胆
嚢炎や胆管炎所見を認めないもののMRIで肝両葉にびまん性に
数mmから最大15mmまでの胆管の近傍に多発性嚢胞を認め、
fibropolycystic disease( 胆管過誤腫) が疑われた。精査のため12
月に腹腔鏡下肝生検施行し、fibropolycystic diseaseと診断した。
その後は外来で経過観察の方針となり症状も軽快していたが、
約10カ月後に再度心窩部不快感が出現。肝胆道系酵素および炎
症反応の上昇を認め、精査加療目的に第2回入院となった。【経
過】入院後、胆管炎の可能性を考慮して絶食補液管理とし、抗
菌薬投与を開始した。腹部造影CTにて肝内胆管の拡張、肝門
部胆管に結節影、壁肥厚を認め、総胆管は圧排され胆管腫瘍が
疑われた。造影MRI、MRCPでも同様の所見を認め、さらに
ERCPを施行し、胆管狭窄部より擦過細胞で、hyperchromatic
atypical cellを認め、胆管癌と診断した。画像上明らかな転移所
見なく、外科的切除となった。
【考察】Fibropolycystic diseaseは
稀に胆管癌を合併するとの報告もあるが、今回経過観察中に心
窩部の違和感から発見され外科的に切除可能な胆管癌の1例を
経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
薬物性肝障害,サプリメント
― 26 ―
胆管癌,胆管過誤腫
21
ERCP困難症例に対しRendezvous法による胆管アプ
ローチが有効であった3例
佐野厚生総合病院 内科
上岡直史,佐伯恵太,小林真介,片山
東澤俊彦,岡村幸重
正,白石貴久,寺元
研,
【目的】ERCPによる胆管アプローチ困難症例に対しWire-guided cannulation
法や膵管guidewire pre-insertion法、プレカットなど様々な方法が試みられ
ている。その一つとして経皮胆管ドレナージ( PTBD) を介したRendezvous
法による胆管アプローチが知られているが、その侵襲性の高さからあまり
普及していない。今回、当院におけるRendezvous法による胆管アプローチ
を施行した症例を解析し、その有用性につき検討した。
【方法】当院における2013年4月1日から9月1日までに施行したERCP 108例
を後方視的に解析した。
【成績】ERCP 108例中困難例は15症例存在し、Rendezvous法を用いた症例
は3例であった。その全例が胆道・膵臓悪性腫瘍による胆管狭窄であった。
1例目は74歳女性、胆嚢癌肝直接浸潤による胆道狭窄と総胆管結石を併発
していた。憩室内乳頭による変形で胆管へのアプローチが困難であった
ため、PTBDからのRendezvous法で一期的に胆管ステント挿入並び総胆管
結石採石を施行した。2例目は87歳女性、膵頭部癌による下部胆管閉塞の
症例で、経皮胆嚢ドレナージ( PTGBD) による減黄術を行った後、待機的に
PTGBDからのRendezvous法を行い、乳頭切開を加え胆管ステント留置を
行った。術後ステントが自然脱落し閉塞性黄疸をきたした、ERCP下に胆
管ステントを再留置した。3例目は84歳男性、胆嚢管癌胆管浸潤による閉
塞性黄疸の症例で、ERCPでは容易に膵管造影となり、膵管guidewire
pre-insertion法を用いても胆管深部挿管が困難であった。PTBDからの
Rendezvous法を用い、乳頭切開を加えた後に左右肝管内へ胆管ステントを
留置したが、右胆管ステントが自然脱落し胆汁漏を形成したためERCP下
に右胆管へステント再留置し、一方で経皮的に胆汁漏吸引ドレナージを行
い炎症の改善を得た。
【結論】PTBDを介したRendezvous法による胆管アプローチは悪性胆管狭窄
症例における減黄処置として有効であり、その際に乳頭切開を追加するこ
とで胆管カニュレーションが容易となるため、その後の胆道トラブルに対
しより低侵襲的に対処できる可能性が示唆された。
23
横須賀共済病院消化器病センター 内科
三好正人,石井玲子,佐藤綾子,松田浩紀,野澤さやか,小島直紀,
山本奈穂子,幾世橋佳,伊田春奈,田邊陽子,渡邊秀樹,新井勝春,
鈴木秀明,小林史枝,池田隆明
今回、発症時に腫瘍マーカー( シアルルイスグループ糖鎖抗原)
が著明高値を示し、悪性疾患の合併が疑われたが、プレドニゾ
ロン( PSL) 治療による病態改善と共にこれらが低下した自己免
疫性膵炎( AIP) 症例を経験した。症例:79歳、女性。主訴:食思
不振、全身倦怠感、黄疸。現病歴:1ヶ月ほど前より特に誘因な
く皮膚黄染が出現。その後食思不振、全身倦怠感の出現と増悪
を認め近医を受診、黄疸を指摘され当科紹介入院となった。身
体所見:眼球結膜と皮膚の黄染著明。検査成績:AST 109 U/ l、
ALT 160 U/ l、T-bil 30. 5 mg/ dl、ALP 1903 U/ l、γ-GTP 480 U/ l、
CA19-9 4064、Span-1 1100U/ ml、DUPAN2 1600以上 U/ ml。臨
床経過:腹部CTで下部総胆管狭窄、肝内胆管拡張および膵のび
まん性腫大を認め、閉塞性黄疸と診断。ERCPで膵管狭細化、
下部総胆管の高度狭窄および肝内胆管拡張所見を認め、胆道ド
レナージ( ENBD、その後、胆道チューブステントを挿入) 施行
した。画像所見よりAIPを疑いIgG4を提出したところ、IgG4
1180 mg/ dl ( IgG 2547 mg/ dl ) と著明高値であり、Vater乳頭部の
生検でIgG4陽性形質細胞の間質への浸潤を確認した。腫瘍
マーカー高値だったことから悪性腫瘍の合併を除外するため下
部総胆管狭窄部の生検、更にEUSを追加した。しかし、悪性腫
瘍 の 合 併 を 示 唆 す る 所 見 は 得 ら れ な か っ た。こ の た め
PSL30mgによる治療を開始した。開始後、下部総胆管狭窄、膵
びまん性腫大は改善を示した。また、T-bilを含めた胆道系酵素
の正常化とともに、腫瘍マーカーも低下、治療開始約5か月後に
はCA19-9 86. 9、Span-1 39 U/ ml、DUPAN2 52 U/ mlと、ほぼ正
常化している。考察:AIPの診断では、悪性疾患の除外が重要
とされている。良性胆道疾患でも腫瘍マーカーの上昇は報告さ
れているが、本症例の上昇は高度であり、臨床的に示唆に富む
ものと考え、報告する。
ERCP困難症例,Rendezvous法
22
1)
自己免疫性膵炎,腫瘍マーカー
24
消化管出血を呈した胆嚢十二指腸瘻の一例
2)
公立昭和病院 消化器内科 ,同 予防検診科 ,
同 放射線科3)
大野一将1) ,太田博崇1) ,平昭衣梨1) ,矢内真人1) ,永田紘子1) ,
山地 統1) ,浦牛原幸治1) ,小野圭一1) ,小島 茂1) ,武田雄一1) ,
野内俊彦1) ,川口 淳2) ,白田 剛3)
症例は94歳、女性、H20年1月総胆管結石性胆管炎で入院した。
ERCPを施行し、EST・載石を行った。US/ CTで多数の胆石を認
めたが、超高齢者・認知症・脳梗塞後・ADLは寝たきりであっ
たため、胆嚢摘出術は施行しなかった。H25年3月に総胆管結石
性胆管炎・胆石性胆嚢炎で再入院した。アスピリン内服中で
あったため、EPBDを施行し総胆管結石の載石を試みたが、ガ
イドワイヤーが容易に胆嚢内に挿入され胆嚢総胆管瘻が疑われ
た。全ての結石の載石は困難なため、一部の結石を載石後に
ENGBD tubeとERBD tubeを留置した。炎症の改善後、ENGBD
tubeを抜去して退院となった。H25年7月、食思不振・発熱を主
訴に他院に入院したが、同日に吐血したため当院へ搬送となっ
た。上部消化管内視鏡検査で上十二指腸角下面に潰瘍性病変が
あり、潰瘍底に黒色調の結石と、その隙間から湧出性出血を認
めた。結石を可及的に除去すると潰瘍辺縁に出血点を認め、止
血鉗子で焼灼止血した。翌日の上部消化管内視鏡検査では瘻孔
辺縁からの出血は認めなかったが、瘻孔内の結石を除去すると
凝血塊の付着した隆起を認め、凝血塊を除去したところ噴出性
出血を認めた。内視鏡的止血は中止して、血管造影を施行して
右肝動脈近位部に仮性動脈瘤を認めたため、コイル塞栓術を施
行した。胆石の圧迫・刺激による胆嚢十二指腸瘻の形成は時折
経験される事があり、その多くは胆石イレウスで発症するとさ
れる。今回のように出血で発症する例は医中誌で9例報告され
ており、そのうち仮性動脈瘤の合併は1例のみで、Pub Medでも
動脈瘤症例は2例のみと稀である。仮性動脈瘤は炎症を背景に
生じることが多く、本症例においても慢性胆嚢炎がその成因に
なったと考えられる。胆嚢十二指腸瘻に伴う消化管出血では瘻
孔辺縁からの出血だけでなく、仮性動脈瘤の可能性も忘れては
ならないと考えられた。
病態の改善と共に著明高値を示した腫瘍マーカーが
低下した自己免疫性膵炎の1例
悪性を否定できず腹腔鏡下膵中央切除術を施行した
膵体部膵内副脾の1例
日本医科大学 消化器外科
栗山 翔,松下 晃,中村慶春,住吉宏樹,神田知洋,清水哲也,
柿沼大輔,水口義昭,川野陽一,吉岡正人,谷合信彦,真々田裕宏,
内田英二
【はじめに】副脾は脾元基の癒合不全の結果生じる脾臓の組織
塊で脾門部や膵尾部にしばしばみられる。副脾は剖検例の10%
にみられるといわれている。その80%は脾門部に発生するが、
それ以外は横隔膜下から骨盤腔まであらゆる部位にみられる。
特に膵内に存在する副脾は膵腫瘍との鑑別が問題となる場合が
ある。今回我々は術前精査で悪性を否定できず腹腔鏡下膵中央
切除術を施行した膵体部膵内副脾の1例を経験したため報告す
る。【症例】32歳女性。健康診断で膵臓の腫瘍を指摘され当科
に紹介となった。血液生化学検査、腫瘍マーカーに明らかな異
常を認めなかった。腹部造影CT検査では膵体部に1cm大の造影
効果の乏しい境界はやや不明瞭な腫瘤性病変を認める。この病
変の尾側の膵管は拡張を認めた。腹部MRIでは膵体部にT2で低
信号の腫瘤性病変を認めCTと同様、腫瘍尾側の膵管の拡張を
認めた。PET検査では腫瘍に一致してFDGの集積を認めたが
SUVmaxは早期相で2、後期相で3であった。EUS検査では膵体
部に境界不明瞭、内部不均一な低エコー腫瘤を認めた。FNAで
は細胞診にてclass IIIb、組織診にて副脾もしくはリンパ節との
診 断 で 確 診 に は 至 ら な か っ た。術 前 診 断 で は solid
pseudopapilally tumor、非機能性膵内分泌腫瘍、副脾が考えら
れたが、尾側主膵管の拡張も伴っており悪性の可能性も否定出
来なかったため、まず腹腔鏡下に膵中央切除を行い腫瘍を摘出
する方針とした。切除標本の迅速病理診断は副脾で悪性は否定
されたため、尾側膵断端を胃後壁と吻合し手術を終了とした。
最終病理診断も膵内副脾であった。術後は一時的に胃内容停滞
を認めたものの保存的に改善し術後17日目に退院となった。
【考察】本症例では悪性が否定出来ず、切除が必要であったと考
えるが腹腔鏡下膵中央切除術を行うことにより低侵襲治療が可
能となった。
内胆汁瘻,仮性動脈瘤
― 27 ―
膵内副脾,腹腔鏡下膵切除
25
膵神経内分泌腫瘍切除後に門脈内腫瘍栓および肝転
移再発を来たした1例
慶應義塾大学医学部 一般消化器外科1) ,同 病理2)
高木知聡1) ,日比泰造1) ,阿部雄太1) ,真杉洋平2) ,板野 理1) ,
篠田昌宏1) ,北郷 実1) ,八木 洋1) ,香月優亮1) ,岸田憲弘1) ,
坂元亨宇2) ,北川雄光1)
症例は30代男性.8か月前に他院で膵頭部腫瘍に対して幽門輪
温存膵頭十二指腸切除術を施行.病理組織検査ではホルモン非
産生の神経内分泌腫瘍( NET) で,核分裂像2/ 10 HPF,Ki-67陽性
率5%強でNET G2の診断.術後は同院にて経過観察されていた
が,門脈内に腫瘍栓を認めたため治療目的で当院紹介.術前の
CTとMRIでは門脈本幹と上腸間膜静脈内に早期濃染を示すそ
れぞれ23mmと8mm大の軟部陰影を2カ所と,S7とS8の肝転移2
個,上腸間膜動脈より分岐する右肝動脈周囲の軟部陰影を認め
腫瘍の再発を疑った.門脈〜上腸間膜静脈切除および再建(右
大腿静脈グラフト),右肝動脈周囲郭清,肝S7およびS8部分切
除,胆管空腸再吻合術を施行した.術後第4病日に右肝動脈の
仮性動脈瘤破裂による腹腔内出血をきたしショックに陥ったが,
緊急血管造影でコイル塞栓術を行い止血し得た.その後は腹腔
内膿瘍と創感染を認め加療に時間を要したが徐々に全身状態は
改善し第65病日に退院.病理組織検査では門脈腫瘍栓と肝転移
(なおS8病変は血管腫で肝転移は孤立性)はいずれも原発巣と
同様の組織像を呈しsynaptophysin,chromograninA,CD56が陽性,
核分裂像3/ 10 HPF,Ki-67陽性率15%程度でありNET G2、組織
学的治癒切除と診断.しかし術後8ヶ月目のCTで残肝再発およ
び骨転移を認めた.文献的考察を加えて報告する.
27
群馬大学大学院 保健学研究科1) ,
同 医学系研究科 病態制御内科2) ,
日本原子力研究開発機構 高崎量子応用研究所3)
富岡 智1) ,橋爪洋明2) ,堀口昇男2) ,山崎勇一2) ,佐藤 賢2) ,
柿崎 暁2) ,佐藤博隆3) ,江夏昌志3) ,神谷冨裕3) ,長嶺竹明1)
【目的】難治性C型慢性肝炎に対するペグ型インターフェロン
( Peg-IFN) +リバビリン(RBV)の2剤併用療法による治癒率は
40〜50%程度であり、プロテアーゼ阻害剤を加えた3剤併用で
は70%以上になることが報告されている。一方、貧血などの副
作用も頻発しており、治療効果を左右する一因となっている。
我々は2剤および3剤療法による貧血の病態解明を目的として、
赤血球内元素量の変動をマイクロPIXE ( Particle Induced X-ray
Emission) 分析システムを用いて測定した。【対象および方法】
難治性C型慢性肝炎14例(未治療3例、Peg-IFN+RBV治療7例、
Peg-IFN+RBV+テラプレビル治療4例)および健常者4例から、
血算用採血管( EDTA-2NA入り) で採血し、同量の生理食塩水を
加え、5分間遠心(1500 rpm)する。上清を取り除き、赤血球成
分のみに調製した血球を-150℃で凍結、1. 0×10-2 Torrで24時
間乾燥させ、マイラー膜上に固定し、高崎原子力研究所のマイ
クロPIXEで赤血球内元素分析を行った。【結果】1.赤血球内の
S,K,Clは健常者ではドーナツ状の分布を認めた。2剤併用例
では結節状になる傾向を示し、3剤併用では斑状になる血球が
多く出現した。2.赤血球内元素の定量を行った結果、カルシ
ウム、鉄、銅は健常者に比べC型肝炎( 未治療者) で増加し、亜鉛
は低下を認めた。2剤併用では未治療者と比較して、カルシウ
ムは低下し、亜鉛は増加した。3剤併用では各元素とも増加傾
向を認め、とりわけNaの増加が顕著であった。【考察】以上の
結果から、3剤併用療法では2剤併用療法とは異なる赤血球内元
素分布変動が認められ、両治療法における貧血の病態が異なる
可能性が示唆された。
膵神経内分泌腫瘍,門脈内腫瘍栓
26
術前診断が困難であった,IgG4関連動脈周囲炎の1
切除例
千葉徳洲会病院 内科1) ,同 外科2) ,同 病理3)
富田俊也1) ,浅原新吾1) ,松村祐志1) ,高森 繁2) ,鶴田好彦2) ,
白部多可史2) ,川上英之2) ,宍倉有里3)
【症例】70歳,男性【主訴】下腹部痛【現病歴】2012年9月初旬,
心窩部痛のため近医を受診.鎮痛剤を処方され経過観察されて
いたが,9月中旬に下腹部痛がみられるようになったため,再診
し,当 院 を 紹 介 受 診.【既 往 歴】15 歳,虫 垂 炎【現 症】血 圧
131/ 84mmHg,脈拍70,整.体温35. 8度.右下腹部に腫瘤触知.
【経過】血液検査ではWBC正常値,CRP4. 23mg/ dlと軽度上昇.
肝,胆道系酵素,アミラーゼ,LDH,CEA,CA19-9は正常,
sIL-2R639U/ mlと軽度上昇.造影CTで十二指腸水平脚と回腸
末端の腸間膜に不整形の軟部構造を認め,腫瘤の中心に動脈の
走行がみられた.周囲脂肪組織の濃度上昇を伴っており,腸間
膜脂肪織炎や十二指腸または回腸の炎症の波及,悪性リンパ腫
などが疑われた.なお上部,下部消化管内視鏡では明らかな原
因は不明であった.アセトアミノフェンで症状は軽減したため
経過観察としたが,1ヶ月後の血液検査ではWBCは正常値だが,
CRPは4. 58mg/ dlと改善がみられず,CTでは炎症範囲の拡大,
右水腎症の出現がみられた.手術直前のIgG4は32mg/ dl,抗核
抗体,抗DNA抗体,抗SS-A,SS-B抗体はすべて陰性であり,悪
性腫瘍の否定もできず,11月に右半結腸切除+小腸切除+十二
指腸部分切除を施行した.病理組織では,腫瘤は5x4x2. 5cmで,
割面は白色調で境界不明瞭.腸間膜や漿膜下の脂肪織に,濾胞
形成を呈するリンパ球及びIgG4陽性形質細胞の浸潤と線維性
結合織の増生があり,慢性炎症細胞浸潤は,大小の動静脈や神
経周囲に目立っていた.以上から,IgG4関連動脈周囲炎と診断
した.術後よりプレドニン40mgの投与を開始し,半年間で漸
減して中止したが,現在まで再発はみられていない.【結語】血
清IgG4正常,自己抗体陰性であり,炎症性腹部大動脈瘤もみら
れず,術前診断が困難であったIgG4関連動脈周囲炎の1切除例
を経験した.
C型慢性肝炎のインターフェロン+リバビリン併用
療法に合併する貧血の解明―大気マイクロPIXEを
使用して
C型慢性肝炎,大気マイクロPIXE
28
肝細胞癌に対するダブルプラチナ療法 ( ミリプラ
チン肝動脈化学塞栓術+シスプラチン肝動注併用療
法) の使用経験
前橋赤十字病院 消化器内科1) ,西群馬病院2) ,
群馬大学医学部 病態制御内科学3)
上野敬史1) ,松井綾子1) ,須賀孝慶1) ,長坂昌子1) ,佐藤洋子1) ,
関口雅則1) ,大塚 修1) ,飯塚賢一1) ,豊田満夫1) ,新井弘隆1) ,
高山 尚1) ,阿部毅彦1) ,長島多聞2) ,田原博貴2) ,柿崎 暁3) ,
佐藤 賢3)
【背景・目的】近年、切除不能の肝細胞癌( HCC) に対する治療として、
ミリプラチン( MPT) による肝動脈化学塞栓術( TACE) やシスプラチン
( CDDP) による肝動注化学療法の有用性が報告されている。今回、両
者を併用したダブルプラチナ療法の当院での有効性・安全性について
検討した。【方法】2011年6月〜2013年6月に切除不能多発肝細胞癌に
対してダブルプラチナ療法を施行した39名62症例を対象とした。定型
通りにCDDP( アイエーコール®, IAC) を区域性に動注した後、MPTに
よるTACEあるいはB-TACEを亜区域・区域性に行った。CDDPは65
mg/ m2、MPTは120 mg/ bodyを上限に投与した。効果判定は原発性肝
癌取扱規約第5版を用いて治療3ヶ月後の画像検査で、有害事象は
CTCAE ver. 4. 0を用いて評価した。【結果】平均年齢 69. 6歳で成因は
B 2/ C 55/ NBNC 5例で、治療前のChild-Pugh分類はA 41/ B 21/ C 0例で
あった。CDDP平均投与量は94. 1 mg/ body、MPTの平均投与量は47. 3
mg/ bodyであった。治療効果は、CR 3. 2 %、PR 22. 6 %、SD 51. 6 %、
PD 16. 1 %で、奏効率 25. 8 %、病勢制御率 77. 4 %であった。Grade 3
以上の有害事象は、ALT上昇 41. 9 %、Bil上昇 3. 2 %、嘔気・食欲不振
17. 7 %、腹水 1. 6 %を認めた。【考察】今回の検討では奏功率25. 8 %
程度であったが、病勢制御率は77. 4 %と比較的良好と考えられTACE
不応例、多血性/ 乏血性腫瘍が混在する例など通常のTACEのみで治療
困難な例において、ダブルプラチナ療法も治療選択肢として検討する
余地があると思われた。また、ALT上昇、嘔気・食欲不振を中心に有
害事象を多く認め、特に嘔気・食欲不振についてはCDDPの影響が強
いと考えられた。最終的には軽快しているものの、今後はCDDPの用
量調節や制吐剤の工夫などによる患者負担軽減への試みが必要と考え
られる。
IgG4関連動脈周囲炎,IgG4関連疾患
― 28 ―
肝細胞癌,ダブルプラチナ療法
29
当院におけるC型肝炎合併透析患者の予後とIFN治
療に対する有効性および安全性についての検討
東邦病院 内科
細沼賢一,廣川朋之,青木
隆
【目的】透析患者のHCV抗体陽性率は、腎機能正常者と比較して高
率とされ、陽性者では肝硬変、肝癌の発症率が高く、陰性患者と比
較し生命予後が低いことが報告されている。しかし、多くの患者
が無治療で経過していると予想され、IFN治療の有効性や安全性に
ついては不明な点が多い。今回、当院におけるC型肝炎合併透析患
者の予後とIFN治療に対する有効性および安全性について検討を
行った。【方法】予後については、当院で2007年から2012年の間に
死亡したC型肝炎合併透析患者18例について検討した。IFN治療に
対する有効性および安全性についてはPeg-IFNα2a単独治療を
行った13例について検討した。【成績】上記期間中に死亡した18例
( M/ F=11/ 7) の死亡原因は肝不全4例、敗血症5例、肺炎5例、心不全
3例、膵癌1例であった。死亡時の肝の状態は慢性肝炎9例、肝硬変
7例 、慢性肝炎〜肝硬変2例であった。死亡時年齢の中央値は肝不
全以外による死亡例69歳に対し、肝不全による死亡例65歳、慢性
肝炎での死亡例74歳に対し、肝硬変での死亡例67歳であった。IFN
治療を行った13例( M/ F=11/ 2) の年齢中央値は60歳( 48-70歳) で
あった。ウイルス型はGenotype1b/Group1(G1) が6例、Genotype2a/
2b/ Group2( G2) が7例であった。背景腎疾患は糖尿病性7例、慢性
糸球体腎炎6例、腎硬化症2例、その他4例、透析歴中央値は5年( 1-28
年) であった。SVRは3例、再燃は3例、無効は6例であった。SVR例
は全例G2でPeg-IFNα2aの投与法は60-135μg/ 1w〜2w×10-24回
であった。再燃例は1例がG1低ウイルス量、2例がG2高ウイルス量
であった。無効例は5例がG2で全例が高ウイルス量であった。副
作用は主に血球系減少であり、IFN減量等により対応可能であった。
【結論】透析患者でもC型肝炎合併者では肝疾患が予後に影響する。
透析患者に対するIFN治療は特にG2であればSVRを期待できるた
め、条件により治療を積極的に考慮すべきであるが、至適投与法
が十分に確立されているとは言えず、今後も症例を蓄積し個々の
症例に合わせた投与法を確立していく必要がある。
31
帝京大学医学部 内科1) ,同 病理2)
三浦幸太郎1) ,高森頼雪1) ,川島 悠1) ,青柳 仁1) ,木村 総1) ,
安達 運1) ,白井 告1) ,磯野朱里1) ,江波戸直久1) ,三浦 亮1) ,
阿部浩一郎1) ,立澤直子1) ,相磯光彦1) ,山本貴嗣1) ,石井太郎1) ,
喜多宏人1) ,田中 篤1) ,久山 泰1) ,滝川 一1) ,笹島ゆう子2) ,
福里利夫2)
【症例】56歳、男性【現病歴】平成25年8月上旬より心窩部痛出
現し同下旬より痛みは右季肋部に移動した。9月上旬に近医受
診後当科紹介され、腹部超音波にて肝腫瘤認めため精査目的に
て入院となった。
【既往歴】平成18年 左眼球脈絡膜悪性黒色腫
摘出術(他院)
【入院時現症】意識清明、貧血・黄疸なし、胸部
正常、腹部平坦・軟・右季肋部に圧痛を認める。【入院時検査所
見】WBC 10100, Hb 14. 8, Plt. 31. 5万, T-P 6. 6, Alb 4. 0, AST
25, ALT 25, LDH 210, ALP 200, γ-GTP 55, BUN 16. 3, Cr 0.
90, Na 139, K 3. 9, HBsAg 0. 1, HBsAb 1318. 0, HCV-Ab 0. 1,
CEA 2. 2, CA19-9 15. 7, AFP 4. 9, AFP-L3<0. 5【画像所見】腹
部CTで肝S6に7cm大の腫瘤性病変を認め単純では軽度高吸収
域を呈する。造影では軽度の増強効果が後期相まで遅延する。
【経過】血液データ、画像所見より肝細胞癌や肝内単肝癌は考え
にくく、診断確定のため第2病日に超音波下に肝腫瘍生検を行っ
た。標本は肉眼でも黒色を呈し、病理では核小体明瞭な類円形
の異形核を有する腫瘍細胞がびまん性に増殖しており、腫瘍細
胞の多くは包体に多量のメラニンを含有していた。免疫組織学
的にvimentin( +) , S-100 protein( +) , HMB45( +) , Melan-A( +) ,
AE1/ AE3( -) , Hep-par-1( -) , CK7( -) であった。悪性黒色腫と診
断し、平成18年他院での眼球手術標本取り寄せたところ同様の
所見であった。眼球脈絡膜悪性黒色腫術後7年を経過した肝転
移と判断し9月中旬に肝動脈塞栓術施行した。重篤な合併症み
られず9月下旬に退院となった。【考察】術後7年で肝転移を来
たした眼球脈絡膜悪性黒色腫の一例を経験した。眼球脈絡膜悪
性黒色腫は特に肝臓に転移をきたし易いとも言われており、文
献的考察を加え報告する。
C型肝炎,透析
30
当 院 に お け る C 型 慢 性 肝 炎 に 対 す る Peg-IFN/
Ribavirin/ Telaprevir 3剤併用療法の治療成績
前橋赤十字病院1) ,独立行政法人国立病院機構 西群馬病院2) ,
長野原町へき地診療所3) ,
群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科4)
戸島洋貴1) ,上野敬史1) ,長島多聞2) ,小林 剛3) ,田原博貴2) ,
豊田満夫1) ,須賀孝慶1) ,長坂昌子1) ,佐藤洋子1) ,関口雅則1) ,
大塚 修1) ,飯塚賢一1) ,新井弘隆1) ,高山 尚1) ,阿部毅彦1) ,
柿崎 暁4) ,佐藤 賢4)
【目的】Genotype 1b型高ウィルス量の難治性C型慢性肝炎に対
しPeg-IFNα2b( PEG-IFN) +Ribavirin( RBV) +Telaprevir( TVR)
の3剤併用療法は高い治療効果が期待される一方で重篤な副作
用の出現が報告されている。今回当院における3剤併用療法の
治療効果と安全性について検討した。【方法】2012年1月から
2013年3月までに治療を開始したC型慢性肝炎17例。内訳は男
性12例、女性5例、平均年齢58. 3歳( 43-70)。初回治療11例、前
治療再燃4例、前治療無効2例。TVR 2250mg開始8例、1500mg開
始9例であった。【成績】投与終了後24週でのHCV-RNA陰性化
率( SVR24) は全体で76%( 13/ 17) 。前治療別では初回治療82%
( 9/ 11) 、前治療再燃100%( 4/ 4) 、前治療無効0%( 0/ 2) であり前
治療再燃例で高かった。開始量別ではTVR2250mg開始100%
( 8/ 8) 、1500mg開始56%( 5/ 9) と、2250mg開始例で高かった。著
効を得られなかった4例の内訳は、前治療無効が2例、副作用の
ための早期中断が1例、viral breakthroughが1例であった。副作
用のため3剤のいずれか、または全てが中止となったものは7例
あり、内容は強い倦怠感と食思不振( 4例) 、皮疹( 2例) 、貧血( 1
例) であり貧血例では輸血を要した。一方、副作用のため8週以
内に治療中断となったもののなかにも著効例がみられた。
【結
論】C型慢性肝炎に対する3剤併用療法は非常に有効な治療法で
あるが、一方で副作用に対する早期の十分な対策が必要である。
この治療経験は今後の次世代プロテアーゼ阻害剤治療に際し有
用な情報を与えてくれるものと思われた。
術後7年で肝転移を来たした眼球脈絡膜悪性黒色腫
の一例
悪性黒色腫,転移性肝癌
32
部 分 的 脾 動 脈 塞 栓 術 (PSE) を 施 行 し、TVR/PEGIFN/ RBV 3剤併用療法によりSVRが得られた1例
伊勢崎市民病院 内科1) ,群馬大学大学院 病態制御内科学2)
嶋田 靖1) ,鈴木悠平1) ,畑中 健1) ,滝澤大地1) ,柿崎 暁2) ,
山田正信2)
【症例】 69歳、男性【現病歴】C型慢性肝炎に対して、20年ほど
前にIFN治療( 詳細不明) を受けたが、SVR得られなかった。以
降、近医にてUDCA、SNMCによる肝庇護療法を受けていた。
TVR/ PEG-IFN/ RBVによる3剤併用療法を目的に当院へ紹介と
なった。
【既往歴】特になし【飲酒】なし【内服薬】UDCA300mg/
3X【検 査 結 果】T-Bil0. 91mg/ dl、AST69IU/ L、ALT70IU/ L、
ALP440IU/ L、γ -GTP51IU/ L、Alb3. 7g/ dL、WBC2800/ μ L、
Hb13. 6g/ dL、Plt5. 3万/ μL、HCV genotype 1b、HCV-RNA7.
0logIU/ ml、rs8099917 T/ T、HCV core aa70/ 91:M/ W、肝生検:
chronic hepatitis、A2F2【経過】脾機能亢進による血小板低下に
対し、部分的脾動脈塞栓術( PSE) を施行した。Plt16. 9万/ μLに
増加が得られ、TVR/ PEG-IFNα2b/ RBVの3剤併用療法を開始
し た。皮 疹 に よ り TVR 投 与 は 8 週 間 で 中 止 と な っ た が、
PEG-IFNα2b/ RBV併用療法は24週間完遂でき、その後SVRが
得られた。【考察】TVR/ PEG-IFN/ RBVの3剤併用療法は、重篤
な皮疹、高度貧血、高尿酸血症、腎機能障害などの今までの
PEG-IFN/ RBV併用療法では認められなかった特有な副作用が
あり、線維化進行例などは投与困難である。しかし、TVRを含
む3剤併用療法は、初回投与例や再燃例などでは効率なSVRが
期待される。また、SVRにより、線維化改善や発癌率低下も報
告されている。血小板低値で治療導入が困難なC型慢性肝炎症
例では、PSEにより血小板増加が得られれば、3剤併用療法が施
行でき、SVRが得られる可能性がある。【結語】PSEにより、
TVR/ PEG-IFN/ RBVの3剤併用療法が可能となり、SVRが得ら
れた一例を経験した。
C型慢性肝炎,テラプレビル
― 29 ―
PSE,TVR
33
肝細胞癌に対するミリプラチン動注療法及びラジオ
波焼灼術後に発症した急性間質性肺炎の1例
くすの木病院内科1) ,
群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科2)
小曽根隆1) ,高草木智史1) ,佐藤 賢2) ,柿崎 暁2)
【症例】77歳、女性【現病歴】20年ほど前からHCV抗体陽性を指摘され
る。8年ほど前から肝硬変として近医加療されていた。その後、患者
希望にて当院肝臓外来を紹介初診、スクリーニングCTにて肝S5/ 6に
HCCを指摘され、治療目的に入院となる。【入院後経過】第0病日、AG
施行。HCCのfeederであるA7よりミリプラチン50mg及びジェルパート
にてLip-TACEを施行した。翌日のCTでは同部に良好なリピオドール
沈着を認めた。その後発熱、腹痛など認めず、第7病日に同結節に対し
てRFAを施行。翌日に39℃台の発熱認めるも翌々日には軽快した。そ
の後退院予定としていたが、第15病日の夕方より38℃台の発熱が再燃
し持続、第18病日の朝、胸部XP及びCTにて両肺にすりガラス様陰影を
認め、間質性肺炎あるいはARDSと診断した。同日よりソルメドロー
ル1g/ 日によるステロイドパルス療法を開始した。しかし、その効果
は乏しく、第21病日に人工呼吸器管理とした。その後プレドニン
60mg/ 日で様子を見ていたが、XP所見上肺陰影の増悪を認めたため、
第25病日より前回と同量でステロイドパルス療法2クール目を開始。
今回は肺陰影の軽減を認めたため、プレドニン40mg/ 日で経過観察と
していたが、第33病日より右肺気胸を発症、心臓が著明に左方圧排さ
れたことによる急激な血圧低下を来した。同日、胸腔ドレナージを施
行し、心臓の圧排は改善されて低血圧状態は改善した。その後、肺炎
像自体は鎮静化していたが徐々に黄疸、腎不全状態となり、第34病日
にはほとんどの薬剤を中止せざるを得ない状態となり第38病日、死亡
した。【考察】ミリプラチンの使用承認当初には重篤な呼吸器系の副
作用は挙げられていなかったが、その後にミリプラチン使用後の重篤
な肺障害の報告があり、重大な副作用として間質性肺炎が追加されて
いる。本症例においては発症、治療経過を考慮しても既往症や、RFA
治療の影響である可能性は低く、さらに心不全や感染による肺炎も考
えにくいことから、ミリプラチンによる薬剤性肺障害であった可能性
が高く、貴重な症例と考えられここに報告する。
35
桐生厚生総合病院 内科1) ,同 外科2) ,しらかわ診療所 内科3) ,
上牧温泉病院 内科4)
山田俊哉1) ,丸山秀樹4) ,新井洋佑1) ,古谷健介1) ,飯塚圭介1) ,
野中真知1) ,竝川昌司1) ,飯田智広1) ,待木雄一2) ,鏑木大輔3)
【症例】55歳女性【現病歴】27年前にGardner症候群と診断され、
以後当院外科外来定期通院されていた。今年に入ってから胆管
炎様症状(肝機能変動と炎症反応変動)を繰り返すようになっ
た。MRCPにて肝内胆管拡張認められ、2013年10月精査目的に
当科紹介となった。
【入院後経過】入院直前のCTでは肝門部胆
管に不整な狭窄性病変あり、それより上流の肝内胆管拡張を認
めていた。同月入院となり、第2病日ERCP施行。乳頭形成術後
(十二指腸乳頭部腺腫に対して手術施行歴あり)であり、胆管口
は著明に拡張していた。側視内視鏡観察で胆管内(下部胆管付
近)に腫瘍性病変あり。同部位より生検施行。胆管造影上、下
部胆管に隆起状のdefectあり、肝門部胆管に閉塞あり、その上流
の胆管拡張認めた。閉塞部より生検とブラシ細胞診施行し、胆
管ステント留置して終了。その後は肝胆道系酵素低下傾向にあ
り、第8病日に経鼻細径内視鏡で胆管内に挿入し観察したが、
ERCP所見と同様、肝門部と下部胆管に腫瘍性病変あり、肝門
部では胆管閉塞を生じていた。同日退院。生検と細胞診結果で
2病変ともadenocarcinoma検出され、胆管double cancerの診断で
あった。今後の治療方針について外科にて本人へ説明予定と
なった。【考察】十二指腸乳頭部癌ではGardner症候群でリスク
が増大するが、胆管癌についてははっきりしていない。医中誌
で検索した限りでは、Gardner症候群に胆管癌を合併した症例
報告は本邦では認めず、貴重な症例と考えられた。【結語】我々
はGardner症候群診断27年後に多発する胆管癌を生じた症例を
経験し、病変を直接、直視内視鏡で観察することができた。
Gardner症候群に多発する胆管癌を合併した症例報告は本邦で
は認めず、貴重な症例と考えられた。
Lip-TACE,薬剤性肺障害
34
ミリプラチンのTACEからTAIへの切り替え後より
著効が得られた肝細胞癌の一例
桐生厚生総合病院 内科1) ,
群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科学2)
竝川昌司1) ,新井洋介1) ,飯塚圭介1) ,古谷健介1) ,山田俊哉1) ,
野中真知1) ,飯田智広1) ,柿崎 暁2) ,佐藤 賢2) ,丸田 栄1) ,
山田正信2)
【背景】肝細胞癌(HCC)治療の有効性に関して,日本肝癌研究会の追跡調
査に基づく経カテーテル的肝動脈化学塞栓療法(TACE)と肝動注化学療
法(TAI)の比較では,TACEが有意に高い生存率を示している.今回,ミ
リプラチンのTACEからTAIへの切り替え後より著効が得られたHCCの一
例を経験したため報告する.
【症例】70歳代,男性.C型慢性肝炎にて近医通院中であった.2008年12月
に施行したCTにて肝右葉に4. 5cm大のHCCを認め,2009年1月に当院外科
にて肝部分切除術を施行された.同年10月よりHCCの再発を繰り返して
おり,当科にてラジオ波焼灼術やエピルビシンによるTACE・TAIを施行し
た.しかしHCCが多発・増大傾向となり,2010年9月からはミリプラチン
によるTACEを複数回行い,病勢コントロールを図った.同年12月に造影
CTを施行した際,アナフィラキシーショックを生じ,以降は単純CT・MRI
もしくは造影MRI(EOB)にて病勢評価を行った.その後もHCCの病勢は
悪化し,2011年11月の血管造影検査の時点でT4N0M0となり,左右肝動脈
よりミリプラチンのTAI(短時間注入法)を施行した.同治療前の腫瘍マー
カーはAFP 41000ng/ ml,PIVKAII 2454mAU/ lと高値を示していたが,同年
12月にはAFP 143ng/ ml,PIVKAII 40未満mAU/ lと著明に改善した.続く
2012年1月,3月,5月にもミリプラチンのTAIを施行し,現在は腫瘍マーカー
はいずれも正常,画像上も著効を維持している.
【考察】造影剤アレルギーがあり詳細な病勢評価はやや困難だが,ミリプ
ラチンの使用法をTACEからTAIへ変更した後に,腫瘍マーカーの著明な
低下が確認できた.我々の検索では,TACEからTAIに変更した際に抗癌
剤も変更し,著効が得られた症例や,複数回のTAI後に治療効果を認めた
症例の報告は散見するが,本例のような報告はみられなかった.
【結語】今回,ミリプラチンのTACEからTAIへの切り替え後より著効が得
られたHCCの一例を経験した.同様の報告はみられず,稀な症例と考えら
れるため報告する.
Gardner症候群に多発する胆管癌を合併した一例
Gardner症候群,胆管癌
36
閉塞性黄疸にて発症した後腹膜腫瘍に対し
EUS-FNAが有用であった1例
自治医科大学 消化器肝臓内科1) ,同 血液内科2) ,
同 病理診断部3)
吉田友直1) ,渡邊俊司1) ,原 鉄人1) ,沼尾規且1) ,牛尾 純1) ,
畑中 恒1) ,森 政樹2) ,田中 亨3) ,玉田喜一1) ,菅野健太郎1)
【症例】75歳男性【現病歴】入院の1カ月前から右側腹部痛、食
欲低下あり、前医を受診。黄疸および腹部超音波検査で腹部腫
瘤を指摘されたため、精査加療目的に当科紹介入院。【入院時
現症】上腹部に圧痛あり、10cm大の硬い腫瘤を触知した。
【経
過】血 液 検 査 で は T Bil 8. 98mg/ dl、D Bil 6. 86mg/ dl、AST
278mU/ ml、 ALT 372mU/ ml、 ALP 1138mU/ ml、 γ GTP
668mU/ mlと肝胆道系酵素上昇を認めた。腹部造影CTでは肝
内・肝外胆管拡張および後腹膜に巨大な腫瘤を認めた。後腹膜
腫 瘍 に よ る 胆 管 圧 排 に よ り 閉 塞 性 黄 疸 を 来 し て い た た め、
ERCP施行し胆管ステントを留置した。可溶性IL2レセプター
1960U/ mlと高値のため悪性リンパ腫が強く疑われたが、確定
診断目的に、超音波内視鏡下穿刺吸引生検( EUS-FNA) を施行
し た。病 理 組 織 学 的 に は、腫 瘍 性 大 型 細 胞 は CD20 陽 性、
pancytokeratin と CD3 は 陰 性 で、Diffuse Large B-cell lymphoma
(DLBCL)と診断された。血液内科に転科しR-CHOP療法を施
行した結果、腫瘍は著明に縮小し、胆管ステントは自然脱落し
た。治療開始後8カ月が経過し、計7コースの治療を終了してい
る。【考察】後腹膜腫瘍による閉塞性黄疸の報告は7例と少ない
(医中誌)。【結語】閉塞性黄疸にて発症した後腹膜腫瘍に対し、
EUS-FNAは病理診断、治療方針決定に非常に有用であった。
肝細胞癌,TAI
― 30 ―
後腹膜腫瘍,閉塞性黄疸
37
無水エタノール注入により改善した腹腔鏡下胆嚢摘
出後の離断型胆汁瘻の1例
新座志木中央総合病院 外科1) ,同 内科2) ,
聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科3)
奈良橋喜芳1) ,新戸禎哲2) ,谷島義章1) ,吉野美幸1) ,古市好宏2) ,
澤田孝繁2) ,岡田了祐1) ,長嶋 隆1) ,西田二郎1) ,松浦直孝2) ,
佐藤 滋1) ,吉田紘一1) ,大坪毅人3)
症例は78歳, 男性. 胸背部痛で当院受診, 無石胆嚢炎の診断で
入院歴があり再燃にて緊急入院. 画像上は胆嚢壁肥厚と胆嚢緊
満を認めるも, 明らかな結石は認めなかった. 内視鏡的経鼻
胆嚢ドレナージ( 以下ENGBD) で症状軽快, ENGBD挿入時の胆
管造影では右肝管前区域枝が総胆管より造影されていた. 症状
軽快したが再燃のため手術となった. 手術ではCarot三角部は
慢性炎症により線維化が高度であった. 胆嚢床右側を剥離中に
微量の胆汁が流出したが速やかに停止し手術を続行, 胆嚢を摘
出した. 肝床部を止血洗浄中に再度の胆汁漏出ありクリッピン
グで改善した. 術後2日目にドレーンより200ml/ dayの胆汁漏出
を認め, 禁食で経過観察も排液量に変化なく, 術後6日目に内
視鏡的経鼻胆管ドレナージ( ENBD) を施行. 明らかな造影剤の
漏出は認めないも, 術前造影で認められた右肝管前区域枝が造
影されず, 離断型肝管損傷を疑った. ENBD後もドレーン排液
量に変化なく, 術後13日目に発熱, 造影CTで肝床部から肝表面
に液体貯留あり, bilomaと判断し超音波ガイド下ドレナージを
施行, 胆汁が流出した. 以後300ml/ day程度の胆汁流出が持続,
biloma腔の縮小を待ち術後28日目の造影でbiloma腔の縮小を確
認, 右肝管前区域枝の末梢胆管が造影され, 離断型肝管損傷と
診断, 無水エタノール注入を開始した. 注入後は1回のみ発熱
を認めたが, 他に重篤な合併症は認めなかった. 以後経時的に
排液量が減少, 術後56日目( 12回注入後) に胆汁流出は消失し注
入中止, 術後64日目にチューブを抜去. 以後経過良好で術後72
日目に軽快退院, 外来通院中である. 離断型肝管損傷による胆
汁瘻は漏出部に対する直接的な手術も推奨されるが, 術後状態
のため手術難度が高く治療に難渋することも珍しくない. 若干
の文献的考察を加えここに報告する.
39
国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科
西田保則,光永修一,桑原明子,奥山浩之,高橋秀明,大野
清水 怜,池田公史
左側門脈圧亢進症をきたしたIgG4関連自己免疫性
膵炎の一例
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター内科
松井哲平,中野 茂,荻野 悠,佐藤 綾,松井太吾,松清 靖,
高亀道生,金山政洋,篠原美絵,岡野直樹,池原 孝,籾山浩一,
篠原正夫,永井英成,渡邉 学,石井耕司,五十嵐良典,
住野泰清
【症例】71歳男性【主訴】皮膚黄染【現病歴】他院で肺腫瘤の経過観察
中の血液検査で血小板減少を指摘され精査目的で当院へ紹介。上部消
化管内視鏡検査で胃体上部大弯から穹窿部まで連なるF2の胃静脈瘤を
認めたため精査目的で入院予定であったが、皮膚黄染と尿濃縮を自覚
し外来を受診した。血液検査、腹部超音波検査で閉塞性黄疸が疑われ
入院となった。【入院時身体所見】身長167cm、体重81kg、体温36. 5℃、
眼球結膜の黄染を認めたが、腹部の圧痛などは認めなかった。【入院
時検査所見】血液生化学検査では、直接優位のビリルビンの上昇(T-B
4. 0mg/ dl, D-B 2. 7mg/ dl)と肝胆道系酵素の上昇を認め、CRPの軽度
の上昇を認めた。腹部造影CT検査では肝内胆管の限局性拡張を認め、
膵はソーセージ様に腫大し脾静脈の閉塞と胃静脈瘤の発達を認めた。
また、腹部大動脈から総腸骨動脈分枝付近まで広がる軟部陰影を認め
た。【入院後経過】閉塞性黄疸に対してERBDを留置。ERCP所見では、
主膵管の狭小化を著しく認め、胆管の狭小・硬化像を認めた。細胞診
では悪性所見は認めなかった。腹部血管造影検査を施行し、腹腔動脈
根部の狭窄所見と脾静脈閉塞、側副血行路の発達を認めた。肝静脈圧
較差は4mmHgであり正常範囲であった。血清IgG4値は155mg/ dlと高
値であり、各種画像所見を加味しIgG4関連自己免疫性膵炎、硬化性胆
管炎、後腹膜線維症および脾静脈閉塞による左側型門脈圧亢進症と診
断した。プレドニゾロン(PSL)30mg/ 日の投与を開始したところ経時
的に膵のソーセージ様腫大、動脈周囲の軟部陰影、胆管狭小所見は改
善し、脾静脈血流の再疎通と胃静脈瘤の縮小が得られた。現在外来に
てPSLを漸減しつつ経過観察中である。【結語】左側門脈圧亢進症によ
り胃静脈瘤の形成をきたしたIgG4関連自己免疫性膵炎症例を経験した。
PSL投与により閉塞した脾静脈が再疎通し、胃静脈瘤の縮小が得られ
た稀な症例であると思われ報告する。
泉,
横行結腸静脈瘤は非常に稀であり、その治療方針は確立してい
ない。我々は、膵頭部癌切除後の再発巣近傍に高度な横行結腸
静脈瘤を認め、出血を繰り返した患者に対し、再出血を回避す
るために人工肛門を造設して化学療法の実施を可能にした1例
を経験したので報告する。
症例は69歳男性。膵頭部癌に対し、当院にて亜全胃温存膵頭十
二指腸切除を施行され、術後補助化学療法としてゲムシタビン
塩酸塩(GEM)とS-1の併用療法を6ヶ月間実施された後、無再
発で経過観察されていた。術後約1年5か月後に下血を認めたた
め、上部および下部消化管内視鏡検査を行うも、消化管出血の
原因となる病変は確認できなかった。同時に行われた腹部造影
CT検査にて上腸間膜動脈周囲にリンパ節再発を認めたため、
再度の消化管出血がないことを確認した後、GEM単剤療法を開
始した。GEM開始から3ヶ月後に再度の下血を認め、下部消化
管内視鏡検査にて横行結腸に広範囲の静脈瘤形成を認めた。他
に出血源の原因と考えられる病変を認めなかったことから、横
行結腸静脈瘤による出血と診断した。GEMによる腫瘍制御は
得られていたことから、静脈瘤に対して積極的に治療を行い、
止血が得られた後にGEMを再開する方針とした。横行結腸静
脈瘤に対する内視鏡的治療および血管内治療は困難と判断され、
排便刺激回避による止血効果を期待して人工肛門造設術が当院
大腸外科で実施された。人工肛門造設術後は下血を認めず、1ヶ
月後にGEM単剤療法を再開することが可能であった。
今回の経験から、消化管出血を認めた膵癌患者に対して原因検
索を行う際には、稀ではあるが横行結腸静脈瘤も念頭に精査を
行うことが重要と考えられた。
胆汁瘻,無水エタノール
38
出血性横行結腸静脈瘤を合併した膵頭部癌切除後再
発患者に対して人工肛門造設術後に化学療法を実施
した1例
異所性静脈瘤,膵癌
40
胃癌術後に発症した特発性腸腰筋出血の1例
杏林大学医学部付属病院 消化器・一般外科
若松 喬,長尾 玄,蓮井宣宏,藤原愛子,小暮正晴,渡邉武志,
阿部展次,森 俊幸,正木忠彦,杉山政則
症 例 は 75 歳 女 性。MU 小 彎 領 域 の 進 行 胃 癌 ( 分 化 型、5 型) 、
cT2N1=Stage IIAの術前診断で胃全摘術予定であった。術前、下
肢エコーにて深部静脈血栓を認めたため、抗凝固療法(ワーファ
リン21日間内服、手術4日前からヘパリン置換)を施行。手術は
胃全摘術、D1+郭清、Roux-en-Y再建を行った。ヘパリンは術
後第3病日から投与を開始した。第4病日、誤嚥性肺炎、急性呼
吸不全を発症、人工呼吸器管理となった。その後、敗血症、DIC
を併発するも第11病日にはDICを脱していた。第12病日より原
因不明の進行性貧血を認め、ヘパリンを中止。第14病日に右下
腹部から右大腿の腫脹が出現、造影CTを施行。造影CTでは右
腸腰筋および後腹膜血腫を認め、dynamic CTでは後腹膜腔に造
影剤の血管外漏出を認めた。直ちに血管造影を行ったところ、
上殿動脈末梢部からの出血であることが判明、同部位をスポン
ゼルにて塞栓した。その後貧血の進行はなく、CTでも後腹膜
血腫の縮小が確認できた。第81病日に退院となった。腫瘍は病
理学的にpT3( SS) , ly0, v1, pN0=Stage IIAと診断された。胃癌
術後に特発性腸腰筋出血を併発した報告例はきわめて稀である。
術前・術後に抗血栓療法を要する患者が増加している背景にお
いて、本症例は示唆に富み、供覧に値する症例と考えられたの
で報告する。
自己免疫性膵炎,胃静脈瘤
― 31 ―
腸腰筋出血,抗凝固療法
41
化膿性尿膜管嚢胞を成因として汎発性腹膜炎に至っ
た成人の1例
旭中央病院 外科1) ,同 臨床病理科2)
川崎圭史1) ,櫻岡祐樹1) ,田中信孝1) ,野村幸博1) ,永井元樹1) ,
古屋隆俊1) ,吉田幸弘1) ,石田隆志1) ,赤井 淳1) ,市田晃彦1) ,
小池大助1) ,瀬尾明彦1) ,福元健人1) ,山田直也1) ,伊藤橋司1) ,
須賀悠介1) ,山本真理子1) ,大谷将秀1) ,大橋雄一1) ,菅原弘太郎1) ,
鈴木良夫2)
症例は80歳男性。2013年10月臍から下腹部にかけての疼痛が出
現し当院初診、以後精査の予定となっていた。翌日、症状の急
性増悪があり、当院救急外来受診した。著明な腹膜刺激徴候を
認め、汎発性腹膜炎の状態であり、緊急開腹となった。術前の
CTでは臍部から膀胱へ連続する膿瘍腔があり、膿瘍壁に石灰
化像を認めた。また、腹水を中等量認めた。鑑別診断として魚
骨の腸管穿孔による膿瘍形成や、化膿性尿膜管嚢胞が考えられ
た。
開腹すると、臍部から膀胱頂部に連続する膿瘍が腹腔内へ穿
破しており、化膿性尿膜管嚢胞の穿孔と診断した。尿膜管を全
て含めるように臍部から膀胱頂部まで尿膜管を切除した。術後
経過は良好であり、術後12日で退院となった。病理学的には化
膿性尿膜管嚢胞の診断で、悪性腫瘍の合併は無かった。
本症例は、尿膜管遺残のBlichert-Toftによる形態学的な分類
では、alternating sinusの型であった。臍部への開口が無いこと
が、膿瘍の腹腔内への破裂に寄与したと考えられた。膿瘍の切
除範囲に関しては、化膿性尿膜管嚢胞自体が30%の割合で再発
することや、尿膜管癌の合併の可能性ある為、臍部から膀胱頂
部まで切除する必要があると考えられる。化膿性尿膜管嚢胞に
男女差はなく,年齢も生後4日から80歳まで広く分布するとい
われている。主症状は腹部腫瘤,発熱,腹痛,膀胱症状などで
あるとされている。本邦では半数で膀胱部分切除されており、
小腸合併切除している報告もある。化膿性尿膜管嚢胞の腹腔内
穿破に起因する汎発性腹膜炎の報告は稀少であり、文献的考察
を添えて報告する。
43
こうかん会日本鋼管病院
浅井 真,大塚征爾,神崎拓磨,志波俊輔,染矢
奥山啓二,吉岡政洋,鈴木 修,朝倉 均
肥満に伴う巨大食道裂孔ヘルニア付近の胃粘膜傷害
(Cameron lesion)による慢性鉄欠乏性貧血の一例
自治医科大学附属病院 消化器肝臓内科
宇賀神ららと,矢野智則,北村 絢,井野裕治,牛尾 純,
三浦義正,林 芳和,佐藤博之,砂田圭二郎,山本博徳,
菅野健太郎
【症例】42歳、男性【主訴】体動時のめまい、ふらつき【現病歴】
生来健康で20歳のころは体重80kg(BMI 28)程度であったが、
初めて健診で貧血を指摘された30歳頃には、体重94kg(BMI 33)
に増加していた。近医の上下部消化管内視鏡検査で出血をきた
す病変を認めず、鉄剤内服で経過観察されていたが、貧血が持
続するため、35歳時に小腸精査目的に当科紹介となった。ダブ
ルバルーン小腸内視鏡検査(DBE)で小腸に血管性病変Type 1a
を複数認めたため、貧血の原因である可能性があると考え電気
焼灼を行った。しかし、鉄剤中断により再び貧血が悪化したた
め、カプセル内視鏡やDBE、EGDを含めた消化管精密検査を再
検したが、胃内に浅いびらんや潰瘍がわずかに認めることがあ
るものの貧血を来す原因としてはとらえず、出血源は特定でき
なかった。その後はヘモグロビン値を維持するように鉄剤内服
を増減しつつ治療継続していたが、入院1年前の41歳時には定
期的な鉄剤の静脈注射が必要となった。さらに、ヘモグロビン
値を維持できなくなって、Hb:5. 2 g/ dlと高度の貧血を来したた
め、入院となった。【経過】入院時の体重は109kg(BMI 38. 3)
まで増加しており、CTで巨大食道裂孔ヘルニアを認め、EGDで
食道裂孔貫通部にあたる胃体中部付近の胃粘膜にびらんと潰瘍
を認めた。Cameron lesionに伴う慢性貧血と診断し、鉄剤に加
えPPIを併用したところ、貧血は速やかに改善した。
【考察】
Cameron lesionとは巨大食道裂孔ヘルニアの食道裂孔貫通部胃
粘膜に生じる限局性胃粘膜びらんまたは潰瘍病変のことを指す。
本例では体重の増加に伴い食道裂孔ヘルニアが巨大化し胃酸・
圧負荷が増大して貧血を増悪させたと考えられた。Cameron
lesionは稀な病態ではないが、胃酸に加え機械的刺激が原因の
ため改善増悪を繰り返すが、潰瘍形成の認められない時期もあ
り、診断に難渋することもある。
剛,中村篤志,
症例は74歳 男性。近医で上部消化管内視鏡検査にて体部大彎
に径15mm大のIIa+IIc病変を指摘され、病理組織学的検査の結
果Group4adenocarcinoma疑いにて当院を紹介され来院した。当
院で施行した上部消化管内視鏡検査では体下部大彎に中央が陥
凹した隆起性の病変が認めた。拡大観察にて腫瘍は正常粘膜に
覆われ陥凹部に一致してirregular MS/ MV patternを呈していた。
病理組織学的検査の結果は前医と同様の結果であった。各種画
像検査の結果明らかな転移を疑う所見は見られずESDを施行し
た。ESD後の病理組織学的検査では粘膜下でのリンパ球の増成
を認め、あたかも粘膜下腫瘍像を呈しておりリンパ球の一部に
はEBER-ISH陽性を示しCarcinoma with lymphoid stoma( pT1b2
( SM2) , int, infβm1y0, v0, pHM0 , VM0)と診断した。Sm2浸潤
のため追加外科切除の適応と考えたが、本人が経過観察を望ま
れたため現在経過観察中である。胃において粘膜下腫瘍様形態
を呈する病変を認めた際にはEBV関連リンパ球浸潤癌を鑑別診
断に挙げる必要があると考えられ文献的考察を加えて報告する。
化膿性尿膜管嚢胞,汎発性腹膜炎
42
粘膜下腫瘍様形態を呈したEpstein-Barr Virus関連に
リンパ球浸潤癌をESDにて切除した1例
胃癌,ESD
44
早期胃癌ESD中に頚部食道穿孔をきたした1例
東京大学医学部附属病院 消化器内科1) ,
同 光学医療診療部2)
山口晴臣1) ,新美惠子1, 2) ,武田剛志1) ,小田島慎也1) ,山道信毅1) ,
藤城光弘1, 2) ,小池和彦1)
症例は88歳女性。ネフローゼ症候群にてステロイド長期内服中
(PSL4mg/ 日)であった。2013年8月健診EGDにて幽門輪後壁に
20mm大の扁平隆起を指摘、生検にてadenocarcinoma( tub1) と診断
され、当科紹介となった。当科EGDでは、幽門輪後壁の早期胃癌
0-IIaの他に、前庭部後壁に12mm大の早期胃癌0-IIcを認め、ESD目
的に入院となった。ESDは蠕動と呼吸性変動のため内視鏡の操作
性が悪く、また幽門輪後壁の病変は十二指腸球部内反転による内
視鏡操作が必要であり3時間半と時間を要したが、2病変とも一括
切除できた。しかし、内視鏡抜去時に切歯15cm食道右壁に8mm大
の穿孔を認め、原因は不明だが術中に食道穿孔をきたしたと考え
られた。軽度の皮下気腫と頸部痛を認めるのみで全身状態は落ち
着いており、まずはクリップによる可及的な内視鏡的縫縮および
絶飲食・抗菌薬による保存的加療とした。術翌日には38度の発熱
とWBC20800/ μl、CRP2. 8mg/ dlと炎症反応の上昇を認めたが、第
2病日には解熱し症状は軽快傾向であった。CTや食道造影では縦
隔膿瘍や造影剤の漏出を認めず、第15病日より食事を開始した。
しかし、37度台の微熱、頸部痛、CRP9. 6mg/ dlと炎症の再燃を認め、
微小穿孔の残存の可能性も否定できず、第20病日より再度絶飲食・
抗菌薬による保存的加療とした。第28病日の食道造影では造影剤
の漏出はなく、CTでは軽度の脂肪織濃度の上昇を認めるのみで
あった。EGDでは穿孔部は閉鎖しており治癒傾向であった。第33
病日より流動食から食事再開、徐々に食上げし、第46病日退院と
なった。
胃ESD中に食道穿孔をきたした報告は極めて少ない。高齢、ス
テロイド長期内服による食道粘膜の脆弱性、長時間にわたる十二
指腸球部内反転による内視鏡操作などの影響の可能性が挙げられ
るが、はっきりとした原因は不明である。今回、早期胃癌ESD中に
頚部食道穿孔をきたし保存的に治療し得た極めて稀な症例を経験
したので、若干の考察を含めて報告する。
大食道裂孔ヘルニア,高度肥満症
― 32 ―
食道穿孔,胃ESD
45
47
無回転型腸回転異常を伴ったスキルス胃癌の1例
横浜市立市民病院 消化器外科1) ,同 炎症性腸疾患科2) ,
同 病理診断科3)
神野雄一1) ,高橋正純1) ,朴
峻1) ,南 宏典1) ,石井洋介1) ,
中川和也1) ,藪野太一1) ,望月康久1) ,村上あゆみ3) ,杉田 昭2)
症例は69歳男性、1か月前からの心窩部痛と嘔吐を主訴に近
医を受診され、上部消化管内視鏡( FGS) で胃体部の巨大すう壁
と幽門前庭部の全周性狭窄を指摘された。4型胃癌( 幽門狭窄
型) が疑われたが、生検ではgroup1であった。当院紹介後、再度
FGS下のボーリング生検ではgroup1であったが、腫瘍マーカー
がCA19-9 151U/ mlと上昇し、腹部骨盤造影CT検査では胃体下
部から幽門までの壁肥厚と周囲の大網の毛羽立ち変化が見られ、
スキルス胃癌4型UML circ H0P1T4a( SE) N0 Stage4が疑われた。
また同CTで腸回転異常症( 無回転型) を初めて指摘された。幽
門狭窄による食事摂取不能状態であったため、術中迅速細胞診
または病理診断で確定診断後に胃切除を行う方針とした。既往
歴に特記すべきことはなかった。 手術所見では腹水なく、迅
速腹腔洗浄細胞診でclass5と診断され、胃全摘・D2郭清・胆嚢摘
出術が施行された。Ladd靭帯による狭窄を起こさないように
右側へ偏位した空腸( 50cm) を挙上してRoux-en-Y再建を行っ
た。 摘出標本では肉眼的に明らかな潰瘍性病変はなく胃体中
下部から幽門まで全周性の壁肥厚を認めた。病理組織学的検査
所見では粘膜下層から筋層を主体に低分化型腫瘍( por2) の浸潤
性の増殖が胃全体に拡がり、por2, type4 UML circ int INFc SE
( pT4) ly3 v3 pN3b( 19/ 24) H0P0 CY1 pStage4であった。 今回、
腸回転異常を伴う胃癌の1例を経験した。腸回転異常にともな
うLadd靭帯での閉塞や腸管のねじれに注意することで、安全に
Roux-en-Y再建が可能であった。腸回転異常を伴う胃癌の報告
はまれではあるが、術後の腸閉塞予防対策や、予防的虫垂切除
に関する報告が散見されこれらを文献的に考察し報告する。
東京医科歯科大学 消化器内科
福与涼介,鈴木康平,斎藤詠子,水谷知裕,和田祥城,藤井俊光,
井津井康浩,大島 茂,中川美奈,岡本隆一,土屋輝一郎,
柿沼 清,東 正新,永石宇司,大岡真也,長堀正和,中村哲也,
荒木昭博,大塚和朗,朝比奈靖浩,渡辺 守
症例は69歳男性、 2008年7月より慢性的な水様性下痢を認め前
医受診し精査をするも特異的な所見はなく過敏性腸症候群と診
断された。2012年3月に6年間赴任したマレーシアより帰国後、
7月から38度台の発熱、下痢および全身倦怠感が間欠的に出現
した。2013年5月に前医を再診しCRPの上昇を認め精査目的に
入院となった。腹部造影CTでは小腸壁の肥厚を認め、カプセ
ル内視鏡にて空腸の粘膜萎縮および糜爛を認め当院に9月紹介
となった。精査入院の後に経口的に小腸シングルバルーン内視
鏡を施行した。胃は軽度の萎縮性変化のみであった。幽門から
小腸を400cmまで観察した。十二指腸球部から空腸にかけて絨
毛はびまんおよび連続性に萎縮し、一部腫大および白班呈する
部位も認めたが潰瘍や糜爛は認めなかった。病理学的に絨毛構
造は肥大および消失しており粘膜固有層内にリンパ球の強い浸
潤を認めた。免疫染色にてCD3, CD5, CD43が陽性で、CD7は陰
性および陽性が混在していた。その他CD20, CD79a陽性細胞は
比較的少数であった。CD4, CD8, CD10, CD56, CD30, bcl1, bcl2,
CKAE1/ AE3 は 陰 性。EVB-ISH ( -) 、Ki-67 10% 程 度。ま た
HTLV-1 抗 体 陰 性 で あ り 小 腸 原 発 の PTCL-NOS と 診 断 し た。
PET-CTにて軽度腸間膜リンパ節の腫大を認めるも異常集積は
認めず、Lugano国際分類にてStage2-1と診断しTHP-COP療法を
開始した。消化管原発の悪性リンパ腫は全悪性リンパ腫の
5-20%に認め、PTCL-NOSは本邦では当症例を含め7例のみの
非常に稀な疾患である。本症例は長期かつ緩徐な臨床経過をた
どっており内視鏡所見においても絨毛の萎縮といった興味深い
所見を呈している。
スキルス胃癌,腸回転異常
46
PTCL-NOS,小腸悪性リンパ腫
48
閉塞性黄疸を来した十二指腸濾胞性リンパ腫の1例
国立病院機構災害医療センター 消化器内科
佐藤 慧,田中匡実,林 昌武,島田祐輔,原田舞子,佐々木善浩,
上市英雄,平田啓一,川村紀夫
【症例】70歳代、男性【主訴】黄疸、食欲低下【現病歴】2012年4月
に腹部膨満感を主訴とし肝膿瘍の診断で当科入院。入院時に行っ
た上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部から下行脚にかけ白色顆
粒状隆起病変と下行脚に陥凹を伴う隆起性病変を認めた。一方、
腹部CTでは腸間膜に多発する軟部陰影を認め一部腹膜の肥厚も認
め悪性リンパ腫が疑われた。カプセル内視鏡と下部消化管内視鏡
検査で小腸・大腸粘膜にも同様の病変が認められた。後日Vater乳
頭周囲より採取した組織には、びらん性変化を伴った十二指腸粘
膜間質に充血と形質細胞、リンパ球の浸潤を認めた。さらにCD20
( +) 、CD79a( +) 、CD3( −) 、CD45RO( −) 、CD5( −) 、CD10( +) 、
bCl-2( +) を示しており、Bernard分類Grade1相当の十二指腸濾胞性
リンパ腫と診断した。血液内科へ紹介したが、高齢であることや
ご本人の希望もあり積極的な治療はせずに経過観察となっていた。
2013年8月下旬に黄疸が出現し当科受診。精査の結果、十二指腸病
変の増大により十二指腸狭窄と乳頭浸潤による閉塞性黄疸と診断
し当科入院となった。【経過】入院後内視鏡的なドレナージを試み
たが困難であり、PTCDによる経皮的胆道ドレナージを行った。状
態安定した後PTCDと内視鏡を用いて胆管と十二指腸にメタリッ
クステントを同時に挿入した。その後、黄疸は軽快し食事摂取で
きるまでになり自宅退院となった。【考察】消化管リンパ腫は節外
性リンパ腫の30〜50%を占めるが全消化管悪性腫瘍における頻度
は1〜10%と比較的稀な疾患である。好発年齢は50代後半であり
性差はない。腸管濾胞性リンパ腫に対する治療は、リンパ節性濾
胞性リンパ腫に準じて行われることが多いが非常に稀な疾患であ
ることもあり、標準的な治療法は確立されていない。多くの症例
では腫瘍の増大速度が遅く緩徐な経過をたどる。さらに化学療法
による治療奏功率が高いにも関わらず再発率が高いため、無症状
例ではwatch and waitが治療選択されていることも多い。十二指腸
濾胞性リンパ腫は稀な疾患であるのに加え、腫瘍の増大による閉
塞性黄疸を来した非常に稀な症例を経験したので報告する。
慢性的な水様便および発熱を契機に発見された小腸
原発perpheral T-cell lymphoma, not otherwise specified
( PTCL-NOS) の一例
腸閉塞にて発症した回腸inflammatory fibroid polypの
1例
東京厚生年金病院 消化器内科
佐久間信行,二口俊樹,岡崎明佳,山川元太,吉良文孝,湯川明浩,
森下慎二,佐藤芳之,松本政雄,新村和平
症例:
73歳、男性。平成25年11月に嘔吐と腹痛を主訴に近医を受診し、
上部消化管内視鏡検査を施行したが、明らかな異常所見は認め
られなかった。帰宅後も嘔吐が持続したため、当院救急外来を
受診した。腹部単純レントゲン検査および、来院時に腎機能障
害を認めたため腹部単純CT検査にて腸閉塞の診断で入院と
なった。第2病日、イレウス管を挿入し、腹部単純レントゲン検
査上、腸閉塞は解除された。第6病日、腎機能が改善したため、
腹部造影CT検査を施行し、小腸腫瘍が指摘された。小腸内視
鏡検査では、回盲弁より30cm口側の回腸に、消化管内腔のほぼ
全体を占める粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた。生検を施行
したが、腫瘍そのものの検出は出来なかった。第14病日、診断・
治療目的に外科転科となり、回腸部分切除術を施行した。術中
所見では、病変を先進部として10cmほどの腸重積を合併した小
腸 腫 瘍 が 認 め ら れ た。切 除 標 本 で は、病 理 組 織 学 的 に
inflammatory fibroid polyp( IFP) と診断された。
考察:
inflammatory fibroid polypは、消化管に発生する良性腫瘍であり、
胃に多いとされるが、小腸に発生することはまれである。今回
は、腸閉塞にて発症した回腸inflammatory fibroid polypの1例を
経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
十二指腸濾胞性リンパ腫,閉塞性黄疸
― 33 ―
回腸,inflammatory fibroid polyp
49
51
(演題取下げ)
内視鏡的整復後に短期間で再発した横行結腸軸捻転
症の1例
横須賀市立うわまち病院 消化器内科1) ,同 外科2)
酒井和也1) ,妹尾孝浩1) ,森川瑛一郎1) ,湯山 晋1) ,高邑知生1) ,
中谷研介2) ,岡田晋一郎2) ,菅沼利行2)
我々は下部消化管内視鏡検査での整復後に短期間で再発し、横
行結腸切除術を施行した横行結腸軸捻転の症例を経験したので
報告する。症例は36歳女性、腹痛を主訴として当院外来を受診
した。腹部は全体的に膨隆しており、上腹部に圧痛を認めた。
腹部単純X線検査で腸管拡張像を認め、腹部CT検査では脾彎曲
での結腸の狭窄、さらに、口側の横行結腸の捻転、上行結腸・
横行結腸の拡張を認めたため横行結腸軸捻転症と診断した。下
部消化管内視鏡検査を施行し、S状結腸は容易に通過し、脾彎
曲での粘膜の集中を認めたが、血流障害を示唆する所見は無く
整復を行った。整復後の経過は良好であり第7病日に退院と
なったが、退院翌日再度腹痛を訴え来院した。腹部CT検査に
て本症の再発と診断し、再度下部消化管内視鏡検査にて整復し
た。その後待機的に横行結腸切除術を施行した。術中所見では
横行結腸は著名な過長及び拡張を認め、肝彎曲・脾彎曲部では
後腹膜の固定は認めなかった。術後、軸捻転の再発無く退院と
なった。横行結腸軸捻転症の治療はほとんどの例で外科的治療
が選択されているが、整復術のみでは再発例が多く、治療時期
を逸すると重篤となる可能性がある。虚血性変化が無い場合で
も横行結腸切除術を付加した観血的整復術が望ましいとされる。
横行結腸軸捻転症は、結腸軸捻転症の中では比較的稀な疾患で
あり、Incomplete fixation typeの回転異常症が原因と考えら
れる貴重な一症例と考えられた。
横行結腸軸捻転症,内視鏡的整復術
50
自己免疫関連蛋白漏出性胃腸症に後天性
vonWillebrand症候群を合併し、ステロイドが著効し
た1例
埼玉医科大学 総合診療内科1) ,同 血液内科2) ,
同 リウマチ膠原病内科3) ,同 病理診断部4)
林 泰樹1) ,山岡 稔1) ,米野和明1) ,大庫秀樹1) ,草野 武1) ,
芦谷啓吾1) ,野口 哲1) ,小林威仁1) ,有馬 博1) ,木下俊介1) ,
飯田慎一郎1) ,井上清彰1) ,脇本直樹2) ,横田和浩3) ,本間 琢4) ,
茅野秀一4) ,三村俊英3) ,山本啓二1) ,今枝博之1) ,中元秀友1)
症例は69歳女性。1か月前より眼瞼浮腫、臥床時呼吸苦、両下腿
浮腫が出現したため、近医受診。胸部X線で両側胸水を指摘さ
れ、当科紹介受診し、即日入院。低アルブミン血症( Alb 2. 8g/ dl)
を認めたが、肝腎心機能正常、尿蛋白軽度陽性( 369mg/ day) で
あ っ た。 APTT の 延 長 ( 82 秒) を 認 め、第 VIII 因 子 活 性 低 下、
vonWillebrand因子活性、抗原量の低下を伴っており、血漿交差
混合試験でインヒビターの存在が示唆され、3年前には正常で
あったことから後天性のvonWillebrand症候群と考えられた。
CTで胸腹水と腹腔内リンパ節の軽度腫大を認めた。滲出性胸
水だが、細胞診では異型細胞を認めず、慢性炎症細胞浸潤を認
めた。上部消化管内視鏡検査で胃全体に浮腫状粘膜を認め、生
検では炎症細胞浸潤の所見であった。下部消化管内視鏡検査で
は直腸に粘膜内出血の所見、病理は間質へのリンパ球浸潤、鬱
血を認めた。免疫染色では間質内にIgG、IgA陽性の形質細胞浸
潤を認めた。蛋白漏出シンチでは胃から大腸にかけて広範に蛋
白漏出を認めた。抗核抗体160倍、CH50 10以下、蛋白尿、胸膜
炎の所見からSLEのACR分類基準は3項目しか満たさないもの
の、消化管粘膜にIgA、IgG陽性形質細胞浸潤を認めたことから、
自己免疫関連蛋白漏出性胃腸症が考えられた。PSL40mg/ 日の
投与を開始し、低蛋白血症の改善、APTTの正常化、胸腹水の消
失 が 得 ら れ た。自 己 免 疫 関 連 蛋 白 漏 出 性 胃 腸 症 に 後 天 性
vonWillebrand症候群を合併し、ステロイドが著効した稀な症例
を経験したため、文献的考察も含め報告する。
52
mFOLFOX6療法施行中に高アンモニア血症をきた
した1例
( 公財) 東京都保健医療公社東部地域病院 外科
武田武文,岸根健二,矢崎悠太,大久保悟志,佐藤 剛,内藤滋俊,
吉野耕平,中谷晃典,北島政幸,渡部智雄,落合 匠,西村和彦,
二川俊二
mFOLFOX6療法は切除不能進行再発大腸癌における標準化学
療 法 の 一 つ で あ り,現 在 広 く 行 わ れ て い る。今 回 我々 は,
mFOLFOX6療法中に意識障害をともなう高アンモニア血症を
来たした症例を経験したので若干の考察を加え報告する.症例
は81歳女性。S状結腸癌穿孔にてS状結腸切除を施行。同時性
多発肝転移に対し、外来にてXELOX療法を施行するも、治療開
始直後から意欲低下を自覚、家族からも抑うつ様の症状を心配
され、休薬/ 減量を繰り返していた。XELOX療法を3コース施
行後、入院での治療を希望され、mFOLFOX6療法に変更となっ
た。入院mFOLFOX6療法開始後、day2の夕方頃より徐々に意識
レベルの低下がみられ、day3の早朝にはJCS-300に陥った。血
液検査にてアンモニア490μg/ dlと高アンモニア血症を認めら
れた。ただちに化学療法を中止とし、分岐鎖アミノ酸製剤の投
与およびラクツロースによる浣腸を施行した。治療開始から数
時間で徐々に意識レベルの改善が認められ、同日夜には完全に
回復し、神経症状の改善も認められた。mFOLFOX6療法の有害
事象としては、末梢神経障害, 骨髄抑制などが主であるが、稀に
高アンモニア血症を来すことがある。原因薬剤としては、オキ
ザリプラチンの可能性もあるが、単剤投与ではフルオロウラシ
ルの報告例しかないこと、およびFOLFIRI療法で同様の報告が
散見されることより、フルオロウラシル投与に起因する可能性
が高いと考えられた。また、XEROX施行後より訴えのあった、
意欲低下/ 抑うつ症状も高アンモニア血症によるものであった
可能性が考えられた。今回、我々はmFOLFOX6療法中に意識障
害をともなう高アンモニア血症を来たした症例を経験した。フ
ルオロウラシル投与中に意識障害を認めた際には高アンモニア
血症も念頭において診療すべきと考えられた。
蛋白漏出,自己免疫
― 34 ―
mFOLFOX6,高アンモニア血症
53
55
胆管微小過誤腫に併存した肝未分化癌の1例
東大宮総合病院 消化器内科1) ,同 外科2) ,同 病理診断科3) ,
同 総合内科4)
白石夏太郎1) ,市原広太郎1) ,安達哲史1) ,村田継佑1) ,江川優子1) ,
鳥谷部武志1) ,南雲大暢1) ,齋藤訓永1) ,多田正弘1) ,風間博正1) ,
金 達浩2) ,小川史洋3) ,神田大輔4)
症例は,89歳男性。平成24年6月より呼吸苦,顔面と両側下腿の
浮腫出現。その後も呼吸苦が改善せず同月当院救急搬送,入院
となった。腎機能障害のため腹部単純CT,エコーを行い,肝辺
縁の不整,著明な胸腹水貯留,肝内大小不同の腫瘤状陰影が多
数認められた。肝癌,肝硬変に伴う腹水貯留と考えられた。
Child-Pugh分類C(10点)であり,高齢の肝不全症例のため,積
極的な治療介入は困難と判断。症状緩和目的で腹水コントロー
ルを中心に加療を行った。利尿薬投与や腹水穿刺排液を施行し
たが,全身状態は徐々に悪化し,第11病日に永眠された。家族
の承諾により病理解剖を行った。肉眼的に肝臓全域にわたり直
径25mm程度のまでの腫瘍性病変がびまん性に多数認められた。
組織学的に腫瘍細胞は胞体が乏しく,短紡錘形から類円形の核
を有したN/ C比が極めて高い腫瘍細胞であり,充実性に増殖,
多数の破骨細胞様腫瘍細胞の混在が見られる所見であった。組
織像のみでは原発性肝癌と診断困難な未分化癌に相当する像で
あった。非腫瘍部の肝組織では門脈域の線維性拡大は認められ
たが,線維性隔壁のような明らかな肝硬変の所見は認められず,
活動性の炎症性変化にも乏しい所見であった。しかし,多数の
門脈域辺縁部では胆管微小過誤腫が認められた。よって本症例
は多発した胆管微小過誤腫が背景に併存する肝原発未分化癌と
考えられた。胆管微小過誤腫は臨床症状がみられず,経過観察
可能な病変である。しかし,胆管微小過誤腫に併存した胆管細
胞癌,胆管細胞癌と肝細胞癌の重複癌症例も稀ではあるが報告
されている。本症例も貴重な症例であると考え,若干の文献的
考察を加えて報告する。
筑波記念病院 消化器内科1) ,同 病理2) ,とき田クリニック3) ,
自治医科大学 感染・免疫学講座ウイルス学部門4)
森川裕史1) ,添田敦子1) ,小林真理子1) ,越智大介1) ,杉山弘明1) ,
本橋 歩1) ,設楽佐代子1) ,池澤和人1) ,中原 朗1) ,臺 雄一2) ,
八子 徹3) ,岡本宏明4)
【症例】60歳代、男性【既往歴】糖尿病、30歳代に肝疾患で入院
し肝生検を施行(詳細不明)。【現病歴】糖尿病のコントロール
は不良であった。日本酒2000ml、焼酎2000ml、ビール350mlを
毎日飲酒し、1ヵ月前からは体調不良のためビール350mlへ減量
していた。2013年6月、気分不快と倦怠感を主訴に前医を受診し、
高度肝障害を認め当院へ救急搬送となった。【入院後経過】当
院初診時、AST1581IU/ l、ALT2032IU/ l、γGTP303IU/ l、T-Bil18.
7mg/ dl、PT24%、HBV マ ー カ ー は HBsAg ( +) 、Anti-HBs ( +) 、
HBeAg( +) 、IgM anti-HBc( -) 、anti-HBc( +) であった。病態の
主因は重症型アルコール性肝炎と考え、安静・ビタミンK投与・
G-I療法を行うも、2病日に羽ばたき振戦が出現した。ステロイ
ドパルス療法を開始したが意識状態に改善はみられず、5病日
から血漿交換を導入した。7病日には急性腎不全を発症し、9病
日目に深昏睡、10病日に死亡確認となった。家族の同意を得て、
肝ネクロプシーを施行した。【病理結果】壊死性炎症性反応が
均一にみられ、肝小葉の巣状壊死を多数伴った古典的急性肝炎
像であった。門脈周囲にはF3-4相当の線維化が認められた。
肝細胞周囲線維化もみられるが、脂肪化がほとんどみられず、
アルコール性肝炎は否定的であった。【遺伝子検査】当院初診
時のHBV DNA( RT-PCR) は6. 5LC/ ml、遺伝子型はC型( C2) で
あった。2種類のHBVを分離し、大半は病原性の少ないと考え
ら れ る preS1-146 塩 基 欠 損 HBV で あ っ た が、病 原 性 の あ る
preS1-非欠損HBVをわずかながら( 1-10%) 検出した。【考察】
重症アルコール肝炎と診断し加療するも、その後の病理および
遺伝子学的検索の結果、遺伝子変異を伴うde novo B型肝炎の劇
症化例と診断し得た興味ある症例である。
肝未分化癌,胆管微小過誤腫
54
高齢男性に発症した薬剤起因性自己免疫性肝炎の
1例
東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科
宗友洋平,松井寛昌,石田仁也,天野克之,上竹慎一郎,有廣誠二,
穗苅厚史,石川智久,高木一郎,田尻久雄
【緒言】薬剤起因性自己免疫性肝炎( AIH) の概念は1971年Reynolds
らが下剤として繁用されていたoxyphenisatinによるルポイド肝炎
を報告したことに始まり,その後種々の薬剤に起因するAIHが報
告されている.しかし,薬剤起因性AIHにおいて惹起される自己
免疫現象と,肝細胞障害の機序は未だ十分解明されていない.今
回我々は,スタチン製剤内服後に発症したと思われる薬剤起因性
AIHの1例を経験したので報告する.【症例】症例は74歳,男性.
2009年より脂質異常症に対して内服加療中であった.2012年3月
に間質性肺炎と診断されPSL投与を開始した.同時期よりスタチ
ン製剤の副作用と思われる下肢筋痙攣が出現したため,脂質異常
症治療薬を4回変更するも症状改善せず,PSL,脂質異常症治療薬
を含め薬剤は全て中止となった.その後,AST 703 IU/ L,ALT 665
IU/ Lと肝障害が出現したが,薬物性肝障害の疑いで経過観察と
なっていた.一時的に肝障害は改善傾向であったが,2013年8月よ
り再び増悪を認めたため,精査加療目的にて10月に当院紹介受診,
入院となった.血液検査ではAST 441 IU/ L,ALT 350 IU/ L,T-Bil
2. 4 mg/ dl,ALP 464 IU/ L,γ-GTP 158 IU/ L,IgG 2314 mg/ dl,抗核
抗体 160倍,HLA DR4 陽性であった.肝生検では門脈域の線維性
拡大,interface hepatitis,形質細胞を含む炎症細胞浸潤,肝細胞のロ
ゼット形成を認め,AIHと診断した.PSL 40mg/ dayより投与開始し,
血液検査所見の改善を認め,現在PSL漸減中である.【考察】スタ
チン製剤は何らかの遺伝的背景を有する患者では薬剤起因性AIH
を引き起こす可能性があるとの報告がある.本症例は,数種類の
スタチン製剤の内服後より肝障害が出現し,内服中止後も改善認
めなかった.AIH国際診断基準スコアで13点( AIH,probable) であ
り,PSL投与にて著明な改善を認めた.これらの経過と所見から,
本症例はスタチン製剤に起因すると思われる薬剤起因性AIHと診
断した.【結語】高齢男性に発症した薬剤起因性自己免疫性肝炎の
1例を経験した.稀な症例と考え報告した.
アルコール多飲患者に発症した変異ウイルスを伴う
de novo B型劇症肝炎の一例
de novo B型肝炎,劇症肝炎
56
肝静脈の段階的な血栓化により肝不全死した
Budd-Chiari症候群の1例
国立病院機構高崎総合医療センター 消化器病センター1) ,
同 研究検査科2) ,
公立藤岡総合病院附属外来センター 消化器内科3)
湯浅絵理奈1) ,長沼 篤1) ,星野 崇1) ,林 絵理1) ,小柏 剛1) ,
上原早苗1) ,宮前直美1) ,工藤智洋1) ,高木 均1) ,石原 弘1) ,
小川 晃2) ,壁谷建志3)
【緒言】今回我々は、右中肝静脈の血栓化が先行し、その後左肝静脈の血栓化が
生じて肝不全死に至ったBudd-Chiari症候群の1例を経験したので報告する。
【症例】35歳、女性。主訴:発熱、嘔気、腹部膨満。既往歴:28歳時に堕胎後、
右内頚静脈血栓症発症(ヘパリン治療後、1年半ワルファリン服用)、32歳時流
産。現病歴:平成22年より非B非C型肝硬変にて近医へ通院中、平成23年8月CT
にて、下大静脈( IVC) の閉塞と右中肝静脈の閉塞所見を認めていたが、診断に
至らなかった。平成24年1月中旬より発熱、嘔気、腹部膨満が出現し、前医入院。
CTではIVC及び右中肝静脈の狭小化と左肝静脈内に新鮮な血栓による閉塞所見
を認め、肝左葉腫大を認めた。ここで初めてBudd-Chiari症候群と診断され、当
科紹介入院となった。入院時身体所見:意識清明。腹部では心窩部に腫大した
肝を3横指触知し腹水貯留を認めた。腹壁静脈怒張あり。四肢に浮腫著明。経
過:入院時PT37%と凝固能低下あり、新鮮凍結血漿の輸血を施行。左肝静脈血
栓 の 溶 解 に よ る 腹 水、浮 腫 の 改 善 を 期 待 し、ダ ナ パ ロ イ ド ナ ト リ ウ ム
2500U/ dayによる治療を開始。血栓症の素因検索ではカルジオリピン抗体IgG
が陽性であり、抗リン脂質抗体症候群が疑われた。外科及び放射線科へ相談す
るも、外科治療及びIVR治療は困難と判断された。ダナパロイドナトリウムに
よる治療を1週間行うも左肝静脈血栓の改善は得られず、腹水は悪化した。徐々
に肝性脳症、腹水、浮腫などの肝不全が進行したため、夫をドナーとする生体
肝移植を検討していたが、2月下旬永眠された。剖検では右中肝静脈領域は肝
硬変の所見であったが、左肝静脈領域はうっ血性に腫大しており、新鮮な肝静
脈血栓症を認めた。【考察】本症例は杉浦分類II型(IVC完全閉塞例)に肝内静
脈閉塞病変を合併した症例で、まず右中肝静脈閉塞が先行し、その後残されて
いた左肝静脈に血栓化が生じたことで急速に肝不全が進行したものと考えられ
た。本症例のように肝静脈の段階的な血栓化を剖検で確認できた報告はほとん
どなく、示唆に富む貴重な症例と思われ今回報告する。
自己免疫性肝炎,脂質異常症
― 35 ―
Budd-Chiari症候群,肝静脈血栓
57
発症早期の持続的血液濾過透析が著効したアルコー
ル性ケトアシドーシスの1例
公立富岡総合病院 消化器科
富澤彩智,齋藤秀一,増田智之,渋澤恭子,中山哲雄,吉田佐知子,
仁平 聡
症例は59歳男性。若い頃よりアルコールを多飲し、急性アル
コール中毒の既往歴もある患者。数ヶ月前より飲酒量が増えた
ことにより無断欠勤や二日酔いの状態で出勤することが増えて
きた事が契機となり、失職。1ヶ月前に転職するもストレスに
より飲酒量は増えていた。数日前より食事はほとんど摂取せず、
焼酎を10合/ 日飲酒していた。発症前日も同様に日中から飲酒
していたが、夜になり腹痛出現。嘔吐・下痢(血便なし)も認
められ、腹痛の改善認められなかったため、翌日の明け方に当
院救急外来を受診された。受診時より著名な代謝性アシドーシ
ス( pH6. 817、HCO3-2. 2mmol/ l、BE-31. 4mmol/ l、PaO290. 1mmHg、
PaCO213. 6mmHg、乳酸5. 17mmol/ l) 、AnionGap53. 2mEq/ l-1が認
められていたが、血圧は112/ 62mmHgと保たれていた。アル
コール性ケトアシドーシス(AKA)疑いとしてブドウ糖の投与、
脱水補正、ビタミン剤投与など行うも、入院後にショックとな
り呼吸不全も認められた。直ちに人工呼吸管理を開始しカテコ
ラミンの投与を行った。カテコラミン投与後も循環動態安定せ
ず、腎機能障害、高度アシドーシスの補正目的で持続的血液濾
過透析( CHDF) を開始。その後ショック、アシドーシスの改善
が認められた。第2病日には、腎機能改善され、尿量維持が確認
されたためCHDFを中止。第4病日には抜管され、第5病日にカ
テコラミンの投与を中止となり、第10病日、独歩にて退院となっ
た。AKAではしばしば重篤な合併症の出現やアシドーシスが
高度となり、ショックや心肺停止に陥る報告例が認められる。
治療開始後の反応不応例や重症例にはCHDFが非常に有効であ
る可能性があり、治療法の一つとして早期に開始する事も念頭
に置く必要がある。
59
水戸済生会総合病院 消化器内科
重政理恵,鹿志村純也,仁平 武,中村琢也,濱中紳策,大川原健,
渡辺孝治,柏村 浩,浅野康治郎
【はじめに】胆嚢癌の初発症状は腹痛や黄疸であることが多く、
骨転移の症状で発症することは稀である。【症例】86歳、男性。
主訴:左上肢の痺れと痛み。既往歴:74歳時に前立腺肥大の手
術。76歳〜高血圧にて降圧剤の内服治療を行っている。現病
歴:2010年5月から左上肢の痺れと痛みを自覚して、6月に近医
から当院へ紹介となった。頚部のMRIと骨シンチから頸椎
(C7)の左椎弓に骨破壊像を認めて骨転移が疑われた。原発病
変の検索目的で腹部CTを施行した所、胆嚢底部に乳頭状増殖
を示す腫瘤を認めた。また、大動脈周囲や胆管周囲のリンパ節
腫大がありリンパ節転移と考えた。腫瘍マーカーはCA19-9が
231. 9と高値であった。以上から頸椎転移とリンパ節転移を伴
う 胆 嚢 癌 と 考 え、頸 椎 転 移 か ら 生 検 を 行 い、papillary
adenocarcinomaを確認してStage IV b の胆嚢癌と診断した。頸椎
の転移病変に対しては放射線治療(40Gy/ 4週間)を行ったが病
変は縮小せずに症状も増悪した。その後、TS-1による全身化学
療法も導入したが効果なく緩和治療を行い、症状出現後10ヶ月
で永眠された。【考察】骨転移を生じる癌は肺癌,乳癌,腎癌,
前立腺癌、甲状腺癌などが多く、胃癌などの消化器癌では骨転
移の頻度は低いとされているが、近年結腸癌からの転移が増加
傾向との報告もある。骨転移の治療は原発病変の薬剤有効性、
放射線感受性により肺癌は化学療法、乳癌や前立腺癌はホルモ
ン療法、甲状腺癌は放射性ヨウ素が用いられる。胆嚢癌の経過
中に骨転移が生じるのは末期になってからのことが多く、骨転
移による症状が契機となって発見される胆嚢癌は非常に稀であ
る。胆嚢癌患者で骨転移が生じた場合は緩和治療のみを行うこ
とが多く、骨転移を伴う胆嚢癌に対するコンセンサスの得られ
た治療法は確立されていない。本症例でも除痛目的の放射線治
療は有効と言えず、TS-1による全身化学療法も無効と判断され、
疼痛緩和に重きをおいた治療が行われた。今後、症例の蓄積に
より病態の解明と治療法が確立されることが期待される。
胆嚢癌,骨転移
アルコール性ケトアシドーシス,ショック
58
高Ca血症と白血球増多をともなった進行胆嚢癌の
一例
東京都済生会中央病院 内科
竹内優志,岩崎栄典,星野 舞,瀧田麻衣子,石山由佳,岸野竜平,
酒井 元,泉谷幹子,船越信介,中澤 敦,塚田信廣
【症例】65歳男性。生来健康な印刷業を営む男性。PS1。入院数か
月前より体重の減少を自覚していたが様子を見ていた。入院当日
に嘔吐し、右季肋部痛が出現したため救急外来を受診。腹部CT検
査上、胆嚢腫瘤と腹腔内の多発リンパ節腫大、腫瘍による中部胆
管狭窄、肝内胆管拡張を認めた。高熱、炎症反応上昇を伴ったた
め閉塞性化膿性胆管炎と診断し、緊急入院し胆管ドレナージを施
行した。その後の精査で胆嚢癌stage IVb(多発肝転移、リンパ節転
移、腹膜播種)の診断となり、modified GEM(1000 mg / m2 day1, 8)
+ CDDP(25mg / m2 day1, 8)を開始した。3コース投与後CTによる
治療効果判定を行い、病勢悪化と診断し、二次治療としてGEM
(1000 mg / m2 day1, 15)+S-1(100mg day1-14)に変更した。第30
病日に食思不振Grade 3のため入院となった。入院時、高カルシウ
ム血症(Ca 11. 0 mg/ dl)、感染兆候を伴わない白血球増多症(WBC
98500/ μl)があり、精査したところPTH-rP 4. 1 pmol/ l、G-CSF 68.
6 pg/ mlと高値を認めた。補液、ビスホスホネート製剤にて加療し
たが、入院6日目に肺血栓塞栓症を発症。その後、腹腔内の転移巣
が自壊し癌性腹膜炎が急速に悪化したため、腹水穿刺などで対応
した。全身状態は急速に悪化し、入院28日目に悪液質で死亡した。
病理解剖を施行したところ、高度に浸潤した胆嚢癌(低分化腺癌)、
癌性腹水を認め、さらに多発する血栓症(肺動脈、右室、脾静脈、
腸間膜静脈)をきたしていた。原発巣の免疫組織化学検査では
G-CSFは陰性、PTH-rPは陽性であった。【考察】医学中央雑誌で検
索したところ、胆嚢癌にG-CSF高値をともなった症例は20例で
あった。平均余命8. 4か月、ほとんどが低分化で、腺癌が9例、腺扁
平上皮癌4例、他の組織型は8例であった。白血球増多に高カルシ
ウム血症をきたした胆嚢癌症例は本例が4例目であった。PTH-rP
とG-CSFはいずれも腫瘍の増殖に関与していることが知られてお
り、本例では病勢悪化とともに高値を示し示唆に富む症例であっ
た。
頸椎転移を契機に発見された胆嚢癌の一例
60
低侵襲性治療によりいずれも根治し得た、胃、肝、
上行結腸の3重癌症例
高崎総合医療センター消化器病センター 消化器科1) ,
同 外科2) ,群馬大学重粒子線医学研究センター3)
八木直樹1) ,高木 均1) ,星野 崇1) ,林 絵理1) ,上原早苗1) ,
宮前直美1) ,長沼 篤1) ,工藤智洋1) ,戸谷裕之2) ,清水 尚2) ,
茂木陽子2) ,小山佳成3) ,渋谷 圭3) ,大野達也2, 3)
【症例】70歳代後半女性. C型肝炎のscreening中に肝S5に最大径
5cm の 腫 瘍 濃 染 像 を 認 め、AFP 32ng/ ml, PIVKAII 4240
mAU/ ml, より肝細胞癌( HCC) として治療目的で、2012年10月
紹介入院となった。TACE前のscreeningで胃角部大彎にIIa+IIc
病変認め、生検で高分化型管状腺癌であった. さらに下部消化
管精査で上行結腸に約2. 5cm大のIsポリープを認め、生検では
tubulovillous adenomaであったが、大きさからも癌の合併が疑わ
れた。高齢でもありご本人、ご家族ともに低侵襲性治療を望ま
れたため、それぞれ以下のごとく治療を行った。HCCに対して
はミリプラチン併用TACE、その1か月後胃がんに対してESDを
施行し病理学的にIIa+IIc, 10x13mm大, tub1腺癌, m, ly0, v0,
断端陰性であり完全切除を確認した。その2か月後、TACE後残
存HCCに対して4分割で52. 8Gyの重粒子線治療を施行。その6
か月後にHCC制御を確認し、腹腔鏡補助下拡大右半結腸切除施
行した。病理学的にtype1, 23x15mm大, tub1腺癌, sm1, ow( -) ,
aw( -) , ly0, v0, n0であった。入院期間は胃ESDが8日間、肝は
TACE8日+重粒子9日で計17日間、上行結腸癌腹腔鏡下手術は8
日間と総計約1か月間であり、特に重篤な合併症もなく経過良
好である。【考察】今後癌患者の高齢化に伴い、多重癌であって
も低侵襲性治療により根治を目指す患者は増加すると考えられ、
その典型例として本症例を提示した。当患者は腹部には腹腔鏡
下結腸切除のわずかな術創があるのみで3重癌を克服し合併症
もなく元気に通院されている。
G-CSF,胆嚢癌
― 36 ―
重複癌,低侵襲性治療
61
悪性との鑑別に苦渋した進行性の閉塞性黄疸を呈し
たMirizzi症候群の1例
群馬大学医学部 臓器病態外科学
須藤佑太,須納瀬豊,平井圭太郎,吉成大介,小川博臣,塚越浩志,
山崎穂高,高橋憲史,高橋研吾,五十嵐隆通,田中和美,
竹吉 泉
症例は52歳男性、腹痛と倦怠感を主訴に近医を受診した。閉
塞性黄疸を認め、精査のため近医に入院となった。CT上、上部
〜肝門部の胆管壁肥厚とその肝側胆管の拡張所見を認めた。ま
た、胆嚢頚部に結石を認めたが、胆嚢の壁肥厚は強くなかった。
ERCPで肝外胆管の狭窄を認めるものの壁はスムーズであった。
細胞診では悪性所見を認めず経過観察となった。経過観察の過
程で、進行性の閉塞性黄疸を呈してきたためBD tubeが挿入、精
査加療目的に当院紹介となった。CTでは胆嚢頚部に12mmの石
灰化を伴う結石を認め、上部〜肝門部胆管には壁肥厚を認めた
が、腫瘍性か炎症性かの鑑別は困難であった。以上より、胆石
嵌頓によるMirizzi症候群または胆管癌と考えられ、良性であっ
ても狭窄が強く自然軽快は望めないものと考え手術を施行とし
た。術中所見では肝下面に大網が炎症性に癒着し、十二指腸間
膜にも癒着と線維化が見られた。胆嚢および胆管壁は肥厚して
おり、良悪性の判断は難しく、胆管の一部を術中迅速診に提出
した。組織学的に良性と診断されたため、胆石嵌頓による
Mirizzi症候群と診断し、肝外胆管切除+胆管空腸吻合を行った。
病理組織では胆嚢および胆管壁には黄色肉芽腫を認めたが腫瘍
性病変は見られなかった。胆嚢炎、胆管炎などの強い炎症症状
を伴わないままに閉塞性黄疸を来たし、胆道癌との術前の鑑別
診断に難渋したMirizzi症候群の症例を、文献的考察を加えて報
告する。
63
東京慈恵会医科大学附属柏病院 消化器・肝臓内科1) ,
同 内視鏡部2) ,
東京慈恵会医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科3)
福栄亮介1) ,湯川豊一1) ,月永真太郎1) ,梶原幹生1) ,小林亮太1) ,
高見信一郎1) ,小林寛子1) ,伊藤善翔1) ,松本喜弘1) ,高倉一樹1) ,
小田原俊一1) ,内山 幹1) ,小井戸薫雄1) ,斎藤恵介2) ,小山誠太2) ,
安達 世2) ,今津博雄2) ,荒川廣志2) ,大草敏史1) ,田尻久雄3)
【目 的】傍 乳 頭 部 に 存 在 す る 十 二 指 腸 憩 室(juxtapapillary
duodenal diverticula; JPDD)は、しばしば遭遇するものの症状に
乏しく、臨床上看過されることが多いが、まれにこの憩室によ
り重篤な膵ないし胆道症状を惹起することが報告されている。
今回我々はJPDDにより惹起されたと考えられる繰り返す急性
胆管炎および膵炎の症例を経験した。【症例】60歳、女性。常習
飲酒歴なし。上腹部痛を主訴に近医を受診、胃薬の投薬を受け
るも症状の改善がないため当科外来を受診となった。受診時
TBil 3. 7 mg/ dL、ALP 508 U/ L、GGT 477 U/ L、Amy 826 U/ L、
CRP 6. 8 mg/ dLと黄疸と胆道系優位の肝障害、膵酵素の上昇を
認め、急性胆管炎および膵炎の診断で緊急入院となった。入院
後のMRIや超音波内視鏡などを施行するも胆嚢内及び総胆管に
明らかな結石像や腫瘤像を指摘できず、一方でJPDDを認め、総
胆管の通過結石あるいはJPDDに伴うLemmel症候群と考えた。
保存的な治療により軽快、退院となったが、退院3ヶ月後に腹痛
の再燃のため当院救急外来を受診、同様の所見を認めて再入院
となった。再度諸検査を行うも、初回と同様、胆道系に明らか
な結石は見られず、Lemmel症候群と診断した。2回目の入院時
も保存的加療で症状は軽快、退院となり、現在外来にて慎重に
経過観察中である。
【考案】JPDDが膵胆道系に及ぼす機序とし
て、憩室による機械的圧迫や乳頭炎、括約筋機能不全による逆
流、さらに逆流に伴う上向性感染の関与などが挙げられるが、
いまだ明らかな結論は得られていない。今回我々は胆管炎およ
び膵炎を繰り返す示唆に富むLemmel症候群の1例を経験した。
Mirizzi症候群,閉塞性黄疸
62
ADPKDに伴う肝動脈瘤破裂による胆道出血に対し
て動脈塞栓術が奏功した1例
湘南鎌倉総合病院 消化器病センター
中野秀比古,魚嶋晴貴,市田親正,所晋之助,増田作栄,
佐々木亜希子,小泉一也,金原 猛,江頭秀人,賀古 眞
【緒言】肝動脈瘤破裂に伴う胆道出血は比較的まれな疾患である.
今回われわれは常染色体優性多発嚢胞腎(以下ADPKD)が発症
に関与したと考えられる肝動脈瘤が破裂し,胆道出血をきたし
た一例を経験したので報告する.【症例】70歳 男性.2005年
ADPKDに伴う腎機能障害で血液維持透析導入となった.2013
年7月心窩部痛を伴う血便が出現したため,近医より紹介受診
された.来院時腹部造影CT検査は拡張した総胆管と胆管内に
血腫が認められ,肝左葉に動脈瘤が認められた.上部内視鏡検
査では乳頭部より活動性出血は認められなかったが,ERCPに
よる胆管内造影では,総胆管内に透亮像と凝血塊が認められ,
肝動脈瘤破裂による胆道出血と診断した.血管造影検査では
S4領域に動脈瘤への供血路を確認し,同血管にたいして塞栓術
施行した.術後合併症なく経過し,第14病日退院となった.第
90病日CT検査では,肝動脈瘤の消失を確認し,その後も再出血
を認めず経過している.【考察】胆道出血はSandblomが1948年
に外傷性の症例を最初に報告し,比較的まれな疾患である.
キーワードを「肝動脈瘤破裂 胆道出血」として1972年〜2012
年まで医中誌で検索すると,本邦における報告は自験例を含め
32例で(会議録を除く),平均年齢62. 1歳, 男性22例,女性10例
だった.肝動脈瘤の原因は医原性を含めた外傷性と急性膵炎や
感染症に伴う炎症により起因した動脈瘤が26例(81. 2%)だっ
た.動脈硬化に伴う肝動脈瘤も少数例報告されているが,本症
例は既往のADPKDとの関与が疑われた.ADPKDは脳動脈瘤や
胸部大動脈瘤を合併することが知られており,動脈壁構成に関
与するPKD1やPKD2変異との関連も報告されている.本症例に
おけるADPKDに伴う肝動脈瘤について,背景因子であるPKD
変異の検討もふまえて報告する.
急性胆管炎と膵炎を繰り返し発症したLemmel症候
群の1例
Lemmel症候群,十二指腸憩室
64
急性胆石胆嚢炎に併発した十二指腸穿通により結石
イレウスを来した一例
東邦大学医療センター佐倉病院 内科
宋本尚俊,古川竜一,宮村美幸,佐々木大樹,勝俣雅夫,平山圭穂,
菊地秀昌,新井典岳,岩佐亮太,山田哲弘,曽野浩治,長村愛作,
中村健太郎,青木 博,吉松安嗣,津田裕紀子,竹内 健,
高田伸夫,鈴木康夫
【背景】胆石イレウスは比較的稀な疾患であり胆石症の0. 15〜0.
5%に発生し、全イレウスの0. 05〜1%を占めるとされ、保存的
治療のみで自然排石した症例は7〜18%であり多くは外科的治
療を必要と報告されている。【症例】77歳女性。【現病歴】2012
年9月に胆石胆嚢炎で入院した際にCTで胆嚢内に30mm大の結
石を指摘されていた。胆嚢炎は自然軽快し、また、同意が得ら
れなかったため精査は行われなかった。2013年10月朝から嘔吐
と下痢を発症し、同日夕に当院を受診した。腹部所見上は圧痛
などを認めなかったが、血液検査で炎症所見と軽度の胆道系酵
素の上昇があり、腹部CTで胆嚢炎の他、腸管内に結石の脱落を
認めたため入院となった。【既往歴】糖尿病で当院通院中。【入
院時現症】発熱はなく、腹部は平坦かつ軟、圧痛も認めなかっ
た。【入院後経過】DIC-CTでは、胆のう内に結石は残存せず、
胆嚢と十二指腸が穿通していることが確認された。絶食安静で
経過観察していたが、入院3病日目に腸管内の結石が陥頓しイ
レウスを発症した。イレウス管を挿入したが改善せず、入院7
病日目に腹腔鏡下に腸管内結石除去術が行われた。術後MRSA
感染症を併発し回復に時間を要した。【考察】本例は約1年前に
胆石胆嚢炎を発症しており、その後、慢性的に炎症が持続し、
今回、急性増悪を契機に十二指腸に穿通し胆石の落下を招き胆
石イレウスを併発したと考えられた。本例のような高齢者では
イレウス発症後の全身状態悪化時に外科的処置の危険性や回復
の困難さを考慮すると、予防的胆摘術についても検討する必要
があると考えられた。【結語】高齢者で胆のう炎に大きな胆石
を合併している患者では胆石イレウスの発症の可能性について
も検討すべきと考えられた。
ADPKD,胆道出血
― 37 ―
胆石イレウス,十二指腸穿通
65
自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎に下肢深部静脈血栓
症を伴う後腹膜線維症を同時合併した全身性IgG4
関連疾患の一例
桐生厚生総合病院 内科1) ,しらかわ診療所 内科2) ,
上牧温泉病院 内科3)
萩原弘幸1) ,山田俊哉1) ,新井洋佑1) ,古谷健介1) ,飯塚圭介1) ,
野中真知1) ,竝川昌司1) ,飯田智広1) ,鏑木大輔2) ,丸山秀樹3)
【症例】72歳男性【主訴】黄疸【現病歴】当院糖尿病内科へ糖尿
病、高血圧にて、外科へS状結腸癌術後にて通院されていた。
2013年4月糖尿病内科定期受診時に眼球結膜黄疸認め、血液検
査上肝胆道系酵素上昇あり、精査目的に当科紹介となった。【入
院後経過】CT画像で膵全体に腫脹ありcapsule like lim様であっ
た。下部胆管で閉塞あり、上流胆管拡張、後腹膜に低濃度病変
あり、同部位で右総腸骨静脈狭窄あり、右総腸骨静脈血栓認め
た。IgG4 547mg/ dlと高値であり、全身性IgG4関連疾患(自己免
疫性膵炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症)と考えられ、後腹膜
線維症により右総腸骨静脈狭窄を来し、下肢深部静脈血栓症を
生じているものと思われた。同日ERCP施行し、胆管狭窄部よ
り胆管ブラシ・胆汁吸引細胞診と乳頭部より生検施行し、胆管
ステント留置を行った。膵管造影では主膵管全体にまだらな不
整狭窄像あり、典型的なAIP像であった。入院の上、下肢深部
静脈血栓症に対してヘパリン持続静注開始となった。第8病日
PSL40mg/ dayにて開始。第29病日のCTでは病変改善傾向で
あった。その後徐々にPSL漸減し第59病日退院。外来でのCT
で後腹膜線維症病変が改善するに伴い下肢静脈血栓症も消失認
めた。現在外来にてPSL漸減中。【考察】自己免疫性膵炎に硬化
性胆管炎を合併する頻度は74%であり、後腹膜線維症を合併す
る頻度は12. 5%であると報告されている。後腹膜線維症に下肢
深部静脈血栓症を合併した報告は医中誌で検索した範囲では10
例認めた。今回我々は、閉塞性黄疸を契機に診断され、自己免
疫性膵炎、硬化性胆管炎に加えて、後腹膜線維症による総腸骨
静脈狭窄を生じ、それにより下肢深部静脈血栓症を併発した全
身性IgG4関連疾患の一例を経験し、貴重な一例と思われた。
67
国立病院機構高崎総合医療センター 消化器病センター内科
工藤千佳,宮前直美,小板橋絵理,上原早苗,小柏 剛,星野 崇,
長沼 篤,工藤智洋,高木 均,石原 弘
症例は69歳男性。臍周囲の腹痛を自覚し数週間持続するため近
医を受診。上部消化管内視鏡検査および腹部エコー検査を受け
るも明らかな異常を認めなかった。血液検査では炎症反応や肝
胆道系酵素、膵酵素の上昇がないものの、CA19-9が380 U/ mlと
上昇していたため精査加療目的に当院紹介となった。腹部造影
CT検査にて、腹部大動脈から上腸間膜動脈周囲にかけて、わず
かに造影効果のある境界不明瞭な軟部陰影が広がり、膵鉤部と
連続していた。軟部陰影は血管を取り囲むように存在していた
が、血管壁への明らかな浸潤を認めなかった。膵鉤部ではCT
値が上昇し、わずかに造影効果を認めたが、明らかな腫瘤形成
を認めなかった。また左副腎に27ミリ大の腫瘤を認めた。MRI
検査では軟部陰影はT1強調画像で低信号、拡散強調像で高信号
であった。PET検査では軟部陰影および左副腎にSUV2. 5前後
の淡い集積を認めたが、他部位には有意な集積は認めなかった。
血液検査では、CEA 6. 7ng/ ml、CA19-9 423. 7 U/ mlと腫瘍マー
カーの上昇を認めたが、IgG4は5 mg/ dl(4-108)と低値だった。
副腎皮質・髄質ホルモンは正常範囲内であった。画像および血
液検査からは膵鉤部癌の後腹膜浸潤が疑われたが、後腹膜線維
症なども鑑別を要し、確定診断に至らなかった。そこで軟部陰
影に対して開腹生検を施行したところ、脂肪組織内に異形腺管
が幼弱な線維化を伴って浸潤しており、高分化膵癌の後腹膜浸
潤と診断した。左副腎腫瘤に関しては膵癌の副腎転移の可能性
も否定できず、また軟部陰影は境界不明瞭で、近傍に腸管も存
在することから放射線性腸炎の発症が懸念されたため、放射線
化学療法を行わず、ゲムシタビン単剤による化学療法を選択し
た。今回、腫瘤形成を伴わない膵鉤部癌の後腹膜浸潤症例を経
験した。膵癌と後腹膜線維症の鑑別を要する症例は少数報告さ
れているが、今回開腹生検が診断に有用であり、若干の文献的
考察を加え報告する。
膵癌,後腹膜線維症
IgG4,下肢深部静脈血栓症
66
術前画像でsolid pseudopapillary neoplasmが疑われた
膵体部癌の一切除例
東京大学医学部 肝胆膵外科
塩田沙織,山本訓史,青木 琢,石沢武彰,金子順一,阪本良弘,
長谷川潔,菅原寧彦,國土典宏
症例は53歳女性。2007年、前医にて施行した腹水精査目的のエ
コーで膵体部に5cm大の嚢胞性病変を指摘されたが、その後画
像によるフォローを受けていなかった。定期的な血液検査は受
けており2013年3月に軽度の肝酵素上昇を指摘。8月に増悪傾向
を認めたため腹部エコー施行し、膵体尾部に内部に充実性成分
を伴う8cm大の嚢胞性病変を指摘されたため9月、精査目的に当
院消化器内科入院。腹部エコーでは、膵体部~尾部にかけて内
部に充実性成分を含む7. 3×4. 1cmの低エコー領域を認めたが、
腫瘤内部の充実部に血流シグナルを認めなかった。EUSでは、
膵尾部に6. 5×4cm大の腫瘤を認め内部不均一で被膜および内
部の石灰化を伴っていた。また嚢胞性部分も認められた。腹部
造影CTでは、膵体部から尾部にかけて6cm大の低吸収腫瘤を認
め、右側部分には漸増性増強効果を示す充実部が見られ、左側
部分には粗大な石灰化を認めた。体尾部主膵管は3mm程度に
拡張していた。MRIでは嚢胞内容は古い血液成分と考えられた。
以 上 の 画 像 所 見 お よ び 若 年 女 性 で あ る こ と よ り 膵 solid
pseudopapillary neoplasm( SPN) と診断し、2013年11月、腹腔鏡補
助下脾合併膵体尾部切除術を施行した。術中所見で腫瘍は硬く
触知し、左胃動脈に沿って腫瘤と一体化した硬く腫大したリン
パ節を触知したため、腫瘤の一部を術中迅速診断に提出したが
確定診断は得られなかった。切除検体の病理組織所見は浸潤性
膵管癌であった。本症例の画像所見はSPNの特徴を備えており、
通常型膵癌を術前に疑うことは困難であった。稀な症例と考え
られるため、若干の文献的考察を加え報告する。
後腹膜線維症と鑑別を要した膵鉤部癌後腹膜浸潤の
1例
68
重症膵炎を発症した十二指腸乳頭部癌の一例
群馬大学医学部附属病院 消化器内科1) ,
群馬県済生会前橋病院 消化器内科2) ,
伊勢崎市民病院 消化器内科3) ,
群馬大学医学部附属病院 光学医療診療部4)
甲賀達也1) ,安岡秀敏1) ,加藤恵理子2) ,小畑 力3) ,富澤 琢4) ,
橋爪洋明1) ,栗林志行1) ,田中良樹2) ,佐川俊彦1) ,水出雅文1) ,
下山康之1) ,河村 修1) ,草野元康4) ,山田正信1)
【症例】50歳台男性【既往例】重症筋無力症, 腎臓癌術後【現病
歴】重症筋無力症にて当院神経内科通院中であった。平成25年
秋に腹痛出現し前医受診。精査の結果、急性膵炎と診断され入
院にて保存的加療施行されるも、病状改善見られず当院へ紹介
転院となる。転院時CT gradeII、重症度スコアも3点であり重症
膵炎と診断。転院時CTでは総胆管の著明な拡張を認めたが、
結石は認めなかった。肝障害も軽度であったため、ERCPは施
行せずに、ICU入室のうえ保存的加療を開始。加療により重症
急性膵炎は改善傾向となった。経過中黄疸の出現があったが、
薬剤性も考えて薬剤の変更・中止を行い、膵炎治療を継続した。
第30病日より黄疸の悪化があり、それに伴って膵酵素の再上昇
も認めた。減黄および精査のためERCP施行。十二指腸乳頭部
癌の診断となり、手術の方針となった。【考察】今回、重症膵炎
を発症し保存的加療にて治療した十二指腸乳頭部癌の症例を経
験した。急性膵炎を契機に診断される症例も報告されているが、
重症膵炎を発症した十二指腸乳頭部癌は比較的稀であり、文献
的考察も含め報告する。
solid pseudopapillary neoplasm,膵癌
― 38 ―
十二指腸乳頭部癌,重症急性膵炎
69
ヘリコバクターピロリ菌 感染による逆流性食道炎
および胃悪性腫瘍(胃がん・MALTリンパ腫)への
影響
御成橋栄クリニック1) ,NTT 東日本伊豆病院2)
小林栄孝1, 2) ,松浦貴彦1, 2)
【目的】Helicobacter pylori感染率は40歳以上で高率となる一方,若
年層では低下が認められている。また,逆流性食道炎におけるH.
pylori 感染の役割はさまざまな報告がなされているが,逆流性食道
炎の発生においては抑制的に働くことが明らかにされている。ま
た、胃癌発生においてはH. pylori感染による萎縮性胃炎が一因子
と考えられている。我々は当院で施行した企業検診において、H.
pylori 感染の有無に対する、逆流性食道炎及び胃悪性腫瘍(胃がん・
MALTリンパ腫)との関係を検討した。【方法】我々は2005年11月
から2006年10月の間に同一企業において検診を受けた21〜60歳の
12, 668人を対象とし,全例に血清H. pylori 抗体検査,上部消化管
内視鏡検査を施行した。逆流性食道炎の分類についてはLA分類
(A〜D)を用いた。血清H. pylori 抗体検査のカットオフ値は,
10U/ mLで陽性とした。内視鏡的生検による病理学的診断にて胃
悪性腫瘍と診断された患者に対しH. pylori 感染の有無について検
討した。【成績】逆流性食道炎の頻度については、H. pylori 陰性例
12. 16%(926/ 7, 609)、H. pylori 陽性例5. 77%(292/ 5, 059)と、H.
pylori 陰性例で有意に高かった。しかしながらH. pylori 陰性例と
陽性例における逆流性食道炎grade分類の頻度を比較したところ、
逆流性食道炎の重症度については、H. pylori 陰性例よりもH.
pylori 陽性例においてgradeが高いということが明らかにされた。
上部消化管内視鏡検査による胃悪性腫瘍(胃がん・MALTリンパ腫)
発見率は全体の0. 1%(13/ 12668)であり、その内のH. pylori 陽性
率は84. 6%(11/ 13)、H. pylori 陰性率は15. 3%(2/ 13)と、H.
pylori 陽性例が有意に高かった。【結論】逆流性食道炎の発生頻度
はH. pylori 感染者で有意に低かったが,H. pylori 感染が逆流性食
道炎の重症度をより増悪させている可能性が示唆された。また、
胃悪性腫瘍に対しH. pylori 感染が発症因子である可能性が示唆さ
れ、H. pylori 除菌治療は胃悪性腫瘍発症に対して、一部の症例に
は予防になりうると考えられた。
71
横浜市立みなと赤十字病院
河村貴広,浅川剛人,金城美幸,高浦健太,西尾匡史,勝倉暢洋,
小橋健一郎,橋口真子,先田信哉,有村明彦,熊谷二朗
【症例】67歳女性【既往歴】特記事項なし【現病歴・経過】2012
年3月発熱・咳嗽・嚥下困難が出現し、当院を受診した。CTで
縦隔下部に11cm大の内部不均一な不整形腫瘤を認め、上部消化
管内視鏡で下部食道に突出し内腔を占拠する腫瘍を認めた。腫
瘍そのものが食道に露出し、通常の鉗子生検検体でGISTと診断
した。腫瘍サイズから悪性と考えられたが、大動脈・心臓・肺
と広く接し切除不能と判断、イマチニブでの化学療法を開始し
た。治療開始21日目に突然胸痛と高熱が出現、左大量胸水を認
め、黄色混濁した滲出性胸水で、胸膜炎と診断した。治療開始
前と比較すると腫瘍は半分以下に縮小し内部は低濃度化し液状
変性と考えられた。イマチニブにより腫瘍が急速に壊死し胸腔
に破綻、壊死物質が漏出し胸膜炎を発症したものと推測された。
経過中、化膿性膿胸にもなったが、約2ヶ月間の胸腔ドレナージ
及び抗生剤治療により改善した。イマチニブは奏功していると
判断し胸膜炎・膿胸治療中も投与を継続した。以後胸膜炎の再
燃なく経過し、治療開始20か月の時点でも治療効果は持続し、
食道内病変は瘢痕消失、CT上も腫瘍は著明に縮小した。現在
も特に自覚症状なくイマチニブを継続し外来通院中である。
【考察】切除不能GISTの治療はチロシンキナーゼ阻害薬である
イマチニブが第一選択である。しかし、イマチニブはその急速
で高度な抗腫瘍効果から特異な有害事象を生じることがあり、
その代表が腫瘍壊死からの出血や消化管穿孔である。腹腔内
GIST症例でイマチニブ投与開始後に腹腔内出血を来した症例
が報告されているが、食道は消化管GIST中で稀な発生部位であ
るため有害事象についての報告は乏しい。これまでに胸膜炎や
胸腔内出血の報告はない。今回我々は、イマチニブ投与開始後
3週目で腫瘍の急速な縮小に伴い胸膜炎を発症したものの著効
した切除不能食道GIST症例を経験した。示唆に富む症例と思
われ報告する。
切除不能食道GIST,イマチニブ
Helicobacter pylori 感染,逆流性食道炎
70
上部消化管内視鏡検査が誘因となり剥離性食道炎を
来した水疱性類天疱瘡の1例
群馬大学医学部附属病院 消化器内科1) ,
同 光学医療診療部2)
栗林志行1) ,川田晃世1) ,保坂浩子1) ,石原眞悟1) ,安岡秀敏1) ,
富澤 琢2) ,佐川俊彦2) ,水出雅文1) ,下山康之1) ,河村 修1) ,
山田正信1) ,草野元康2)
【症例】60歳代、男性【主訴】全身の水疱と掻痒感【現病歴】4月初
旬から皮膚の掻痒感が出現し、対症療法を行っていた。徐々に水
疱が出現し、体動困難となり当院皮膚科に紹介入院となった。皮
疹の性状から自己免疫性水疱性疾患が疑われ、同疾患は悪性腫瘍
を併発することがあることから、上部消化管の悪性腫瘍検索目的
に当科紹介となった。【経過】紹介翌日に上部消化管内視鏡検査を
施行した。観察範囲に明らかな悪性腫瘍を疑わせる所見は認めら
れなかった。また、C型肝硬変の既往があったが、食道静脈瘤や胃
静脈瘤はみられなかった。胃体上部大弯に周囲粘膜と異なる色調
を呈する領域が認められており生検を行い、止血されたことを確
認して終了した。しかし、病棟帰室後に吐血が認められ、当科に
再紹介となり上部消化管内視鏡検査を再検した。2回目の内視鏡
検査では披裂及び喉頭粘膜に水疱が出現しており、食道入口部か
ら食道胃接合部にかけて広範な食道粘膜の剥離を認めた。これら
の所見は1回目の内視鏡検査では認められていなかった。なお、生
検部位については止血されていた。水疱性疾患については確定診
断が得られていなかったが、上記所見から上部消化管内視鏡検査
を誘因に剥離性食道炎が生じたものと考えた。披裂及び喉頭の水
疱により気道閉塞が出現する可能性も否定できず、同日ステロイ
ド投与を開始し、禁食の上で中心静脈栄養管理とした。その後皮
膚生検や自己抗体の結果により、水疱性類天疱瘡と確定診断が得
られ、ステロイドと免疫グロブリン大量療法を施行した。これら
の保存的治療にて症状は改善し食事摂取も可能となった。【結語】
類天疱瘡を含む水疱性疾患では悪性腫瘍の合併が見られることが
あり、上部消化管内視鏡検査による悪性腫瘍の検索が必要となる。
しかし、水疱性類天疱瘡では剥離性食道炎を引き起こすことがあ
り、十分な注意が必要と思われる。
イマチニブ投与後に胸膜炎・膿胸を発症するも著効
した切除不能巨大食道GISTの一例
72
進行食道癌における食道気道瘻に対してステント留
置を行った4例の検討
君津中央病院 消化器科
亀崎秀宏,畦元亮作,今井雄史,大和睦実,稲垣千晶,矢挽眞士,
妹尾純一,藤本竜也,大部誠道,藤森基次,吉田 有,駒 嘉宏,
鈴木紀彰,福山悦男
【目的】食道癌終末期患者に対する緩和ケアにおいて、気道との
瘻孔に起因する症状が問題となることがある。症状の改善とし
ては、状況や部位によって、食道ステントおよび、または気道
ステント挿入が行われることがある。進行食道癌における食道
気道瘻に対して、当院でステント留置を行った症例を検討し、
その実態を明らかにする。【方法】平成20年4月から平成25年7
月までの間に当院に入院歴のある食道癌205例中、食道気道瘻
を合併し、食道ステントおよび、または気道ステントを留置し
た4例を対象にした。治療効果、合併症、予後に関して後ろ向き
に検討した。患者背景は、男性4例、年齢69. 8±5. 9歳(61歳-74
歳)であった。前治療として化学放射線療法が4例全例に行わ
れていた。食道ステント単独は2例、気道ステント単独は1例、
気道ステント+食道ステントは1例であった。【成績】4例全例
(100%)で抗生剤を中止可能となった。3例(75%)で一度は固
形物摂取が可能となり、4例全例(100%)で液体の摂取は可能
となった。また、1例(25%)で自宅退院となっている。重篤な
合併症は1例も認めなかった。ステント留置後の生存期間中央
値は56日(14-105日)であった。【結論】進行食道癌における食
道気道瘻に対して、ステント留置術は感染の状態を改善させ飲
食を可能とするという点で有効かつ安全であると考えられた。
剥離性食道炎,水疱性類天疱瘡
― 39 ―
食道癌,食道気道瘻
73
再発食道裂孔ヘルニアに対して腹腔鏡下に再手術を
施行した1例
75
Stage4(CY1)の胃癌で術後長期生存をはたしてい
る1症例
東京慈恵会医科大学 消化管外科1) ,同 外科学講座2)
秋元俊亮1) ,矢野文章1) ,小村伸朗1) ,坪井一人1) ,星野真人1) ,
矢永勝彦2)
東京警察病院
徳山信行,中田和智子,須山由紀,松原三郎,鈴木
小椋啓司
食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下噴門形成術の治療成績は概
ね90%と良好である.一方,術後再発に対する再手術症例の報
告も散見される.今回われわれは,食道裂孔ヘルニア再発に対
して腹腔鏡下噴門形成術を施行した症例を経験した. 症例は
50歳代,男性.食道裂孔ヘルニアに対して6年前に他院で腹腔
鏡下噴門形成術を施行された.手術の約1年後からおくびと食
道下部違和感を認めた.上部消化管X線造影検査,上部消化管
内視鏡検査,胸部CT検査で食道裂孔ヘルニア再発と診断し,再
手術の適応と判断した.腹腔鏡下に観察すると食道裂孔が開大
し,それに伴いwrapごと腹部食道が縦隔内に逸脱していた.食
道裂孔縫縮とメッシュによる補強,Toupet噴門形成術を施行し
た.手術時間は256分で出血量は少量であった.術後経過良好
で術後1日目で水分,2日目で食事を開始し,8日目に軽快退院し,
術後1ヶ月が経過したがヘルニアの再発を認めていない.再発
食道裂孔ヘルニア手術を経験し食道裂孔周囲の解剖の把握が非
常に重要であった.再手術症例におけるポイントを含め報告す
る.
【症例】95歳女性【主訴】労作時呼吸困難【既往歴】2005年6月
進行胃癌の診断で、CT上切除可能病変と考えられ、胃全摘D2郭
清 施 行 さ れ た。病 理 は Stage4 : T3(SE)N2(11/ 28)
P0H0CY1M0 Por1であった。その後2年6か月TS-1内服し再発
な く経 過し た。本 人 希 望あ り 中止と な っ ていた。【現 病 歴】
2013年2月頃より労作時の呼吸困難を認め、増悪傾向であった
ため、3月当院を受診した。CTで心嚢水貯留を認めたため精査
加療目的で入院となった。【入院後経過】入院同日に心嚢水に
対してドレナージチューブを挿入した。排液なくなったため、
3日後にドレナージチューブ抜去した。心嚢水の細胞診から腺
癌が検出された。上部内視鏡、下部内視鏡では粘膜病変を認め
なかった。腹部造影CTでは吻合部周囲のリンパ節の腫脹を認
めた。以上の状況から胃癌の再発と考えた。高齢であるが、本
人家族の希望により、TS-1を再導入し退院となった。退院6ヶ
月後現在も治療は継続中である。【考察】高齢の胃癌CY1で術後、
長期生存した症例であった。示唆に富む症例であり、若干の文
献的考察を加えて報告する。
胃癌,長期生存
再発食道裂孔ヘルニア,腹腔鏡下噴門形成術
74
家族性大腸腺腫症症例に合併した胃底腺ポリープの
癌化による多発胃癌の1例
剛,
76
貧血精査中に無症候性腸重積にて発見された小腸血
管腫の1例
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科
齊藤正昭,清崎浩一,福田臨太郎,桑原明菜,高田 理,
力山敏樹
大森赤十字病院 外科1) ,同 検査部2)
寺井恵美1) ,佐々木愼1) ,中山 洋1) ,石丸和寛1) ,原田真悠水1) ,
金子 学1) ,渡辺俊之1) ,坂本穆彦2)
家族性大腸腺腫症(以下FAP)症例では、約半数に胃弓隆部
から胃角部までの胃底腺領域に胃底腺ポリープを合併すること
が知られているが、癌化するという報告は稀である。今回我々
は、FAP症例に合併した胃底腺ポリープの癌化による多発胃癌
の1例を経験したので報告する。
症例は70歳代女性。30歳代でFAPと診断。5年前にステージIIIb
の大腸癌を合併し、大腸全摘術、2年前に子宮体癌、腹壁デスモ
イド腫瘍を合併し子宮全摘術、腫瘤摘出術の既往有り。定期的
なサーベイランス目的に上部消化管内視鏡検査を施行したとこ
ろ、胃弓隆部に無数の多発ポリープを認めた。径10mm大の2個
について内視鏡的切除を施行したところ、SM浸潤胃癌であった。
追加胃切除の目的で再入院し、胃全摘術( D1+郭清) を施行した。
術後病理所見で、今回手術の目的となった病変は過形成ポリー
プ像が主体で、上皮内に高分化腺癌の像を認めた。それ以外の
多発しているポリープも大腸腺腫に類似した異型を認め、その
中に散在性に乳糖絨毛状構造を有する粘膜内癌の所見を認めた。
FAP症例の胃病変として多発胃底腺ポリープは散見されるが、
胃底腺ポリープの癌化による多発胃癌の報告は極めて少ないた
め報告した。
症例は25歳,男性.慢性的な鉄欠乏性貧血のため当院消化器内
科を受診した.上部・下部消化管内視鏡検査では異常を認めず
経過観察されていた.初診時のCT検査では異常を認めなかっ
たが,3ヶ月後の定期受診の際に施行したCT検査にて小腸に腸
重積様の所見ならびに腫瘤影を認めたため緊急入院となった.
臨床的にはイレウスを呈していなかったため,絶食管理とした
上で待機的に手術を行う方針とした.臍下のカメラポート,左
下腹部の5mmポートにより腹腔鏡下に腹腔内を観察し、部分的
に拡張を認めた小腸近傍に約4cmの皮膚切開をおき開腹した.
その結果,トライツ靭帯から約130cm隔てた小腸に腫瘍を触知
した.術中所見では腸重積は認めず自然整復されたものと思わ
れた.同部位を含めた小腸部分切除を施行した.病理組織学的
には小腸血管腫の診断であった.術後経過は良好で、貧血も軽
快 し た.血 管 腫 は 全 消 化 管 腫 瘍 の 0. 05%, 小 腸 良 性 腫 瘍 の
7-11%と報告されているが、腸重積で発見される例は少ない.
今回われわれは腸重積を契機に発見された小腸血管腫の1例を
経験したので報告する.
家族性大腸腺腫症,胃癌
― 40 ―
血管腫,腹腔鏡
77
79
クローン病に合併した痔瘻癌の2例
群馬大学医学部附属病院 第一内科1) ,同 光学医療診療部2) ,
国立病院機構沼田病院3)
佐川俊彦1) ,石原眞悟3) ,富澤 琢2) ,安岡秀敏1) ,栗林志行1) ,
水出雅文1) ,下山康之1) ,河村 修1) ,草野元康2) ,山田正信1)
【背景】本邦ではクローン病(以下CD)のcolitic caancer報告例は
欧米に比べて少なかったが、近年、報告例が増加している。【症
例1】症例は40代、女性。1990年に小腸大腸型CD発症。狭窄に
て2回手術、2009年にIFX導入。その後痔瘻、肛門周囲膿瘍を繰
り返すようになり2010年にIFXを倍量に変更。2012年12月より
効果減弱。2013年3月肛門痛、肛門狭窄、腹部膨満で入院、肛門
拡張術+seton法施行し、その時の生検で痔瘻癌と診断。【症例2】
症例は50代、男性。1986年に痔瘻を伴う小腸大腸型CD発症。
2006年にIFX導入。痔瘻に対するIFXの効果減弱から2013年4月
にIFX倍量。同年6月に肛門違和感、肛門痛、瘻管からの粘液増
加と血液混入を認めCS、MRIで痔瘻癌の直腸浸潤(tub2)が疑
われた。
【考察】CDの予後を規定する因子は悪性疾患と重症
CDの合併症とされている。CDにおける痔瘻癌の合併は欧米で
は少なく、日本において報告が多いとされている。その痔瘻癌
の症状は(1)瘻管からのゼリー状物質の分泌、
(2)瘻管からの
出血、(3)直腸・肛門狭窄症状の出現や悪化、
(4)疼痛、(5)
硬結・腫瘤の出現とされる。しかし、(1)は痔瘻癌に特徴的だ
が全症例の1割程度にしかみられず、(1)以外はCDの症状とし
ても矛盾しないため、早期発見が困難とされている。また、本
邦ではCDにおける生物学的製剤の導入率が他国に比べ高いと
される。その生物学的製剤の効果が減弱した場合には、感染症
の合併、狭窄病変の存在、薬剤に対する抗体産生が一般的に考
えられる。今回我々は生物学的製剤の効果減弱後に診断された
痔瘻癌の2例を経験した。本邦においては痔瘻癌が増加してい
ることと生物学的製剤の導入症例が多いことを考慮すると痔瘻
に対する生物学的製剤の効果減弱は痔瘻癌の発生を鑑別すべき
状態と考えられる。
国立病院機構高崎総合医療センター 消化器病センター内科
宮前直美,工藤智洋,小板橋絵理,上原早苗,小柏 剛,星野 崇,
長沼 篤,高木 均,石原 弘
30歳女性。腹痛、下痢が数か月間持続し、近医で過敏性腸症候群
として整腸剤などで加療されていたが改善なく、腹痛が自制外と
なったため当院を受診した。初診時の血液検査で炎症反応上昇お
よび低蛋白血症を認めた。腹部CT検査にて回盲部やS状結腸の壁
肥厚および腹腔内リンパ節の腫大、腹水貯留を認めた。大腸内視
鏡検査(CS)では疼痛のためSD junction以深へのスコープ挿入は
困難であったが、S状結腸に縦走傾向の潰瘍を認めた。痔瘻を認め
なかった。クローン病( CD) を疑い生検をしたが、肉芽性変化は認
めるものの、類上皮肉芽腫は検出されなかった。一方、核内封入
体を伴う巨細胞が検出され、免疫染色でサイトメガロウイルス
(CMV)陽 性 で あ っ た。CMV-antigenemia は 陰 性 で あ っ た が、
CMV-IgG、CMV-IgMともに上昇していた。上部消化管内視鏡検
査では特異的な所見を認めなかったが、小腸造影にて小腸に広範
囲に縦走潰瘍を認め、回腸末端に狭窄を認めた。CDの確定診断に
は至らなかったが、CMV感染の合併したCDあるいは単独のCMV
腸炎として、ガンシクロビル(GCV)による治療を開始した。また
CDの疑いに対して5-ASA製剤および栄養療法(half ED)を併用し
た。GCVを14日間投与したのちにCSを再検したところ挿入時の疼
痛は消失し、回腸末端まで観察可能であった。回腸末端に敷石状
変化を認め、生検で類上皮肉芽腫が検出された。初回CS時のS状
結腸の潰瘍は同様に存在していたが、生検では核内封入体は検出
されず、肉芽性変化のみであった。最終的に未治療のクローン病
にCMV感染が合併したものと診断。腹痛などの症状はGCV投与に
て消失したが、内視鏡で活動性潰瘍を認め、CRPも陰性化していな
かったことからアダリムマブを併用した。それにより寛解導入に
成功している。生物学的製剤投与中のCDにCVM感染が合併した
症例は報告されているが、初診時に併発している症例は非常に稀
であり示唆に富む症例と思われたため、若干の文献的考察を加え
て報告する。
クローン病,痔瘻癌
78
顆 粒 球 吸 着 療 法(G-CAP)が 奏 功 し た 腸 管 ベ ー
チェットの一例
初 診 時 にサイ ト メガ ロ ウイ ルス 感 染 を合 併し た
Crohn病の1例
クローン病,サイトメガロウイルス
80
ポリスチレンスルホン酸カルシウム( CPS) が関与し
たと考えられる急性出血性直腸潰瘍の2症例
東京医療センター 消化器科
作野 隆,佐藤道子,高取祐作,成瀬智康,菊池美穂,西澤俊宏,
藤山洋一,中村光康,金子 博,高橋正彦
東京労災病院 消化器内科
植木紳夫,西中川秀太,團 宣博,朝井靖二,山内芳也,武田悠希,
大塚隆文,和久井紀貴,大場信之,児島辰也
症例は40歳男性。2011年7月下旬から軟便を認めていたが8月に
は鮮血を伴う1日3-4行の水様下痢になり、食欲不振、および頭
部・顔面の皮疹、陰部潰瘍、左足関節の腫脹・疼痛も出現した。
近医受診し抗生剤、整腸剤を投与されたが改善せず、8月17日に
当院を紹介受診し緊急入院した。ざ瘡様皮疹、口腔内アフタ、
外陰部潰瘍よりベーチェット病が疑われたが、眼科で網膜ブド
ウ膜炎や虹彩毛様体炎などの異常所見は指摘されなかった。入
院時の腹部造影CTでは上行結腸から横行結腸の壁肥厚と所属
リンパ節腫脹を認めていたが、8月26日の大腸鏡では上行結腸
に一部白苔を伴う不整形潰瘍がほぼ全周性に約10cmにわたっ
て連続しており、易出血性、浮腫状であった。また横行結腸に
もびらんが点在していた。生検では肉芽腫はみられず、非特異
的炎症のみで結核培養も陰性であった。回盲部は異常なく、打
ち抜き病変も認めず、腸管ベーチェットとしては典型的ではな
いがクローン病や腸結核も否定的であった。小腸造影では異常
所見なく、上部消化管内視鏡では胃底腺ポリープを認めるのみ
であった。入院後より禁食とし9月2日よりメサラジン3000mg/
日、9月8日よりプレドニゾロン40mg/ 日を投与したところ、下
血以外の症状はすみやかに改善しプレドニゾロンは減量可能で
あった。下血に対して10月18日より顆粒球吸着療法(G-CAP)
を導入したところ下血、下痢は徐々に改善を認め、10月20日に
EDチューブよりエレンタール経管栄養とし、10月25日より食
事開始した。週1回のG-CAPを5回施行したところ下痢は改善
し、11月22日の大腸鏡再検で病変部の狭窄を認めたが、潰瘍病
変は残存するも縮小していたため11月25日に退院した。退院後
はメサラジンのみで症状増悪なく経過している。今回われわれ
はG-CAPが奏功した腸管ベーチェット病の1例を経験したので
若干の考察を加えて報告する。
症例1は80代女性。既往歴は逆流性食道炎、高血圧、高脂血症、心
房細動、慢性腎不全、変形性膝関節症、便秘症、不眠症で内服加療
されていた。現病歴は慢性腎不全急性増悪、うっ血性心不全で入
院し、寝た切り状態であった。透析療法導入加療中の第16病日に
鮮血便出現し出血性ショック状態となった。下部内視鏡検査で急
性出血性直腸潰瘍(AHRU)と診断し内視鏡止血術を施行した。第
21病日に再び出血認め内視鏡止血術を再施行した。再止血後に血
便無く穿孔も認めなかったが、第25病日肺炎合併にてご永眠した。
潰瘍部の病理組織検査結果で好塩基性多角形結晶物を認めた。症
例2は70代男性。既往歴は胃癌術後、右大腿頸部骨折術後、不眠症、
糖尿病性腎症で維持透析療法を週3回受けていた。現病歴は右人
工股関節再置換術後第9病日に鮮血便出現し、出血性ショックを来
たした。AHRUと診断し内視鏡的止血術施行したが、第15病日と
第19病日に再出血し、内視鏡的止血術を繰り返した。その後は経
過良好で第79病日退院となった。本症例でも病理組織検査で好塩
基性多角形結晶物を指摘された。AHRUは基礎疾患を有する臥床
患者に多く見られ、突然生じる無痛性直腸出血を契機に発症し、
繰り返し出血する事が多いとされる。ADL低下に伴う直腸部の血
流低下が一因と考えられ、止血後は頻回に体向変換を行うなどの
対応も有用と考えられている。我々の経験した2症例ともADLが
低下した状態であり、既報のAHRU発症経過と同様であった。一
方で、両症例ともCPSを内服しており、潰瘍部から好塩基性多角形
結晶が検出され、同薬剤に起因する直腸粘膜障害を合併したと考
えられた。ポリスチレンスルホン酸型陽イオン交換樹脂剤は結腸
粘膜障害が報告されており、CPSも重大な副作用として消化管穿
孔などが指摘されている。AHRUは血圧動態が不安定となり腎不
全患者に透析療法が施行困難な場合も有るため、CPSは高カリウ
ム血症コントロールに有用だが、再出血予防の観点から内服中止
が必要と考えられた。
腸管ベーチェット,顆粒球吸着療法
― 41 ―
急性出血性直腸潰瘍,ポリスチレンスルホン酸カルシウム
81
大腸癌が先行しCronkhite-Canada症候群の治療中に
肝転移を来した1例
自治医科大学内科学講座 消化器内科学部門
宮田康史,三浦義正,北村 絢,井野裕治,竹澤敬人,坂本博次,
新畑博英,林 芳和,佐藤博之,矢野智則,砂田圭二郎,佐藤貴一,
大澤博之,山本博徳,菅野健太郎
【諸言】Cronkhite-Canada症候群は比較的稀な疾患とされ、世界
で300例程度の報告があるが、7割が本邦からの報告である。以
前は栄養状態の悪化による死亡例が多く予後不良とされていた
が、栄養管理や副腎皮質ステロイドなどの治療に比較的反応す
る症例もあり予後が改善している一方で、悪性腫瘍合併例、特
に大腸癌の報告が増加している。【症例】74歳、男性。2007年検
診で胃の多発ポリープ、2010年には大腸の多発ポリープと横行
結腸進行癌を指摘され、右半結腸切除が施行された(type1,
35mm,tub2,pT2 ( pMP) ,infα,medullary,ly1, v2,pN0,pDM
( -) ,pPM( -) stage1)。2011年11月頃より脱毛・爪甲剥離・色素
沈着が出現し、また下痢回数増加、低Alb血症に伴う下肢浮腫を
認め、当院紹介入院となり、特徴的な身体所見と内視鏡像より
Cronkhite-Canada症候群、蛋白漏出性胃腸症との診断に至った。
副腎皮質ステロイドによる治療で症状改善するものの減量する
と悪化し、その他の免疫調整薬、抗プラスミン薬、メサラジン、
中心静脈栄養、成分栄養療法、腸管滅菌等様々な方法を試した
が、臨床症状・内視鏡像とも完全な改善には至らなかった。大
腸癌の転移・再発については、定期的な腹部CT、上下部消化管
内視鏡、腫瘍マーカーでフォローアップしていたが、2012年10
月の腹部CTでは指摘できなかった巨大肝腫瘍、骨転移が10か
月後のCTで出現し、肝生検で大腸癌転移の診断に至った。【結
語】本症例の経験から、Cronkhite-Canada症候群は悪性腫瘍のハ
イリスク疾患との認識が必要で、副腎皮質ステロイドや免疫調
整薬を使用する場合には短期間でのスクリーニング検査を考慮
する必要があると考えられる。
83
横浜市立みなと赤十字病院
河村貴広,浅川剛人,金城美幸,高浦健太,西尾匡史,勝倉暢洋,
小橋健一郎,橋口真子,先田信哉,有村明彦,熊谷二朗
【症例】57歳女性【既往歴】アルコール依存症、アルコール性肝硬変【現
病歴・経過】アルコール性肝硬変による肝性脳症のため、2009年7月上
腸管膜静脈-下大静脈シャント閉塞術を施行、その後も蛋白制限食と
ラクツロース、カナマイシンなど投与するも肝性脳症1~2度が持続し
たためアミノレバン点滴を適宜外来で施行、コントロールされていた。
便通は軟便が日に3-4回と良好にコントロールされていた。禁酒は完
全で精神症状も安定していた。慢性咳嗽がありデキストロメトルファ
ンを屯用で使用していた。2011年10月から下痢傾向となり腹痛が出現、
CTで右側結腸に壁在気腫を認めた。発熱や腹膜刺激症状はなく、下部
消化管内視鏡で結腸に柔い粘膜下隆起が多発、病理所見で粘膜筋板下
にマクロファージと多角巨細胞を認め、腸管嚢胞様気腫症と診断した。
当初は症状軽度で下剤調整や抗コリン薬で症状軽快したが、2012年7
月から増悪し、8月酸素療法目的で入院した。カヌラでの経鼻酸素投
与5l/ 分で4日目には症状消失、1週間で腸管壁在気腫も消失し退院した。
その後、2012年10月、2013年1月、3月に腹痛と腸管壁在気腫が再燃し、
腹腔内遊離ガスも出現したが、いずれも酸素経鼻5l/ 分の投与で4-5日
で症状消失し、1週間後には腹腔内遊離ガスも壁在気腫も消失した。
その後7カ月間再燃なく経過し、壁在気腫も完全に消失していたが10
月に再燃、酸素5l/ 分1週間投与で改善、現在外来フォロー中である。
【考察】腸管嚢胞様気腫症は腸管壁内に含気性嚢胞が発生する稀な病
態である。治療は酸素吸入が第一選択で多くの症例で壁在気腫が消失
することが報告されているが、再発例も少なくない。本症例でも5l/ 分
の経鼻酸素投与1週間で改善し、再発を繰り返したものの、短期入院で
の酸素吸入でコントロールされた。腸管嚢胞様気腫症と肝硬変の合併
の報告例はこれまで一例もなく、本症例においても関連性は不明であ
る。今回我々は、肝硬変に合併し経鼻酸素投与により改善するも再燃
を繰り返した腸管嚢胞様気腫症の一例を経験し、稀な症例と考え報告
した。
Cronkhite-Canada,大腸癌
82
肝硬変に合併し経鼻酸素投与により改善するも再燃
を繰り返した腸管嚢胞様気腫症の一例
トリクロロエチレンの関与が疑われた腸管嚢胞性気
腫症の1例
大森赤十字病院 消化器内科
須藤拓馬,河野直哉,芦苅圭一,関志帆子,鶴田晋佑,高橋昭裕,
千葉秀幸,井田智則,諸橋大樹,後藤 亨
腸管嚢胞性気腫症は、腸管壁内に多数の気腫を生じる比較的稀な疾患
である。原因は多岐にわたるが、慢性的なトリクロロエチレン暴露が
原因とする報告も認める。今回我々はトリクロロエチレンの関与が疑
われた腸管嚢胞性気腫症の1症例を経験したので報告する。
症例は36歳の男性。町工場で金属加工に携わっており、慢性的にトリ
クロロエチレンに暴露している環境で仕事に従事していた。平成25年
6月半ばから下痢、腹痛が出現、7月に近医受診し、抗菌薬を1週間内服
した。その数日後より少量の血液が混入した泡状の便を認めたため、
当科紹介受診となった。身体所見上は左下腹部に軽度の圧痛・違和感
を認め、同日の腹部造影CTでは左上腹部に腹腔内遊離ガス像、S状結
腸に腸管壁内に多発したガス像を認め、腸管嚢胞性気腫症及びその破
裂の疑いにて精査加療目的に緊急入院となった。入院時は腹部症状に
乏しく、血液検査でも、WBC4600μl, CRP0. 13mg/ dlと炎症反応の上
昇を認めず、絶食・補液・抗生剤( PIPC/ TAZ) で保存的に加療を開始し
た。その後、少量の血便は認めたが、症状の増悪なく第6病日の単純
CTでは、腹腔内遊離ガスは消失していた。第7病日に注腸造影を施行
し、S状結腸の腸管壁に沿って微小な嚢胞状ガス像が連珠状に見られ、
腸管嚢胞性気腫症に矛盾しない所見であった。翌日のCTで造影剤が
腹腔内に流出していないことを確認した。第9病日に診断目的で大腸
内視鏡を施行したが、S状結腸の非特異的な粘膜の炎症所見のみで、腸
管壁内の気腫を疑う粘膜下隆起病変は認めず、炎症性粘膜の生検や培
養でも特記すべき所見は認めなかった。その後症状も改善し第10病日
より食事を開始し、症状再燃せず第13病日に退院となった。
本例は、内視鏡の所見は乏しかったが、CT・注腸所見より腸管嚢胞性
気腫症と診断し、原因としてトリクロロエチレンの関与が疑われた症
例であった。トリクロロエチレンによる腸管嚢胞性気腫症は、医中誌
で検索した限り21例と比較的稀であり、今回報告した。
腸管嚢胞性気腫症,トリクロロエチレン
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腸管嚢胞様気腫症,経鼻酸素吸入