字幕付きテレビニュース放送の語学学習教材化 田中 敬志* *豊橋技術科学大学 森 一将* 小林 聡** 中川 聖一* 情報工学系、**豊橋技術科学大学 情報処理センター 現在、多くの語学学習教材が市販されている。これらの教材の中には、音声認識の技術によりピッチ表 示・発音の採点などができるものや、学習者のレベルに適した教材を提示できるものなど、語学学習に効 果的であると思われる機能を持つ教材も少なくない。しかし、これら市販されている語学学習教材にはい くつかの欠点も付随する。 まず第一に、ほとんど全ての市販されている教材のコンテンツが限定されている。これは、教材が CD やビデオ、本などの限られた容量のメディアを媒体としていることによる。語学学習の教材で重要な点は、 まずその教材のコンテンツが学習者にとって興味のあるものなのかということであり、市販されている教 材では、そのコンテンツに学習者が興味を持たない可能性がある。また語学学習においては繰り返し学習 が必要であるが、既存の語学学習教材ではコンテンツが限定されているので、繰り返しているうちに学習 者が飽きてしまう、といったことも考えられる。 次に、多くの語学学習教材では、教材として発話した音声を収録し、教師の音声としている。このため、 実際の自然なネイティブの発話とは異なっているものと考えられる。教師や学習者が自らニュース放送な どを録画し、それを教材とすることでこれらの欠点を補うこともできるが、教材化するための手間が大き く、また語学 CAI 教材のような機能を持たせることも難しい。 そこで本研究では、字幕付きのテレビニュースをもとに、市販されている語学 CAI 教材のような機能を 持たせた教材を自動的に作成するシステムを提案する。実際には、NHK の字幕放送「ニュース 7」をもと に日本語用の語学学習教材を作成している。しかし、この「ニュース 7」では局においてリアルタイムで 音声認識し、人手で字幕を修正を行い、その後文字放送として字幕を送り出しているので、実際の音声と 字幕との時間的なずれが十数秒程度生じてしまう。そのため、そのままでは教材としての使用に苦しい。 本研究では映像・音声と字幕をパソコンに収録するとともに、音声と字幕の同期をとり、音声に沿って 字幕を表示できるようなシステムとした。さらに CAI 教材であることをいかして、辞書引きや繰り返し視 聴などが可能な教材を自動的に作成できるようにした。 本システムにより作成される教材には次のような利点を挙げることができる。 (1) アナウンサーによる丁寧な発話 (2) 豊富な話題の提供 (3) 他数の教材の蓄積が可能 (4) 問題作成の自動化・省力化 特に、豊富な話題が得られることにより、学習者の興味を持続させ続けることもできると考えられる。 また、本システムで作成した教材のファイルはコンピュータに保存されるので、他数の教材が蓄積した場 合には、特定の話題についてニュースを検索することができるようになるなどの利点もある。
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