ポンプ駆動用電動機の漏電で感電する 本件災害は、染色工場の廃水排出用ポンプを駆動する電動機が漏電を生じ、2人の 作業者が死亡した感電災害である。 漏電を生じた電動機は、染色廃水の貯水槽に隣接して設けられた地下式ポンプ室 内(深さ2.8m)の鉄骨架台の上に据え付けられ、ベルトで下のポンプに動力を伝えて いた。またこの電動機は、貯水槽の液面を検知するフロートレススイッチにより自動 的に運転・停止が行われていた。 ホンプからしみ出た水や浸入した雨水は、ポンプ室の床のピット(縦横とも50cm、 深さ35cm)にたまるようになっており、一日一回、ピット近くの排水管のコックを開け て、染色排水と一緒に排出している。災害発生当日は連休明けのため、ポンプ室の 床から20cmくらいのところまで水がたまっていた。 ポンプ室内で2名の被災者を発見したとき、被災者Aはゴム長靴をはいて壁面に寄 りかかるような姿勢で、また被災者Bはサンダルばきでしゃがみこむような姿勢であ った。このとき電動機は運転状態で、救出しようとした作業者が手袋をした手で鉄骨 架台に触れたところ電気を感じたため、電動機の電源(220V)をしゃ断してから救出 に入った。また、ポンプ室内には電源の接続されていない可搬形の水中ポンプが持 ち込まれており、さらに、フロートレススイッチの端子ケースのふたが取り外されてい た。 調査の結果、電動機のコイルが金属ケースに接触して漏電を生じていたことが判 明した。なお、電動機の電源には感電防止用漏電しゃ断装置が接続されておらず、 また、電動機の金属ケースは接地されていなかった。 以上の状況から災害発生状況は次のとおりと推測される。 [1] 災害発生当日、ポンプ室に大量の水がたまっていたため、AとBはポンプ室内 のコックを開けるとともに可搬形水中ポンプを用いて排水することにし、Aはゴム長 靴をはいて水中ポンプをポンプ室内に搬入した。 [2] 貯水槽の水面がフロートレススイッチの電極にわずかに達していなかったた め、Bは端子ケースのふたを取り外し、短絡状態にさせて電動機を運転させた。この とき電動機の漏電により鉄骨架台に接触したAが感電した。 [3] Aの異常に気づいたBはサンダルばきのままポンプ室内に入った。このときは短 絡状態を解除したため、鉄骨架台に触れても感電せずに下りることができた。 [4] BがAを助け出そうとしているうちに、貯水槽の水面が上昇してフロートレススイ ッチが入り、再び電動機に電源が入ったため、Bも鉄骨架台に接触して感電した。 [1] 電動機が漏電を生じたこと。 [2] 電動機の電源に感電防止用漏電しゃ断装置が接続されていなかったこと。 [3] 電動機が接地されていなかったこと。 [4] 電動機が狭いポンプ室内の導電性の高い鉄骨架台に据え付けられ、かつ、床 に水がたまり、極めて感電しやすい状況にあったこと。 [1] 電気機械器具は、定期的に絶縁性能等について点検を行い、異常を認めたと きは直ちに補修、交換等の措置を講ずること。 [2] 電動機の電源に感電防止用漏電しゃ断装置を接続するとともに、金属ケースを 接地すること。 [3] 電気機械器具は、狭い場所や湿潤して導電性の高い場所などを避け、なるべく 広い通気のよい場所に設置すること。 [4] 湿潤な場所や導電性の高い場所で電気機械器具を取り扱うときは、電気用ゴ ム手袋、電気用ゴム長靴などの絶縁用保護具を着用すること。 なお、フロートレススイッチの端子を短絡させるような作業方法をとることがないよ う、適正な作業手順を定め、かつその順守の徹底を図ることも必要である。 業種 染色整理業 事業場規模 − 機械設備・有害物質の種類(起因物) 原動機 災害の種類(事故の型) 感電 被害者数 死亡者数:2人 不休者数:− NO.435 休業者数:− 行方不明者数:−
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