『貯蓄から投資へ』に関する意識調査

2016年10月25日
関 係 各 位
野村アセットマネジメント株式会社
「『貯蓄から投資へ』に関する意識調査」の結果について
~積立投資は、資産形成のみならず、投資家特性の改善に効果~
野村アセットマネジメント株式会社(CEO兼執行役社長:渡邊国夫)は、NISA(少額投資非課税制度)
やDC年金(確定拠出年金制度)、ファンドラップ・サービスなどの利用状況を通じて、「貯蓄から投資へ」
に関する実態や意識について、2016年8月に実施したインターネット調査の結果をまとめましたので、
公表します。
この調査は、2013年3月以降、継続的に行ってきた「NISAに関する意識調査」を引き継ぎ、各種の制
度を通じた資産運用や資産形成について、4万人を対象として調査・分析しています。また、平成29年
度税制改正要望(金融庁)に上がった「積立NISA 1」についても、利用意向等について調査しました。
主な調査結果は以下のとおりです。
【主な調査結果】
・これまでの調査を通じて、家計金融資産の構成比や投資信託保有率に大きな変化は見られず、「貯
蓄から投資へ」とする資金の流れはやや停滞気味。投資信託保有率が低い要因として、若年層の保
有が低いことにある。若年層における資産形成手段として積立貯蓄は広く定着しているが、積立投資
の利用は限定的。積立貯蓄・投資の利用の有無は、資産形成に大きな違いを生む。
・NISA利用意向率は低下。口座開設の動きも鈍い。その中で、積立投資比率が高まっており、資産形
成層の活用が増えている。若年層が積立NISAをきっかけに資産形成手段として積立投資を活用する
ことが期待される。
・個人型DC年金(確定拠出年金)について、認知や利用意向を調査したところ、50代までの加入対象
者のうち、認知は約3割に留まっている。制度改正について、充分に周知されていない様子がうかが
われる。利用意向率は加入者と合わせて14%に留まっている。
・ファンドラップ利用意向者は、各種の金融サービスに対するニーズが高く、コンサルティングを介した
運用サービスに期待している様子。
1
8 月上旬に実施した当調査において、「積立 NISA」に関する利用意向を聴取しました。これは、金融庁・森長官講演「資産運用におけるパラ
ダイム(2016 年4 月 7 日講演、4 月18 日公表)」において、「NISA についても、制度的に、より積み立て型を促進することができないか、といっ
た問題意識を持っている」との発言を踏まえ、調査実施時に「積立 NISA」の利用意向について聴取したものです。そのため、モニターは詳細
な制度設計に関する情報を与えられていない状況で回答していることにご留意ください。
1
【参考】調査結果を踏まえたNISA・DC年金・ファンドラップの潜在的利用者数および資産額
NISA、DC年金、ファンドラップを通じた資産額は、2016年3月末で合計18兆円(NISAは累計投資
額、DC年金は投資信託資産額(2015年3月末)、ファンドラップは資産額)。意向者の利用を踏まえる
と、3制度・サービスの証券投資の資産額は潜在的には合計65兆円に達するものと見られる。
<NISA・DC年金・ファンドラップの潜在的利用者数および資産額>
(万人)
2,000
1,800
30
1,736
1,600
25
積立NISA, 396
1,400
1,200
(兆円)
32
21
ジュニアNISA, 77
職場積立NISA, 8
1,020
20
個人型DC, 717
1,000
15
800
12
NISA, 1,255
600
8
400
10
10 574
26
潜在推計
NISA
2015/3
179
5
48
企業型DC, 548
2016/3
6
718
5
200
0
25
1,434
潜在推計
2016/3
DC年金
0
潜在推計
ファンドラップ
NISA
職場積立NISA
ジュニアNISA
積立NISA
企業型DC
個人型DC
ファンドラップ
利用者数(左軸)
投資額(資産額)
(DC・投資信託)
(右軸)
(潜在推計の算出方法)意識調査における現利用者サンプル数と、各制度・サービスにおける 実績値との比率を算出し、調査
における 利用者・意向者の合計サンプル数から 、潜在的利用者数を推計している 。従って、潜在推計には、現在の利用者数
が含まれている。投資額(資産額)については、実績値における一人当たり投資額(資産額)を算出し、潜在的利用者数に掛け
ることで、投資額(資産額)を推計している 。DC年金については、利用意向者の運用商品選択意向(元本保証型、投資信託の
割合)から投資信託の資産額を試算している。積立NISAの投資額については、調査時点では制度概要がわからないこ とか
ら、現行NISAにおける積立投資状況から算出している。
(注)グラフ中の棒グラフは各制度・サービスの利用者数を示し(左軸)、折れ線グラフは投資額(資産額) を示す(右軸)。なお、
四捨五入の関係で、各項目の合計と全体とでは一致しない場合がある。
(資料)金融庁「 NISA口座開設・利用状況調査」、厚生労働省「確定拠出年金制度」サイト、日本投資顧問業協会「契約資産状
況(統計資料)」、および、弊社調査から野村アセットマネジメント作成
(次頁に続く)
2
【参考】 3制度・サービスを通じた証券投資による個人金融資産の投資誘引効果
3制度・サービスを通じた証券投資により、個人金融資産においてどのような変化をもたらすか試算し
たところ、投資信託および株式による証券投資の比率は、2016年3月末の14%から潜在的には18%と
2割弱に高まるものと見られる。個人金融資産における投資信託の資産額は、92兆円から潜在的に
136兆円に高まるものと見られる。なおこれらは、制度・サービスを通じた効果のみを試算しているもの
であり、全般的な証券投資の拡大を想定すれば、更に証券投資の比率は高まるものと期待される。
<NISA・DC年金・ファンドラップを通じた投資による個人金融資産の投資誘引効果>
投資信託
株式等
保険年金等
現預金・債券
外円;3制度による投資効果
内円;2016年3月末
(潜在的投資)
(実績)
8%
5%
9%
10%
個人金融資産
52% 54%
構成比
(資金循環統計ベース)
32%
31%
<3制度・サービスを通じた投資信託・株式の投資誘引効果(左図:投資額と売却額、右図:資産額>
(兆円)
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
売却(3制度計)
NISA
DC年金
ファンドラップ
増減額(合計)
44
21
12
13
-2
15
19
-3
7
投資信託
(兆円)
200
153
150
100
-23
(16)
株式等
168
136
92
50
0
投資信託
株式
2016年3月末
預貯金
潜在的投資額の効果
(推計方法)当調査では証券投資の資金源について聴取している。DC年金では給与所得から の投資となる が、NISAやフ ァン
ドラップでは預貯金からの資金シフトが反映されている。なお預貯金の増加額は、DC年金における元本保証型運用(預金)を
選択した割合を反映している。
(資料)日銀「資金循環統計」、および、弊社調査から野村アセットメネジメント作成
3
【調査結果】
「貯蓄から投資へ」とする資金の流れ
これまでに当調査で調べている家計金融資産における資産構成や投資信託の保有率に変化は見ら
れない。投資信託保有率では、20代から40代といった資産形成層での保有率が低く、投資家の裾野が
充分に広がっていない様子がうかがわれる。
<家計金融資産における資産構成の推移 (n=40,000)>
投資信託
株式
保険等
現預金・債券
100%
80%
60%
60%
60%
56%
7%
10%
9%
13%
16%
13%
14%
11%
16%
15%
19%
17%
2007年
2008年
2009年
2011年
2012年
61%
58%
68%
67%
66%
10%
9%
9%
14%
15%
16%
12%
8%
9%
9%
2013年
2014年
2015年
2016年
60%
40%
20%
0%
11%
17%
17%
15%
15%
(注)過去の調査結果については、弊社「投資信託に対する意識調査」「NISAに関する意識調査」(以下、同)。
<投資信託保有率の推移(左図)と今回調査における年代別投資信託保有率(右図) (n=40,000)>
投資信託保有率
投資信託保有率
非保有率
0%
100%
全体
90%
80%
70%
60%
83%
84%
83%
84%
85%
85%
85%
86%
20%
14%
40%
非保有率
60%
86%
20代
3%
30代
7%
93%
40代
10%
90%
50代
14%
97%
50%
40%
30%
86%
20%
10%
0%
17%
16%
17%
16%
15%
15%
15%
14%
60代
2008年 2009年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 70代以上
21%
27%
79%
73%
(注)ここでの投資信託は、過去調査との整合性のため、上場投資信託( ETF)、不動産投資信託( REIT)を除いている。
4
80% 100%
資産形成の実態
資産形成状況について調査したところ、財形貯蓄制度や預貯金による毎月積立貯蓄を活用している
割合は、全体で25%となった(過去の利用経験を含む)。資産形成層となる50代までは3割程度が利用
している。一方、NISA口座などの証券口座や従業員持株会制度などによる毎月積立投資を活用して
いる割合は7%に留まっている。資産形成層でも1割を下回っており、積立投資による資産形成は定着
していない。
積立貯蓄や積立投資を行っている資産形成層の家計金融資産のうち、積立資産は5割から6割を超
えており、行っていない場合と比べても資産額に違いが生じている。また家計金融資産の構成比につ
いても、積立投資利用者は証券投資の比率が高い。「貯蓄から投資へ」を促すためには、資産形成に
おいて、積立投資の利用を広げることが求められよう。
<積立投資・積立貯蓄の利用者 (n=40,000)>
35%
30%
30%
25%
25%
積立投資利用率
30%
30%
積立貯蓄利用率
24%
19%
20%
15%
15%
10%
7%
7%
9%
8%
8%
6%
5%
5%
0%
(n=40,000)
30代
20代
50代
40代
全体
60代
70代以上
年代別
(注)利用者には、過去に利用した経験者を含む(以下、同)
<積立投資・積立貯蓄利用者の家計金融資産の状況 (n=18,885)>
家計金融資産(積立なし)
積立貯蓄による資産形成額
(万円)
3,000
66%
2,500
2,000
62%
(n=18,885)
60%
2,300
50%
40%
1,443
1,203
268
70%
2,623
2,571
1,809
1,695
466
積立投資による資産形成額
2,219
43%
1,000
0
64%
55%
1,500 1,413
500
家計金融資産(積立利用)
積立資産形成比率(右軸)
667
330
269
169
845
538
331
197
32%
792
708
433
232
444
536
285
29%
491
262
30%
20%
10%
0%
20代
30代
40代
積立資産形成
50代
60代
70代以上
年代別
(注)積立資産形成比率とは、積立貯蓄あるいは積立投資の利用者における家計金融資産において、積立貯蓄・ 積立投資に
よる資産形成額(合計額)の割合を占めている。
5
<積立投資利用者の家計金融資産の構成比>
(注)家計金融資産は、アンケートによるもの
外円;積立投資利用者
内円;全体(n=40,000)
(n=2,889)
投信
14%
9%
16%
株式
17%
家計金融資産
構成比
9%
66%
保険等
現預金・債券
10%
59%
NISAに関する意識
NISAに対する利用意向率がやや低下。今回の調査対象においての口座開設率も低下し、2割程度
となっている。その中で、積立投資を利用している割合が増えており、資産形成層の利用が広がりつつ
ある。また税制改正要望として挙げられている積立NISAについて、積立投資を行っている層はもとよ
り、積立貯蓄層や未経験層も関心を示しており、資産形成層を中心に広く利用されるものと見られる。
<NISAに対する利用意向・口座開設状況 (n=40,000)>
利用意向・検討者
非意向者
口座開設率
100%
80%
58%
60%
42%
40%
60%
66%
61%
65%
69%
70%
68%
20%
21%
22%
23%
39%
35%
31%
30%
32%
29%
2月調査
6月調査
10月調査
4月調査
11月調査
8月調査
71%
40%
20%
34%
11%
0%
3月調査
7月調査
2013年
10月調査
18%
2014年
(注)過去調査については、弊社「NISAに関する意識調査」による(以下、同)。
6
2015年
19%
2016年
<NISA口座における投資実行者のうち、積立投資を行っている割合 (n=2,123)>
35%
2016年8月調査
2015年11月調査
30%
25%
25%
20%
20%
15%
10%
22%
15%
13%
30%
29%
22%
21%
20%
16%
14%
16%
11%
9%
15%
8%
2014年
2015年
16年
70代以上
60代
50代
40代
30代
20代
8月調査
11月調査
4月調査
10月調査
0%
6月調査
5%
年代別
<積立NISAに関する利用意向 (n=40,000)>
現行NISAで積立投資
積立NISA利用意向
20%
0%
積立投資利用者
積立貯蓄利用者
全体(n=40,000)
(n=9,928)
75%
27%
11%
29%
30代
30%
40代
29%
50代以上
45%
30代
50%
40代
51%
18%
15%
15%
17%
14%
11%
22%
78%
7%
76%
80%
6%
6%
83%
7
35%
34%
35%
81%
6%
35%
40%
14%
6%
30代
50代以上
65%
43%
15%
62%
12%
20代
20代
59%
10%
47%
13%
60%
10%
(n=2,889)
40代
62%
11%
24%
50代以上
80%
60%
8%
20代
(n=28,998)
積立未経験
17%
40%
非意向
100%
個人型DC年金に関する意識
2017年から制度改正され利用対象者が大幅に拡大する個人型DC年金(確定拠出年金)について、
認知や利用意向を調査したところ、50代までの加入対象者のうち、認知は約3割に留まっている。制度
改正について、充分に周知されていない様子がうかがわれる。利用意向率は加入者と合わせて14%に
留まっている。
加入意向者の利用理由をみると、「全額所得控除により所得税等が軽減される」が4割強となり、所
得控除のメリットを重視している様子。年金資金形成手段としては、「毎月少額の積立により継続しやす
い」が3割強となっており、税制優遇措置を受けながら、長期に亘り資産形成を行う意向が見られる。
<個人型DC年金に対する認知(左図)と利用意向(右図) (n=26,390)>
個人DC
意向者
加入者
12%
2%
認知
27%
個人型DC年金
個人型DC年金
に対する利用意向
に対する認知
(加入対象者 n=26,390)
(加入対象者 n=26,390)
(20代~50代)
(20代~50代)
非認知
73%
非意向者
86%
<個人型DC年金の加入意向者の利用理由(複数回答) (n=3,522)>
形成】
【運用支援】
【制度の利便性】
【年金資金
【税制優遇】
0%
10%
20%
30%
40%
全額所得控除により所得・住民税軽減
50%
44%
金融商品の収益は非課税
31%
給付金が税制面で優遇
31%
年金資産を強制的に作ることができる
26%
毎月少額の積立により継続しやすい
33%
運用商品を自分で自由に選択できる
22%
運用商品に元本確保型も対象
24%
投資信託の信託報酬が低い
19%
運営管理機関を選ぶことができる
22%
転職先になくても個人型で継続可能
17%
退職後は個人型で継続して運用可能
13%
8
ファンドラップに関する意識
ファンドラップ・サービスについて、全体に対する認知率は2割強と比較的高いものの、利用者・意
向者で1割弱に留まる。ファンドラップ利用者・意向者は、金融サービスに対するニーズが高い。資産
運用においては、資産配分アドバイスや個別商品選定に関わるアドバイスに関心が高い。
<ファンドラップに対する認知率(左図)と利用状況(右図) (n=40,000)>
利用者
過去利用
2%
0%
認知
意向者
22%
5%
ファンドラップ利用状況
ファンドラップ認知率
(n=40,000)
(n=40,000)
非認知
78%
非意向者
93%
<ファンドラップ利用者・意向者の金融サービスに対する意識 (n=2,620)>
0%
10%
30%
10%
情報提供
40%
資産配分・
投資助言サービス
8%
ライフプラン作成支援
8%
包括的金融サービス
6%
ファミリー・オフィス
5%
70%
33%
30%
19%
9%
金融コンサルティング
60%
35%
12%
個別商品選定アドバイス
50%
33%
12%
資産配分アドバイス
金融機関から提供されたい金融サービス
20%
21%
全体(n=40,000)
21%
ファンドラップ利用者・意向者
(n=2,620)
13%
該当するものはない
24%
9
66%
【調査概要】
■調査目的
これまで実施してきた「少額投資非課税制度(NISA)に関する意識調査(第1回・2013年3月~第9
回・2015年11月)」「投資信託に対する意識調査(2005年~2013年)」に代わり、今般「『貯蓄から投
資へ』に関する意識調査」として実施しました。NISAやDC年金(確定拠出年金制度)、ファンドラップ・
サービスなどを通じて、「貯蓄から投資へ」とする個人の金融資産の運用状況の変化を継続的に調
査します。調査結果については、投信販売会社と共有しながら投資信託の利用拡大のために役立
て、また、調査結果について分析を行ない、その成果を公表することにより、資産運用に関する調査
研究の向上など投資信託の普及に資することをめざし、社会への還元を図ることを目的とします。
■調査対象・サンプル数
事前調査(40,000サンプル):20歳以上の男女(調査会社インテージに登録しているモニター)から4
万サンプルを対象に調査を実施しました。なおサンプル構成について、平成22年度国勢調査や最近
の人口統計における年代別構成比に合わせて、ウエイトバックというサンプル数補正をおこなった上
で集計処理を行っています。
事前調査サンプル数
合計
男性
3,153
50代
女性
3,395
6,549
男性
2,258
男性
3,882
20代
5,218
60代
7,791
30代
女性
2,961
男性
3,245
女性
3,910
70代以上
男性
女性
4,279
1,540
5,819
■調査地域
全国(インターネット調査)
■調査時期
2016年8月2日(火)~8月10日(水)
■調査機関
調査主体:野村アセットマネジメント株式会社
調査実施機関:株式会社インテージ
10
6,548
女性
3,302
男性
3,934
40代
8,075
女性
4,141
合計
男性
女性
20,751
19,249
40,000