星のように明るい光を生み出すレーザー技術

図 1:レーザー技術によって人工的な星を作ります
© 2012 TNO/Fred Kamphues/ESO
星のように明るい光を生み出すレーザー技術
人類が自分の星を作れるようになるまでは、まだ長い道のりが必要でしょう。しかし、そのための技
術はすでに科学的な用途に使用されています。オランダ応用科学研究機構 (TNO)は、ヨーロッパ南天
天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)用の投影システムを開発しました。これは「光学鏡筒」(OTA)と呼
ばれ、人工的な星を作るための複雑な投影システムのことを言います。このレーザーの向きを正確に
調整する働きをするのが、マクソンフラットモータ 2 台、スピンドル付きプラネタリギアヘッドおよ
びエンコーダから構成される高精度ドライブシステムです。
ヨーロッパ南天天文台(ESO)は、世界で最も学術的な実績を上げている天文台で、1962 年の設立以来、
最新技術を駆使した研究設備を天文学者や天体物理学者に提供しています。欧州での天文学研究で活
躍しているのが超大型望遠鏡(VLT)で、赤外線や可視光の観測に適した条件が揃ったチリの山上に各装
置が平行に設置されています。VLT は、4 台の口径 8.2m 望遠鏡「ユニット・テレスコープ」(UT)と 4
台のレール可動式 1.8m 補助望遠鏡(AT)から構成されており、世界でも最も先端的な光学機器であると
言えます。この VLT 用の投影システムが、オランダ応用科学研究機構(TNO)によって開発されました。
このシステムは「光学鏡筒」(OTA)と呼ばれる人工的な光を作るための複雑な投影システムで、上空の
大気中にレーザーを照射して、人工の星を作成します。この光学鏡筒は「4 レーザーガイド星システム」
(4LGSF)の重要な要素に属しています。このシステムは補償光学システム(AOF)と呼ばれる補償光学系
が装備された次世代の望遠鏡で、VLT にも導入されることになっています。4LGSF は 4 台の 20W 高
性能レーザーから構成されており、地球の大気の揺らぎによって生じる VLT 星像の歪み補正に役立ち
ます。新しいレーザーシステムによって、望遠鏡の視野も改善されます。
文章:アンニャ・シュッツ © 2012 maxon motor ag
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アプリケーション事例 通信分野:TNO 望遠鏡
2013 年 4 月 10 日
通常、望遠鏡は天体からの光を集め、特定の器具で焦点を合わせますが、この新しい望遠鏡ではその
逆、つまり、望遠鏡を使って空にレーザー光線を投影して、光の点を作り出します。その際、レーザ
ー光線は高度 90km の大気中にあるナトリウム層に照射されます。ナトリウムが励起されると、その
部分が光り始めます。このような光は、上空 90km の高さで 45mm ほどの精度で作成されると言われ
ています。この明るい光は人工的なガイド星として、その周囲の星の観測に役立ちます。こうして作
られた人工の星を 4 つ利用することで、VLT 像の鮮明度も高まります。
フィールドセレクタメカニズムに使用されているマクソン製ドライブシステム
OTA は、レーザー光線を 20 倍に拡大するレーザービームエキスパンダ、上下/左右に傾斜できる能動
的な反射鏡、フィールドセレクタメカニズム(FSM)から構成されます。このメカニズムは、上下および
左右に傾けることができるダイヤフラムスプリングとストラットの組み合わせにつながれています。
FSM の反射鏡の直径は 100mm で、1 つの平面で直交する 2 本の軸を基準にして鏡面と平行に回転でき
ます。(図 2)FSM の反射鏡の回転は、レーザー光線が空に照射される角度に非対称的に縮小して反
映されます。この鏡には弾性ヒンジが使用されており、セルフロック式アクチュエータによって高剛
性の調整が可能です。また、必要とされる絶対精度を得るため、本体に対する鏡の向きを直接測定す
るセンサが装備されています。
左右傾斜
上下傾斜
反射鏡
アクチュエータ
センサ
図 2:フィールドセレクタメカニズムの 3 次元 CAD 図©2011 SPIEO ptics & Photonics
マクソンのドライブシステムは、FSM の鏡の正確な上下/左右傾斜動作と、レーザーの空への正確な
照射方向の調整を担っています。1 台の望遠鏡には、FSM ユニット 1 台あたり 2 個のモータが使用さ
れます。アクチュエータの製造に際して特に重要視されたのは、ダイナミック性に対する要件でした。
市場でこの要件を満たすセルフロックを備えたアクチュエータは非常に稀です。そのため、TNO はボ
ールねじを用いたマクソンのプラネタリギアヘッド付きスピンドルドライブの標準仕様をベースとし
て、高精度スプリング伝達機構を開発しました。機能の仕組みについては図 3 をご覧ください。モー
タが回転すると、ナットが軟質スプリングを押し縮め、軟質スプリングの力が反射鏡の支持体とつな
がっている硬質スプリングに作用する仕組みになっています。軟質スプリングと硬質スプリングの剛
性比は 1:22 です。つまり、ナットの動きは 22 倍に縮小されて鏡に作用します。この仕組みによって
分解能は飛躍的に向上し、その一方で FSM のダイナミック特性は少ししか制限を受けません。また、
FSM ユニットの取り付け高さは限られているため、この用途にはブラシレスフラットモータが適して
います。
文章:アンニャ・シュッツ © 2012 maxon motor ag
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アプリケーション事例 通信分野:TNO 望遠鏡
2013 年 4 月 10 日
2015 年には、新しいレーザー技術を用いた最初の望遠鏡がチリのパラナル天文台に設置される予定で
す。さらに ESO は、その他の望遠鏡にもこの技術を導入する計画をしています。口径約 40 メートル
の European Extremely Large Telescope (E-ELT) は世界で最も大きい光赤外望遠鏡となる予定で、こ
の望遠鏡にもこのレーザー技術が導入されることになっています。これで人類は将来、星を今よりも
もっとはっきりと見ることができるようになるでしょう。
文章:アンニャ・シュッツ(maxon motor ag 編集部)
タイトル:2676 文字、図版 4 点
ボールねじ
軟質スプリング
硬質スプリング
回転ロック
ナット
ギアヘッド
モータ
誘導センサ
磁石エンコーダ
図 3:フィールドセレクタメカニズムの 3 次元 CAD 断面図、左図:反射鏡の支持体に作用する特殊アク
チュエータと FSM の内部、右図:特殊なアクチュエータ
© 2011 SPIE Optics & Photonics/TNO
図 4:FSM の最初のプロトタイプ(ラボのテーブル上に立たせた状態)
© 2011 SPIE Optics & Photonics/TNO
文章:アンニャ・シュッツ © 2012 maxon motor ag
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アプリケーション事例 通信分野:TNO 望遠鏡
2013 年 4 月 10 日
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出典:
Rijnveld, N., R. Henselmans, B. Nijland, “A tip/tilt mirror with large dynamic range for the ESO VLT Four
Laser Guide Star Facility”, SPIE Optics & Photonics, 2011, Proc. of SPIE, Vol 8125
文章:アンニャ・シュッツ © 2012 maxon motor ag
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