第175回(平成26年7月13日施行) 1級工業簿記 第1問 第1問は、原価計算基準の内容を十分に理解できているかについて確かめる問題です。 1は原価計算基準・前文(原価計算基準の設定について)より、2は原価計算基準一六(二) (補助部門)より、3は原価計算基準二九(連産品の計算)より出題しています。 第2問 第2問は、製造業における原価に関する各種の仕訳について尋ねた問題です。 1.は、個別原価計算において、素材を消費した時の仕訳です。製造指図書番号が付され ている消費額は製造直接費であり、仕掛品勘定に計上します。一方、製造指図書番号が付さ れていない消費額は、製造間接費であり、製造間接費勘定に計上します。 2.は、月末に未払賃金給料を計上した時の仕訳です。未払賃金給料勘定(負債勘定)が 設けられているので、未払賃金給料勘定を貸方に記入して賃金給料勘定(借方)を計上しま す。 3.は、部門別計算において、補助部門費を製造部門に配賦した時の仕訳です。各補助部 門費を各製造部門での消費割合にしたがって配賦額計算を行います。 4.は、組別総合原価計算において、評価額のある作業くずが発生し、これを製造原価か ら差し引いた時の仕訳です。作業くず勘定(借方)とA組仕掛品勘定(貸方)で処理します。 5.は、掛け販売した製品について、後日、売上値引きをした時の仕訳です。売上勘定(借 方)と売掛金勘定(貸方)で処理します。 6.は、工場会計が本社会計より独立している場合の工場側の仕訳です。ここでは、工場 で製品が完成した時の仕訳です。ただし、工場に製品勘定が設けられていないので、仕掛品 勘定(貸方)から本社勘定(借方)へ振り替えることになります。 第3問 第3問は、製造間接費の配賦法についての問題です。製造間接費は、特定の製品に個別的 に集計することができない原価です。そのため、何らかの基準で配賦する必要があります。 本問では、直接労務費法と直接費法が問われています。 直接労務費法は、直接労務費と製造間接費の発生に因果関係があると考えて製造間接費 を配賦する方法です。製造間接費の年間予算額を年間の直接労務費総額で割って、製造間接 費配賦率を求めます。 一方、直接費法は、直接原価法とも言われ、製造直接費と製造間接費の発生に因果関係が あると考えて製造間接費を配賦する方法です。製造間接費の年間予算額を年間の製造直接 費総額(年間の直接材料費、直接労務費、直接経費の合計額)で割って製造間接費配賦率を 求めます。直接費法は、各製造直接費を計算して、合計を求めなければならないので、直接 労務費法より計算の手数がかかります。気をつけて計算して下さい。 第4問 第4問は、工程別総合原価計算とその記帳に関わる問題です。ここでは、第1工程仕掛品 勘定、第2工程仕掛品勘定、製品勘定、半製品勘定、副産物勘定、売上原価勘定、半製品売 上原価勘定および副産物売上原価勘定が元帳に設定されていますので、この諸勘定への記 帳を行うことになります。さらにまた、工程別原価計算表を作成する問題にもなっています。 工程別総合原価計算の特徴は、第1工程の完了品が第2工程に送られ、第2工程ではこれ が材料(正しくは前工程費です)として扱われることとなり、これに加工が加えられる点で す。ここでは、第1工程が平均法、第2工程が先入先出法で月末仕掛品を評価することにな っています。それぞれの計算方法の違いをしっかりと理解して、正確に計算できるようにし ておいて下さい。難しい条件が付されていない基本的な内容ですので、基本的な知識で十分 対応できる問題になっています。 第1工程では、半製品として倉庫に保管される完了品があるので、第2工程に振り替えら れる完了品と区別することになります。また、第2工程では、工程の終点で副産物が分離さ れるので副産物の処理も知っていなければなりません。工程の終点(仕上り程度 100%)で 発生する副産物は、第2工程の月末仕掛品(仕上り程度 40%)には関係しないので、完成 品(仕上り程度 100%)のみに負担させることになります。また、製品払出高の計算には先 入先出法、半製品払出高の計算には平均法が採用されているので、この計算方法も理解して おく必要があります。
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