事 故 事 例に学 ぶ 原動機付きバイクの交差点事故

(表2)
二輪車乗車中の事故類型別死者数
(平成23年)
交通事故対策事例
第11回
事 故 事 例に学 ぶ
合計
846人
左折時・・・10人
原動機付きバイクの交差点事故
交通事故総合分析センター
判断の誤り
18%
右折時
165人
追突・・・71人 8%
公益財団法人
25%
19%
3%
路外逸脱・・・27人
その他 1%
出会い頭
210人
その他
157人
1%
(表3)出会い頭、右折時事故の衝突相手の人的要因割合(平成 23年)
工作物
130人
正面衝突・・・76人 9%
発見の遅れ
20%
81%
15%
研究部 主任研究員
堤 陽次郎
[交通事故総合分析センタ−保有データによる]
(3)
B車(男性)
ライダーの話
バイクで走行していました
(B1)
。
しばらく行
保護され無事だった』
のですが、車体に
はじめに
くと約150m前方に信号のないT字路があ
打ち付けた左足を骨折する重傷を負って
二輪車乗車中の死傷者数はここ10年
て反対車線に入る乗用車が何台もありま
で約4割減少しましたが、
まだまだ多くの事
り、
そこから本線へ進入しようとして右折し
した。
2台の車が次々と右折したのを確認し
しまいました。
(2)C車ドライバーの話
免許を取って2年ほど経ちます。
免許を
A2)
、
そのあとからも右折しようとして
故が起きています。
平成23年の交通事故 (A1、
出て
く
る
3
台目の車があ
りました
(A3)
。
Bさん
死者数は4,612人でした。
このうち二輪車
通学に使っています。距離も2万キロほど
乗車中の死者数は846人であり、全体の
走っています。
この交差点は、大学への通
18%を占めています
(表1)
。
また、平成23年
の二輪車乗車中事故の事故類型別死
者数を見てみると、
出会い頭事故が210人
(25%)
と最も多く、次いで右折時事故の
165人
(20%)
となっています。
これら二つの
事故で死者数の約45%を占めていること
が二輪車事故の特徴です
(表2)
。
さらにこ
はその車が右折を開始した頃にはそのT
字路の直前に迫っていたので
(B2)
、
その
次
(4台目)
の車両
(C)
は自分が居るのだか
ら出てこないだろうと思い、速度を落とさず
そのまま直進しました。
すると3台目の後に
続くように4台目のCさん
(女性 20歳代)
が
運転する軽乗用車が右折を開始してきま
した。
あわてて急ブレーキを掛け、右によけ
取った時にこの車を新車で買って、毎日の
学路なので毎日通っています。
いつものよう
に一時停止し、左右の安全確認をして徐
行しながら進みました。
交差点に進入したと
ころ、
いきなり自車前部から
「ドーン」
と何かに
ぶつかった音がして、
「ハッ」
としてブレーキを
掛けて停止しました。
何もないところから突然原付バイクが現
れらの事故の人的要因を調べてみると、 て事故を回避しようとしたのですが、間に
Cさんの車体前面に衝突してし
相手車両
(第1当事者で多くは四輪車に 合わず、
したのに、
なぜBさんを見落としたのか分か
なる)の人的要因の約8割が「発見の遅
りません。
もっとしっかり右側の安全確認を
れ」であることが分かります
(表3)
。
「発見
の遅れ」
には、わき見運転なども含まれま
すが、二輪車の「見落とし」
も大きな要因
の一つとなっています。天気の良い昼間
や見通しの良い交差点でも、二輪車が見
落とされて事故になっているのです。
今回はこの
「見落とし」
の事故事例を通
故を防ぐための注意点を考えてみましょう。
事故事例
「見落としによる二輪車事故」
(1)
事故の概要(図1)
Bさん
(男性 10歳代)
は冬晴れの平日
の朝、高校へ向かうため、普段から通り慣
れた自宅近くの往復2車線の道路を原付
んの車体に左 足を打ち付け、その衝 撃
で右 側 に転 倒してしまいました。
『 ヘル
メットを正しく着用していた為、頭部は
していれば事故を起こさずに済んだのかも
しれません。
(表1)状態別死者数(平成23年)
1800
合計
4,612 人
1400
1200
1000
800
まったつもり』
『 見たつもり』
という、つもりの
通学に原付バイクを使うようになって半
務化されています。
当時Bさんの原付バイ
安全確認ではだめです。
『二輪車を見落
年ほど経ちます。
免許はその時に取りまし
クもライトはついていましたので、見落とし
としているかもしれない』
といつも思うぐらい
た。
この交差点は見通しが良いため、
いつ
についてはCさん側に問 題が有ったと思
の慎重さが必要なのです。
もは右折進入車が自分の原付バイクに気
われます。
Cさんは、
通り慣れている交差点
また、
二輪車の運転者も、
『見落とされて
付いて通過するまで一時停止して待って
だったのでつい油断してしまったようです。 いるかもしれない』
といつも思う慎重さが必
くれています。
今回も
「自分に気付いて停
その為、安全確認を行ったと思い込んで
要ではないでしょうか。
今回の事故も、
「見
止して待ってくれるだろう」
と考え、十分な
道路上に潜む危険に何一つ気付いてい
落とされているかもしれない」
とBさんが注
注意を払わないまま速度も落とさず直進し
ませんでした。
その証拠に直進中のBさん
意していれば、事前に減速しながらCさん
ました。友達との待ち合わせ時間に遅れ
には、ぶつかるまで全く気が付いていませ
の動きに注意を払ったはずです。
そうすれ
気味であった事もあり、速度は50Km/時ほ
んでした。
ば事 故は防げたかもしれません。
Cさんは
ど出していました。
見通しの良い交差点な
Bさん側にも問題が有りました。
原付バイ
免許を取って2年弱、
Bさんは半年弱で
のに、なぜCさんは私の原 付バイクがいる
クの法定速度は時速30Kmです。
これに対
す。
ちょうど慣れた頃のため、一方で気が
のに出てきたのでしょうか?こちらからはCさ
して20Kmもオーバーしていました。
30Km/
緩み、
『 交通ルールを守る』
という事を軽視
んが良く見えていたので、
まさか、
自分が気
時で走行していたとすれば急ブレーキをか
しがちになっていたのかもしれません。
付かれてないとは思えないのですが。
け、
直前で止まれたかもしれません。
・・・
(4)考えられる事故原因
これらを踏まえ以下に二輪車の見落とし
による事故を防ぐための注意点をあげて
(5)事故防止のポイント
みます。
この事故はCさんがBさんの原付バイク
今回の事故例から分かるように、安全
を見落とし、交差点に進入した為に起きた
確認をしたにもかかわらず、事故は起きて
と推測されます。
それではなぜ見落として
います。
これは
『 見落とされ易い』
という二
しまったのかを考えてみます。
もともと二 輪
輪車の特性から来ています。
その原因は
車は車幅が狭く、
正面から見ると他の道路
前 面からみた車 体の大きさが小さいから
利用者から見落とされ易いことが知られて
だと考えられています。
もともと見え難い二
②二輪運転者は
『見落とされ易い』
と常に
います。
そのため、
ヘッドライトの昼 間 点
輪車を見落とさないようにする為には、
『止
意識すること。
そうすれば、
より良い防衛
(図1)
事故事例現場見取り図
①四輪運転者は、交差点ではきっちり一
時停止して、左右をゆっくり確認する。
そ
うすれば、
見落とし易い二輪車でも確認
して見つけることができます。
③すべての基本は
『お互い交通ルールを
A3
A2
A1
大半です。
基本に立ち返り、
もう一度自
1442人
(31%)
400
分の運転行動を見直しましょう。
846
人
(18%)
200
歩行中
3
守り安全運転に努める』
ことです。
これを
おろそかにして事故を起こしている人が
1686人
(36%)
600
0
灯などの対策が日本をはじめ多くの国で義
運転が行えるはずです。
1600
死者数
[人]
して二輪車の特徴を知っていただき、事
まいました
(C、
B3)
。
その際、
Bさんは、
Cさ
れ、衝突したように感じました。
左右確認は
[交通事故総合分析センタ−保有データによる]
四輪車乗車中 二輪車乗車中
二輪車の事故は、
起こってしまうと重大事
628人
(14%)
自転車乗用中
10人
(1%)
その他
[交通事故総合分析センタ−保有データによる]
C
B3
とまれ
B2
B1
約150m
故になり易いのです。
二輪車に乗る方、又
四輪車の方もそうですが、事故を起こさない
為の防衛運転に最大限努めていただくこと
が最も重要なことではないでしょうか。
4
SAFETY INFORMATION Vol.89 (2012.9)