認知症とPEG - 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 総合内科

沖縄県立南部医療センター
2年次研修医 田村 知子
2009.1.29
症例: 89歳女性
【主訴】 食欲不振
【既往】 胆石症、高血圧:30年前に指摘
【内服】 アムロジピン(5)2T/1, ファモチジン(20)2T/2
バルサルタン(40)4T/1(ARB) , リシノプリル(5)2T/1(ACE-I) ロキソプロフェン(60)2T/2
【嗜好】 たばこ 20本/日×70年(2週間前まで)
アルコール飲まない 【社会歴】
座間味島在住 ADL:全介助、認知症はなかった。
以前は農業をやっていた、子供は9人(5人が健在)。
次女と統合失調症の五男の三人暮らし。
面倒は主に次女がみている。
【現病歴】 次女から聴取
ž 
5年前から徐々にADL低下。
3年前から家に引きこもりがちになり、 1ヶ月前から全く外出しなくなった(診察も往診)。
ž 
2週間前から食欲が急激に減少。
以前から便秘気味。嘔吐なし、下痢なし。
黒色便はない。咳もしていない。寝汗もない。
ž 
体重変化は不明。
病歴で
他に聞きたいことは?
【身体所見】
身長 140cm, 体重40.2kg
全身状態: ぼーっとしている, 不安げな表情
Vital sign: BP140/80mmHg, HR87回/分, RR26回/分, BT36.7℃
SpO2 96%(RA)
意識: E4V5M6
毛髪: やにで茶色
頭部: 貧血なし, 黄疸なし, 左眼瞼周囲発赤
咽頭発赤なし, 舌乾燥著明, 舌苔多量, 歯なし, 難聴あり
頸部: 硬い, リンパ節触知しない, 甲状腺腫大なし・圧痛なし, 血管雑音なし
肺: crackle, wheezeなし
心: 整, 雑音なし
腹部: 平坦, 軟, 圧痛なし, 腸蠕動音亢進減弱なし, 肝脾腫なし
背部: CVA叩打痛なし, 脊椎叩打痛なし, 褥瘡なし
四肢: 浮腫なし, 手指ヘバーデン結節変形あり
皮膚: 乾燥著明, 衛生状態不良
神経所見: 特記所見なし
Discussion1
食欲不振の・・・
②必要な検査
は?
①鑑別は?
一般的な「食欲不振」の鑑別診断
ž  悪性腫瘍
ž  感染症
ž  呼吸・循環疾患
ž  代謝疾患
ž  精神疾患
ž  嚥下機能障害
ž  その他(胃潰瘍、胆石など)
「中高年の」食欲不振に限ると・・・
28
悪性腫瘍
20
感染症
13
呼吸・循環疾患
11
代謝疾患
0
5
10
15
20
25
30
(%)
鑑別
例
病歴
身体所見
検査
悪性腫瘍
胃癌
大腸癌など
体重減少
黒色便
リンパ節
直腸診
Hb
便潜血
胃・大腸カメラ
感染症
糞線虫
呼吸
循環障害
COPD
慢性心不全
虫卵
体重増加
むくみ
呼吸困難
起坐呼吸
口すぼめ呼吸
頸静脈圧上昇
下腿浮腫
レントゲン
代謝疾患
低Na、高Ca
甲状腺機能低下
副腎不全
非特異的
意識障害
低血圧
低血糖
Na Ca
TSH
rapid ACTH test
精神疾患
うつ病
認知症
抑うつ
物忘れ
なし
MRI など
嚥下機能
障害
脳梗塞
パーキンソン
既往歴
麻痺
筋固縮
CT, MRI など
その他
胃潰瘍
胆石
薬剤性
腹痛、黒色便
嘔吐
薬剤歴
圧痛
Murphy
【検査結果】
138 mEq/l
Na
4.9 mEq/l
K
97 mEq/l
Cl
9.6 mg/dl
Ca
6.7 g/dl
TP
4.0 g/dl
Alb
42 mg/dl
BUN
0.9 mg/dl
Cre
12.3 mg/dl
UA
23 IU/l
GOT
14 IU/l
GPT
144 IU/l
LDH
76 IU/l
Amy
γGTP 15 IU/l
0.6 mg/dl
T-bil
Tcho 217 mg/dl
51 mg/dl
HDL
83 mg/dl
BS
WBC
Hb
Plt
pH
PCO2
PO2
HCO3
4600 /μl 13 g/dl
26.3万/μl 7.418
49.8 mmHg
60.2 mmHg
24.1 mEq/l
1.014
比重
5.5
pH
(-)
尿糖
尿蛋白
(-)
潜血
(+)
ケトン体
(+)
赤血球 1-4/HPF
白血球 1-4/HPF
TSH
free-T4
VtB12 葉酸
アンモニア
ACTH
コルチゾール前
コルチゾール30分
コルチゾール60分
0.88 μU/ml 1.46 ng/dl
328 pg/ml
6.6 ng/ml
26  μg/dl 30.3 pg/ml
19.4 μg/dl 36.3 μg/dl
41.5 μg/dl 【心電図】 洞調律, 軸正常
R in V5 25mmV以上, ST-T変化なし
【胸部レントゲン】 心胸郭比50%, 肺浸潤影なし
【腹部レントゲン】 異常ガス像なし
【腹部エコー】 胆嚢腫大なし, 胆石なし
右腎上極に巨大嚢胞あり, 左腎腎盂にも嚢胞あり
肝・膵・脾は特に所見なし
【胸腹部単純・造影CT】 あきらかな異常所見なし
【頭部CT/MRI】 出血や梗塞なし
【上部消化管内視鏡】
軽度食道裂孔ヘルニア, 萎縮性胃炎, 十二指腸腺腫
鑑別
例
病歴
身体所見
検査
悪性腫瘍
胃癌
大腸癌など
体重減少
黒色便
リンパ節
直腸診
Hb
便潜血
胃・大腸カメラ
感染症
糞線虫
呼吸
循環障害
COPD
慢性心不全
虫卵
体重増加
むくみ
呼吸困難
起坐呼吸
口すぼめ呼吸
頸静脈圧上昇
下腿浮腫
レントゲン
代謝疾患
低Na、高Ca
甲状腺機能低下
副腎不全
非特異的
意識障害
低血圧
低血糖
Na Ca
TSH
rapid ACTH test
精神疾患
うつ病
認知症
抑うつ
物忘れ
なし
MRI など
嚥下機能
障害
脳梗塞
パーキンソン
既往歴
麻痺
筋固縮
CT, MRI など
その他
胃潰瘍
胆石
薬剤性
腹痛、黒色便
嘔吐
薬剤歴
圧痛
Murphy
入院後経過
食欲が低下するあきらかな器質的疾患はなし
精神科
コンサルト
精神科
診察
イメージを表示できません。メモリ不足のためにイメージを開くことができないか、イメージが破損
している可能性があります。コンピューターを再起動して再度ファイルを開いてください。それでも赤
い x が表示される場合は、イメージを削除して挿入してください。
評価法
結果
評価
GDS
(Geriatric Depression Scale)
21/30点
(11点以上でうつ陽性)
→うつ
MMSE 改訂版MMSE 12/30点 →認知症
51/100点
→認知症
高齢者の体重減少の9つのD
Dentition(歯科的な問題)
ž  Depression(抑うつ)
ž  Dysgeusia(味覚異常)
ž  Dementia(認知症)
ž  Dysphagia(嚥下困難)
ž  Dysfunction(機能障害)
ž  Diarrhea(下痢)
ž  Disease(慢性疾患)
ž  Drugs(薬剤) ジギタリス、テオフィリンなど
ž 
高齢者の食欲不振・体重減少
MEALS-ON-WHEELS
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
M:Medication effect
E:Emotional problems(depressionなど)
A:Alcoholism,Abuse,Anorexia
L:Late life paranoia
S:Swallowing problems
O:Oral Problems
N:Nosocomial infections,No money
W:Wandering (demintiaなどの行動異常)
H:Hyperthyroidism,hypothyroidism,hyperparathyroidism,hypoadrenali
sm
E:Enteric problems
E:Eating problems(inability to feed self)
L:Low-salt,Low-cholesterol diet
S:Stones,social problems(isolation、inability to obtain preffered foods) 入院後経過
10
9
アマンタジン 50mg
フルボキサミン 50mg 8
100mg 150mg 7
6
食
欲
5
4
3
2
全然食べない・・・
1
0
1
4
7
10
13
16
19
(病日)
Discussion 2
いっこうに摂食量は
増えない・・・
どうする??
胃瘻?
経管栄養?
点滴?
中心静脈
栄養?
その前に・・・
ž  もう少し、この人をとりまく状況について
詳しく聞きました。
座間味島
夫
本人
89歳女性
ž 
本人
福岡出身
19歳のときに座間味に嫁いだ。
当時は本島出身とのことでかなり苦労した。
ž 
夫
15年前に食道癌で他界、自宅で看取った。
家族(次女)の弁
ž  いろいろな要求は多くなっている。
昼夜関係なく家族が呼ばれる。
ž  家族は介護に疲れ、本人が本島での眼科受診を
希望したため、この機会に本島の施設入所を希
望している。
座間味島
夫
15年前に他界
本人
89歳女性
介護に
疲れてきた
本島の施設に
入所させたい
昼夜無関係に
要求が
多くなってきた
次女
Key
person
五男
統合失調症
座間味島での医療状況①
~診療所 Dr.より~
Ø 
約5年前から下肢の運動障害?(未精査)
が出現し外出機会が減少し、訪問診療導入。
Ø 
キーパーソンの次女が、「家の中を他人に見せるのは嫌」
との理由で受療はスムーズでなかった。
Ø 
訪問診療時、次女は部屋から出てこないこともあり、
病状についても次女からではなく、五男から聞いていた。
座間味島での医療状況②
~診療所 Ns.より~
Ø 
自宅では次女が介護をしていた。
五男は食事介助の依頼をしてなんとか介助できる程度で、
キーパーソンは次女だが、患者と次女は不仲。
Ø 
入浴もしていない状態であったため、2-3ヶ月前から、Nsのすす
めでケアマネに連絡し月1-2回の訪問介護が開始された。
Ø 
次女の不在時にケアマネに対して「死にたい」と発言があった
ようだが詳細は不明。
座間味島での状況
~ケアマネージャーより~
次女が
「(自分は朝食をとらないから) 母親も朝食とらなくていいさ」 と発言することもあった。
Ø 
Ø 
次女は気性が荒く、
「今日は私が介護する」 と言って暫くしてから
「やっぱり介護して」 と発言したりする場面もあった。
ケアマネはこのような態度が発展すると
ネグレクトになる可能性があるのではないかと心配していた。
Ø 
金銭的な面では、患者は遺族年金。
五男は障害年金で生活している様子だが不明。
金銭管理は患者本人が行っていた。
座間味島
夫
15年前に他界
本人
89歳女性
「死にたい」
ケア
マネ
訪問診療
介護に
疲れてきた
本島の施設に
入所させたい
昼夜無関係に
要求が
多くなってきた
次女
Key
person
Dr
ふだんの
病状説明
五男
統合失調症
Ns
座間味島での状況
~三男(本島在住)より~
Ø 
2007年9月に様子を見に行ったときは、
患者はとても元気で庭掃除をしていた。
急に具合が悪くなったのは
次女が帰島してきた気苦労のせいだと思う。
Ø 
3年前に次女が帰島してから近所とのつきあいが悪くなった。
Ø 
兄弟姉妹は不仲のため、
長女がいる限りは自分は絶対に患者の面倒はみない。
次女とも口をききたくない。
今後の決定は次女一人で行ってほしい。
今後は次女に島で面倒をみさせればいい。
患者と次女が離れる(本島の施設に入所)ことになれば、
連絡はもらってもいい。
沖縄
本島
座間味島
夫
15年前に他界
本人
89歳女性
「死にたい」
ケア
マネ
訪問診療
介護に
疲れてきた
本島の施設に
入所させたい
三男
非常に険悪
昼夜無関係に
要求が
多くなってきた
次女
Key
person
Dr
ふだんの
病状説明
五男
統合失調症
Ns
以上をふまえ・・・
Discussion 2
いっこうに摂食量は
増えない・・・
どうする??
胃瘻?
経管栄養?
点滴?
中心静脈
栄養?
もちろん
あるよ
何かいい道
具はない
の??
倫理的問題を考えるときに有用な方法
四分表!
四分表
①医学的適応
②患者の意向
③QOL
④周囲の状況
今回の症例の栄養管理について
四分表をつくってみてください!
今回の症例の場合
①医学的適応
ž 
89歳と高齢
ž 
5年前から徐々にADL低下
ž 
2週間前から急激に食欲低下
ž 
器質的疾患は明らかなものはない
ž 
老年性うつ病
ž 
認知症
消化管の使用が可能か?
Yes
No
静脈栄養
経腸栄養
経腸栄養が4~6週以上必要か?
①医学的適応
No
誤嚥のリスクは
高いか?
経鼻十二指腸
経鼻空腸チューブ
経鼻胃管
Yes
誤嚥のリスクは
高いか?
Yes
Yes
No
No
空腸瘻造設
胃瘻造設
疾患別胃瘻増設とその予後
耳鼻科領域癌性疾患
3ヶ月生存率2
急性脳梗塞
1年生存率
認知症
その他
①医学的適応
0
20
40
60
80
100(%)
more frequently over the past weeks
6e = Bowel incontinence occasionally or
more frequently over the past weeks
7a = Ability to speak limited to !1 intelligible
word in an average day
7b = All intelligible vocabulary is lost
Bowel incontinence at least twice a week
Rarely/never makes self understood
lows: 7a, speech is limited to 1 to 5
words; 7b, all intelligible vocabulary is
lost; 7c, nonambulatory; 7d, unable to
sit independently; 7e, unable to smile;
and 7f, unable to hold head up. Stage
7c of the FAST scale has been suggested by the National Hospice Organization as an appropriate cutoff to enroll persons with a primary diagnosis
of dementia into hospice.9 To be considered as stage 7c, patients must have
progressed through all the previous
stages of the FAST scale sequentially.
To compare the ability of our risk
score to predict 6-month survival with
that of FAST, variables were chosen from
the MDS that most closely match the description of FAST stages 6 through 7c
(TABLE 1). Residents with all of the following characteristics were considered
to be at FAST stage 7c: limited or more
extensive assistance needed for dressing and toileting, supervision or more
assistance needed for bathing, urinary
and fecal incontinence at least twice a
week, rarely or never able to make themselves understood, and inability to ambulate without extensive assistance.
Mortality risk index score
Rarely/never makes self understood
7c = Nonambulatory
Extensive assistance (or total dependence)
required for locomotion (ie, move
between locations) during the last 7 days
Figure 1. Mortality Risk Index Score for Stratification of Residents Into Levels of Risk for
6-Month Mortality
Score Sheet to Estimate 6-Month Prognosis in Nursing Home Residents With Advanced Dementia
Risk Factor From Minimum Data Set
①医学的適応
Points
Score
Activities of Daily Living Scale = 28∗
1.9
–––––
Male Sex
1.9
–––––
Cancer
1.7
–––––
Congestive Heart Failure
1.6
–––––
Oxygen Therapy Needed in Prior 14 Days
1.6
–––––
Shortness of Breath
1.5
–––––
<25% of Food Eaten at Most Meals
1.5
–––––
Unstable Medical Condition
1.5
–––––
Bowel Incontinence
1.5
–––––
Bedfast
1.5
–––––
Age >83 y
1.4
–––––
Not Awake Most of the Day
1.4
–––––
Total Risk Score, Rounded to Nearest Integer
Possible Range, 0-19
∗The
Activities of Daily Living Scale is obtained by summing the resident's selfperformance ratings on the Minimum Data Set for the following 7 functional activities:
bed mobility, dressing, toileting, transfer, eating, grooming, and locomotion. In the
Minimum Data Set, functional ability is rated on 5-point scale for each activity
(0, independent; 1, supervision; 2, limited assistance; 3, extensive assistance; and
4, total dependence). A total score of 28 represents complete functional dependence.
If Total Risk Score is…
0
1 or 2
3, 4, or 5
6, 7, or 8
9, 10, or 11
≥12
Risk Estimate of Death
Within 6 Months, %
8.9
10.8
23.2
40.4
57.0
70.0
2736 JAMA, June 9, 2004—Vol 291, No. 22 (Reprinted)
Statistical Analyses
Derivation of Model and Risk Score. Survival time was the dependent variable for
all analyses. For residents who died
within 6 months of nursing home admission, survival was defined as the duration between the admission and death
dates. Residents who did not die within
6 months of nursing home admission
were censored (considered alive). Independent variables included all the aforementioned resident characteristics.
Age, ADL score, and BMI were dichotomized to ease interpretation of the
©2004 American Medical Association. All rights reserved.
ž  認知症・難聴があり、明確な意志表示は困難
ž  「死にたい」との発言も聞かれている
ž  「島に帰りたい」
ž  はっきりとした意志の表示はされていない
ž  キーパーソンは長女、DNR
②患者の意向
ž  胃瘻増設した後、島へ帰ることも可能。
ž  本島での施設入所の可能性もある。
ž  胃瘻造設することで安定した栄養の供給は可能。
ž  確実な内服投与ができる。
③QOL
④周囲の状況
ž  次女のみが介護。
ž  次女とその兄弟たちは不仲。
ž  離島に在住しており医療資源が限られている。
ž  次女は本島での施設入所を希望している。
ž  次女は患者の年金で生活している。
ž  往診していたのは診療所医師。
Discussion 3
もう一度聞きます。
皆さんならどうしますか?
その後・・・
ž  今回私たちは、
御家族も交え、ディスカッションを繰り返し、
最終的に胃瘻造設を施行することになりました。
ž  その後、本島の施設へ転院となりました。
ž  おわり
10
入院後経過
50mg
アマンタジン
9
25mg
塩酸ドネペジル
8
7
3mg 5mg
フルボキサミン 50mg 100mg 150mg 6
食
欲5
胃瘻増設
転院
22
(病日)
34
4
3
2
1
0
1
4
7
10
13
16
19
25
28
31
家系図
患者
同居
統合失調症
同居・介護
入院後経過
シンメトレル
アリセプト
食欲
120
胃瘻増設
100
80
60
40
第31病日
第28病日
第25病日
第22病日
第19病日
第16病日
第13病日
第10病日
第7病日
第4病日
0
(mg)
第1病日
20
10
9
転院
8
7食
6欲
5
4
3
2
1
0
第34病日
ルボックス
おまけ
高齢者の予後予測
がんなど20% 心・肺疾患末期20% 認知症・老衰など40% 高い
機
能
低い
←
死
←
死
←
死
ž  胃瘻造設
ž  平均余命
器質的疾患の鑑別
①消化器系疾患
舌炎、歯肉炎
GERD、胃炎、消化器潰瘍、消化器癌
慢性便秘
肝胆膵腫瘍
②脳血管性疾患
脳梗塞、脳炎
③耳鼻科疾患
咽・喉頭腫瘍、咽・喉頭炎症
④内分泌疾患
甲状腺機能低下症、副腎機能低下症
⑤循環器疾患
心不全、心筋梗塞
⑥呼吸器疾患
肺腫瘍、COPD
⑦電解質異常
⑧感染症
⑨ビタミン不足
ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏
⑩薬剤副作用
⑪精神科疾患
うつ病
食欲不振の鑑別診断
食欲低下?摂食量低下?
①食べるものがなかった
②食べさせてくれる人がいなかった
③食欲低下
認知症も食欲低下になる
発症は緩徐である
ž  進行性であったり (degenerative disease) 、進行が停止
するものもある (post-traumatic brain injury)
ž  initial presentation ; 経度な健忘、 集中力の低下や注
意の散漫、日常の活動に無意味な繰り返しや矛盾した
行動が見られる
ž  later presentation ;判断能力の欠如、無気力、 性格の
変化、落ち着きの無さ、混乱:感情障害(自己修復不可
能な認知症の場合)
侵襲的な検査により、
症状が悪化することがあり、注意する必要がある。
ž 
ž  CVA、Parkinson病、痴呆性疾患、てんかん、
ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、水頭症
ž  内分泌疾患
副腎性疾患、甲状腺疾患、月経関連
ž  感染症性疾患
AIDS、梅毒、伝染性単核球症、IE、肝炎、 ž  炎症性疾患
RA、SLE、膵炎、消化性潰瘍
ž  その他
腫瘍(膵臓ガン)、慢性疲労症候群、ビタミン
欠乏
ž 
薬剤性
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
ž 
Reserpine
Methyldopa
Inderal (rare)
High-dose (older)
oral contraceptives
Corticosteroids
Benzodiazepines
Alcohol
Opioids
Opiate analgesics
Cocaine withdrawal
病歴・診察・検査
ž  栄養状態評価:視診、身長、体重
ž  顔貌:鬱状態や神経性食思不振症
ž  眼瞼:貧血→消化器疾患、血液疾患、悪性疾患
ž  黄疸:肝胆道系疾患、膵疾患、血液疾患
ž  口腔内:義歯、入れ歯、口内炎、顎関節症、舌
炎
ž  頸部:甲状腺疾患、頸静脈圧の上昇
ž  表在リンパ節:血液疾患、感染症、悪性腫瘍
病歴・診察・検査
ž  胸部:呼吸音、心音聴取
ž  腹部:腹部膨隆(腹水、鼓腸)、腸管蠕動音(腸
閉塞)、圧痛(消化性潰瘍、感染症、悪性疾患)、
肝脾腫(肝疾患、血液疾患など)、腫瘤(悪性疾
患)
ž  直腸診:潜血や便の性状(炎症性腸疾患、悪性
腫瘍、感染症)
ž  四肢所見:浮腫(肝・心・腎疾患)
ž  神経系:認知症の評価、深部腱反射、知覚低下、
臭覚・味覚の評価
病歴・診察・検査
ž  血算:特に貧血、MCV
ž  生化学検査:TP、Alb、Glc、BUN、Cre、Na、K、
Cl、Ca(沖縄ではATLがあり重要)、GOT、GPT、
t-bil、Amy、CK、LDH、t-chol、TG
ž  ESR
ž  一般尿検査
ž  検便:便潜血、虫卵
ž  甲状腺機能、副腎ホルモン検査
食欲不振の鑑別
—  消化器疾患:食道炎、胃炎、消化性潰瘍、肝炎
—  心・肺疾患:cardiac cachexia、COPD
—  内分泌的疾患: 副腎不全、甲状腺機能低下症、高
Ca血症、糖尿病
—  全身性疾患:感染症、悪性腫瘍、尿毒症
—  精神的原因:神経性食欲不振症、うつ病、統合失調
症、不安神経症、認知症
—  咀嚼/嚥下障害:義歯不適合、Pakinson症候群、脳血
管障害、多発性硬化症、ALS、筋緊張性ジストロ
フィー
①医学的適応
善行と無危害の原則
—  患者の医学的問題は何か?病歴は?診断は?予後
は?
—  急性か、慢性か、重体か、救急か?可逆的か?
—  治療の目標は何か?
—  治療が成功する確率は?
—  治療が奏功しない場合の計画は何か?
—  要約するとこの患者が医学的および看護的ケアからど
のくらい利益を得られるか?また、どのように害を避ける
ことができるか?
②患者の意向
自立性尊重の原則
・患者には精神的判断能力と法的対応能力があるか?能力がな
いという証拠はあるか?
・対応能力がある場合、患者は治療への意向についてどう言って
いるか?
・患者は利益とリスクについて知らされ、それを理解し、同意して
いるか?
・対応能力がない場合、適切な代理人は誰か?その代理人は意
志決定に関して適切な基準を用いているか?
・患者は以前に意向を示したことがあるか?事前指示はあるか?
・患者は治療に非協力的か、または協力できない状態か?その
場合、なぜか?
・要約すると、患者の選択権は倫理・法律上、最大限に尊重され
ているか?
③QOL
善行と無危害と自立性尊重の原則
・治療した場合、あるいはしなかった場合に、通常の
生活に復帰できる見込みはどの程度か?
・治療が成功した場合、患者にとって身体的、精神的、
社会的に失うものは何か?
・医療者による患者のQOL評価に偏見を抱かせる要
因はあるか?
・患者の現在の状態と予測される将来像は延命が望
ましくないと判断されるかもしれない状態か?
・治療をやめる計画やその理論的根拠はあるか?
・緩和ケアの計画はあるか?
④周囲の状況
忠実義務と公正の原則
・治療に関する決定に影響する家族の要因はあるか?
・治療に関する決定に影響する医療者側(医師・看護師)の
要因はあるか?
・財政的・経済的要因はあるか?
・宗教的・文化的要因はあるか?
・守秘義務を制限する要因はあるか?
・資源配分の問題はあるか?
・治療に関する決定に法律はどのように影響するか?
・臨床研究や教育は関係しているか?
・医療者や施設側で利害対立はあるか?