2 学年 物理 「人工衛星」 5.1 第一宇宙速度 5.2 人工衛星

2 学年
物理
「人工衛星」
5.1 第一宇宙速度
図に示すように,山の頂上から水平方向に物体を投げることを考える.初
速度が小さい場合には,物体は地球に引かれてすぐに地表に落ちるだろう.
徐々に速度を大きくしていくと,物体はもっと遠くまで届くようになり,最
後には地球を 1 周するようになる.物体に何も抵抗力がはたらかない場合に
は,物体は人工衛星となる.
山の高さは,地球の半径に比べて無視できるほど小さいとして,地球を
一周するのに必要な初速度を求める.空気の抵抗が無いとすると,物体は等
速円運動をする.このときの向心力は,物体と地球の間にはたらく万有引力
である.地球の質量を,物体の質量を,物体の速さをとすると,物体
の運動方程式は,
である.これより,速さは,
と求まる.このときの初速度を[
]という.
5.2 人工衛星
人工衛星
さきほどは,地表において人工衛星となるための初速度を求
めた.地表から離れた位置で物体を投げると,地球と物体の間
h
の距離は長くなるため,その間にはたらく万有引力は弱まる.
図に示すように,地表からの高さにおいて,物体が人工衛星
となるために必要な初速度を求める.さきほどと同じように,
R
v
物体の運動方程式を立てる.ただし,地球と物体の間の距離は
となる.
地球
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例題 5-1
地表での重力加速度の大きさを 9.80 m/s2,地球の半径を 6.37×106 m とする.以下の各問いに答えよ.
(1) 第一宇宙速度の大きさを求めよ.
(2) (1)で求めた速度で地球を周回する人工衛星の周期は何時間か求めよ.
例題 5-2
地表から高さの赤道上空を,地球の自転と同じ周期で周回している人工衛星は,地上から見ると上空の 1
点に静止しているように見える.このような人工衛星を「静止衛星」という.以下の各問いに答えよ.ただし,
地球の半径を 6.37×106 m,地球の質量を 5.99×1024 kg,万有引力定数
を 6.67×10-11 N・m2/kg とする.
(1) 人工衛星の周期は何秒か求めよ.
(2) 人工衛星の角速度は何 rad/s か求めよ.
(3) 人工衛星の質量をとして,運動方程式を書け.
(4) 高さは何 m か求めよ.
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5.2 万有引力による位置エネルギー
1 年生では,重力による位置エネルギーを学んだ.
図に示すように,地上から高さにある質量の物
体を考える.いま,物体を地面まで移動させると,
重力のした仕事は[
]となる.し
たがって,高さ にある物体には,重力による位置
エネルギー[
]をもっている.この
とき,基準点は地面とした.
同じように,地球と物体の間にはたらく万有引力
で位置エネルギーを求める.ただし,万有引力は距
離の二乗に反比例して変化するため,位置エネルギ
ーを求めるのは容易ではない.図に示すように,質
量の物体が,地球の中心から距離だけ離れた
位置にあるとする.このとき,物体にはたらく万有
引力の大きさは[
]と表される.
この物体を地表まで移動させたときに,万有引力が
物体にした仕事を求める.地表面での万有引力は
[
]と表される.グラフに示し
た面積が,万有引力が物体にした仕事に相当する.
この求め方は,次のページで示す.計算結果を示す
と,以下のようになる.
以上から,質量の物体が,地球の中心から距
離だけ離れた位置にあるとき,物体は以下の万有
引力による位置エネルギーを持っている.
ただし,この式は,地表を位置エネルギーの基準とした.
重力の大きさをで表していたときは,重力がどの場所においても一定であるため,位置エネルギーの基準
を自分で設定する必要があった.万有引力の大きさは,距離の二乗に反比例するため,十分に距離を離せば,
その大きさはほとんど無視できる.この位置を位置エネルギーの基準にとることが多い.基準点は,物体間の
距離を十分離した[
]にとるという.離れた位置にある質量の物体の位置エネルギー
は以下のように表される.
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5.3 万有引力による位置エネルギー 2
右図に示すように,質量
の物体が,地球の中心か
ら距離だけ離れた位置に
あるとする.この物体を地
表まで移動させたときに,
万有引力が物体にした仕事
を計算する.まず, から
の範囲を,非常に小さい幅
Δで等分に分割する.分
割したそれぞれの面積(長
方形)を求めて,そのすべ
てを足し合わせる.このと
き,Δが非常に小さければ,
求めた面積と,仕事はほ
ぼ等しくなる.
まず, と の範囲に囲
まれている長方形の面積
Δを求める.長方形の縦の
長さは万有引力の大きさか
ら求める.横の長さはΔで
あるから,
と表せる.ここで,
≅ と近似すると,以下のように表せる.
これを からの範囲で全て足し合わせる.
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例題 5-3
質量の人工衛星を,地表から宇宙へ向けて初速度 で打ち上げた.地球の引力を振り切るのに必要な最小の
初速度(第二宇宙速度)を,地球の質量,地球の半径,万有引力定数
を用いて表せ.
例題 5-4
半径 r の円軌道上を周回する人工衛星 (質量 m) を,地上から打ち上げるのに必要な運動エネルギー
を求めよ。ただし,地球の自転は無視し,地上での重力加速度の大きさを g,地球の半径を R とする。
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