空気抵抗の点から F1 カーの最高速度向上を図る

空気抵抗の点から F1 カーの最高速度向上を図る
5班
柏野衛
1.はじめに
僕は F1 レースが好きで、よく TV 等で F1 レー
スの中継を見ている。レースでは高速でコースを回
り、白熱したレース展開となる。
そこで、先日ある疑問が生じた。それは、なぜ F1
カーはあの形状になっているのだろうということ
だ。調べてみると、空気抵抗をより少なくしたり、
ダウンフォースを生み出したりする、といった様々
な要因により、あの形状に決定されているというこ
図1
とが分かった。ただ、空気抵抗という点でのみ考え
一般的な F1 カー
ると、まだ空気抵抗は少なくなるのではないかと考
えた。空気抵抗が少なくなれば、自然と最高速度の
3. 実験装置と実験方法
向上が図れるだろうと考え、今回このようなテーマ
物体にかかる抗力 D は抗力係数𝐶𝐷 を用いて、
D = 1⁄2 𝜌𝑆𝑉 2 𝐶𝐷
(1)
と表される。
で実験を行った。
2.F1 カーの形状
図 1 のように、F1 カーは、一般の自動車の形状
とは大きく異なる。主な違いとして、タイヤがむき
出しであること、及び、シングルシートであること、
ここに、D は発生する抗力、ρは流体の密度、
S は物体の代表面積、V は物体と流体の相対速度
である。
また、推進力 P は、
の2点が挙げられる。それゆえ、空気抵抗が最もか
P=VD……(2)
かっていると思われるタイヤの部分に関しては本
と表される。
実験では何も関与できない。
また、それぞれの部位には様々な役割があるが、
本実験で注目したのは、ダウンフォースを生み出す
本実験では、本来の F1 カーとウイングを取り外
した F1 カーの抗力係数を求め、最高速度がいかに
向上するかということを目的とした。
ことを主な役割とするウイングと呼ばれる部位で
そこで模型として F1 カーのプラモデルを用意し
ある。ウイングとは、F1 カーの最前部、及び最後
た。まず何も手を加えていない模型(状態 1)にかか
部に取り付けられている板のことであり、現代では
る抗力を風洞実験により求めた。次にフロントウイ
より少ない空気抵抗でより大きなダウンフォース
ングを取り外した模型(状態 2)、フロントウイング
を生み出すよう改良され、単純な板ではなく、断面
とリアウイングを取り外した模型(状態 3)について
は翼状形となっている。そのため、ウイング周辺に
も、同様にした。
流れる空気が整えられ、空気の流れがスムーズにな
ることにより、単純な板よりも空気抵抗が少なくな
っている。また、揚力や抗力も加わることでコーナ
4. 実験結果と考察
状態 1 と状態 3 の周りの空気の流れを図2に示す。
リングもスムーズになるため、高速な F1 レースを
状態 1 に比べ、状態 3 では車体の中ほどから車体の
行うことができているのである。ただし、直線を走
周りの空気の流れが乱れていることが分かる。最も
るうえでは、ウイングという部品自体が加速してい
空気の流れが乱れている箇所としては、リアウイン
くうえで不要な部品であることは間違いなく、その
グの上部あたりであることも分かる。
角度を変えることもルールで禁止されている。
ウイングを装着している場合ダウンフォースによ
り地面に設置したまま曲がることができるが、ウイ
ングを装着していなければ、その遠心力と自然に発
生する揚力により、車体が浮き上がりコーナーを曲
がりきることは不可能だからである。
また実際の最高速度よりも本実験で求めた最高
速度は遅く導出されたが、その要因として考えたの
は、代表面積が大きな値として求められたことが考
えられる。今実験では風洞実験を用いたが、その際
模型に棒を貫通させて、抗力を求めた。それゆえに、
その棒の代表面積も影響したと思われる。そのため、
図2
状態1と状態 3 における空気の流れ
本来よりも代表面積の値が小さく求まったため、計
算結果に誤差が生じたと考えられる。模型以上の代
表面積を考慮すべきであった。参考として F1 カー
0.3
の抗力係数は 1.0 前後である。状態 1 においてほぼ
0.25
同じ値となったが、代表面積が大きかったと仮定す
抗力D [N]
0.2
ると、求まった D の値が本来よりも大きかったと
0.15
考えられる。つまり、風洞実験において、棒の代表
0.1
面積だけでなく、棒にかかる抗力も上乗せされてい
0.05
たということがこのことからも分かる。また、模型
0
状態1
状態2
状態3
の作りが本来の F1 カーほど精巧に作られていなか
ったために、その影響もあったものと考えられる。
図3
それぞれの状態にかかる抗力
5.まとめ
また、状態 1、2、3 にかかる抗力を図3に示す。そ
やはり、ウイングは空気抵抗の観点から考えると
れぞれ値は、0.245 N、0.210 N、0.201 N であった。
抗力を上げる要因であることが分かった。更に、フ
kg/m3 、
ロントウイングのほうがリアウイングよりも大き
S=3.25×10 、V=106.9 km/h、をそれぞれ代入す
な抗力を受けているということも分かった。ただし
ると、状態 1、2、3 の抗力係数は、𝐶𝐷 =1.02、0.875、
それは直線を走行するという仮定で成り立ってい
0.837 と求まる。これと(2)から、それぞれの最高速
るので、曲線を走る際にはどうなるのかは次回の研
度は V=258 km/h、272 km/h、275 km/h と求まる。
究で明らかにしたい。
そこで 、 本実験で用いた条件 ρ =1.293
−5
ただし F1 カーの馬力は一般に約 750 馬力と知られ
今回の研究では、ウイングを外したことによるダ
ているので、馬力には 750 馬力を代入した。この結
ウンフォース等の F1 レースを走るうえでのデメリ
果、状態 1 から状態 2 では、最高速度は 14 km/h、
ットを細部まで考察することができなかったこと
状態 2 から状態 3 最高速度は 17 km/h それぞれ向
が残念である。
上した。このことから空気抵抗をより受けている部
今回の創造演習を経て、ますます F1 カーに対す
位はフロントウイングであるということが分かる。
る興味がわいてきた。また機会があれば、ダウンフ
また、流れの可視化実験から、状態 3 の方が状態
ォースについての研究や、むき出しのタイヤにカバ
1 に比べ空気の流れが乱れていることが分かる。そ
ーをかけるとどれくらい空気抵抗が減るのかとい
こからもダウンフォースが低下していることがわ
った研究をしてみたい。その際には、今回の反省を
かる。そのため、状態 3 では実際の F1 レースを走
活かした実験を行いたいと思う。
りきるのは困難であると考えられる。なぜなら、高
速でコーナーを曲がる際、大きな遠心力がかかるが、