序章 マーケティングとは、その行為を行う企業の為だけではなく、消費者

序章
マーケティングとは、その行為を行う企業の為だけではなく、消費者の視点
に立った行動をすることにより、さらにマーケットと消費者の信頼を増すこと
が可能である。このマーケティングを研究するにあたり、この論文では、テー
マパーク・遊園地を主とするレジャーランドを通して消費者の嗜好、行動を調
査、解明し、その上でどのようにマーケティングをすべきかといった提案をし
ていきたいと思う。
日本には、東京ディズニーランド(以下、TDL)、東京ディズニーシー(以下、
TDS)、USJ、富士急ハイランドなどに代表されるレジャーランドが数多くある。
1983 年に TDL がオープンし、成功を収めるとともに数々のテーマパークが全
国に 220 箇所以上開園した。これには、1980 年代の竹下登内閣によって行われ
た「ふるさと創生事業」などがさらに拍車をかけ、北海道夕張市、熊本県荒尾
市などの多くの地方自治体が第 3 セクター方式などにより地域テーマパークを
開園させたことが一つの要因として挙げられる。しかしながら、これらのパー
クブームは約 10 年で終焉を向かえ、現在ではその数は減少傾向にあると言える。
本稿では、家庭におけるエンターテイメントの消費も、一般の財と同様に最適
消費の為の購入財の組み合わせが行われているのではないかという仮説のもと
でテーマパークを研究対象とすることとした1。つまり、友人や家族などでレジ
ャーランドに遊行する場合においても、人はその全体のイメージやコンテンツ、
1
つまりは個々のアトラクションの最適なミックスを自然に求めるのであり、テ
ーマ性だけが突出しているレジャーランドや「絶叫アトラクション」のみの施
設ではなく、この両者が最適にミックスされたレジャーランドが客を長時間に
わたり満足させることができるとしたならば、今後のレジャーランドの経営上
及び戦略上、何らかの方向性を示唆できるのではないかと考えられるのである。
今回研究対象とするレジャーランドは、テーマパークと遊園地の 2 通りに分
けられる。概念としてテーマパークとは、特定のテーマに基づいて、催し物・
展示物・遊戯施設などが総合的に構成された娯楽施設を示す2。日本においてこ
のテーマパークを代表するものは TDL である。また遊園地とは、富士急ハイラ
ンドパークに代表され、遊覧・娯楽などの為の施設を整えた土地・公園を示す3。
つまり、テーマパークは、物語を体験できる場所であり、遊園地は公園遊具の
発展したものととらえることができる。まずは、2 つのレジャー施設の歴史、年
代別の変遷について概観してみたい。
歴史
テーマパークは、1983 年に千葉県安浦市に開園した TDL、長崎のオランダ
村がその最初といわれている。この成功をきっかけとして、この年からテーマ
パークができ始めたため、1983 年をテーマパーク元年と呼ぶ場合もある他方で、
遊園地においては、早くから東京・浅草の花やしきなどが存在していたが、催
し物などテーマ性のあるものはなく、大型遊具及び電気軌道遊具への乗車形式
を基本としていた。したがって、両者にはアトラクションの統一性や歴史上一
2
定の相違が見られることが認識できよう。また、経済産業省の統計を調べたと
ころ以下のようなテーマパーク・遊園地の年代別の変遷が見て取れる。
表 1-1
テーマパーク
年度
テーマパー
入場者数(万
ク数
人)
売り上げ(億円)
1993 年
85
6400
3462
1997 年
65
5612
3649
2001 年
46
5083
4092
2004 年
52
5892
4382
参考文献:平成 5 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
平成 9 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
平成 13 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
平成 16 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
より作成
遊園地
表1-2
入場者数(万
年度
遊園地数
1993 年
169
8420
2389
1997 年
127
7497
1955
2001 年
118
3553
1273
2004 年
115
2892
1220
人)
売り上げ(億円)
参考文献:平成 5 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
平成 9 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
平成 13 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
平成 16 年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
3
より作成
テーマパークの数は、減少しているものの売り上げは年々増加している。入
場者数も一定した数字を保っているともいえる。一方遊園地についてみれば、
その数は 10 年間で 60%にまで激減し、入場者数も 1/4 に、そして売上げについ
ては 1/2 に落ち込んでいることが分かる。2 つのジャンルを単純に比較すれば、
テーマパークジャンルではテーマパーク同志での競争の結果、淘汰される施設
が多く、勝ち組と目される施設がさらに優位に立っていること、そして遊園地
ジャンルではその多くが苦戦し、勝ち組ですら売上げの急伸長を果たしていな
いことが判明する。テーマパークについてより詳細に見てみると、勝ち組の東
京ディズニーリゾート(TDR)と負け組みのハウステンボスの年間入場者数のコ
ントラストが鮮明であろう。
図 2-1
年度別入場者数比較
万
TDR
ハウステンボス
19
96
19 年
97
19 年
98
19 年
99
20 年
00
20 年
01
20 年
02
20 年
03
年
入
場
者
数
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
参考文献:オリエンタルランド HP
ハウステンボス
年度
http://www.olc.co.jp/news/news.cgi?home_f
1992-2001 ハウステンボス環境会計報告書
ンボス株式会社より作成
4
2002 年 6 月
ハウステ
遊園地については全体的なマーケットの縮小が起こっているもののその代表
となる富士急ハイランドパークは、年々新たなアトラクションを追加し入場者
数も一定以上を保っている。つまりかなり健闘していることがわかる。富士急
ハイランドは、富士五湖国際スケートセンターとして 1961 年にスタートしてい
る。1996 年には、キング・オブ・コースター「FUJIYAMA」を開業し、話題を
集める。1998 年トーマスランド、2001 年「ドドンパ」
、2002 年フジヤマミュー
ジアム、
「超・戦慄迷宮」
、
「ハムハムどきどき!おうこく」
、2006 年「ええじゃ
ないか」をオープンさせている。「FUJIYAMA」など大人向けのスピード感あ
ふれるライド型アトラクションから、トーマスランドなどの子供向けの物語性
の強いアトラクションまで幅広く営業させ、売り上げも安定しているといえよ
う。また、首都圏からも離れているために決して立地がよいとは言えないが、
東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県の各主要地域、都市からのバス利
用を整えたり、長距離ツアー客のための夜行バス、ホテルの完備なども売上げ
安定の大きな要因となっているといえる4。テーマパーク対遊園地で比較すれば
競争、淘汰がなされながらテーマパークがやや優勢ではあるものの富士急の様
な、生き残っている大型遊園地の場合、個々の健闘が目を引くのである。
仮説
以上の分析から、レジャー施設は淘汰され、消費者はより整えられた、より
人気のあるところへ足を運び以前よりもお金を使うようになったということが
5
分かる。入場者数が半分になったにもかかわらず売り上げが変わらないという
ことは単純計算で 1 人当りの単価が約 2 倍になったと言える。つまり、物価上
昇を考慮に入れたとしても、顧客は従来よりもひとつのレジャー施設で長時間
余暇を楽しみ、多くの消費を行っていることが判明しよう。
また、そのように淘汰され残った中でも特に人気のある遊園地、テーマパー
クを調査したところ TDL,TDS,USJ などの主要テーマパークではテーマパーク
にも関わらずスリルを求めるスピード感溢れるライド型アトラクションやゴー
カート、遊園地にあるようなコーヒーカップ、メリーゴーランドなどが存在す
る5。テーマパークであってもそのようなアトラクションが人気を集めている6。
図 3-1
TDL
25%
28%
スピード重視
物語性重視
中間
47%
東京ディズニーリゾート完全ガイド第4版
株式会社講談社出版
り作成
図 3-2
6
2007 年 52 項~71 項よ
富士急
14%
25%
スピード重視
物語性重視
中間
61%
首都圏遊園地&テーマパーク 07 年ガイド
JTB パブリッシング出版
2006 年
58 項~
61 項より作成
3-1,2 の円グラフは TDL、富士急ハイランドの各アトラクションをそれぞ
れ 3 タイプに分類したものである。
TDL のアトラクションを細かく分類してみたところ、シアタータイプのアト
ラクションを除いた全 36 アトラクションのうち遊園地的なスピード感を重視し、
身体を動かすアトラクションは 9 つ、物語性を強く帯びたアトラクションは 17
つ、その中間に位置するアトラクションは 10 個となっている。遊園地に関して
は富士急ハイランドが日本で 1 番の人気を誇っている。アトラクションに関し
てはほとんどがスピード感やスリル感を重視したものであるが、園内には子供
向けのトーマスランド・ハムハム王国・カートゥーンラグーン・リカちゃんハ
ウスなど 4 つのテーマ性の強いパークが存在し、それぞれにカフェ、ショップ
があり、中にはイベントが行われているものもある。季節限定でプールやスケ
ート場も開園される。現代では遊園地的な身体を動かしスリルを楽しむものと、
テーマパーク的な物語性のつよいソフトなものとが融合しているといえる。こ
のような現状を受けて我々は、人間の深層心理を考えたとき遊園地的な要素と
テーマパーク的な要素のそれぞれ両方の面を共に欲するのではないかと考えた。
7
人の内面の欲求に沿って遊園地、テーマパークを運営することができれば、そ
のマーケティングは成功するのではないか。
つぎの章でアンケート7を集計することによりこの仮説から考察を行う。
レジャーランドに関するアンケート8
1) 調査目的
幼少期との関連性などを明らかにし、人間の内面から見るテ
ーマパークのマーケティング提案をすること。
2) 調査企画
1.調査対象;主に学生(10、20 代の未婚の人)とそれらの人々に関わる人々
2.調査地域;東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県
3.標本抽出;(ⅰ)知人友人による恣意的抽出法9
(ⅱ)東京都神田駅周辺による便宜的標本抽出法10
4.調査方法;留置法(調査票による自記式調査)
5.調査実地期間;(ⅰ)2007 年
(ⅱ)2007 年
6.サンプル数;
8 月 10 日~20 日
8 月 10 日
10、20 代
35 名
30、40 代
10 名
50、60 代
5名
男性 26 名
女性 24 名
14:00~18:00
計 50 名
アンケートの結果、分析、考察
1、質問事項 2・「TDL における好きなアトラクションについて」
日本を代表するテーマパークである TDL は、一貫したテーマを元に運営を行
8
っている。もちろんその中でもエリアによっていくつかのテーマに分けられて
おり、来客者を飽きさせることのないようにしている。ここで次のような疑問
点が生まれてくる。テーマ性の強い遊具ばかりなのに何故成功を収めているの
か?TDL は、テーマパーク故の特徴をどのように捉え、アトラクションをどの
ように配置しているのだろうか?ハウステンボス(長崎)のよう同様にテーマ
性の強いものも存在しているのに何故こちらは営業危機に陥ってしまったので
あろうか?
ここでは、アンケート質問事項 2・「TDL でどのアトラクションが好きです
か?」ということの回答を集計し、この回答により TDL で人々が「乗りたい。」
と思うものとそのアトラクションの特徴との関連性がどのようになっているの
かを考察していく。TDL は、先述したようにテーマパークなのでどれもテーマ
性の強い乗り物、アトラクションが多い。人気の高いアトラクションは上から
順にスペースマウンテン、スプラッシュマウンテン、ビックサンダーマウンテ
ン、カリブの海賊である。
図 4-1
アトラクションの種類分け
物語性の強いア
トラクション
31%
ライド型アトラ
クション
69%
9
東京ディズニーランド完全ガイド-第4版、講談社、2007 年、54 項より作成
図 4-1 ではアトラクションの種類分けを行った。
この図で TDL のアトラクションのうち 7 割の人がスピード感溢れるライド型ア
トラクションを好きなアトラクションであると述べていることがわかる。多く
の人は TDL 独特の夢の国の雰囲気を楽しみつつもコースター等のライド型アト
ラクションも同時に求めているのだ。
TDL はテーマパークなので、例えコースターでもそれぞれテーマを帯びてい
る。だが、この結果のように大多数の人がスピード感溢れるライド型アトラク
ションをも同時に求めていることがわかる。TDL としてもお客の『即物的スリ
ル主義』11への人気を十分把握しているのである。
これは、TDL が経営危機に陥ったハウステンボスとは異なり人々のニーズに
あったアトラクションの配置、戦略をしていたといえよう。
2、TDL と富士急ハイランドの相違点
ここでは、ジェットコースターに乗れるか否かで分け、それぞれ考察してい
きたい。絶叫マシーンを売りにしている富士急ハイランドに行ったことのある
かどうかの有無や具体的に好きなアトラクションの種類、また TDL での好きな
アトラクションの種類においてその特徴を捉え、相違点を述べていきたい。
アンケートを行った所、
「ジェットコースターに乗れる」=「富士急ハイラン
ドに行き、絶叫マシーンに乗る」という結果となった。ジェットコースターに
乗れ、富士急ハイランドに行ったことがある人は実際好きなアトラクションに
10
全員が絶叫マシーンと呼ばれるコースターものの名前を挙げた。具体的な順位
は、上から FUJIYAMA、えぇじゃないか、ドドンパ、トンデミーナである。ま
た、これらの乗れる人々の大多数は TDL においてもライド型アトラクションを
好きであると回答している。
逆に、
「ジェットコ-スターに乗れない」=「富士急ハイランドに行ったこと
がない」という人もほぼ一致する結果となった。富士急ハイランドに行ったこ
とがある少数の人も、スケートやトーマスランドに行ったとの回答であった。
TDL での好きなアトラクション回答においても同様な傾向が見受けられた。絶
叫マシーンに乗れない人達の挙げたアトラクションはライド型アトラクション
ではなく、物語性をより重視したものとなった。
上記のアンケート結果より、TDL と富士急ハイランドの大きな相違点が顕著
にわかる。TDL は、物語性をより重視したアトラクションによって絶叫マシー
ンに乗れない人々の心を満たすことが出来ているのである。しかし、一方で富
士急ハイランドは、子供向けのテーマ性の強いものは存在しているものの、大
人も楽しみ、虜にするようなテーマ性の強いアトラクションは存在していない
のである。
3、具体的なアトラクションについて
5 つのアトラクションについてそれぞれ「好き、嫌い、乗ったことがない」の
3 つの回答の中で最も当てはまるものに丸をつけて貰う方式でアンケートを行
った。ここではアトラクションを特徴により 3 分類し、どのようなタイプのア
トラクションを人々は好むのか?ということを、具体的にアトラクション名を
11
出して考察していきたい。
Ⅰをドドンパ12、サンダードルフェィン13とし、ジェットコースターなどのスピ
ード感溢れるライド型アトラクションのグループとした。Ⅱをカリブの海賊14、
ホーンテッドマンション15とし、想像力を働かせられる、いわゆるファンタジー
と呼ばれる物語性の強いアトラクションのグループとした。Ⅲをインディ・ジ
ョーンズ・アドベンチャー16とし、物語性が強く、且つライド型アトラクション
(2 つの特性が両方ある乗り物)のグループとした。なお、ここで挙げたアトラ
クションはⅠ、Ⅱ、Ⅲの特徴が良く出ているものをそれぞれのグループの代表
として抽出した。
Ⅰ、Ⅱ両方ともにどれか好きと回答した人、もしくはⅢを好きと回答した人
を、スピード感溢れるライド型アトラクション・物語性の強いアトラクション
両方を結果としてバランスよく求めてしまう人と仮定する。
乗ったことのない人や、全部嫌いな人を除いた 43 名の内バランスよく両者とも
好きと回答した人は 28 名、Ⅰのみ偏って好きと回答した人は 3 名、Ⅱのみ好き
と偏って回答した人は 12 名となった。約 6 割強の人がⅠ、ⅡもしくはⅢを好き
であるという結果になった。つまり、スピード感溢れるライド型アトラクショ
ン、物語性の強いアトラクション両方を結果としてバランスよく求めてしまう
人なのである。
なぜ、人は両方の面を共に欲するのか?いつからそのような傾向があるので
あろうか?それらについて次の項目で述べていきたいと思う。
4、幼少期との関係性
質問事項 1「肩車をして貰ったか?」、3「キャッチボールを親としたことがあ
るか?」、7「公園でよく遊んでいたか?」はスピード感、スリルなど体感でき
る遊びの原体験であり、質問事項 2「寝る前に物語を読んで貰ったか?」、5「教
12
育テレビを見ていたか?」、9「絵日記をつけていたか?」は想像力を使って遊
ぶ原体験である。人は幼少時期において無意識のうちに両方の遊びをしていた
のではないだろうか?アンケートの上記の項目の回答結果を用いて検証してい
きたいと思う。ここで行ったアンケートは 1 を良く当てはまるとし、2 を当ては
まる、3 をどちらでもない、4 を当てはまらない、5 を全く当てはまらないとし
た。
両方の遊びに良く当てはまるや、当てはまると回答をし、両方を同じように
欲し遊んでいた人は、50 名中 36 名という結果となった。これら上記の質問事
項に関しては、家庭環境や世代や育った地域によってかなり大きく違いが出る
結果となった。なので、結果に多少のばらつきが出てしまった。質問事項 1・2・
3(肩車、物語、キャッチボール)は、親が共働きや忙しかった人は全体的に当
てはまらない、全く当てはまらないとの回答が多くなる傾向があったのではな
いかと思う。全体的に質問事項 5・7(教育テレビ、公園)に関しては、大概の
人が、良く当てはまるや、当てはまるとの回答をしている。近くに公園がなか
ったり、逆に田舎で公園に行かなくても外で遊べた人も多くいるので、例外も
多少いた。しかし、やはり想像力を働かせて楽しむ遊びや内遊び、スピード感
スリルなど実際体感できる遊びや外遊び両方を無意識に幼少時代していたとい
う結果につながると思う。フランスの思想家ロジェ・カイヨワも、
『遊びと人間』
17の中で人間の遊びの基本的な分類を試み、ルールのない世界=幼少期では、ミ
ミクリー(模倣)18とインクリンス(めまい)19が有効であると述べている。質問事項
6「どんなおもちゃで遊んでいたか?」では、主に想像力を働かせて遊ぶ遊びを
挙げる傾向が強かった。具体的には、レゴ20、お絵かき、人形遊び、ままごと、
ミニカー、電車のおもちゃなどであった。8「小学校の休み時間に何をしていた
か?」では、主に体を動かす遊びを挙げる傾向が強かった。具体的には、ドッ
13
ヂボール、サッカー、野球、縄跳び、おにっごっこ、バスケなどであった。中
には、トランプ、友人とおしゃべりなどという回答もあったが、小学生になり
まわりの友達と一緒に何か楽しめることで遊ぶことが多くなり必然的にスピー
ド感スリル等体感できるような外で遊ぶ傾向が強くなったのではないだろうか。
このアンケートにより幼少期のころから人は、想像力を働かして物語的な世
界を楽しむことの出来る遊びとスピード感、スリルを楽しみ体感することの出
来る遊び両方をバランスよく欲していたことがわかった。また、幼少期におけ
る遊びは、社会的また知的なものであると同時に身体感覚を揺り動かすもので
ある。子供は、声を出し、体を動かす中で感じられる身体感覚を気持ちよく思
うのである。ちょっと段差があるとそれを飛び降りたり、歩道の端の少し高い
ところの上をわざわざ歩いたり、電信柱と塀の狭い隙間をすり抜けたりする。
そのようにして、体の色々な動きを試しているともいえる。自分の体の持つ運
動の可能性を試している。そして幼児は、自らの感覚を総動員し、具体的に手
足で対象を動かしつつ、工夫したり、想像したり、発見したりし、そこから理
解が進んでいく。体験が常に感情と切り離せないことは、幼児を見ていると良
くわかることで、全身で関わることは、思考と感情とともに働かせていくこと
でもあるのだ21。大人になっても変わらずこの欲求を満たしたい。テーマ性の強
いもの(テーマパーク)、遊具(遊園地)が両方とも存在しなくてはならないの
である。
5、具体的質問事項とその関連性について
下の図 4-2 においてそれぞれ想像力を働かして物語の世界を楽しみたいとい
う事、スピード感、スリル楽しみ体感したいという事に「4、幼少期との関連性」
14
での考察結果も踏まえて質問事項を分類した。定義として、スポーツはプレー
するほうが好き、休日はアウトドア派、スポーツマンが好き、体育が好き、大
人数で共に楽しむことが好き、ジェットコースターに乗れるなどの回答を主と
してスリルや動きを伴い体感できるものを「1」とし、ゲーム好き、休日はイン
ドア派、アーティストが好き、本や絵本を良く読んでいたこと、ぬいぐるみの
保有、理科の授業が好きスポーツは観戦派などの回答を主として想像力や物語
性やある程度の思考力を使うものを「-1」とした。またスポーツ観戦もプレーも
同じくらいする、休日はアウトドアもインドアも同じようにするなどの回答を
「0」とした。まとめると、
「1」をよりスピード感、スリル楽しみ体感したいとい
う事とし、「-1」をより想像力を働かして物語の世界を楽しみたいという事と
した。「0」は両方の中間地点でありバランスの取れた回答となる。
幼少期の経験で考察したように人は本来両方をバランスよくしたがるもので
あり、中には運動が大好きで頭を使う事は嫌い、または想像力を働かせること
が大好きで運動は苦手であるという人もいると思われるが、大多数の人は多少
の偏りがあるにしても両方の要素を何らかの形で行っているものである。これ
は先の仮説で前述した事柄であるが、本当にそうであるのか数値としてまとめ
検証した。
15
図 4-2
25
20
15
10
5
0
-1
-0.75
-0.5
-0.25
0
0.25
0.5
0.75
1
アンケートより作成
図 4-2 の通り、大概の人が「0」つまり想像力を働かして物語の世界を楽し
みたいという事とスピード感、スリルを楽しみ体感したいという事をバランス
よく消費することを求めている傾向にあるという結果になった。若干「1」より
の傾向が強かったが、これはアンケートが比較的若者の回答率が高かった為と
も考えられる。
つまり、テーマ性の強いもの(テーマパーク)、遊具(遊園地)が両方とも存
在しなくてはならないのである。その為、両方の要素を取り入れた TDL や富士
急ハイランドなどは、競争の中生き残り人気を落とすことなく売り上げを伸ば
し続けているのである。哲学の世界でも“遊びは何にもまして自由な行為であ
り、遊ぶことこそ人間の本質”という哲学をホイジンガはその著書『ホモ・ル
ーデンス』で述べている22。やはり、人間の本質つまりは人間の心のあり方、人
間のあるべき姿に沿ったマーケティングは成功を収めるのである。
16
まとめ
これまでの文章で述べてきたとおり人間は遊園地に良く見られるスリルを体
感したり、スピード感を重視したり、身体を動かす要素と、テーマパークに見
られるテーマ性を強く出し物語の中に自分が含まれる感覚や、想像力を働かせ
る要素との両方を欲する。それは幼少期のころからの体験や周りの環境によっ
て形作られるものである。これに伴い、遊園地、テーマパーク側は両方の要素
を取り入れたアトラクション作りを行っていき、消費者を飽きさせないように
しなくてはならない。そのようにしていかなくては現代のレジャーランドマー
ケティングは厳しくなってきているといえる。
歴史の章で前述したことであるが、遊園地は全体として数はテーマパークの 2
倍以上存在しているのであるが売り上げは低迷している。これはテーマ性を帯
びた遊園地作りがなされていないからであると思う。都内の遊園地を見てみて
もラクーア(旧後楽園遊園地)、京王よみうりランドなどではテーマ性を帯びた
アトラクションは見られない。テーマ性を帯びたアトラクションを持つ富士急
ハイランドですら、小さい子供向けのアトラクションに留まっている。大人も
楽しめるアトラクションを造るべきだと言えるだろう。ラクーアなどは、温泉
施設を併設し、テーマ性の追求に力を注ぎ始めたが、その意味でスケートリン
クから発達した先駆者、富士急ハイランドの現在はテーマ性を帯びたアトラク
ションへの過渡期であるといえる。TDL、TDS などでは平均滞在時間が 6~8 時
間であるのに対し、遊園地は 3~5 時間と短いとの検証もなされている23。消費
者つまり入場者を飽きさせることなく長時間園内にとどまらせることができれ
ばレストラン利用などからも必然的に多くの消費を行い遊園地の利益は伸びる
ものと考えられる。富士急ハイランドのテーマ性を重視した大人も楽しめるア
17
トラクションの作成、また他の遊園地のテーマ性を帯びたアトラクション導入
がなされれば、レジャーランド業界全体の更なる利益向上が見込めると思う。
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著
マーケティングハンドブック
2006 年 7 月 15 日
19
日本能率協会マネジメント
29. 古川聡・川崎勝義・福田幸男
著
脳とこころの不思議な関係
川島書店
1988 年
30. (財)余暇開発センター
10 日
レジャー産業の経営動向
同友社
1997 年 11 月
富士急行株式会社 http://www.fujikyu.co.jp/
経済産業省経済産業政策局調査統計部 平成13年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
社団法人 経済産業統計協会 平成 15 年 1 月 30 日 3 項
3 経済産業省経済産業政策局調査統計部 平成13年特定サービス産業実態調査報告書
遊園地・テーマパーク編
社団法人 経済産業統計協会 平成 15 年 1 月 30 日 2 項
4 富士急ハイランドホームページ
http://www.fujiq.jp/access/access_01.html
5 野宮佐和子 東京ディズニーリゾート完全ガイド第 4 版 株式会社講談社
2007 年 2 月
28 日 52 項~71 項
6 アンケート参照
7 アンケート
1、ディズニーランドへ行った事はありますか?
1.)3 ヶ月に 1 回以上 2.)半年に1回 3.)年に1回 4.)数回 5.)行ったことがない
2、ディズニーランドでどのアトラクションが好きですか?
(
)
3、USJへ行った事はありますか?
1.)はい
2. )いいえ
4、ハウステンボスへ行った事はありますか?
1.)はい
2.)いいえ
5、スポーツは観戦派?プレーする派?
1.)観戦派 2.)プレーする派 3.)両方とも同じくらい
6、サッカー観戦は自宅か?自宅以外の Bar や会場か?
1.)自宅 2.)Bar や会場
7、一日中ゲームをやったことはありますか?
1.)はい
2.)いいえ
8、子供の頃好きな本はありましたか?
1.)はい
2.)いいえ
9、メイドカフェに興味はありますか?
1.)はい
2.)いいえ
10、あなたは男性ですか?女性ですか?
1.)男性
2.)女性
11、体育の授業は好きでしたか?
1.)好き
2.)嫌い 3.)どちらでもない
12、理科の授業は好きでしたか?
1.)好き
2.)嫌い 3.)どちらでもない
13、スナック菓子は良く食べますか?
1.)はい
2.)いいえ
14、富士急ハイランドへ行った事がありますか?
1.)はい
2.)いいえ
15、14 で「はい」を答えた方に聞きます。どのアトラクションが好きですか?
(
)
16、あなたは日焼けをしていますか?
1.)はい
2.)いいえ
1
2
20
17、新作映画を映画館に見に行きますか?DVD まで待ちますか?
1.)映画館
2.)DVD
18、休日はアウトドア派?インドア派?
1.)アウトドア派 2.)インドア派 3.)両方同じくらいする
19、どのタイプの女性が好きですか?
1.)不思議系の人 2.)清楚な人 3.)元気でサバサバした人
20、どちらのタイプが好きですか
1.)スポーツマン 2.)アーティスト
21、テレビを良く見ますか?
1.)はい
2.)いいえ
22、ディズニー絵本を読んだことがありますか?
1.)はい
2.)いいえ 3.)覚えていない
23、ジェットコースターに乗れますか?
1.)はい
2.)いいえ
24、レジャーランドでお金を使うとしたら?
1.)ほぼ使わない 2.)3000 以下 3.)3000 以上
25、初デートに行くならどちらに行きたいですか?
1.)ピクニック 2.)映画館 3.)遊園地
26、ぬいぐるみをどのくらい持っていますか?
1.)10 体以上
2.)5~10 体 3.)5 体未満
4.)持ってない
27、みんなでわいわい騒ぐのは好きですか?
1.)好き
2.)嫌い
●アトラクションについてお答えください。
1、ドドンパ(富士急ハイランド)
1.好き 2.嫌い 3.乗ったことがない
2、カリブの海賊(TDL)
1.好き 2.嫌い 3.乗ったことがない
3、サンダードルフィン(ラクーア)
1.好き 2.嫌い 3.乗ったことがない
4、ホーンテッドマンション(TDL)
1.好き 2.嫌い 3.乗ったことがない
5、インディー・ジョーンズ(TDS)
1.好き 2.嫌い 3.乗ったことがない
●自分の幼少期を思い出して答えてください。
☆5段階評価
よりあてはまるに従い 1 から順番に、5 の場合はあてはまらない
1、肩車を良くして貰っていましたか?
1 2 3 4 5
2、寝る前に物語を読んでもらったことはありますか?
1 2 3 4 5
3、キャッチボールを親としたことがありますか?
1 2 3 4 5
4、家族でピクニックに行ったことがありますか?
1 2 3 4 5
5、教育テレビ(3 チャンネル)見ていましたか?
1 2 3 4 5
6、どんなおもちゃでよく遊んでいましたか?
21
(
)
7、公園でよく遊んでいましたか?
1 2 3 4 5
8、小学校の休み時間に何をしていましたか?
(
)
9、絵日記をつけていましたか?
1 2 3 4 5
10、秘密基地を持っていましたか?
1 2 3 4 5
●思い当たるレジャーランドを挙げて下さい。
(いくつでも結構です。出来る限り多くあげて頂
けると嬉しいです。
)
お疲れ様です。アンケートのご協力ありがとうございました
8 柏木重秋 市場調査‐理論と実際‐ 中央大学出版部
1922 年 10 月 1 日 17 項~41 項
9 手近いる親戚や友人を標本に選ぶ方法
(柏木重秋 市場調査‐理論と実際‐ 中央大学
出版部 1922 年 10 月 1 日 102 項)
10 調査担当者の便宜に従って標本を選び出す方法
(野口智雄・塩田静雄 マーケティング
調査の基礎と応用 中央出版社 1988 年 48 項)
11 栗田房穂・高成田亭 ディズニーランドの経済学 朝日文庫
1987 年 2 月 20 日 50 項
12 停止状態から最高速度 172km/h 到達までわずか 1.8 秒圧縮エアーの力を使ったエアーラ
ンチ方式で一気に押し出されるジェットコースター (首都圏遊園地&テーマパーク 07 年
ガイド JTB パブリッシング出版 2006 年 58 項)
13 ラクーアのエリア全体を回り込み 9 階建てのビルの上から急降下やセンターレス観覧車
の中央を駆け抜ける、最高速度 130km で疾走するジェットコースター (首都圏遊園地&テ
ーマパーク 07 年ガイド JTB パブリッシング出版 2006 年 58 項)
14 ボートに乗り 16~18 世紀にカリブ海を支配した極悪非道の海賊の世界にタイムスリッ
プし恐怖と冒険の世界を楽しめるアトラクション (野宮佐知子 東京ディズニーリゾート
完全ガイド第 4 版 株式会社講談社 2007 年 2 月 28 日 57 項)
15 コウモリが出迎える呪われた館で、毎夜繰り広げられる幽霊たちの晩餐会ゲストをミス
テリーの世界へと連れて行ってくれるアトラクション (野宮佐知子 東京ディズニーリゾ
ート完全ガイド第 4 版 株式会社講談社 2007 年 2 月 28 日 56 項)
16 “若さの泉”の謎に迫る恐怖の魔宮ツアー。このアトラクションは、ジョージ・ルーカ
ス製作の映画『インディ・ジョーンズ』シリーズをモチーフにしているコースター型アト
ラクション (野宮佐知子 東京ディズニーリゾート完全ガイド第 4 版 株式会社講談社
2007 年 2 月 28 日 150 項)
17 ロジェ・カイワ 訳 清水幾太郎・霧生和夫 遊びと人間 岩波書店
1958 年
18 子供の物まね、幻想遊び、人形遊び、玩具の武具、仮面、変装、演劇などの遊び
(ロジ
ェ・カイワ 訳 清水幾太郎 霧生和夫 遊びと人間 岩波書店 1958 年)
19 子供のくるくる回り、回転木馬、ブランコ、ワルツなどの遊び
(ロジェ・カイワ 訳 清
水幾太郎 霧生和夫 遊びと人間 岩波書店 1958 年)
20 プラスチック製の組み立てブロックの玩具
(レゴジャパン公式サイトより
http://www.legoeducation.jp/about/history.html)
21 無藤隆・岩立京子 乳幼児心理学 北大路書房
2003 年 3 月 15 日 6 項~9 項
22 伊藤正巳 人が集まるテーマパークの秘密 日本経済新聞社
1994 年 1 月 12 日 186
項
23 安達清治・坂尾英幸著 レジャー・サービス産業論
(株)創世社 66 項
22