AlGaNチャネル2DEGヘテロ構造の電子移動度解析

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第76回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集 (2015 名古屋国際会議場)
AlGaNチャネル2DEGヘテロ構造の電子移動度解析
Analysis of electron mobility in AlGaN channel 2DEG heterostructures
○
三好 実人、江川 孝志 (名工大)
○
Makoto Miyoshi and Takashi Egawa (Nagoya Institute of Technology)
E-mail: miyoshi.makoto@
@nitech.ac.jp
【はじめに】 AlGaN チャネルを有する窒化物系 2DEG ヘテロ構造は、GaN チャネル構造に比べ高い阻
止耐圧が期待できるが[1]、その一方で電子移動度の低さが指摘されている。本研究では、AlGaN チャネ
ルヘテロ構造の電子移動度向上の可能性を検討するために、この構造で最も寄与が大きいと予測される
チャネル層での合金散乱を含めた 2DEG 移動度の数値解析を行ったので報告する。
【解析方法】 2 次元電子の合金散乱(ADO)による緩和時間は、以下の式で与えられる[2]。
=ℏ
∗
| ( )|
(1 − )Ω
∗
ここで、 は電子の有効質量、 は混晶化合物の組成比、Ωは単位胞体積、 は、混晶を構成する半導
体(AlN や GaN)どうしの伝導帯下端のエネルギー差である。 ( )は電子の波動関数であり、本研究では
Fung−Howard 波動関数(FHWF)[3]を適用した。その他の散乱機構として、転位(DIS)、有極性光学フォ
ノン(PO)、変形ポテンシャル(DP)、ピエゾ(PE)、界面ラフネス(IFR)を取り入れ計算を実施した。なお、計算
では、IFR 算出に必要なラフネスのパラメータを、実験結果に対するフィッティング定数として取り扱った。
【結果と考察】 図1に、当研究室で MOCVD 成長した In0.12Al0.88N/Al0.21Ga0.79N ヘテロ構造[4]を想定し
た、ヘテロ界面近傍の電子濃度分布計算結果を示した。また、図 2 は、図 1 の結果を用いて計算した
ADO 散乱ならびにその他の散乱機構による移動度、それらの合成 (
!" )、ホール測定による実測結果
( #!"")を示した。図より、
!" と #!"" の一致は良好である。また、図 2 からは、移動度の温度依存性が小
さいこと、その主たる要因が ADO 散乱と、それと同程度の寄与を持つ IFR 散乱によることが見て取れる。
この IFR 散乱の寄与は、同様に解析した GaN チャネルヘテロ構造と比べて極端に大きい。この結果を受
け、別途成長した AlGaN 層表面の自乗平均粗さを AFM にて計測したところ、通常の GaN 層表面に比
べ一桁程大きい値を持つことが分かった。この事は、今回の移動度解析の妥当性を定性的に支持すると
同時に、AlGaN 層の平坦化で移動度が改善できる可能性(現状の 168cm2/Vs から 300cm2/Vs 以上)を
示唆した。発表では、チャネル層組成との関連について実測値と比較しながら詳しく議論する予定である。
謝辞: 本研究の一部は、JST 愛知地域スーパークラスターの支援を受け実施された。
7
10
6
10
5
10
4
10
3
10
2
10
1
In0.12Al0.88N/Al0.21Ga0.79N
DIS
PO
PE
DP
ADO IFR
µTotal
100
150
200
µHall
250
300
Temperature (K)
Depth, z (nm)
図 1. InAlN/AlGaN ヘテロ構造の電子濃
度分布計算結果
© 2015年 応用物理学会
10
2
Barrier
Channel
2.0
1.8 In0.12Al0.88N/Al0.21Ga0.79N
with 2DEG density of 2.8 x1013/cm2
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
−15 −10 −5
0
5
10 15
Electron mobility (cm /Vs)
20
3
Electron density (x 10 /cm )
参考文献:[1] Nanjo et al, Appl. Phys. Lett. 92, 263502 (2008). [2] Walukiewicz et al, Phys. Rev. B 30, 4571 (1984).
[3] Stern, Phys. Rev. B 5, 4891 (1972) など. [4] Miyoshi et al, Appl. Phys. Express 8, 021001 (2015).
図 2. InAlN/AlGaN ヘテロ構造の 2DEG 移動度
計算結果とホール効果測定による実測結果
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