資料4 諸外国の基準の基となっている肉用牛の科学的知見 (中間とりまとめ) Ⅰ 管理方法 1 除 角 2 去 勢 3 個体識別 4 削 蹄 5 鼻環(鼻木) 6 取り扱い(ハンドリング) Ⅱ 栄 養 子牛への初乳給与及び飼料給与 給餌方法 給水方法 1 2 3 Ⅲ 飼養システム 1 繋留方式 2 単 飼 3 放し飼い 4 放 牧 Ⅳ 舎 1 床構造 2 敷 料 3 飼養面積 Ⅴ 牛 →別添資料 →別添資料 →別添資料 牛舎の環境 1 熱環境(温度、湿度) 2 換気及びアンモニア濃度 3 照 明 4 騒 音 →別添資料 Ⅰ 管理方法 7 取り扱い(ハンドリング) 〔各国の基準〕 国名 E U 基準の概要 記載なし。 ・静止させる目的で電流を利用してはならない。電気ムチの使用はできるだけ避 U K けるべきであり、身体の敏感な部分に圧力をかけたり打ち付けたりしない。ま た、6 カ月齢以下の家畜を打ったり、付いたりしてはいけない。 ・家畜飼育者は、適切な訓練を受けるべきである。 ・突き棒や電気ムチの使用は不適切である。 アイルランド ・フライトゾーンとバランス点についての理解を図ること。 ・若齢時に管理者と頻繁な接触をすることは、その後の動物のストレスを大幅に 減少させる。 ・電気ムチの利用は最小限にし、敏感な部分への接触は避けること。 USA ・フライトゾーンとバランス点についての理解を図ること。 ・家畜を扱う人の教育訓練を行うこと。 ・電気ムチの使用は最低限にするべきであり、敏感な部分に当ててはいけない。 また、120V電源に直接つないだムチは許容されない。 カナダ ・フライトゾーンおよびバランス点の概念を理解するべきである。 ・牛に恐怖心を抱かせるような性急な動きや行動を避けること。 ・雇用者は被雇用者に対して、家畜の人道的な取り扱いや世話についての訓練を しなければならない。 ・取り扱いのための棒や犬を利用するのは必要最低限とすること。電気ムチはバ AUS ッテリー、手動発電のもののみ利用可。 ・離乳時期を利用して通常の飼育作業に親しませるべきである。 ・動物への苦悩、傷害あるいは苦痛等への影響を最小限にするような方法で管理 N Z されなければいけない。 ・敏感な部分を突いてはいけない。 現場での管理については、ウシの嫌悪度が高い「電気ムチの利用制限」や適切なヒト−ウシ関 係を築くための「感受期における接触」などが挙げられる。 一方で、多くの国で管理者に対する教育・啓蒙を取り上げており、ウシを移動させるための「フ ライトゾーンとバランス点の理解と利用」や家畜に対する態度を改善するための「管理者に対す る認知行動的トレーニング」などが挙げられている。 ○参考文献 ・Pajor EA, Rushen J, de Passillé AMB. Aversion learning techniques to evaluate dairy cattle handling practices. Appl. Anim. Behav. Sci., 69: 89-102. (実験概要) 移動の際に用いる手段の嫌悪度を比較するため、60 頭の泌乳していない経産牛を供試し、通路の一番奥に 処理枠を設置し、そこまでの移動に要する時間および労力を調べた。 (実験結果) 処理枠までの移動時間は 5 日目以降対照区よりも電気ムチ区で高くなり、移動に要する力も 3 日目以降、 対照区よりも電気ムチ区で高くなった。最期には 5 処理の中で電気ムチ区がもっとも忌避された。 -1- ・Boivin X, Le Neindre P, Garel JP, Chupin JM. Influence of breed and rearing management on cattle reactions during human handling. Appl. Anim. Behav. Sci., 39: 115-122. 1994. (実験概要) 42 頭の Salers 種子牛と 41 頭の Limousin 種子牛を出生後3ヶ月間、伝統的飼育と放牧飼育で哺育。その 後、母牛と放牧し、生後 4 カ月および 8 カ月における人の管理に対する反応を評価した。 (実験結果) 飼育方法間で人に対する反応に差あり、人手のかかる伝統的飼育で哺育した子牛は人の管理に対して親和的 であった。品種間での差はないものの、Limousin 種内で特定の種有牛の産子は極端に取り扱いにくいことか ら遺伝的背景も影響していると思われる。最初の 3 ヶ月の飼育方法によって、生後 8 ヶ月までは人への反応 に影響がある。 ・Le Neindre P, Boivin X, Boissy A. Handling of extensively kept animals. Appl. Anim. Behav. Sci., 49: 73-81. 1996. (総説) 粗放飼育下での家畜の取り扱いについての総説。 牛と人の関係を築くのに望ましい時期がある。人との接触を出生直後、6 週齢、12 週齢で比較すると 6 週 齢での接触がもっとも効果がある。同様に離乳後も人の接触に対して感受性の高い時期である。 ・Boivin X, Lensink J, Tallet C, Vissier I. Stockmanship and farm animal welfare. Anim. Welfare, 12: 479-492. (総説) 農用動物における人と動物の関係、とくにストックマンシップ(飼育者としてのあり方)が及ぼす影響に ついての総説。 家畜が人に慣れることは、恐怖の減少、おとなしさの改善、労働時間、不快感および怪我の危険性の減少 など人と家畜両方にメリットがある。日常や感受期における撫でる、餌を与える、話しかけるなどの正の関 係は人と動物の望ましい関係確立を促進する。そのような人の正の行動は飼育者の性格に強く関連している。 そしてその性格は訓練によって改善することができる。 ・Hemsworth PH. Human-animal interactions in livestock production. Appl. Anim. Behav. Sci., 81: 185-198. (総説) 人と家畜の相互作用が生産性およびウェルフェアに与える影響の総説。 管理者の態度がその行動に影響しており、その行動によって家畜の恐怖が引き起こされる。それらは管理者 と家畜の双方向に影響を与えており、管理者の行動を推奨するだけでは効果は少ない。認知行動的なトレーニ ングより態度と行動の両方を変化させるのが有効である。 ・Boivin X, Marcantognini L, Boulesteix P, Godet J, Brule A, Veissier I. Attitudes of farmers towards Limousin cattle and their handling. Anim. Welfare, 16: 147-151. 2007. (実験概要) Limousin 種飼育農家に対し、取扱いの容易さ、取扱い条件、牛への態度などについてアンケートを実施。 (実験結果) 農家の牛に対する態度はほぼ望ましいものであったが、ばらつきが大きく啓蒙の必要がある。人との接触が 取扱い易さに影響すると考える一方で遺伝的な影響についての理解は低い。これらの結果を既存の知識やさら なる研究と結び付けることで、ウェルフェアを改善する訓練プログラムを作り出せる。 ・Warriss PD. The handling of cattle pre-slaughter and its effects on carcass and meat quality. Appl. Anim. Behav. Sci., 28: 171-186. (総説) 屠殺前の取り扱いが肉質(瑕疵や肉色など)に与える影響についての総説。 牛の視覚や追従性などの特性に即した施設設計が有用。屠殺前における見知らぬ牛との群飼などはストレス で筋間脂肪を消費するため DFD 肉になる。 ・Grandin T. The design and consstruction of facilities for handling cattle. Livest. Prod. Sci., 49: 103-119. (実験概要) フライトゾーンやバランス点の概念の紹介と、それを利用した牛群移動や設備設計について (実験結果) 取扱者が個体のフライトゾーンに入ることでウシは移動を開始し、フライトゾーンから出ると停止する。フライ トゾーンはウシのき甲部を中心とした円状と考えられ、その大きさは個体のおとなしさや過去の経験に依存する。 バランス点はき甲部を通って正中線に直行するラインであり、ウシを前方へ移動させる際には、そのラインよりも 後駆側に位置する。 -2- Ⅳ 牛 舎 1 床構造 〔各国の基準〕 国名 基準の概要 床は子牛が負傷しないよう、滑らかでかつ滑りにくく、その上で起立・横臥す E U る子牛に障害や苦痛を引き起こさない設計でなければならない。また、子牛の大 きさおよび体重に見合うもので、表面が堅く、平らで安定していなければならな い。横臥する区域では、快適、清潔で、適切な排水がなされていること。 スノコ床の場合、滑らないようにしなければならない。スノコの間の溝は、蹄 U K を傷つけないように広すぎてはいけない。また、全面がスノコのコンクリート床 は使用してはならない。急勾配にせず、約 10%程度にすべきである。 牛が歩くすべての表面は、牛を不快にしたりストレスを与えたり傷つけたりし アイルランド ないように、設計され作られ維持されなければならない。そして肢を損傷しない ようにスムーズであり、スリップしないようにすべきである。 USA 床は適度に乾燥し、牛舎やハンドリングのための通路は牛や管理者の怪我を防 ぐため、滑らないようにすべきである。 床、パドックは適切に排水され、牛をできる限り乾燥した状態に保たなければ カナダ ならない。床や通路は滑らないようにできる限り清掃し乾燥させ、肢や蹄病、牛 の不快をできる限り抑えなければならない。 子牛:床は、子牛に適切な乾燥したスペースがあるようにし、床表面は子牛に傷 をつけないように、掃除がしやすく、滑りにくいものにする AUS 成牛:飼養ペンは排水の良い、足場がしっかりとした床にするべきである。また、 できるだけ早くに乾燥することが重要である。なお、コンクリートは給餌・ 給水槽のエプロン部分にのみ推奨される。 N Z 牛を傷つけるすべての鋭利な物体や突起物、角、損傷している床は取り除くか、 修理するか、覆い隠さなければならない。 床の状態やスノコ床の割合が、起立横臥動作等の行動や牛体の損傷状況等にどのような影響を 及ぼすのかを調査した一連の研究から、床が堅く滑りやすい場合、正常な起立横臥動作が不可能 になり、佇立時間が短く、1 回の横臥時間が長くなる。また、蹄、膝、肢などに傷や損傷が生じ やすい(特にスノコ床において)ことが報告されている。 これらの研究結果が、床は、乾燥し、柔らかく、滑りにくい状態とし、全面をスノコ床は望ま しくないという基準の基となっていると考えられる。 ○参考文献 ・Scientific Committee on Animal Health and Animal Welfare (2002). The welfare of cattle kept for beef production., SANCO.C.2/AH/R22/2000. European Commission, Health and Consumer Protection Directorate-General. (総説) スノコ床では、ワラを敷いた床と比較して横臥時間の減少、横臥頻度の低下、横臥動作の中断回数の増加、 前肢からの起立や後肢から先に横臥動作を開始する場合が多くみられる。 ・Lowe, D. E., R. W. J. Steen, et al. (2001). The effects of floor type systems on the performance, cleanliness, carcass composition and meat quality of housed finishing beef cattle, Livestock Production Science 69: 33-42. (実験概要) -3- 肉用去勢牛を全面スノコ床、ゴムマットでカバーしたスノコ床、ワラの敷かれた床で飼育し、牛体の汚れ具 合、体重、肉質、肉成分などを比較した。 (実験結果) 全面スノコ床、ゴムマットでカバーしたスノコ床で飼育されたウシは、ワラの敷かれた床のウシよりも牛体 が汚れていた。 ・Platz, S., F. Ahrens, et al. (2007). Association between floor type and behaviour, skin lesions, and claw dimensions in group-housed fattening bulls. Preventive Veterinary Medicine 80: 209-221. (実験概要) 雄牛をコンクリートスノコ床、ゴムマットでカバーしたコンクリートスノコ床、その両方がある床で飼育し、 行動、外傷などについて調査した。 (実験結果) 両方の床を選択できる雄牛は、ゴムマットでカバーされた場所を好み、その滞在時間が有意に長くなった。 コンクリート床での 1 回の横臥時間が長くなり、外傷も多かった。 ・Ladewig, J., 1987. Physiological results of welfare research in fattening bulls. In: Schlichting, M.C., Smidt, D. (Eds.), Welfare Aspects of Housing Systems for Veal Calves and Fattening Bulls, CEC Report. Luxembourg, pp. 123‒129. (実験結果) スノコ床で飼育した雄牛は、ワラで飼育した場合と比較して横臥動作を開始するまでに躊躇する回数が多 く、横臥の回数が少ない傾向にあった(スノコ床:6∼12 回、ワラ:15∼25 回/24 時間)。 ・Webster, A. J. F., Saville, C., Church, B. M., Gnanasakthy, A., Moss, R. (1985), Some effects of different rearing systems on health, cleanliness and injury in calves. British Veterinary Journal, 141:472-483. (実験概要) 農家訪問し、様々な飼育方式の子牛の疾病発生状況を調査した。 (実験結果) スノコ床で飼育された子牛の 20%は、膝の外傷(擦傷、挫傷、腫れ)が認められたが、放牧、フリーバー ン、ペン飼育ではほとんど認められなかった。 ・Irps, H., (1987) The influence of the floor on behaviour and lameness of beef bulls. In: H. K., Wierenga and D. J. Peterse (editors), Cattle Housing Systems, Lameness and Behaviour. CEC Seminar. Martinus Nijhoff, Dordrecht, pp. 73-86. (実験概要) 全面コンクリート床、床面の 50%がスノコ床、100%ゴムマットの 3 つの飼養方式における雄牛の行動を比 較した。 (実験結果) スノコ床で飼育の雄牛は、ワラの敷かれたペンで飼育されたものよりも、横臥動作回数が少なく、1 回あた りの横臥時間や佇立時間が長いことから、姿勢の変化が少ないことなどを明らかにし、全面をスノコ床にすべ きでないと考察している。 ・Lidfors, L. (1989). The use of getting up and lying down movements in the evaluation of cattle environments , Veterinary Research Communications 13(4): 307-324. (総説) 様々な飼育下にあるウシの起立、横臥行動を指標として飼育環境を評価した総説。 (内容) 子牛や肥育牛をスノコ床で飼育した場合には、ワラの上で飼育したときよりも、起立・横臥頻度が低下し、 1 回の横臥時間が長くなり、横臥動作の中断や後肢から先に横臥動作を開始する場合が多い。 ・Stefanowska, J., Swierrstra, D., Braam C. R., Hendriks, M.M.W.B. (2001), Cow behaviour on a new grooved floor in comparison with a slatted floor, taking claw health and floor properties into account. Applied Animal Behaviour Science, 71, 87-103. (実験概要) フリーストール通路の床のみが異なる 2 群(スノコ床と溝切りの床)の横臥や佇立行動を比較した。 (実験結果) フリーストールの通路がスノコ床で飼育された群は、溝が切られた床の群よりストールでの佇立時間が長 く、スノコ床は快適ではないと考えられる。 -4- 2 敷 料 〔各国の基準〕 国名 E U U K アイルランド USA カナダ AUS N Z 基準の概要 生後 2 週齢未満のすべての子牛には、適切な床料を与える。 スノコではない横臥場所が必要であり、そこにはワラなどの敷料をひき、常に よく乾燥した休息区域を利用できるようにしなければならない。 敷料は定期的に交換または追加されなければならない。 子牛:2 週齢未満のすべての子牛には、適切な敷料を与えるべきである。 記載なし。 床、パドックは適度に排水され、牛をできる限り乾燥した状態に保たなければ ならない。床や通路は滑らないようにできる限り清掃し乾燥させ、肢や蹄病、牛 の不快をできる限り抑えなければならない。 子牛:十分な横臥スペースが与えられるべきで、適切な敷料が推奨され、適切な 間隔で交換すべきである。 成牛:舎飼の場合には、コンクリートの床の上に適切な敷料を用い、脚への影響 を最小にし、許容可能な床の状態になるように吸水できる十分な深さにす るべきである。 ベッドは牛の不快をさけるためによく乾燥し、適切な敷料を敷かなければなら ない。汚れた敷料は、牛の健康やウェルフェアを脅かす状態まで放置してはなら ない。 様々な材料の敷料を利用し、敷料の材料や厚さが、床や通路の状態、牛の行動(起立横臥動作 等)、跛行、蹄病等にどのような影響を及ぼすのかを調査した一連の研究から、適切な敷料を提 供しないと正常なパターンの起立・横臥行動ができず、それらの行動回数、時間配分が正常時と 異なり、牛体が汚れ、特に肢や蹄の疾病が増加することが報告されている。 これらの研究結果が、乾燥し、クッション性のある適切な敷料を用意し、定期的に交換するこ とを義務付けている各国の基準の基となっていると考えられる。 ○参考文献 ・Lowe, D. E., R. W. J. Steen, et al. (2001). Preferences of Housed Finishing Beef Cattle for Different Floor Types , Animal Welfare 10: 395-404. (実験概要) 肥育牛の床の好みを明らかにするために、2 種類の床面のペンのどちらを好んで行動するかを調査した。 (実験結果) 肥育牛の滞在時間や横臥時間からみると、床面の好みは、ワラ、おがくず、ゴムマット、スノコ床の順にな ると判断された。 ・Ladewig, J., Borell, E. von, 1998, Ethological methods alone are not sufficient to measure the impact of environment on animal health and animal well-being, 6. International Congress on Animal Hygiene, Skara, Environment and animal health. Proceedings of the VIth International Congress on Animal Hygiene 14-17 June 1988, Skara, Sweden. Volume 2, Ekesbo, I. (ed.). (実験概要) 文献入手不可能なため不明 (実験結果) 繋留された雄牛では、横臥を開始しようとする動作が観察されてから、実際の横臥動作完遂まで 59 分要し たが、ワラの上で飼育した場合はわずか 9 秒であった。 ・Muller, C., Ladewig, J., Schlichting, M. C., Thielscher, H. H., Smidt, D. (1989) Behaviour and heart rate of heifers housed in tether stanchions without straw. Physiol. Behav., 46: 751-754. -5- (実験概要) ワラを豊富に敷いた群飼ペンとワラを敷いていない、つなぎの未経産牛の横臥動作およびその時の心拍数を 比較した。 (実験結果) ワラの敷いていないつなぎの牛は、横臥動作の回数が少なく(姿勢を変化させない) 、横臥直前に行う探査 行動回数が多かった。また心拍数も横臥動作前後、動作中のすべてにおいて群飼ペンの牛よりも高かった。 ・Tucker C.B., Weary D.M., Fraser, D. (2003) Effects of three types of Free-stall surfaces on preferences and stall usage by dairy cows. J. Dairy. Sci., 86: 521-529. (実験概要) フリーストールの敷料として、おがくず、砂、2∼3cm のおがくずを敷いたマットレスのうち、どれを好ん で利用するかを観察した。 (実験結果) マットレスよりも、おがくずまたは砂の床の方を利用することを好んだ。 ・Faull W.B., Hughes J. W., Clarkson M. J., Downham D. Y., Mason F.J., Merritt J.B., Murray R.D., Russell, W.B., Sutherst J. E., Ward W. R. (1996) Epidemiology of lameness in dairy cattle: the influence of cubicles and indoor and outdoor walking surfaces. Vet. Rec. 139: 130-136. (実験概要) フリーストール飼育方式の農家を訪問し、牛床や通路の状態、牛の行動などを調査、スコア化している。 (実験結果) フリーストールの牛床が堅くて敷料量が少ないほど、跛行の発症率が高かった。 ・Vokey, F. J., Guard, C. L., Erb, H. N. Galton, D. M.,(2001) Effects of alley and stall surfaces on indices of claw and leg health in dairy cattle housed in free-stall barn. Journal of Dairy Sci., 84: 2686-2699. (実験概要) 厚い砂、2∼3 ㎝のくずを敷いたマットレス、5∼6 ㎝のおがくずを敷いたコンクリート床で飼育した牛の蹄 や肢の状態を比較した。 (実験結果) 跛行や蹄病は、砂やゴムマット床と比較して、コンクリート床で最も多く発生した。 ・Tucker C. B., Weary D. M. (2004), Bedding on geotextile mattresses: How mach is need to improve cow comfort? J. Dairy. Sci., 87:2889-2895. (実験概要) マットレス床におがくずを全く敷いていない、1kg,7.5kg のいずれかを敷いた 3 つのストールを自由に選 ばせた。 (実験結果) 7.5kg のおがくずのあるマットレスを最も好み、横臥時間が最も長かった。 ・K. M. D., Rutheford, F, M., Langford, M. C., Jack, L. Sherwood, A.B., Lawrence, M. J., Haskell.(2008) Hock injury prevalence and associated risk factors on organic and nonorganic dairy farms in the United Kingdom, J. Dairy. Sci., 91:-2265-2274. (実験概要) イギリスの様々な飼養の農家調査で、飛節の傷や腫れに関連する要因を調査した。 (実験結果) フリーストール飼養農家で比較した結果、おがくずよりワラの方が飛節のはげや擦りむけが多かった。 ・N. B., Cook, T.B. Bennett, K. V., Nordlund, (2005) Monitoring Indices of cow comfort in free-stall-housed dairy herds, J. Dairy. Sci., 88: 3876-3885 (実験概要) 150∼450 頭規模の 12 牛群の行動調査を 24 時間行った。 (実験結果) ストールでの佇立時間は、マットレスより砂の方で短かった。 ・Rushen, J., D. Haley, et al. (2007). "Effect of Softer Flooring in Tie Stalls on Resting Behavior and Leg Injuries of Lactating Cows." Journal of Dairy Science 90: 3647-3651. (実験概要) どちらも敷料のあるゴムマット床とコンクリート床での行動を比較した。 (実験結果) ゴムマット床と比較して、コンクリート床では起立回数が少なく、横臥時間が短かった。ゴムマット床はコ ンクリート床に比べて、佇立から横臥、横臥から佇立へ姿勢を変化させるのが容易であると考えられる。 -6- 3 飼養面積 (1)単 飼 ①繋 留 〔各国の基準〕 国名 E U U K アイルランド USA 基準の概要 子牛のつなぎ飼いは禁止。ただし群飼育の子牛に生乳または代用乳を与えるた めに 1 時間を超えない範囲で行う繋ぎ飼いは除く。 EU と同様。 EU と同様。 記載なし。 繋留する場合には、立ち上がったり、横になったりする行動を妨げるべきでは カナダ ない。また、定期的に繋留具の安全性と機能性を定期的に検査するべきである。 なお、繋留されている牛は、定期的に運動させるべきである。 鎖での家畜の繋留は、通常の飼育慣行として受け入れられない。牛の一時的な AUS 繋留として、首輪、ロープ、または同じような用具が用いられるところでは、牛 に傷害や苦痛を与えるのを避ける方法で用いなければならない。 繋留された動物は、毎日十分な運動をさせるべきである。 N Z 記載なし。 肉牛を個別に繋留して飼育する方式は、スカンジナビア、ドイツ、フランスなどの一部などで しかみられず、成牛の基準は作られていない。 つなぎ飼いの場合と他の方法で飼育した場合の行動を比較した一連の研究から、つなぎ飼いを 行った場合には、舌遊び行動等の常同行動が多発し、ウェルフェアレベルの低下を示唆する報告 がなされている。これらの研究結果が、EU、AUS、アイルランドにおけるつなぎ飼いの禁止 (特に子牛)といった基準の基となっていると考えられる。 ○参考文献 ・T. H. Friend , G. R. Dellmeier,. E. E. Gbur. (1985). "Comparison of Four Methods of Calf Confinement. I. Physiology." J. Anim Sci. 60: 1095-1101. (実験概要) ストールでの繋留(0.5mのネックチェーン) 、単飼ペン(1.2×1.5m)、ハッチ(1.2×1.5×2.4m)に 2.4m の チェーンで繋留、ヤード(3.6×8m)での群飼の 4 つの処理区の哺乳子牛の 6 週齢時に採血し、生理化学分析 値を比較した。 (実験結果) コルチゾル濃度に差は認められなかったが、ACTH に対する反応性がハッチやヤードと比較して、ストー ルやペンで高かった。また、42 日齢までの日増体量に差はなかった。 ・G. R. Dellmeier, T. H. Friend, E. E. Gbur. (1985). "Comparison of Four Methods of Calf Confinement. II. Behavior." J. Anim Sci. 60: 1102-1109. (実験概要) ストールでの繋留(0.5mのネックチェーン) 、単飼ペン(1.2×1.5m)、ハッチ(1.2×1.5×2.4m)に 2.4m の チェーンで繋留、ヤード(3.6×8.0m)での群飼の 4 つの処理区の哺乳子牛の 5 週齢時の行動を比較した。 (実験結果) ハッチの哺乳子牛は、起立・座り込みによる姿勢の変化回数が、日光浴や日陰のため、他の子牛よりも多く なった。しかし、24 時間の佇立および起立時間に、処理区間の違いは認められなかった。 -7- ・Müller, C., J. Ladewig, et al. (1989). "Behavior and heart rate of heifers housed in tether stanchions without straw " Physiology & Behavior 46: 751-754. (実験結果) ワラを敷かずに繋留飼育した未経産牛の行動を、ワラのあるペンで飼育されたウシと比較した。 (実験結果) 繋留飼育したウシは、起立・横臥回数が少なかった。また、横臥動作前のにおい嗅ぎをしてから横臥動作を完遂 するまでの時間も長かった。 ・M. B. Jensen, (1995) The effect of age at tethering on behaviour of heifer calves, Applied Animal Behaviour Science, 43: 227-238. (実験概要) 12 週齢から繋留した子牛と、ワラを豊富に敷いたペンで飼育した子牛の行動を比較した。 (実験結果) 繋留された子牛は、ペンで群飼された子牛よりも横臥時間が長く、物を噛む転嫁行動が多かった。 ・I. Redbo., (1993) Stereotypies and cortisol secretion in heifers subjected to tethering. Applied Animal Behaviour Science, 38: 213-225. (実験概要) 放牧期間終了後、つなぎ牛舎で飼育し、舌遊び行動を中心とした常同行動の発現と尿中コルチゾル濃度を継 続的に測定した。 (実験結果) 放牧飼育の後に牛舎で繋留飼育すると、始めの 4 週間の間、舌遊び行動が多発し、コルチゾル濃度も繋留 直後増加することを示した。 ②単 房 〔各国の基準〕 国名 E U U K アイルランド USA カナダ AUS N Z 基準の概要 子牛を単飼するペンは、子牛の体高と同等以上の幅で、長さは体長(鼻先から 座骨端)の 1.1 倍以上とする。また壁面は、子牛が他の子牛と視覚的、触覚的摂 食が可能なもので、硬い壁であってはならない。 獣医師が保証しなければ、生後 8 週齢を過ぎた子牛は、個々のペンで飼養でき ない。 EU と同様。 EU と同様。 記載なし。 子牛を個別ペンに収容する場合、自由に立ち上がり、横たわり、快適に休息で き、また、必要な時に手足の運動ができるようにするべきである。 子牛個別飼育用のペンは疾病の伝染問題がない場合、各子牛が他の子牛をみた り声を聞いたりすることが可能で、できれば接触できるように設置、配置すべき である。 1 頭当たりの飼育ペンの面積は 2.0 ㎡、容積は最低 6 ㎥を与えるべきである。 記載なし。 肉牛を個別に繋留して飼育する方式は、スカンジナビア、ドイツ、フランスなどの一部などで しかみられないようで、成牛の基準は作られていない。 ヴィール子牛での研究がこれまで多くされてきており、正常な起立・座り込み動作が可能で、 かつ、身繕い行動が発現できるような大きさにすること、また離乳期頃から社会行動の発現欲求 が高まるため、単飼は幼齢期に限定される。 -8- ○参考文献 ・Scientific Committee on Animal Health and Animal Welfare (2002). The welfare of cattle kept for beef production., SANCO.C.2/AH/R22/2000. European Commission, Health and Consumer Protection Directorate-General. (総説) 肉牛を個別ストールで飼育する場合、 体重300kg まで1.60×0.75m、 300∼400kg まで1.75×0.85m、 400∼500kg まで 1.90×0.95m、500∼600kg まで 2.00×1.05m、それ以上で 2.3×1.2mのスペースが必要としている。また、 別の報告では、200kg まで 1.50×0.78m、350kg まで 1.82×0.91m、510kg まで 1.98×1.06mのスペースが必要 としている。縁石の高さは 230∼250mm、通路幅は 2.5∼3mを推奨している。 ・Van Putten, G. (1982). "Welfare in veal calf units." The Veterinary Record 111: 437-440. (実験概要) ヴィール子牛が横臥した場合の牛体の横幅と体重との関係を求めた。 (実験結果) 体重が 70∼210kg のヴィール子牛は、60∼75cm 幅のクレートが必要である。 ・Ketelaar-deLauwere C. C., and Smits, A. C.,(1991)Spatial requirements of individually housed veal calves of 175 to 300kg (pp.49-53). Wageningen, The Netherlands: Pudoc. (実験結果) 体重が 170∼300kg の子牛は、80∼95 ㎝幅のクレートが必要である。 ・Webster, A. J. F., C. Saville, et al. (1985). "The effect of different rearing systems on the development of calf behaviour." The British Veterinary Journal 141: 249-264. (実験概要) 5 種類の異なった飼育環境における子牛の行動を比較し、最低限必要と判断されるクレートの大きさを考察。 (実験結果) 体重が 100kg 以上になれば、85 ㎝以上の幅のクレートが必要である。 ・Tennessen and Whitney (1990), Tennessen, T. and D. Whitney (1990)."Estimating animal space needs with video image analysis." Canadian Journal of Animal Science 70: 1183 (実験概要) ビデオ録画により、ヴィール子牛の正常行動に必要なスペースについて検討した。 (実験結果) 4 ヶ月齢の子牛(135kg)では、頭部を牛体につけて横臥するには、平均 60 ㎝の幅が必要であった。身繕 い行動発現のためには、平均 63 ㎝必要であった。子牛によっては 70 ㎝の幅が必要な場合もあった。 ・Andrighetto, I., F. Gottardo, et al. (1999). "Effect of type of housing on veal calf growth performance, behaviour and meat quality." Livestock Production Science 57(2): 137-145. (実験概要) クレート飼育(60×140 ㎝)と群飼ペン飼育(1 頭あたり 1.5 ㎡のスペース)のヴィール子牛の行動や生産 性を比較した。 (実験結果) 四脚すべてを曲げて横臥した時間が、群飼ペンと比較して単飼ペンの方が長かった。またクレート飼育では 四肢すべてを伸ばしての横臥はまったく見られなかった。 ・G. R. Dellmeier, T. H. Friend, E. E. Gbur (1985). "Comparison of Four Methods of Calf Confinement. II. Behavior." J. Anim Sci. 60: 1102-1109. (実験概要) ストールでの繋留(0.5mのネックチェーン) 、単飼ペン(1.2×1.5m)、ハッチ(1.2×1.5×2.4m)に 2.4m の チェーンで繋留、ヤード(3.6×8m)での群飼の 4 つの処理区の哺乳子牛の 5 週齢時の行動を比較した。 (実験結果) 24 時間の佇立および起立時間に、処理間の違いは認められなかった。 ・Neindre, P. L. (1993). "Evaluating housing systems for veal calves." J. Anim Sci. 71(5): 1345-1354. (実験概要) 55×150 ㎝,65×165 ㎝,110×150 ㎝の大きさのクレート飼育の 13 および 17 週齢の行動を比較した。 (実験結果) 17 週齢では、110×150 ㎝のクレート飼育で四肢を曲げての横臥行動が最も短かった。またこの大きさのク レートでしか、四肢を伸長した横臥行動は認められなかった。 ・Stull, C. L. and S. P. McDonough (1994). "Multidisciplinary approach to evaluating welfare of veal calves in commercial facilities." Journal of Animal Science 72(9): 2518-2524. -9- (実験概要) カリフォルニア州のヴィール子牛生産農家 10 戸のウェルフェア評価を試みた。 (実験結果) 単飼の 9 戸の農家では 48∼55 ㎝のストール幅しかなく、60∼90 ㎝の長さのチェーンで繋留されていた。 ・Schnepper, R. (2991). "Veal calf TLC." J Am Vet Med Assoc. 219(10): 1389-1391. (概要) 1996 年にアメリカヴィール子牛協会(AVA)が定めたヴィール子牛品質保証(VQA)の基準は、最低限の ストール幅を 66 ㎝と定めている。 ・Wilson, L. L., T. L. Terosky, et al. (1999). "Effects of individual housing design and size on behavior and stress indicators of special-fed Holstein veal calves." J. Anim Sci. 77: 1341-1347. (実験概要) 56,66,76 ㎝幅(長さはすべて 179 ㎝)のクレート飼育子牛の行動や生理学的ストレス指標を比較した。 (実験結果) 横臥姿勢に違いは見られなかった。幅が大きくなるにつれて身繕い行動が増える傾向にあった。 ・Terosky, T. L., L. L. Wilson, et al. (1997). "Effects of individual housing design and size on special-fed Holstein veal calf growth performance, hematology, and carcass characteristics." J. Anim Sci. 75(7): 1697-1703. (実験概要) 56,66,76 ㎝幅のクレート飼育の子牛の増体量や生理学的調査を行った。 (実験結果) これらのクレート飼育の子牛の増体量には、違いが認められなかった。 ・Broom, D. and J. Leaver (1978). "Effects of group-rearing or partial isolation on later social behaviour of calves." Animal Behaviour 26: 1255-1263. (実験概要) 単飼ペンと群飼ペンで飼育した子牛を混群した場合の行動を観察した。 (実験結果) 増体量に違いはなかった。単飼ペンの個体と比較して、群飼の方の社会行動が活発で順位も高くなった。 ③分娩房 〔各国の基準〕 国名 基準の概要 屋内飼育の分娩牛はよく乾いた敷料のある横臥場所にいつでもアクセスできな E U ければならない。また、管理者が牛を介助できる大きさのペンかヤードが必要で ある。分娩牛を他の個体から隔離すべきである。 分娩房は最低限 12 ㎡の大きさで最低限 3 ㎡の幅があり、最低限 1.5m 幅の入り 口がなければならない。ヤードで分娩させる場合は、牛 1 頭あたり最低 8 ㎡でも U K よい。 作業者が雌牛に手当てできる広さのペンであること。また、分娩牛以外の他の 牛から分離されること。 アイルランド USA カナダ AUS N Z 屋内での分娩の場合、敷料のあるペンが必要である。 記載なし。 分娩房の大きさは、全頭の牛群サイズと季節によって決める。突起物や鋭利な 角があってはならない。新しく清潔で乾燥していて適量の敷料が必要である。 面積に関する記載なし。 分娩用のパドックは、悪天候などのようなアニマルウェルフェアを損なうこと を避ける場所にする。 - 10 - 屋外での自然分娩では、通常分娩が近づいた雌は群れから離れる行動パターンをとる。そのた め、牛舎で分娩させる場合は分娩房を設置することが望まれている。 分娩房の大きさは、分娩に必要と思われるスペースに、管理者が分娩介助を行うときに必要な スペースを加えて決定される。 ○参考文献 ・Phillips, C.J.C.,(2001) Principles of Cattle Production Systems. CABI, Wallingford, pp170-216. (総説) 次のような飼養方法が望ましいとしている。分娩 2∼3 週前にストローヤード(フリーバーン)で飼養する。 分娩の兆候がみえたら、4∼5 ㎡の大きさの分娩房で単飼する。この分娩房は 10∼20 頭ごとに 1 つ設置する。 夏は放牧地かパドック(清潔にしワラを豊富に敷く)で分娩させる。 ・Rushen, J. de Passillé, A. M. et al (2008) The welfare of cattle. Springer, Dordrecht, pp70-111 (総説) 分娩 2∼3 日前になると、群れから離れ、分娩場所を探す。 ・Lidfors, L. (1988). "Behaviour of free-ranging cows and calves." Applied Animal Behaviour Science 21(4): 369-370. (実験概要) 放牧肉用牛母子の行動を調査した。 (実験結果) 観察した 10 個体のうち 2 頭のみが群れから離れて分娩した。 ・Lidfors, L. M., D. Moran, et al. (1994). "Behaviour at calving and choice of calving place in cattle kept in different environments." Applied Animal Behaviour Science 42(1): 11-28. (実験概要) 20ha の林、草木、放牧地などからなる場所での分娩時の行動を調査した。 (実験結果) 上空が木や枝で覆われた高地の場所を選んで分娩した。 ・Owens, J. L., T. N. Edey, et al. (1985). "Parturient behaviour and calf survival in a herd selected for twinning." Applied Animal Behaviour Science 13(4): 321-333. (実験概要) 分娩時の 49 個体の行動を観察した。 (実験結果) 平均すると分娩前 140 分から、起立横臥を繰り返したり、地面のにおいを嗅いだり、体の向きを変えたり するなど、落ち着きがなくなる。 ・Selman, I. E., Mcewan, A D, et al. (1970). "Studies on natural suckling in cattle during the first eight hours post partum. I. Behavioural studies (dams)." Animal Behaviour 18: 276-283. (実験概要) 乳用牛、肉用牛の分娩後の母性行動を観察した。 (実験結果) 1 頭のみが起立したまま分娩を完了したが、9 頭の牛は横臥で分娩をした。 ・Edwards, S. A. (1983). "The behaviour of dairy cows and their newborn calves in individual or group housing." Applied Animal Ethology 10(3): 191-198. (実験概要) 分娩場所を選択できる環境の分娩牛の行動を調査した。 (実験結果) 22%の個体が群れから離れて分娩した。 ・田中義春、Ⅳ章 3 分娩・治療の施設、快適牛舎新築・改善マニュアル(干場信司監修)、117−120 (概要) 分娩房は、1 頭あたり 10 ㎡以上で、30 頭に 1 つ設置することが望ましい。 - 11 - (2)群 飼 ①子牛の群飼 〔各国の基準〕 国名 基準の概要 子牛を群で収容する場合は、少なくとも 1.5 ㎡を確保しなければならない。ま た、1 頭当たりの生体重によって以下の面積が必要となる。 E U 生体重 150kg 未満 150∼220kg 220kg 以上 必要面積 1.7 ㎡ 1.8 ㎡ 1.8 ㎡以上の広いスペース . U K アイルランド USA カナダ AUS N Z EU と同様。 EU と同様。 記載なし。 床の種類 屋根のないフィードロット 舗装なしの床 舗装した床 屋根のあるフィードロット 舗装なしの床 舗装した床 屋根のあるエリア スノコ床 子牛 225kg 1才 14.0 ㎡ 4.0 ㎡ 22.0 ㎡ 5.0 ㎡ 14.0 ㎡ 2.3 ㎡ 1.4 ㎡ 1.5 ㎡ 22.0 ㎡ 3.0 ㎡ 1.8 ㎡ 2.0 ㎡ 群飼の場合、各子牛が自らの身繕いができ、過密を防止するために 1.5∼2.0 ㎡ の床面積が与えられるべきである。 記載なし。 ヴィール子牛でのクレートによる単飼と群飼の比較研究が多くある。正常な起立・座り込み動 作が可能で、かつ身繕い行動が発現できるような大きさにし、密飼いを避けることが望まれる。 ○参考文献 ・K Maatje,J. V., WD Kremer, AL Cruijsen, and TS van den Ingh (1993)."Automated feeding of milk replacer and health control of group-housed veal calves." The Veterinary Record 133(11): 266-270. (実験概要) 自動哺乳装置による群飼とバケツ哺乳によるクレート飼育子牛の行動と生産性を比較した。 (実験結果) 群飼において、呼吸器病が多く発生した。異常行動である舌遊び行動発現時間は、群飼の方が少なかった。 ・Bokkers, E. A. M. and P. Koene (2001)."Activity, oral behaviour and slaughter data as welfare indicators in veal calves: a comparison of three housing systems " Applied Animal Behaviour Science 75: 1-15. (実験概要) クレート飼育、群飼、自動哺乳による群飼における子牛の行動や屠殺時のデータを比較した。 (実験結果) 群飼では、単飼よりも屠殺後のルーメン内の毛玉が多く見られた。 ・Jensen, M. B., K. S. Vestergaard, et al. (1997). "Effect of single versus group housing and space allowance - 12 - on responses of calves during open-field tests." Applied Animal Behaviour Science 54(2-3): 109-121. (実験概要) 単飼と群飼子牛をそれぞれ 3 ヶ月間飼育した後、6 ヶ月齢時にオープンフィールドテストを行った。 (実験結果) 単飼子牛の方が、オープンフィールドでの恐怖反応性が高かった。 ・Warnick, V. D., C. W. Arave, et al. (1977). "Effects of Group, Individual, and Isolated Rearing of Calves on Weight Gain and behavior." Journal of Dairy Science 60(6): 947-953. (実験概要) 群飼と単飼の行動と増体量を比較した。 (実験結果) 群飼では、単飼に比べて増体量が多かった。また群飼した個体は、離乳後に再度群飼した場合、社会的順位 が高かった。 ・Veissier, I., P. Chazal, et al. (1997). "Providing social contacts and objects for nibbling moderates reactivity and oral behaviors in veal calves." Journal of Animal Science 75(2 ): 356-365. (実験概要) 単飼の子牛が隣の子牛と接触できる状態と全く接触できない状態で飼育した場合の驚愕反応性を調査した。 (実験結果) 隣の子牛と全く接触できない状態で飼育した子牛は、接触可能な子牛に比べて、驚愕反応性が高かったこと から、早期の社会化が必要としている。 ・Jensen, M. B. (1995). "The effect of age at tethering on behaviour of heifer calves." Applied Animal Behaviour Science 43: 227-238. (実験概要) 子牛を繋留した場合と群飼した場合の行動を比較した。 (実験結果) 群飼の方が、物を噛む転嫁行動や身繕い行動が少なかった。 ・Jensen, M. B. and R. Kyhn (2000). "Play behaviour in group-housed dairy calves, the effect of space allowance." Applied Animal Behaviour Science 67(1-2): 35-46. (実験概要) 群飼子牛の遊戯行動を 1 頭あたりの飼育スペースが異なるペンで比較した。 (実験結果) 子牛の群飼において、飼養スペースが広くなると遊戯行動による運動が多くなった。 ②子牛以外の群飼 〔各国の基準〕 国名 E U 基準の概要 記載なし。 体重 U K (DEFRA) 200kg 300kg 400kg 500kg 600kg 700kg 肉牛 1 頭当たりの体重別飼養面積(飼槽を除く) ベッドエリア 通路・採食エリア 合計 2.0 ㎡ 1.0 ㎡ 3.0 ㎡ 2.6 ㎡ 1.0 ㎡ 3.6 ㎡ 3.0 ㎡ 1.2 ㎡ 4.2 ㎡ 3.4 ㎡ 1.2 ㎡ 4.6 ㎡ 3.7 ㎡ 1.4 ㎡ 5.1 ㎡ 7.0 ㎡ 1.4 ㎡ 5.4 ㎡ 舎飼いの場合、自由に動くことが可能で、横臥、身繕い、他個体と接触可能な アイルランド 十分なスペースを確保する。4∼5 ヶ月の冬季は、適切に設計され、作られ、管理 されているスノコ床で牛を不快にせず傷つけないように快適に飼育する。 USA 面積に関する記載なし。 - 13 - カナダ AUS N Z 床の種類 屋根のないフィードロット 舗装なしの床 舗装した床 屋根のあるフィードロット 舗装なしの床 舗装した床 屋根のあるエリア 未経産,肥育牛,乳用種 27.0 ㎡ 8.0 ㎡ 27.0 ㎡ 4.5 ㎡ 2.7 ㎡ 面積に関する記載なし。 牧草へのアクセスがない状態で飼養されるフィードロットの場合、1 頭あたり の最小面積は 15∼20 ㎡(少なくとも 10 ㎡)が推奨される。 Petherick (1983)が提案した豚の飼育面積を求めるアロメトリー式も参考にしていると思われ るが、ヨーロッパではルーズバーン(フリーバーン)が主流であったたため、正常行動を発現さ せるために必要な面積を経験的事実から基づいて算出していると考えられる。Webster, A. J. F., (1987) が示した数値も参考にされていると思われる。 ○参考文献 ・Daelemans and Maton, (1987) J. Daelemans and A. Maton, Beef production with special reference to fattening bulls. In: M.C. Schlichting and D. Smidt, Editors, Welfare Aspects of Housing Systems for Veal Calves and Fattening Bulls, CEC, Luxembourg, pp. 61–71. (実験概要) これまでの肉用牛の総説から、必要とされる体重別のペンの大きさを記載している。 (実験結果) 敷料を敷いたペンでは、体重 100kg あたり1㎡あたりの面積が必要としている。 ・Ingvartsen, K.L., Andersen, H.R., (1993) Space allowance and type of housing for growing cattle: A review of performance and possible relation to neuroendocrine function, Acta Agriculturae Scandinavica. Section A. Animal Science, 43(2): 65-80 (実験概要) スノコ床で飼育した育成牛の飼育密度を変化させたときの D.G を調査した。 (実験結果) 体重 250∼500kg の育成牛の1頭あたりの飼育密度を 4.7 ㎡以下にすると、平均 D.G は低下した。 ・Andersen, H. R., L. R. Jensen, et al. (1997). "Influence of floor space allowance and access sites to feed trough on the production of calves and young bulls and on the carcass and meat quality of young bulls." Acta Agriculturae Scandinavica. Section A, Animal Science 47: 48-56. (実験概要) スノコ床で飼育した育成中の飼育密度を変化させたときの D.G を調査した。 (実験結果) 100∼300kg までのウシの 1 頭あたり飼育面積を 1.4 ㎡、1.7 ㎡、2.5 ㎡と増加させると、D.G が増加した。 同様に 300∼400 kg までのウシの 1 頭あたり飼育面積を 1.8 ㎡、2.2 ㎡、3.1 ㎡と増加させると、D.G が増加 した。 ・Scientific Committee on Animal Health and Animal Welfare (2002). The welfare of cattle kept for beef production., SANCO.C.2/AH/R22/2000. European Commission, Health and Consumer Protection Directorate-General. (実験概要) 1 頭あたりの床面積が異なる場合の横臥行動や闘争行動を調査した研究をまとめた。 (実験結果) 1 頭あたりの飼育面積を狭くすると、横臥時間が減少する傾向にある。 - 14 - ・Leaver, J.D., (1999) In: Ewbank, R., Kim-madslein, F., Hart, C.B. (Eds.), Management and welfare of farm animals, The UFAW Handbook, 4th Edition, Univerities Federation for Animal Welfare, Wheathampstead, pp. 17-47 (総説) ストローヤード(フリーバーン)のベッドエリアは、最低限 1 頭あたり 5 ㎡、通路(飼槽)エリアとして 2 ㎡を追加するとしている。 ・Phillips, C.J.C.,(2001) Principles of Cattle Production Systems. CABI, Wallingford, pp170-216. (総説) ストローヤード(フリーバーン)のベッドエリアは、最低限 1 頭あたり 6 ㎡、通路(飼槽)エリアとして 2 ∼3 ㎡を追加するとしている。 ・J. G. C.J. Somers, K. F., E.N. Noordhuizen-Stassen, J. H. M. Metz (2003). "Prevalence of Claw Disorders in Dutch Dairy Cows Exposed to Several Floor Systems." Journal of Dairy Science 86: 2082-2093. (実験概要) すのこ床、フリーバーン(ストローヤード)、コンクリート床、放牧なしの飼育方式で飼養されている乳牛 の蹄疾患を比較した。 (実験結果) フリーバーン(ストローヤード)の牛が最も蹄疾患が少なかった。 ・Mogensen, L.; Nielsen, L.H.; Hindhede, J.; Soerensen, J.T.; Krohn, C.C (1997) Effect of space allowance in deep bedding systems on resting behaviour, production, and health of dairy heifers. Acta Agriculturae Scandinavica. Section A. Animal Science 47(3):178-186. (実験概要) 1 頭あたりのワラの休息エリアの大きさを 1.8,2.7,3.6 ㎡にした場合の未経産牛の行動や生産性を比較。 (実験結果) 1 頭あたりの休息エリアの面積が広い方が、飼料摂取量が多く、D.G.が高かった。 - 15 -
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