紙袋とポリエチレン袋の製造時エネルギー消費量に関する研究

紙袋とポリエチレン袋の製造時エネルギー消費量に関する研究
-Consumption in manufactured paper bag and polyethylene bag P06068 田島 知佳
指導教員 中口 毅博
1.研究の目的・方法
工程ごとの
印刷 22.07w
温暖化防止のための温室効果ガスの削減が急務であり、
電力消費を
ガセット
16.62w
排出量の大きい製造業での削減対策が不可欠である。特
示したのが
巻替
バックループ製袋
ボトムシール製袋
33.63w
15.23w
11.22w
に、製品の製造において排出量の少ない工程に変えてい
図 3 である。
く必要がある。しかし、製品の工程別や種類ごとのエネ
全体として
梱包(手作業)
ルギー消費の実態はあまり明らかにされていない。そこ
紙よりも大
で本研究ではその事例として包装事業を取り上げ、包装
きいが特に
入庫
製品の製造工程や原材料の使用に伴う CO2 排出量を分析
印 刷 が
図 3 LDPE 袋製造の流れと電力消費量
していくことを目的とする。
22.07w、巻
温暖化対策法の
P社の環境負荷データ
本研究ではまず、 替が 33.63w で多くの電力を消費していることがわかる。
情報開示データ
温暖化対策法で基づ
く排出量届出データ 3.種類別の電力消費量の推計
印刷・包装事業
製造工程ごとの
紙袋を図 2
0
10
20
30
40
50
60
を分析することによ
全体のCO 排出実態
消費電力量やCO 排出量の比較
B-2貼Y
の流れに基づ
り印刷・包装事業全
B-3H貼小
B-3貼H大
いて計算し、
体の実態を把握する。
B-3貼H標1
包装製品種類ごとの
B-3貼H標2
電力消費量やCO 排出量の比較
商品別に 1 袋
B-3貼MFR
次に、P 社における
B-4M貼大
あたりの電力
B-4貼M小
図 1 研究フローチャート
環境負荷データを分
B-4貼M大
H-3H貼小
消費量をまと
析することにより紙袋とポリエチレン袋
(以下 LDPE 袋と
H-3貼H大
H-3貼H標1
めたものが図
H-3貼H標2
する)の製造時における電力消費量を包装製品種類別に
種 H-4M貼大
4 である。図
類 H-4貼M小
推計を行い、製造工程ごとに電力消費量や CO2 排出量を
H-4貼M大
M-3H貼小
中の OF や R
把握する。さらにこれらの原材料の生産時も含めた CO2
M-3貼H大
M-3貼H標1
の末尾につい
排出量を推計する。
M-3貼H標2
M-4M貼大
ている文字は
M-4貼M小
2.工程別の紙袋と LDPE 袋の電力消費
M-4貼M大
製袋機の名称
R-2貼Y
まず、2008 年の P 社の S 工場の製造機械ごとの袋の生
R-3貼MFR
R-4M貼大
である。また
産量・電力消費量のデータから各工程の 1 袋あたりの電
OF-3J標準
OF-4J大
OF とついて
力消費量を計算する。
印刷
印刷PC
電力消費量(w) 年間平均電力消費量(種類別)
いるものは
次に得られた各工程の
2.14w
10.01w
エンボス
OF 製袋でそ
図 4 紙種類別電力消費量
3.22w
1 袋あたりの電力消費
れ以外のもの
シートカット
量から各製品の工程に
0
10
20
30
40
50
60
0.94w
は MF 製袋の
沿って合算することに
ものである。
よって製品別の電力消
普通
MF製袋
OF製袋
図 4 を見ると
費量を計算する。紙袋
1.18~3.81w
7.21~19.94w
特
光沢
OF 製袋のも
MFBP
OFBP
徴
の製造工程をフローチ
1.98w
1.98w
のを除いてあ
入庫
ャートにしたのが図 2
凹凸
まり差が出て
である。図中の数字
図 2 紙袋製造の流れと電力消費量
いない。袋の
年間平均電力消費量
電力消費量(w)
は年間で計算した 1
大きさについ
袋あたりの電力消費量である。 印刷 PC が 10.01w、OF
図 5 表面加工の有無別電力消費量
ても差はあま
製袋が 7.21~19.94w で多くの電力を消費していること
がわかる。LDPE 袋についても紙袋と同様に P 社の O 工場 り出ていなく差は 1w 程度に収まっている。OF 製袋の電
と I 工場の製造機械ごとの袋の生産量・電力消費量のデ 力消費量が多い原因は生産数が少ないことと製袋が他の
ータから各工程の 1 袋あたりの電力消費量を計算する。 ものに対し複雑になっていることが考えられる。
次に紙袋の表面加工の有無ごとに 1 袋あたりの平均を
2
2
2
算出し、まとめたものが図 5 である。図 4 では 1w 程度の
差であったが、図 5 では 8w 以上の差があり、商品の種類
による比較よりも表面加工の有無の方が電力消費量の差
が出ているということがわかる。
0
10
20
30
40
50
60
LDPE 袋を図 3 の
LDPE-1
流れに基づいて計
LDPE-2
算し、商品別に 1
種
LDPE-3
類
袋あたりの電力消
LDPE-4
費量をまとめたも
LDPE-5
のが図 6 である。
電力消費量(w)
年間平均電力消費量(種類別)
巻替工程を含む
図 6 LDPE 袋種類別電力消費量
LDPE-5 の電力消費量
が最も多い。印刷以外の工程で電力消費量の差が出てい
ることがわかる。また、LDPE-4 はガセットとボトムシー
ルを行っているが、
巻替のみを行っている LDPE-5 の方が
電力消費量は多い。 紙袋と LDPE 袋の電力消費量を比較
すると最低でも 5w の差があり LDPE 袋の方が多くなって
おり、より環境負荷の大きい製品であるとわかった。
4.原材料を含む紙袋とポリエチレン袋の CO2 排出量
表 1 紙袋原材料対応表
工程名称
1印刷
1印刷PC
エンボス
シートカット
使用原料名
フレキソインキ
フレキソインキ
なし
なし
製袋原紙
MF製袋-紐なし
酢酸ビニル
製袋原紙
酢酸ビニル
MF製袋-平紐 平紐ハンドル
平紐補強紙
でんぷん糊
製袋原紙
酢酸ビニル
MF製袋-丸紐 丸紐補強紙
でんぷん糊
ホットメルト
製袋原紙
酢酸ビニル
OF製袋-丸紐 丸紐補強紙
でんぷん糊
ホットメルト
梱包クラフト紙
MFBP
PP結束バンド
梱包クラフト紙
OFBP
PP結束バンド
表 2 紙袋原材料原単位
原材料名
製袋原紙MF-B
製袋原紙MF-H
製袋原紙MF-M
製袋原紙MF-R
製袋原紙OF-J標準
製袋原紙OF-J大
平紐ハンドル
平紐補強紙
丸紐補強紙
フレキソインキ
でんぷん糊
酢酸ビニル
ホットメルト
梱包クラフト紙
PP結束バンド
原材料
排出原単位 CO2排出量
使用量
(kg-CO2/kg) (g-CO2/袋)
(g/袋)
48.73
1.271
61.94
38.50
1.271
48.93
60.00
1.271
76.26
45.18
1.271
57.42
58.10
1.271
73.85
69.26
1.271
88.03
4.86
1.271
6.18
1.35
1.271
1.72
4.68
1.271
5.94
1.86
1.068
1.99
0.95
0.186
0.18
1.54
0.804
1.24
3.55
0.804
2.86
1.17
1.271
1.48
0.06
1.766
0.11
表 3 紙袋種類別原材料
表 4
CO2 排出量
年間平均
原材料
CO2排出量
(CO2-g/袋)
MF-B
66.76
MF-H
50.16
MF-M
75.02
MF-R
57.75
OF-J標準
75.24
OF-J大
85.54
種類
種類
LDPE-1
LDPE-2
LDPE-3
LDPE-4
LDPE-5
LDPE 袋原材料原単位
製造方法
重量(g) CO2排出量(g-CO2)
印刷→製袋(バックループ)
31.50
47.80
印刷→製袋(ボトムシール)
40.00
60.70
印刷→ガセット
38.50
58.43
印刷→ガセット→製袋(ボトムシール)
40.00
60.70
印刷→巻替(検査)
35.00
53.11
次に製造だけでなく原材料の生産時も含めたトータル
の CO2 排出量を推計する。紙袋の製造工程における原材
料の対応をまとめたものを表 1 に記す。MF 製袋の特徴は
それぞれ、紐なし(MF-B)
、平紐(MF-H,MF-R)
、丸紐(MF-M)
が対応している。CO2 排出量を原材料使用量(g)×排出原
単位で計算を行ったものが表 2 である。この CO2 排出量
を表 1 の対応関係と製造プロセスに従い製品別に計算を
行ったものが表 3 である。表 3 の MF-M が CO2 排出量が多
いことから形状の違いではなく原紙の使用量の違いによ
り差が出ていると考えられる。LDPE 袋においても同様の
0
20
40
60
80
100
120
計算を行った。
LDPE 袋 の 原
材料は袋本体
のポリエチレ
ンのみで接着
材等は使われ
ていない。ま
た、ポリエチ
レンの排出原
単 位 は
1.518g-CO2/g
である。以上
の条件で計算
を行い、表に
まとめたもの
が表 4 である。
LDPE 袋 は 材
料が同じため
CO2排出量(g-CO /袋)
重さで差が出
年間平均製造時CO2原単位
年間平均原材料CO2原単位
ているという
ことがわかる。
次に各製品
図 7 CO2 原単位(g-CO2/袋)
の製造時における
電力消費量から CO2 排出量を算出した。電力消費量(w/
袋)×排出係数で算出したものが図 7 である。排出係数
は 0.555kg-CO2/kWh とした。紙袋は MF-B や MF-H のよう
な製品の種類によって CO2 排出量が異なっているという
ことがわかる。製造時の CO2 排出量の差はあまりなく原
材料製造時の CO2 排出量の差が大きいので原材料使用量
によって差が出ているとわかった。
紙袋と LDPE 袋の間に
は大きな差はみられない。しかし、製造時の CO2 排出量
が LDPE 袋の方が大きいため原材料使用量の差の分だけ
CO2 排出量が少なくなり紙袋との差が無くなっている。
5.結論
紙袋と LDPE 袋は製造時と原材料製造時のトータルで
の CO2 排出量でみた場合、原材料製造時における CO2 排
出量が多くかなりの割合を占めているということがわか
った。原材料製造時における CO2 排出量は原材料使用量
の多いものが袋単位では排出量が大きくなっているとわ
かった。袋製造時だけの CO2 排出量をみると紙袋より
LDPE 袋の方が大きいが原材料使用量が少ないため紙袋
との差はあまりないということがわかった。
・参考文献
「石油化学製品の LCI データ調査報告書」
.プラスチック
処理促進協会、2009 年
「食品関連材料 CO2 排出係数データベース」.味の素グル
ープ、2000 年
B-2貼Y
B-3H貼小
B-3貼H大
B-3貼H標1
B-3貼H標2
B-3貼MFR
B-4M貼大
B-4貼M小
B-4貼M大
H-3H貼小
H-3貼H大
H-3貼H標1
H-3貼H標2
H-4M貼大
H-4貼M小
H-4貼M大
種
類 M-3H貼小
M-3貼H大
M-3貼H標1
M-3貼H標2
M-4M貼大
M-4貼M小
M-4貼M大
R-2貼Y
R-3貼MFR
R-4M貼大
OF-3J標準
OF-4J大
LDPE-1
LDPE-2
LDPE-3
LDPE-4
LDPE-5
2