4章:事例研究(1):マルセイユ 35

IT ヘルスケア
第 5 巻 1 号,May 23, 2010 : 16 頁
シンポジウム講演3
医療を底上げするためのICTの活用
佐藤
譲
財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院監理部部長
当院は、東京都新宿区から東京都府中市に移転して7年目を迎える。東京都新宿区に
病院があった頃、移転にむけ、数年先の病院像や情報技術等のシナリオを想定し、移
転後の病床規模・建築設計・運用・経営理念・方針等を現場スタッフと伴に固めた。
HISは、経営理念や方針を踏まえ、スタッフ教育や質向上のもと、医療そのものの
レベルアップにつなげるICTツールとして、移転前から独自開発を続けている。当
院 の H I S( 管 理 記 録 )に は 、「 ① 部 門 ご と の シ ス テ ム ( サ ブ シ ス テ ム )は 、す べ て H
I S の な か に 入 れ る ( 画 像 は 非 圧 縮 保 存 )」「 ② 個 人 情 報 は 、 ポ ー タ ビ リ テ ィ ー ・ 匿 名
化 し 、必 要 に 応 じ た 対 応 を 行 う 」「 ③ 個 人 は 、声 、顔 、 指 紋 等 の 複 数 の バ イ オ メ ト リ ッ
ク ス で 認 証 す る 」「 ④ 診 療 報 酬 請 求 を 行 う だ け で は な く 、診 療 遂 行 上 の 人 件 費( タ イ ム
ス タ デ ィ ー )や 材 料 費 な ど の 全 て の コ ス ト を 積 み 上 げ る 」「 ⑤ 患 者 情 報 だ け で な く 、職
員 ・ 来 院 者( 面 会 者 、来 院 者 ) に 関 す る 情 報 も 扱 う 」「 ⑥ 管 理 記 録 の な か の 情 報 を も と
に、医師と看護師で抽出・承認・固定することで電子カルテとなる。電子カルテとな
っ た ら 、電 子 カ ル テ の 修 正 は 追 記 で 対 応 す る 」「 ⑦ 医 師 の 指 示 に 対 す る 指 示 受 け を も と
に、スケジューリングが作成でき、患者への予定開示や職員の勤務管理につなげる。
指示受けでは、医師の指示を遂行するスタッフに対し、指示を出した医師によるスタ
ッ フ 確 認 ・ 承 認 や 、 指 示 の 実 施 確 認 も で き る 」「 ⑧ 患 者 さ ん に 予 定 開 示 を す る こ と で 、
患 者 さ ん か ら 予 定 の 遅 延 な ど を 指 摘 し て も ら い 、患 者 さ ん も 一 緒 に 予 定 を 行 う 」
「⑨管
理 記 録 の 情 報 を も と に 、職 員 に リ マ イ ン ド や ア ラ ー ム 等 で 指 摘 す る 」
「⑩診療に付随す
る 物 流( 材 料・薬 含 )・医 療 機 器 だ け で は な く 、事 務 用 品・備 品 な ど の 情 報 を 扱 う 」
「⑪
デ ー タ は 、旗 を も と に 自 由 に 検 索・抽 出 が で き る 」
「⑫患者や職員のGPS 情報を扱う」
「 ⑬ 入 力 は 、発 生 源・入 力 者 情 報・時 刻 の デ ー タ を も た せ 、時 系 列 の 保 存 が で き る 」
「⑭
評 価( 医 療 、 経 営 、 エ コ 、 地 域 の 健 康 な ど )が で き る 」「 ⑮ 入 力 さ れ た 診 療 情 報 な ど か
ら 、 全 患 者 追 跡 調 査 が 容 易 に 実 行 で き る 」「 ⑯ 病 院 経 営 上 の 情 報 も 扱 う 」「 ⑰ 大 容 量 の
情報を扱うため、プラスティック光ファイバーを活用したネットワーク網の構築」等
の機能を装備させる。ICTツールにもっと多くの機能を装備させれば、医療そのも
ののレベルアップにつながると考えている。しかし、このような医療のためのICT
ツールを開発しても、診療報酬上での請 求ができないため、多額な自己資金を投じて
いる。
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