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特定保健用食品市場における先発優位の有効性

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第45回日本学生経済ゼミナール関東部会
中央大学 インナー大会 提出論文
分科会番号:31−K
5
部門名:マーケティング
テーマ:食品業界におけるブランド構築
サブテーマ:特定保健用食品市場における先発優位の有効性
参加パート名:高崎経済大学 経済学部 経営学科 関根ゼミナール 経営戦略 A 班
代表者:船越谷 尚彦
10
参加者:船越谷 尚彦
袴田 勝雄
池田 真利子
工藤 千広
(参加合計人数:4名)
《目次》
序章
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第1章 商品ブランド
15
1−1 商品ブランドとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1−2 商品ブランドと認める判断基準・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1−3 商品ブランドの定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1−4 食品業界においての商品ブランド構築に必要な要素・・・・・・・・3
第2章 厚生労働省が認定する食品に対するマーク
20
2−1 厚生労働省が認定する食品に対するマークとは・・・・・・・・・・3
2−2 「特定保健用食品」の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2−3 「特定保健用食品」であると認定されることによる商品ブランド構築に対するメ
リット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第3章 先発優位性
25
3−1 先発優位性とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3−2 先発優位の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
3−3 先発優位性の効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
30
第4章
仮説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第5章
事例・仮説検証
5−1 花王 「健康エコナクッキングオイル」
・・・・・・・・・・・・・・9
5−2 「特定保健用食品」を製品につけることによる、エコナブランド構築に当たって
のメリット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
5−3 先発優位の効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
終章
おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
35
参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
参考文献一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
序章 はじめに
序章
近年、情報媒体が発達していなかった一昔前とは時代の流れは変わり、現在は情報化社
会といわれるほど情報媒体が発達した。それにより、私達が日常生活で受け取る情報量は
5
膨大なものになっている。しかし、ただ情報を受け取るだけではなく、必要な情報を取捨
選択しなければならない。このような情報化が進む流れに乗じて、消費者のニーズも多様
化してきている。全ての人が同じものを要求する時代ではなくて、100 人の人がいたとし
たら 100 通りの考えがある時代へと変化してきた。また、現在は「いいものを安く」とい
う日本型ビジネスモデルから、
「他にはないものを適切価格で」という新たなビジネスモデ
10
ルへの転換が進んでいる。つまり消費者は、価格が高くてもそれに見合った付加価値がつ
いている商品を求めるようになってきたのである。そして企業も成功を収めるためには、
消費者のニーズを汲み取る能力が必要になる。
特に注目すべきなのは、ここ数年続いている「健康ブーム」である。そのため以前より
も、健康に対する意識は高まり、自身の健康に気を遣う消費者は確実に増加している。そ
15
れに消費者の健康商品に対する期待も高まり、市場拡大も見込める。各地のスーパーマー
ケット・ドラッグストアなどには、
「健康に良い」といわれる商品が溢れている。特に機能
が類似した商品の間での競争が激しくなっている。その状況の中で消費者に商品を選んで
もらい、競争に勝ち抜いていくためには、何が必要とされるだろうか。消費者に安心感を
与えるもの、つまり「ブランド」が必要になる。ブランドの種類はたくさんあるが、その
20
中でも重要なのは「企業ブランド」と「商品ブランド」である。その二つの中でも特に「商
品ブランド」に注目したい。なぜなら、消費者は企業ブランドだけで製品を選ぶのではな
くて、製品そのものを見て購入する傾向が目立ってきているからだ。その上、商品ブラン
ド名を前面に押し出すことで、既に作られた企業ブランドのイメージを変えることもでき
るなど、
「商品ブランド」は新たな可能性を秘めているといえる。
25
本論文では食品業界に着目し、商品ブランドの定義、そして商品ブランドを構築するた
めには何が必要かを述べていく。
第1章 商品ブランド
30
2
1−1 商品ブランドとは
今までは大企業が市場を支配していて、消費者が他の企業の商品と比べる機会が少なか
った。結果的にナンバーワン企業がブランドを確立していたため、消費者はその商品を買
5
わざるをえなかった。つまり、消費者は商品を購入する際に企業ブランドを尺度としてい
たため選択肢が狭かった。しかし、現代社会では消費者は情報というものを無限大に手に
入れられることが出来るようになったため、消費者に選択肢というものが無限大に広がっ
た。そのため、大企業ブランド以外の尺度で商品を選ぶことが可能となった。そこで、消
費者が商品を選択する尺度として重要視したのが商品ブランドである。
10
商品ブランドは、現代の消費者が商品の複雑化・多様化による選択の困難性をカバーする
ために選択の基準を求める尺度として存在している。(注①) つまり、商品ブランドとは、
消費者がその商品を買うことによってその商品は自分たちを裏切らないという安心感を持
てたときに確立されるものである。
15
1−2 商品ブランドと認める判断基準
商品を商品ブランドとして判断する時の基準は大きく四つに分けられる。まず第一段階
に、消費者がそのブランドをまったく知らないという不認知、次に第二段階として、その
ブランドを知っているというブランド認知、また第三段階では、他のブランドに比べたと
20
きそのブランドを好んで選ぶブランド選好、最後に第四段階は、そのブランドに対して特
別のこだわりを持っているブランド固執である。(注②)
商品ブランドとは消費者に安心感を持たせたときに生まれるものである。つまり、消費
者に特定のブランドであると認知してもらい他社よりも安心感を持たせた場合であり、ま
た逆に言えばその商品ブランドが他の商品ブランドに比べて安心感がなくなった場合には
25
商品ブランドが成り立たなくなる。よって、第三段階から商品ブランドというものが確立
される。
1−3 商品ブランドの定義
30
『商品を購入する際に現代の消費者が商品に対する信頼感を他社の商品よりも得ることが
3
出来たときに確立されるもの』
1−4 食品業界においての商品ブランド構築に必要な要素
5
商品ブランドを確立するには、消費者に商品を信頼してもらうことが重要である。そこ
で、特に食品業界のブランド構築に的を絞りその業界においてのブランド構築に必要な要
素を調べていく。まず、食品とは体内にいれるものであるから、安全性という面で信頼感
が必須となってくる。以上のことをまとめると、食品業界における商品ブランド構築には
消費者に商品が安全であると信頼させることが必要である。そこで、その条件を満たすた
10
めに必要な具体的要素としてその商品を買うときに一目でわかる安心感の代名詞である国
家認定マークが上げられる。以下の章で、厚生労働省についての詳細を述べていく。
第2章 厚生労働省が認定する食品に対するマーク
15
2−1
厚生労働省が認定する食品に対するマークとは
現在、厚生労働省が認定する食品に対するマークは大きく分けて保健機能食品(マーク
①)と、特別用途食品(マーク②)の二つが存在する。
20
国民生活において、消費者自らにより健やかで心豊かな生活を送るためには、バランス
の取れた食生活が重要である。また今日では消費者個々人の食生活が多様化し、その上多
種多様な食品が流通している。その食品の特性を十分に理解し、消費者自らが正しい判断
によりその食品を選択し、適切な摂取に努めることが重要である。そのためには、消費者
が安心して、食生活の状況に応じた食品の選択ができるよう、適切な情報提供が行われる
25
ことが不可欠である。しかし、私たち消費者の周りには、栄養補助食品や健康補助食品あ
るいはサプリメントと称して様々な商品が市場に出回っている。それらの中で商品の選択
に当たって何を基準にして購入しているだろうか。ブランド、企業名、宣伝コピー、これ
らの基準から選んで商品を購入したとしても、商品の中身である有用成分や栄養成分がき
ちんと表示通り含まれているのか。
また、
商品の安全性は誰が保証しているのであろうか。
30
という疑問を解決する目的と、一定の規格基準、表示基準等を定めることにより消費者に
4
対して正しい情報の提供を行い、消費者が自らの判断に基づき食品の選択をすることがで
きるようにすることを目的として保健機能食品制度が作られた。保健機能食品制度は、食
品衛生法及び健康増進法に根拠を持ち、個別に厚生労働大臣が表示許可をする「特定保健
用食品」及び規格基準を満たすものであれば個別に許可を受けることなく表示を行うこと
5
のできる「栄養機能食品」の2種類からなる。さらに、平成 17 年2月「健康食品」に係る
制度の見直しが行われた。その結果「特定保健用食品」のうち、現行の「特定保健用食品」
の許可の際に必要とされる科学的根拠のレベルには届かないが、一定の有効性が確認され
る食品については、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として許可対象
となった「条件付き特定保健用食品」には、新たに定められた(マーク③)の「条件付き
10
特定保健用食品」の許可証票を付けることが可能となる。次に高血圧症や腎臓疾患の方の
ためにナトリウムを低減させたり、たんぱく質の制限を必要とする腎臓疾患の方のために
たんぱく質を低減させた食品および乳児用、妊産婦用、高齢者用など特別の用途に適する
という表示を厚生労働大臣が許可した食品を「特別用途食品」と言う。
(注③)上で述べた
ように厚生労働省が認定する食品に対するマークは認定基準によって多数存在するが、本
15
論文では、それらの中で特に最近、めまぐるしい市場の拡大を果たし、数多くの商品ブラ
ンドを抱える「特定保健用食品」に焦点をあて論じていく。
(マーク①)
(マーク②)
(マーク③)
20
2−2
「特定保健用食品」の定義
今回の論文を書くに当たっての特定保健用食品の定義は「特別用途食品のうち、食生活
において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待
25
できる旨の表示をするもの。」とする。(注④)
5
2−3
「特定保健用食品」であると認定されることによる商品ブランド構築に対す
るメリット
「特定保健用食品」として厚生労働省の認可を得る事である程度の効能効果を表示するこ
5
とが可能となる。また、
「特定保健用食品」に認定された商品にしか表示する事のできない
マークを商品に表示することも可能となる。それに加え、
(財)日本健康・栄養食品協会が
2年毎に実施している調査(図①)によると、2003 年度特定保健用食品の市場規模は
5,668.8 億円(メーカー希望小売価格ベース)となっている。この金額は 2003 年 12 月時
点で「特定保健用食品」である商品を持つメーカーが年度として推測した金額の集計であ
10
る。2001 年度に当協会が同様に調査した結果(4120.6 億円)に比し、37.6%(1,548.2 億
円)拡大した。このように国民の健康志向を追い風に「特定保健用食品」の市場規模は毎
年拡大し続けている。この事からも考えられるように近年、健康志向の高まり、食品の機
能性に関心が集まっている。こうした消費者のニーズに対して「特定保健用食品」である
と認定されることにより、同じ原材料であっても「特定保健用食品」として厚生労働省の
15
認可を得る事である程度の効能効果を表示することができ、しかも厚生労働省の「お墨付
き」が 得られるため、消費者や取扱い業者等に「特定保健用食品」としての信頼性を強く
アピールする事ができ、他社商品との明確な差別化が計れることが商品ブランド構築に対
するメリットである。それに加え、「特定保健用食品」市場でより優位に商品ブランド構
築を行い、競争に勝ち抜いていくためには、消費者の潜在的なニーズを敏感に汲み取り、
20
商品化し「特定保健用食品」に認定され、新規市場などに投入し「特定保健用食品」であ
るということと共に先発優位性を用いて商品ブランド構築をする方法がより有効である。
消費者の潜在的なニーズをしっかり汲み取り、今までに欲しかったが商品化されていなか
った「特定保健用食品」に認定された商品を開発し新市場に投入することにより、先発優
位性と「特定保健用食品」に認定された事による信頼によりシナジー効果が期待できる。
25
以上のことから次章では、
「特定保健用食品」と先発優位性についての関係性を詳しく述べ
ていきたい。
6
(注⑤)
5
第3章 先発優位性
3−1 先発優位性とは
10
企業側が、
消費者の多様化するニーズに応えられるような他企業にはない商品開発をし、
市場に参入する際に、一番手として参入するメリットは、その企業にとって大きいと考え
られる。このことを先発優位と呼ぶ。この章では先発優位について述べていく。
ここで、企業が新商品を開発する理由はさまざまである。その理由として、①技術革新に
より、今まで満たすことのできなかった消費者のニーズを満たすことができるようになっ
15
た。②消費者の好みが変化・多様化し、既存の商品では消費者を満足させることができな
くなった。③差別化された商品でライバルに差をつける。④逆に、ライバルしか持ってい
ない商品と同様の商品を開発し、ライバルとの差を縮める、などがある。成功した新商品
は、企業にもたらすものとして、まず新商品によって、ライバルと差別化し、ライバルに
はない商品を持てば、売り上げと利益を伸ばすことが可能となること、また、新商品が成
20
功することによって、企業のモラールが向上し、組織の活性化にもつながる、ということ
7
がある。
(注⑥)Fortune 誌(1994)の「いかに価格競争から逃れられるか」という記事
では、商品の革新を価格競争から逃れる主な理由に挙げている。
(注⑦)これは、デフレに
悩む日本企業にとっても、新商品開発の重要な動機である。新商品が企業にもたらすもの
は、一時的なものだけではないのである。
5
3−2 先発優位の定義
ライズ=ライズは先発優位性が注目される理由として、先発優位性が強いブランドを作
る最も効果的な方法とし、また強いブランドをつくる方法は、先発ブランドであることを
10
強調し、商品カテゴリーをプロモーションの対象にすることであるとしている。
(注⑧)さ
らに、ライズとトラウト(1994)は、
「一番手となることは、ベターであることに優る」
と主張している。成功するのは、
「最も良い商品」ではなく、
「顧客の心に最初に入り込ん
だブランド」であることを、様々な事例によって説明している。例えば、リンドバーグの
次に大西洋を単独横断した人、ハーバード大学の次に設立された大学などは、どちらも知
15
名度の点で先発者よりもはるかに劣っている。
(注⑨)その中で、先発者として人々の心を
捉えることが重要であり、イメージ、名声、ブランドロイヤリティなどが得られるので、
先発になることがブランドを構築する近道であるとした。
ここで、本論文では「基礎的な技術を製品化した企業」を先発者として定義し、
(注⑩)先
発優位性を、
「市場に最初に参入し成功した新商品が、ライバルが同様の商品を開発し、市
20
場に参入してきたとしても、売り上げ、利益の優位性を維持し続けること」と定義する。
3−3 先発優位性の効果
これまで述べてきたとおり、先発優位性には①先に市場に参入することによって、技術
25
上のリーダーシップをとれること(経験効果によるコストの低減)
(注⑪)
、②切り替えコ
スト(先発の商品から後発に切り替えるときに、商品価格の他に消費者にかかる物理的・
心理的コスト)の発生(注⑫)
、③流通チャネル、小売店といった限りのある資源の先取り
(注⑬)
、④商品の規格・イメージの決定権、⑤消費者の生の声を最初に汲み取ることがで
き、その声を元に後発が参入しても市場での優位性を保てるような製品改良をすること、
30
以上のことがメリットとして考えられる。これらのメリットは商品ブランド構築に必要な
8
要素であるといえる。
ただし、これは食品業界において、全て該当するわけではないのである。市場に投入され
た新商品の成功率は、食品業界を除けば約 55%程度であるのが実際であり、変動の激しい
食品業界の場合はこれより低いのが、アンケートによって明らかになっている。
(注⑭)し
5
かし、消費者の潜在的ニーズを汲み取り、商品化したものに関しては、注目を集め、大き
な反響を呼ぶものと考えられる。これまでになかった商品であるがゆえに、それに対する
期待も大きいといえる。だが、前述したアンケートによる調査の結果には消費者の不安な
側面が表れているといえる。商品化を待ち望まれた商品が発売されたとして、果たして消
費者は発売してすぐに購入するだろうか。
「試してみたい」
「使ってみたい」という消費者
10
もいれば、
「体に入れるものだから不安」と感じる消費者もいると考えられる。つまり、
「体
に悪い影響はない」ことが認められればいいのである。また、食品業界は前述したとおり、
変動が激しく、
失敗するリスクもあるため市場の先発として参入するには敬遠されてきた。
失敗するリスクが存在したため、他社が着目しなかった業界、ともいえる。しかし、
「一般
的に着目されない市場に参入することで、消費者の興味を惹くことも可能」であり、その
15
分競合が少ないので、前述した先発優位のメリットの①,④,⑤が、先発優位の理論に当
てはまるのである。よって、自社商品に有利にブランドを構築できるのである。不利だと
言われ,敬遠されてきた食品業界において、消費者からの安心・信頼を得られる国の認定
マークを組み合わせることで、厚生労働省が認定する「特定保健用食品」の認可を受けた
ことによる「お墨付き」が得られるため、消費者の新しいカテゴリーの商品(先発品)を
20
安全性などの観点から敬遠されることを取り除くことが可能となる。先発優位性の効果と
いう点で、シナジー効果により他業界と同じメリットを享受できるのだ。また、これによ
り消費者の購入意欲もプラスに作用される。不利だったものにプラスアルファの力が働く
ことで、市場での優位性も高まり、このことが強い商品ブランド構築へとつながっていく
のである
25
第4章 仮説
「近年の健康ブームにより、消費者の健康志向度が年々高まっている。その流れを受け
30
て食品業界は競争が激化している。その中におけるブランド構築では、消費者の健康ニー
9
ズに応えるため、そして消費者に信頼と安心感を与えるために、特定保健用食品の認可を
受けることがまず必要である。そして特定保健用食品に限定した市場で勝ち抜いていくた
めには、消費者のニーズを汲み取った商品を開発し、先発優位性を生かすことが有効であ
る。
」
5
第5章 事例・検証
5−1 花王「健康エコナ クッキングオイル」
10
二・三章で特定保健用食品、先発優位性について述べたが、それに当てはまる事例とし
て、花王から発売されている「健康エコナクッキングオイル」があげられる。花王はそれ
以前にも「エコナクッキングオイル」という名前の食用油を開発し、家庭用食用油の分野
に進出したが、大変な苦戦を強いられた。その苦境を突破したのが、1999 年に発売された
15
「健康エコナクッキングオイル」である。これは従来の食用油とは全く違う画期的なコン
セプトで作られたものである。商品の特徴として、
「体に脂肪がつきにくい」
、
「コレステロ
ールを下げる」
、
「胃もたれしにくい」という側面が挙げられ、健康に不安をかかえる消費
者のニーズをしっかりと汲み上げている。そして発売の翌年には、厚生労働省から食用油
で初の特定保健用食品の認可を受けた。今では食用油だけではなく、ドレッシング、マヨ
20
ネーズと製品の種類も増えている。2004 年の時点では、これら「エコナ」グループの販売
高は 300 億円に迫るとみられていた。そして、エコナは新市場においてライバルとなる専
業の食油メーカーがあわてて類似品を出して追随する程の一大ブランドと成長した。次か
らはこの「エコナ」がブランドとして確立される際に有効であったと考えられる、特定保
健用食品と先発優位性について検証していく。
25
5−2
「特定保健用食品」を製品に付ける事による、エコナブランド構築に当たって
のメリット
メリットとして二つの点が上げることができる。一つ目は、先にも述べたように、特定
30
保健用食品として厚生労働省の認可を得ることにより厚生労働省の「お墨付き」が得られ
10
るため、消費者や取扱い業者等に特定保健用食品としての信頼性を強くアピールする事が
でき、他社商品との明確な差別化が図れる。二つ目のメリットとして現在、生活習慣病が
増加傾向にあるため、食事に関しては規則正しい食生活が大切で、油の摂取が過剰になる
ことは避けるべきなのである。しかし、慣れ親しんだ食生活を変えるのは、実際には容易
5
なことではない。そこで、
「油の摂取量」だけでなく、
「油の質」を変えることで食生活の
改善に役立ちたいと考えて開発されたのが、
「エコナ クッキングオイル」だ。これは、ま
さに現在の消費者のニーズ(健康にはなりたいが、油ものも今までどおり食べたい)に見
事に応えたのである。また、健康志向の高まり、食品の機能性に関心が集まっていて、こ
うした消費者ニーズを掴むこともできる。特定保健用食品の中で、中性・体脂肪に関する
10
分野での売り上げが、99年度70億円、01年度154億円(99年度比217,7%)
、
03年度635,4億円(01年度比416,9%)
(注⑮)と年々売り上げ高が伸び続け、
市場も拡大し続けている。このことからも、消費者のニーズの高さが伺える、これらの高
まるニーズに的確に応えているということを、特定保健用食品として厚生労働省の認可を
得ることにより効能効果を表示することができるので製品の良さが消費者に的確にそして、
15
わかりやすく示すことができることがメリットである。
5−3 先発優位の効果
エコナは前回の失敗から、家庭用食用油の市場ではなく、健康系食用油という新規市場
20
を開拓し、市場の先発者としてエコナという製品ブランドを立ち上げるのに成功した。健
康志向の考え方が消費者間で広く浸透している現在、これまでは、
「油は肥満のもと」とい
う考えが一般的であり、健康面から見て、油は避けられていたものだった。しかしその固
定概念を覆し、油脂食品市場に「ヘルシーオイル」という新市場を開拓し成功したのがエ
コナだった。これは、
「こんな製品があればいいのに」という消費者のなかにあった潜在的
25
ニーズと、健康志向の流れをいち早くつかみ、前回の失敗とこれまで培ってきた経営資源
を駆使し、改良に改良を重ねた結果であったのである。それにより健康油市場の先発者と
しての確固たる地位を築き上げた。製品の性能・効果が多くの消費者に認められたこと、
また、これまでにはなかった商品であったため、消費者の中でも話題となり、多くの情報
媒体、口コミなど様々なメディアを通してどんどん広まっていった。三章で述べた通り、
30
エコナは市場の先発として「安心して、健康に気を遣いながら油を使った料理が食べられ
11
る」ということで消費者の心をつかみ、製品イメージ、ブランドロイヤリティなどの面で
「顧客の心に最初に入り込んだブランド」であることがわかる。また、そこに「特定保健
用食品」による国からの「お墨付き」である認定マークが付随されることで、消費者から
の信頼が得られるのである。
「特定保健用食品」という後押しによって、エコナは信頼性と
5
いう面でも「ヘルシーオイル」市場においてトップシェアを築くことに成功した。まさに
エコナは国からの認定である「特定保健用食品」ということと先発優位性によって、スピ
ーディーかつ確実に強い「エコナブランド」を確立していったといえる。
10
終章 おわりに
食品業界において、先発優位性はあまり有効ではない、すなわち不利であると言われて
いる。しかし特定保健用食品のように国で定められた基準を満たすことにより、消費者に
安心感を与えることができる。そこでいち早く消費者が待ち望んでいた新たな市場を作る
15
と、前章で述べた事例からもわかるように、不利であったはずの先発優位性が特定保健用
食品を用いることで逆に有利に働くようになる。先発優位性、特定保健用食品との二つが
組み合わされることで、それぞれのメリットがシナジー効果を生み出し、商品ブランドの
構築につながるのである。
本論文では食品業界と健康食品に焦点を当てた。そこで仮説で述べたようなことが他業
20
界にも活用できないだろうか。消費者からの関心が高い業界ならば、新市場が誕生しやす
いので、その可能性は高くなる。事例のように、消費者の潜在的なニーズを汲み取るとい
うことは、ブランド構築においてその出発点となるものであるし、どの業界にも共通する
ものである。もし条件を満たす商品が現れたら、また新たなブランドができることも十分
考えられる。
25
ここまで商品ブランドを構築する方法について述べてきたが、商品ブランド構築をもっ
と素早くするものはないのだろうか。なぜならブランドを早く確立させることで、他社と
の競争においても常に有利な状況に立つことができるからだ。そこで登場するのがインタ
ーネット・口コミ等の情報媒体である。ブランドの知名度もブランド構築の重要な要素で
あるため、これらの情報媒体を知名度を広げる手段として使うことで、商品がブランドと
30
して認められるまでの時間を短縮することができる。
12
これからの時代は、消費者が本当に必要としていたものが売れ続け、勝ち残っていく時代
である。
時代の流れが急速である分、
当然のように消費者のニーズも変わっていくだろう。
たとえ先発優位と特定保健用食品を生かして商品ブランドを確立したとしても、商品に何
も改良を加えなかったりすると、すぐに追随してきた後発の他社に追い抜かれてしまう。
5
それだけ消費者のニーズを商品に反映させることは重要なのだ。今後のブランド構築は、
消費者のニーズの動向を先読みする能力が必要となるし、またインターネットなどの情報
媒体を上手く駆使することが鍵となっていくであろう。
(40 文字×321 行)
10
注①:二神恭一 『ビジネス・経営学辞典』中央経済社 1997 年 P.473
注②:二神恭一 『ビジネス・経営学辞典』中央経済社 1997 年 P.473
注③:厚生労働省
15
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkiou/1a-1.html
注④:厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/0102/tp0221-2.html
注⑤:(財)日本健康・栄養食品協会
http://www.jhnfa.org/t61-1.pdf
20
注⑥:青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣
アルマ 2004 年 P.36
注⑦:青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣
アルマ 2004 年 P.36
Fortune 誌(Serwer,A.[1994], “How to Escape a Price War ,”Fortune,June 13,)
25
注⑧:青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣
アルマ 2004 年 P.38
注⑨:山田英夫・遠藤真『先発優位・後発優位の競争戦略―市場トップを勝ち取る条件―』
生産性出版 1998 年 P.19
注⑩:山田英夫・遠藤真『先発優位・後発優位の競争戦略―市場トップを勝ち取る条件―』
30
生産性出版 1998 年 P.12
13
注⑪:青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣
アルマ 2004 年 P.36
注⑫:青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣
アルマ 2004 年 P.36
5
注⑬:青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣
アルマ 2004 年 P.36
注⑭:青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣
アルマ 2004 年 P.36
注⑮:富士経済
10
http://www.fuji-keizai.co.jp/
【参考文献】
井原久光 『テキスト経営学』ミネルヴァ書房 2000 年
15
二神恭一 『ビジネス・経営学辞典』中央経済社 1997 年
小川孔輔 『よくわかるブランド戦略』日本実業出版社 2001 年
デイヴィッド・F・ダレッサンドロ
『ブランド戦国時代 キラーブランド構築の10の
鉄則』早川書房 2001 年
山田泰造 『花王 流通コラボレーション戦略』ダイヤモンド社 2001 年
20
平林千春・廣川州伸『花王 強さの秘密』実業之日本社 2004 年
青木幸弘・恩蔵直人『製品・ブランド戦略 現代のマーケティング戦略1』有斐閣アルマ
2004 年
山田英夫・遠藤真『先発優位・後発優位の競争戦略―市場トップを勝ち取る条件―』生産
性出版 1998 年
25
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