森田療法入門 - 集談会と私 2012/12/16 宮崎 1 目次 森田療法 1. 森田療法とは 2. 神経症とは 3. 神経症の種類 4. 神経症になる心のメカニズム 5. 思想の矛盾 「かくあるべき」と「かくある」自分の葛藤 6. 相互作用(とらわれ)→悪循環 7. 森田療法の目指すこと 8. 治療のゴールは「あるがまま」の自分 体験談 1. 自己紹介 2. 集談会に来る前の状況 3. 集談会に来る前の対処方法 4. 集談会に参加して 5. 考え方の変化 2 森田療法 3 森田療法 森田療法は1919年(大正8年)に、森田 正馬(もりた まさた け)により創始された神経症に対する精神療法。 パニック、社会恐怖、強迫性障害が主な治療対象。 なるべく、薬物に頼らない治療をする。 森田 正馬 4 神経症 • 「神経症」とは、心理面からくる障害で、軽度のパニック障 害や強迫性障害などの総称 • 生まれ持った素質に加え、あることにとらわれることによっ て起こってくるもの。 5 神経症の種類 • 普通神経症 正常に機能している心身のわずかな不快感を病的だと思 い、注意を集中して症状が固定化したものです。 (不眠・頭痛・頭重・めまい・耳鳴り・胃腸神経症 など) • 脅迫神経症 あることに恐怖しながら、半面、その恐怖を打ち消そう として葛藤が生じるものです。 (対人恐怖症・赤面恐怖症・不潔恐怖症・疾病恐怖症・外 出恐怖症 など) • 不安神経症 急激におこってくる不安発作(パニック発作)を主症状 とし、救急車を呼ぶなど大騒ぎをすることがあります。 発作中は心悸亢進・頻脈・呼吸困難・めまい・ふるえな どの症状をともないます。 (心臓神経症、乗り物恐怖症等・閉所恐怖 など) 6 神経症になる心のメカニズム • 思想の矛盾 思想・理想と事実との食い違い。 自分が「こうありたい」という自分の考え(かくあるべし)と、そうでな いことの食い違いからくるもの。 • 精神相互作業 注意を集中すれば、その感覚が鋭敏になっていく。 気にしないようにしようと思えば思うほど、かえって感覚・恐怖が大き くなってしまう。 神経質の性格特徴 内向性:理知的、意識的であり、非常に真面目。 心配性:繊細で、感受性が強く、傷つきやすい。 執着性:物事にこだわる傾向 完全欲:完全主義者で、完全でなければ失敗としてします。(ゼロか100か) 7 思想の矛盾 「かくあるべき」と「かくある」自分の葛藤 「こうありたい」という理想の自分と等身大の「かくある」 自分の食い違いに悩む 仕事ができる 誰からも好感 を持たれる 理想と現実の差 葛藤 失敗しない 万能・完璧 理想の自分 ■ 対応: こだわりすぎず、60点主義で生活する。 100点でなければ、0点と考えず、60点で良しとする 完璧を求めても、自分も周囲も息苦しいだけ。 自分の感情を自分なり受け止める 現実の自分 8 精神交互作用(とらわれ)→悪循環 不安や緊張などの感覚に注意すれば、その感覚を感じないよう と意識すればするほど、その感覚がますます大きくなっていく こと。 緊張や不安、 失敗に注意を向ける 意識しすぎることで、ま すます人前での失敗をお それ、不安が高まる。 悪循環 自分を責める うまくいかないのは、自 分がダメだからと考え、 ますます失敗が怖くなる 悩み どうにかしようとあがき 悩みを深めていく ■ 対応: 現在の自分をあるがままに受け入れる。 感情への注意集中を中止:症状のあるなしにこだわらずに目的本位に生活を送る 行動・目的本位:気分を受け入れて、目的達成のために行動 恐怖突入:不安や恐怖を回避しようとせず、むしろ進んで体験するようにする 9 森田療法の目指すこと あるがまま(自然服従) • 自分自身の姿や状態を、そのまま認めること。 • 自分のどんな感情もそのまま感じ、受け入れること。 • 「こうでなくては」「こうあるべきだ」という思い込みから抜けてだし 、ありのままの自分を受け入れられるようになること • 気分や感情にとらわれず、今自分がやるべき事を実行していく、目的本 意の姿勢 純な心 • 理屈や判断が入りこまないそのままの感情 • 喜び、悲しみ、不安、恐怖、と様々な感情。 • 心地よい感情だけでなく、嫌悪感や不快な気持ちも含めて、否定せず、 自然と受け止めるようにする。 10 治療のゴールは「あるがままの自分」 「こうあるべき」とういう思い込みから抜け出し、ありのまま の自分を受け入れられるようになる。複雑な精神の葛藤をおこ した症状をただ単純な不安にすることが治療の目的。 あるがまま 不安はあるが目の前の やることをやっていこう 緊張するけど 話せることは話そう 目的本位 うまく話せないが、内容が 伝われば良いので、話そう 人と比べて落ち込んでもしょうがない ので、自分のやれることをやろう 治療 とらわれによる悪循環を脱して、今の自分を活かしつつ、新しい生き方をする。 11 体験談 12 自己紹介 名前:宮崎 智(みやざき さとし) 年齢:28歳 職業:コンピュータソフト開発会社勤務6年 集談会歴:3年 集談会 入会の同期 仕事がうまくいかず、軽くうつ状態 心療内科に行ったが効果がなく、状態が悪化していたので 治したかった 人と話すのが苦手で、克服したいと思った。 特に悪い話の時は、頭が真っ白になり縮こまって、何もい えなくなってしまう。 13 集談会に来る前の状況 • 社会人となって、学生時代と違い、自分が失敗するとお客様と会社に迷惑が かかるという責任の重さに気が滅入る。 • 失敗すると長々と落ち込んでしまう。 • 仕事での失敗は自分の責任なので、周りに迷惑かけてしまわないよう何とか 自分の力で解決しようとして、独断で話を進めてしまい泥沼状態になってし まうことが多い。 • 人と話すのにできるだけうまく話そうとするが、考えがまとまらず結局何も 話せない。 • 新しく入社して来た後輩が、自分より仕事ができたり、話したりすると劣等 感を感じる。 • 人からアドバイスを受けて良いと思っても、自分にはできないと思ってしま う。 • 仕事をする度に怒られ、何のために仕事しているのか。怒られるために頑 張っているのかと思えてきた。 迷惑をかけてつらい。 自分はダメだ。 完全欲 かくあるべき 思考の矛盾 良くなりたいという気持ちが段々「今の自分は全てダメだから、変わらなければお終い だ。」という自己の否定になってしまった。 14 集談会に来る前の対処 仕事で失敗する。注意される。 ↓ 気分が沈む ↓ 心療内科に通院 ↓ 10分程度の診察で薬を渡される ↓ 薬を飲む ↓ 仕事中に眠い 1ヶ月で 4回繰り返して 状態が悪化 結果: 元々、不眠症ではなく、むしろ思いつめて疲労がたまりやすくなっていたところ に、薬を服用したことで、夜も仕事中も眠くなり、1日中眠くて意識が保てず、 仕事は失敗が増え、寝ても疲れがとれない。 15 集談会に参加して • 森田療法を勉強 集談会に参加 本を購入して読む • ひがメンタルクリニックに通う http://www.higamental-cl.jp/ 4ヶ月間 月3~4回 土曜日 薬を使用しないカウンセリング カウンセリング後クリニック内 で行われている 「森田をともに学ぶ会」に参加 16 経過 森田療法を勉強 内容は理解できるが、気持ちは直ぐには切り替われなかった ↓ 集談会に参加を続ける ↓ 森田療法を実践 このままではつらいだけなので、やれることをしようと考え た ↓ 仕事中、カタログ・POP作成で褒められた ↓ カタログ・POP作成の技術を勉強 ↓ 仕事でカタログ・POP作成を任せられるようになり、会社 に貢献していると実感できるようになった。 ↓ 気持ちが晴れ、森田療法の考え方を自分なりに取り入れられ るようになった。 ↓ 森田療法を勉強、集談会への参加は継続中 3ヶ月 6ヶ月 1年 2年 3年 17 結果:考え方の変化 あるがままを受け入れる • 失敗すると長々と落ち込む。 • 自分が落ち込んでも誰も得しないので、 意味はない。 • 仕事での失敗は、周りに迷惑がかからな いよう自力で解決する。 • 仕事を勝手に進めると、余計迷惑がかか るので、相談したほうが良い • 話すのが苦手だが、人との話はできるだ けうまく話そうとする。 • 苦手なのは変わらないが、相手もうまい 話を期待しているわけではないので、必 要なことがしっかり伝えられれば文書な どでも良い。 • 人と比べて劣等感を感じる。 • 人は人。自分にできることをして貢献す る。 • 人からアドバイスを受けても、自分には できないと思ってしまう。 • すぐに全部はできなくても、できるとこ ろから取り入れていく。 • 気にするなと言われてもきになる • 気になるのは当然。 結果: 苦手なことは変わらないが、気持ちの持ち方が変わり、とらわれることが少なくな ると、状況が好転していった。 18 参考文献 森田療法のすべてがわかる本 (北西 憲二) 森田理論学習の要点 新版 (生活の発見会) 流れと動きの森田療法 (岩田 真理) 日本人に合った「こころの健康法」 (和田秀樹) 19
© Copyright 2024 Paperzz