Being Faust – Enter Mephisto

ご挨拶
シュテファン・ドライヤー
(ゲーテ・インスティトゥート韓国所長/東アジア地域代表)
『Being Faust - Enter Mephisto 』は、従 来のよう
とは何か。自分の価値基準とはどのようにして決
な形での文化紹介と、東アジアのゲームカルチャー
まるのか。成功の代 償として何を支払うのだろう
の間を繋ぐインターフェースを模索していく中で
か?」
誕生しました。ゲーテ・インスティトゥート(ドイツ
『Being Faust - Enter Mephisto 』は独特なゲーム
文化センター)は、ピーター・リーと NOLGONG がそ
形式を持っています。ある決まった場所と決まった
れまでに製作してきた、いわゆる「シリアス・ゲー
時間に集合した参加者に、それぞれ若きファウスト
ム」という種類の、つまり遊びを通して学べるゲー
の役になりきっていただきます。ファウストである
ムがふさわしいと考えました。
参加者は命を賭ける意思を持ち、刺激的なヴァー
そこでドイツの重要なドラマトゥルクの一人で、
チャルショップ MEPHISTO&co へとスマートフォン
『ファウスト』についても造詣の深いベンヤミン・
でアクセスします。MEPHISTO&co ではさまざまな
フォン・ブロムベルクの協力のもと、3 年がかりで
「価値」や「理想」が商品=『ファウスト』からの引用
この「ビッグ・ゲーム」を完成させました。このゲー
文として提供されています。
「ログイン」によって、
ムはパフォーマンス要素を強く持っており、使用す
ファウストたちと MEPHISTO&co の契約が成立、誘
るインスターレーションは、ゲームが開催されるそ
惑のゲームのスタートです。参加者はいったいどこ
れぞれの国や地域、開催場所に合わせて設置でき、
までリスクを冒す心構えが出来ているでしょうか。
ゲームに参加したいと思う人であれば誰でも参加
成 功 や 美は「 購 入 」す ることが できるのでしょう
が可能です。ゲーテの『ファウスト』をすでに知っ
か? 平凡だけれども穏やかな日常に戻る道はあ
ている人にも、それともこのゲームで初めて『ファ
るのでしょうか、それとも真実の愛と友情を手にす
ウスト』に 触 れ る人にも、お 楽しみい ただけるで
ることができるのでしょうか?
しょう。
これまでさまざまな国と地域で開催されてきた
この革新的なプロジェクトの出発点となったの
『Being Faust - Enter Mephisto 』を今回フェスティ
は、
「ファウストとメフィストが、現代のデジタル
バル /トーキョーにご招待いただき、心よりお礼申
社会で出会ったらどうなるのか?」という疑問でし
し上げると同時に、日本のお客様に楽しんでいただ
た。ですが、本質に迫る普遍的な問いかけは、いつ
けることを切に願っております。
フェスティバル /トーキョー実行委員会
野村 萬
公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 会長、能楽師
顧問
福原義春
株式会社資生堂 名誉会長
名誉実行委員長
高野之夫
豊島区長
実行委員長
荻田 伍
アサヒグループホールディングス株式会社 相談役
副実行委員長
市村作知雄
NPO 法人アートネットワーク・ジャパン 会長
栗原 章
豊島区文化商工部長
東澤 昭
公益財団法人としま未来文化財団 常務理事/事務局長
委員
尾 元規
公益社団法人企業メセナ協議会 理事長、花王株式会社 顧問
熊倉純子
東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科 教授
斉藤幸博
株式会社資生堂企業文化部長
鈴木敦子
アサヒビール株式会社経営企画本部社会環境部 部長
鈴木正美
東京商工会議所豊島支部 会長
永井多恵子
公益社団法人国際演劇協会日本センター 会長
小澤弘一
豊島区文化商工部文化デザイン課長
岸 正人
公益財団法人としま未来文化財団 部長
蓮池奈緒子
NPO 法人アートネットワーク・ジャパン 理事長
小島寛大
NPO 法人アートネットワーク・ジャパン 理事
監事
鈴木さよ子
豊島区総務部総務課長
福井健策、北澤尚登(骨董通り法律事務所)
法務アドバイザー
Festival/Tokyo Executive Committee
Advisors:
Man Nomura (Chairman, Japan Council of Performers Rights & Performing Arts Organizations, Noh actor)
Yoshiharu Fukuhara (Honorary Chairman, Shiseido Co., Ltd.)
Honorary President of the Executive Committee:
Yukio Takano, Mayor of Toshima City
Chair of the Executive Committee:
Hitoshi Ogita (Advisor to the Board, Asahi Group Holdings, Ltd.)
Vice Chair of the Executive Committee:
Sachio Ichimura (Director, NPO Arts Network Japan [NPO-ANJ])
Akira Kurihara (Director of Culture, Commerce and Industry Division of Toshima City)
Akira Touzawa (Director of Secretariat of Toshima Future Culture Foundation)
フェスティバル /トーキョー実行委員会事務局
ディレクターズコミッティ
代表
市村作知雄
副代表
小島寛大、河合千佳
メンバー
葦原円花、喜友名織江、十万亜紀子、長原理江、横堀応彦
Committee Members:
Motoki Ozaki (President, Association for Corporate Support of the Arts, Corporate Advisor, Kao Corporation)
Sumiko Kumakura (Professor, Department of Musical Creativity and the Environment, Tokyo University of the Arts)
Yukihiro Saito (General Manager, Corporate Culture Department, Shiseido Co., Ltd.)
Atsuko Suzuki (General Manager, Social & Environmental Department, Asahi Breweries, Ltd.)
Masami Suzuki (Chairman, Tokyo Chamber of Commerce and Industry Toshima)
Taeko Nagai (Chairman, Japanese Centre of International Theatre Institute [ITI/UNESCO])
Kouichi Ozawa (Culture, Commerce and Industry Division of Toshima City, Director of Cultural Design Section)
Masato Kishi (Executive Manager of Toshima Future Culture Foundation)
Naoko Hasuike (Representative, NPO Arts Network Japan [NPO-ANJ])
Hirotomo Kojima (Board Member, NPO Arts Network Japan [NPO-ANJ])
事務局長
制作
Supervisor:
Sayoko Suzuki (General Affairs Division, Director of General Affairs Section of Toshima City)
広報・営業
経理
総務
チケットセンター
葦原円花
小島寛大、河合千佳
喜友名織江、十万亜紀子、荒川真由子、砂川史織、松嶋瑠奈、松宮俊文、
横井貴子、岡崎由実子、三竿文乃
長原理江、横川京子
堤 久美子、谷口美和
平田幸来、蓮池奈緒子、一色壽好
佐々木由美子、佐藤久美子
技術監督
技術監督アシスタント
照明コーディネート
音響コーディネート
寅川英司
河野千鶴
佐々木真喜子(株式会社ファクター)
相川 晶(有限会社サウンドウィーズ)
アートディレクション & デザイン
メインビジュアル
ウェブサイト
広報
広報協力
海外広報・翻訳
物販
票券
執筆・編集
主催
共催
アジアシリーズ共催
協賛
後援
特別協力
協力
宣伝協力
氏家啓雄(有限会社氏家プランニングオフィス)
naomi@paris,tokyo
竹下雅哉(有限会社氏家プランニングオフィス)
株式会社 フロンティア・エンタープライズ
湯川裕子
ウィリアム・アンドリューズ
渡辺 淳
株式会社ヴォートル
鈴木理映子
フェスティバル /トーキョー実行委員会
豊島区/公益財団法人としま未来文化財団/ NPO 法人アートネットワーク・ジャパン、
アーツカウンシル東京・東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
公益社団法人国際演劇協会日本センター
独立行政法人国際交流基金アジアセンター
アサヒビール株式会社、株式会社資生堂
外務省、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会、 J-WAVE 81.3 FM
西武池袋本店、東武百貨店池袋店、東武鉄道株式会社、
株式会社サンシャインシティ、チャコット株式会社
東京商工会議所豊島支部、豊島区商店街連合会、豊島区町会連合会、
一般社団法人豊島区観光協会、一般社団法人豊島産業協会、
公益社団法人豊島法人会、池袋西口商店街連合会、
特定非営利活動法人ゼファー池袋まちづくり、ホテルメトロポリタン、
ホテル グランドシティ、池袋ホテル会
株式会社ポスターハリス・カンパニー
平成27年度 文化庁 文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業
(池袋 / としま / 東京アーツプロジェクト事業、としま国際アートフェスティバル事業)
公益社団法人企業メセナ協議会 2021 芸術・文化による社会創造ファンド採択事業
インターン:浅利瑠璃、穴迫 楓、上原彩加、大野ちはる、大橋桃奈、尾崎夏美、金山咲恵、川縁芽偉子、北原七海、
久木野実玖、胡 瀾、合田桃子、佐藤 凌、鈴木里咲、多田彩華、千葉ゆり、中條 愛、鄧 詩瑤、都丸杏樹、西本万耶、
比留間晴子、細井優花、松村亜矢、儘田章子、三友遥菜、山本菜絵、吉田明理、林 嘉琦
スペシャルサンクス:F/T サポーターのみなさま
会期:2015 年 10 月 31 日(土) 12 月 6 日(日)
Legal Advisors:
Kensaku Fukui, Hisato Kitazawa (Kotto Dori Law Office)
Festival/Tokyo Executive Committee Secretariat
Directors Committee
Representative: Sachio Ichimura
Deputy Representative: Hirotomo Kojima, Chika Kawai
Members: Madoka Ashihara, Orie Kiyuna, Akiko Juman, Rie Nagahara, Masahiko Yokobori
Administrative Director: Madoka Ashihara
Production Co-ordinators: Hirotomo Kojima, Chika Kawai, Orie Kiyuna, Akiko Juman,
Mayuko Arakawa, Shiori Sunagawa, Luna Matsushima, Toshifumi Matsumiya, Takako Yokoi,
Yumiko Okazaki, Ayano Misao
Public Relations, Sales & Planning: Rie Nagahara, Kyoko Yokokawa
Accounting: Kumiko Tsutsumi, Miwa Taniguchi
Administrators: Saki Hirata, Naoko Hasuike, Hisayoshi Isshiki
Ticket Center: Yumiko Sasaki, Kumiko Sato
Being Faust
– Enter Mephisto
構成:ピーター・
リー
Technical Director: Eiji Torakawa
Assistant Technical Director: Chizuru Kouno
Lighting Co-ordination: Makiko Sasaki (Factor Co., Ltd.)
Sound Co-ordination: Akira Aikawa (Sound Weeds Inc.)
Art Direction & Design: Yoshio Ujiie (Ujiie planning office)
Main Graphic Design: naomi@paris,tokyo
Website: Masaya Takeshita (Ujiie planning office)
PR: Frontier Enterprise Co., Ltd.
PR Support: Yuko Yukawa
Overseas Public Relations, Translation: William Andrews
Merchandise: Jun Watanabe
Ticket Administration: Votre, Ltd.
Writing & Editing: Rieko Suzuki
Organizers: Festival/Tokyo Executive Committee
Toshima City, Toshima Future Culture Foundation, NPO Arts Network Japan (NPO-ANJ)
Arts Council Tokyo & Tokyo Metropolitan Theatre (Tokyo Metropolitan Foundation for History and Culture)
Produced in association with Japanese Centre of International Theatre Institute
Asia Series co-produced by the Japan Foundation Asia Center
Sponsored by Asahi Breweries, Ltd., Shiseido Co., Ltd.
Endorsed by Ministry of Foreign Affairs, GEIDANKYO, J-WAVE 81.3 FM
Special co-operation from SEIBU IKEBUKUROHONTEN, TOBU DEPARTMENT STORE IKEBUKURO, TOBU
RAILWAY CO., LTD., Sunshine City Corporation, Chacott Co., Ltd.
In co-operation with Tokyo Chamber of Commerce and Industry Toshima, Toshima City Shopping Street
Federation, Toshima City Federation, Toshima City Tourism Association, Toshima Industry Association,
Toshima Corporation Association, Ikebukuro Nishiguchi Shopping Street Federation, NPO Zephyr, Hotel
Metropolitan Tokyo, Hotel Grand City, Ikebukuro Hotel Association
PR Support: Poster Hari s Company
Goethe-Institut Korea + NOLGONG
Being Faust – Enter Mephisto
Concept:
Peter Lee
Supported by the Agency for Cultural Affairs, Government of Japan in the fiscal 2015
Supported by Association for Corporate Support of the Arts, Japan
(2021 Fund for Creation of Society by the Arts and Culture)
Period: October 31 (Sat) to December 6 (Sun), 2015
の時代も変わりません。
「人生において大切なもの
ゲーテ・インスティトゥー卜韓国×NOLGONG
11.19 Thu – 11.22 Sun
東京芸術劇場 シアターイースト
Tokyo Metropolitan Theatre (Theatre East)
発行:フェスティバル /トーキョー実行委員会 〒170-0001 東京都豊島区西巣鴨 4-9-1 にしすがも創造舎
TEL:03-5961-5202 http://www.festival-tokyo.jp/
編集:鈴木理映子、フェスティバル /トーキョー実行委員会事務局 デザイン:小林 剛( UNA )
※内容は変更になる場合がございます。ご了承ください。 禁無断転載
ゲーテがファウスト伝説に注ぎ込んだものとは
何だったのか
平松智久(福岡大学人文学部ドイツ語学科准教授)
悪魔の領域に属し、キリスト教の教えに背くゆえ、固
受けた後で、
「完成作品」として初めて博士の「救済」
く禁じられたものであった。禁則を破り、悪魔に魂を
を描ききったという意味において、別格なのである。
晩、壁から壁へと悪魔に叩きつけられて壮絶な死を
遂げる。彼の死んだ部屋は血まみれで、壁には脳髄
ゲーテがファウスト伝説に注ぎ込んだもの
がこびりつき、床には二つの目玉と何本かの歯だけ
ところで、ゲーテが生きたのは、まさに錬金術が
が転がっていたという。
『実伝ファウスト』は、その
科学に変わろうとする近代への転換期でもあった。
ような目に合わないためにも信者は常に神を畏れ、
あらゆる欲望が悪魔との「契約」によって現実化した
そして、神を愛せよと訴えたのである。
中世と異なり、近代は不可能だったものが自然科学
『悲劇ファウスト』の完成まで
民衆本『実伝ファウスト博士』は出版されるやい
幻術を使って人をたぶらかし、自らの欲望のままに
放蕩三昧する博士。彼に許されなかったのは「結婚」
ファウスト博士、すなわちヨーハン・
(ゲオルク・)
だけだった。
「愛」は神を信ずる者の特権だからだと
ファウストは、1480 年頃にドイツ南西の小村クニッ
悪魔はいう。そうして悪魔は彼を肉欲に溺れさせる。
トリンゲンで生まれ、1540 年頃、シュタウフェンで
ファウスト伝説として語られる諸々の「黒魔術」は、
実験途中に爆死したといわれる実在の錬金術師・占
星術師である。彼は、現代でいうところの科学や化
学の知識を駆使して奇術を行い、各地を転々としな
がら占いなどで生活の糧を得ていたらしい。だが彼
実伝
には大言壮語を繰り返す癖があったため、ルネサン
ヨーハン・ファウスト
ス魔術に詳しい知識人たちから、彼の山師的な「黒
博士
魔術」は見下され、彼自身も悪魔と結託した人物と
さえみなされていた。とはいえ他方で彼の言動には
民衆から大きな関心が寄せられていたのも確かであ
る。だからこそファウストの死後には、彼の「伝説」
が次々と語られ出したのであった。
数多あるファウスト伝説が最初にまとめられたの
はフランクフルトの出版業者ヨーハン・シュピース
による匿名の民衆本『実伝ファウスト博士』
(1587 年)
である。その内容は、右のように長い副題に要約さ
れる。つまり、
〈無限の知識を求めるファウスト博士
0
0
0
0
0
0
0
0
0
が 24 年の期限を定めて悪魔メフォストフィレスと契
約し、不可能なことを可能とする力を獲得して、富、
権力、栄誉、享楽を望むままに享受するが、最後に
は永遠の劫罰を受けて悲惨な死を迎える〉という物
語である。また、
(実際にはファウスト博士本人の手
による資料は残されていないのだが)信憑性を高め
るために〈博士自らが書き遺した文書〉を基にしてい
ると謳われたうえで、
〈悪い手本として警めのため
音に聞こえし魔術師妖術師が
年季を定め悪魔に身を売りて そのあいだ見聞
したる怪異みずから為せる不思議
また自業自得なる
報い
過半は博士自ら書き残せる文書より世の
なべての不埒軽佻背神の徒が忌まわしき
例しおぞましき見本かつはまた
衷心よりなる警めがため
茲にとりまとめ
印書す
速さに対して、決して「不安」をなくせなかったよう
まった。しかしなぜこの物語が絶大な人気を博すこ
だ。
)中世ほど信仰心の篤くない近代ではすでに旧来
とになったのか。それは、たとえ悪魔のおかげであっ
の悪魔の存在意義が弱まり、悪魔との「契約」も古く
たとしても、人間の 心 の 奥 底に 潜む 欲 望 が 限 界ま
さく時代遅れとなっていた。そこでゲーテは、ファウ
で描き出されていたからに違いない。さらに時代が
ストにメフィストーフェレスと、
「賭け」をさせる。つ
ファウスト的精神を受け入れた。16 世紀末のドイツ
まり、魔力を借りたファウストが永遠に活動し続け
は人文主義と宗教改革によって近代的自我が生まれ
られるのか、あるいは、満足して活動を止めるのか
た時代だった。人文主義は精神をより自由なものへ
という「賭け」である。誘惑に負けて「止まれ、お前
と解放し、宗教改革はカトリックとプロテスタントの
は本当に美しいから」と口にしたなら「破滅」しても
いずれかの信仰を個人の意思で選択するように迫っ
よいとファウストは約束する(魂を渡すとは約束し
た。もはや神聖な宗教的秩序を妄信し、教会の指示
ていない)
。しかし従来のファウスト博士の描かれ方
に従ってだけ生きることは許されない。人間は個人
と異なり、ゲーテの『ファウスト』では博士もなかな
の内面的な自由と責任のもとに苦しみながら「知る」
か狡猾だ。決して活動を止めないファウストは、例
ことが義務となる。飽くなき知識欲にかられたファ
の文言を最後に口にする直前に「条件」を付け加え
ウスト博士はそのような時代の精神的代表であり、
る。
「そのような〔満足をする〕瞬間(があったとして、
0
0
0
0 0
0
0
0 0
0
悪魔との契約がゆえに免れなかった彼の悲惨な死に
それ)に対してなら〔「止まれ」と〕言ってもいいだろ
様は近代人の悲劇だとみなされたのである。
う」と。そのような仮定法的表現で彼は悪魔に早と
その後、博士の物語はイギリスのクリストファー・
ちりをさせるのであった。その後ファウストの永遠
マーロゥによる『ファウストゥス博士の悲劇的物語』
に活動する霊は、天上からの「愛の恩寵」を受け、か
(1592 年)として文学的な劇作品となり、イギリスの
つての恋人グレートヒェンの霊の手引きで「救済」の
みならずドイツでも各地で上演された。30 年戦争で
光へと導かれる。ゲーテはこのような形で「救済」の
ドイツ国内が荒廃した後にもなおファウスト劇は、
結末を描くことで、ファウスト伝説を現代にも相通
民衆劇、人形劇、人形芝居へと形を変えて長く語り
ずる普遍的な心のドラマに変貌させたのであった。
継がれている。幼少期に人形劇でファウスト博士の
いまや科学技術と切っても切れない関係をもつ現
伝説を知ったゲーテは、文学的活動の最初期からこ
代人は、いま悪魔と「契約」を交わして悪魔的速さに
のテーマに取り掛かり、断続的ではあったが死の直
追われているようなものである。あなたは現代に生
前まで 60 年以上のあいだ執筆を続けた。それゆえ作
きる、一人のファウストだ。メフィストーと「契約」
汝ら神に事えよ悪魔に立ち向かえ
中には、詩人の自己と時代的背景がすべて投影され
を交わしたあなたの「賭 け」はすでに始まっている。
さらば彼なんじらを逃げ去らん
ることとなった。ファウストの生涯をテーマとした
Being Faust - Enter Mephisto を 体 験 され た 方に
文学作品は他にも数多くある。しかしゲーテの『悲
は是非、ゲーテの『ファウスト』を手に取ってほしい。
劇ファウスト』
(
『第 1 部』1808 年/『第 2 部』1833 年)
あなた自身の物語が必ずそこに見つかるはずだ。
(松浦純訳『ファウスト博士』
)
は、
「救済」案を出したレッシングの「断片」に影響を
メントの た め の「Serious Games」
の息子』
(共に岸田國士戯曲賞受
や、学校の日常をゲームに置き換
えたスクールプロジェクト「Quest
to learn」などを開発。 ニューヨー
ク「Institute of Play」の役員会メン
バ ー で も あ る。韓 国 で NOLGONG
所属。主な舞台出演作は、城山羊
の会『トロワグロ』サンプル『自慢
賞作)
、青年団『走りながら眠れ』
、
岡 田 利 規 氏 演 出『 わ か っ た さ ん
のクッキー』など多数。12 月には
谷 賢 一 氏 演 出 の『TUSK TUSK』に
出演。映像は、世にも奇妙な物語 社を設立。ゲームと教育学の理念のもと、チーム形成や想像力促
進を目的とした大規模なゲームの開発にあたっている。また、非営
25 周年記念『幸せを運ぶ眼鏡』など。CM は、出演に限らずナレー
ションをすることも多い。
Q. 本作で提示される 12 の価値(愛・名声・力・家族・信仰・富・
Q. 本作で提示される 12 の価値(愛・名声・力・家族・信仰・富・
利活動として「NOLGONG Classics」を立ち上げ、文学作品を、ソー
シャルメディアを利用した体験型ゲームに発展させるプロジェク
トを行っており、
『Being、Faust – Enter Mephisto』のほか、ジョー
、シェイ
ジ・オーウェル『1984』、トルストイ『アンナ・カレーニナ』
クスピア『口ミオとジュリエット』などを開発している。
られた。
(ゲーテ自身も、近代的技術発展のあまりの
なや版を重ね、次々と翻訳されてヨーロッパ中に広
ヤコブの書第四章
に出版〉するのだとも語られている。悪魔の力を借り
て地獄を巡り、世界中を飛びまわっては、変身術や
の発展の速さはもはや悪魔的といっても過言ではな
く、あるいはその速度自体が新たな悪魔と言い換え
出演:古屋隆太(ふるや・りゅうた)
1971 年 生まれ。サンプ ル・青 年団
レクター。ゲ ー ム開 発 者 で あり、
教育学の専門家。タイムマネージ
売って欲望に身を任せたファウスト博士は、最期の
の技術によって可能となりはじめた時代である。そ
ファウスト伝説の禁と欲
構成:ピーター・リー
NOLGONG クリエ イティブ・デ ィ
美・自由・若さ・進歩・快楽・知)のうち、重要だと思うもの
を 3 つ教えてください。また、その理由とは?
私が選ぶ 3 つの価値を重要な順に並べた。
〈自由〉自身の意思や選択によって物事を考え、感じ、行動
するために自由でありたいと願っている。
〈喜び〉人生は楽しいことばかりではない。けれど、最も根
美・自由・若さ・進歩・快楽・知)のうち、重要だと思うもの
を 3 つ教えてください。また、その理由とは?
〈愛〉愛は人間界においてはすべての原動力でせう。
〈家族〉家族は一番大切。家族を失ったら僕はもう即身成仏
目指します。
〈知〉知なくしては人になれないでせう。
底にある欲望の形は、私自身の意思と選択が存在するとこ
ろに浮かび上がってくるものだ。
〈愛〉私の欲望の対象は、人間、あるいは物やアイデアか
もしれない。欲望とは皮肉なもので、私自身が自分の欲望
と要求に苦しめられることがある。私は自由になりたいと
願うからこそ、何かを愛し、何かに愛されることができる
のだ。
構成:ピーター ・リー
ドラマトゥルク:ベンヤミン・フォン・ブロムベルク
司会・進行:古屋隆太(サンプル・青年団)
技術監督:寅川英司
舞台監督:横川奈保子
照明コーディネート:佐々木真喜子(株式会社ファクター)
音響コーディネート:相川 晶(有限会社サウンドウィーズ)
制作:喜友名織江、小野塚 央
協力:豪勢堂 GLove
企画・製作:ゲーテ・インスティトゥート韓国、NOLGONG
共催:東京ドイツ文化センター
主催:フェスティバル / トーキョー
Concept: Peter Lee
Dramaturge: Benjamin von Blomberg
Guide: Ryuta Furuya (Sample, Seinendan)
Technical Manager: Eiji Torakawa
Stage Manager: Naoko Yokokawa
Lighting Co-ordination: Makiko Sasaki (Factor Co., Ltd.)
Sound Co-ordination: Akira Aikawa (Sound Weeds Inc.)
Production Co-ordination: Orie Kiyuna, Chika Onozuka
In co-operation with GOSAYDO Co., Ltd.
Produced & planned by Goethe-Institut Korea, NOLGONG
Co-presented by Goethe-Institut Tokyo
Presented by Festival/Tokyo