自分の思いをもち、自信をもって 表現することのできる子どもの育成 ~ 対話活動を取り入れて 熊本市立奥古閑小学校 ~ はじめに 本校の子どもたちは、やさしく誠実な子どもが多い反面、主体性や積極性があまり感じ られず、人と積極的にコミュニケーションを図ったり、思いや考えを積極的に伝えたりす るといった部分に課題がありました。そういった課題解決のために平成19・20年度、 熊本市教育委員会の研究委嘱をいただき「自分の思いをもち、自信をもって表現すること のできる子どもの育成」を研究主題に設定し、研究に取り組んで参りました。そのような 中、昨年3月には、新教育基本法等を踏まえて学習指導要領の改訂がなされました。新し い学習指導要領の総則の中では「言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力の育 成を図る上で必要な言語環境を整え、児童の言語活動を充実すること」と言語活動の充実 が重要なポイントとして示されています。 本校の研究実践は、本校の教育課題解決への取り組みであると同時に、新しい学習指導 要領の趣旨を踏まえ、国語科を中心にしながらもすべての教育活動の中で言語活動の充実 を図るといったこれからの教育実践を志向するものでもあります。次年度に迫った新しい 学習指導要領への移行期を見据えた取り組みとしても大きな意義があると考えているとこ ろです。 本年度は、対話活動を取り入れ、国語科を中心とした授業改善と関わりの中で表現する 活動の工夫を二つの柱として全職員で研究に取り組んで参りました。ここに研究の概要を 教育論文といった形でまとめましたので、諸先生方にご高覧を請い、忌憚のないご意見や ご指導を賜ることができれば大変ありがたく存じます。 も く じ はじめに・もくじ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1 研究主題について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2 研究の実際 (1) 国 語 科 の 学 習 の 工 夫 ① 低学年部の取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 ② 中学年部の取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 ③ 高学年部の取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 (2) 関 わ り の 中 で 表 現 す る 活 動 の 工 夫 3 ① いろいろな人と関わる場の工夫・・・・・・・・・・・・・・・・24 ② いろいろな言葉と関わる場の工夫・・・・・・・・・・・・・・・26 研究の成果と課題 (1) 研究の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 (2) 研究の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 -1- 1 研究主題について (1) 研 究 主 題 自分の思いをもち、自信をもって表現することのできる子どもの育成 ~ 対話活動を取り入れて ~ (2) 研 究 主 題 設 定 の 理 由 ① 本校の教育目標から 本校は「豊かな心をもち、深く考え、たくましく生きる子どもの育成」を学校教 育目標に、個性豊かな子どもの育成を目指している。互いの立場や考えを尊重しな がら、人と人が話し合う対話活動を学習指導に取り入れていく中で、自分の思いや 考えをもち、それを相手に伝わるよう適切な言葉で、主体的に表現することのでき る子どもの育成を目指す本研究は、本校の学校教育目標の具現化につながるもので あると考えた。 ② これまでの研究から こ れ ま で 「 伝 え 合 う 力 」 を 高 め る た め に 、「 話 す こ と ・ 聞 く こ と 」 の 指 導 に 焦 点 を絞って研究実践を行ったが、伝え合う力の育成は一朝一夕にできることではなく、 一人一人の伸びを具体的な姿として見ることができなかった。 そこで昨年度から、その反省をもとに具体的な子どもの姿に着目し、一人一人が 自分の思いをもつこと、一人一人の表現する力を伸ばすことに力点を置いて研究を 行 っ て い る 。特 に 本 年 度 は 、 対 話 活 動 を 取 り 入 れ 、国 語 科 の 学 習 の 工 夫 や 関 わ り の 中で表現する活動の工夫 をしていくことで目指す子どもの姿に迫っていこうと考 えた。 ③ 子どもの実態から 本校の子どもは、とても元気で活発であり、気持ち・心情は素直でやさしいが、 恥ずかしがりやで、改まった場所になるとはっきりと自分の思いを発言したり、自 分の意志を最後まで述べたりすることに課題が見られるなど、自分の伝えたいこと を適切に伝える力が十分でないという実態があった。 このような実態を少しでも改善し、子どもたちが自分なりの思いや考えを、自信 をもって表現できるように、学習活動に身近な人たちとの対話活動を取り入れ、研 究に取り組んでいくことにした。 (3) 研 究 主 題 に つ い て の 基 本 的 な 考 え 方 ① 自分の思い(考え)を もつ 「自分の思いをもち」とは 望ましい人間関係を基盤として、お互いの 話したい 立場や考えを尊重しながら、意欲的に自分の 伝えたい 思いを表現したり相手の思いをしっかりと受 表現した け止めたりすることができる力を育てていき い たいと考えた。 本校の子どもの実態を見てみると、話した い、伝えたい、表現したいという思いをもつ 図 1「 自 分 の 思 い を も つ 」 ことに課題がある子どもが多いことが分かった。思いがなければ、自信をもって表 -2- 現することもできないと考えられる。そこで、まず、心の中に話したいこと、伝え たいこと、表現したいことをもたせることが、自信をもって表現し伝え合うための 第一歩であると考えた。しかも、それはあくまで、伝える相手の立場や考えを尊重 したものでなければならない。相手や目的を意識し、様々な情報を豊かな感性でし っかり受け止め、言語を通してイメージを広げ、深めたり、まとめたりしながら、 自分の思いや考え(話したいこと・伝えたいこと・表現したいこと)をもつことが 大切であると考えた。 ② 自信をも って表現する 「自信をもって表現する」とは ぼくは○○○ 話したいこと・伝えたいこと・表 だと思います。 現したいことを、お互いの立場や考 えを尊重しながら、言語を通してで きるだけ相手に分かるように表現す 聞き手がしっかり受け止めてくれるという安心感 る子どもをイメージし、自分なりの 言葉を選び、順序を考えて、自分な りの表現の方法を工夫して、堂々と 図 2「 自 信 を も っ て 表 現 す る 」 伝えようとしている姿ととらえてい る。そのためには、聞いている人が、自分の思いをしっかり受け止めてくれるとい う安心感が必要である。また、聞く力を育てることも、自信をもって表現する力を 育てることにつながると考える。そこで、話す側と聞く側を交代しながら、お互い の思いを出し合って言葉のキャッチボールを楽しむことのできる対話活動を取り 入れることにした。 (4) 対 話 活 動 に つ い て 本校では、対話活動を下のような4つの種類に分類して考えている。 自己との対話 対話活動 他者との対話 心内対話 自分と教材や題材との向かい合い ペア対話 二人組での伝え合う活動 グループ対話 3~5人での伝え合う活動 全体対話 クラスなど集団全体での伝え合う活動 その中でも、ペア対話には、 ①全員の子どもに話す機会を保障することができる。 ②言葉にすることで、自分の思いを確かめることができる。 ③相手の意見を知ることができる。 ④相手の意見を聞くことで、相手の思いのよさや相違点に気づくことができる。 ⑤相手に応じた話し方を身につけることができる。 ⑥自分の意見を修正することができる。 ⑦自分の思いに自信をもつことができる。 ⑧相手の話をしっかり聞こうとする態度を育てることができる。 ⑨相手の思いをしっかり受け止めようとする協調性を育てることができる。 ⑩ 相 手 の 話 を 聞 い て 交 流 す る こ と で 、瞬 時 に 受 け 答 え を す る 力 を 育 て る こ と が で き る 。 -3- などのよさがある。そこで「ペア対話」を中心にした対話活動を学習活動に取り入れ て取り組んでいこうと考えた。 つ ま り 、本 研 究 に お け る「 対 話 活 動 」と は 、 自 分 の 思 い や 考 え を 相 手 に 伝 え る た め に 、音 対 話 活 動 声言語を通じて同じ話題について自分の思 自 い を 伝 え た り 、相 手 の 考 え を 聞 い た り し な が 相 ら相手とのコミュニケーションを図る活動 話す・聞く 分 ととらえる。特に、二人組で行うペア対話を 大 切 に し 、授 業 の 中 で 学 級 全 員 の 子 ど も に「 話 手 相手との す機会」を保障する。子どもは自分の思いを コミュニケーションを図る活動 話したり、相手の考えを聞いたりして思いや 考えを交流することで、自分の考えを確かめ たり、修正したりして、自信をもつことがで きるようになるであろうと考えた。 対話活動の形態としては、一対一で行うこ 図 3「 対 話 活 動 」 とが基本となるが、発達段階により一対多といった形態での対話活動も考えられる。 また、授業の中では教師と子ども、子ども同士といった対話活動が中心となるが、全 ての教育活動を通して対話活動を大切にした指導を行うことにより、異学年の子ども や 担 任 以 外 の 教 職 員 と の 対 話 活 動 が 充 実 し 、対 話 技 術 の 向 上 も 図 ら れ て い く と 考 え た 。 (5) 目 指 す 子 ど も の 姿 ○ 自分の思いをもつことができる子ども ○ 互いの思いを大切にして話すことができる子ども ○ みんなの前で自信をもって表現することができる子ども (6) 本 校 で 育 て た い 子 ど も の 対 話 力 上 記 の よ う な 子 ど も の 姿 を 目 指 す た め に 、特 に 本 年 度 は「 育 て た い 子 ど も の 対 話 力 」 を明らかにし、 「話す・聞くのあいうえお」 あ・・・ 相手の目を見て話す・聞く い・・・ いっしょうけんめい話す・聞く う・・・ うなずきながら話す・聞く え・・・ 笑顔で話す・聞く お・・・ 思いやりをもって話す・聞く を対話活動の基本姿勢として共通理解を図った上で、次のように育てたい子どもの対 話力と育てる時期を明らかにしながら重点的に取り組んでいこうと考えた。 -4- 表 1 「 育 て たい 子ども の対 話力 」 項 育 具 目 体 的 な 子 ど も の 姿 て る 時 期 低学年 中学年 高学年 話 ① 自分なりの思いや考え、伝えたいことなどから話題を決める ◎ ◎ ◎ 題 ② 必要な事柄を思い出す ◎ ○ ○ ③ 必要な事柄について調べ、要点をメモする ○ ◎ ○ ④ 収集した知識や情報を関係付ける ○ ◎ 話 ⑤ 話す事柄を順序立てて話す ◎ ○ ○ す ⑥ 理由や事例を挙げながら筋道を立てて話す ○ ◎ ○ ⑦ 事柄が明確に伝わるように話の構成を工夫して話す ○ ○ ◎ ⑧ 場に応じた適切な言葉遣いで話す ○ ○ ◎ ⑨ 姿勢や発音、速さなどに気を付けてはっきり話す ◎ ○ ○ ⑩ 相手を見たり、言葉の抑揚や強弱、間の取り方などに注意したりして話す ○ ◎ ○ ⑪ 必要に応じて共通語で話す ○ ◎ ⑫ 大事なことを落とさないように聞く ◎ ○ ○ ⑬ 興味をもって聞く ◎ ○ ○ ⑭ 話の中心に気を付けて聞く ◎ ○ ⑮ 相手の言ったことを確かめる発言をする ○ ◎ ○ ⑯ 分からないことを質問する ○ ◎ ○ ⑰ 自分の意見や感想を話す ○ ◎ ○ ⑱ 話し手の意図をとらえながら聞く ○ ◎ ⑲ 自分の意見と比べるなどして考えをまとめる ○ ◎ ⑳ 互いの話を集中して聞く ◎ ○ ○ 21 ○ 話題に沿って話し合う ◎ ○ ○ 22 ○ お互いの考えの共通点や相違点を考えて話し合う ○ ◎ ○ 23 ○ 司会や提案などの役割を果たしながら進行に沿って話し合う ○ ◎ ○ 24 ○ 互いの立場や意図をはっきりさせながら計画的に話し合う ○ ◎ 設 定 こ と 聞 く こ と 話 し 合 う こ と (7) 仮 説 (1) 互 い の 立 場 や 考 え を 尊 重 し て 、 対 話 活 動 の 中 で 表 現 す る 力 を は ぐ く む 国 語 科 の 学 習 を 工 夫 す れ ば 、子 ど も た ち は 自 分 の 思 い を も ち 、自 信 を も っ て 表 現 す る こ と が で き る よ う に な る で あ ろ う 。 (2) い ろ い ろ な 人 や 言 葉 と の 関 わ り の 中 で 、表 現 す る 活 動 の 工 夫 を す れ ば 、子 ど も た ち は 国 語 科 で 学 習 し た こ と を 生 か し て 、自 分 の 思 い を も ち 、 自 信 を も っ て 表 現 す る こ と が で き る よ う に な る であろう。 -5- (8) 研 究 の 視 点 本校では、国語 科におけ る「伝え合う こと」や「話すこ と・聞くこと」など の表現 力 に 関 す る 活 動 を 洗 い 出 し 、各 学 年 の 「 自 己 表 現 力 ア ッ プ プ ラ ン 」 と し て ま と め 、見 通しをもってそれぞれの活動を関連させながら取り組んでいけるよう工夫した。 国語科においては対話活動を取り入れた学習の工夫を行い、基礎的な力(育てたい 子どもの対話力)を身に付けさせ、併せて国語科の授業との関連を図りながら全ての 教育活動を通じて、いろいろな人や言葉との関わりの中で表現する活動を工夫し、対 話することの楽しさ、言葉の面白さなどにふれる機会を増やし、子どもたちの自己表 現力アップを目指すこととした。 ① 国語科の学習の工夫に関する視点 子どもの実態から、授業が一部の子どもの発言で進められるのではなく、一人一 人の子どもがしっかりとした自分の思いをもって発言する中で深められるように したいと考えた。 そこで、本校では、自分の思いをもち、自信をもって表現することのできる子ど もの育成を目指すために、人権尊重の視点に立ち、互いの立場や考えを尊重し合う 学級づくりを基盤にしながら、対話活動を取り入れて、次の3つの視点から研究を 進めていこうと考えた。 視点1 子どもたちに自分の思いをもたせる工夫 視点2 自分の思いを表現させる工夫 視点3 表現してよかったという満足感や充 実感をもたせる評価の工夫 ② 関わりの中で表現する活動の工夫に関する視点 ①で述べた国語科の学習で学んだことを生かし、実践し、身に付けていく活動を 充実させ、経験を豊かにしていけばさらに子どもの力を伸ばすことができると考え、 次のような人や言葉と関わる活動を取り入れ、人との対話、言葉とのふれあいを通 して、自分の思いをもち、自信をもって表現することのできる子どもの姿に迫りた いと考えた。 視点4 いろいろな人と関わる場の工夫 ・おはなしタイム 1 対 1 で友達との対話を楽しむ対話力アップの時間。 ・スピーチ活動 朝 の 会 や 帰 り の 会 な ど 1 対 多 の 場 面 で 、テ ー マ に 沿 っ て 自 分 の 思 い を 表 現 す る 。 質問や感想を出し合いやり取りを楽しむ時間。 ・縦割り班活動 遊びを通して異学年とふれあい、学年や相手に応じた楽しい対話活動を実践す る場。 -6- ・集会活動 学習を通してできるようになったことを、学校のみんなの前で表現する場。学 級、委員会などの単位で発表し、感想を出し合う時間を設け交流を図る。 視点5 いろいろな言葉と関わる場の工夫 ・今月のあいうえお はっきりとした発音で、みんなといっしょに声を出すことを楽しむ。口の体操 をする。 ・ふれあい読書 週末や長期休業中に家族と読書を楽しむ時間をもつよう呼びかける。 ・お昼の放送の活用 毎週水曜日に、担任以外の職員が校内放送を通して読み聞かせを行う。 ・掲示による語りかけ 廊下や階段の掲示板などを利用し、発達段階に応じた季節感のある言葉や表現 のおもしろい言葉を掲示し、言葉と豊かにふれあえるような環境づくりを行う。 (9) 国 語 科 の 学 習 の 工 夫 表2 「部会ごとの具体的実践事項」 部会 学年部の 低学年部 中学年部 高学年部 自分の思いを楽しん 自分の思いや考えを 自分の思いや考えを で相手に伝えようと 進んで伝え合うこと 的確に伝え合うこと する子どもの育成 ができる子どもの育 ができる子どもの育 成 成 テーマ 視点1 自分の思い をもたせる 工夫 「読むこと」の領域を 「 話 す こ と・聞 く こ と 」 「 話 す こ と・聞 く こ と 」 中心に の 領 域 を 中 心 に の 領 域 を 中 心 に ○挿絵や場づくりの ○相手意識・目的意 ○相手意識・目的意 識をもたせる指導 識をもたせる指導 の工夫 の工夫 工夫 ○言葉に着目して考 えさせる指導の工 ○意欲を高める学習 夫 具 体 的 実 践 事 項 活動の工夫 ○他教科等との関連 を図る指導の工夫 視点2 ○対話モデルの工夫 ○対話モデルの工夫 ○対話モデルの工夫 自分の思い ○吹き出しの効果的 ○伝え合う活動の工夫 ○伝え合う活動の工夫 を表現させ 活用 ○メモ・シートの工夫 る工夫 ○学習シートの工夫 視点3 ○振り返りカードの 表現してよ ○評価の視点の明確化 ○振り返りカードの 工夫 工夫 ○振り返りカードの 工夫 かったとい ○相互評価の工夫 ○相互評価の工夫 ○相互評価の工夫 う満足感や (友達のよかったと (友達のきらり) (対話による評価) 充実感をも ころ) たせる工夫 -7- (10) 研 究 の 構 想 学 校 教 育 目 標 豊かな心をもち、深く考え、たくましく生きる子どもの育成 研 究 主 題 自分の思いをもち、自信をもって表現することのできる子どもの育成 ~ 目 対話活動を取り入れて 指 す 子 ど も ~ の 姿 ○ 自分の思いをもつことができる子ども ○ 互いの思いを大切にして話すことができる子ども ○ みんなの前で自信をもって表現することができる子ども 研 究 の 仮 説 ( 1 ) 互 い の 立 場 や 考 え を 尊 重 し て 、対 話 活 動 の 中 で 表 現 す る 力 を は ぐ く む 国 語 科 の 学 習 を 工 夫 す れ ば 、子 どもたちは自分の思いをもち、自信をもって表現することができるようになるであろう。 ( 2 ) い ろ い ろ な 人 や 言 葉 と の 関 わ り の 中 で 、表 現 す る 活 動 の 工 夫 を す れ ば 、子 ど も た ち は 国 語 科 で 学 習 し たことを生かして、自分の思いをもち、自信をもって表現することができるようになるであろう。 自 己表 現力 アッ ププラン ~ 対 話 活 動 を 取 り 入 れ て ~ 学 習 指 導 要 国語科の学習の工夫 視点4 縦 割 り 班 活 動 ・ 集 会 活 動 お は な し タ イ ム ・ ス ピ ー チ 活 動 い ろ い ろ な 人 と 関 わ る 場 の 工 夫 視点5 生 活 化 視点1 自 分 の 思 い を も た せ る 工 夫 視点2 自 分 の 思 い を 表 現 さ せ る 工 夫 領 視点3 充 実 感 を も た せ る 評 価 の 工 夫 表 現 し て よ か っ た と い う 満 足 感 や 生 活 化 昼 の 放 送 の 活 用 ・ 掲 示 に よ る 語 り か け 関 わり の中 で表 現する活 動の 工夫 子どもの 実態・本校の課題 -8- 今 月 の あ い う え お ・ ふ れ あ い 読 書 い ろ い ろ な 言 葉 と 関 わ る 場 の 工 夫 家 庭 や 地 域 と の 連 携 2 研究の実際 ( 1) 国 語 科 の 学 習 の 工 夫 ① 低学年部の取り組み ア 低学年部のテーマ 自分の思いを楽しんで相手に伝えようとする子どもの育成 イ 低学年部のテーマについて 低学年部では、自分の思いや考えをもたせ、それを友達に喜んで伝えること ができるようにしたいと考えた。そこで、1 年生の入学直後から取り組めるよ うに「読むこと」の領域を中心にしながら、実践に取り組んだ。 ウ 単元名 1年 「おむすびころりん」 声に出して読もう「くじらぐも」 2年 本と友達になろう「スイミー」 様子を考えて読もう「お手紙」 エ 実践の概要 視点1 子どもたちに自分の思いをもたせる工夫 <挿絵や場づくりの工夫> 教 科 書 の 挿 絵 を 大 き く し 、 場 面 の 様 子 が 想 像 し や す い よ う に し た 。 (図 4 ) 1 年「 お む す び こ ろ り ん 」で は 、お じ い さ ん に な り き る た め お 面 を 作 っ た り 、 衣装を作って着たりして雰囲気をつくった。2年「スイミー」では、スイミー と仲間の魚のペープサートを作り登場人物になりきって考えることができるよ うにした。 スイミーは、海の中で 前の時間の いろいろな楽しいこと 学習を思い出し を見つけたんだった。 てみよう。 図4「2年『スイミー』挿絵の工夫」 <言葉に着目して考えさせる指導の工夫> 物語の中で、繰り返し出てくる言葉の効果や助詞の「も」の効果、また、接 続語の役割など、押さえたい言葉をカードに書いて提示した。繰り返しがある 場合とない場合や、違う助詞や違う接続語だったらどうだろうというふうに比 較させながら場面の様子を考えさせていった。 言葉の意味がわからないために場面の様子が想像できないと考えられたの で、わかりにくい言葉はカードに書き取り上げ、みんなで話し合う中で子ども たちが自らの言葉で説明させるようにして理解を促した。 -9- <ヒントカードの工夫> 1 年「くじらぐも」では、自分の思いが なかなかもてない子どもや考えがまとまら ない子どもに毎時間ヒントカードを用意し た。 「 先 生 は ど う し て 驚 い た の だ ろ う 」と か 「子どもたちは、学校の屋根が見えてきた ときどんな気持ちがしただろう」などと書 いたカードを希望する子どもに渡し、場面 の様子を思い出させたり、想像させたりし て 自 分 の 思 い が も て る よ う に し た 。( 図 5 ) 視点2 自分の思いを表現させる工夫 図 5「 1 年『 く じ ら ぐ も 』で の ヒ ン ト カ ー ド 」 <学習シートの工夫> 一人一人に自分の考えをもたせるため、吹き出しに書き込む学習シートを用意した。 一度学習シートに書くことで自分の考えに自信が もて、さらに、隣の人に自分の意見 を 話 す こ と( ペ ア 対 話 )で 確 か な も の に し て い か せ た 。隣 に い る 人 の 考 え を 聞 き 、 「自 分も同じ考えだよ」とか「ぼくは、こう思うよ」というふうに意見の交換をさせた。 2年「お手紙」ではがまくんの言葉に着 目し、 「 あ あ・・」と「 き み が 」の 後 に 続 く 言葉を考えさせた。教科書に書いてない部 分を想像して考えることで読み取りも深く なると考えた。自分が考えたことを一度シ ートに書くことで、自分の考えを確かなも のにし、自信をもってペア対話をさせたい と考えた。 ( 図 6 )そ れ ぞ れ の 考 え の 交 換 の 場 と し て 、1 年「 お む す び こ ろ り ん 」で は 、 お面と衣装をつけ、穴の中から聞こえた 図6「2年『お手紙』での学習シート」 歌 を 聞 い た お じ い さ ん の 気 持 ち を 考 え 、書 い た 後 友 達 に 話 そ う と い う 場 面 を 設 定 し た 。 2年「スイミー」では、ぺープサートを使い 、一人ぼっちの寂しさの後、仲間を説 得するスイミーの気持ちを考えさせた。まず学習シートに自分の考えを書き、それを も と に 友 達 に 話 す こ と で 自 分 の 考 え を よ り 確 か な も の に し て い っ た 。( 図 7 ) 「ああ、おもし ろい。だれが歌 っているんじゃ 「逃げてばかりじ ろ う 。」と 言 っ た ゃ だ め だ よ 。」と 言 と思うよ。 ったと思うよ。 図7「学習シートをもとにした意見交換の様子 左 1 年 『 お む す び こ ろ り ん 』 右 2 年 『 ス イ ミ ー 』」 - 10 - 自分の考えを友達に聞いてもらい、認めてもらうことで自信をもち、全体の場で発 表できるようになると考えた。1時間の学習の中にみんなの前で発表をする場を必ず 設け、たくさんの子どもが経験できるようにした。前回発表した子どもとは違う子ど も に 発 表 さ せ る よ う 配 慮 し 、 い ろ い ろ な 子 ど も が 活 躍 で き る よ う に 工 夫 し た 。( 図 8 ) 図8「全体の場での発表の様子 1年『おむすびころりん』 2 年 『 お 手 紙 』」 さらに、場面の読み取りが深いほど音読の工夫に表れると考え、本時の目標が 達成 できたかどうか確かめるために、毎時間、まとめに音読を取り入れた。学習したこと 留意しながら音読の練習をし、最後には、友達に聞いてもらうようにした。友達に聞 いていてもらう時には、自分は「どこをどのように音読するのか」を聞いてくれる相 手に前もってアピールさせた。アピールの内容は、声の大きさとか速さではなく登場 人 物 の 心 情 面 を 明 確 に す る よ う に 意 識 さ せ た 。 (図 9 )1 年 生 で は 、 ア ピ ー ル が 難 し い と思われる子どもが数人いたのでアピールの仕方のモデルを掲示するようにした。ま た、毎日の家庭での音読練習でも、どこをどう読みかアピールしてから読むようにさ せたところ、特に会話文は、気持ちをこめて読めるようになってきた。 よ み ま す 。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ な ふ う に ○ ○ ○ ○ ○ ○ の と こ ろ を ぼ く ( わ た し ) は 、 い い か た 「 き み が 。」 の 所 を と て も 驚いたように読みます。 図 9 「『 ま と め 』 で の 音 読 の 様 子 視点3 1年『くじらぐも』 2 年 『 お 手 紙 』」 表現してよかったという満足感や充実感をもたせる評価の工夫 <振り返りカードの工夫> 毎時間ごとに、振り返りカード(自己評価)を用意した。カードには1時間の学習 のめあてを振り返る項目を書いた。カードは学習の最初に、めあての確認をするとき に 配 る よ う に し た 。 最 初 に 配 る こ と で 、「 今 日 の 学 習 は 、 何 を が ん ば る と い い の か 。」 - 11 - がわかり子どもたちは活動の見通しをもつこ とができると考えた。1時間の見通しをもつ ことで、活動の意欲も高まると考えた。 また、振り返りカードに「自分がほめられ たところ」と「友達のよかったところ」の欄 を設け、友達のよかったところをお互いに出 し合う時間を設けた。友達のよかったところ を見つけるためには、友達の行動を見たり、 しっかり話を聞いたりすることが大切である。 このようなお互いを尊重し合う態度が対話活 図 10「『 お 手 紙 』の 振 り 返 り カ ー ド 」 動の基本であり、これからのコミュニケーシ ョ ン 能 力 の 育 成 に 結 び 付 く と 考 え た 。( 図 10) さらに、毎時間の音読練習の後で「今日の の名人さん」のコーナーをつくり、アピール どおりに読めた友達をみんなに紹介する場を 設けた。一単元の学習の中で全員が1度は「 今日の名人さん」に認められるように配慮し 友 達 か ら 、「 寂 し い 気 持 ち が わ か た。 っ た 」と 言 わ れ た よ 。う れ し い な 。 オ 成果と課題 視点1 図 11「 友 達 か ら 書 い て も ら っ た 振 り 返 り カ ー 子どもたちに自分の思いをもたせる工夫 ドを読む子どもの様子」 ○教科書の挿絵を大きくすることで、場面の様子をとらえやすくなった。 言葉の意味 がわからない子どもにとっては、絵があると見て理解することができ、効果的だっ た。1 年では、前の場面の絵を一緒に提示した かったので掛図や拡大コピーしたものを使った が、デジタル教材をいかしプロジェクターを使 って投影してもよかった。登場人物のお面を作 ったり、小物を作ったりすることで物語を身近 にとらえ登場人物の気持ちを考えやすくなった。 2 年では、スイミーと仲間の魚をぺープサート で作らせた。それぞれの登場人物になりきっ て、話の続きを考えたり、教科書にない会話 を考えたりする子どももおり、想像を膨らま 図 12「 挿 絵 か ら 場 面 の 様 子 を 想 像 し て い る 子どもたちの様子」 すこができた。 ○自分の思いがもてなかった子どもにとって、ヒントカードは、場面の様子や登場人 物の気持ちを考えるきっかけとなり効果的だった。しかし、カードの内容から読み を深めるまでにはいたらなかった。 子どもたちが本質にせまれるようなヒントカー ドの言葉の工夫が必要だと思った。また、一人一人のつまずきが様々であるので、 それぞれの子どもの実態に合わせたヒントカードが必要だと思った。 - 12 - ○吹き出しを用いた学習シートを使ったので、登場人物の気持ちになって書くことが できた。しかし、なかなか書けない子どもには、場面の説明をしたり、場面の前後 をもう一度読んであげたり、子どもの実態に合わせた助言が必要だった。 また、学 習シートをきっかけとして友達との対話をさせていく時、シートに書いたことで満 足してしまい、そこから対話へと結びつかない子 どももいた。 視点2 自分の思いを表現させる工夫 ○自分の思いを発表することに消極的な子どもにとって、学習カードに一度書いてみ ることで、自分の考えがまとまるというよさはあった。しかし、書いたことで満足 し、そこから思いが広がらないという反省もあった。また、シートに頼ってし まう ところがあり友達の考えに対し、柔軟に思いを語ることができない子どももいた。 今後はさらに、友達の考えを受け止めた上で、柔軟に自分の考えや意見を伝えるこ とができる子どもをめざしていきたいと思う。 ○ペア対話という形をとったので、大勢の前で発表する恥ずかしさはほとんどなく 、 それぞれリラックスして自分の思いを語ることができた。 取り組み始めた頃に比べ、 スムーズに進むようになった。二人組という気楽さが、話すきっかけとなったのだ と思う。全体の前では、恥ずかしくて話せないが二人組だと話せるという子どもが 増えたことはよかった。 ○学習の時間の最後には、必ず音読の練習の時間を設けた。友達の前でどんな読み方 をするかアピールさせることで音読のめあてをもたせることができた。音読を聞い た方は、感想を述べるようにさせたので、アピールに合ったコメントをするように 意識してしっかり聞くようになった 。 視点3 表現してよかったという満足感や充実感をもたせる工夫 ○自己評価カードを学習の初めに配ったことで、 1 時間の学習の見通しをもたせるこ とができた。学習の初めに評価の観点がわか るので、多くの子どもが評価の観点に近づこ う と 努 力 し 、め あ て を 達 成 す る こ と が で き た 。 達成の喜びとともに、さらに、自信へとつな が っ た よ う だ 。( 図 13) ○自己評価に加え、相互評価を入れたことで、 友達の発表をしっかり聞こうとする子どもが 増えてきた。自分が認めてもらうと自然と友 達も認めることができ、お互いの人間関係に 図 13「 学 習 の 最 後 の 自 己 評 価 」 もいい効果が得られた。 ○ 「 今 日 の 名 人 さ ん 」の コ ー ナ ー を 設 け る こ と で 自 分 も「 名 人 さ ん 」に な り た い と 思 い意欲満々の子どもが増えてきた。音読の練習のときは、アピールしたところを認 めてもらえるように読もうとする姿が見られた。友達から「名人さん」に認めても らうことで学習に対する充実感をもたせることができた。子どものよさは教師側だ けでは気づかない面もあり、自信と意欲を次時の学習につなげることができた。 - 13 - ② 中学年部の取り組み ア 中学年部会のテーマ 自分の思いや考えを進んで伝え合うことができる子どもの育成 イ 中学年部のテーマについて 中学年では、低学年部の「自分の思いを楽しんで相手に伝えようとする子どもの育 成 」と い う テ ー マ を 受 け て 、 「自分の思いや考えを進んで伝え合うことができる子ども の 育 成 」と い う テ ー マ 設 定 を し 、 「 話 す こ と・聞 く こ と 」の 領 域 を 中 心 に 取 り 組 み 、進 んで伝え合うことのできる子どもの育成を目指すこととした。 ウ 単元名 3年 じゅんじょが分かるように、話したり聞いたりしよう 「道あんないをしよう」 進んで話し合い、発表しよう 「『 分 類 』 と い う こ と 」 4年 大事なことを落とさずに話したり聞いたりしよう 「伝言はまちがえずに」 調べて発表しよう 「『 伝 え 合 う 』 と い う こ と 」 エ 実践の概要 視点1 子どもたちに自分の思いをもたせる工夫 〈相手意識・目的意識をもたせる指導の工夫〉 3 年 「 道 案 内 を し よ う 」 で は 、「 相 手 が 迷 わ な いように道案内しよう」というめあてをもたせ、 目的意識をはっきりさせて学習を進めた。 ま た 、「 大 人 」 を 相 手 に し た 場 合 を 設 定 し 、 相 手意識をもたせて活動ができるようにした。 子どもたちに、みんなで確認した相手が迷わな いようにするための道案内のポイントに加えて、 丁寧な言葉遣いが大切になることに気づかせ、相 手 意 識 ・ 目 的 意 識 を も っ て 活 動 で き る よ う に し た 。 図 13「 ポ イ ン ト を 明 確 に し た 板 書 」 〈意欲を高める活動の工夫〉 子 ど も た ち が 、道 案 内 の ポ イ ン ト( 順 序 、目 印 、 方向)を落とさず、自分なりの思いをしっかりも つことができるように、教科書の挿絵の拡大地図 を活用した。子どもたちは、視覚的に受け止める ことで、イメージを高めたり、自分の考えを確か めたりして、意欲的に学習を進めることができる ようにした。代表の子どもの発表の際も、拡大地 図を見ながら、相手が道に迷わないように、安心 - 14 - 図 14「 拡 大 地 図 を 使 っ て 説 明 す る 子どもの様子」 し て 道 案 内 が で き る よ う に し た 。( 図 14) ま た 、3 年「『 分 類 』と い う こ と 」で は 、猫 の 分け方の共通点や相違点について興味をもち、 意欲的に取り組めるようにするために、導入の 段階で「分類ビンゴゲーム」を取り入れ、楽し い雰囲気の中で自分の分け方との共通点・相違 点 に 気 を つ け て 聞 く よ う に 工 夫 し た 。( 図 15) 4 年「 伝 言 は ま ち が え ず に 」で は 、電 話 で 伝 言を頼まれた場合の具体的な場面を想定した 内 容 を い く つ か 用 意 し 、制 限 時 間 内 に 三 人 に 伝 わ る よ う に す る 「 伝 言 ゲ ー ム 」 を 設 定 し た 。「 何 図 15「 分 類 ビ ン ゴ ゲ ー ム の 様 子 」 の た め に 」「 だ れ に 」「 ど ん な こ と を 」伝 え る の か を 明 確 に す る こ と が で き 、臨 場 感 を も っ て 活 動 す る こ と が で き る よ う 工 夫 し た 。 (図 16) よし、がんばって正しく しっかり聞いて次の 伝えるぞ! 人に伝えるぞ! サッカー部の電話連 サッカー部の練習試合6 絡網です。6月15 月16日に延期と・・・ 日の練習試合は、雨 (大事なことを落とさないように の た め 16 日 に 延 期 メ モ し 、分 か ら な い と こ ろ は も う 一 になりました。 度 聞 き 直 し ま す 。) 図 16「 伝 言 ゲ ー ム の 様 子 」 ま た 、4 年「『 伝 え 合 う 』と い う こ と 」で は 、総 合 的 な 学 習 の 時 間 と 関 連 さ せ て 、 点字や手話にふれる学習を取り入れて、自分なりの課題を もちやすくし、意欲的に 活動が進められるようにした。点字については、熊本市の点字図書館から点字をう つ 道 具( 図 17)を お 借 り し 、点 字 を う つ 体 験 学 習 を 行 っ た 。点 字 を 打 つ と き に は 裏 返しに打たないといけないことや、 直角に針を刺さなければならないことに気づく ことができた。その結果、一人一人が下のような課題をもち、興味をもって調べ活 動を行うことができた。 子どもたちが調べた課題 ○ 点字の打ち方 ○ 点字さがし ○ 点字の歴史について ○ 点字を読む ○ アイマスク体験 図 17「 点 字 を う つ 道 具 」 ○ 目の不自由な人の生活について ○ 手話のでき方 - 15 - 視点2 自分の思いを表現させる工夫 〈対話モデルの工夫〉 CDや教師による対話モデルの提示により、 「 ど ん な こ と を 」「 ど ん な ふ う に 」 表 現 す る の か を 考 え 、よ り よ い 話 し 方 や 聞 き 方 に つ い て 話 し 合 う よ う に し た 。特 に 、教 師 に よ る 対 話 モ デ ル の 提 示 で は 、子 ど も が 真 似 で き る よ う に よ い お 手 本 を 演じ、話す側、聞 く側の「よ かったと ころ」に気 図 18「 教 師 に よ る 対 話 モ デ ル の 提 示 」 づ く こ と が で き る よ う に し た 。子 ど も た ち か ら は 、 本時の活動のポイントを押さえる発言がたくさ ん 出 さ れ 、め あ て を 意 識 し た 意 欲 的 な 活 動 に つ な が る よ う に し た 。 (図 18) ま た 、 4 年 「『 伝 え 合 う 』 と い う こ と 」 で は 、 発 表 の モ デ ル を ビ デ オ で 示 し た 。音 声 だ け で な く 、 話す姿勢や資料の示し方についても確認するこ と が で き 効 果 的 で あ っ た 。さ ら に 、3 人 組 の 話 し 合 い の モ デ ル も ビ デ オ で 示 し た の で 、発 表 の 練 習 のやり方についても確認することができ、スムー 図 19「 ビ デ オ で の モ デ ル の 提 示 」 ズ な 活 動 へ と つ な が っ た 。 (図 19) 〈伝え合う活動の工夫〉 3 年「 道 案 内 を し よ う 」 で は 、全 員 に 発 表 す る 機 会 を つ く る た め 、一 人 一 人 が 生 き 私は初めて学校に 私は評価する 来た大人の役ね。 役 。し っ か り 見 図書室は・・ とかなくちゃ。 生きと活動できるようにローテーシ ョンを組んで、三人組での対話活動 を 行 っ た 。( 図 20) 評価する役の子どもは、道案内の 役をした子どもによかったところを 伝えるようにした。どの子どもにも 役割をもたせた三人組 の対話活動で、 子どもたちは集中して活動すること ができた。 4 年 「『 伝 え 合 う 』 と い う こ と 」 で 教 室 を 出 て 右 へ 行 き ま す 。 ・ ・ ・ 私 は 道 案 内 を す る 役 ね 。 図 書 室 は 、 図 20 「 三 人 組 で の 対 話 活 動 の 様 子 」 も三人組の活動を取り入れ、ローテー ションで司会者、発表者、アドバイザ ーの役を交代しながらお互いに伝え合うことがで きるようにした。その結果、三人組で時間いっぱ い繰り返し練習を続け、アドバイザーの友達に「 1 度目の発表より、2 度目の発表が上手になったと 言 わ れ た 。」 と 喜 ん で い る 場 面 が 見 ら れ た 。( 図 21) - 16 - 図 21 「 三 人 組 で の 練 習 の 様 子 」 視点3 表現してよかったという満足感や充実感をもたせる評価の工夫 〈振り返りカードの工夫〉 下 の よ う な 自 己 評 価 の カ ー ド( 図 22)を 学 習 の め あ て の 確 認 を す る と き に 配 る よ う に し て い る 。学 習 が 終 わ っ た 後 、 「 自 分 の 活 動 は ど う だ っ た か な 」と 振 り 返 る の で は な く 、活 動 を す る 前 に 、 「 今 日 の 活 動 は 、こ ん な と こ ろ に 気 を 付 け て が ん ば れ ば い い の か 」 と い う 学 習 の ポ イ ン ト を 事 前 に 確 認 し て 活 動 す る こ と に よ り 、活 動 の 意 欲 を よ り 高 め 、 めあてを達成できるようにした。 また、学習のまとめで自己評価をするときに、本時の学習のめあてや評価の観点に 沿った振り返りができるようになり、学習に対する満足感や充実感をもてるようにし た。 図 22 「 4 年 振り返りカード」 〈 相 互 評 価 の 工 夫 ( 友 達 の き ら り )〉 「 友 達 の き ら り 」を 見 つ け 学 習 の 最 後 に 、そ の 時 間 で 見 つ け た 友 達 の 活 動 の よ か た人はいませんか。 っ た と こ ろ を「 友 達 の き ら り 」と し て 出 し 合 う 時 間 を 設 け て い る 。教 師 に 認 め て も ら う こ と も う れ し い が、友達に認めてもらうのもうれしいものである。 いつも同じ教室で学習しているからこそ気づく こ と も あ る 。「 ○ ○ さ ん が 、 発 表 を が ん ば っ て い ま し た 。」 「○○くんが質問するのをがんばっていまし た 。」「 ○ ○ さ ん の 意 見 が よ か っ た で す 。」 な ど の 意 見が出され、子どもたちの満足感 や充実感につながっていると思わ れる。 発表できた子どもの自信にもな る し 、名 前 を あ げ ら れ た 子 ど も の 自 信 に も つ な が っ た 。( 図 23) ろ を 見 つ け ま し た 。 お 友 達 の い い と こ 図 23「 振 り 返 り の 時 間 の 様 子 」 - 17 - オ 成果と課題 視点1 子どもたちに自分の思いをもたせる工夫 ○「伝言ゲーム」や「分類ビンゴゲーム」など子どもたちの意欲が高まる活動を設定 したことで、 「 伝 え た い 」と い う 思 い を よ り 高 め さ せ 、学 習 活 動 に 取 り 組 ま せ る こ と ができた。日常生活にあるような具体的な場面を想定した伝言内容を用意したこと も 、子 ど も た ち の 学 習 意 欲 を 高 め る こ と に つ な が っ た と 考 え ら れ る 。さ ら に 、 「制限 時間内に相手に伝える」というルールを設けることで、臨場感をもたせ、正確に伝 えようとする意欲的な子どもたちの姿を見ることができた。 ○教師による話し方・聞き方のモデルを提示したことで、子どもたちに伝言するとき のポイントを考えさせることに効果があった。教師が「 よくないモデル」を提示す ることで、話す速さ、正確にメモを取ることの大事さ、大切なことを確認すること など伝言するときの大切なポイントをおさえさせることができた。 ○今後は、目的意識を持たせることに加えて、さまざまな相手意識を持たせた活動が できるような工夫をしていきたい。 視点2 自分の思いを表現させる工夫 ○子どもが真似できるようなお手本となる「よいモデル」を教師が演じることで、話 し手、聞き手のよかったところに気づかせ、子どもたちの表現に生かすことができ たと考えられる。教師が子どもたちの目の前で、そして、子どもたちの視点に立っ た「 よ い モ デ ル 」を 演 じ て み せ る こ と は 、子 ど も た ち に 話 し 方・聞 き 方 を 理 解 さ せ 、 意欲を高め、実際に表現させることに効果があっ た。 ○二人組でのペア対話や三、四人組でのグループで の話し合い活動など学習活動の内容に応じて、でき るだけたくさんの表現活動の場を設定したことで、 子どもたちの表現スキルが少しずつ向上していく姿 が 見 ら れ た 。( 図 24) ○話し手、聞き手、アドバイザーなどの役割を交代し な が ら の 活 動 で は 、子 ど も た ち に 役 割 を 自 覚 さ せ 、 集中して取り組ませることができていた。今後は 図 24「 ペ ア 対 話 で の 表 現 活 動 の 様 子 」 さらに対話のポイントに気を付けながら互いによ さと改善点を評価し合いながら活動できるように工夫していきたい。 視点3 表現してよかったという満足感や充実感をもたせる評価の工夫 ○自己評価カードを学習のはじめに配ったうえで本時の学習のめあてや活動の ポイン トを確認したことで、学習の見通しをもたせ、より多くの子どもがめあてを達成す ることにでき、学習の満足感を高めることができた。 ○「友達のきらり」という言葉が合い言葉のように子どもたちの間で定着し、子ども 同士ならではのよさの気づきが授業の最後に発表され、よさを認めてもらった子ど もは、自信を持つことにつながり、学習したことに対する満足感や充実感をもたせ ることができた。さらに、教師が気づくことができなかったこどものよさを発見す ることにもつながり、次時への学習に生かすことができた。 - 18 - ③ 高学年部の取り組み ア 高学年部のテーマ 自 分 の 思 い や考 え を 的確 に伝 え 合 う こ とが で き る子 ども の 育 成 イ 高学年部のテーマについて 高学年部では、低・中学年で培った対話力をいろいろな場面で生かせるようにした い と い う 観 点 か ら 、「 話 す こ と ・ 聞 く こ と 」 の 領 域 を 中 心 に し な が ら 、 国 語 の 複 合 単 元や他教科等との関連も図りながら実践に取り組んだ。 ウ 単元名 5年 話の組み立てや言葉づかいを考えてたずねよう 「インタビュー名人になろう」 伝え合って考えよう 6年 「人と『もの』との付き合い方」 読書の世界を深めよう 「森へ」 ともに考えるために伝えよう エ 「本は友達」 「みんなで生きる町」 実践の概要 視点1 子どもたちに自分の思いをもたせる工夫 〈相手意識・目的意識をもたせる指導の工夫〉 高学年部では、国語と他教科等との関連を図った指導に取り組んだ。5年生では、新 聞係の活動を発展させて「○○さん新聞」作りを、6年生では、縦割り班活動の一環で あ る「 縦 割 り 班 読 み 聞 か せ 」と 関 連 付 け 、 「 縦 割 り 班 ブ ッ ク ト ー ク 」を 行 う と い う 場 を 設 定した。このことによって、相手や目的を意識し、話す意図を明確にもって取り組むこ と が で き る よ う 工 夫 し た 。( 図 25) 練習してきた成果を生か 今回わたしが紹介 そう。本をしっかり見せ する本は、 「ママブ ながら、1年生にも分か タさん、いしにな る言葉で話そう。 る」です。 この本は・・・ どんなおもしろい本を 紹介してくれるか楽し みだなあ。 図 25「『 縦 割 り 班 ブ ッ ク ト ー ク 』 の 様 子 」 また、5年「伝え合って考えよう」では、4年時の見学旅行で見た、まだ使えるごみ の こ と や 1 学 期 の 家 庭 科「 身 の 回 り を 整 理 し よ う 」の 学 習 で 出 た 子 ど も た ち の 気 づ き「 買 っただけで使っていないものが結構あった」などから発展させて、課題を見出す活動 を 取 り 入 れ た 。そ の 結 果 、子 ど も た ち は 、 「 わ が 家 の も っ た い な い ご み 」、 「わが家のリサイ ク ル 」、「 わ が 家 の 環 境 に や さ し い 取 り 組 み 」、「 学 校 で リ サ イ ク ル し て い る も の 」、「 通 学 路 の ご み 調 べ 」、「 イ ン タ ビ ュ ー ごみを減らす工夫」などの課題を自分で設定し、調べ る 活 動 を 行 う こ と が で き た 。( 図 26) - 19 - 図 26「 子 ど も た ち が 調 べ た こ と を も と に ま と め た 発 表 資 料 」 視点2 自分の思いを表現させる工夫 〈メモ・シートの工夫〉 5年「インタビュー名人になろう」では チャート式の質問用紙を作成し、質問に対 する答えの予想を2つずつ用意させ、 「受け て返す」インタビューを進めやすいように し た( 図 27)。ま た 、 「伝え合って考えよう」 では、 「 課 題・理 由 」、 「 調 べ た こ と・結 果 」、 「 意 見 ・ 考 え 」、「 投 げ か け 」 を 付 箋 で 色 分 けしてメモをさせ、 「 調 べ た 結 果 」や「 自 分 の考え、意見」が発表の中に入っているか 確認しやすくした。そして、話の構成例をいく 図 27「 チ ャ ー ト 式 質 問 用 紙 」 つ か 示 し 、 付 箋 を 並 べ 替 え な が ら 自 分 に あ っ た 構 成 を 考 え ら れ る よ う に し た 。( 図 28) 子どもたちはこのとき作成したシートをもとにグループで発表の練習を行い、納得いか ない場合やアドバイスをもらった場合には、付箋を貼り替えるなどして意見交換会の直 前まで内容や構成を工夫していた。 図 28「 発 表 内 容 の 色 分 け と 、 構 成 の パ タ ー ン の 提 示 」 - 20 - 6年「読書の世界を広げよう」では、司書に予め示してもらったブックトークの手本を 参考に発表原稿を作成させ、発表に苦手意識をもつ子どもの発表することへの抵 抗を和ら げるようにした。 〈対話モデルの提示〉 インタビューやブックトーク、提案の練習を始める前に、よい例とよくない例の2タイ プの対話モデルを提示し、子どもたちがインタビューやブックトーク 、提案のポイントを より具体的につかんで練習に取り組めるようにした。また、このポイントが、自己評価の 視 点 と 結 び 付 く よ う に 工 夫 し た 。( 図 29) 感想を入れな 聞き手をしっかり がらインタビ 見ながら話してい ューしている る よ 。表 情 も 明 る い よ。 ね。 図 29「 教 師 に よ る 対 話 モ デ ル の 提 示 ( V T R )」 また、5年「伝え合って考えよう」では、数人の教師に よる意見交換会の様子をビデオで提示し、意見交換会の進 め方やどんな意見を交換すればよいかを子どもにつかま せ る よ う に し た 。ビ デ オ の 提 示 に よ り 、子 ど も た ち は 、 「自 分 の 調 べ た こ と と 似 て い る と こ ろ や 違 う と こ ろ 」、「 友 達 の 考えに対する意見」など、意見交換会のポイントをつかん 図 30「 意 見 交 換 会 の 例 の 提 示 ( V T R )」 で 会 に 臨 む こ と が で き た 。( 図 30) 〈伝え合う活動の工夫〉 1学期は、1単位時間において、全員に 表現する機会をつくるため ○○さんの好きな場所は 学校が 好き で どこですか。 す。 に、二~三人組の対話活動 を取り入れた。 5年「インタビュー名人 予想していない答え が返ってきたぞ。次 になろう」においては、話 になんと質問しよ し手、聞き手の他にインタ う・・・。 ビューの仕方についての評 価を行うアドバイザーを加 どうして学校が一番好 みんなに会えていっしょ えた三人組で対話活動を行 きなんですか。 に遊べるからです。 うようにした。このことで、 図 31「 イ ン タ ビ ュ ー の 様 子 」 聞き手はインタビューに専念することができ、 「受けて 返 す 」イ ン タ ビ ュ ー が ス ム ー ズ に 進 み 、本 時 の ね ら い を 十 分 に 達 成 す る こ と が で き た 。 (図 31) 6 年 生 で は 、 相 手 を 代 え な が ら 2 人 組 で ブ ッ ク ト ー ク の 練 習 を 行 い 、 本 の 見 せ 方 や 間 の取り方、話すときの表情などをアドバイスし合うことができた。 2 学 期 は 、5 年 生 で は 5 ~ 6 人 組 で の 意 見 交 換 会 ( 図 32)を 、6 年 生 で は グ ル ー プ 対 グ - 21 - ル ー プ で ア ド バ イ ス を 行 う 場 を 設 定 し た 。( 図 33) こ の こ と に よ り 、 一 度 に 複 数 の 意 見 を 聞くことができ、より対話活動が子どもにとって意義ある ものになると考えた。5年生の 意 見 交 換 会 で は 、友 達 の 発 表 か ら 、自 分 の 体 験 や 家 庭 の 様 子 を 思 い 出 し 、 「○○さんの発表 に 関 連 し て 、 自 分 は こ ん な コ マ ー シ ャ ル を 見 た こ と が あ り ま す 。」 や 、「 ○ ○ さ ん の 家 の 工 夫 と 違 っ て 、わ が 家 で は こ ん な リ サ イ ク ル を し て い ま す 。」な ど 、意 見 を 交 換 す る こ と が で きた。 図 32「 5 年 視点3 意見交換会の様子」 図 33「 6 年 グ ル ー プ 同 士 で の ア ド バ イ ス の 様 子 」 表現してよかったという満足感や充実感をもたせる評価の工夫 〈相互評価の工夫〉 学習の初めに振り返りカードを子どもに配付し、本時で身に付けたいことを子どもたち が意識して活動に取り組めるようにした。また、提示する際は、本時において特に意識し て取り組ませたい項目に子どもたちの気持ちが向くように、対話モデルを活用したり、 項 目の段階づけを行うなど投げかけを工夫したりした。 5年生の「インタビュー名人になろう」では、アドバイザーが評価に専念できたため、 その場で評価の項目に沿って話し手の表現のよかったところや改善点についてアドバイス することができ、相互評価に対話活動を有効に活用することができた。また、学習の終末 で は 、相 互 評 価 を 参 考 に し な が ら 自 己 評 価 に つ な げ る こ と が で き た 。( 図 34・35)さ ら に 、 「 伝 え 合 っ て 考 え よ う 」で は 、 「 聞 く こ と 」と「 話 す こ と 」に 項 目 を 分 け る こ と で 、聞 く こ とばかりでなく、友達の発表を受けて話したり、自分の考えを伝え たりすることも十分意 識することができ、評価が低かった項目を次時の重点課題として取り組む姿も見られた。 ⑤や⑥ができるよ 予想外の答えが うになると、 「イン 返 っ て き た け タビュー名人」に ど、上手に切り ぐっと近づきます 返すことができ よ。 たので、よかっ たと思います。 図 34「『 イ ン タ ビ ュ ー 名 人 に な ろ う』での相互評価の様子」 - 22 - 図 35「『 イ ン タ ビ ュ ー 名 人 に な ろ う 』 での評価の視点」 5年振り返りシート 6年自己評価シート 図 36「 2 学 期 の 自 己 評 価 シ ー ト 」 オ 成果と課題 視点1 子どもたちに自分の思いをもたせる工夫 ○他教科等との関連を図った取り組みを行ったことで、子どもたちは意欲的に学習に取 り組み、学習の目標も十分に達成できたと考える。 ○「インタビュー名人になろう」では、学習後に総合的な学習での福祉施設のインタビ ューを行ったが、今回の学習を生かして「受けて返す」インタビューを実践すること が で き た 。( 図 37) これからも他教科等との関連を図り、子どもたちが相手意識、目的意識を持って学 習に取り組むことができるよう単元構成を工夫していきたい。 視点2 自分の思いを表現させる工夫 ○対話モデルで学習のポイントを提示し、振り返り シートの評価項目と組み合わせて活用したことで、 子どもたちは本時の学習のポイントを容易につか むことができ、とても有効であったと考える。今 後もより効果的な提示の仕方を考えていきたい。 ○学習の目標を十分達成させるため、また、子ども たちの対話活動の段階に応じて、2~3人組の活 動からグループでの活動まで単元に応じて対話活 図 37「 福 祉 施 設 で の 動の形態を工夫してきた。そのときの学習に合っ インタビューの様子」 た人数構成にしたことで、一人一人に対話活動が保障され、同時に 、子どもたちには 対話活動のよさを感じさせることができたと考える。 ○対話の仕方がある程度身に付いたら、対話モデルを超えて自分たちの言葉でより生き 生きとしたやりとりができるような支援を考えていく必要がある。 視点3 表現してよかったという満足感や充実感をもたせる工夫 ○評価の視点を意識した主体的な学習活動が展開されるようになった。 ○学習で学んだことが日常生活でも生かされ、本物の伝え合う力と結びつくように、評 価の視点を掲示するなどして、常に意識できるようにしていきたい。 - 23 - (2) 関 わ り の 中 で 表 現 す る 活 動 の 工 夫 ① いろいろな人と関わる場の工夫 いろいろな 人 と 関 わる 場 の工 夫 をすること で、伝 え合 うこと のよさ を感 じさせ、国 語 科 で学 んだことを生 かして対 話 する力 を育 てることをねらった。 ア 学級での取り組み おはなしタイム 毎週木曜日の朝の活動の時間を利用して行っている。 今一番がんばっている ことは何ですか。 二人組で相手のこ とをインタビュー し た よ 。初 め て 知 る こ と も あ っ て 、み ん なにも伝えたくな ったよ。 一輪車の練習です。 図 39「 お は な し タ イ ム で の ペ ア 対 話 」 図 38「 振 り 返 り カ ー ド 」 子 ど も た ち は 二 人 組 で 話 す こ と を 純 粋 に 楽 し ん で い る 。こ の 年間計画を立てて実践してい 子 ど も た ち の 気 持 ち を し っ か り は ぐ く ん で い く こ と が 、伝 え ます。 合う力の育成の基盤になると考える。 スピーチ活動 朝 の 会 や 帰 り の 会 を 利 用 し て 、1 対 多 の 対 話 活 動 を 経 験 す る 場 と し ている。 熊本城本丸御殿の入場者が 五十万人を超えたそうで わ た し は 、そ の 記 事 を 紹 介 す。そんなにたくさんの人 し て も ら っ て 、ぜ ひ 見 に 行 が見に来ているなんてすご きたいなと思いましたが、 いなと思いました。 ○○さんはもう行きまし たか。 まだ行っていませんが、夏休みに 図 40「 朝 の ス ピ ー チ 活 動 」 は連れて行ってもらうことになっ ②ま 全す校。で 組る みの が 楽 し てい わの た取 しり も見 みです。 スピーチを続けていく中で、よりよい伝え方 に気づいたり、スピーチの内容に踏み込んだ 対話ができるようになったりしてきている。 - 24 - イ 全校での取り組み 縦割り班活動 異 学 年 と の ふ れ あ い の 中 で 、相 手 を 意 識 し た 話 し 方 な ど 楽 し い 対 話活動を実践する場と位置付けている。 ぼくのおすすめの本は、 はい。だってぼく メロンが好き 「ねぎぼうずのねぎたろ んちでつくって な人! う 」で す 。こ の 本 は ・・ ・ るもん。 いつもどんな本を読 んでくれるか楽しみ だよ。 図 41「 縦 割 り 班 読 み 聞 か せ 」 学期に一度行う「縦割り班読み聞かせ」です。 6年生が本を選んで読み聞かせします。 図 42「 顔 合 わ せ 会 」 低 学年 も楽 しめ る本を 選ん だり、遊び の説 明の 時 簡単なゲームをしています。 に1年生にも分かるよう言葉を選んで説明した りする姿が見られるようになった。 集会活動 児 童 集 会 、音 楽 集 会 を 、多 く の 人 の 前 で 発 表 す る 場 と し て だ け で な く 、 全体対話の機会として位置付け、発表者へ質問したり感想を返したりする時間をとってい る。 おむすびころりん すっとんとん。 話を覚えて大きな声で 言っていたのですごい なあと思いました。 図 43「 1 年 生 の 発 表 」 図 45「 感 想 を 返 す 」 使ったものは元の場所に片付けよ う 。体 育 館 は 、決 め ら れ た 曜 日 に 使 おう。 発 表 の 声 が 少 し ず つ 大 き く な り 、感 想 を 返 す 子 ど も も 増 え て き た 。こ れ か ら は 学 年 に 応 じ た 内 容 を 相 手 に返せるような手立てを講じていく必要がある。 図 44「 体 育 委 員 会 の 発 表 」 - 25 - ② いろいろな言葉と関わる場の工夫 いろいろな言 葉 と関 わる場 の工 夫 をすることで、いろいろな言 葉 とのふれあいを楽 しみ、 はっきりとした声 で相 手 に思 いを伝 え るための基 盤 づくりをすることをねらった。 今 月 のあいうえお は っ き り と し た 声 で 、相 手 に 思 い を 伝 え る た め の 技 能 を 育 て る こ と を ね ら っ て 毎 月「 今 月 の あ い う え お 」を 決 め 、学 級 ご と に し っ か り 声 を 出 す 発 声 練 習 の 時 間 を 確 保 し て い る 。 また、月1回の全校集会で、 全校で声をそろえて唱える場 を設けている。表情を付けた り、リズムを付けたり、分か れて言ったりと変化をもたせ き れ い な あ く び の 「 あ 」 「 あ 」 るように工夫して取り組んで いる。 「今月のあいうえお」は、 お そ ろ し い と き の 「 あ 」 び っ く り し た 「 あ 」 短 い 「 あ 」 長 く の ば す 「 あ 」 う れ し い か な し い 小 さ い 「 あ 」 「 あ 」 「 あ 」 大 き い 「 あ 」 ふ つ う の 「 あ 」 「 あ 」 五 月 の あ い う え お 図 46「 五 月 の あ い う え お 」 詩集や早口言葉などから選び、 月初めに各クラスに拡大コピ 月 初 め は 、慣 れ ず に た ど た ど し い 読 み だ が 、日 を ーした紙を係の方で準備し配 重 ね る ご と に 上 達 し て い く 。暗 唱 で き る よ う に な っ っ て い る 。( 図 46) て、友達と声を出し合うことを楽しんでいる。 ふれあい読 書 読 書 を 通 し て 、親 子 で 時 間 を 共 有 す る こ と に よ り 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 深 め る と と もに、読書に親しむ機会としている。期間は夏休みとし、家族でいっしょに本を読み、 読書カードに記入してもらっている。 小 さ い 頃 、読 み 聞 か せ 子どもたちの中 久しぶりにゆっくり をしていたことを思 には、家族といっ 子どもと過ごせ楽し い出し、懐かしいわ。 しょに読むことを い時間がもてるね。 楽しむために本を 借りていく姿が見 られた。家庭で読 書を楽しむ時間を もつことのよさを おうちの人といっ 感じてもらえる家 しょに読めて楽し 庭が増えてきてい かった。 る。 図 47「 ふ れ あ い 読 書 の イ メ ー ジ 」 - 26 - 掲 示 による語 りかけ 〈図書室の設営〉 本に親しんでほしいという願いから、親しみやす い 図 書 室 経 営 を 工 夫 し て い る 。図 書 室 の 入 り 口 に は 、 季節や時期に合わせた飾り付けを工夫し、雰囲気づ くりにも力を入れている。おすすめ の本コーナーを 設け、季節にあった本を置いて子どもたちの興味を 引くようにしている。 図 48「 お す す め の 本 の コ ー ナ ー 」 ぼくの お す す め の この本は、 本 だ よ 。 ぜ おもしろそうだ。 ひ 、読 ん で み 読んでみたいな。 てね。 図 49「 お す す め の 本 の 紹 介 」 〈校内や教室の掲示〉 教室壁面を利用し、対話の仕方を表示したり 、勇気 を出して発表できるよう「教室はまちがうところだ」 な ど を 掲 示 し た り し て い る 。( 図 50) また、いろい ろな言葉とふれあい、言葉のおもしろさやよさに気づ いてもらえるように廊下や階段、掲示板などを使って 「詩」の紹介や早口言葉、四字熟語などを掲示してい る 。( 図 51・ 52) 図 50「 全 体 で の 対 話 の 仕 方 」 図 51「 季 節 の 詩 の 紹 介 」 図 52「 階 段 側 面 の 掲 示 の 工 夫 」 身 近 な と こ ろ に 心 豊 か に す る 言 葉 を 掲 示 す る こ と で 、目 か ら 情 報 を 得 た り 、実 際 に 声 に 出 し て 口 ず さ ん だ り し て 楽 し む 姿 が 見 ら れ た 。常 掲 し て い る 対 話 の 仕 方 は、自信がもてなかった子どもの手助けとなっていると思われる。 - 27 - 3 研究の成果と課題 (1) 研究の成果 ① アンケートの結果から(調査対象:2~6年 150人) 子どもたちの意識の変化をアンケートの結果から見てみると次のようになる。 自分なりの思いや考え、伝えたいことを頭の中に思い描くことがで きますか 話したり聞いたりすることを楽しんでいますか 20年12月 41.6 19年7月 40 53.2 0% 10% 20% 13.4 29.2 30% 40% 50% 60% 70% 20年12月 15.6 80% 34.9 19年7月 90% 43.5 0% 100% 10% 適当な音量、速さで話していますか 20年12月 46.3 19年7月 0% 10% 20% 13.4 3.4 35.7 30% 40% 50% 60% 16.2 70% 61.7 19年7月 80% 6.5 90% 0% 10% 20% 30% 19.5 40% 50% 60% 70% 30% 40% 50% 60% 4 14.9 70% 80% 3.2 90% 100% 20年12月 53 19年7月 48.7 100% 0% 10% 20% 36.9 6.7 3.4 30 30% 40% 50% 60% 13 70% 8.4 80% 90% 100% 班の中で話すことができますか 31.5 66.2 40.3 20% 二人組で話すことができますか 20年12月 10.7 ていねいな言葉で話すことができますか 36.9 41.6 50.3 80% 5.4 12.3 90% 20年12月 73.8 19年7月 100% 21.5 64.3 0% 10% 20% 30% 22.7 40% 50% 60% 70% 80% 3.4 11 90% 100% 図 53「 子 ど も へ の ア ン ケ ー ト の 結 果 」 昨年度6月と本年度12月に行ったアンケートの結果を見ると、全体的に「たい へ ん そ う 思 う 」 と 答 え た 子 ど も の 割 合 は 減 少 し た 項 目 も あ る が 、「 た い へ ん そ う 思 う」と「そう思う」と答えた子どもを合わせると、ほとんどの項目で伸びが見られ た。よりよく「話すこと・聞くこと」への子どもたちの意識の高まりを示している と思われる。 特 に 、「 二 人 組 で 話 す こ と 」 に つ い て は 、 も と も と 高 い 割 合 を 示 し て い た が 、 さ らに子どもたちが自信をもってきたことがうかがえる。国語科の学習やおはなしタ イムなどでペア対話を取り入れてきた成果ではないかと考える。 また、 「 相 手 が 何 を 伝 え た い か 考 え な が ら 聞 い て い る 」と い う 自 覚 も 高 ま っ て き て いる。対話活動を取り入れたり、活動の後、質問や感想を出し合う場を設けたりし たことが子どもの意識に反映されたものと思われる。 しかし、 「 た い へ ん そ う 思 う 」と 答 え た 子 ど も の 割 合 が 、減 少 し て い る 項 目 も あ る 。 - 28 - これは、それまで自分では「よくできている」と自己評価していたものの、話し方 や聞き方、話し合い方についての学習を進める中で、そのポイントについての理解 が深まったために自己評価の基準が上がったためであると考えている。 ② 研究の視点から ○全職員が、子どもたちの表現する力を高めていきたいという思いをもって研究に 取り組むことができた。この職員の意識の向上が今後の子どもたちの指導につな がると思われる。 ○「自己表現力アッププラン」を作成したことで、見通しをもって国語科の学習と 関連させながら全ての教育活動を通じて子どもたちの表現力を育てていくことが できるようになった。 ○ 対 話 活 動 を 様 々 な 場 面 に 取 り 入 れ た こ と で 、「 話 し た り 聞 い た り す る こ と は 楽 し い 。」 と 感 じ て い る 子 ど も た ち が 増 加 し た 。「 話 す こ と で 、 ○ ○ さ ん の こ と が よ く 分 か っ て う れ し か っ た 。」 「 ○ ○ さ ん と 友 達 に な っ た よ う な 気 持 ち に な っ た 。」な ど 相手のよさにも気づく子どもたちが増えてきた。 ○ 話し手の 思いや考 えを しっか受け止 めて聞き 、疑問 点を質問 したり、感想を述 べ たりすることができるようになってきた。 〈 仮 説 1 に つ い て 〉・ ・ ・ ・ ・ 国 語 科 の 学 習 の 工 夫 ○相手意識・目的意識を明らかにし、楽しい学習活動を工夫することで、一人一人 の子どもが意欲的に学習に取り組むことができた。 ○対話モデルの提示により、話し方、聞き方のポイントをおさえることができ、ど のように話したらよいのか分からない子どもも安心して活動することができる ようになった。 ○相互評価の工夫を行い、友達のよさを感じたり友達に自分のよさを認めてもらっ たりすることで、表現してよかったという満足感や充実感をもたせることができ た。 〈 仮 説 2 に つ い て 〉・ ・ ・ ・ ・ 関 わ り の 中 で 表 現 す る 活 動 の 工 夫 ○関わりの中で表現する活動の工夫をしてきたことで、集会での発表などにおいて も場や相手を意識した話し方をしようという一人一人の意識や全体の雰囲気が 出てきた。 (2) 研 究 の 課 題 ○子どもたちの意識の高まりは見られたものの、その力はまだまだ十分であるとは言 えない。さらに国語科の学習の工夫を行い、学んだことを使って各教科等や日常生 活の中で発展させて生かすことができるように工夫していかなければならない。 ○対話活動を有効に活用していけるよう、おはなしタイムなどで相手の話をしっかり 受け止めながら話をする態度を育て、お互いに返したりつなげたりして深め合うこ とができるようにスキルアップを図っていきたい。 ○ よ り よ い 言 語 環 境 を さ ら に 整 え 、対 話 力 の 基 盤 と な る 語 彙 力 を 伸 ば し て い く 一 方 で 、 子どもたちが伝え合いたくなるような場や相手、テーマなどの設定を工夫していき たい。 - 29 - お わ り に 伝え合う活動の研究は、始めから成果を上げるのが難しく、困難な研究になることは分 かった上での出発でした。しかし、本校の子どもの表現力を尐しでも高めたいという教師 の願いからの出発でもありました。 研究の成果と課題でも述べましたが、十分とは言えないまでも、人と積極的にコミュニ ケ ー シ ョ ン を 図 っ た り 、思 い や 考 え を 積 極 的 に 伝 え た り し よ う と す る「 子 ど も た ち の 意 識 」 は確かに高まりました。 これは、本校の子どもの実態、人的環境、物的環境を十分に踏まえた取り組みの成果で あり教師の熱意の現れであると密かに自負しているところです。 先にも述べましたが、指導要領の総則では、言語活動の充実が示され、指導の場を全教 科、全領域に求めています。 本校の研究の方向は、まさに今からの社会が求めている力の育成だと思います。子ども たちの力をいかに伸ばしていくかは、教師一人一人の力量に係っています。今後とも全職 員協力して研究をさらに深めていきたいと思います。 〈主な参考文献〉 小学校学習指導要領(文部科学省) 小学校学習指導要領解説(文部科学省) 長崎市立西浦上小学校研究紀要 佐賀市立西与賀小学校研究紀要 宇城市立松橋小学校研究紀要 阿蘇市立内牧小学校研究紀要 研究同人 中 山 牧 野 本 門 野 村 義 弘 山 原 理 作 浦 上 眞 代 中 幸 宮 﨑 孝 臣 廣 瀬 美 穂 菅 惠 子 野 田 えみ子 井 崎 靖 子 永 野 幸 義 小 島 カズ子 北 野 裕 子 諸 熊 - 30 - 村 洋 子 雅 之 薫 玲 子
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