保健体育科

保健体育科<中学校第2学年>
高生中学校
研究主題
Ⅰ
教諭
篠
田 勝
美
問いをもち、主体的に学び合う子どもを育てる授業の創造
目指す子ども像と目指す授業像
目指す子ども像
○ 練習やゲームの振り返りから自己(チーム)の目標や課題を明らかにし、その目標の達成や課題の解決に向
けて仲間と協力して活動することを通して、運動技能が高まり、できるようになる喜びを味わう子ども
目指す授業像
○ 子ども自らが目指す動きと実際の動きとの違いを感じ、問いをもつ授業
○ 課題を適切に把握し、課題に応じた練習方法を選択しながら、子どもが主体的に課題解決を図る授業
○ 子どもが動きのこつを集団の中で伝え合い、自分の動きに生かして技能を向上させる授業
視点2
主体的に学び合うことができる状況づくり
問いをもつ
見合い、教え合い活動における視点の明確
学び合い
①
化
全体を貫く問い
一単位時間
視点1 問いをもつことができる状況づくり
① 課題意識を高める単元導入と目標設定の工
相互評価や記録の工夫
夫
②
問いをもち、主体的に学び合う子ども
子 ど も の 実 態
Ⅱ 研究の実際
1 授業研究Ⅰ
1 授業研究Ⅰにおける研究の視点
視点1 問いをもつことができる状況づくり
視点2 主体的に学び合うことができる状況づくり
① 目標となる動きを提示し、継続して問いをもつ ① 記録用紙を活用した課題の把握と目指す動きの
ことができるようにする単元の導入と展開
ポイントを明確にした見合い、教え合い活動の実
② 自己(チーム)の動きを客観的に判断するため
施
の相互評価方法やゲームの記録方法の工夫
2 授業研究Ⅰの実際
⑴ 単元名 バレーボール
⑵ 目 標
運動への
○ バレーボールの学習に積極的に取り組み、フェアプレイをしようとする。
関心・意欲・態度 ○ 分担した役割を果たそうとしたり、作戦など、話合いに参加しようとしたりする。
○ 練習やゲームを振り返り、自己やチームの課題を見つけることができる。
運動ついての
○ 示された練習方法の意図や効果を理解し、自己やチームの課題に応じて練習方法を
思考・判断
選ぶことができる。
11
運動の技能
○ 基本となる技能を用いた簡単なゲームで攻防を展開することができる。
運動についての
○ バレーボールの特性や技術の名称について理解する。
知識・理解
○ バレーボールに関連して高まる体力や試合の行い方について理解する。
⑶ 指導計画(総時数 11 時間)
1 課題を知り、学習の見通しをもつ。
② 3 ゲームで仲間と連携した動きを習得する。 ③
⑴ ゲーム1で攻撃の課題を明らかにし、課題に
⑴ オリエンテーションを行う。
応じた練習をする。<視点1②><視点2①>
⑵ 試しのゲームを行い、学習の見通しをもつ。
<視点1①>
⑵ ゲーム2で失点についての課題を明らかにし
2 ドリルゲームやタスクゲームを通して課題を明
て練習し、ゲーム3を行う。
らかにしながら、基本的技能を習得する。
④
<視点1②><視点2①>
⑴ スパイクの練習をする。
⑶ ゲーム3からチームに適した作戦を考えて練
⑵ スパイクにつながるトスの練習をする。
習し、ゲーム4(作戦を実行しよう)を行う。
⑶ トスにつながるレシーブの練習をする。
<視点1②><視点2①>【本時】
⑷ 三段攻撃の練習をする。
4 リーグ戦を行う。
②
⑷ 本時の学習
(第三次第3時)
① 主 眼
ゲーム記録を基に前時までの振り返りを行い、チームに合った作戦を選んで練習する
活動を通して、ゲームの中でその作戦を実行して得点することができるようにする。
② 展 開
主な学習活動
◎ 研究の視点に沿った手だて
【観点】評価規準(評価方法)
1 準備運動、ドリルゲームを行
い、めあてを設定する。
めあて
より効率的に得点するための作戦を選択して練習し、ゲームに生かそう。
2 記録用紙を基にゲーム3を振
り返り、チームに合った作戦を話
し合う。
<3つの作戦例>
①クイック②フェイント③クロ
ス
(④オープン作戦…普段やってい
るもの)
3 話合いで決めた作戦を練習す
る。
4 ゲーム4を行う。
◎
作戦ボードに課題等を整理することで、チームに合った作戦を選
択させる。また、作戦に応じた練習を提示し、効果的に練習できる
ようにする。
<視点2①>
【思】チームの課題を明らかにし、チームに合った作戦を選択するこ
とができる。(学習カード分析)
◎
作戦が何度実行できたか、有効であったかを記録し、達成度を客
観的に判断できるようにする。
<視点1②>
【技】選択した作戦を実行するための動き(ボールを持たない時の動
き)ができている。(ゲーム分析、記録用紙)
5
ゲーム4の振り返りと本時の
まとめをする。
⑸ 授業後の考察
個々の差が大きく、全ての生徒に作戦を遂行
するための技能を習得させることはできなか
った。
○
チームの課題や作戦に関する話合いに進ん
で取り組むことができ、その後の練習やゲーム
授業改善の余地
子どもの実態
○
に生かすことができていた。
○
実態をより細かく調査して単元計画を立て、
基本的技能の練習時間を多くしたり、練習方法
を工夫したりする必要があった。
○
学び合いがより有効なものとなるよう、自己
(チーム)の動きを視覚的に確認する活動を取
り入れていく必要がある。
視点1の有効性や課題、新たに分かったこと
視点2の有効性や課題、新たに分かったこと
① 単元導入時と第三次に、目指す動きを動画で示す ① ゲーム記録用紙や学習カードの客観的なデータ
ことで、生徒の意欲の向上や動きのポイントへの気
を基に、視点を明らかにした話合いを行うことが
付きにつなげることができた。
でき、チームごとに適切な作戦及び練習を選択す
② ゲーム記録用紙に触球回数やミスの種類等を記
ることができた。記録をより細かく分析し、個に
入することで、チームの課題を明らかにすること
応じた技能指導等を積極的に行うことで、選択し
ができ、練習や作戦の検討に有効であった。相互
た作戦がより確実に実行されると考える。
評価の機会を増やすことで、新たな問いをもち、
技能向上につなげることができると考える。
12
2
授業研究Ⅱ
1
授業研究Ⅱにおける研究の視点
視点1
①
問いをもつことができる状況づくり
ハードリングへの課題意識を高める単元導
入及び個に応じた目標設定
②
目指す動きや自分の動き、自己記録の推移
視点2
①
主体的に学び合うことができる状況づくり
個人カードによる課題把握を基に、動きのポイント
を明確にする「試す」活動を重視した見合い、教え合
いの実施
の視覚化
2
授業研究Ⅱの実際
⑴ 単元名
⑵
陸上競技 ハードル走
単元設定の理由
○
本学級は27名で、運動することが好きな生徒が多い。また、50m走の平均タイムは7”80
であり、全体的な走能力は高いといえる。しかし、事前に行った体育授業に関する調査では、
「運動
に対する自信」や「学び」に関する内容について課題が見られた。
また、ハードル走に関する調査においては、
「ハードル走が好き」
、
「どちらかといえば好き」と答
えた生徒はそれぞれ18%、28%で、残りの半数強の生徒は、ハードル走に対して「痛い」、
「難
しい」
、「楽しくない」といった否定的なイメージをもっていた。
これらのことから、本学級の生徒は、経験が少なく、自信がもてない運動に対して否定的にとら
える傾向があるといえる。第一学期に学習した「バレーボール」では、目標となる作戦を提示し、
その実践に向けて、チーム内で話し合いながら練習することで、技能向上の喜びや、仲間と協力す
る喜びなどを味わうことができ、形成的授業評価において意欲面の大きな改善が見られた。
したがって、本単元においても、適切な目標設定による動機付けや学び合いを核とした練習など
を行い、ハードル走の楽しさを十分に味わえるようにしたい。
○
ハードル走は、瞬発力、敏捷性、巧緻性、柔軟性などを高めることができるとともに、記録を更
新することで、達成感を味わうことができる運動である。
本単元では、インターバルのリズミカルな走り方と、スピードに乗った滑らかなハードリングが
できるようになることをねらいとしている。小学校では、ハードル間を同じ歩数で走ることや踏み
切り足を決めることを重視した学習及びハードル上で上体を前傾する学習を経験する。
中学校1、2年生では、ハードリングについて学ぶことで、中学校3年生や高等学校での、最後ま
でリズムを維持して走り越すハードル走につなげていくことがねらいとなる。本単元においては、①
踏み切り、②振り上げ脚、③抜き脚という3つの局面からハードリングをとらえ、各局面における基
本的な技能を確実に身に付けさせることで、滑らかなハードリングができるようにしたい。
○
指導に当たっては、第一次のオリエンテーションで50m走と50mハードル走の測定を行い、
そのタイム差がハードリングによるものであることに気付かせるとともに、8月に開催された「世
界陸上」や同年代の大会の動画を視聴することで、単元全体を通したハードリングに対する課題意
識と、目指すハードリングのイメージをもつことができるようにする。また、資料1に示すような
ポイントで相互評価を行うことで、目指す動きと、自己の動きとを比較させ、
「何をどう改善したら
よいのか」という、現時点での具体的な個人の課題を設定できるようにする。
また、個に応じた目標記録を算出するために、資料2のような方法で目標記録の目安を算出する
とともに、インターバルの距離についても、参考値を算出してコースの選択の目安を提示する。
【資料2 目標記録等算出の計算式】
【資料1 ハードリングのポイント】
○ 目標記録の算出
○ 遠くから踏み切っている。
50m走の記録+t×5(tは0.3、0.4、
○ 振り上げ脚をまっすぐ振り上げている。
0.5のいずれかの数値を代入)
○ 抜き脚の膝を折りたたんで横に寝かせ
○ インターバル距離の算出
て前に運んでいる。
身長(m)×4.2
13
第二次では、ハードリングを滑らかに行うための指導を行う。
ハードル走の基本的なポイントや、
局面における目指す動きについて、
「試す」ことを重視した学び合いを設定することで、仲間と共に
ポイントを体感し、練習方法についての理解を深めることができるようにする。中間記録会では、
技能チェック表やビデオカメラを活用した見合いを行い、記録と動きの両面からこの段階での走り
を振り返ることができるようにするとともに、記録向上のための個別の課題を局面で把握させる。
第三次では、個別の課題に合わせて練習を選択しながら学習を進めていく。ここでは、ビデオカ
メラを用いて、自分の動きを視覚的に確認できるようにしたり、局面の課題別にコースを設定した
りする。また、グループで学び合いの場を設定し、先述したポイントに沿ったアドバイスをさせる
とともに、教師が補助やリズム言葉などを用いて積極的に支援することで、一人一人が目指すハー
ドリングに少しでも近付けるようにする。
第四次では、まとめの記録会を行い、これまでの学習の成果を確認する。個別の記録の推移と動
きの変容をカードにまとめて配布し、全員に達成感や満足感を味わわせるようにする。
⑶
目
標
運動への
関心・意欲・態度
○
ハードル走の学習に積極的に取り組み、ルールやマナーを守ろうとする。
○
分担した役割を果たそうとしたり、仲間の学習を支援したりしようとする。
○
練習方法の意図や効果を理解し、自己の課題に応じて練習方法を選ぶこと
運動についての
ができる。
思考・判断
○
自分や仲間のハードリングについて、ポイントに沿って課題を見付け、課
題に応じたアドバイスをすることができる。
運動の技能
運動についての
知識・理解
⑷
○
リズミカルな走りから滑らかにハードルを越すことができる。
○
陸上競技(ハードル走)の特性や成り立ち、技術の名称や行い方について
理解する。
○
陸上競技(ハードル走)に関連して高まる体力について理解する。
指導計画(総時数9時間)
主な学習活動・内容
1
指導上の留意点
【観点】評価規準(評価方法)
オリエンテーションで
学習の見通しをもつ。②
単元の全体計画を示し、ルール、記
【知】陸上競技(ハードル走)の
走)についてのルールや
録の測定方法等について理解できる
特性やルールについて発言した
マナーを学習し、目指す
ようにする。
り、正しく記述したりしている。
⑴
陸上競技(ハードル
ハードリングについて
○
○
を共有化する。
確認する。
⑵
試しの記録測定を行
○
<視点1②>
50m走と50mハードル走の記
【関】ハードルのセッティン
グをする際に安全に気を付けてい
い、ハードリングへの課
録差に着目し、ハードリングに対する
る。
題意識をもつとともに、
課題意識を高めることができるよう
【関】ハードリングについて、自
自分に合った目標記録
にする。
己の課題を見付けようとしてい
<視点1①>
現時点での課題を把握するために、 る。
○
を設定する。
ハードリングの相互評価を実施する。
2
(発言分析・記述分析)
動画を視聴し、目指すハードリング
課題に応じたと練習方
法を理解し、基本的な技能
を身に付ける。
④
14
(行動観察)
(記述分析)
⑴
インターバルのリズ
○
ミニハードルを利用し、インターバ
ムを身に付けるための
ルを3歩で走ることができるように
練習を行う。
する。
【技】インターバルを3歩でリズ
ミカルに走ることができる。
(行動観察)
ポイントに応じた練習を段階的に
【技】遠くから踏み切り、振り上
ングを身に付けるため
指導し、基本的なハードリングを身に
げ脚をハードルに対してまっすぐ
の練習を行う。
付けるとともに、練習方法について理
振り上げている。 (行動観察)
⑵⑶
基本的なハードリ
○
解を深めることができるようにする。 【技】抜き脚の膝を折りたたんで
<視点2①> 横に寝かせて前に運んでいる。抜
○
⑷
中間記録会を行い、今
目指すハードリングに近付くよう
に、様々な動き方を試しながら学び合
できる。
う活動を設定し、ポイントを体験的に
【思】ハードル走のポイントを意
理解することができるようにする。
識して運動している。
踏み切り位置
・
振り上げ脚の動かし方
・
抜き足の動かし方 <視点2①>
技能チェック表やビデオを活用し
【思】自分の走りを振り返り今後
後の課題を明らかにす
た見合いを行い、記録と動きの両面か
の課題を設定することができる。
る。
ら現時点での動きを振り返ることが
(記述分析)
できるようにする。
3
(行動観察)
(行動観察・記述分析)
・
○
いてきた脚の膝を高く保つことが
自己の課題に応じたコ
○
ースを選択し、練習する。
【本時1/2】②
○
<視点1②>
3つの局面に対応した練習コース
【思】仲間の課題を見付け、課題
を設定し、自己の課題解決に向けて適
に応じた助言をすることができ
切な練習ができるようにする。
る。
ビデオ等で記録の推移や動きを確
認できるようにする。 <視点1②>
○
(行動観察・記述分析)
【技】課題とする局面の技能を身
に付けている。
(行動観察)
課題別グループで教え合う活動を
設定し、仲間の助言を生かして練習す
るようにする。
4
まとめの記録会を行
○
<視点2①>
記録の推移と動きの変容の両面か
【技】リズミカルな走りから滑ら
い、これまでの学習を振
ら、学習の成果を確認するとともに、 かにハードルを越すことができ
り返る。
その成果をお互いに認め合うことが
①
できるようにする。
⑸
る。
(行動観察・記述分析)
<視点1②>
授業の実際
①
主
眼
自己の課題に応じたコースを選択して練習し、同じ課題をもつ仲間と教え合う活動を通して、目
指すハードリングに近付けることができるようにする。
②
準
備
教師…ハードル、ミニハードル、ホワイトボード、ストップウォッチ、カラーコーン、
テレビ、ビデオカメラ
生徒…筆記用具、体育ファイル
③
展
開
主な学習活動・内容
1
○
指導・支援上の留意点
◎
視点1、視点2に関わる手だての詳細
準備運動と予備的運動を行い、めあ
てを確認する。
15
【観点】評価規準(評価方法)
・流して走る
○
局面の動きのポイントについて確認する。
・ハードルドリル
めあて
2
既習事項である、
「踏み切り」「振り上げ脚」「抜き脚」の各
自分の課題に応じた練習の場で教え合い、ハードリングを向上させよう。
自己の課題に応じて練習コースを
○
3つの局面に対応した練習コースを設定し、課題に応じた練
習が効率よく行えるようにする。
選択し、個人で練習する。
○
[練習コース]
遠くからの踏み切り
②
振り上げ脚
③
抜き脚
④
インターバル確認
⑤
ビデオ確認
3つの局面
①
第二次で共有化した各局面のポイントを掲示し、練習の意図
と方法を明確にする。
○
あらかじめ個人カードで把握している課題に沿って、適切な
コースを選択しているか確認するとともに、局面の動きのポイ
ントについて積極的に指導する。
<視点1②>目指す動きや自分の動き、自己記録の推移の視覚化
◎ ビデオ確認コースでは、3つの局面における「見る視点」
を提示し、自分の課題を正しく把握できるようにした。
前時に明らかになり、本時のめあてとなっている自分の課題
が適切であったかどうか、再度ビデオで確認することで、本時
における課題意識を高めた。
【自分の動きを確認する生徒たち】
3
課題別グループで見合い、課題解決
のために教え合う。
<視点2①>個人カードによる課題把握を基に、動きのポイントを明確にする「試す」活動を重視し
た見合い、教え合いの実施
◎ 前時までの記録の推移や練習内容を明記した個人カードを基に、3つの局面のうち、本時に練習
したい局面を本時の課題として各自に決定させ、課題別グループを編成した。局面ごとの目指す動
きに応じた見る位置を決めて、適切な見合いが行えるように以下のような各グループごとのカード
を活用した。局面ごとに3つの視点を設定し、各自がそれぞれA~Dの4段階で相互評価した結果
を基に教え合いを行うようにした。
<遠くからの踏切グループの
視点>
① 6~7足長手前から踏み切っ
ている。
② スピードを落とさず、低くハ
ードルを越えている。
③ 踏み切り位置と着地位置の割
合がおよそ3:2である。
<抜き脚グループの視点>
① 抜き脚のひざを折りたたんで
いる。
② 抜き脚のひざが横を向いてい
る。
③ ハードルを越えた後、抜き脚
のひざが高く保たれている。
<振り上げ脚グループの視点>
① 遠くから踏み切り、スピード
を落とさないようにしている。
② 振り上げ脚をまっすぐ振り上
げている。
③ 振り上げ脚の足の裏が正面か
ら見える。
【課題別グループの学習カード(見る視点ごとの評価とアドバイスを記入する)】
16
◎
一人ずつ試走を行い、グループ内でその都度教え合いをするよう
伝えた。その際、助言を受けた生徒に再度試走させることで、助言
を生かして課題解決することができるようにした。
生徒は、カードを頼りに一人一人丁寧にハードリングの評価をし、
グループ内で課題を明確にしてその生徒に合った助言をしていた。
評価された生徒も、仲間からの助言に真剣に耳を傾け、すぐにもう
一度試走していた。
【助言し合う様子】
◎
適切な学び合いができていない場合は、教師も一緒に見合いを行
い、助言の仕方を伝えるようにした。しかし、評価のみを伝えてい
るグループが散見されたため、グループ毎に評価の根拠や解決策を
伝えるよう、助言した。
【適切な学び合いをするための教師の助言】
【思】仲間の課題を見付け、課題に応じた助言をすることができ
る。
4
記録を測定する。
○
(行動観察・記述分析)
グループで協力して測定するようにし、全員のハードリング
をビデオカメラで撮影するようにする。
【技】課題とする局面の技能を身に付けている。
5
本時のまとめをする。
○
(行動観察)
練習方法は適切であったか、課題は解決できたかを振り返る
とともに、仲間の変容についても振り返るようにする。
6
整理体操と片付けをする。
⑹
○
股関節や脚を中心に行う。
授業後の考察
視点1の有効性や課題、新たに分かったこと
① ハードリングへの課題意識を高める単元導入及び個に応じた目標設定
○ 単元の導入では、まずモデルとなるハードリ
<ハードル走を速く走るためには…>
ングの動画を視聴させた。今夏行われた「世界
陸上」や、同年代の大会の映像を見せたことで、 低く跳ぶ、インターバルをすばやく走る、頭をあま
一人一人に目指すハードリングのイメージを
り動かさない、ハードルを越える時に失速しない、
視覚的に理解させることができた。また、その
踏み切り位置を決める、まっすぐ足を上げる など
イメージに近付くための方法を考えさせた
(資料3)。具体的にどのような動きが必要な
【資料3 目指すハードリングへの課題に関する記述】
のか考えることで、
「自分のハードリングはど
うなのだろう」という、課題意識を高めることができた。
次に、はじめの段階での自分のハードリングを確認するために、試しの記録測定と相互評価を行った。
この記録を50mフラット走のタイムと比較することで、差が大きいほどハードリングに課題があるこ
とが明らかになり、生徒の課題意識を一層高めることができた。
最後に50mフラット走のタイムを基にした計算で、単元の目標タイムを設定させた。一人一人がA
(フラット走+1.5秒)
、B(フラット走+2秒)、C(フラット走+2.5秒)の3段階の目標を算
出することで「まだ、C目標にも達していないから、まずはC目標をクリアしたい」「今はC目標くら
いだけど、A目標に届くようにがんばりたい」といった個に応じた目標を設定し、本単元への意欲を高
めることができた。
(自分のハードリングをテレビ画面で見て)
C1:まだ踏み切りが近いから、高く跳んでしまって
② 目指す動きや自分の動き、自己記録の推移の
いるな。
視覚化
C2:抜き脚の膝が横を向いていないから、今日は抜
○ 資料4はビデオ確認コースにおいて自分の
き脚コースで練習しよう。
ハードリングを確認する生徒の様子である。
C3:課題は振り上げ脚だったけど、それは踏み切り
単元を通してビデオ確認コースを設置したこ
の問題みたいだから、踏み切りコースで練習す
とで、生徒は常に自分の動きを客観的に評価
るようにしよう。
し、課題意識をもって活動することができた。
【資料4 ビデオによる自分の動きの確認の様子】
17
資料5は課題別練習における、課題意識に関す 2.8
る形成的授業評価の結果である。中間記録会(第
2.7
6時目)後に、めあてに向かって進んで活動した
と答える生徒が大幅に増えていることから、生徒 2.6
が課題意識をもち、意欲的に練習に取り組めてい
2.5
たことが分かる。
中間記録会後には、記録会の映像を視聴させる
2.4
ことに加えて、再度「世界陸上」の動画を視聴し、
5時
6時
7時
8時
9時
現在の動きと比較、分析させた。また、これまで
自分から進んで学習することができましたか。
自分のめあてにむかって何回も練習できましたか。
のタイムの推移をグラフにまとめ、その変容が明
確になるようにした(資料6)。
【資料5 課題に対する意識の変化】
動きの映像と記録の両面からこれまでの学習
を振り返えらせることにより、資料7の感想のように、生徒が、自分の動きを客観的に評価することが
でき、今後どのように改善させればよいのか、どのようにしたらよいハードリングができるのか、とい
う新たな課題意識をもつことにつながったと考える。
<中間記録会のビデオ鑑賞、世界陸上のビデオ鑑賞、これ
までの記録の振り返りをして思ったこと(一部抜粋)>
・ 高く跳んでしまっているため記録があまりよくない。
低く跳ぶ練習をたくさんして記録を伸ばしたい。
・ 世界陸上の人は一番低い所を跳んでいるなと思った。
自分ももっと体を低くして、抜き脚をきれいにしたい。
・ 最初の試しで測ったときよりだいぶ速くなった。フォ
ームもよくなった。それでもまだ課題が多いので、世界
陸上のハードルを参考にしてがんばりたい。
・ 自分のハードリングを見て、抜き脚が横になっていな
いことが分かった。次の練習からはその課題に取り組ん
でタイムを伸ばしたい。
【資料6
【資料7 中間記録会のビデオ鑑賞,世界陸上のビデオ鑑賞,これまでの記録の振り返り後の感想】
中間記録会までの自己記録の推移】
視点2の有効性や課題、新たに分かったこと
① 個人カードによる課題把握を基に、動きのポイントを明確にする「試す」活動を重視した見合い、教え
合いの実施
はじめ
第1時
ハードル走記録平均
目標
達成率
なか
中間記録会
おわり
第9時
伸び(差)
9.8秒
2.0秒
11.8秒 -1.5
10.3秒
C目標(フラット走+2.5秒)
36.8%
68.6%
86.8%
50.0
B目標(フラット走+2.0 秒)
15.8%
45.7%
84.2%
68.4
A目標(フラット走+1.5秒)
2.6%
17.1%
47.4%
44.8
-0.5
【資料8 ハードル走の技能の伸び】
○ 資料8は、ハードル走の記録の平均と伸び、各目標の達成率を示したものである。これは、単元はじ
めの試しの記録測定、中間記録会、および終末のまとめの記録会での記録を比較したものである。生徒
の記録は単元を通して向上し、最終的には2秒向上している。また、約87%の生徒がまず目指すべき
C目標を達成することができた。
「はじめ」から「なか」にかけては基本的な練習中心、
「なか」から「お
わり」にかけては、課題別グループ練習を中心にした授業であったが、「はじめ」から「なか」までは
記録の伸びが1.5秒で、C目標及びB目標の達成率が大幅に向上している。また、「なか」から「お
わり」にかけての記録の伸びは0.5秒となっており、B目標及びA目標の達成率が大幅に向上した。
C目標は少し頑張れば達成しやすい目標であるが、A目標は50mフラット走+1.5秒の目標であり、
単純に考えるとハードル一台あたり+0.3秒で走り越さねばならない目標である。この目標を達成す
18
るためには、しっかりとしたハードリングの動きが身に付いていなければならない。これらのことから、
生徒が単元前半での基本練習を通してハードル走の基本的な動きを身に付け記録を伸ばすとともに、単
元後半では課題別練習における教え合いを通して個に応じた課題を解決し、ハードリングを向上させる
ことができたことがわかる。
○ 個人カードの自己記録の推移や練習内容を基に設定した課題別グループにおける見合い、教え合い活
動では、単に動きを見て評価を伝え合うだけでなく、助言を基に同じ生徒に試走させた。課題別グルー
プの学習カードで、見る視点を明確にしたことで、これまでの実践と比べて適切な助言を行うことがで
きる生徒が多くなった。また、助言を受ける生徒にとっても、助言を受けてすぐに試走できることは、
動きの感覚を失う前に自分の動きに向き合うことにつながった。その結果、試す→評価(助言)→試す
というサイクルが生まれ、資料9のように、ハードリングの技能が向上した生徒が多く見られた。
学び合いがうまくできていないグループには教師が積極的に支援を行った(資料10)。教師が共に
動きを見ながら、課題に気付かせることで、最初は具体的な助言ができなかった生徒も、友達の課題に
合わせた助言ができるようになった。
(遠くからの踏み切りグループでの助言の様子)
(抜き脚グループの生徒Hが試技した後)
C7:今のは、①B②C③Bだね。
C4:H君は、①C②B③Aだね。抜き脚がたためてい C8:そうだね。それでいいね。じゃあもう
ないよ。
一回走って。
C5:僕は①B②C③Bだと思うよ。ひざが横に向いて T :評価を伝えるだけじゃなくて、もっと
いないよ。
具体的に助言してあげよう。例えば、
C6:僕は特に②のひざが横に向いていないのが一番の
②がCなのはどういうこと。
課題だと思うよ。僕と一緒だね。僕はとにかくひ
評価が曖昧で、助言もできていないため、
ざを横に向けることを意識したらできたから、こ
まず、評価の根拠を伝えるよう助言。
んな風にやってみるといいよ。
C7:スピードが落ちている。
生徒H:うん、やってみよう。(数回練習)
T :じゃあ、スピードが落ちているという
今度はどうだった。
のは、どれくらいスピードが落ちてい
C4、C5、C6:H君、だいぶよくなったよ。
て、どうやったらスピードを落とさず
にできるか、みんなで教えたり、一緒
に考えたりしてみよう。
課題を踏まえた助言をするように促す。
C8:スピードが落ちているのは上に跳んで
いるからじゃないかな。もっと手前か
ら踏み切って、先のハードルを見なが
ら跳んだらいいと思うけど。
繰り返し「試す」活動
【資料9
助言による生徒のハードリングの変容】
○
資料11は、毎時間の生徒による形成的授
業評価のうち、2項目の平均値を比較したも
のである。課題別グループ練習を行った7、
8時(図中枠)に、
「学び合い」の意識が高く
なり、同時に「できた」意識も高くなってい
る。つまり、同じ課題をもつグループでの「学
び合い」によって生徒が「できた」実感を得
ることができたといえる。
これらのことから、 生徒の課題別グループ
練習が効果的に行われ、見合い、教え合いを
通して技能を向上させることにつながったと
考える。
Ⅲ
【資料10 適切な学び合いのための支援】
3
2.8
2.6
2.4
2.2
2時
3時
①
6時
7時
8時
9時
友達とお互いに教えたり、助けたりできましたか。
【資料11 「学び合い」と「できた」の意識の関係】
研究の成果
⑴
5時
今までできなかったこと(運動や作戦)ができるようになりましたか。
研究のまとめ
1
4時
視点1の手だて
「課題意識を高める単元導入と目標設定の工夫」について
19
生徒に単元を貫く課題意識をもたせる方法として、授業研究Ⅰ、授業研究Ⅱともに、単元導入の
段階において、目指す動きの動画を視聴させることが効果的であった。あまりに実態とかけ離れた
ものでは逆に意欲が低下するため、
「できそうだ」と思う程度の動画を提示することが重要だと考え
る。加えて、単元導入のみでなく、単元中盤の、基本となる技能や知識をある程度身に付けた段階
で、再度目指す動きの動画を視聴させることで、さらに新たな問いが生まれ、導入段階よりも具体
的な課題を見付けたり、意欲を高めたりすることにつながることも分かった。
また、単元の導入段階で「自己の能力に合った適切な目標」を設定させることが、どのようにし
たらその動きや目標に近付くことができるかという問いを生むためのポイントだと分かった。特に
個人差が大きく表れる運動領域においては、人と比べるのではなく、自分自身の動きを向上させる
ことをねらいとする授業を行うことが重要であると感じた。
②
「相互評価や記録の工夫」について
生徒同士の相互評価や、ビデオによる撮影、学習カードによるゲーム記録やタイムの推移のグラ
フ化等をすることで、
生徒自身が自分の技能レベルを具体的に把握することができた。授業研究Ⅰ、
授業研究Ⅱともに、学習カードを工夫することでチームの作戦の成否や記録の向上を明確にするこ
とができ、そのことが新たな課題設定につながった。また、ビデオの活用についても、特に授業研
究Ⅱで映像遅延装置を用いることで、自分の動きをその場ですぐに確認することができるとともに
目指す動きとの比較が容易になり、そこに近づくためにはどうすればよいのか、どのような練習が
必要なのかという問いを生むことにつながった。
⑵
視点2の手だて
①
「見合い、教え合い活動における視点の明確化」について
生徒同士で主体的に課題解決に向けて活動できるようにするために、まず、課題を適切に把握さ
せ、その課題に応じた練習方法やコースを選択させた。その課題やコースごとに、見たり教えたり
する視点(ポイント)を提示することで、見合い、教え合いが活性化し、生徒同士で協力して話し
合ったり助言したりする姿が多く見られた。特に見合いの際には、いくつもある動きのポイント(作
戦)を絞り込んで提示することで、運動が苦手な生徒が、得意な生徒に助言することもできた。
授業研究Ⅱにおいてはハードリングの技能やタイムが大幅に向上し、
「できるようになる」喜びを
味わった生徒が多く、非常に効果があったといえる。
以上のことから、視点1、2の手だてにより、生徒が自己(チーム)の目標や課題を明らかにし、課題
意識をもって主体的に学ぶとともに、同じ課題をもつ仲間との教え合いによって自分の技能を向上させる
ことができたといえる。
2
今後の課題
○
生徒同士で教え合ったり、練習方法を話し合ったりすることができるには、それまでに基本的な技
能や知識を確実に身に付けさせることが重要である。単元前半での指導方法等の工夫、改善によって、
レディネスをそろえる必要があると感じた。
また、教え合う活動において、単に「今のはAだね」などのように、動きの評価しか伝えることが
できない場面が何度かあった。その都度「具体的にどこをどうしたらよいのか、どのような練習をし
たらよいのかということを、みんなで協力して考え、教え合おう」と指導したが、日々の授業の中で
教え合う力を高めるため、教え合い活動を段階的にとらえ、系統的に指導を行う必要性を強く感じた。
友達の動きを自分ごととしてとらえながら適切に課題を把握し、友達に合わせた具体的なアドバイ
スができるように、毎時間「教え合い」の時間を確保していきたい。
<参考文献>
・大村
邦英著「もっとうまくなる陸上競技」 ナツメ社
・髙野
進著「陸上短距離走パーフェクトマスター」 新星出版社
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