CONTENTS これだけ要点整理! 貿易実務◎目次 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ はじめに ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・8 本書の使い方 ・ 第 1 章 貿易実務の基本 1 貿易取引と国内取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 2 貿易取引の形態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 3 市場調査から契約まで ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 4 信用状の基礎を覚えよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 5 信用状のしくみ(輸入実務編)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 6 信用状のしくみ(輸出実務編)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 7 インコタームズⓇを理解しよう ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 8 さまざまな輸送形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 9 貿易取引と保険のしくみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 第 第 2 章 輸出実務の流れ 1 輸出貿易管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2 船積準備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116 3 輸出通関手続 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 4 貨物のリマークと補償状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 5 信用状と荷為替手形の作成方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 6 荷為替手形買取と代金決済 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 3 章 輸入実務の流れ 1 輸入貿易管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 2 貨物代金の決済方法と輸入金融 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156 3 貨物の荷受け~輸入通関手続準備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 4 外国為替市場のしくみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・180 CONTENTS 第 4 章 貿易と環境 1 日本の貿易の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 国際貿易体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 3 ワシントン条約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・206 4 生物多様性条約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・210 5 HACCP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・212 6 AEO 制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・218 索引・ Incoterms Ⓡ及びインコタームズⓇは、InternationalChamberofCommerce(国際商業会議所) の登録商標です。本ページ及び項目箇所(62 ページ)では「Ⓡ」を表記しておりますが、その他の 箇所については本書では省略しております。 本書の使い方 貿易実務に関する基本事項は、まず本文をざっと読んで理解してく ださい。そのうえで、本書には次のような工夫がしてありますので、 学習用途に合わせて活用してください。 第1章 貿易実務の基本 ① P O I N T 確認信用状(Confirmed L/C) 第1章 貿易実務の基本 輸入地の発行銀行が、政情不安を抱える国の銀行だったり、世 P 界的には知名度が低く経営状態に不安がある銀行の場合はどうで 重要事項などのポイン トとなる点を、「概念 の定義」や「箇条書き」 でまとめています。 O I N T しょうか。発行銀行が支払いを保証したといっても、商品を船積 信用状とは… みする数ヶ月後にはどうなるか分かりません。 ①輸入者の取引銀行である信用状発行銀行が、 そこで、信用状発行銀行の支払い確約だけでは信用力が足りな ②海外の輸出者に対して い場合に、発行銀行の支払い確約に加えて、国際的に信用度の高 ③輸出者が信用状条件どおりの船積書類を銀行に呈示することを条件に ④輸入者に代わって い銀行にさらに支払い確約(確認)を受けることができます。こ ⑤代金の支払いを確約した手紙形式の保証状 の信用状を確認信用状(Confirmed L/C)といい、発行銀行の支 払いを確約(確認)する銀行を確認銀行(Confirming bank)と 覚えよう! いいます。 発行銀行は、万が一、輸入者が倒産等で決済不能に陥った場合 ◉信用状の機能 しょう ひん し だい に信用状上の金額の支払いを保証しますが、さらにこの発行銀行 信用状のメリットは…商品しだい!( 商 品・資・代 ) が決済不能に陥った場合は、確認銀行が手形の決済を保証しま と覚えよう! す。そのため、確認信用状の場合は、確認銀行も「信用状関係当 ①商品入手リスクの回避 4 KEY WORD 重要語句、迷いやすい 語句など、必要に応じ て語句の解説をしてい ます。 を要求すると、輸入者の商品入手リスク(本当に契約どおりの期日に 商品が届くかという不安)が書類上でカバーされます。 三大船積書類 ② 4 事者」となります。 輸入者が信用状で三大船積書類(インボイス、船荷証券、保険証券) インボイス ⇒ 「契約どおりの商品」を示す 保険証券 ⇒ 「輸送中の事故による損害」をカバー 船荷証券 ⇒ 「確実に船積された」ことを証明する EY WORD 確認信用状(Confirmed L/C) K取引先候補の信用調査項目 取引相手となる企業を絞り込んだら、最終的な契約の前に信用 発行銀行の支払い確約に加え、国際的に信用度の高い銀行にさらに支 払い確約(確認)を受けた信用状。 状況を確認しておきましょう。特に輸出の場合は、代金を受け取 ②資金負担リスクの軽減 4 る立場となりますので、リスクを回避し安定取引を継続するため 輸出者は、信用状条件どおりの書類(船積書類)と為替手形とを買 取銀行に持ち込むとただちに代金を回収することができます。つまり、 確認銀行(Confirming Bank) にも次の要素をしっかりと確認しておく必要があります。 輸出者にとっては資金負担(商品の引渡しと代金決済のズレ)が発生 せず、輸入者の資金負担も前払いと比較してかなり軽減されます。 ① Capital(資産・財政状態) 発行銀行の支払いを保証する銀行。 ② Capacity(営業能力・取引量/生産量・経験) 4 ③代金回収リスクの回避 ③ 国際的に信用のある銀行がその支払いを確約するので、代金回収リ Character(品格・誠実性) 43 ● ④スク(本当に代金を支払ってくれるかという不安)がカバーされます。 Conditions(政治・経済的事情) ③ LET’S TRY! 学んだ知識を問題形式 で復習してみましょ う。貿易実務検定試験 に出題されるものもあ ります。 ●8 長く取引を続けるためには、資産的な状況だけでなく、誠実性 や品格も重要な要素となります。①~③の会社特有の情報を 39 ● 3C、これに外的な要素④を加えたものを 4C と呼んでいます。 LET’S TRY! 輸出戦略の 4P、信用調査 3C・4C は、貿易実務検定試験Ⓡでもよく 出題されるので、しっかり覚えておきましょう。 《例題》 次の文が正しければ○印を、誤っていれば×印をつけなさい。 (1)市場の成長・維持のために重要視されているマーケティング・ ミックス(4P)とは、PRODUCT(商品計画) 、PRICE(価 格設定) 、POLICY(政策) 、PROMOTION(販売促進)を効 果的に組み合わせることである。 (2)信用調査における「3C」に含まれないものはどれか。 A.Capital(資産・財政状態) B.Character(品格・誠実性) C.Convenience(簡便性) (解答は 33 ページ) ● 32 《F 類型:3条件》 ・FCA(Free Carrier 運送人渡条件) ・FAS(Free Alongside Ship 船側渡条件) ・FOB(Free On Board 本船渡条件) 《C 類型:4条件》 ・CFR(Cost and Freight 運賃込条件) ・CIF(Cost, Insurance and Freight 運賃・保険料込条件) ・CPT(Carriage Paid To 輸送費込条件) ・CIP(Carriage and Insurance Paid To 輸送費・保険料込条件) ④ 覚えよう! 《D 類型:5条件》 ・DAF(Delivered At Frontier 国境持込渡条件) 第1章 貿易実務の基本 ・DES(Delivered Ex Ship 本船持込渡条件) ・DEQ(Delivered Ex Quay 埠頭持込渡条件) ■貨物海上保険のてん補範囲と保険条件の比較 ・DDU(Delivered Duty Unpaid 仕向地持込渡条件、関税抜き) 貿易実務検定試験など によく出る事項、また 紛らわしい事項などを ゴロ合わせなどで覚え る方法を紹介していま す。 保険条件 ・DDP(Delivered Duty Paid 仕向地持込渡条件、関税込) 旧 ICC: FPA 分損 不担保 WA 分損 担保 A/R 全危険 担保 ◎ F 型は、母さんを汗かいておんぶする新 ICC: (C) (B) (A) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ・沈没、座礁、大火災による損害(S.S.B.) ・衝突(C.)、火災、爆発および遭難港に 特定分損 おける荷卸しに合理的に起因する損害 ・積込み、積替え、荷卸中の梱包1個ごと の全損 ○ ○ ○ その他の分損 ・特定分損以外の分損 海損の種類 損害の種類 FCA 共同海損 複数の事項をまとめて 確認したい事柄を提示 しています。本文と少 し視点を変えて学んで みましょう。 ・損害防止費用、その他特別費用 CF R CPT C I P C 費用損害 I F 全損 分損 ⑤ てん補範囲 F A・共同海損犠牲損害 S F O B ・共同海損費用 ・共同海損分損額 ◎ C 型は、もしかして風呂にペットが一匹 共同海損 単独海損 Check! ○:カバーする △:特約(オプション) ×:免責 覚えよう! ・救助料、付帯費用(サーベイ費用等) 現実全損 ・現実全損 推定全損 ・推定全損 平常時 付加危険 非常時 不担保損害(免責) 63 ● × ○ ○ ・各種不可危険(RFWD,TPND等) △ △ ○ ・戦争(War Risks) △ △ △ ・ストライキ(S.R.C.C Risks) △ △ △ ・瑕疵、梱包不備、航海の遅延等 × × × Check! 保険条件でよく出る4文字アルファベット S.S.B.C. 特定分損である沈没(Sinking) 、座礁(Stranding) 、 大火災(Burning) 、衝突(Collision)を意味し、特定 四大事故ともいいます。 RFWD Rain&/or Fresh Water Damage の略で、雨、洪水、 淡水濡れ損を意味します。 TPND Theft, Pilferage &/or Non Delivery の 略 で、 盗 難、 抜き荷、不着損害を意味します。 S.R.C.C. Strike, Riots and Civil Commotions の略で、ストラ イキ、暴動、騒擾を意味します。 99 ● ⑥ 知って得する 豆 知 識 第3章 輸入実務の流れ 実務とは直接関連しま せんが、知っておくこ とで理解が深まる豆知 識を紹介しています。 知って得する 豆 知 識 大人の社会見学~港湾施設編~ 港湾エリアで、港に関する情報や歴史を展示している施設等をご紹 介します。貨物船やコンテナ・ターミナルを実際に見れば、貿易知識 もより深まることでしょう。 【東京】東京みなと館 東京都港湾局と社団法人東京都港湾振興協会によって開設された「東京みな と館」は、東京港の歴史や役割、臨海副都心の開発計画を紹介しています。 地上 100m の高さにある館内の窓からは、東京港を一望でき、コンテナ・ ターミナルやガントリークレーン、海外から到着する船舶等の様子をじっく り見ることができます。また、映像や模型、パネル等で国際貿易港としての 東京港の姿や役割が分かりやすく紹介されています。 開館時間 休館日 入館料 アクセス 住所 URL 火~日、9時 30 分~ 17 時 月曜日、年末年始(12 月 28 日から1月4日まで) 一般 200 円、小・中学生 100 円 ゆりかもめ「テレコムセンター」駅そば、りんかい線「東京テレ ポート」駅から徒歩 12 分 東京都江東区青海 2-4-24 青海フロンティアビル 20 階 http://www.tokyoport.or.jp 【横浜】横浜港シンボルタワー 本牧ふ頭 D 突堤の緑地に立つ横浜港シンボルタワーは、横浜港に出入りする ● 第 1 章 貿易実務の 基本 この章では、貿易取引が全体にどの ように流れていくのか、その全体像を つかむことを目的としています。国内 の売買取引と貿易との違いや、さまざ まな貿易取引の形態を知り、具体的な 貿易取引のしくみと流れについて理解 しましょう。 1 貿易取引と国内取引 国内における売買取引とは 「売買取引」というと難しく聞こえるかもしれませんが、私た ちが日常的に行っている「買い物」は、国内における商品の売買 取引といえます。この売買の契約は、一方のオファー(申込み) だくせい に他方が承諾すると成立する「諾成契約」ですので、契約は口頭 でも成立します。 たとえば酒店でワイン1ケース(12 本入)を購入する場合を 例に、国内での売買の流れについて考えてみましょう。お店で商 品の内容や金額を吟味し、気に入った銘柄のワインが決まった ら、まずレジに持っていきます(売買契約の成立)。そしてレジ でお金を支払うと(代金の決済)、商品を受け取ること(引渡し) ができます。私たちは代金と引換えに商品をその場ですぐに入手 し、家に持ち帰ることができます。このように国内では、売買契 約はすぐに履行されます。 もし酒店に在庫がなかったとしても、商品の取り寄せを依頼し て、売買をスムーズに行うことができます。お店にワインを注文 し(売買契約の成立)、後日ワインが入荷され次第、代金を支 払って(代金の決済)商品を受け取る(引渡し)ことができます。 ● 12 第1章 貿易実務の基本 また入荷後、お店に商品を取りに行くことができない場合は、 宅配便などの配送サービスを利用して商品を受け取ったり(引渡 し) 、代引きや振込み等で支払い手続(代金の決済)を行うこと ができるでしょう。 貿易取引とは では、異なる国から、たとえばフランスでワインを購入し、日 本に持ち帰る場合について考えてみましょう。異なる国との間で このような商品の売買取引を行うことを「貿易」といいます。貿 易とは「国境を越えて行われる商品の売買取引」のことをいい、 商品を購入する人の行為は「輸入」 、販売する人の行為は「輸出」 といいます。 さて、フランスへ旅行し、ワインセラーで気に入った銘柄のワ イン1ケース(750ml × 12 本入)を購入し、そのワインを自宅で 味わうために日本に持ち帰るとします。店主に購入したい商品を 告げ(売買契約の成立)、お金を支払い(代金の決済)、商品を受 け取る(引渡し)までの流れは国内取引と同様ですが、その商品 を日本に持ち帰るにあたり、いくつか手続きが必要になります。 まず、フランスで消費するわけではないので、免税を受けられ る最低規準額以上の購入であればフランスの税金(VAT:付加 価値税)払戻し手続をとることができます。その際にはフランス での書類手続が必要になります。 次に、商品を日本へ運ぶ方法を考えなくてはなりません。帰国 する飛行機の便に手荷物として積み込んで輸送しようとする場合 は、重量オーバーのため超過料金分が必要になります。また、別 送品として他の手段で輸送する方法も考えられます。いずれにし 13 ● ても追加で輸送費がかかります。また、輸送中に割れないような 梱包方法を検討する必要もあるでしょう。 無事に日本に到着した後は、購入したワインについて日本の税 関に申告しなくてはなりません。日本帰国時の免税範囲は、お酒 の場合1本 760ml 程度のものが3本までとなっていますので、こ の場合 12 本のうち9本については、税金を支払う必要がありま す。なお、この免税が適用されるのは、使用目的が個人の私的な 場合に限られますので、持ち帰ったワインを転売する等、商用目 的の場合は適用されません。 これらの手続を経て、ようやくフランスのワインを日本に持ち 帰ることができるのです。 KEY WORD 諾成契約 一方の申込(オファー)に他方が承諾(アクセプタンス)すると成立 する契約。つまり、契約成立の要件として物の引渡し等が不要で、意 思の一致だけで契約が成立するもの。 ちなみに、銀行の預金契約は意思の一致のほかにお金の引渡しによっ て成立するが、このように物の引渡しが必要な契約を要物契約とい う。 ● 14 第1章 貿易実務の基本 ■売買取引の流れ 売買契約の成立 (諾成契約) 商品 これは ○○円です 諾成契約 代金の決済 商品の引渡し この商品を ください 売主 買主 代金 ※国内では、売買取引契約はすぐに履行される。 ■貿易取引の場合 FRANCE JAPAN きちんとお金が 支払ってもらえるか どうか不安… 商品 きちんと 商品が届くか どうか心配… 諾成契約 フランス リスク ※代金の決済方法 ※輸送手段と引渡し方法 ※破損した場合の補償 等 日本 代金 届いた商品が 壊れていたら どうしよう… ◎商品の入手までに多くの手続とリスクが存在する。 15 ● 貿易取引のリスク では旅行先のフランスで、気に入った銘柄のワインの在庫がな く、納期が数ヶ月かかる場合はどうなるでしょうか。ワインがで きあがる頃には日本に帰国してしまいますので、店主に日本まで ワインを輸送する手続(輸出)を依頼しておく必要がありそうで す。また代金の決済方法について、先にワイン代を支払う場合 (前払い)は、店主が要求どおりきちんと商品を発送してくれる かどうか、不安を感じます。商品受け取り後払い(後払い)の場 合、店主は代金を受け取ることができるかどうか心配に思い、こ の支払い条件を了承しないかもしれません。では、国内取引のよ うに振込みという手段はどうでしょうか。日本から外国に送金す る場合、国内の場合よりも金融機関での振込手数料が多くかかり ます。時差等もあり、振込手続から入金確認まで数日以上かかる でしょう。さらに、商品が日本に到着した際には日本の税関に申 告手続を行い(輸入)、関税等の税金を支払わなければワインを 受け取ることができません。 さて、さまざまな手続を経て、どうにか商品を受け取ったもの の、梱包を開けてみたら、瓶が割れていた…ということも考えら れるでしょう。その場合の補償はどうしたらよいのでしょうか? このように貿易取引では、国が違うために、国内取引と違って 煩雑な手続と、多くのリスク(危険性)が考えられます。しかも 諸手続にあたって手数料や輸送費等、国内取引では必要のなかっ た諸費用も負担しなければなりません。 しかし、煩雑な手続を伴ったとしても、貿易にはそれ以上の魅 力や必要性があるのです。貿易取引に伴う多くのリスクを回避す ● 16 第1章 貿易実務の基本 るため、貿易関係者はさまざまなしくみを生み出し、それが国際 ルールとして長い歴史の中で定着してきました。一見複雑に見え る貿易取引のしくみや手続も、取引をよりスムーズにし、リスク を回避・軽減するためにできたものなのです。これから学ぶ貿易 取引のしくみや手続は、それらのしくみや手続がどのような貿易 取引のリスクをカバーしているのかと合わせて考えていけば理解 しやすくなるでしょう。 ■貿易取引のリスク 貿易取引の特徴 リスク ①国が異なるため、売 主(輸 出 者)と 買 主 (輸入者)とが相互の 情報をあまり持って いないことが多い ・取引相手の信用に不安がある = 信用リスク ・本当に代金を支払ってくれる = 代金回収リスク か不安 ・本当に契約どおりの商品が届 = 商品入手リスク くか不安 ②国が異なるため、商 品の輸送距離が長 く、時間がかかる ・輸送途上の貨物の変質・損傷 = 貨 物 の 輸 送 上 や、事故に対する不安がある の事故リスク ・前払いだと輸入者の商品入手 = 資金負担リスク が代金支払いより遅れ、後払 いだと輸出者は商品を出荷し ているにもかかわらず代金回 収が遅れる(このような商品 受渡しと代金決算のズレを資 金負担という) ③通 貨 が 異 なるため、 代金決済が複雑であ る 通貨の交換が必要となる = 為替変動リスク 17 ●
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