ANNUAL REPORT 2 0 1 3

ANNUAL REPORT
2 0 1 3年 度 年 次 報 告 書
2
0
1
3
2 0 1 3 年度年次報告書に寄せて
アファンの森財団の
ビジョンとミッション図
A WORD FROM THE CHAIRMAN
昨年度は例年にも増して、大きな出来事が相次いだ一年でした。財団関係の会合や
シンポジウム、調査プロジェクトに加えて、私たちが育んだアファンの森の 心のタネ
がさまざまな土地に広がり、芽吹きはじめたことを実感しています。
東 日 本 大 震 災 で 被 災 さ れ た 宮 城 県 東 松 島 市 か ら 小 学 校 の 移 転 ・ 再 建 事 業 へ の 協 力 を
請われ、当財団はこのプロジェクトに全力で取り組んできました。3年目を迎えてよ
うやく固まった基本コンセプトは、森に隣接した、鉄筋コンクリートではなく木造の
校舎――これが私たちの思い描く新しい学校です。この活動を通じて多くの出会いを
重ね、さまざまな年齢、職業の方々との絆を育むこともできました。
東松島市の皆さん、私たちを受け入れてくださって、ありがとう!
また、昨年はエチオピア政府から、シミエン山岳国立公園の元公園長と現公園長を
含 む 一 行 を ア フ ァ ン の 森 に お 迎 え し ま し た。 シ ミ エ ン 山 岳 公 園 は 1 9 6 9 年 に 誕 生 し
たエチオピア初の国立公園です。この私も創設に尽力した一人であり、初代公園長と
して2年間、あらゆる障害に立ち向かいました。その後、内戦により荒廃した時期が
あったものの、稀少な動植物の宝庫であり、アフリカ随一の絶景に恵まれた公園とし
て、7 8 年にはユネスコの世界自然遺産に登録されました。ところが、9 6 年、今度は
危機遺産に名を連ねてしまったのです。このまま事態が改善されなければ世界遺産の
登録を取り消される恐れもあり、それは公園にとっても、エチオピアにとっても、こ
の上ない不幸と言えるでしょう。
5 0 年 近 く を 経 た 今 も、 私 は 当 時 の 記 録 や 写 真 を 保 管 し て お り、 エ チ オ ピ ア か ら の
お客様方に当時のシミエンの様子をお目にかけました。そして、お返しにエチオピア
へ招待していただき、今年1月、北海道大学の研究者の方々と一緒に、私と財団スタ
ッフの福地健太郎君の2人でシミエン国立公園の現状を視察してきました。
エ チ オ ピ ア で は 年 来 の 友 の よ う な 温 か い も て な し を 受 け ま し た。1 9 日 間 に 及 ぶ 旅
の結果、私はシミエン国立公園の関係者から、現地での森林再生、公園の保全、地域
住民の生活様式の保存などに力をかしてほしいと依頼されたのです。これが実現すれ
ば、国際的に極めて重要な、アファンの森財団と北海道大学との協働プロジェクトに
なるでしょう。
当財団の使命は、黒姫の地に美しい森と豊かな生物多様性を蘇らせることだけにと
どまらず、情報と刺激の発信源となり、新たな取り組みを鼓舞する力になれればと願
ってやみません。
アファンの森が財団法人となり、ウェールズのアファン森林公園と世界で初めて 姉
妹 森 の 提 携 を 結 ぶ こ と に な っ た と き、 ア フ ァ ン 森 林 公 園 の 公 園 長 を こ こ 黒 姫 に 招 き、
「 私 た ち の 森 は 小 さ す ぎ る と 思 わ れ ま せ ん か?」 と 尋 ね ま し た。 そ の と き、 公 園 長 は
こう答えたのです。
「 長 野 県 が 大 き な 包 み だ と し た ら、 ア フ ァ ン の 森 は そ こ に 貼 ら れ た 美 し い 切 手 で す。
包みを手にした人は皆、小さな切手を必ず見るでしょう」
私 の 夢 は、 い つ の 日 に か、 ア フ ァ ン の 森 が 世 界 に 知 ら れ る 切 手 と な っ て、 世 界
中の森や人々と知識を分かち合い、その助けとなることです。会員を初めとする支援
者の皆さま、友人、そして財団のスタッフにも、心からの感謝を捧げます。これから
も変わらぬご支援を賜り、この夢を共に分かち合っていただけたらと願っています。
2014年5月1日
一般財団法人 C . W. ニコル・アファンの森財団
理事長 C . W. ニコル
(訳:森 洋子)
This last year has been especially eventful, not
on ly w it h ou r wo o d la nd get-toget her s, ou r
meetings, symposiums and research but also
with our lovely woodland spreading seeds of the
heart.
We a r e i nto ou r t h i r d ye a r of doi n g ou r b e s t
to help with the new elementary school with
attached woodland in Higashi Matsushima, and
it seems that at last the concept of having the
new school constructed of wood and not ferroconcrete has finally settled. Meanwhile, our
relationship with the people of Higashi
Matsushima has blossomed into many
friendships with people of all ages and walks of
life.
Thank you, people of Higashi Matsushima for
accept ing us!
Last year we were visited by officials from the
Ethiopian government, including both former
a nd c u r r ent Ga me Wa r den s of t he Si m ien
Mountain National Park. The Simien park was
decla red a Nat iona l Pa rk in 19 6 9 , a fter I, t he
f i r st Ga me Wa r den , h ad foug ht a nd worke d h a r d
for two years. Despite the area being ravaged by
c i v i l w a r, t h e Si m i e n b e c a m e a U N E S C O Wo r l d
Her itage Site in 19 78 . Apa r t from t he ra re
species of fauna and f lora, it is probably the
m o s t s p e c t a c u l a r p a r k i n A f r i c a . H o w e v e r, i n
19 9 6 t h e Si m ien w a s adde d to t h e L i s t of World
H e r i t a g e i n D a n g e r. I f t h i n g s d o n o t i m p r o v e , t h e
p a rk c ou ld b e d r opp e d f r om t h e World Her it a ge
list, which be a disaster for the park and for
Ethiopia in general.
I still have the notes and log, as well as
photographs of that time when I was a young
man, living in those wild and remote Ethiopian
mountains, and I was able to show the Ethiopians
how it was back then, nearly fifty years ago.
They invited me back to Ethiopia, and together
w i t h e x p e r t s f r o m H o k k a i d o U n i v e r s i t y, I a n d
Fukuchi Kentaro went to the Simien early this
y e a r.
I was treated like a VIP and a dear old friend.
The result of that trip is that the Ethiopians
want me to go back and to help reforest and
preser ve the park and the lifestyle of the local
people. If this happens it will be a joint Afan
Tr u s t a n d Hok k a ido Un i ver sit y pr oje c t of g r e at
international importance.
Our trust is not just about a beautiful
woodland coming back to beauty and healthy
b i o d i v e r s i t y. We a l s o b r i n g i n f o r m a t i o n , a n d , I
hope, inspiration.
When we first became a trust and became the
first forest in the world to be twinned with
a not her forest, t he A fa n A rgoed Forest Pa rk i n
Wa le s , I a ske d t h e Wa r den of t h e Wel sh Pa rk
(who we invited to see our woods here in
Kurohime) if he t hought t hat our woods were too
small. His answer was this:
I you think of Nagano Prefecture as being a big
parcel, then the Afan woods here is a beautiful
little stamp. When people look at a parcel, they
always see the stamp.
My wish and hope for the future is that our
A f a n Wo o d l a n d Pa rk c a n b e c om e a n i nt er n at ion a l
stamp that can help and share knowledge with
people and forests all over the world. I thank our
staff, friends and supporters, especially our
members, from the bottom of my heart and hope
you can share this future with us.
C .W. N i c o l
M ay 1 s t . 2 014
ヒメシジミ
ドングリ
A
I
N
N
U
N
A
アケボノソウ
L
D
R
E
P
E
O
R
エゾイトトンボ
カタクリ
アカシジミ
カシラダカ
オニヤンマ
アブラチャン
T
X
◆ 2 0 1 3 年度年次報告書に寄せて
◆アファンの森財団の活動
M I SS IO N 1 トラスト活動
…………………
2
M I SS IO N 2 森林整備
…………………
3
T O P IC S 1−2 K U R A 制作、馬車軌道の復元…………………
4
T O P IC S 3−4 協議会、オオハンゴンソウ …………………
5
M I SS IO N 3 調査研究
…………………
6−7
M I SS IO N 4 5 センスプロジェクト
…………………
8−9
M I SS IO N 5 震災復興プロジェクト
…………………
1 0−11
M I SS IO N 6 人材育成
…………………
1 2−1 3
M I SS IO N 7 普及
…………………
14
M I SS IO N 8 国際交流
…………………
15
T O P IC S 0 5 産学研究会発足
…………………
16
T O P IC S 0 6 屋外トイレ建設
…………………
16
◆ご支援について
…………………
17
◆収支報告
…………………
18
◆アファンの森グッズ
…………………
19
◆サポートいただいています
ネコノメソウ
ホウキタケの仲間
ギンリョウソウ
オツネントンボ
タマゴタケモドキ
コブシ
ホンドキツネ
ニリンソウ
クサギの実
シシウドとハナムグリ
フデリンドウ
ツリフネソウ
ツノハシバミ
シロハラ
ホタルカズラ
1
MISSION
公益事業:森の再生
トラスト活動「ひろがる森」
Trust activity : Expansion of forest
森を大きくすることは、
より大きな生態系を再生すること
トラスト募 金 のご 協 力により少しず つ 森 を 広 げ ています 。フクロウが 無 理 なく
繁 殖 で きる面 積 で ある 5 0 ヘ クター ル を当 面 の目標 に。そして、トラストによ
り取 得した山 林 を整 備 することでより大きな森 の 生 態 系 の 再 生を目指します。
南と北の森を繋げる
本年度はトラスト活動により0 . 8 h a の山林を取得しまし
た(図中オレンジ色部分)。これにより総面積は約 3 1 . 3 h a
北エリア
となりました。
現在のアファンの森は北エリア(これまで整備を積極的
に進めてきた北側のエリア)と南エリア(2 0 0 9 年 2 月に
取 得 し、2 0 1 0 年 に 自 然 環 境 調 査 を おこ な っ た あ と、
2 0 1 1 年より整備をはじめた南側のエリア)の大きく2つに
分かれています。トラスト活動では引き続き北エリアと南エ
リアをつなげることを優先しておこなっていきます。
南エリア
国有林
アファンの森全域図 2 0 1 4 年 3 月 3 1日現在 総面積 : 3 13 ,6 6 1㎡ (約 9 4 ,8 8 3 坪) 2
MISSION
公益事業:森の再生
森林整備「森をそだてる」
Management of afan woods : Growing the forest
1 0 0 年後の森のために今できることを
アファン の 森 財 団にとって、森 林 整 備 は 活 動 の 原 点 で す 。放 置 さ れ 荒 廃した
森 を 再 生 さ せ ること=「 森 は 人 の 手 で 豊 か によ み が え る 」ことを 実 践し てい
ます 。土 地 本 来 の 植 生 が 戻り、様 々な 生 きもの が 共 に 暮らせ る 森 に なるには 、
人 の 手と長 い 時 間が 必 要 で す 。1 0 0 年 後 の 森 のために 今 で きること。
今 年 度 の 活 動は 次 の 通りで す 。
2 A fa n Annua l Rep or t 2013
2 8 年目の北エリア ※経団連自然保護基金助成事業
これまで整 備をおこなってきた場所
での管理作業が中心となりました。
春先、雪解けとともに雪害木の片付
けや、雪の重みで折れてしまった幼木
の手入れをおこないました。植 物が繁
茂 する6 月から9 月初 旬に か け て は、
稚樹や植栽した木の成長を妨げないよ
う下草刈りをおこないました。
北エリア図
また 6 月にはポロ・ビーシーエス社
員様はじめ会員の皆様にご 協力いただ
き、土壌を踏圧から守るため散策路に
ウッドチップ(国有林の材としては利用
散策路のウッドチップ敷き
価値のない昨年の間伐材を活用)を敷
きました。
3 年目の南エリア
前年度支援企業様や会員の皆様にご
協力いただき、ブナとミズナラ、カツラ、
トチの 4 種類の苗木を計 1 3 0 0 本植栽
した南エリアでは、それら苗木の成長を
他の植物が妨げないよう植栽地の下草
刈りを主におこないました。
南エリア図
稚樹や苗木の成長のための下草刈り
隣接国有林
馬搬による木材の搬出
※経団連自然保護基金助成事業
日本の財産である国有林の荒廃は日
本の森 林が抱える大きな問題のひとつ
です。私達は議論を深め解決の糸口を
探るため、2 0 1 2 年 3 月に北信森 林管
理署と協定を結び、アファンの森と隣
隣接国有林での馬搬
接 する国有林を一 体 管理しています。
今年は前年度伐採したスギの搬出を実
施しました。
「 遠 野馬搬 振 興 会 」の協
力を得て馬による搬出(馬搬 )をおこ
ない、林野庁や県関係者など多くの林
搬出した木材 (スギ)
業関係者に馬搬を見ていただきました。
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 3
Afan Topics 01
in
2 013
● 2 0 1 3 年 度 の 主 なトピ ッ ク ス ●
ホースロギングファニチャー KURA
国有林で間伐したスギ材を無駄にしないため、その中から比較的良いものを選
定し、株式会社岡村製作所様と共同で家具を製作しました。本来スギは柔らかく
割れやすいため家具には適さず、さらに手入れの行き届いていないスギは節が多
く形質も良くないため材料としては大変条件の厳しいものでした。しかし岡村製作
所様では意欲的に取り組んで下さり、馬具の鞍をイメージした美しいスツールと
して、新たな命を吹き込んで下さいました。家具として使えなかった木材もチップ
として散策道に敷き、アファンの森を守ってくれています。
このような木を無駄にせず使い商品化することで、間伐遅れの人工林の健全化
を訴え、馬で搬出する環境に配慮した搬出方法の意義を、普及・啓発していくこ
とを目的としています。
Afan Topics 02
in
2 013
● 2 0 1 3 年 度 の 主 なトピ ッ ク ス ●
馬車軌道の復元
古い地形図によると、隣接国有林内には昭和 3 0 年頃まで「林用馬車軌道」が
通っていて、黒姫駅まで続いていたことが分かりました。林業が盛んな土地柄だ
ったことが伺えます。
馬車軌道とは、木材を運ぶ空(から)のトロッコを森まで運び上げるのに馬を
使い、帰りは木材を積んでブレーキを上手に使いながら下っていくためのトロッコ
軌道です。林内にはその馬車軌道の跡と思われるものが残っている所があります。
この軌道跡を歩道として活用できるように枯れ枝や倒木を片付ける作業をおこな
いました。
作業は大正大学の特設科目「森・里・海 連環学」として、アファンの森でフ
ィールド学習の一環でおこないました。
馬車軌道跡の整備
4 Afan Annual Repor t 2013
Afan Topics 03
in
黒姫森づくり協議会 ※
経団連自然保護基金助成事業
隣接国有林をエリアごとにどんな林にしていくかを定め、生態系の再生のため
の基盤作りとして現地調査及び協議会会議をおこないました。一見スギが多いよ
2 013
うに見えますがクマ剥ぎにより傷ついた木も多く、将来性のあるものは少ないと思
● 2 0 1 3 年 度 の 主 なトピ ッ ク ス ●
するとともに、湿地・人工林・針広混交林が隣接するエリアで全体でおこなおう
われるため、丁寧に確認しながらの施業が必要です。さらに詳細な林相図を作成
としている施業をおこない、方向性を示していくことになりました。
今後の間伐材の搬出方法および材の利用方法や、平成 2 3 年に切り捨て間伐が
おこなわれたエリアでの施業の方向性など継続して検討していきます。
Afan Topics 04
in
2 013
● 2 0 1 3 年 度 の 主 なトピ ッ ク ス ●
特定外来種の根絶を目指して(オオハンゴンソウ駆除)
※ 経団連自然保護基金助成事業
植物調査により、数年前からアファンの森で特定外来種のオオハンゴンソウの
生育が広がっていることが判明しており、今年も駆除作業をおこないました。
オオハンゴンソウは繁殖力が強く、もともと自生する植物を駆逐して広がります。
作業は移植ゴテによる抜き取りが中心となり、会員の方々にもご協力いただき、約
8 0 0 0 株を駆除しました。
アファンの森では地 域本来
の植 生を守るため、他にも森
への入退場時に靴底洗いをお
願いするなど対策に取り組ん
でいます。
オオハンゴンソウの駆除作業
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 5
3
MISSION
公益事業:森の再生
調査研究「森を知る」
Research and study : To know the forest
森づくりを評 価するのは生きものたちです
※経団連自然 保 護 基 金 助成 事業
アファン の 森 の 整 備 保 全 活 動 は 、森 に 棲 む 生 きも の の た め に おこなっていま
す 。そ の 整 備 の 評 価 は 、訪 れ た 方 に「 アファン 森 は 気 持 ちが い い ね 」と言っ
ていただくのと同じように 、アファンの 森 を 利 用する生きものに 評 価してもら
うことが 大 切だと考 えています 。
調 査 研 究 活 動は 森 の 生きものに「 アファンの 森 の 居 心 地 」を 尋 ねる活 動で す 。
今 年 度 は 1 6 項目の 調 査 を 実 施しました 。その 一 部 をご 紹 介します 。
開けた環境を好むホオジロ
生きものが教えてくれる
アファンの森
の様子
【鳥類から見る北エリアと南エリア】
北エリアではホオジロ、ノジコなど草原や疎林など開けたところに生息する種
や、地面近くで餌を採る種が多かったことが特徴的でした。間伐により開けた明
るい環境が多いことや、地面に光が届き林床の植物が豊かなことがわかります。
また、カイツブリやアオサギなどの水鳥が確認されたことは、水辺環境を整備し
た成果だと考えられます。
山や林に生息するコガラ
南エリアの鳥類は昨年まで山や林に生息する種が多く見られていましたが、今
年は減少し北エリアとの違いが少なくなりました。手を入れていなかった南エリア
の整備を開始したために以前より開けた明るい環境が創出され、北エリアの環境
に少し近付いたのかもしれません。生息種数は北エリアに比べて少なく、水辺が
ないことや単一な植生であることが影響していると考えられます。
【アファンの森から巣立ったフクロウは 2 0 羽に】 北エリアでは今年も 2 羽のフクロウが巣立ち、これまでの 1 2 年で計 2 0 羽のフ
クロウの巣立ちが確認されました。猛禽類であるフクロウが毎年繁殖できるとい
フクロウのヒナの巣立ち
6 Afan Annual Repor t 2013
うことは、北エリアの環境が安定している証だと考えられます。
【水辺環境の手入れの検討へ】
2 0 0 7 〜 2 0 1 0 年度の調査では 2 3目8 7 科 1 9 2 種が確認され
ていましたが、今年は 1 6目5 8 科 1 2 3 種となり、水生昆虫が減少
していることがわかりました。造成直後は似たような生息条件を持
った種が同じ場所に暮らせていましたが、その後のなわばり争いや
餌の取りあい等により、ある決まった種しか暮らせなくなってしま
った可能性が考えられます。また、植物が繁茂しすぎている場所や、
水底の泥が厚く溜まってしまっている場所も多く、生きものが水辺
を見つけにくくなったり暮らしづらくなっていることも減少の要因の
一つと考えられます。調査結果を活かし、池のかいぼりや水路の
泥上げなどの人為的なかく乱による環境の多様性創出の手法を検
弥生池で産卵するオオルリボシヤンマ
討していきます。
【管理作業が南エリアの下層植生に与える影響】
整備 3 年目の南エリアでは、定置枠を設け森林管理作業が植生に与える影
響を継続的に調べています。
昨年は下草刈りを年 1 回おこないましたが、下層植生は成
長が早い低木類やつる植物、帰化植物が優占してしてしま
いました。
今 年は年 2 回下
草刈りをおこなった
ところ、 昨 年 繁 茂
していた 植 物の生
育 量 は 大きく減 少
し、 特 定 の 種 が 優
占することもなくな
りました。
年 1回下草刈りをおこなった昨年の南エリア
生きものが教えてくれる
国有林
年 2 回下草刈りをおこなった今年の南エリア
の様子
2 0 1 2 年 1 1 月に間伐と馬搬をおこなったスギの人工林である国有林では、
整備後の変化を把握するために植物相、鳥類、クモ類の調査をおこないました。
【植物相 下層植生の増加】
間伐から1 年後、下層植生の植物種数は 5 8 種から1 0 6 種へと約 8 3 % 増
えました。新たに増えた種の約半数は鳥の糞や動物の体毛に付着して種子が散
布される植物、次に風で種子が散布される植物が多い結果となりました。
動物によって運ばれるクルミの種子
【鳥類 個体数はアファンの森とほぼ同じだが生息種数は少ない】
個体数はアファンの森とほぼ同じとなりました。生息種数はアファンの森よ
り1 0 種程少なく、国有林の植生が単調で利用できる環境が少ないためだと考
えられます。特に樹冠を利用する種が少なく、それらの種のエサとなる樹皮に
潜む昆虫が国有林に少ないことが予想できます。
【クモ類ではアファンの森にいない新たな種を確認】
国有林では 3 0 科 1 3 5 種が確認されました。このうち1 6 種は国有林のみで
見つかり、隣接する北エリアで今まで記録されていない種でした。
風によって運ばれるカエデ類の種子
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 7
4
MISSION 公 益 事 業 : 心 の 再 生
5センスプロジェクト
「森が心をはぐくむ」
Five Senses Project : From regeneration of the forest
to regeneration of the human being.
5センスプロジェクトは、豊かな森に包まれスタッフと共に「今」を
楽しむことで、人 の 心 が 癒され 豊かになることをサポートしている
活動です。思いと愛が注ぎこまれたアファンの森は、人にも愛情を
注いでくれます。
心に木を植える ∼被災地のご家族をアファンの森へ∼
共催 : イオン 1%クラブ
東日本大震災から2 年半、子ども達は日々
成長して元気な様子が見られるようになりま
したが、胸の内にはまだしこりが残っているようです。大人の方もなかなか進まな
い復興に、悩みや疲れを蓄積されています。そのような日常から少し離れ、アファ
ンの森の中で心と体を癒し「自分本来の姿」を取り戻す機会にしていただきたい
と考え、本年度も 8 月と9 月の計 2 回(2 泊 3日× 2 回)、宮城県東松島市の小学
生とそのご家族計 5 0 人をアファンの森にお招きしました。アファンの森に優しく
包まれながら、子ども達には思い切りアファンの森で遊んで発散し、心を解放し
てもらうことを、大人の方達にはのんびり自分の心と向き合う時間をつくっていた
だくことをイメージして取り組みました。
参加後の言葉からは、震災以降自身を発散できる場がなくなってしまったこと
や、そのような中で自然と関わる時間を大切に思い必要としている方が多くいらっ
しゃることが見えてきました。
今アファンの森での活動は非日常ですが、
東 松島市で進んでいる「 森の学校 」と森の
学校に隣接する「復興の森」の整備を進め、
自然と触れ合う日常の場を提供できるように、
そしていずれは復興の森でアファンの森のよ
うなプログラムを実施できるように努めてい
じっくり観察
きたいと思います。
ブランコで笑顔
川遊び
雨の森を楽しむ
大人ものんびり
8 Afan Annual Repor t 2013
参加者のアンケート
ティピーで輪になって語らう
豊かな森は豊かな心を育む アファン 5センス プロジェクト
2 0 0 4 年 3 月より児童養護施設の子ども達や盲学校に通う子ども達を招
待する取組みをはじめてから本年度で 1 0 年が経ちました。豊かな森の可能
性を引き出してくれた本プロジェクトは子どもたちの心の成長を育む上で大
きな意味があり、当財団の活動の主軸であると考えています。
本年度は「アファン“5 センス”プロジェクト」として 5 月に地元長野県
内の盲学校と養護学校に通う小中高生と保護者の方
(1日×2回計10 人)
を、
1 1 月には児童養護施設で暮らす
子ども達(2 泊 3日計 1 6 人 )を
お招きし、計 3 回実施いたしました。い
少しどきどきしながら森の奥へ
ずれの活動も生命力あふれるアファン
の森で全身を使い過ごしてもらいまし
た。
知的障害を持つ子ども達を迎えるの
は昨年 度から2 回目の試みでした。課
題は多くありますが、参加された保護者の方の言葉から、子ども達が何も我慢せ
ずに表現できる場、そして周囲の環境や人々がそれを受容している場が必要だと
いうことを感じました。盲学校や児童養護施設と共に、養護学校の子ども達を対
象とした活動も続けていきたいと思います。
森のブランコ
夜は焚火を囲んで
木材を搬出する機械の操縦に挑戦
みんなで絵を描く
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 9
5
MISSION
公益事業:森の再生・心の再生
震災復興プロジェクト
The restoration project of the Great East Japan Earthquake
2 0 1 1 年3月 1 1 日の教 訓を胸に
∼ともに未 来を見 据えて∼
被 災 地 は 未 だ 復 興 の 途 上にあります 。この 東日本 大 震 災 から未 来 へ 向けた
復 興 のた めに 私 達 が 貢 献 で きることは 何 か 。そ れ は 森 はよみ が えることを 伝
え 、東 北 の 森 を 再 生 するため の お 手 伝 い をすること、そして 豊 か な 森 が 持 つ
“ 森 の 癒し ” を 提 供 することだと考 えています 。私 達 の 主 軸 の 活 動 で ある “ 森
の 再 生 ” と “ 心 の 再 生 ” 。この 2 つ の 視 点 で 被 災 地 の 皆 様 、そして多くの関 係
者 の 皆 様と共に「 アファンの 森 震 災 復 興プロジェクト」に 取り組 ん で います 。
宮城県東松島市∼ニコルの森の学校プロジェクト∼
被災した小学校の移転・再建事業にともない、新しい学校が「森の学校」とし
て自然の中で生きる力を育む場となるように市や多くの関係者の皆様と検討を重ね
ています。
また学校の裏山にあたる森も教育の場として活用できるように「命の森を育て
る」活動を進めています。そして森の学校開校までに卒業してしまう子ども達の
ために「今から希望をつなぐ」活動として『森の学校』の授業を開始しました。
~命の森を育てる~
・地域の環境を調べ、理解を深める
【地域の自然を探る環境調査】
東松島市の自然の魅力を「森の学校」の授業に活かすために、現在の自然環
完成したツリーハウス
境状況を把握する調査(植生、鳥類、水生生物)を引き続き実施しています。そ
のなかで津波被害からの復旧や工事が急がれる中、日々刻々と変わる環境におい
てかつて見られていた希少な植物たちが大きな影響を受けていることが確認され
ました。今後可能な限り保全にむけた検討をおこない、また地域の子ども達にも
その小さな命の存在を知ってもらい彼らを守るにはどうすれば良いかを一緒に考え
ていきたいと思います。
【復興の森づくりワークショップ】
復興の森のシンボルとなるツリーハウスが完成しました。
空に向かって舞い上がる竜をイメージしています。竜は再生のシンボル。人と
ツリーハウスワークショップ (4 月)
森とを近づけてくれる癒しのスペースです。ツリーハウスづくりのワークショップ
やお披露目セレモニーを実施し地元の子どもから大人まで多くの皆さんにご参加
いただきました。
4 月1 3日(土)ツリーハウスワークショップ
6 月1日(土) ツリーハウスお披露目セレモニー
1 1 月1 7日(日)アクティビティサイトの整備
~今から希望をつなぐ~
・
「森の学校」授業開始
森と海に恵まれた自然環境そのものが教材になります。教室の中の授業にとら
水辺の生きもの観察の授業 (1 0 月)
われることなく、森と海を利用してプログラムを実施しました。
7月15日(月祝)
10 Afan Annual Repor t 2013
1 0 月1 0日(木)
宮戸の海の生きものを観察する「海の学校」
(宮戸小学校対象)
湿地と田んぼの生きもの観察(野蒜小学校3年生対象)
森と海をつなぐ「森海キャンプ」 アファンの森を離れ、東松島市で初めて宿泊を伴ったキャンプを実施しました。
東松島市の魅力ある森と海のつながりを学ぶことで、子ども達に故郷の自然の
素晴らしさを知ってもらう機会としました。
また、被災地同士の交流の機会として、東松島と気仙沼の子ども達が一緒に活
動し、それぞれの持つ経験や知識を共有する場となりました。
東日本大震災あの津波以来、海岸に近づけなかった子供たちも海に入れるまで
に回復しており、子ども達の成長を実感した 3日間の活動になりました。
森海キャンプ
7 月2 9日〜 3 1日(2 泊 3日)
小学 5 年生〜中学 1 年生までの1 1 人(東松島 6 人、気仙沼 5 人)
共催・N P O 法人 森は海の恋人
※コスモ石油エコカード基金の助成を受けて実施されました。
海でカヤック
お別れの会
テント設営
ドラム缶風呂を沸かす
食事作りも子ども達が中心
海の生きものを観察
ドラム缶風呂に入浴
森に恩返し (整備作業)
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 11
6
MISSION
収益事業
人材育成「森の人を育てる」
Human development
アファン の 森 のように 人 の 手 で 蘇った 豊 か な 森 を 、日本 中に 広 げ る 為 に 大 事
な 活 動 の 一 つ が 人 材 育 成 活 動 で す 。森 づくりの 技 術 だ けで なく豊 か な 森 を 体
験 する 活 動 や 、アファン の 森 で 実 践してい る 生 きもの たちの 生 育・生 息 場 所
の 再 生について学 ぶプログ ラムもおこなっています 。
よみがえった森での研修プログラム
スポンサー企業、団体等を対象に、森での様々な体験や学習内容を取り入れた
研修をおこないました。作業・散策・講演・勉強会等々、ご要望に沿ったプログ
ラムを作成、提供しました。
・日新航空グループ(5 月1D AY 経営層・管理職対象 社員研修)
・ポロ・ビーシーエス株式会社(6 月1D AY 森の講義、チップ敷き作業)
・大正大学
(7 月 2 D AY 「森・里・海 連環学」フィールド実習、林分調査、馬車軌道跡の整備)
・株式会社ヤクルト本社(10 月1D AY 長野県との共同実施。ヤブ刈り、信濃町観光)
・株式会社ディー・エヌ・エー
雪積みゲーム
(10 月1D AY C SR 研修「森と命のつながり」& 森カフェ体験)
・イオンエコワングランプリ
(1 月1 泊 2 日 受賞者(高校生)の交流会 & スノーシュー体験)
その他の研修プログラム
○ 公益社団法人日本環境教育フォーラム東京シニア自然大学(10 月 3 0 日、19 名)
○ 一般社団法人長野県経営者協会(11 月12 日、8 名)
○ CSO養成講座(12 月1日、11 名)
ウッドチップ敷き
親子で森を体験 ∼アファンの森育プログラム∼
支援企業社員様親子を対象に、8 月、夏の森でアファンの森育プログラムを行
ないました。
森での体験を通して、会社が支援をおこなっている森の再生活動の意義を理
解していただくとともに、家族揃って森を体感することで未来へ森を引き継ぐこと
への思いを深める場としました。
また、初めての試みとなる、会員様や一般の方を対象にした「森育プログラム」
を夏休みに実施し、植物や生きものの特徴と森との関係性を学ぶ場としました。
生きものどこにいるかな?
・株式会社ディー・エヌ・エー
アファンの森で生きもの探し!
∼森の命のつながり∼ 【主なプログラム内容】
観察ノート作り
12 Afan Annual Repor t 2013
・アファンの森育プログラム
【主なプログラム内容】
○ 植物観察・標本作り
○ 森の散策
○ 水生生物採取・観察
○ 水生生物採取・観察
○ 観察ノート作り
○ トウモロコシもぎ取り
○ アロマを使った虫よけづくり
地元信濃小中学校で出前授業 ※
経団連自然保護基金助成事業
信濃町立信濃小中学校の 4 年生が取り組んでいる稲作体 験活動の田んぼで、
「田んぼの生きもの観察」及び「田んぼの周辺環境観察」の出前授業をおこない
ました。
6 月の授業では、室内でメダカやトンボを題材に「生きものの視点に立つ」こ
とを学んだあと、児童が実際に生きものの捕獲をおこない観察し地域環境とのつ
ながりを学びました。
1 0 月の授業ではアファンの森に出かけ、水辺の生きものを捕獲・観察すること
で、田んぼとの環境の違いやそこを利用する生きものの違い、季節による違いを
学び、環境と生きものの関係や多様性について学びました。 インターンの受け入れ
京都大学大学院生並びに信濃小中学校教員の研修の受け入れを実施しました。
研修では、日常おこなっている森の手入れ作業や調査活動を実際に体験しても
らうことで、森林管理に関する知識を身につけるとともに、森の手入れの意義や
必要性等伝えました。
○ 京都大学大学院学生:7 月1日〜 1 3日 ○ 信濃町教員 :8 月6日〜 7日
会員の皆さんと力を合わせた森づくり ※
経団連自然保護基金助成事業
これまでおこなってきた会員様向けの見学会と森のボランティア作業を合わせ
たプログラムを実施しました。5 月は、アファンの森で鳥類調査を担当していただ
いている方の案内とオオハンゴンソウの駆除作業を、6 月は通常の見学会と隣接
国有林間伐材のチップを散策路に敷く作業をおこないました。また、見学会とは
別の日程で、オオハンゴンソウ駆除作業もしていただきました。
地域を超えた人材育成活動:都市部での自然再生 アファンの森で実践している生物の生育・生息空間の再生を都市部でもできる
取組として、ビオトープ ( 生物の生息空間 ) を活用した自然再生活動をおこなって
います。現在青山商店会連合会(東京都)と連携し、人と生きものが共生できる
街づくりに取り組んでおり、1 0 月に行われた青山
まつりではブース展示やナチュラルクラフト体験、
神宮外苑での野鳥観察会をおこないました。また
3 年 前に造 成した青山中学校のビオトープでは、
ビオトープを囲む森の手入れや水草の植栽をワー
クショップ形式で実施。アファン会員の皆様にもご
参 加いただき、都心に残る貴重な森により多くの
生物が暮らせるよう地域の方々とともに自然再生
活動に取り組みました。
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 13
7
MISSION
公益事業:普及交流
普及「森を伝える」
Public Relations : To tell the forest
「 豊かな森 の 存 在意 義を訴えること」はアファンの森 財団の 使 命 の
ひとつ。直接的な活動として実施しているのが普及活動です。会員
様 向けの 見 学 会 やイベントへ の出 展は 毎 年 実 施しています。また、
多くの取材や視察もあります。
森の魅力を多面的に伝える会員見学会
今年度は、森の作業を取り入れた会や、夜の森を体験していただくナイトハイ
クなど、新しい内容の見学会もおこないました。ナイトハイクはホタルを見ていた
だくために梅雨の時期の開催になりましたが、開始前まで降っていた雨はちょうど
小降りになり、ホタルが飛び始め、皆さんに見ていただくことが出来ました。
エコプロダクツ展 岡村製作所トークステージ
森の再生の現場を体感してもらう
地元の幼稚園や信濃町民をはじめ、日本全国から同様の活動をおこなっている
団体や、社会貢献活動に関心のある企業など、多数団体の訪問がありました。
人の手で蘇った多様な森を体感していただきながら、アファンの森で実施して
いるそれぞれの活動や解説をおこない、豊かな森の存在意義を伝える場としました。
ステージとブース出展で普及と交流
アースデイ東京(4 月)、緑の感謝祭(5 月)、エコプロダクツ 2 0 1 3(1 2 月)
に出展しました。アースデイでは例年のブース出展とは別に、
「森から未来を考え
る ニコルの森の学校」と題し、トークテントを開催しました。エコプロダクツで
は、スポンサーでもある株式会社岡村製作所様のステージにて「ニコルの森の学
校」を開催しました。
地元との連携
地元信濃町の観光と普及に協力するために、町内の宿発施設及び観光協会と
連携して、信濃町を訪れた方にアファンの森を見ていただく機会を設けました。
アファンセンターで森の概要説明をおこない、その後信濃町森林メディカルトレ
ーナーが森を案内しました。
アファンの森並びに信濃町のファンを増やし、地元との協力体制を築くことを
目的としています。
里山の再生を考える会を開催
昨年おこなわれた長野県主催の「里山再生をデザインする会」に続く第 2 回の
集まりとして、今年もアファンの森で「里山の再生を考える会」を開催しました。
県内で森林再生に取り組むNPO法人等団体の連携を深め、より大きな活動へと
発展できるよう今後も継続していきます。
14 Afan Annual Repor t 2013
8
MISSION
公益事業:普及交流
国際交流「森を世界につなげる」
International Relationships:Linking with other forests overseas
エチオピア・シミエン山岳国立公園との交流 【エチオピア視察団来訪】 8 月1 5日、エチオピアにおいて S I M C O T プロジェクト(S i m i e n
C o m m u n i t y T o u r i s m P r o j e c t)を展開する J I C A 関係者とプロ
ジェクトのエチオピア人現地スタッフ、そしてエチオピア野生保護局
長官が研修のためにアファンの森を訪れました。
人の手でよみがえらせたアファンの森を視察したことで「本当に森
は甦るのを実感した」との感想が聞かれ、またシミエン山岳国立公園
の初代公園長であったニコルと「国立公園設立当時のシミエンについ
て」「これからの公園の目指す方向について」「危機遺産リストからの
脱却のための課題共有」など活発な意見交換をおこないました。後日、
「この研修を機に現地スタッフが本気になり、進む方向が定まったよう
だ」との報告をいただきました。
エチオピア視察団来訪 森の視察
【エチオピアの世界遺産 シミエン山岳国立公園を視察】
J I C A の S I M C O T プロジェクトを運営する北海道大学観光高等研究セン
ターの依 頼で、ニコルが 1 月1 7日から2 月6日の日程でシミエン山岳国立
公園などを視察しました。危機遺産リストからの脱却を目指すシミエン山岳
国立公園へのアドバイスなどをおこないました。
19 6 0 年代ジンバール滝の前で (左:C. W . ニコル)
ヴィレッジツアーの視察
文化観光省大臣へのレクチャー
英国ホースロギング協会との交流
英国ホースロギング協会長のダグ・ジョイナー氏がアファンの森を訪れま
した。これは、9 月に東京でおこなわれた「日英馬搬シンポジウム」のため
に来日したジョイナー氏が、アファンの森への訪問を熱望したため、実現し
たものです。
とても熱心に散策をされ、
「とても素晴らしく、気持ちの良い森だ」と夕
方遅くまで森の様子を楽しんでくださいました。 ジョイナー夫妻
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 15
Afan Topics 05
in
2 013
● 2 0 1 3 年 度 の 主 なトピ ッ ク ス ●
C.W.ニコルの森の学校プロジェクト 産学共同研究会発足
日本のこどもたちを野生に戻す
震災復興プロジェクトの一環として東松島市で取り組んでいる森の学校づくり
では、学校を取り巻くさまざまな規制を1つ1つクリアしていかなくてはなりません。
教育委員会とのやり取りの中で少しでも森の学校が実現に近づくように、建築
界の第一人者である古谷誠章教授やメーカーの方々の知恵をお借りしながら、
日々
検討をしています。
そのノウハウを蓄積し、この森の学校づくりをきっかけに、全国の子ども達が自
然との繋がりの中で心身ともに健やかに成長できる学校が広がるように、産学共
同研究会を発足しました。
まずは、
「東松島に日本一の森の学校をつくる」ことに精力を注いでいきます。
・委員長:早稲田大学 古谷誠章教授
・コンセプト・自然環境調査:C . W. ニコル・アファンの森財団
・建築・まちづくり:早稲田大学 古谷誠章教授および研究室
・ 正会員研究企業 株式会社岡村製作所 準会員研究企業 住友林業株式会社
Afan Topics 06
in
2 013
● 2 0 1 3 年 度 の 主 なトピ ッ ク ス ●
念願の屋外トイレ建設
森での活動の際、トイレの数が少なく
皆 様にご不便をおかけしていましたが、
このたび会員の紀藤康子様より屋外用の
トイレを森の入口に寄贈していただきま
した。
使用した排水を処理して何度も再利用
する環境にやさしい水洗式の「ECO循
環トイレ」です。においもなく皆様に気
持ち良くご利用いただいています。
建物も杉の間伐材を使用し、アファン
の森に合うように配慮しました。
16 Afan Annual Repor t 2011
a b ou t
our
supp or t er s
ご支援について
●会員について(2 0 13 年 4 月 1日~ 2 0 1 4 年 3 月 3 1日)
【助成金】
口数
金額
賛助会員 2 9 8 口
14 , 9 10 , 0 0 0 円
アファン会員 7 8 6 口
3 , 9 3 0 , 0 0 0 円
・経団連自然保護基金
【スポンサー企業 事業連動型寄付商品/サービス】
・キューモニター/アファンの窓 (株式会社インテージ)
・カナダ大麦豚(日本ハム株式会社/日本メープルリーフフーズ株式会社)
・森をはぐくむ味噌(ひかり味噌株式会社)
・ネットリコー(リコーグループ/リコージャパン株式会社)
・ホースロギングファニチャー “K UR A”(株式会社岡村製作所)
【震災復興プロジェクト】
特別協賛 イオン1%クラブ
協賛 アサヒグループホールディングス株式会社
株式会社岡村製作所
協力 サンデン株式会社
日本メープルリーフフーズ株式会社
寄付 震災復興支援の為のバザーコンサート 德川眞弓ピアノ・リサイタル
●法人からのご支援について
【森の学校産学共同研究会】
・株式会社岡村製作所
【オフィシャルスポンサー】 ご支援開始年度
・住友林業株式会社
・株式会社リコー2 0 0 2 年(設立時)
・株式会社インテージ
2007年
・ポロ・ビーシーエス株式会社
2 0 10 年
・日本ハム株式会社
2005年
・株式会社ディー・エヌ・エー
2 0 10 年
・株式会社岡村製作所
2 0 11 年
・株式会社ヤクルト本社
2 0 12 年
・大正大学 2 0 13 年
・株式会社ジャスト 2 0 13 年
【プロジェクトパートナー】
・リコーグループ
2004年
【事業別スポンサー】
・サンデン株式会社
2002年
・長野トヨタ自動車株式会社
2008年
・ひかり味噌株式会社
2 0 10 年
・日新航空サービス株式会社
2 0 11 年
・グレンチェック株式会社 2 0 13 年
●一般財団法人 C . W. ニコル・アファンの森財団役員
理事長
C・W ニコル
専務理事 森田 いづみ
作家 株式会社 C・Wニコルオフィス代表取締役社長
常務理事 松木 信義
林業家
理 事
稲本 正
オークヴィレッジ株式会社代表取締役社長
狩野 土
株式会社黒姫和漢薬研究所代表取締役社長
吾妻 まり子
株式会社リコー CSR・環境推進本部長
野口 理佐子
人と自然の研究所 代表
評議員
大槻 幸一郎
アジア航測株式会社 代表取締役会長
大熊 孝
NPO法人新潟水辺の会 会長
高槻 成紀
麻布大学 獣医学部動物応用科学科 教授
茅野 實
一般社団法人長野県環境保全協会 会長
金子 与止男
岩手県立大学 総合政策学部 教授
監 事
畠田 洋平
公認会計士
吉田 寛
公会計研究所 公認会計士
(2 0 14 年 3 月 3 1日現在)
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 1 17
inc o m e
and e x p endi t ur e
r ep or t
収支報告
(2013年 4 月1日~ 2014 年3月31日)
● 2 0 13 年度収入
単位:円
金額 【2013年度収入】
寄付金収入
8 , 0 2 3 , 7 7 2
会費収入
18 , 2 8 7 , 0 0 0
事業収入
10 , 4 2 4 , 6 5 7
助成金収入
6 , 5 3 4 , 0 0 0
12.9%
震災復興プロジェクト基金へのご寄付 2 9 , 3 3 0 , 2 1 4
会費収入
1 , 9 9 1 , 4 7 3
合計
8 0 , 6 0 2 ,116
12.9%
前期繰越金
3 1 , 9 0 1 , 3 8 3
会費収入
合計
112 , 5 0 3 , 4 9 9
2.5%
事業収入
3 4 2 , 9 7 6
人材育成「森の人を育てる」
1, 0 2 4 , 7 7 4
普及「森を伝える」
8 , 4 6 1, 0 8 8
心の再生「森で心をはぐくむ」
5 , 8 5 3 , 7 2 4
震災復興支援 「森の学校づくり」
2 6 ,18 4 , 2 8 1
収益事業物 販(書籍、アロマスプレーなど)
6 2 3 , 2 2 7
< 管理費 >
人件費(森を守る人たちへ)
10 , 8 0 2 , 8 5 0
その他管理費(森を守るために) 14 , 5 2 5 , 0 0 9
合計
7 9 , 6 0 0 , 6 3 1
次年度繰り越し金
3 2 , 9 0 2 , 8 6 8
( うち震災復興繰り越し金
2 1, 4 9 4 , 4 3 3
●トラスト基金 2 0 14 年 3 月 3 1日 現在
2 3 , 3 8 6 , 4 8 6
2 0 13 年度 土地購入
2 ,4 7 3 ,2 8 0
震災復興プロジェクト基金
へのご寄付
36.4%
【2013年度活動費用】
森林整備
産学共同研究会
調査研究
7.5%
13.6%
その他
0.8%
【2013年度活動費用】
震災復興プロジェクト
その他管理費
収益事業
18.2%
1.3%
32.9%
人件費
13.6%
その他
0.8%
収益事業
1.3%
)
8.4%
5.1%
国際交流
0.4%
人件費
1, 0 3 6 ,17 5
その他
10%
7.5%
18.2%
6 , 6 5 9 , 2 5 1
国際交流「森を世界につなげる」 36.4%
寄付金収入
産学共同研究会
その他管理費
4 , 0 8 7 , 2 7 6
18 Afan Annual Repor t 2013
収益事業 他
震災復興プロジェクト基金
へのご寄付
22.7%
● 2 0 13 年活動費用
10%
【2013年度収入】
助成金収入
22.7%
8.1%
収益事業 他
寄付金収入
事業収入
6 , 0 11 , 0 0 0
調査研究「森を知る」
2.5%
8.1%
森の学校 産学共同研究会
森林整備「森を育てる」
収益事業 他
助成金収入
人材育成
森林整備
1.3%
普及
8.4%
調査研究
10.6%
心の再生
5.1%
7.4%
国際交流
0.4%
人材育成
震災復興プロジェクト
32.9%
1.3%
普及
10.6%
心の再生
7.4%
A f a n W oodl a nd Goods
アファンの森グッズをご紹介いたします。
それぞれの収益の一部が、アファンの森財団の活動に活用されます。
ご希望の方は裏面申し込み用紙にご記入の上、F A X またはご郵送にてお申し込みください。
なお、書籍は黒姫事務局へ直接(F A X , 郵送、またはメール)ご注文いただければ
C . W . ニコルのサイン入りの本をお送りいたします。※価格はすべて税込です。
AFAN-A R OM A 1
1 ニコルの直筆メッセージ入りバンダナ
オーガニックコットン 10 0%(ブラウンのみ) 1, 5 0 0 円
2 絵はがきセット(5 枚組)
3 0 0 円
2
Mor ning D e w
ヒノキとニオイコブシの朝露のように清 涼 感あふれる
香りのリフレッシュスプレーです。集中力を高めたり、
気 持ちを元 気にしてくれます。ニオイコブシのさわや
かな香りがアクセント。
(3 0 ml2 10 0 円 )
D re am t ime
さわやかな香りのスギ・ヒノキに、安らかなクロモジの
香りをたっぷり配合したリフレッシュスプレーです。
まるで森の中でまどろんでいるような心からのリラック
スタイムを。
(3 0 ml2 5 2 0 円)
アファンの森の物語
15歳の寺子屋 森をつくる
Venisonうまいシカ肉が日本を救う!
日本に来 て初めて、古 代 からの
ブナの森に足を踏 み 入 れたニコ
ル は、感 動 のあまり涙 を 流まし
た。日本 の自然 を 守るために 戦
い、理 想 の 森「 アファン 」をつ
くり上げます。ニコルから日本人
への「心の贈り物」の物語です。
ウェール ズ 出 身 のニコル が日本
に 来 て 5 0 年。10 代 の 頃 か ら 世
界 の 大自然 の中で 育ち、日本 の
自然に感 動したニコル が 生きる
場 所として 選 ん だ 黒 姫。ここに
森 を つくるに 至った 理 由とは。
これ からを生きる若い 世 代にも
読んでいただきたい 1 冊です。
1, 0 8 0 円
すでに 絶 版となっている「 鹿肉
食のすすめ」の改 訂 版。新たに
シカ肉レ シピ を 加え、カラー 写
真で見やすくなりました。もっと
シカについて知ってもらいたい、
シカ肉の お いしさを 感じてもら
いたいと前回より料 理 の ペ ージ
が増えています。
1, 9 4 4 円
絵本『森にいこうよ!』
絵本『しっぽ』
『誇り高き日本人でいたい』
アファンの 森 で 実 際 にあったさ
まざまな出 来 事 を、ニコル の 文
が語り、松岡達 英 氏の絵 が見せ
てくれています。
1, 5 12 円
押し 花アーティストの 杉 野 宣 雄
氏が 押し花で 描いた動 物たちに
ニコル の 文 が 生き物の 楽しさを
伝えています。
1, 4 4 0 円
1, 5 12 円
けふはここ、あすはどこ、あさつては
C . W . ニコル×山頭火の世界
19 4 0 年、ニコルはこの世に生を
受 け、山 頭 火 はこの 世 を 去りま
した。
さまざまなニコル の 表 情と生き
方が山頭 火の俳句の世界と見事
に組み合わされた一冊です。
【ソリストの思考術】第二巻
C・W ニコルの生きる力
体 全 体 で、 北 極、エ チ オピ ア、
日本 の自然 を受け 止 め、行 動し
てきたニコルの「生きる力」とは。
1, 7 2 8 円
1, 7 2 8 円
フィールドノート
日本 との出 会 い に 始 まり、来日
後 の 素 晴らしき 交 遊、そして日
本を愛するニコルの熱い 想いが
語られています。
1, 7 2 8 円
『マザーツリー~母なる樹の物語~』
樹 齢 5 0 0 年のミズナラの大 木に
まつ わる、人と自然 が 織りなす
命の物語。
1, 9 4 4 円
アファンの 森 の 案 内 冊 子。6 穴
のシステム 手 帳 に、アファン の
森で 見られる主な樹 木や生き物
を紹 介。また、生 物 調査の 結 果
に基づいた森の特徴を解説。
(点
字版あり)
定価 3 , 3 0 0 円/会員 2 , 8 0 0 円
A f a n A n n u a l Re p o r t 2 0 1 3 19
ドングリ
ヒメシジミ
アケボノソウ
エゾイトトンボ
カタクリ
アカシジミ
カシラダカ
オニヤンマ
アブラチャン
ネコノメソウ
ホウキタケの仲間
ギンリョウソウ
オツネントンボ
タマゴタケモドキ
コブシ
ホンドキツネ
ニリンソウ
クサギの実
シシウドとハナムグリ
フデリンドウ
ツリフネソウ
ツノハシバミ
シロハラ
ホタルカズラ
サポートいただいています
アファンの森財団の活動は皆様からのさまざまなサポートで成り立っております。
アファンの森はまだ小さく、財団の活動もまだまだ微力ですが、将来は大自然の
循環を取り戻す活動へと発展させていきたいと考えています。引き続きご理解とご
協力をお願い申し上げます。
★今後の主な活動計画
【トラスト活動】
南北エリアの間の地主さんの把握と取得に向けたコミュニケーション
【森林整備】北エリアの管理作業、南エリアのヤブ刈り作業
【調査研究】森の整備と生きもののつながりを評価、検討
【人材育成】自然再生活動を通じた様々な教育プログラムの実施
【アファンの森以外での森林保全のためのコンサルティング活動】
【森の学校プロジェクト】
地域本来の自然の中で子ども達が五感を使って学び ‘ 生きる力 ’ を育む学校を全国
に広げるための活動
【震災復興プロジェクト】
宮城県東松島市の森の学校づくりや授業の実施、被災地の方の心のケア及び復興
のための森づくり
★会員
・アファン会員(月払)
・アファン会員(年払 )
・賛助会員(個人・法人)
5 0 0 円/月
1口 1口 5 ,0 0 0 円/年
1口 5 0 ,0 0 0 円/年
※アファン会員(月払)のお支払はクレジットカードが必要です。
ホームページよりお申し込み下さい。
★トラスト募金
アファンの森周辺にはまだトラストできていない放置状態の土地があります。
アファンの森をより大きな森へ広げるためにご協力下さい。
・トラスト募金
1口 3 ,0 0 0 円
★ご寄付
アファンの森財団の活動全体をご支援いただくものです。随時募集をしております。
※ 金銭だけではなく、機器やサービスでのお申し出も頂戴しております。
その際は、一度事務局までご連絡ください。
★震災復興プロジェクト基金
アファンの森財団がおこなう震災復興プロジェクトの活動を進めるために有効に利
用させていただきます。
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一般財団法人 C. W. ニコル・アファンの森財団
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