中心市街地活性化に関する提案書 平成 23 年度豊橋商工会議所 青年部 会長 本 多 英 司 〇はじめに 平成10年に初めて制定された中心市街地活性化法(正式名称「中心市街地の活性化に関す る法律」 )は、平成18年8月に新「中心市街地活性化法」 (平成21年4月24日一部改正)とし て施行され、これにより、国が示した中心市街地の活性化に関する基本方針に基づき、市 町村が基本計画を策定し、認定を受けると国による集中的な支援が受けられるようになり ました。 【地方再生5原則】 ① 「補完性」の原則 「地域の実情に最も精通した住民、NPO、企業等が中心となり、地方公共団体との連携 の下で立案された実現性の高い効果的な計画に対し、国が集中的に支援する」 ⇒11月に実施させていただいた、豊橋商工会議所20周年事業「まちのPRIDE」内で提唱させ ていただいた、【まちなかイベントミックス】のように、それぞれのニーズを効果的に把 握していく機会を定期的かつ継続的に実施していく必要があると考えます。 ② 「自立」の原則 地域の資源や知恵をいかして、経済的に、また、社会的に自立に向けて頑張る計画を集中 的に支援する。 ⇒人口減少、来訪者数の減少、そのほかに不況による外的要因などによって、中心地の地 価は下落傾向にあるとはいえ、まだまだ少し無理をすれば投資できるような金額ではあり ません。こうした経済的な問題を行政と共に考え、解決していく必要があります。 ③ 「共生」の原則 地方と都市とがヒト・モノ・カネの交流・連携を通じて、ともに支え合い、共生を目指す 取組を優先的に支援する。 ⇒豊橋駅は東三河のハブ的な機能を持つ、ヒト・モノ・金の流通が可能となる潜在的な可 能性を秘めた駅でもあります。海と山に囲まれた自然豊かな地域であり、また豊橋港とい う全国有数の港湾を抱える地域でもある、まさに交流・連携が可能な地域であると考えま す。その他では、 ④ 「総合性」の原則 国の支援は、各省庁の縦割りを排し、地域の創意に基づく計画を総合的に支援する。 ⑤ 「透明性」の原則 支援の対象とする計画の策定、支援の継続及び計画終了時の評価については、第三者の 目を入れて客観的な基準に基づき実施する。 のような施策もあります。 〇現状分析 豊橋市では、平成21年に新しい中心市街地活性化基本計画を策定しました。豊橋の中心市 街地が、広域から様々な人々が集まり、交流する「元気で明るいにぎわいのあるまち」創 出のため、様々な取り組みが行われています。 (「豊橋市中心市街地活性化基本計画」参照) また、愛知県では、中心市街地活性化法に基づく県の支援として、豊橋市とタイアップし、 基本計画への助言を、平成20年から平成22年にかけて行っています。他方で、「がんばる 商店街推進事業費補助金」などの制度を設け、豊橋においても、花園商店街商業活性化事 業、イルミネーションフェスティバルへの支援、豊橋まちなかスロータウン商業フェスタ、 SEBONE、などへの補助も行っています。 一方で、中部経済産業局の「中部地域八ヶ岳構造創出戦略」により、愛知県の特色でもあ る、ものづくりとまちづくりを融合した新しいビジネス創出の支援も行われています。 しかしながら、一時の急激な減少は下げ止まった感があるとはいえ、中心市街地の来訪者 数は飛躍的に伸びているとは、言い難い現状があります。 来年春完成予定の芸術文化交流施設(愛称「プラット」)の影響など、将来的に誕生する 施設に期待するところです。 (芸術文化施設 愛称「プラット」と、交流施設のイメージ図 豊橋市HPより抜粋) 〇東三河と豊橋の潜在的可能性 農業の生産力、豊橋港を抱える貿易の主要地域、中小ものづくり企業の技術力、山と海に 囲まれた自然資源の豊富さなど、東三河には高い潜在能力が備わっており、これらを上手 く生かすことにより、新しいまちの形、ひいては中心市街地の求められる役割が見えてく るのではないでしょうか。来春4月より、いよいよ「東三河県庁」が実質的なスタートを切 ります。歴史的資源も至近に数多く抱えるこの地域を外部に対しても、プロモーションの 仕方でもっと発信し、人を集めることが可能であると考えます。 事例1 ラーメン横丁、静岡おでん街のような「豊橋カレーうどん」を中心としたグルメ スポット (静岡おでん街、青葉横丁HPより) (札幌ラーメン横丁 札幌ラーメン横丁HPより) 名古屋駅コンコースに立地する「名古屋ラーメン通り」(JR東海関連会社運営)は今や、 一宮、浜松などへグルメスポットとして進出しています。また、札幌や静岡にも、観光グ ルメスポットとして、その地位を築いています。豊橋発祥の「豊橋カレーうどん」も、こ れまでの官民一体のプロモーションにより、徐々に認知度を高めています。こうした、地 元の名物を、豊橋を訪れる訪問者の方にアプローチしていくことも今後必要なことと考え ます。 事例2 豊橋駅南口自由連絡通路前広場の有効活用 豊橋駅南口広場における定期的なイベント開催を提案します。現在も「ええじゃないか旬 彩楽市」など、定期的なイベントは行われていますが、今後駅と南口広場の延長線上に、 芸術文化施設がオープンすることを考えれば、このスペースが非常に重要な位置づけにな ると考えられます。「ココラフロント」や「ココラアベニュー」との連携した、催事開催 などにより、人の回遊につながると考えます。 (アスナル金山HPより) (サンストリート亀戸HPより) (豊橋駅南口「旬彩楽市」の様子) 余談ですが、「アスナル金山」「サンストリート亀戸」「ココラフロント」とも、有名な 「北山創造研究所」のプロデュースであります。 事例3 コンパクトシティ化に伴う、子供、高齢者、障害者に優しいバリアフリーの推進 にぎわいの対象は、一般の来訪者だけではなく、そこに住まう地域住民、そして交通弱者 と言われる子供、高齢者、障害者にとっても優しいまちでなくてはならないと考えます。 「にぎわい」とは、すなわち歩行者がまちに溢れる様子に違いありません。歩行者が安心 して、歩けるまちこそが賑わい創出への近道であると考えます。冒頭にも記述した「中部 地域八ヶ岳構造創出戦略」のひとつでもある、「ヘルスケア・ビジネス」に関連したビジ ネスモデルの創出に役立つバリアフリー化、福祉用具などのものづくり産業や、医療、介 護現場と連携した民間サービスモデルを検証できるまちづくりなども、近郊に豊富な自然 を有する豊橋ならでは、まちづくりのキーワードとなるのではないでしょうか。 タイなどでは、医療と観光をマッチングした「メディカルツーリズム(ヘルスツーリズム)」 という、新たなビジネスモデルで、年間120万人の観光客を招いています(経済効果約2000 億円とも言われています)。また、温泉地と買い物、温泉地と留学生という組み合わせで 外国人観光客を呼び込み、再興を目指す地域も国内では増えつつあります。東三河であれ ば、介護福祉と、豊かな自然環境を組み合わせた「終(つい)の棲家(すみか)」として のプロモーションなども、新たな人口増加への方策としてあるのではないかと考えます。 その他として まちなかに賑わいを創出するためには、そのまちの個性が求められます。「〇〇のまち」 という強烈な個性と、それに伴うまちなかの「インデックス(索引)」も必要不可欠なも のであると考えます。「豊橋といえば」、と聞かれてはっきりと何、と答えられるような、 個性的なものを国内外に対して訴求していくことも地域全体で力を合わせていかなければ ならない課題のひとつだとも言えます。社会のネット化が進み、必要なものはキーワード を入力すれば何の労力もなく手に入れることができる時代だからこそ、目的を持った人た ちが訪れるまちなかを創っていくことも必要なことではないでしょうか。 〇豊橋YEGのまちなかへの関わり 平成4年に、豊橋商工会議所100周年を機に設立された豊橋YEGも、これまで中心市街地に対 して、様々な関わりをしてまいりました。設立当初、 「企業の活性化が力強い地域の発展」、 「都市間競争の中で地域のポテンシャル発信」を標榜し、まい進して生きた青年部。その 中で、キーワードとなるのが、「まちなか=豊橋駅前」であったと感じます。そのDNAは、 20周年を迎えた今日においても不変のものであります。これまでの、青年部のまちなか参 画イベントを列挙すると、豊橋に対して多くの実績を残しています。 三遠南信連携の一環として、豊橋―飯田間の 豊橋発祥「ええじゃないか!」を通じた伊勢市 特急開通式。駅を通じた人的交流をねらって。 との交流イベント。毎年、多くの人間が伊勢との 交流を行っています。 地域一番店発見隊事業。豊橋の隠れた名店を 「みんなでまち行くまい」事業。中心市街地に来た 市民の手で発掘するための事業。「豊橋カレー くなるような魅力作りを投げかけるため、青年部の うどん」の原型、「豊橋うどん」を掘り起こす メンバーが核となり、イベント実施しました。 きっかけとなりました。 豊橋駅前を中心に撮影が行われ、現在の町起し ご存じ、豊橋観光名物「炎の祭典」。今年17年目を 映画祭の奔りとなっている事業です。ここにも 迎え、今後更なる地域イベントとしての存在感を示 豊橋YEGは中核的に関わりました。 しています。 豊橋商工会議所青年部は、これまで20年の間、様々なまちづくり事業にに主体的に関わっ てまいりました。「炎の祭典」も元々は、「駅前大通り」で地元発祥の花火を外部の人た ちに見てもらいたい、という発想から生まれた一大事業です。私たち豊橋商工会議所青年 部の大きな担いの一つである、「地域経済の発展の支え」となるためには、豊橋に生活や 事業の中心を置く者として、人々の交流を促す潜在能力を内在した「中心市街地」の活性 化(=にぎわいの創出)は、無視できない大きな課題のひとつでもあると考えます。 まとめ 中心市街地の空洞化が叫ばれるようになってから、随分時間がたちます。1974年、大店法 の改正に伴う大型商業施設の郊外化が加速化し、またモータリゼーションの急速な普及に 伴って、徐々に各地の「まちなか」は衰退し始めたと記憶しています。商業の衰退ととも に、光も弱くなり、新たに出現した光の届かない暗がりには、犯罪が起こりやすくなる危 険性も内在しています。 無人のコインパーキングの上に明るい商業 歩行者天国の開催により新たな商業の参入 施設を可能にするフィルパーク を引き出す しかしながら、今あるものを、時間をさかのぼって元に戻すことはできません。私たち地 域経済に携わるものとしては、今ある現実を受け入れ、さらにそこから新しい可能性を導 き出していかなければなりません。「今あるもの」を有効に活用し、「新たにできるもの」 と調和しながら、新しい「まちなか」を創出していかなければならないと考えます。本年、 提案させていただいたものはほんの一部でしかなく、今後は行政、民間商業者、まちづく り団体、地域自治会などが、それぞれの意見を出し合い新しい可能性をあきらめることな く探求していくことが必要不可欠です。多くの人の協力を得ながら、「誇れる地域、愛す べき故郷 豊橋」創造に向けた取り組みを継続していくことができれば幸いです。 参考資料 〇豊橋市中心市街地活性化基本計画(概要版) 〇中部地域の産業振興について(中部経済産業局) 〇愛知県地域活性化政策について(愛知県) より抜粋
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