平成26年10月15日(水) 第2回全国U―12指導者研修会参加報告書 村山 久志(強化普及部小学生担当・天久小) 1 趣旨 全国のジュニアチーム指導者が一堂に会し、現在指導者が抱えている悩みや課題を共有し、そ の解決に向けて議論し合い、共に高め合うことを目的とする。 また、研修会を通して、全国のネットワークを構築し、指導者向けの情報を発信し、ジュニア チームの指導力向上と指導者間の連携促進を目的とする。 2 主催 (公財)日本ハンドボール協会 小学生専門委員会 指導委員会 3 日時 平成26年10月4日(土)13:30~20:30 5日(日) 9:00~12:00 4 会場 味の素ナショナルトレーニングセンター 5 研修内容 NTC ①講義 「ジュニア指導の重要性」について 本講義では、ハンドボールの歴史に触れながら、現在の日本におかれている課題やジュニア期に おけるトレ-ニングの重要性について学ぶことができた。その中でも、2つの事が印象に残った。 まず1つ目は、指導者が『勝利主義』になってはいけないということだ。その為には、子どもの発 達段階に応じたトレーニング(体を使ったいろいろな動き)を体験させ、身体能力を高めることが 大切である。特に、ジュニア期は柔軟性や吸収力が高く、この時期に多様なトレーニングやスポー ツに関わらせることで将来有望な選手へと育成することができる。指導者は、目先の勝利にこだわ らず、子どもの将来を見据えた指導のあり方を構築することが大切だと感じた。 2つ目は、『世界と日本の差』である。日本は、世界に比べ上背やパワーが足りない。その分、 スピードやテクニックで勝負しなくてはいけない。その為に、『2対2』のスキルをアップさせる ことが大切。世界では、1対1よりも2対2を重要視しており、2人の距離感やコンビネーション に力を入れている。日本の特徴として、2対2の局面で2人の距離が遠く、ノーマークシュートの チャンスがなかなか作れない。これをジュニア期に徹底させることで、課題解決につながり、『世 界との差』を詰める手がかりにしたいと言うことを感じた。 ②実技 「ジュニアトレーニング指導」について テーマ 『ジュニア期から体幹を鍛えるトレーニング』 ローランド氏の「オリンピックは、ジュニア期の育成にかかっている。 」と言う熱い話の後、「体 幹を鍛える」実技講習に入った。 講習内容は、『ハンドボールの動きを通して、体幹を鍛える』ことを中心に行った。練習内容は 次の通りである。 1、ウォーミングアップ ①リーダーの指示通りに動く。 (・リーダーの挙げている手の方向に集まる。・リーダーのマネをする。 ) ②おにごっこ (・逃げている人を助ける・・・股下休憩、ボール渡し) 2人1組になって・・・ (ネコとネズミ遊びの要領) ・オニ以外はうつ伏せになる。 (片足で待っていたり、片手片足でまったりして体幹を鍛える。) 2、パスキャッチ 20秒(活動)&10秒(休憩)速くて正確なパス! 4人1組になって・・・ ①両手オーバーハンドパス(上半身と肘を上手く使って投げる) ②両手プッシュパス(胸の前から足のバネを使って押し出す) ③片手オーバーパス(上半身と肘を上手く使って投げる) ④ひざ立ちパス(倒れながら相手の頭を狙って速いパスを出す。) ※速いパスを意識させることで、ゲームでのパス回しが速くなる。また、単純なミスを防ぐこと ができる。 3、シュート練習 障害物を置いたロングシュート(DFとの距離感を掴む) ①ステップシュート ※腕が振り切れるように、障害物との距離感を掴む。 ②ランニングシュート ※コーナーを狙い、バウンドシュートを意識する。 ③ブラインドシュート ※ジャンプシュートは、空気を蹴って投げる。 ④ジャンプシュート 4、マイクロハンドボール (4対3の攻防から空間を見つけるトレーニング) ルール:①4人1組を作る。②ハーフコートで4対3の攻防を行う。 ③キーパーはチームから一人出す。④得点を決めた後やミス後の攻守切り替えを素早く する。 5、ミニマイクロハンドボール ルール:ミニマイクロハンドボールと同じ 追加ルール:①コート一面を使う。②シュートは、全員がハーフコート-を越 えてから打つ。③2点先取など条件付けをする。 以上の実技講習を受け、ジュニア期のトレーニング法について印象に残った ことが3つある。1つは、発達段階に応じたボールやゴールを使用することである。そうするこ とで、無駄のない動きを身につけられる。2つ目は、ジュニア期から体幹を鍛えると言うことで ある。ヨーロッパでは、体を大きくするために、発達に応じた筋力トレーニングを行い、体幹を 鍛えていることが分かった。3つ目は、思考させることである。指導者が、事細かく教えるので はなく、トレーニングの中で引き出すことが大事である。 今回の実技講習を受け、ジュニア期の指導の在り方を見直す良い機会となっ た。 ③懇親会 「ネットワークを広げよう」 他県のジュニアチーム指導者との親睦を深めることができた。 日本リーグ家長GMより、 「他県のリーグの選手も大いに活用して欲しい。」 「可能な限り、協力したい。 」とのお言葉を頂いた。これを受け、今年度中に 1度は、天久小学校で計画を立てお願いしてみたい。 ④グループ協議 「ジュニア指導の在り方、悩み」 今回のグループ協議を通して、他県のジュニア指導者の抱える悩みで最も 多かったのが、練習場所と時間の確保であった。県によっては、中学校の体育 館を借りて、夕方7時から9時の2時間練習を実施している所もあった。しか し、睡眠時間の確保が難しく思うようにいかず困っていた。中には、練習試合 をするのに高速で往復5時間の移動を余儀なくされている県も出てきた。それ らに比べると、沖縄県のハンドボール環境は整っており、ハンド人工も増えて いる。何より、近くの小学校や中学生との合同練習や練習試合ができるという 強みが現在の沖縄の強さを支えていることが実感できた。それだけではなく、 指導者の質の向上や保護者の心強い支えが垣間見える協議会となった ⑤講義 「フェアプレイでハンドボールを盛り上げよう!」 フェアプレイとは、①自己を信じ、目標に向け最善を尽くす。②仲間を信 じ、成長する。③対戦者・仲間・周囲の人への尊敬の念を大切にし、ルールの 範囲内でプレイすること以上のものとして定義されている。今回の講義では、 4つの視点からフェアプレイについて考えていった。Ⅰ運動することの意義Ⅱ アンチドーピングを通して考えるフェアプレイⅢ協議の参加条件から考える フェアプレイⅣスポーツの戦術、作戦、戦略を通して考えるフェアプレイ。 Ⅰ運動することの意義について ジュニア期における運動指導では、一斉指導による運動よりも、子どもの 興味関心に基づいた自発的な遊び型の運動が重要。また、勝ち負けを強調しす ぎると否定的な自己概念を形成してしまう傾向にあるため、バランスのとれた 指導の工夫が必要である。 Ⅱアンチドーピングを通して考えるフェアプレイ 競技者(選手)自信がドーピングに対する知識と自覚を持たなければいけな い。(選手生命にも関わるため、知らなかったでは済まされない問題である) 小学生の段階でも知識として知っておくと良い。 Ⅲ競技の参加条件から考えるフェアプレイ 両足義足のスプリンターで、世界陸上に健常者と共に出場したオスカー・ ピストリウス選手とロンドンオリンピック無気力試合(バトミントン)につい てフェアプレイとは何か考えた。 Ⅳスポーツの戦術、作戦、戦略を通して考えるフェアプレイ 1992年春の高校選抜野球大会、 『星陵高校対明徳義塾』の試合で、当時の松井秀喜選手に対 する5打席連続敬遠について、フェアかアンフェアかについて協議を行った。 「高校生なので、勝 負した方が良い」 「勝負事だから敬遠もあり」など、賛否の意見が聞こえた。それを「ハンドボー ルで考えるとどのようなプレーが考えられますか。」との問いに『マンツーマン』が浮かんできた。 個人的には、 「プレーしている側の人間と、周囲の人間にとって納得のいくプレーこそフェアプレ ーではないかと考える。 」 最後に、全国の指導者との交流を通して、改めて気づかされた沖縄県のハンドボール熱をさらに 盛り上げ発展させていくために、指導力向上に全力で努めたい。
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