―― 実 施 例 ―― 安田病院東棟空調設備改修事例 ㈱中電工 竹原営業所 亀 井 康 雄 ■キーワード/ ■キーワード/エコアイス・リニューアル・既設配管利用 延床面積 6,505fl 1.はじめに 構 造 鉄筋コンクリート造 当病院は,平成4年3月に完成し13年近く経過して 階 数 地上5階 塔屋1階 いる。当初から安全性とクリーン性を重要視した全電気 建 築 主 医療法人社団仁慈会 安田病院 による空調・給湯・厨房システムとなっていた。 設計監理 óビルド設計 空調設備においては,設備の劣化が認められることと, 最新の空調機は当初設備の機種と比較し40%前後のエ 建築施工 ó朝日 設備施工 ñ中電工 ネルギー費を削減できるなど経済性に優れることから, 3.設備概要 リニューアル実施に至った。 今回採用したリニューアル工法は,空調の既設配管を 利用して機器の更新を行い,工期短縮,工事費の大幅削 3−1 空調主要機器 氷蓄熱ヒートポンプエアコン(ビルマルチ) 減,環境配慮,運営維持での改修など利点が多い工法で 13HP× 3台 ある。 10HP× 1台 さらに,一部に氷蓄熱ヒートポンプエアコンを採用し, 空気熱源ヒートポンプエアコン (ビルマルチ) 昼間の電力削減にも寄与している。 10HP× 7台 写真−1∼4は,改修前後の室内外機の写真である。 8HP× 9台 3−2 空調室内機 2.建物概要 カセット形 3.6kW×54台 建物名称 医療法人社団仁慈会 安田病院 カセット形 4.5kW× 8台 所 在 地 広島県竹原市下野町 カセット形 5.6kW×24台 工 期 平成16年1月∼平成16年5月 カセット形 7.1kW× 6台 建物用途 病院 (病床数190床) カセット形 8.0kW×15台 一般病棟(110床) カセット形 11.2kW× 5台 医療療養病棟(40床) カセット形(クリーンルーム用) 介護療養型医療施設 (40床) 改 修 前 改 修 後 写真−1 室内機 写真−2 室内機 写真−3 室外機 写真−4 室外機 ヒートポンプとその応用 2005.3.No.66 ― 38 ― 5.6kW× 3台 ―― 実 施 例 ―― 室外機 室外機 談話室 5F 看護婦詰所 談話室 4F 病室×3室 看護婦詰所 病室×4室 透析室 休憩室 3F X線室 CT室 2F 病室×6室 事務所 1F 病室×4室 更衣室 経理室 応接室 操作室 CT室 病室×5室 DI室 検査室 ホール 調剤室 中材 廊下 待合室 倉庫 病室×6室 リネン室 図書室 病室×6室 医局 院長室 前室 準備室 外科処置室 理事長室 手術室 診察・処置室 図−1 マルチエアコン系統図 以前の工法 本工法 冷媒回収・機器の撤去 冷媒回収・機器の撤去 4.空調 4−1 氷蓄熱ヒートポンプエアコン (ビルマルチ) 昼間の利用に限られる事務室・診察室・応接室・更衣 既設配管撤去 室は,氷蓄熱ヒートポンプエアコンを採用した。 既設配管流用 新規配管・配線工事 作業時間 約50% 削減 改修前は,非蓄熱の標準ヒートポンプエアコンであっ 機器の搬入・据付 機器の搬入・据付 気密試験 気密試験 なった。氷蓄熱(49HP)を一部採用することで,非蓄熱 真空乾燥 真空乾燥 (142HP)の従量料金が空調システム割引(−3円/kWh) たが,環境性とランニングコストを考え, 氷蓄熱の採用と されるため,さらに優位となる。 冷媒充てん 自動試運転 環境性については,炭酸ガス割合が多い昼間の電力で 試運転 はなく,夜間の電力を利用するため,地球温暖化にも寄 図−2 作業フロー 与している。 4−2 更新専用ビル用マルチ 更新専用ビル用マルチについて,利点と注意点を以下 に述べる。 写真−5は機器搬入状況で,レッカー車を使い屋上へ 機器の搬入を行った。梱包の低減の様子も分かる。 写真−6は冷媒の回収作業状況で,今回は約100kgの 冷媒を回収し,フロン回収法に基づき処理した。 写真−7は冷媒の充てん作業状況で,自動充てんの不 足分を追加充てんした。 ∏ 利点 A 既設配管利用 既設配管を利用して,空調機の機器更新ができる。 本工法以外では,配管洗浄に手間がかかったり, 写真−5 機器搬入状況 配管を取り替える必要がある。 図−1は,マルチエアコンの系統図で,図−2は,改 電源電線やリモコン配線も再利用できる。 B 工期短縮・工期制約への対応 修工事作業手順のフローである。 _ 既存冷媒配管の再利用 ― 39 ― ヒートポンプとその応用 2005. 3. No.66 ―― 実 施 例 ―― 写真−6 冷媒回収作業 写真−8 既設冷媒管のガス管(左) と液管 (右) a 簡易梱包化で現地の廃材レス化を促進。 b 建築廃材の最小限度化を促進。 F システム変更 非蓄熱式の空調機から,蓄熱式のエコアイスへの 更新ができる。 π 注意点 A 運営維持での改修であったため,施主との工程打 ち合わせがもっとも重要であった。患者の移動期間, 工事時の騒音・じんあいが最小限となるように,仮 設計画,および綿密な工程打ち合わせを行った。 B 配管の老朽化 新冷媒は,在来冷媒の1.1倍の配管内圧力が生じ 写真−7 冷媒充てん作業 るため,老朽化によっては配管の更新の可能性もあ る。今回は,目安の20年以下であったこともあり, ` 工期の短縮 問題なかった。検証のため一部の冷媒管を回収して, 図−2に作業フローを示すが,冷媒配管を取り 自動洗浄によるクリーン性をみた。写真−8は,ガ 替える工法に比べ,配管の撤去と新設や冷媒充て ス管・液管の状況で,鉱油や異物は確認できないほ んで主に作業時間短縮となり,作業時間が約 どきれいであった。 C 50%削減できる。 a 付帯工事(天井解体・足場組立)の低減 室内機または室外機のうち,どちらか一方のみの 交換は不可能である。 C 省エネルギー・低騒音 完成後10年以上経過した空調機と比較すれば, 5.おわりに 約40%の省エネルギー化,および約3∼4dBの騒 音が低減できる。 今回は,既存の病院で運営維持での作業であったため, 短工期で,施工中に騒音などの不快感に注意して工事を D 能力アップ 行う必要があった。そのため,既設配管を利用できる本 方式は,最適であった。 空調機能力を最大1.6倍までアップできる。 また,非蓄熱式から氷蓄熱ヒートポンプエアコンへの 今回は,空調能力不足はなく,熱負荷が増加する 更新事例としても参考になると考える。 予定がないとのことで,改修前と同能力とした。 E 環境に配慮 リニューアル市場の拡大が続くなかで,これからも利 _ 既存配管内の冷媒(R22)を,環境にやさしい 点の多い本方式を採用し,お客さまの満足を得ることが できれば幸いである。 「新冷媒R410A」に入れ替える。 ` 既設配管の再利用により,廃棄物削減・省資源 化に貢献。 ヒートポンプとその応用 2005.3.No.66 ― 40 ―
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