今月の人 - 高純度化学研究所

今月の
Apr.,2007
「技術革新の源は高純度材料にあり」を
モットーにチャレンジ精神で進む
ほう ち ど
高純度化学研究所社長 寶地戸
高純度化学研究所は,昨年
道雄 氏
の核となる製品が必要だ」と語
7月に 50 周年を迎えた。この
る。同社のビジネスモデルは,
期を節目として,寶地戸道雄氏
カスタマーの要求に応えた次世
が社長に就任した。同社は,半
代材料を先駆けて開発し,製造
導体プロセス用材料,新機能材
装置メーカーや半導体 IC メー
同氏には,「不揮発メモリ用
料の開発に注力している企業で
カーと共に量産化に対応した材
材料で世界一になる」という志
ある。半導体プロセスが 65nm,
料に確立することである。その
がある。それは,同氏が入社以
「材料研究部」として組織変更
した。
45nm,32nm へと微細化が進展
ために同氏は,「大手が取り組
来,この分野を手掛けていたと
し,次世代プロセスに採用され
まない材料でも,取りあえず取
いう繋がりがあるからだ。当時,
る材料の変革が求められている
り組んで,何ごともチャレンジ
強誘電体材料として,米シンメ
時期だけに,新社長の舵取りが
しようと思っている」と語る。
トリックス社の「Y1」と呼ばれ
重要な役割を担う。
そのようなビジネススタイルの
る材料と古くからある PZT との
成果として,同社の次なる柱と
市場争奪戦が行われていた。高
実父である故寶地戸雄幸氏が設
して期待されている ALD 材料,
純度化学研究所の創業社長は,
立して以来,高純度材料の研
High ― k 材料,MRAM 薄膜材料
いち早くシンメトリックスと製
究・開発・製造という技術革新
などが立ち上がってきた。ALD
造・販売においてライセンス契
の中核に深く関与する事業に専
材料に関しては,業界に先駆け
約を結んだ。その仕事のため,
念してきた。その流れを強化す
て認定を受けていたが,量産設
新社長は入社早々に米国までこ
べく,新社長として就任以来,
備の対応で,ライバルメーカー
の交渉に出かけたのである。こ
研究開発,生産体制,新規分野
の後塵を拝したが,量産工場も
の件で同社が,スピンコート材
開拓,海外展開など,新たなる
完成し,巻き返しを図っている。
料(塗布,焼成)での扱いにお
組織の強化,体制作りに手腕を
スパッタリングターゲットとし
同社は,1962 年に道雄氏の
発揮してきている。
同社の主要製品の売上比率は,
いて業界で知られることになる。
て,同社がメインとする分野は
次世代メモリとして,ようやく
磁気応用である。特に,High―k
FeRAM,MRAM,PRAM などが
MOCVD が 20 %,機能材料・試
材料や強誘電体薄膜材料などの
研究段階から具体的製品へと進
薬が 20 %,スパッタリングタ
研究開発を進め,成果も出てい
んでいる。同社がこれまで永年
ーゲットが 40 %である。MO-
る。日本の半導体コンソーシア
にわたり取り組んできた成果が
CVD 分野での主軸製品は,層
ムに研究開発用として同社の
花開く時を迎えている。
間絶縁膜用 TEOS(珪酸エチル)
High ― k 材料や強誘電体薄膜材
他社が開発を嫌がるような困
である。同社は,TEOS のパイ
料が採用されている。ハードデ
難で複雑な合金や,
量としても少
オニアとして知られている。
ィスク用ターゲット材の引き合
ないニッチな材料に対しても
「技
寶地戸社長は,「TEOS は右
いも増えている。全体の開発体
術革新の源は高純度材料にあり」
肩上がりで販売が延びているが,
制も,立て直しを図り,現場に
をモットーにチャレンジ精神で
単価が下がっているので次世代
近い立場で研究ができるように
進む。
(本誌編集長・大島雅志)
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