ファナックニュース 2015-II

ズミの花薫る初夏の富士山
2015年5月13日撮影
2015-Ⅱ
新商品発表展示会
4月14日
(火)
、15日
(水)の2日間、本社自然館において、
「ファナック新商品発表展示会」を開催しました。昨年を大きく
上回る大勢のお客様にお越し頂き、非常に活気ある展示会となりました。
本年は「one FANUC」のキャッチフレーズの元、FA・ ロボット ・ ロボマシンの枠組みを超えて開発したファナックの商品群
がつながる新機能を数多く発表いたしました。
製造現場における生産性の向上、設備稼働率
の向上のニーズにマッチした商品だと、高いご
評価を頂きました。
FA のコーナでは、今回が初お披露目となる New HMI を、会場中央に設置した特設ステージにてご紹介いたしました。大画面スク
リーンでプレゼンテーションするとともに、実際にオペレーションして頂く操作盤もご用意し、多くのお客様に次世代 CNC を体感
頂きました。また、ファイバレーザも初めて展示し、CO2レーザで培った制御技術を活かした取組みが好評でした。
ロボットのコーナでは、いよいよご提供できるようになった緑の協働ロボット、車体を丸ごと搬送する2t 超大ロボット、厳しい環境
にも安心してお使い頂けるフルカバーロボットなど、最新機種を中心にどのコーナも常時人だかりが絶えず、注目を集めました。
ロボマシンのコーナでは、ロボドリルの鉄とアルミのバリバリ加工、ロボショットの130t、220t、二材成形、ロボカットの高速・高精
度厚板加工に、多くのお客様から注目を頂きました。また、いずれもロボットとの融合による自動化システムを展示し、
「工場を自
動化するならファナック」という印象を強く持って頂きました。
サービスのコーナでは、実際に現場で行っている予防保全の作業内容をご覧頂きました。ファナックの基本理念のひとつである
「サービス・ファースト」を具体的な事例を通してお伝えすることで、全世界で安心してファナック商品をお使い頂けることをアピール
しました。
2
■主な出品商品
FA
CNC
デザイン ・ 操作画面を一新 30i-BシリーズCNC
・現場の作業をトータルサポート
・フラットサーフェス、軽快な操作感
・加工プログラムを簡単作成
・段取り時間を大幅短縮
・干渉を未然に防止
30iシリーズの新機能
・5軸加工機の使い勝手向上
・主軸性能を最大限活用して加工時間短縮
0iシリーズの新機能
・高品位な金型加工を実現
・ワークの芯出し、工具オフセット計測
最大限の加工効率を引き出すファナックのCNC
・旋削加工時間の大幅短縮
工作機械をつないで見える化
・工作機械の稼働状態と保守情報を集中管理
パワーモーション
・高速・高精度なプレス・トランスファー制御
サーボ
・幅広いラインアップで高速・高精度・高効率
・アンプの小型化と400V対応
・小型化とラインアップ拡張
・停電時に機械とワークを保護
・調整レスで最速のタップ加工
・CNCとサーボ動作を見える化
レーザ
・高速・高精度のレーザ加工を実現
ロボット
・安全柵が不要な35kg可搬ロボット
・車体工場向け機能展示
・アーク溶接ロボットシステム
・電子部品の高速・高精度整列システム
・食品の高速整列システム
・フルカバーロボットによる知能化バリ取りシステム
・医薬品・化粧品容器のピッキングシステム
・バラ積みロボットによるワーク整列システム
・カゴ台車とコンベア間の箱移載システム
・2t超大ロボットによる完成車体搬送
・保守、安全、適用検討機能
新操作画面
新表示器・新キーボード
旋削加工・ミリング加工サイクル
計測サイクル
3次元干渉チェック
5軸加工用計測サイクル
主軸負荷による速度制御
金型加工用機能
段取り支援
複合形固定サイクルの経路短縮
稼働管理ソフトウェア
Power Motion i-MODEL A
αiシリーズサーボ
βiシリーズサーボ
リニアモータLiSシリーズ
停電時機械保護機能
スマートリジットタップ
サーボガイド
ファイバレーザ
協働ロボット CR-35iA
R-2000iC
ARC Mate、M-20iA
M-1iA
M-2iA
M-20iB
LR Mate 200iD
M-10iA
M-710iC
M-2000iA
ゼロダウンタイム機能、DCS機能、ROBOGUIDE
ロボマシン
ロボドリル
・鉄、アルミ部品の高効率加工
ロボショット
・コネクタ、自動車部品の精密安定成形
ロボカット
・厚板ワークの高速・高精度金型加工
ロボナノ
・使いやすさと稼働率を向上させた超精密ナノ加工機
ROBODRILL α-DiAシリーズ
ROBOSHOT α-SiAシリーズ
ROBOCUT α-CiAシリーズ
ROBONANO α-N1iA
3
新商品・新機能紹介(FA)
■新商品 加工現場の作業を一貫支援する New HMI
New HMI は全ての機械に共通なユーザインタフェースを提供し、加工現場の作
業を一貫支援するファナックの新しいユーザインタフェースです。直感的なアイコ
ンやアニメーションなどのグラフィカルな表現を利用した判りやすい画面構成と
なっています。New HMI ではハードウェアも含めてデザインを一新しました。
対応機種:Series 30i/31i/32i -B
•New HMI では、加工現場における生産性向上の取り組みを「計画」、
「加工」、
「改善」のサイクルと考え、それを一貫支援することをコンセプトとし、様々なア
プリケーションがホーム画面から呼び出せます。
特に「改善」フェーズの支援については、FA の総合メーカであるファナックの
知見を活かしたアプリケーションを提供します。
計画・・・工具情報管理、加工時間予測
加工・・・CNC 操作画面、機械衝突防止
改善・・・保守情報管理、稼働管理
New HMI ホーム画面
• 新しい CNC 操作画面のコンセプトは、
「プログラミング、段取り、加工を簡単に」
です。画面を「編集、段取り、運転」の3つに集約することにより、操作性が格
段に向上しました。
New HMI CNC 操作画面
■新商品 高速・高精度加工を実現する FANUC FIBER LASER series
FANUC FIBER LASER は、金属加工や樹脂加工など様々な分野に対応可能な高出力ファイバレーザ発振器です。
CNC 高速・高精度加工が可能であり、ファナックの既存の CO2レーザと同様の使い勝手を実現しました。これにより、レーザ加工
機の開発期間の短縮が可能です。
対応機種:Series 30i/31i-LB
• 軸制御と同期した高速なレーザ出力指令が可能であり、サイクルタイムの短縮
および、レーザ加工の高速・高精度加工を実現することができます。
• CO2レーザと同様の使い勝手を実現し、レーザ加工機の開発期間の短縮が可
能です。
•高速レーザ指令、出力フィードバック機能により、レーザ光の安定出力が可能
です。また、マーキングに有効な微小出力制御機能など、豊富なレーザ制御機
能を備えます。
•レーザ加工の条件設定が容易な加工条件設定機能や、速度に応じて自動的に
レーザ出力を変更するパワーコントロール機能、ギャップ制御機能など、多彩
なレーザ加工機能を備えます。
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FIBER LASER FF3000i-A
新商品・新機能紹介(ロボット)
■新商品 FANUC Robot ARC Mate 100+C/8L
ファナックは、アーク溶接ロボットとしてご好評頂いている ARC Mate 100iC シリーズの新たなバリエーションとして、大型ワー
クの溶接が可能な2m リーチのロングアームタイプを開発し、販売を開始しました。
アーク溶接用に動作パラメータを最適化し、従来機に対し大幅に小型化したアームで、ロボット質量を40%削減、腰回りの干渉
半径を20%縮小させ、溶接システムの小型化を実現可能にしました。更に消費電力も30%削減し、省エネにも貢献します。
•A RC Mate 100iC シリーズのロボットでは、基本ロボットの ARC
Mate 100iC/12をベースにアーム部品の追加・変更でバリエーショ
ン機を展開し、今回の新商品の追加で、1.4m~2.0m リーチの動作
領域をカバーできるようになりました。
•A RC Mate 100iC シリーズでは、ロボット設置寸法やツール取付
けインタフェースに加え、全軸の駆動部も共通化を図っています。
ツールや周辺機器に加え、モータ、減速機、ギヤの駆動系、更に
制御装置、アンプ等の保守部品も他の ARC Mate 100iC シリーズ
のロボットと共通です。
•独自のギヤ駆動機構を採用したケーブル内蔵型のスリムな手首で、
狭い隙間にもトーチケーブルの干渉を気にすることなく、入り込ん
で溶接できます。
• 動 作領域はロボットに近い手前部分、および後方部分を拡大し、
水平ストロークで1.5m、上下ストロークで3.7m を確保しました。
天吊、傾斜角設置も標準で対応しています。
•A RC Mate 100iC シリーズは5万台以上の出荷実績を誇る高い信
頼性を持つロボットです。高い信頼性と柔軟性により、稼働率の高
い溶接システムを実現頂けます。
■新商品 ゼロダウンタイム(ZDT)-保守診断機能
生産ラインでは、ロボット1台のトラブルがきっかけで長時
ARC Mate 100iC/8L
機構部の状態監視
間のライン停止、いわゆるドカ停に至ることがあります。この
プロセスの状態監視
加圧力
溶接時間
溶接回数
・・・
ようなドカ停の防止には、アラーム停止する前に異常を通知す
る、または事前に保守を促すなど、
「壊れる前に知らせる」予
防保全が重要になります。
ゼロダウンタイム機能は、予防保全に役立つ様々な機能に
より、ロボットの稼働率向上をサポートします:
M
e
H c
録など
ZDT
•プロセスの状態監視
Ma
in
H
• 保守時期の通知
S
エラー情報、メモリ使用量、CPU・ネットワーク負荷など
H
•システムの状態監視
nce
na
te alth
e
稼働状況、ビジョン検出結果、サーボガン状態監視な
ど
P
H r
m
te
ys alth
e
減速機診断、モータトルク監視、サーボアラームの記
ess
oc lth
ea
al
nic
ha lth
ea
•機構部の状態監視
グリス交換時期、バッテリ交換時期、バランサブッシュ
への給脂など
これらの情報はサーバで集中管理され、リアルタイムにス
マートフォンなどへ遠隔通知することも可能です。また、ロボッ
ト単体だけでなく、セル単位、工場単位とお客様のご使用環
境に合わせて最適な構成をお選び頂くことができます。更にク
ラウドへの対応も検討しています。
グリス交換!
保守時期の通知
メモリ
使用量
システムの状態監視
壊れない
壊れる前に知らせる
壊れてもすぐ直せる
5
新商品・新機能紹介(ロボマシン)
■新機能 FANUC ROBODRILL-LINK+
FANUC ROBODRILL-LINKi は、工場内に設置されたロボドリ
ルの稼働状態を管理するパソコンソフトウェアです。インター
ネット経由で遠隔地にある工場の状況を確認することもでき
ます。
•ロボドリルの稼働状態(運転中/停止中/アラーム中)をリ
アタリ画像
アルタイムで監視することができます。
•ロボドリルの稼働状態や加工数を実績データとして収集
し、稼働率の向上に役立てることができます。
•ロボドリルのアラーム履歴や各種 NC データを収集・分析す
ることにより、故障時の原因究明や予防保全に寄与します。
ROBODRILL
ROBODRILL-LINKi
■新機能 FANUC ROBOSHOT-LINK+
FANUC ROBOSHOT-LINKi は、ロボショットの生産・ 品質情
ROBOSHOT-LINKi
報を管理するパソコンソフトウェアです。ファナックロボット
との融合により、成形工場の生産性向上に貢献する新たな機
能を追加しました。
•ロボショットとファナックロボットの稼動状態をリアルタイ
ムで監視することができます。
•iRVision(ファナックロボットの内蔵ビジョン)で取得した
成形品の画像をリアルタイムに表示、保存することができ
ます。
•ロボショットの成形データと成形品の画像データの一括管
理が可能となり、より高度なトレーサビリティを実現するこ
とができます。
FANUC ROBOT
+ iRVision
ROBOSHOT
■新機能 FANUC ROBOCUT-LINK+
FANUC ROBOCUT-LINKi は、ロボカットの生産 ・ 品質情報
を管理するパソコンソフトウェアです。ロボカットの稼働状況
の監視と品質管理により、生産性の向上に貢献します。
•ロボカットの稼働状況をリアルタイムに監視できるほか、
携帯電話への連絡により、工場の生産状況を的確に把握
できます。
•品 質管理機能は、加工状態を自動的に記録し、良品加工
時のデータとの比較によって、加工品質を確認することが
できます。
•また、アラームの発生やワイヤ断線位置をわかりやすく表
示し、加工不良時の原因究明にも寄与します。
ROBOCUT
ROBOCUT-LINKi
6
2015年 座談会
4月17日
(金)に日頃お世話になっています先生方に新商品発表展示会の展示品を見て頂き、その後座談会を開催致しま
した。
出席者
東京大学 教授
樋口 俊郎 先生
ファナック株式会社
東京大学 教授
堀 洋一 先生
代表取締役社長
稲葉 善治(司会)
慶応義塾大学 教授
青山 英樹 先生
ロボマシン事業本部長
内田 裕之
神戸大学 教授
白瀬 敬一 先生
ロボット事業本部長
稲葉 清典
名古屋大学 教授
社本 英二 先生
研究統括本部長
松原 俊介
東京大学 教授
石川 正俊 先生
ハードウェア研究所長
野田 浩
早稲田大学 教授
菅野 重樹 先生
ソフトウェア研究所長
宮嶋 英博
東京大学 教授
佐久間 一郎 先生
サーボ研究所長
谷口 満幸
東北大学 教授
岡谷 貴之 先生
レーザ研究所長
西川 祐司
東京大学 教授
横井 秀俊 先生
ロボドリル研究所長
佟 正
東京大学 教授
國枝 正典 先生
ロボショット研究所長
髙次 聡
慶応義塾大学理工学部長
青山 藤詞郎 先生
ロボカット研究所長
髙山 雄司
ロボナノ研究部長
洪 榮杓
技師長
須藤 雅子
協働ロボット開発部長
森岡 昌宏
(ご発言順)
7
2015年 座談会
稲葉社長:本日はお忙しい中、ファナックの社内展および討
準にバイトの位置決めを行いました。今回の展示を見て、同
は約60年間、製造業の自動化・ロボット化という狭い分野で
れから、コンデンサーや電池を使わずに、モータを使って電
論会にご出席いただきまして、ありがとうございます。私ども
研究開発・製造・販売を続けてきており、FA、ロボット、ロボ
マシンという事業が育ってきました。これらを3つの事業本部
に分け、各事業本部内で商品開発とセールスを一体化し、マー
ケットの反応をより早く研究開発にフィードバックし、開発ス
ピードをどんどん上げようと取り組んで、1年半が経過いたしま
した。今回の社内展では、その成果が出ているのではないか
と思っております。展示会における2つのキーワードに「one
FANUC」と「サービスファースト」があります。
「one FANUC」で、
FA、ロボット、ロボマシンの3事業が、ある点では独立し、あ
る意味では融合しながら、相乗効果でお客様のお役に立てる
ような商品展開を目指してまいります。また、
もうひとつのキー
ワード「サービスファースト」では、ダウンタイムをゼロ(ZDT)
にしていきたいと考えております。私どもの製品は生産の現場
でお使いいただいているため、ダウンがお客様にとって一番
のご迷惑になるわけです。最新技術や、より精密に、より速く
という、性能を追いかけるだけでなく、ともすれば忘れがちな
非常に地味な活動ですが、やはりダウンタイムをいかに少なく
していく、そういったサービス活動が非常に重要だと考えてい
ます。そのためには、商品そのものが「壊れない/壊れる前に
知らせる/壊れてもすぐ直せる」を基本コンセプトとして開発
を進めていく心意気でおります。今日は FA、ロボット、ロボマ
シンというグループに分けて、先生方からお話を伺いたいと
思います。
気軸受で支持された高速回転のフライホイールにエネルギー
を貯めるという研究をしていたのを思い出しました。そして、
エネルギー回生時等にもう少し早くモータが回るようにすると
今回の装置をもっとコンパクトにできると思いました。ロボナ
ノも良くなりましたね。今回のはミリング系と旋盤系のうちの
ミリング系でした。ストロークが長いところが特に良さそうに
感じました。長い距離を精度良く微細加工したいという要求
は多いので、かなり活躍が期待できると感じました。デザイン
も洗練されてきました。操作パネルは、全部削りにしたのです
か?ロボナノは、様々な新しい技術を取り入れていくところで
すから、ぜひ今の方向で続けていただきたいと思います。今
回の展示を通して、使う人の要望や困っていることを、何とか
解決しようというのが伝わってきたところが、とても良かった
です。展示会場の入口に「壊れない/壊れる前に知らせる/壊
れてもすぐ直せる」という標語がありました。英語と中国語の
表記では、壊れるというより多少故障するような感じの表現
でしたが、日本語で「壊れる」というのは、なんかもうめちゃく
ちゃになるという激しい感じがありますが、日本人に対しては
このくらいの表現が合っていると思います。絶対止まったらい
けない半導体の製造などでは、工場内に(装置や機械の)販
売元の社員が保守のために常駐しています。けれど、本来は
重要な課題ですので、これからも取り組んでいってほしいと思
います。
プから樋口先生にお話をいただ
稲葉社長:ありがとうございました。私どもは、お客様目線
きたいと思います。樋口先生に
で開発・商品化し、そしてお客様目線に立って説明しようと心
は、アクチュエータ、制御など多
がけてきましたので、先生のご指摘を大変うれしく思っており
岐にわたりご指導いただいてお
ます。どうもありがとうございます。
ります。
樋口先生:去年、今年と、展示
稲 葉 社 長: 次は、電気関係で
が大分変わりましたね。去年も
樋口先生
いう商品や機能があるという説明があり、それから使い道が
分かってくる感じでしたが、去年からは、どういう具合に使う
かを前面に出し、だからこの技術を使うんだという展示になり
ました。さらに今年は、具体的な用途・要求・実際のニーズを
前面に出した上で、それに対してはこういう技術をやりました、
という展示が多くて、本当に使う側 ・ ユーザ側の要求を汲み
取っていることを強く感じました。今年が初の展示も結構あり
ました。パワー素子(SIC)やファイバレーザなどです。見てい
て面白かったのは、ねじを素早く切るやつです。私が昔やって
いた非円形輪郭の旋盤加工とコントロールの方法が似てるん
です。NC で輪郭を作るときに、
コンピュータから XY 軸の各々
に指令を出して、タイミングを合わすのが普通ですが、非円形
輪郭の旋盤加工では主軸にエンコーダをつけて、回転角を基
8
昔、NTT(旧電電公社)が停電のときの非常用電源として、磁
前にキャッチし、手を打つという形にするべきだと思います。
稲 葉 社 長: まずは、FA グルー
いところです。これまでは、こう
気を貯めるという考案の展示は、見ていて非常に楽しかった。
常駐するのではなく、できるだけうまく情報をとってきて、事
FA
感じたのは、見ていて分かり易
じような方法でこんなこともできるのかと、感心しました。そ
大変お世話になっております堀
先生です。
堀先生:毎年お招きいただき、
ありがとうございます。僕は今
年の7月に還暦を迎えます。OB
達 か ら お 祝 い に、ス イ ス の
MONDAINE という腕時計をも
らおうと思います。その時計は
スイス鉄道の駅にもあり、動き
堀先生
方が非常に面白いんです。秒針は58.5秒で一周し、あとの1.5
秒は上で休み、それから分針が1つ進みます。どうしてなのか
興味があって曽根先生に聞いたら、
「そういう難しいことをあ
えてやるのがスイスだ」と言われ、ちょっと考えさせられまし
た。結局、当たり前のことを粛々とやるのが大切だということ
です。ファナックは、その点では昔から王道を行っていると思
います。ところが東京大学はそうでもありません。今年から、
50Hz と60Hz の併用機器を導入して行き、ある時点で一斉
をやります。僕は制御工学や位置決めを教えるのですが、ラ
物語ではなく真剣に考えた方がいいです。
文科系・理科系の新入生に対して、ちょっと講義(初年度ゼミ)
プラス変換もフーリエ変換も何も知らない学生に制御を教え
るのは大変だし、かといって省略して教えて「制御って簡単だ」
に60Hz に切り替えるという方法があります。こういうことも夢
稲葉社長:ありがとうございました。
と思われても困る。
「学問に王道なし」と言うように、ベースに
稲 葉 社 長: 次に型 関 係、CAD
ていくのが一番いいと思います。同様のことですが、今の再
導いただいています、青山英樹
なるものから順番に組まれたカリキュラムに従って粛々とやっ
エネブーム(太陽光、風力)で、例えば、50Hz と60Hz 統一は
難しいので、その間の連携容量を3倍にしようという話があり
ます。実現のためには電力系を非常に強固にする必要があり
ますが、今の電力会社は整備する余裕がない。そのうち日本
の電力系統はぼろぼろになっていってくはずです。そこで、ア
メリカのように電力の自由化などになってきます。これが本当
に健全な方向なのだろうか、と疑問に思います。今の再エネ
ブームに便乗して電力系統も強固なものにできれば、再エネ
ブームが終わったあとも系統は残るので、国益になるとは思い
ます。
話は変わりまして、内閣府の SIP(戦略的イノベーション創造
プログラム)では、選んだ10テーマに対し年間500億円かけ
て研究開発などを推進します。テーマの一つ、次世代パワー
エレクトロニクスで、SiC の開発(GaN や将来はダイヤモンド)
をやろうとしています。僕はそこのサブプログラムディレクタを
やっていて、SiC の導入で電力・産業・鉄道・道路がどう変わ
るかというロードマップを描いています。僕は走行中のワイヤ
レス給電に非常に興味があります。電力インフラに車を直接
つないでいきますが、最後の数 m はワイヤレス。そうすれば
SiC の出番は沢山あります。高速道路やその辺に広げておい
/ CAM 関係、切削関係でご指
先生です。
青山英樹先生:
「壊れない/壊
れる前に知らせる/壊れてもす
ぐ直せる」というスローガンがあ
りました。そんな機械があった
ら良いなと印象に残りました。
ファナックは CNC からサーボま
青山英樹先生
で、全ての製品を開発されていますので、さらにもっとアドバ
ンストなところを目指して、それらを統合すると共に、上流か
ら下流まで一気通貫する技術開発を目指して頂きたいと感じ
ます。つまり、上流 ・下流の会社とタッグを組んで、日本全体
で盛り上がるような仕組みを構築できないでしょうか。サーボ
あるいは CNC の性能を向上するとともに、サーボに合った
CAM データを作る技術や、サーボを正確にシミュレーション
する技術などが必要になってくると思います。今は CAM 屋さ
んやサーボ屋さんがそれぞれ独自にシステムを開発し、お互
いに補間しながらやっていると思いますが、お互いに情報を
出し合っていけば、もっとアドバンスになると思っております。
次にもう少し各論的な話で、見学させていただいた最初から
順番に記憶順に印象に残ったところをお話させていただきま
て、ちょこちょこ給電します。この技術は多分、世の中を変え
す。最初の HMI(ユーザインタフェース)で、
「プランニング、マ
20年くらいかけて粛々とやっていく必要があります。それか
らされている所をアドバンストされていると思いますが、イン
ると思います。5年後のオリンピックには間に合いませんが、
ら、モータ・モーションの分野-ファナックのサーボ研究所で
されている分野-です。この数年、センサがすごく良く、しか
も安くなってきていますね。例えば、3000万パルスでも平気
で使います。沢山のセンサをつなぐ多センサシステムや、普通
のモータのコントローラで負荷側にセンサを置くことなど、
色々できるようになりました。電気自動車の分野でも、今後ど
んどんサーボモータが使われていきます。ファナックもやられ
たらいかがですか。それから、パワーエレクトロニクスの世界
はいまや制御の時代になってきています。整流の制御 ・ イン
バータの制御に非常に高度なフィードバック制御、デジタル制
御が入ってきました。僕たちの研究室も一生懸命取り組んで
います。できることがあれば、ぜひファナックと一緒にやりた
いと思います。
稲葉社長: 電気に関する幅広いお話を、どうもありがとうご
ざいます。日本は工業用では200V が主体でガラパゴスになっ
ています。日本以外は400V が多く使われています。今後日本
は、どの方向へ向かうのでしょうか? SiC だと当然400V だと
思いますが。
堀先生:工業用は400V、家庭用は200V、周波数は60Hz に
統一すると良いと思います。そんなに難しいことでしょうか。
シニング、インプルーブメント」で、マシニングの部分は従来か
プルーブメントがもっとアドバンストの仕組みになっていけば
いいと思います。現状ではサーボ情報を表示して、オペレータ
の方にお願いしますよ、という仕組みになっています。そこを、
サーボ情報を活用できる立場にありますので、サーボ情報を
評価したり、よりよい制御に向けて判断したりする仕組みが
あって、それをベースに改良するフェーズまでいければ、ユー
ザがエキスパートでなくても、良い加工ができるようになるな
という印象を受けました。話が戻りますが、壊れないという話
になりますと、ある自動車のサプライヤでは、おそろしいこと
に4時間しかバッファを持っていない。つまり機械が壊れたら4
時間以内に回復しないと大変なのです。それくらいの余裕し
かありません。そういう意味で、壊れてもすぐ直せるという時
間は4時間かなと感じました。それから、サーボ情報を表示す
る「サーボビューア」は非常に面白いと感じました。工作機械
を買う側からすると、
「サーボビューア」のデータをベースに機
械を選べるので非常にありがたいし、使い方も工夫できる。
ただ、工作機械メーカにとっては、機械の性能が丸見えになっ
てしまいます。今後どう変わっていくか、注目したいと思いま
す。もうひとつは、サーボ情報を使って上位にデータをフィード
バックする仕組みです。これは、アドバンストなユーザにとっ
9
2015年 座談会
ては非常にありがたい。ただ、データを受け取ってからどうす
ンサをつないで情報を収集してくることや、状態監視した大
して、どういう情報に変換して、加工あるいは機械のマネージ
析して活用するかが今後の課題です。優秀な作業者は、デー
るかが大事で、サーボ情報をいただけるなら、それをどう加工
メントにどう応用していくかというところまでを提供すると、
ユーザとしてはすごく高度な工作機械になり、制御装置の利
用ができるのではないかと思いました。他に興味があったの
が、
「ゲインフィルタ自動調整」です。工作機械メーカがゲイ
ン調整する機能ということですが、むしろユーザが使いたい
と思いました。工作機械はゲイン調整してから出荷するのが
当然でしょうが、多分それは標準的な状態で変わらないと思
いますが、回転軸では材料の重さが変わるだけでも最適ゲイ
ンは大きく変わると思いますし、送り速度を変えるだけでも
影響があると思います。ユーザが、ダイナミックなゲイン調整
ができるようにすれば、加工精度も上がるしスピードも上がる
と思います。私の研究室では、工作機械をモデル化し最適ゲ
インを決めるシミュレーションをしています。直線軸ですら、
載せる材料の重さが100キロと500キロでは、ゲインも運動
軌跡も異なることが分かってきました。NC プログラムが出来
た段階で、前もって MATLAB / Simulink を使って工作機械
のモデルを基に、各 NC プログラムに対するゲイン設定を行
うシミュレーションをする。それをどうやって、ダイナミックに
プログラムに反映させて運動させるのか、それを自動ででき
れば、多分高精度な加工ができると思います。特に回転テー
ブルでは、材料の重心点が回転軸に一致していれば、そんな
に影響はありませんが、ちょっとずれるだけで最低ゲインが
まったく違ってきます。ですから、ユーザが材料を載せた後、
ゲインフィルタのボタンを押して、最適ゲインを決められれば、
便利だと思います。
量のデータを蓄積することが可能になりました。これをどう解
タを「見える化」すれば何らかの対策をとるので効果が上がり
ますが、優秀な作業者がいないところもある。だから、蓄積し
たデータを解析し評価し見せることが次のステップで必要と
思います。それから、
「スマートリジッドタップ技術」で、主軸
を最優先してタップを回転させ送り運動は主軸の回転に合わ
せるというのがありました。工作機械の立場ではパフォーマン
スが非常に発揮されて良いですが、タップにとっては過酷な加
工となり次々に折れるのではないかと心配です。だから、そう
ならないような仕組みが必要です。やはり、加工状態をいか
に感知するかということになってきます。
「サーボビューア」の
主軸負荷やロードメータの情報をどの程度、制御に使えるか、
我々も興味深いです。それから、CAD/CAMと工作機械では、
今まで役割分担が決まっていて、CAM で作成した NC プログ
ラムに工作機械が忠実に動くことが良いとされていますが、果
たしてそれが最良なのかと思います。工作機械にはそれぞれ
個性があり構造が違うし、ワークピースの設置位置によっても
その運動は随分違います。だから1つのプログラムで個性の違
う工作機械を無理やり動かすのは問題があります。製品の
CAD データがあって、加工工程と工具が決まるとすると、そ
れに相応しい工作機械の動きは個性の数だけ必要だと思いま
す。我々は今、そのところを研究しています。他に我々は、工
作機械の省エネ運転を研究しています。自動車は運転の仕方
で燃費が変わりますが、工作機械ではどこまで効果があるか
分かっていません。NC だけでなく、CAD / CAM と連携し、
工作機械の個性に合わせて加工方法も工夫すると、何%か省
稲葉社長:貴重なご指摘ありがとうございます。
エネできるのではないか、というのをやっています。ファナッ
稲 葉 社 長: 次に、白瀬先 生に
CAM との連携を通じ、今までと違う NC 装置の開発に、是非
クでも、工作機械の制御から加工プロセスの制御、CAD /
取り組んでいただきたいと思います。
ご指 導いただきたいと思いま
稲葉社長:ありがとうございました。CAD / CAM の情報を
す。
活用して NC で加工というのは特に三次元自由曲面の加工の
白瀬先生:
「壊れない/壊れる
ときには非常に有用な概念だと、我々も考えています。将来の
前に知らせる/壊れてもすぐ直
課題として是非取り組みたいと考えております。省エネ運転に
せる」というスローガンがありま
ついては、ロボットの一部の商品ですでに実現しております。
したね。非常に完成 度が高く、
最適なプロセスをどう与えれば、サイクルタイムとエネルギー
ユーザがすぐに使える、あったら
うれしい、そういう製品開発を
されている印象を受けました。
白瀬先生
ところで、稲葉社長に以前「せっかくある CAD 情報を活用せ
消費量のバランスがとれるかといったことが始まっておりま
す。これも、工作機械に早く応用したいと思います。
ずに何故捨てるのでしょう」と指摘したことがあります。NC プ
稲 葉 社 長: 次は、実際の切削
かに関しては、ファナックは完成度が高いです。しかし、本来
社本先生に、お話をいただきた
ログラムにいかに忠実に工作機械を高効率・高精度に動かす
CAD にある形状情報が受け取れないため、しなくていい苦労
をしていると思います。もっと CAD 情報を工作機械が受け取
り、うまく使って、もっと高精度・高効率を目指していくことに
是非挑戦していただきたい。その場合、青山英樹先生も話さ
れていましたが、上流の CAD / CAM から下流の NC までと
なると、ファナック一社でやるのかタッグを組んでやるのかと
いうことも考える必要があります。それから今は、いろいろセ
10
関係で大変な知見をお持ちの
いと思います。
社本先生:昨年、工場見学した
折、ファナックの工場で作られ
たロボットが、ファナックの工場
でモータを自動的に作るのを拝
見しました。ものづくりを日本で
継続し、海外での製造を避けて
社本先生
おられるのを見て、こういう会社がもっと増えてほしい、日本
ます。
しいロボナノが非常に気に入りました。デザインも良くなり、
世界的にブームになりつつあり、
でこういう文化をもってほしいと感じました。今年は、まず新
非常にコンパクトで現実的に使いやすそうな機械になったと
思います。海外のライバルに勝てるようなマシンに是非仕上げ
ていただきたいと思います。制御系での差別化をねらい、分
解能を0.1ナノにされたことも飛躍だと思います。それと同時
に、HRV 制御の進化にも大変に驚きました。超精密加工機で
あるロボナノをもとに、一般の加工機の高精度化を実現して
いこうとされていると感じました。その例としてロボドリルで
鏡面に近い加工を実現された結果を拝見し、将来の高精度加
工の広がりに大きな可能性を感じています。この数年の間に、
機械要素技術や工具技術、加工技術が向上し、鏡面に近い高
精度加工が一般のマシニングセンターでも可能となる時代が
近づいていると思っています。今日は、NC 技術もそこに近づ
いてきているのだと感じました。具体的には、高精度な加工
を実現する HRV 3、4を今日は勉強させていただきました。
+
SiC 素子の話もそこに結びついていて、それがチョッパーの周
波数を少しずつ向上し、制御ゲインを上げられるということに
つながり、速度むらを抑えて高精度な運動を実現しておられ
ます。そういう基礎技術を積み上げて、着実に進歩していると
ころがすごく強いと感じました。日本の企業の強みはそういう
ところにあるような気がします。それ以外には、モータのトル
クを精一杯使っているところや、小型化のために高電圧化し
たところも、勉強させていただきました。それぞれ少しずつ性
能が上がってきていて、それが積み上げだろうと感じました。
今後については、去年も申し上げたことですが、加工プロセス
まで考えに入れ、推測し、それに合わせてフィードバックして
石川先生:ロボットの分野は今
我々大学にもアメリカ辺りから
多くの質問がきます。ロボットは
これからどこまで使えるかとい
う話で、その話の最後には「ファ
ナックはどういう会社ですか」と
いう質問が必ずあります。いつ
も、どう返そうか考えています
が、
「ファナックのロボットは壊
石川先生
れません。」という回答をすると納得していただけます。
ゼロダウンタイムという視点からすると、ロボットはどんなこ
とがあっても止めてはいけないですが、今日拝見したロボット
はビジョンでセンシングするとき必ず止まっています。ロボッ
トのダイナミクスをカバーする高速ビジョンを使えば、ロボッ
トを止めなくてもセンシングできますし、
そのスピードでフィー
ドバックがかかるので、その時間間隔ですべてのことが制御
できるはずだと思います。戦略を持ち、それなりの開発期間
をとって、信頼性のある壊れることの無いビジョンを作ってい
ただければと思います。今日拝見した三次元計測のときのパ
ターン投影はまだ遅いと思います。我々も、それに何年か前に
気がつき、パターン投影も1ms で出そうとしています。パター
ン投影を1ms でやって、ビジョンも1ms でやれば三次元形状
計測がかなり精度高く1ms から数 ms の時間でできます。ロ
ボットがビジョンのために止まることなく、動いていてもビジョ
ンがどうにかできることは是非とも実現していただきたいと思
います。
対策がとれるように是非取り組んでいただきたいと思います。
「ビジョンはロボットでは非常に有用だけれども、それ以外の
機械を動かすだけでなくて、プロセスがあって、力が加わって
す。このとき、FA の人がビジョンを使いたいと促すようにもっ
最近は、びびりを抑えるような機能がけっこう出回っています。
変形したり、熱が発生したり、そこで振動が起きたり、という
プロセスとのインタラクションが工作機械の一番難しいとこ
ろとして残っていくと感じています。逆に言うとそこが技術の
差別化にもなると思います。最後に個人的な希望として、FTS
という機能が超精密分野で使われており、NC の動きに合わ
せて、微少な切込み制御をする、そういう機能に対応できる
ようなことをファナック殿の装置でも考えていただけると、
我々の分野での応用が広がりますので、是非ご検討いただき
いと思います。
稲葉社長: 以前のロボナノは、チャンピオンデータばかり追
い求め、使いやすさや保守性をあまり考慮しておりませんでし
た。この反省のもと、今回はまず性能の実現とともに、いかに
使いやすく、いかに保守性を良くするかを重点的に考えて開
発を進めております。そういうところをご評価いただけたこと
を大変ありがたく思います。またいろいろなご指摘やご指導
をいただければと思います。どうもありがとうございました。
ロボット
稲葉社長:それでは次にロボットということで、高速ビジョン
でご指導いただいております、石川先生よろしくお願いいたし
FA やロボマシンでも使える」ということは良い考えだと思いま
ていくのが良いという気がします。そのためにはビジョンはこ
こまで使えるというのを FA の人に宣伝して現場でニーズをあ
げてもらうことで、いいコンビネーションが生まれると思いま
す。同様に、人間がかかわってくる協働ロボットにビジョンをど
うやって使うかは、現場の人にビジョンをこう使いたいと言っ
てもらった方が良いと思います。ゲンコツロボットも非常に速
いですが、高速ビジョンがあればもう少し速くできるのではな
いかと思い、私の研究室でもゲンコツロボットを1台買いまし
た。高速ビジョンを用いて高速に動かす予定ですので、ぜひと
もご期待ください。
将来を考えたときに、センサとアクチュエータが常にネット
ワークにつながるという姿があります。ネットワーク上で、セン
サ情報、コントロール情報をどのように動かすかを考えたと
き、近未来ではあまりいいものがないと思います。信頼感や止
めないということからすると、一般的なネットワークでは通信
パケット量の最悪値が無限大なので使えません。最悪値が無
限大でないモードもありますが、そうすると今度は別な制限
が出て来ます。信頼性を保ちつつ止めないシステムを作るた
めのネットワークは何だろうかということを考えていく時代が
来ると思います。
11
2015年 座談会
来年は止めない、止まらないビジョンを期待しておりますので、
れているが、家庭は人間用に設計されているので、ロボットが
稲葉社長:前向きなご指摘大変ありがとうございます。高速
人間が工場の中に入っていって、人間とロボットがより協働す
よろしくお願いいたします。
ビジョンの必要性を私どもも重々感じておりますので、内部で
も動いておりますが、ひとつご指導の方よろしくお願いいたし
ます。
入りにくいからです。これらのことを組み合わせて考えると、
る環境という設計論ができるのではないでしょうか。
「着々と」
、
かつ、研究的な側面でのジャンプを是非考えていただきたい
と思います。
稲葉社長:もっと飛躍が必要だということですね。将来に向
けて、がんばりたいと思います。どうも、ありがとうございます。
稲葉社長:次に、協働ロボット
などセンシングでご活躍の菅野
先生、よろしくお願いいたしま
稲葉社長: 次は、メディカルロ
菅野先生:先ほどから「着々と」
ている佐久間先生です。
ボットやセンサ技術を研究され
す。
佐久間先生: 私の専門の医療
とか「積み上げて」というお話が
用ロボットの観点から、人間協
ありました。その「積み上げ」を
働ロボットを拝見しました。形が
非常に感じたのが、緑のロボッ
トです。ロボットは新しいコンセ
プトで実用化するのがなかなか
管野先生
難しいと言われている中、まさに着々と積み上げて、実用化し
たところが素晴らしいと思います。色も深緑から明るい緑に変
わりました。ただ、カバーの素材が昨年から変わらなかったの
は残念でした。自動車産業の場合を考えて、ペイロードを大
きくするため、去年よりも少し大きめのロボットになっていま
すが、大きくなっても、可能であれば、接触して止まるのでは
なく、ぶつかってもあえて動き続けるくらいのロボットを作っ
ていただきたいと思います。安全性の問題や協働ということ
は、今は多くの企業が考え始めています。日本のロボットが、
世界に先んじて次の一歩を進めるためには、接触してもぶつ
かっても動き続けるロボットを実現することが必要なのではな
いかと思います。そういう場合にこそ、カバーの素材や、アク
チュエータや、センサなど、あらゆる技術が新しい開発ステー
ジに入らなければなりません。是非、チャレンジャーになって、
新しいテーマに取り組んでいただきたい。もしファナックが、
比較的小型のロボットで、人間と一緒に現場で作業でき、ぶ
つかってもそのまま動き続け、その上リスクが低いロボットの
実用化に成功したら、非常にインパクトのあることですし、日
本のロボット産業を新たな舞台に引っ張り上げられると思い
ます。私の研究室では、衝突することを避けず、ぶつかること
を前提に、それでも大丈夫なロボットの研究をしています。単
に止まるだけではなくて、慣性力も含めてすべて人間と一緒に
動ける、まさに「協働」を常に考えています。さらに、
新しくチャ
レンジしていただきたいのは、ロボットそのものではなく、ロ
ボットが作業する環境をどのように準備するか、つまり環境構
造化です。今年展示されていたエリアセンサでは、人間が近
づいてそのエリアに入ると止まるので柵が要らない、というよ
うに環境側に機能を持たせていました。ロボットのまわりの
環境を変化させ、ビジョンなどのセンサ類、人間とロボットの
場の作り方、その設計論を考えていけば、もっとロボットと人
間は接近できるかもしれません。こういった開発課題につい
ては、まだロボットのメーカで議論が進んでいないようです。
産業用ロボットがなぜ普及し、人間用協働ロボットはなぜ普及
しないかというと、工場はロボットを導入しやすいように作ら
12
できていてスピードもあって非
常に驚きました。具体的なシー
ンを想定して安全を考えようと
している、これはとても重要な
佐久間先生
ことです。非常に良いと思いました。気になったこともありま
す。安全を考えるとき、例えば二重になっているという説明が
ありましたが、安全はそれだけで実現できるかという疑問で
す。私が専門としている医療機器の安全実現方策では、セン
サの二重化などのフェールセーフシステム等の工学的手法を取
り入れることは当然でありますが、どのような状況で使うかを
考察してリスク分析を行い、適切な安全方策を実装するリス
クマネジメントが重要となります。医療ロボットの分野では、
外科医がロボットを使うのはリスクが高い、リハビリで使う方
が楽ではという話があります。私は実は逆だと思います。医師
はプロフェッショナルなので、どういうことをやるか、ある程
度予測できる。ところが、一般の家庭にロボットを持ち込むと、
色々なおじいちゃんおばあちゃんがいて、リスクを想定するの
が非常に難しい。工場でこれまで人間がやってきたことを、人
間とロボットが協力するとなると、やはり条件を変えるし、非
常に広いことを考えなければなりません。これまで考えてい
た状況とは異なる場面での安全実現が必要になると考えられ
ます。現場で培った知識や経験は、リスク分析においては大
変大きな意味を持つので、是非、ロボットと人間が協働する
環境でどのような安全配慮をすべきかという問題に取り組ん
でいただき、安全実現方策を提言していただきたい。それか
ら、私が携わっている医療機器の承認審査では、医療機器を
承認する段階ではどのようなレベルの安全を保証できるのか
という議論を常に行っています。医療機器を承認する前に十
分な調査を分析もするのですが、実際に広く使用が行われた
場合に想定し得ない状況が見いだされることがあることも意
識しています。したがって、市販後もある一定期間使用状況や、
問題の有無を継続的に調査して、実際の使用環境で何が起き
たかも調べ、安全対策を講じるという考え方です。非常にハ
イリスクな機器は、メーカに対して使用状況を全例調査させ
ています。ロボットの分野で全例調査を強いることはできな
いと思いますが、人間協働を実際にやると、おそらく設計段
階で想定しなかったことがおきる可能性があります。それらを
展は、コンピュータに物を見せて、それが何であるかを人に匹
医療の先生はよく
「ビッグデータってほとんど屑のデータだよ
できなかった様々な技術ができるようになっています。例え
いかにピックアップするかは非常に重要と思います。それから、
ね。
」と言うのですが、屑のデータも集めてくると実は色々な
データがあります。今までよりもデータ量が飛躍的に大きく
なったのに、それを今までの方法で取ると、多分変なことが
起きます。生体理工学で自動診断をするときに大切なのは病
気に対する理解です。ロボットも同じで、作業やワークフロー
に対する理解をどうモデル化するかが、とても大切だと思い
ます。最後に、堀先生が東京大学で始まった「初年度ゼミ」の
話をされていました。私も工学系研究科で教育担当の副研究
科長をしており、少しコメントします。今の小中高生の現物に
対する感覚は、何となくインターネットで見ているような感じ
があります。そこには現実の世界があることや、皆が勉強して
きたことの中でできることは限られていることを示し、大学で
は主体的にしっかり勉強しようと促す意図が、初年次ゼミには
あると思います。どこまでできるかが、今回の改革の1つのポ
イントになっています。
稲葉社長:ありがとうございます。是非、現実を認識できる
学生さんをファナックに送っていただければと思います。医療
現場と製造現場を比較したお話、大変興味深く伺いました。
私共も、協働ロボットははじめての分野ですので、リスク分析・
リスク管理にしっかりと取り組んでいきたいと考えておりま
す。ご指導よろしくお願いいたします。
稲葉社長:ロボットの最後は、ビジョン関係で研究を進めて
おられる、岡谷先生です。
岡 谷 先 生: 私は、ロボットビ
敵する精度で答えられるようになったことです。この他にも、
ば、テレビゲームのビデオ画像をコンピュータに見せて、その
テレビゲームのスコアを評価関数に、それを最大化するよう
に学習すると、そのテレビゲームを人間のようにうまく操作で
きるようになったという研究もあります。このように AI で色々
なことができるようになってきたので、このまま AI が進化す
ると、人間にとって脅威になるのではと、スティーブン ・ ホー
キング博士が言うほどです。ただし私は、これはちょっと言い
すぎだと思っています。例えばビジョンで今 AI にできている
のは、人間が視覚で行う機能のごく一部に過ぎません。例え
ば、このテーブルを見渡して、どこにペットボトルがあるかを答
えることが、今はまだうまくできません。その他にも人間の視
覚にはできてコンピュータでできないことは山ほどある。だか
ら、すぐに AI の技術が人間のレベルに到達することはないと
思います。とは言えその一方で、コンピュータがどんどん賢く
なっているのは事実です。ロボットの究極の目的は、人間の仕
事を代行することだと思います。ビジョン技術だけでなく組立
作業のシーケンスなどを学習することも、
論文レベルでは徐々
にできるようになりつつあります。思うにこれらが一種の破壊
的な技術になって、ロボット業界を大きく変える可能性がある
と思います。以前できなかった事が急にできるようになった。
だから、どのようにロボットの研究開発に取り組んでいくか、
大きな課題だと思います。ただし今、AI の研究開発はバブル
的な感じになっていて、人材の確保が大変難しくなっているこ
とは、付け加えておきたいと思います。
稲葉社長:ビジョンに対する奥深いお話ありがとうございま
す。ソフトに対する投資がもう少し必要というご指摘ですが、
ジョンやコンピュータビジョンな
私どもも痛切に感じております。学生を沢山送り込んでいただ
どのビジョン技術のソフトウェア
き、来年は今年の倍くらい学生を受け入れたいと思います。
の研究をしています。今日拝見
し、ファナックは、ソフトウェア
の技術に対し、もう少し大きく
稲葉社長:次にロボマシンのグ
それには2つ理由があります。一
らお話を伺いたいと思います。
ループに移ります。横井先生か
投資した方がよいと感じました。
つは、先ほど、色々なセンサを
つけて稼働状況をモニタすると
岡谷先生
か、ビジョン技術が進んだという話がありましたが、ボーイン
グはエンジンをオンラインで結んで稼働状況をモニタしビッ
クデータ解析しています。ファナックでも、同様のことができ
横井先生には、ロボショットの
開発に関し、可視化プロジェク
トを中心に長年お世話になって
います
る可能性があると思います。その時、いわゆる統計的機械学
横井先生:最初に社長が「one
いった人が必要になります。もう1つの理由はビジョンを始め
会社の社章が変わっていることに気がつきました。これは、3
習とかビックデータを解析できるデータサイエンティストと
とするAI 技術の、
最近の急速な進展です。
特にいわゆるディー
プラーニングの発展で、以前は絶対できなかったようなこと
が、ビジョンだけでなく、音声や言語処理で可能になりました。
スマートフォンでの自動音声認識は、ディープニューラルネッ
トを使うことで飛躍的に性能が向上しました。最近では自動
FANUC」の話をされました。私も
横井先生
つの部門の融合ということを象徴しているのでしょうか。
稲葉社長:ご指摘のとおりです。FA、ロボット、ロボマシンの
3つの部門がいっしょに同じ方向で、未来に進んで行こうとい
う意味です。
翻訳サービスも現実的なものに近づき、その性能は100%満
横井先生:展示を拝見し、FA を中心として融合というイメー
ることは十分可能と言われます。ビジョンで最近目立った進
では、成形機の前にロボットが座って、両者が連携して一生懸
足できるものではまだないですが、子供の会話程度を翻訳す
ジが色濃く出ていると感じました。私の専門の射出成形分野
13
2015年 座談会
命仕事をしているという姿が強調されていました。これまでは
く切断できる。あそこだけで使うのではなくワイヤカットで型
体的な融合や「LINK-i」といったシステム的な融合をはかり、
ヤカット放電加工機と型彫りの複合機に使えると思います。
融合や連携というより置いてあるというイメージでしたが、全
情報管理も含めた総合的な機能強化がさらに推し進められて
いました。ただ、今回は新しい技術が逆に後ろに隠れしまって
います。例えば二材成形の展示では、第二射出装置などの新
しい要素技術も入れていると思いますが、金型回転テーブル
の付加軸制御など、その他の重要な要素が後ろに隠れている
ように感じました。また、成形機とロボットと結合していまし
たが、それによる良さがあまり強調されていなくて、もったい
ない感じを受けました。ロボットでなくてはいけないというデ
モが、差別化では特に重要と思います。それから、今は、炭素
繊維、長繊維、ガラス繊維の折損をどのように抑制して成形
するかが、世界的に見て非常に重要な課題です。ロボショット
では IT 用途での要素技術をすでに高度に完成させ、幅広く導
入が進められています。一方、今回の展示では自動車部品の
成形を意識したデモでしたが、実は自動車関係での成形の一
番の課題は、長繊維の折損をどうやって抑えるかにあります。
スクリュデザインの最適化はもちろんのこと、シリンダのど真
ん中に穴を開けて連続繊維を直接投入する方式、ベントポー
トから投入する方式、プリプラを組み合わせる方式など多くの
試みがあり、各社が競って差別化をはかっている領域です。
自動車部品に展開するのであれば、その技術を早く極めて、
どこを技術的なブレークスルーとするか考えておくと良いと思
います。なお、IT 部品の成形については、すでに要素技術は
概ね完成域に至っているので、ロボットやシステム化技術のほ
うを完成させるという次のステージに入っていると思います。
それから、これまでも話題に取り上げられていた「壊れない/
壊れる前に知らせる/壊れたらすぐ直せる」についてはもっと
もだと思いますが、成形に関してはもう一つ大切なこととして、
金型を「壊さない」ということがあります。それも追加した方が
よいと考えます。
稲葉社長:厳しいご指摘ありがとうございます。自動車関係
に少し舵を切り始めていますが、長繊維の折損対策などの技
術は一朝一夕にはできませんので、これからもご指導をよろし
くお願いします。
彫りもできるのでは、と思いました。これまでなかった、ワイ
ニーズや応用に力を入れるとともに、かなり基礎研究もしてい
ると感じました。今日の展示では、非常に背の高い工作物を
かなりの精度で真直良く加工されていました。放電のメカニズ
ム、ワイヤの振動やたわみのメカニズムの解明など、基礎研
究をされていると感じました。どこの放電加工機メーカも、切
断したい形状に対して加工ステップや加工条件を提案してい
ますが、そのとおりに加工できない場合は結構あります。そ
の時、ユーザはどこをどう変更したら所望の形を得られるか
分からない。あまりにもパラメータが多いからです。放電のメ
カニズムを解明する必要があるので、シミュレーションを見
本的に作っていただきたいです。ワイヤに掛かる力には、放電
時の爆発、気泡の膨張、静電力、電磁力、加工液の噴流の流
体からの力などがあり、今では全部解析できるようになってき
ています。ただ、放電ギャップという厄介なものがあって、ガ
スと液体の混相流になるので、粘性も誘電率も変わってきま
す。これらの物性値が分からないと、折角理論があっても結
果が全然合いません。一方、ファナックの放電加工機は扉が
透明ですので、現象を良く観察できます。観察結果とシミュ
レーションを照合し、良いシミュレーションを作っていただき
たいと思います。それから、加工液については、水は加工速
度がとても速くて、油は仕上げに良いと言われています。去年、
なぜ水が速いかを私達の研究室で調べてみました。単発の
放電では水も油も状況は変わりませんでしたが、連続放電で
は、油は厳しい条件では不安定になり使えませんでした。反
対に、水は厳しい条件でも不安定にならないことがわかりま
した。水は、仕上げの領域だけ苦手なので、その部分を理論
的に解明できれば、全部水でできる気がしています。それか
ら、放電加工をするとパチンと放電し溶けて蒸発しますが、
溶けた部分の90%は固まって元に戻ります。そこを何とかす
れば、さらに加工速度は上げられると思います。放電加工は
遅いと言われますが、ワイヤに限らず型彫り放電加工も、もう
一回ブレイクスルーがあると思っています。是非、基礎研究を
続けていただきたいと思います。
稲葉社長: 大変示唆に富んだご指摘ありがとうございまし
ロボカット
た。シミュレーションもなかなか難しいと思いますが、ぜひ挑
戦していきたいと思います。
稲葉社長:次に、主にロボカッ
ト(ワイヤカット放電加工機)で
ロボナノ
ご指導いただいております國枝
先生にお願いいたします。
稲葉社長:最後は、ロボナノ中
びついた加工方法を提案されて
青山藤詞郎先生です。よろしく
國枝 先 生: 現場のニーズに結
心にご指導いただいております、
いると感じました。ファナックで
お願いいたします。
は CNC、ロボット、加工機をす
べてやっていて、しかも加工機
は切削、放電、レーザ、射出成
青山藤詞郎先生:展示会場で
國枝先生
形まで行っている。ものづくり全体のシステムや方法を提案す
る力があると感じました。ロボカットで特に面白かったのは、
水中で回転する装置です。水中にずっといて、信頼性高くうま
14
はとても丁寧にご説明いただい
て、昨年に比べて分かりやすく、
非常に興味深く惹かれる部分が
たくさんありました。私の専門に
一番近いロボナノですが、先行
青山藤詞郎先生
機に比べて非常にとっつきやすくなった感じがしました。私の
誤動作が考えられます。動作信頼性の高いタッチパネルにし
一台ございます。他にいろいろなものありますが、稼働率はロ
てはミス入力が起こるかもしれないと思いました。もう一つ
大学の中央試験所にクリーンルームがあり、そこにロボナノが
ボナノが圧倒的に高くなっています。そこに技術職員が一人お
りますが、段取りをするのが非常に大変で、実際に加工してい
る時間は一割ぐらいと聞いております。直動案内の部分を静
圧油潤滑化されたことでダンピングが向上したとか、設計の
部分で改良を加えたことで作りやすくなったなど、良い効果が
得られていると思います。ロボナノに要求される高精度、高性
能を維持あるいはさらに向上しながら、扱いやすくなった機
械に進化していると感じました。油潤滑をスピンドルに使うと
熱が出ます。そこは空気にして、比較的摺動速度の低いテー
ブル案内のところは油にしたことは良い着眼点と思います。
シールの部分とか、脈動とか油の供給系統による温度の影響
とか、油にしたために悪さをする部分が残っていると思いま
すので、そういうところを潰してしていくと製造コストも抑えら
れビジネスとしてもさらに有利なものになると思います。サブ
ナノの加工精度が要求される微小なパーツの連続体で構成さ
れる比較的大きなワークピースもターゲットになってきますか
ら、ニーズも増えると思います。空気静圧から油静圧に変更し
ても駆動部分の摩擦が低いですから、外乱力が制御系にあた
える影響が大きいと思います。逆にそれを利用することで、制
御系信号から切削力などの外乱力がどのように作用している
かを推定し易いと考えられます。制御系信号を利用して、加工
中の状況をモニタリングするところに発展できると思いまし
た。もう一つは新しいユーザフレンドリィなインターフェースで
す。タッチパネル入力による、削りだしのパネルは高級感が
あって良いと思います。こういった面で磨き上げていけば、か
なり接しやすいサブナノ加工機になると思いました。それか
ら、FA の部分を拝見させていただきました。一つはタッチパ
ネル化した場合、ミスタッチとかノイズによるタッチパネルの
ないと作業性がかえって悪くなるかもしれないし、場合によっ
は、ユーザのご希望に応じたおまかせメニューというのがあり
ますね。使う人によっては素で使いたい人もいるので両方の機
能を備えたオプションがあると良いと思いました。全体的に
は制御装置に記憶蓄積される加工情報ビックデータの権利、
法律的な管理責任などの問題がどうなるのかということがあ
ります。教育面では、大学として生産活動のネットワーク化に
貢献できる人材育成について考える必要を感じています。御
社において、例えばこんな人材が欲しいということがあればご
意見を頂きたいと思います。
稲葉社長:ロボナノを有効に活用いただいき、ありがとうご
ざいます。いろいろなご指摘いただきましたが、ロボナノはこ
れから段取りを含めまして使いやすさを徹底的に追求してい
きたいと考えておりますので、ご指導をよろしくお願いいたし
ます。タッチパネルについてはミスタッチを抑えるためにわざ
と静電タイプではなく感圧タイプを使っています。野田から
説明申し上げます。
野田副事業本部長:ご存知のものは静電タイプといわれて
いるもので一般的に使われております。ガラスを使ったタイプ
のものですが、我々が使っているのは昔からある抵抗膜方式
といって押して感じるタイプのものです。ご指摘のとおり、静
電タイプはノイズの問題がありまして、ハエが止まっても誤動
作しますし、濡れると操作ができないことがあります。この辺
りは、我々も、信頼性を考えながらやらないといけないところ
だと思います。
稲葉社長:やはり生産現場で使われる装置なので信頼性が
最重要だと考えております。長時間にわたりまして、ご指摘ご
助言ありがとうございました。
ファナックの新社章
2015年4月1日より、ファナックの社章が新しく生まれ変わりました。
新しい社章には、以下のような強い決意が込められています。
FA、ロボット、ロボマシンの3事業本部が一体となり
モノづくりの明るい未来を目指して
真っ直ぐに突き進む
ファナックは、この新しい社章に織り込まれた常にポジティブな気持ちを胸に、
全社一丸となって世界のモノづくりを支えます。
この社章は、各種イベントや文書で今後広く利用されます。
15
ファナックの工場紹介 サーボモータ工場
高度に自動化されたサーボモータ工場
サーボモータ工場は延べ床面積が約8万 m2あり、毎月125,000台のサーボモータを製造する能力があります。当社の技術を結集
した最新のロボット化工場で、ビジョンセンサや力センサを備えた知能ロボットを各工程に導入することで、巻線、ステータ組立、
塗装、ロータ組立、バランス修正、最終組立、試験、梱包まであらゆる工程の自動化を図っています。
また、自動倉庫を部品や完成品の格納だけでなく、自動化された組立セルへの部品供給装置として使用することで、効率の良い
構内物流の自動化を実現しています。
知能ロボットによるモータの最終組立
16
2台のロボットによるロータ焼バメ
ロボショットによるロータのインサート成形
ロボットによるモータの自動梱包
自動倉庫を用いた物流の自動化
名古屋 新商品技術説明会
6月17日(水)から18日(木)に、名古屋支社にて「oneFANUC」の理念の元、FA、ロボット、ロボマシンの3事業本部が連携した「技
術説明会」を開催しました。稼働率の向上に関連した諸機能の他、協働ロボットなど新しい自動化のヒントとなる展示がご好評い
ただき、2日間で1,800名を超えるお客様に来場いただきました。
SME
稲葉社長が2015年度 SME(The Society of Manufacturing Engineers、生産技術者協会)の Eli Whitney Productivity award
を受賞し、6月1日(月)米国ミシガン州デトロイトで授賞式が行われました。
Eli Whitney Productivity award は、幅広い生産性向上に寄与する卓越した功績をあげた人に贈られる賞で、日本人としては4人
目の受賞です。
入社式
4月1日(水)
、本社ホールにて入社式が行われました。この日より140名の新入社員が新たにファナックの一員となりました。
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ユーザ訪問
FANUC ROBODRILL
株式会社 岡本技研
スポーツ自転車の精密部品や高級釣具部品など多種多
様な部品加工を手懸ける株式会社岡本技研。大阪府堺
市の本社工場を訪ねてお話を伺いました。
同社では現在、多数のファナックロボドリルとロボットを
採用され、高性能高品質な金属部品を製造しておられ
ます。
左から、小野次長、小原会長、小原社長、小原課長
岡本技研で作られている製品や特色について教え
てください。
した。それまで他社の加工機を使用していましたが、3次元形
ランク・ギヤ・ブレーキ、変速機の部品、釣具のリール部品な
があり、加工面も良く、スムーズな動きでした。G コードなど
小原会長:弊社で加工している主な商品は、自転車部品のク
どです。
特色としては治具の製造や電気系統の管理まで内製化してい
るところですね。治具の製造を外注に出すと何週間もかかり
ますが、内製することで一週間もあればかなり凝ったもので
も作れます。お客様から急な仕事が入っても、最短、図面入手
後3日程度で量産立ち上げが可能です。現在は商品の入れ替
わりが早く、3-4ヶ月単位で切り替わっていきます。そのス
ピードに対応できるよう、ロボットの導入をはじめとした自動
状の加工プログラムの演算速度が追い付いていなかったの
で、ロボドリルの導入を始めました。ロボドリルは先読み機能
へ対応し、性能と価格のバランスが取れていたのが、ロボドリ
ルでした。
小原課長:ロボドリルは性能の良い制御を搭載しているので
使いやすいです。
小野次長: 現在、ロボドリルは161台使用していて、その他
複合機も含めて238台の加工機がありますが、90%以上が
ファナックの CNC 付きです。
小原社長:昨年度から『Find +1』の理念を掲げて活動してい
自動化も進めているとのことですが、今後の展望や
ファナックへのご要望がありましたら教えてください。
げ、納期、品質を向上するための組織力を上げることを目指し
使用した量産へのスムーズかつスピーディな対応ができるよう
化も進めています。
ます。社員各個人が +1の成長、+1の合理化などの目標をかか
ています。
ファナックロボドリルを使い始めたきっかけ、また
使用しての感想をお聞かせください。
小原会長:2000年に入ってから、3次元形状の加工依頼が
増え、CAD-CAM から加工プログラムの作成をする様になりま
本社工場
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小原会長:年内にはロボットシステムも内製化し、ロボットを
にしたいと考えています。今はロボドリルと組み合わせて24台
のロボットを使っていますが、さらに増やして自動化を進める
予定です。
急な増産時に増員を行っても教育に数か月を要する上、長時
間労働も時代に合わなくなっています。ロボットを応用でき
れば2-3週間で量産を開始できるでしょう。そのためにも、
新工場
ファナック学校の予約がいつもいっぱいなので、講習の回数
に自分たちで簡単に復旧できるような使いやすさが重要です。
ロボット化を進めると、停止時のことも考えておく必要があり
デルチェンジも楽しみにしています。
を増やしたり、近くで開催してもらえると有難いです。
ます。ファナックのサービスもすぐに来てくれますが、停止時
ロボドリルの並ぶ工場フロア
小野次長:あと今年はありませんでしたが、ロボドリルのモ
(インタビュア:広報広告課長 髙次京子)
ロボットによる部品取出しシステム
株式会社 岡本技研(http://okamotogiken.jp)
▶設立:1984年8月 ▶資本金:4,000万円
▶代表取締役会長:小原 雄一 ▶代表取締役社長:小原 雅弘
▶住所:〒590-0142 大阪府堺市南区桧尾3916番地
▶ TEL:072-273-7300 ▶ FAX:072-273-7310 ▶従業員数:136名
ファナックの四季
ファナックの森も彩り賑わう季節です。
今回はそんな初夏の森にひっそりと咲く小さな花々をご紹介します。
■ハナイカダ
■マイヅルソウ
■ササバギンラン
緑の葉の中央に、淡い緑色の小さな小さな花をつけ
マイヅルソウの群生に出会いました。丸い花から雄し
淡い光が射す林の中に、すっくりと立つ姿が印象的
(5月20日撮影 葦池横にて)
(5月27日撮影 迎賓館周辺にて)
ます。花の後には黒く丸い実を結び、食べられます。 べが伸びて、白い花火のように見える楽しい花です。
(5月27日撮影 ロボット組立工場横にて)
です。
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FA、ロボット、ロボマシンの 3 つの事業本部、
そしてサービスが一体となり
世界中の製造現場に革新と安心をお届けする。
「one FANUC」は
その精神と決意を凝縮した
ファナックの新しいシンボルマークです。
FANUCニュース 2015年 -Ⅱ
〒401-0597 山梨県南都留郡忍野村 http://www.fanuc.co.jp/
電 話 0555-84-5555
(代表) FAX 0555-84-5512
(代表)
発行責任者 広報広告課長 髙次 京子
©FANUC CORPORATION July 14.2015 Printed in Japan