チンパンジーの発達に伴う社会関係の変化~最近接個体の

チンパンジーの発達に伴う社会関係の変化
~最近接個体の縦断的解析~
秋吉由佳1 平栗明実2 水野佳緒里1 市野悦子1 有賀菜津美2 渡邉みなみ1 林美里3
(1岐阜大学 応用生物科学部 2日本大学 生物資源科学部 3京都大学 霊長類研究所)
目的
対象個体
チンパンジーは発達に伴って社会関係が変化するということが知られ
ている。霊長類研究所に2000年に3個体のチンパンジーが生まれた。こ
の3個体のチンパンジーの社会変化を調べるために、ビデオ観察をおこ
なった。
アイ
アユム
11歳
2000年4月24日生
35歳
1976年10月生
アユムの母親
クレオ
クロエ
方法
1.2000年に生まれたアユム、パル、クレオの3個体のチンパンジーとそれ
ぞれの母親、アユムのいる群れのα-maleであるアキラを、毎週1時間
(10:00~11:00)、フォーカルアニマル法でビデオ撮影をおこなった。
11歳
2000年6月19日生
30歳
1980年12月13日
クレオの母親
パル
パン
2.そのビデオから、最近接個体(Nearest Neighbor : NN)を1分毎のタイム
サンプリングで記録した。
Nearest Neighbor(NN)とは
NNは
NNは
B
C
A
28歳
1983年12月7日生
パルの母親
11歳
2000年8月9日生
NNは
B
B
C
アキラ
35歳(推定)
1976年7月生
α-male
結果
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
アイ
ペン
アキラ
クレオ
NNとなった割合(%)
NNとなった割合(%)
アキラがNNになる割合は
9歳をピークに減少
クロエ
母親個体が
NNになる
割合は減少
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
マリ
年齢(歳)
パル
クレオNN
パン
1
2
3
7
8
9
10 11(5)
クロエ
アイ
アキラ
ペン
アユム
マリ
ポポ
パン
パル
レイコ
プチ
ゴン
母親個体が
NNになる
割合は減少
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
1
2
8
9
10
パルNN
レイコ
群れの編成
アキラのNN
アユムNN
100
60
母親以外
のメス個体
アキラ
40
20
アイ
0
1歳~4歳 7歳~9歳 9歳~11歳
NNとなった割合(%)
子ども個体
2001.4~2004.3
アユムから
アキラへの攻撃
60
80
50
40
アユム
30
アイ
20
ペン
10
マリ
レイコ
0
9
9.5
10
10.5
11
アユムの年齢(歳)
年齢別比較
アキラNN
アキラがNNになる
割合が減少し、
群れのメス個体がNNに
なる割合が増加
◎1歳から4歳までは3個体ともに母親がNNになる割合が最も高かった。
→初期の社会関係の変化には雌雄でほとんど差が見られない。
◎パルとクレオのメス2個体は7歳以降も、NNが母親になる割合が最も高かった。
しかし、NNが母親になる割合は減少している。
2007.4~2008.1
◎アユムは7歳から9歳にかけて同じ群れのα-maleのアキラがNNになる割合が最も高
かったが、10歳以降、母親個体や他のメス個体がNNになる割合が再び高くなった。
→アユムはα-maleに対する挑戦を始めようとして、仲間との同盟関係を広
げていると考えられる。
◎アキラはアユムの攻撃が確認された前後に、アキラのNNがアユムになる割合が下
がった。
→アキラがアユムの攻撃以降、アユムを避けていると考えられる。
2008.1~
アキラ
アキラ
アキラ
アイ
アユム
アイ
アユム
アイ
アユム
ペンデーサ
ペンデーサ
ペンデーサ
クロエ
クレオ
クロエ
クレオ
レイコ
パン
パル
レイコ
マリ
ゴン
ポポ
パン
パル
マリ
ゴン
パン
パル
ゴン
マリ
クロエ
クレオ
レイコ
ポポ
ポポ
プチ
プチ
プチ
レオ
レオ
レオ
→社会関係を広げていると考えられる。
謝辞
3
7
年齢(歳)
パン
ポポ
マリ
クロエ
アキラ
アイ
ペン
アユム
クレオ
プチ
ゴン
ポポ
年齢(歳)
考察
NNとなった割合(%)
クレオ・パルのNN
アユムのNN
(入院中)
(入院中)
展望
アユムの社会関係の変化は、α-maleであ
るアキラとの関係の変化が大きく影響して
いると考えられる。
今後は、2000年に生まれた3個体の社会
関係の変化だけでなく、アユムとアキラの
関係の変化にも注目して観察していきた
い。
この研究をおこなうにあたり、霊長類研究所の皆様には多大なご協力をいただきました。
また、歴代ポケットゼミナール生による記録を参考にさせていただきました。
この場を借りて、厚く御礼申しあげます。
SAGA14 2011.11.12~2011.11.13