Gérald PELOUX(Lycée Jean de la Fontaine

第五回フランス日本語教育シンポジウム 2003 年フランス・アヌシー
5ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Annecy France, 2003
フランスに於ける日本語高校卒業試験
(2003年現在)
Gérald PELOUX
Lycée Jean de la Fontaine
第一・第二外語の BAC の目的は基本的に「読む」「書く」能力を確認することである
のに対して、第三外語の BAC の基本的な目的は、「話す」能力を確認することである。
①
BAC の時の第一、第二、第三外国語の試験の一般的な知識
ア
BAC の言語知識は?
BAC を受ける生徒に求められている日本語の言語知識は、日本で教えられている「国
語」と全く違っている。簡単に言えば、第一・第二・第三外語の相違があるとはいって
も、受験者に求められているのが、ある程度の自然性がある、文法的に正しい、「社会
的に」認めれている日本語が書けること、話せることである。
イ
日本語の問題 教育政令の存在
1987年の第三外語の教育政令以外は何もないので、BAC の試験問題を
るときに、非公式のカリキュラムによるしかない。
作
ウ
筆記試験の一般的な規則と知識
→ 文系・経済系・理系の第一外語(3時間)と文系(3時間)・理系(2時間)の第二外語
→ 基本的内訳は、読解(10点)+作文(10点)になっているが、第一外語の文系は、
読解・作文(14点)+翻訳(6点)という少々違っている構成になっている。
エ
口答試験の一般的な規則と知識
→ 高3のときに勉強したテキストの中から試験官が選んだテキストを20分準備した
あと20分発表する。
→ 英語であれ、スペイン語であれ、アラブ語であれ、中国語であれ、日本語であれ、
口答試験の進み方は同じ。
読むこと・テキストを紹介すること・テキストについて試験官の質問に答えること・
テキストのテーマをもとに試験官と会話をすること、以上は口答試験の内容である。
選択科目の点数の付けかたに少々注意しなければならない。選択科目の第三外語の口
答試験は「御褒美」という風にも取られるので、10点以上の点数だけ、BAC の最終的
な点数の計算のときに加える。
注意
2001年・2002年学年度から BAC の筆記試験の点数の内訳が
変わった。理系の第二外語の試験は口頭から筆記試験へ編成された。
読解・文法・作文という三つの能力確認問題から読解・作文という二つの
能力確認問題へとかわった。
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第五回フランス日本語教育シンポジウム 2003 年フランス・アヌシー
5ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Annecy France, 2003
②
BAC の日本語の場合
BAC の日本語はどんな日本語?
ア
筆記試験
→ 五年前に試験作成の変化(COBAYAGE 実験会)が行なわれた。大学教授が作ると
いうそれまでの試験問題の作成形式をあきらめて、生徒のレベルをもっと確実に把握し
ている中等教育の教授が作るという制度に変わったのだ。
その実験会の際、作られた新しい試験問題をグループで長さ・難しさ・可能性・面白さ
などの面で検討する。
→ 日本語の筆記試験の諸問題
→ 漢字の読む能力 (正式の漢字リストがない)
→ 実験会の決めた漢字レベルは、第一外語は、日本小学校4年
生の漢字、第二外語は、日本小学校3年生の漢字をルビなしで読めるレベルである。そ
れはあくまでも正式の漢字リストが作られるまでの一時的で不便な状態のはずだろう。
→ テキストの形の選択
→ 近現代文学・新聞記事にかぎったほうがいい。だいたいの戦前の作家
は高校生には難し過ぎる。また、現代作家の作品や新聞記事を書き直す必要もある。そ
のままのテキストは、いつも慣用句などが多いので、テキストの理解の大きい障害にな
りかねない。
→ 作家についての知識は求められていない。
イ
口答試験
→ 口答試験の日本語
→ 一以上説明したよう、日本語でするべし
→ 読むこと、紹介すること、説明すること、解釈すること、会話すること
→ 文法の説明は駄目
→ フランス語への翻訳は可能だが、日本と日本語についてフランス語
での口答試験にはならないように注意しよう。
→ 口頭だから、漢字の試験ではない!
→ 第三外語の場合、コミュニケーションの能力が一番重要なのでそれ
を忘れないで欲しい。
→ テキストの選択の問題
→ テキストのレベルは政令に従わねばならず。
→ 教科書のテキストを避けて欲しい。
→ 試験官のことも考えて欲しい。
→ 内容のあるテキストを!
→ 生徒のことも考えて欲しい。
→ 多くの生徒は、まったく知らない人と日本語で話す初めての
きっかけになるので、とても緊張しているだろう。
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第五回フランス日本語教育シンポジウム 2003 年フランス・アヌシー
5ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Annecy France, 2003
ウ
OIB のこと
→ 2002年11月21日付の教育広報に
→ OIB とは何?
→ OIB は英語・ドイツ語など外国語を第一外語として扱わないで、ほとんど
母国語として扱って、言語能力の試験問題と日本事情、いわゆる社会の試験問題が、普
通の BAC のなかに取り込まれているという「国際 BAC」である。言語能力のレベルは、
日本の高校で求めれている国語とほぼ同じであるが、形は、フランスのフランス語の筆
記試験にとても近い。
→ OIB が受けられる生徒は人数がとても限られて、日本で教育を受けた生徒
や日仏家庭の優秀な生徒のような生徒である。「完全」フランス語家庭出身の生徒は、今
のところ、OIB の求められるレベルにはとても遠い。
③
これからの発展
日本語と日本語の試験の標準化、否、普通化が必要になってきた。
日本語が難しい言葉だから特別扱いするというのは、口実にしか値しない。難しさと
いう概念は言語学的には意味がないのである。
アラブ語、中国語、ヘブライ語などの非ローマ字言語と同様に、今まで特別扱いされ
てきた日本語を他の言葉と同じように扱って欲しい。でなければ、日本語の教育はフ
ランスで広がらないだろう。
普通化・形式化された BAC の日本語があるなら、生徒たちも教師たちも安心するだろ
う。
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