質量分析による タンパク質解析のための 新規ゲル内酵素消化法 愛媛大学 プロテオサイエンスセンター プロテオミクス研究部門 講師 武森 信暁 1 質量分析計の臨床診断への応用 2014年 2014年7月に 米国FDA 米国FDAの FDAの Medical Device(Class 1) として認可、登録 2 タンパク質定量 イムノアッセイから質量分析へ ターゲットプロテオミクス SRM/MRM質量分析法を用いた標的タンパク質 の高感度定量解析。抗体を用いることなくあらゆ るタンパク質の定量が可能に。 (Nature Method誌のMethod of the Yearに選出) Nature Methods Vol. 10, P19–22 (2013) 3 質量分析によるヒトプロテオーム解析 ヒトプロテオーム(体内に発現するすべて のタンパク質)の解析が昨年終了 4 プロテオーム解析用試料の前処理 • 質量分析の前処理として、タンパク質試料を 基質選択制の高いプロテアーゼ(トリプシンな ど)を用いてあらかじめ消化する必要がある 抽出タンパク質試料 プロテアーゼ消化 消化ペプチドの LC分離 MS/MS 解析& データベース検索 解析の再現性や 同定タンパク質数に影響 5 従来技術(試料前処理)とその問題点 • 溶液内消化法:界面活性剤の使用が困難で 溶液内消化法: あり、難溶性タンパク質の解析に向かない • ゲル内消化法:界面活性剤を含む難溶性タン ゲル内消化法: パク質試料の解析にも適応可能であるが、消 化ペプチドの回収率が低い 消化法 溶液内消化 (尿素法) ゲル内消化 (Tube-gel法*) 界面活性剤の 使用 難溶性タンパク質 の消化 消化ペプチド 回収率 × △ ◎ ◎ ◎ △ * Lu X, Zhu H. Mol Cell Proteomics. 2005, vol.4, p1948-58 6 新技術の特徴・従来技術との比較 ゲルマトリックスからのペプチド回収率を改善する ために、還元処理により可溶化するBACアクリル アミドゲルを使用した新しいゲル内消化法(BAC ゲル消化法)を開発 消化ペプチド の低回収率が問題 O O N,N'-methylene-bis-acrylamide (Bis) N H N H O O N,N'-Cystamine-bis-acrylamide (BAC) S N H S N H HS S-S 還元処理 HS SH 7 BACアクリルアミドゲルの可溶化 プレステイン タンパク質試料を含む BACアクリルアミドゲル BACアクリルアミドゲル 1min後 3min後 5min後 TCEP 添加 Acetonitrile 添加後に 遠心 8 消化プロトコル 抽出タンパク質試料( in 4% SDS溶液) SDS溶液) 従来法 mix 還元アルキル化 mix BIS/アクリルアミド溶液 BIS/アクリルアミド溶液 BACゲル法 BAC/アクリルアミド溶液 BAC/アクリルアミド溶液 ポリアクリルアミドゲルの形成 ゲル洗浄によるSDS ゲル洗浄によるSDS除去 SDS除去 トリプシン/Lys トリプシン/Lys/Lys-Cを用いたゲル内消化 消化ペプチドの抽出 ① TCEP処理(ゲルの可溶化) TCEP処理(ゲルの可溶化) 消化ペプチドの抽出 ② ACN添加・遠心処理 ACN添加・遠心処理 消化ペプチドの抽出 ③ 回収したペプチド溶液の遠心濃縮 STAGE TIPによる消化ペプチドの精製 TIPによる消化ペプチドの精製 LCLC-MS/MS解析 MS/MS解析 LCLC-MS/MS解析 MS/MS解析 9 従来法との比較① 抽出タンパク質試料 5 μg ( Drosophila頭部から 4% SDS溶液により抽出) BAC/アクリルアミド溶液 BAC/アクリルアミド溶液 mix mix BIS/アクリルアミド溶液 BIS/アクリルアミド溶液 トリプシン/Lys トリプシン/Lys/Lys-Cを用いたゲル内消化 TCEP処理( TCEP処理(5 処理(5 min) min) ACN添加・遠心処理( ACN添加・遠心処理(5 添加・遠心処理(5 min) min) 消化ペプチドの抽出 (10 min) ×3 回収ペプチド溶液の遠心濃縮・精製 QTrap5500による LC-MS/MS解析 QTrap5500による LC-MS/MS解析 10 従来法との比較② 8M尿素で溶解した タンパク質試料 5 μg Lys-Cによる溶液内消化(4h) 50mM NH4HCO3溶液で4倍希釈 トリプシンによる溶液内消化(12h) QTrap5500による LC-MS/MS解析 11 同定ペプチドの本数 消化ペプチドのアミノ酸数の比較 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 BAC BIS 38 37 34 32 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 アミノ酸数 同定ペプチドの本数 250 200 BAC 150 Urea 100 50 0 39 38 37 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 アミノ酸数 12 同定タンパク質の機能別分類 25 同定タンパク質数 Urea BAC 20 15 10 5 0 13 ペプチド配列占有率の比較 14 定量の再現性 15 ゲル内環境でのタンパク質保存 乾燥BACゲル内における脱水タンパク質試 料は室温で安定しており、還元処理によるゲ ルの可溶化により試料の損失なく回収が可能 16 想定される用途 • 質量分析によるプロテオミクス(ボトムアップ・ ミドルダウン解析、SRM/MRMによるターゲッ ト解析)用試料調製 • 複数回膜貫通型タンパク質(GPCR等)を標的 とする定量質量分析用の試料調製 • 異なる施設間における各種タンパク質試料お よび臨床検体試料の常温保存・輸送 17 実用化に向けた課題 • 長期(1か月~1年)室温保存条件の最適化 • アクリルアミド以外のゲルマトリックスの検討 • 臨床現場での使用に向けた簡易プロトコルの 開発(キット化の必要有) 18 企業への期待 • 前処理工程のオートメーション化およびキット 化に関して、企業との共同開発を希望 • また、質量分析による臨床試料からの標的タ ンパク質解析(ターゲットプロテオミクス)、比 較プロテオーム解析によるバイオマーカー探 索(特に膜タンパク質など)に関心のある企業 には、本技術の導入が有効 19 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :タンパク質の保存および輸 送法 • 出願番号 :特願2014-58219 • 出願人 :愛媛大学 • 発明者 :武森信暁、武森文子 20 お問い合わせ先(必須) 四国TLO(株式会社テクノネットワーク四国) 技術移転部 安田 崇 〒760-0033 香川県高松市丸の内2番5号 TEL : 087-811-5039(代表) FAX : 087-811-5040 e-mail : [email protected] URL : http://www.s-tlo.co.jp 21
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