平成23年度「学校図書館資源共有ネットワーク推進事業」夏季研修会の

平成23年度「学校図書館資源共有ネットワーク推進事業」夏季研修会の報告
平成23年8月23日(火) 於 牛久中央図書館
1 講演 「学校図書館を使った調べ学習の進め方について」
袖ヶ浦市学校図書館支援センター
中村 伸子 先生
1 調べ学習とは?
・自分の課題(テーマ)を様々な情報源を活用し主体的に解決する学習
・情報源から資料を選択・収集・記録し,その結果に自己の考えを加えてまとめ
発信・伝達する
2 調べ学習のステップ
①課題を決める
②資料・情報を収集する
③記録・整理する
④作品にまとめる
⑤発表する(情報を発信する)
3 覚えておきたい約束ごと
・著作権について
・
「引用」と「要約」の違い・引用の仕方・参考文献の書き方
4 調べ学習の支援ポイント
・インターネットだけで調べる子どもへの助言
・調べ学習したくなる環境を作るには?
・図書の年間購入計画
5 ワークショップ「ポプラディア百科事典を使った調べ学習」
・5つのグループになって調べる対象の掲載ページを探す活動
・百科事典の秘密(工夫点)にふれる活動を体験
2 牛久市小中学校の実践事例から学ぶ
(1)
「場」をつくる
・図書館の環境整備(子どもたちが「好きな場所」としての図書館づくり)
・学級文庫の充実 (本を身近に置くことで,本との出会いの場が生まれる)
・えほんのへや
(朝・休み時間・児童クラブでの読み聞かせに活用)
・朝読書を図書館で(高学年対象)
・毎日朝読書
(2)
「時間」をつくる
・図書の時間
・読書週間
・雨の日貸出し
・図書館まつり
(週1時間,全学級に図書館利用可能時間を割当て)
(司書によるオリエンテーション,担任の企画によるテーマ読書)
(年2回,2週間単位で特別貸出しや図書委員会の活動)
(雨天時には2冊まで貸し出す・けがの予防にも役立ちそう)
(貸出し冊数増,しおりや貸し出し券による意欲喚起)
(3)
「読書の質」を高めるために
・推薦図書の選定 (学年ごとに図書をリストアップ)
・学年別の具体策 (1,2 年「おすすめの本」
,3年「シリーズ本」
,4年「読解力
アップ」 5,6 年「国語や理科での活用」
)
(1,2 年「読み聞かせ」3年「アニマシオン・ブックトーク」
)
・テーマのある読書(本の横のつながり・縦のつながり→広がりと質の高まり)
・名作コーナー
(身近にあると手に取る,出会うきっかけをつくる)
・NIEの活用
(今を知る・関連書を探して読む)
・タイムリーな図書(鮮度の高い話題,時をとらえて本に親しませる)
・伝えたいテーマ (教師や学校司書の特別な思いをこめて読み聞かせを)
・おすすめの本
(
「本はともだち」の単元で友だちに向けてカードを作成)
(4)交流による活性化
・保護者・地域住民・高校生・中学生による読み聞かせ
・6年生による1年生への読み聞かせ
・中学生による児童クラブでの読み聞かせ(両者が育つ機会)
(5)家庭との連携
・読書カレンダー
(保護者に読み聞かせてもらう機会として)
・図書便りの配付
(図書館教育についての保護者の啓発)
・親子読書の提案
・学級懇談での説明 (読書の意義,うちどくのすすめ)
(6)各教科領域での図書活用
・国語科とのリンク (発展読書,関連読書,読書交流,授業での本紹介)
・百科事典の使い方 (図鑑・年鑑なども調べ学習に活用することで慣れていく)
・俳句学習で歳時記 (専門書・本物にふれる機会)
・総合学習での活用 (オリエンテーションや調べ学習の進め方も)
・国語での読書会
(同じ作者,同じテーマ,似ている作品などで幅を広げる)
・アニマシオンの活用(国語授業に取り入れる。クリティカルリーディングなどで言語力育成)
(7)学校全体での取り組み
・校長先生,教頭先生,学校司書,担任,ALTによる読み聞かせ
・教職員からの本紹介(小学生の頃に読んだ本,最近読んだ本など)
・全校一斉読み聞かせ(担任以外の先生の活躍の場)
・給食時の読み聞かせ(教室で,放送で)
・学級文庫の選書
(担任と図書委員で行うことで読書意識を高める)
・放送を利用した活動(先生おすすめの本紹介,図書委員会からのお知らせ)
・図書委員会の活動 (生徒主体の活動に意義。毎月のイベントと便りの発行)
・全職員で選書
(情報の共有と同僚性の育成からはじまる図書教育)
(8)教職員研修の実践
・リテラチャーサークル(読書会)
・市図書館との連携 (専門性を生かした研修内容)
3 残された課題
・本の未返却や紛失(本は学校や市や人類の財産であるという価値観を育てたい)
・親子読書の提案(親子のコミュニケーションの機会として・心の安定に)
・読書習慣の定着(
「本がないと生きていけない!」という境地まで連れて行きたい)
・名作との出会い(大人が意図的に仕組む必要,出会わせる工夫,特に近代文学)
・辞典類の活用 (いつも取れるところに・必要時にすぐ使用できるような工夫)
・学級文庫の充実(読ませたい本を含めた,内容や冊数の充実を各学年で)
・司書教諭と学校図書のさらなる連携のあり方
・調べ学習の再認識(調べるだけでなく,調べ方・学び方のルールやモラルを)
4 新たなテーマ
・ブッククラブによる読書指導
・朗読やストーリーテリング
・
「読書の時間」(週1時間)の年間実施計画の見直し
・読書感想文への取り組ませ方
・NIEと図書活用のあり方
・ブックトークの可能性(調べ学習の導入時などに応用できないか)
・月のテーマに基づく読書生活の探究
・図書館での授業の可能性
・
「学び方を学べる図書館」のあり方
・総合だけでなく各教科での調べ学習を実践していくための環境づくり
・同じ本を読み合い,自分の意見をまとめ発表し,また他者の考えを学ぶためのアニマシ
オンやリテラチャーサークルのあり方
5 研修から学んだこと・感想・意見
(1)内容について
○調べ学習というと生徒たちはすぐインターネットで調べようとします。新聞や図書などの活字
メディアは,どちらかというと選択しない傾向があるのは本校も同じです。国語の学習でそれ
ぞ れのメリット,デメリットを指導し,適切な調べ方を指導していく必要性を感じました。
○調べ学習のポイントを子どもたちに意識して指導していくことで,メディアリテラシーが身に
ついていくと思いました。インターネットだけで調べようとする子どもに対して,その他の情
報源があることを教えることも大切だと思いました。司書も含め教師のサポートが調べ学習を
進めていく上でとても大切であると感じました。
○講演では,改めて調べ学習の有効性,重要性を認識することができました。また,実際に調べ
学習を体験することにより,子どもの目線に立ってみて教師の側としては,どのような支援を
していったらよいのかを考えることができました。
○講演の中で「百科事典オリエンテーション」の演習と,
「調べ学習コンクール」の作品紹介が
心に残りました。本校の実態に合わせて生かせるように考えたいと思いました。
○講演を伺って,子どもたちに意欲をもって調べ学習に取り組ませるためにはどうすればよいか
ということについて改めて考えることができました。百科事典を使った演習の中で新しい発見
がありました。
○調べ学習の進め方など,普段図書館で実践していること,地道な積み重ねが大切なことを改め
てうかがってよかったです。百科事典は年1回のオリエンテーションでしか使うこともないの
ですが,繰り返し使うことが大事だと思いました。また,児童の興味を引く方法も考えて生き
たいと思います。
○子どもの感覚で,百科事典がこんなに豊富に写真が入っていて楽しいものになっていることに
驚きました。文字の色を変えたり,
「はしら」
「つめ」などを付けたりするなど,とても工夫さ
れていることが分かりました。
○調べ学習というとすぐにインターネットという流れに行きがちだったので,これからは活字メ
ディアにふれさせていかなければならないと思いました。
○百科事典の説明すべきポイントがたくさんあったことに今更ながら驚きました。大人が当たり
前だと思っていることが,子どもたちには別の意味に感じるなど,具体的に教えていただき勉
強になりました。
○調べ学習の楽しさを牛久の子どもたちにも知ってほしいと思いました。子どもが調べたいこと
に付き合うことのできる保護者が「自分も楽しくなった」というお話を聴いて,すばらしいと
思いました。
○百科事典を使った調べ学習のオリエンテーションをしてみたいと思っていました。どのように
したら子どもたちに分かりやすく説明できるのかわからなかったのですが,今回教えていただ
いたような方法でできたら子どもたちに上手に伝えられるように思いました。是非今度取り入
れてみます。
○日ごろから文豪の作品を読ませるためにどうしようかと考えていたので,他校の取組を参考に
名作といわれる作品を学級文庫に入れることを検討していきたいです。
○子どもの調べ学習を中心に家族が一緒に学ぶ機会になるというお話をうかがいました。家族み
んなで楽しんでください,という言葉がうれしかったです。子どもの「なぜ?」から家族のコ
ミュニケーションもとれ,とてもいいなと思いました。
○子どもたちが調べ学習をするときに,ほとんど百科事典は使っていませんでした。百科事典の
よさや使い方をきちんと教えたいと思いました。また,著作権について意識させることの大切
さがわかりました。今後はきちんと意識して指導していきたいと思いました。
○百科事典を使った学習の導入については,どのようにしたらよいか自信がなかったため,今回
の研修はとてもありがたかったです。
○インターネットを使ってばかりの調べ学習も,本で調べることのよさ,たくさんのツールの中
の一つであることを改めて伝えていきたいと思いました。
○今回の研修は,演習も入りより具体的に調べ学習の場面が想起でき,日ごろ自分が迷ったり困
ったりしていることへのアドバイスが演習の中にちりばめられていて「なるほど」と思うポイ
ントが数多くありました。ポプラディアを用いた演習は中学生でも十分学べる点があると思う
ので是非取り組ませたいと思いました。
○調べ学習については,知りたいと思いながら先延ばしにしていたので,今回の研修で本当に勉
強になり,やってみようと思いました。
○講演の中から,調べる情報源になるものの特徴について知り,それをきちんと子どもたちに伝
え,利用させていくことの大切さを学びました。また,広すぎるテーマではなく,少しせまい
テーマから入ることが,自分が必要とする情報を選ぶ力を身に付けることにつながるというこ
ともわかりました。
○学校全体で取り組む図書館運営をテーマに協議を行った。まず大切なことは,図書館での活動
や実践を全体に知らせ,理解してもらうことだと感じました。中村先生からいただいたアイデ
ィアを9月からの実践に取り入れて生きたいと思います。
○調べ学習では,いつも「調べるだけ」で終わってしまうことが多く,調べ方や参考文献を書く
という基礎もできていない状態です。今回の研修で学んだことを学校全体で共有し,是非活用
したいと感じました。子どもたちに,調べること,分かることがこんなに楽しいことなのだと
いうことを伝えるためには,まだまだ自分にも勉強が必要だと改めて感じました。
○講演では,一番知りたかった調べ学習についてお聞きすることができとても勉強になりまし
た。物流が軌道に乗った今,牛久が調べ学習が盛んになるように努力していかなければいけな
いと強く感じました。
○調べ学習についてやってみたいと考えていたことや実際にやってもうまくいかなかったこと
について具体的なことを想像しながら講演を聴けました。
○今までは授業で百科事典を使ったことはありましたが,子どもたちに自由に調べさせる程度で
した。調べ方を教えたり,関連後や奥付きなどについて説明したりすれば,子どもたちはもっ
と深く追究できたと思います。先生のお話の中の好きなもの・気になることを調べるとそれが
さらに好きになる」という言葉が心に残っています。授業の中で調べ学習をさせるととても時
間がかかりますが,時間をかけて調べまとめたことは,大事な力になるということが分かりま
した。
○本校では総合的な学習以外の物流利用が減ってきており,活性化するためには今年度どのよう
に進めていけばよいのか迷いながらスタートを切った状態でしたので,改めて調べ学習の重要
性や楽しさを自分自身が実感できてよかったです。
○袖ヶ浦の子どもたちのように取り組めたら,調べ学習が楽しく,そして実のある質の高いもの
になるだろうと考えました。これから「町探検」を行うにあたり,調べ学習も取り入れていき
たいと新たなアイディアが浮かびました。
(2)研修全体について
○講演で話を聴くだけでなく,実際に演習を行ったことは,百科事典の調べ方について具体的な
理解につながりました。また,
「うちどく」への取り組み方,図書館との連携の必要性につい
ても,他校の取組が大変参考になりました。
○講演,協議という研修構成がよかったと思います。
○昨年はブックトーク,今年は調べ学習なので,次回は目新しい研修を望みます。
○以前ブックトークの実演を見せていただきましたが,あのような具体的な指導方法に関するっ
研修もよいのではないかと思いました。
○他校の取組について知るだけでなく,同じような課題を抱えているということがわかり安心し
ました。あきらめず少しずつ工夫と知恵を出し合い協同して学校図書館への興味関心をもって
もらえるよう頑張りたいです。
○これからも「学校全体で」取り組むことをテーマにしていきたいと思います。
○レポート作成は少し辛いなと思いましたが,他校の状況がわかるいい機会だったと思います。
○司書教諭と学校司書が同じ研修を受け,他校の方々ともお話ができて参考になりました。
○講師の中村先生からとてもわかりやすく具体的なお話をいただいてとてもよかったと思いま
す。すぐに実践できそうでうれしく思います。
○協議が4人グループということで話しやすく,いろいろな情報交換が気軽にできました。小中
学校に分かれていたのもよかったと思います。
○同じ悩みをもっていることに気付き,話し合うことで解決するものもありました。
○夏休みに1回だけでなく,数回このような研修を行ってほしいと思います。
○今回の研修のように,即使えるものだと授業に還元できるのと,司書教諭とともにできたとい
うのがよかったです。
○他の学校の取組を聞く機会がなかなかないので,年1回ではなくもう少し回数があるとよいと
思いました。
○毎年この研修に参加して,図書館教育は本があるだけではだめなのだとつくづく感じます。人
と人とがうまくつながっていかないと本のよさが生かされません。そのような気付きがあるこ
の研修はとても大切だと思います。
○司書教諭も各校の図書館を見学できる研修がもてないものでしょうか。ひたち野うしく小の図
書館は,学校司書さんのみならず,教師も是非見るべきだと思いました。
○普段はなかなか他校の情報を知ることができないので,
「図書館運営と読書指導」についての
協議がとても参考になりました。
○このような研修があることで日々の業務に役立てられることがたくさんあり励みになります。
○各校の取組で特に興味をもったのは,先生方による各クラスでの読み聞かせです。たくさんの
先生にお手伝いしてもらい,楽しい本,読んでほしい本を紹介していくと生徒の関心も高くな
るだろうと思います。
○講演の内容が今求められていることにぴったり合っていて,研修が有意義なものとなりまし
た。もっと時間があれば先生方のお話を詳しく聴き学びたかったです。
6 まとめ
(1)調べ学習について改めて学び直す機会となった講演
調べ学習をさせるとき,我々教師はその意義や方法をどれだけ子どもたちに示してきただ
ろうか。そう反省させられる講演だった。
調べるテーマと事典があればどの子どもも意欲的に調べ学習を進めるだろうというのは教
師の思い込みである。
「調べてまとめなさい」というだけでは動けない子どももいる。本当に
困っている子どもへの支援策をもっているかどうかが資質として問われるところである。そ
の意味で,百科事典の「はしら」
「つめ」などの使い方や,事典やインターネットの特徴及
びメリット・デメリットなど,指導者として備えているべき基礎知識を学ぶよい機会であっ
た。どの教科・領域の指導でも,
「専門的知識」をもって指導にあたること,また,そのよう
な力量を持った教師になるよう努力することの大切さを参加者全員で学ぶことができた。
(2)モノ(本)を生かすためのヒト(人と人とのつながり)の大切さ
牛久市は県内で唯一の図書館資源物流ネットワークを有するまちである。物的には極めて
恵まれた環境にある本市において,さらに質の高い読書や授業での図書利用を活性化するに
は「人と人とのつながり」が必要である。モノ(本)を動かし,活用するにはヒト(教師・
司書・地域など)のネットワークが不可欠であることを今回の研修で再認識した。
人的ネットワークの構築には,まず「理念」あるいは「哲学」の共有が基盤となる。学校
図書館法(昭和 28 年,最終改正平成 19 年)第 1 条にあるように,図書館は「学校教育にお
いて欠くことのできない基礎的な設備」である。そのことを学校にかかわる全ての人が理解
し,教育における図書の価値,図書館運営を学校全体で行うべき理由を共有する必要がある。
そのような基本理念で人と人とがつながり,子どもたちが本に出会う機会を生み出していく
のではないだろうか。
人と人とのつながりは,子どもと本をつなぐ。人と人とがつながらなければ,子どもと本
を出会わせることはできない。参加者の感想から改めて気付かされたことである。
(3)学校,家庭,地域に図書文化を
学校においては,子どもと教師が朝読書や調べ学習を通して本に親しみ,家庭においては
子どもと家族が「うちどく」を通して同じ本について語り合う。地域では,市立図書館,各
生涯学習センターも含めた施設で,幼児,児童生徒,現役社会人,定年退職者などが生涯に
わたって図書に親しみ,学び続ける。そのような文化が地域により深く根付くよう,まずは
学校の教職員が読書教育・図書利用についての専門性を高める必要があることを再認識した。
来年度の研修のあり方については,よりよい方法をこれから検討していく。