パンプローナ 2 期にあったフィッツジェラルドが輝いていた。小説を一発当てれば大金と名誉を手にすることができるのだ! パリで大金持ちなのに貧乏人のふりをして祖国を棄てた者たちがたむろするモンパルナスに夜毎出かけ、仲間のふりをして聞き耳を立てる。そして、翌朝、カフェでメモをする。有名な作家のサー「これは、ノーベル賞へ向かクルに潜り込む。う作品であろうか ?」という疑運命の年 1925 年問は「ノーベル賞自体が超大ヘミングウェイは運命の年 1925 年を国アメリカの期待を無視でき迎える。《この年までのヘミングウェイない」という基本がある限り、はモンパルナスのカフェにたむろする結論がでないので、ヘミングボヘミアンたちを怠惰な遊び人としてウェイを解剖する糸口を《 ① なぜ、「日軽蔑していたが、その頃になると彼自身はまた昇る」の出版直後からヘミングウの内面に、当時のパリを彩っていた自由ェイは昨日まで親友であった友達に、命な男女関係や恋愛に対する傾斜が生じ、を狙われたのか ?② ヘミングウェイは、積極的に夜のカフェ・ライフに加わるよつぎからつぎへと親友を失っていったうになった》か ?③ アドバイスとすべき親友の評論にそして、ついにフィッツジェラルドと知動揺し、しばしば激高したのか ?》にしり合う。フィッツジェラルドとの交友は、たい。親愛の情とライヴァル意識とがせめぎ第１次世界大戦が終わり、軍需景気で世合う『危険な友情』へと発展していく。界最強の経済大国となっただけでなく、戦局が有利になった時点での参戦で最低の犠牲で勝戦国ともなったのがアメリカである。戦後、アメリカの多くの若者たちが無法地帯となったパリになだれ込む。 1920 年台のパリはケタ違いの価値となったドルを持つアメリカ人によって「ヴォーグ」誌の女性記者ポーリーンと席巻された。出会ったのもこの年であった。妻とはあそんな中に、ヘミングウェイもいた。22、らゆる面で対照的なポーリーンとの出 3 歳であった。彼の前には、「ジャズの時会いはのっぴきならない恋に発展して代の桂冠詩人」「燃え上がる青春の王者」いった。そして「狂乱の 20 年代の旗手」と絶頂当然、最初の妻ハドリーとの夫婦生活 1 に決定的な亀裂を生じさせた。この「日はまた昇る」の登場人物はそ妻と愛人たちとの複数関係に悩んでいのモデルが特定されている。《ジエイクた頃、ヘミングウェイはハドリーさえ黙はヘミングウェイ、ロバート・コーンは認してくれれば結婚生活もポーリーンハロルド・レーブ、フランシス・クライとの関係も、そのまま保っていきたいとンはロバート・コーンの愛人キティ・キ望んでいたようだ。ャネル、マイク・キャンベルはトワイズ無制限な女関係図にもう一人レデデンの恋人であるパット・ガスリー、ィ・ダフ・トワイズデンが加わる。彼はジャネット・フラナーブラドックスはイ「新奇探索 DNA」の持主として、ハドリギリスの小説家、批評家フォード・マドーやポーリーンを放置して、トワイズデックス・フォード。ンとパリ中を飲み歩く。ブレッドは街の流しの姫君レディ・ダこの女性はヘミングウェイと同じフ・トワイズデンとされ、職業上少なくで、異性なら、何人でもストックともパンプローナに行った人達すべてしておくタイプであった。と性的な関係がある。パンプローナに乗り込むビル・ゴートンはヘミングウェイの少年こうしたヘミングウェイを中心とす時代の友人。る複雑怪奇な一座が盛夏のフィエスタ 10 日間のロメロも加えた十角関係劇でを間近にしたパンプローナを訪れた。ある。泥仕合を演じる団員はヘミングウェイ《それらはヘミングウェイのなかに強夫妻、旧友のビル・スミス、作家仲間のい創作的衝動を増していき、7 月 21 日、ハロルド・レーブ、トワイズデン、その 26 歳の誕生日に、彼はまだパンプロー婚約者パット・ガスリーであったが、7 ナ滞在中に、記憶も新たな数々の事件を月にはヘミングウェイの新しい愛人の軸にした長編小説を書き起こした》と解ポーリーン、ジラルド・マーフィー夫妻説されている。も集結した。フィッツジェラルド・スコ作家としての未熟ットも行っているはず。現地でブレッドヘミングウェイは自分の作品が評価の愛人として採用された闘牛士ロメロされないことにいら立っていた。《 … (出版社から )送りかえされてくるも重要である。トワイズデンをめぐってレーブ、ヘミ小説についている断りの手紙によると、ングウェイたちの間で起きた恋の鞘当ぼくの作品は小説ではなく、スケッチだては、七月に入ってサン・フェルミンのとかコントにすぎないというのだった祭りがはじまるにつれて烈しさをまし …》と。ていったらしい。つまり、ヘミングウェ出版業界もフィッツジェラルドをイは (最初の妻 )ハドリーと (次の妻に内 1920 年台の流行作家に育てたが、次の諾を与えている )ホーリーンの三角関係スターがいなかった。出版社も作家も時に (夜の歌姫 )トワイズデンが加わり、狭代の流れが急激過ぎて、時代が求めていい町の中で複雑怪奇な状況が進行した。るものを見極められなかった。 2 《 19 世紀までは作家がリアリズムに対して、目を向けるべき対象が安定していたし、一定していた。どんなに激烈な自然主義の作品でも、作家対社会の関係には、ある種のゆとりというものがあって、客観的になることができた。それが作品の体裁のうえでは、起承転結のはっきりとした小説なり物語を生んだ。それが友人・先輩を売文で使 20 世紀に入ってからは、状況の変化とったが。ジエイクの性機能障害にもモデともに、そのようなことは可能でなくなルと考えられている親友がいた。彼の深った。従来のような意味での小説や物語く悲しい障害も売文のネタとしていた。の存立は不可能となり、小説と称される友人のふりをしているのは (彼らはどうものには自伝的な要素が大きく占める感じているのだろうかを探る )秘かな理ようになったし、物語 (あるいは短編小由があった。説 )は本質的な意味で、逸話、スケッチ、そして、絶倫者が妄想する「深い悲しコント的なものにならざるをえなくなみ」はこう書かれている。《ベッドにはった。いったのは何時ごろかわからない。服を解説者と愛読者はありがたいものだ。ぬぎ、部屋着をまとい、バルコニーに立ヘミングウェイが十代で志願兵としてってたことはおぼえている。すっかり酔イタリアにいた時、被弾し性機能障害者っぱらってるのは自分でもわかった。になったと信じている。「だから、あの（中略）ブレッドとロバート・コーンが陰鬱な顔つきは『人生は悲劇だ』を正直階段をあがってくる気配がきこえた。コに現わしているのだわ。私ならセラピスーンはドアの外でおやすみを言って、自トとしてお役にたてるかも」と思うであ分の部屋へひきあげた。ブレッドがとなろう。りの部屋へはいつたらしい。マイクはすしかし、事実はまったく正反対である。でに寝ていた。一時間も前にぼくといっ「日はまた昇る」が出版される前からトしょにひきあげてきたのだ。彼女が部屋ワイズデンにのぼせあがっていたためへはいるとやつが目をさました。ふたりに、最低で、三人の女性と同時進行してでしゃべっている。笑い声がきこえてきいたわけであるし、ディートリッヒともた。灯りを消して、眠ろうとつとめる。長い間親密な交際をつづけていたし、体もう読書の必要はない。ぐるぐるまわる格の良いアンダースンとも良好な間柄感じにやられないでうまく眼をとじるであった。ことができた。しかし、寝つくことができない。暗いからといって、なにもあかるいときとはちがったものの見かたをしなければいかんという理由はない。全然ないんだ !この件については、すでに 3 とっくりと考えたことがある。そして六すべはなかった。また、たしかにやつのカ月というものは、電灯をつけっぱなしほうもほれていた。このご婦人は、雑誌にして眠ったものだ。それだってなかながのびそうもないとわかると、コーンにかいい工夫さ。とにかと、女どもがいけいささかあいそがつきたが、多少でも利ねえんだ。お前もいけねえぞ。ブレッ用できるもののあるうちに、とれるだけド・アシュレイ》とってやろうときめこみ二人でヨーロッパに行きましょう、行けばあなたももなぜ脇役コーンの記述が長いか「日はまた昇る」はロバート・コーンのが書けるわとけしかけた。』の生い立ちから始まる。本の宣伝では「『失われた世代』の物《ロバート・コーンてのはその昔、プリ語で、主人公は『 (性機能障害者ヘミンントン大学のミドルウェイト級ボクシグウェイ )ジエイクと (男なしではいられング・チャンピオンだったんだ。（中略）ない・売春婦 ?)ブレッド』となっていたはずだ。読者は「なぜ、コーンの話が長々と出て来るか ?」と違和感を覚えるであろう。その通りである。実は、アメリカのスクリブナー社に送った原稿には、それよ大学時代にユダ公あつかいされて心にり前に 1 および 2 章があって、そこにはいだいた劣等感やびくつく気持ちを克ブレッドであるレディ・ダフ・トワイズ服するという目的があった。ふざけた野デンの生い立ちが熱っぽく書かれてい郎はどいつでもノック・ダウンしてやれたそうだ。ヘミングウェイが彼女に舞いると自信がつけば、多少の憂さも晴れよ上がっていた時期であったから。うというものだ。》草稿を見たフィッツジェラルドはこの《プリンストンを卒業すると、はじめ部が不出来であることを指摘し、根本的てやさしくしてくれた女を女房にした。に修正すべきだ、と忠告した。三人の子持ちになり親父の遺産五万ド短気で、自分の弱点を指摘されることルも大部分つかいはたし、金持ちの女房をなによりも嫌ったヘミングウェイはとのおもしろくない家庭生活であんま「俺は 7 ｹ月もかけて校正したのだ」とり人に好かれないタイプの人物になっ激怒した。しかし、出版社が特にヘミンてしまった。そして女房をすてる決心をグウェイに期待をしていなかったことした折も折、女房のほうがやつをすて、を本人自身が知っていたので、大幅な変絵描きとかけ落ちをしてしまったのだ。更の途中で出版社がキャンセルしてし（中略）ある雑誌の編集をやっていたとまう怖れがあった。き『その雑誌で世間に出たがっていたあ雲の上の人フィツジェラルドの忠告をるご婦人にとっつかまってしまったの受け入れ、直すのではなく、すべて削除だ。この女のはげしさは相当のもので、してしまった。コーンではとてもその手からのがれるこのため、主人公たちの背景説明が飛 4 ばされて、わき役 (多情な顔を持ち、嫉女を見つめている。「また新しいのがふ妬に荒れ狂い、追放される、ユダ公 )コえたぜ」彼女にいう。「そんな話やめて。ーンが冒頭に登場することになった。かわいそうに。今の今まで気がつかなかヘミングウェイの古くからの親友ハったわ」「ままいい」ぼくは言った。「恋ロルド・レープがモデルとされ、彼の育人ふやすのがすきなんだろ」「ばか言わちや気性を十分に知っていた。その親友ないで」「そうじゃないか」「じゃあいいにヘミングウェイ自身の「歪んだ性格」わ。だからってどうなの ?」「どうってこを背負わせて登場させた。とはない」》かなりの分量で親友だったはずのコ《ブレッドの乗ったと思われる汽車をーンをユダ公と呼び、作品で最低の役割ロバート・コーンと迎えに行く。を演じさせている。駅へきてみると汽車は遅れていた、そこ《「なんにも。こういうところを見物すでぼくらは手荷物車に腰をおろし、外のるだけでむかついてくるんだ、それだけ暗やみで待つ。ぼくは軍隊以外の生活で、の話さ」ブレッドが飲み台 (バー )へ寄っロバート・コーンほどいらだっている ― てきた。 (中略 )彼女はグラスを持って立あるいは懸命になっている―男を見たっている、気がつくと、ロバート・コーことがない。それをぼくはおもしろがっンが彼女をじっと見つめている。その顔ているんだ。そんなものをおもしろがるつきときたら、やつの祖先が約束の地をのはあさましい。だがぼくはあさましい見出したときこそかくもありなんと思根性になりさがっているのだ。コーンにわせるほどであった。むろんコーンは先は、他人の最悪部分をひきだしてみせる祖よりもずーと若い。しかし、これこそふしぎな性質がそなわっている》と熱っぽく期待する表情はご同様であ《ロバート・コーンてのは、去勢牛のまる》ねをしてブレッドの尻を追っかけまわしているのか? ブレッド、マイク組は正午まで決しておきてこないロバート・コーンについて「昔の女とくっつくだろう、きっと」「昔の女って、だれなのだ ?」「フランセスとかなんとかってやつさ」「ブレッドがなあ。あいつ、闘牛士の小僧と逃げちまった」》《「これじゃ、クランにはいりたくなのも無理はねえ」ビルが言う。《踊りなが「ブレッドが闘牛士をいっぴきひっから、ブレッドの肩ごしに見ると、コーンけたのだ」「いままでお相手をつとめたは飲み台のところに立ったまま、まだ彼のはコーンと称するユダ公さ、ところが、 5 結局こいつはお払い箱になっちまった」の作品を通じて、肉体的な行為とそのはブレッドがつっ立つ。「あんたからそんげしさと、それから死とを、いつもそのなたわごと、ききたくないわ、マイケ表面におしだし、人生をそのもっとも能ル」》などと徹底的に汚く書いている。動的な瞬間にとらえて、いわゆるハードその理由はコーンに対してのヘミングボイルドといわれる文体や技法を使用ウェイの強いコンプレックスではないした》かと考える。高見浩氏は《「なによりも重要なのは、レープ (コーン )はヘミングウェイが目で見、肌で感じ、鼻で嗅ぎ、耳で聞く遂に持つことができなかった、「大学ことだ」などと叫ぶヘミングウェイの、卒・ボクシング・チャンピオン」という新しい文学の局面への期待と喝采があ栄光を持っていた。ヘミングウェイはあった。 (中略 )ヘミングウェイが適用したんなに好きだったボクシングで得たも方法はきわめて簡単なものである。心理のは「殴られて潰れた鼻と視力低下」だや悲痛感や意識の流れは全部省略するけだった。これらは「生きている限り暴か、あるいは極度に圧縮するかして、ほ力」を看板にし、 20 歳から戦場で敵をとんど外面描写に終始し、心理の動きや撃つ行為に喜びを感じていた 200 ポン悲しみは、ちょっとした行為や短い会話ドを超える巨漢ヘミングウェイが生涯やわずかな事物で暗示するにとどめて引きずる致命的な弱点となった。人生のいる。いわば作者は「失われた世代」の最大の恥辱は「パリでノックアウトされ複雑な嘆きを酒と喧嘩と闘牛によってた」ことと言われている。処置したと言えようが、この主題の複雑「日はまた昇る」は 1927 年に出版ささに簡潔な手法をかみ合わせることにれたが、よって、従来に見られなかった新鮮な文フィツジェラルドに続く新人を探し学を生むことになった。それは行と行のていた出版業界が創作したのが、ヘミン間や余白に非情な意味と悲痛な嘆きをグウェイの「日はまた昇る」である。いっぱいたたえながら、表面はあくまで評論家や訳者は褒めあげる。《ヘミンも皮肉と冗談をまきちらし、かわいた抒グウェイという作家は、一言にしていえ情とさわやかなスピード感を与え、読者ば、第一次世界大戦という、あのいわばを心理的な抑圧感から解放する》ルネッサンス以来の近代のひとつの終どんな作品でも、「ないもの」を読んわりを象徴する事件のあとの、荒廃し虚でくれ、夢想してくれる評論家がいてく無と倦怠の空気につつまれていた「荒れれば、本は皆みんな最高の文学となる。地」のうえに、現代人として生きるためしかし、解説者は、この本にあった「 1、に、従来の価値の再評価と再編成を指向 2 小節」が「校正が難しい」と削除されした作家であった。たことをしらない。それを知っていれば、近代の終わりというひとつの歴史上上のような評論はしなかったかもしれの破局に当面して、多くの青年たちと同ない。知っていて書いたとすれば、売れじように傷ついたヘミングウェイは、そればよいとの心がわかる。 6 「ちょっとした行為や短い会話やわそのゴシップにしても、大方を捏造して、ずかな事物で暗示する」この本は、「ド書いたと断言されている。つき漫才や昨今のゲラゲラ楽屋話を垂そもそも、女なしではいられないヘミれ流すオワライ」や「バックミュージッングウェイ自身の相姦図を書くのに、自クが流れ続けられている劇」などと同じ分ジエイクを「戦争の被弾による性不能である。読むもの、聞くものが思考する者」と設定することは噴飯ものである。余裕をあたえない。登場人物のモデルはすべて特定されている。姿形動作癖経歴はモデルにした人物に使用される。しかし、かれらが示す愛欲行動はヘミングウェイ自身の複雑な内面が振り分けられている。これは「内面の分担・振り分け」手段といわれる。さらに私の鋭い勘は「考えると男と女を入れ替えれば、すっきりする。つまり、色情狂のブレッドは複数の女なしではヘミングウェイは他人の生活を観察し、いられないブレッドはヘミングウェイノートに写し取る才能には恵まれていであり、コーンをはじめとする男たちはた。しかし、自分の行動や書くものが周ヘミングウェイの最初の妻ハドリー、後りの者へどんな悪い影響を与えるかに釜内定ボーリーン、夜の歌姫トワイズデついて思考することはなかった。わずかンなどであろう。ブレッドがパンプロー 10 歳の時、父親から銃を与えられたとナでさっそく現地採用の愛人 19 歳の闘いう。以来、彼は「生き物を殺す」こと牛士ロメロは、さしずめ「カルメンに類に執着する。人間を撃つことができる戦する現地の女性」であろうか「男の子」場を夢にみた。ついには、愛用の猟銃で、であろうか。自分の顔を吹っ飛ばした。このために、出版後、モデルとされたロこうした優れた観察能力などがあるバート・コーンをはじめとする者たちはけれど、他の面では社会性がない場合は烈しく憤り、「彼を殺してやる」と懐に「アスペルガー症候群」ではないかと疑う。芥川龍之介やアインシュタインなどもそうと言われる。内面の分担・振り分け「日はまた昇る」は「戦後の堕落し頽廃したパリに集まる落ちこぼれの生態」のルポルタージュである。性機能障害者ジエイクを傍観者として、複数の男女の性欲の駆け引きをスケッチしている。銃を入れて、ヘミングウェイを探し回っ 7 たし、すべての友達を失ってしまった。分だけであって、ギャツビーがニック・そして、妻ハドリーも去って行った。キャラウェイと共に作者の分身であるロメロに関して、研究者たちが取りあげことはいうまでもない。こうして作者が、るのは「ヘミングウェイがホモと言われ分裂しながら互いに牽引し競合し反応ることを極端に嫌った」ということだ。し合う内面の二要素を、それぞれ二人の《 1929 年、自分をゲイと中傷する噂分身に仮託し、一方を語り手として設定を流した作家ロバート・マッカルモンをしたところにこの小説の成功の大きなヘミングウェイは殴り倒す》あまりにも、要素があることは、多くの評者が一様にホモの話にアレルギーを呈すので、かえ言っている通りである。これによって作ってロメロなどと結び付けられる。者は、ギャツビーの生涯を一つの屈折し師匠アンダースもヘミングウェイにた視点から描く自由を獲得できたばかレスビアンは良いが、ホモは結局「薬」りでなく (中略 )ニックという存在の全に手を染めるから駄目だ、と説教してい体を通して、この作品に複雑で微妙な陰る。火のないところに煙は立たない? 影を与え、重層的な意味を盛り込むことこのように、自分を隠して、しかも男に成功した。と女を入れ替えている。結局「日はまた昇る」のパンプローナも一人芝居である。渡辺氏の小説は「右手と左手の一人芝居」と考えているが、しかし、こうした手の込んだ設定は「 26 歳の若者だけの知恵とは思えない。多くのベテラン作家や詩人たちの考えが注ぎ込まれたものと考える」のが自然である。どの小説も作家は素材を出版社に持ち込むに過ぎないとも言える。ポプラ社小説大賞作品で見られるように、作品とは、多くの人々の合作である。このプロットを練ったのは、フィッツフィッツジェラルド・グレート・ギャツジェラルドや出版社そして編集者たちビー・野崎孝平訳新潮文庫》である。《 1926 年 2 月に、ヘミングウェヘミングウェイの聖地で肉を前にして、イが名編集長マクスウェル・パーキンズ「猥雑と金儲けと殺人記事で飯を食っと初めて会っている事実も見逃せない》ている」アメリカ出版を考えていたら 5 とされる。この手段はフィッツジェラルメートル先のアメリカ人観光団が立ちドの「グレート・ギャツビー」によって上がって歌い始めた。成功した。《「グレート・ギャツビー」のさて、決して、私自身に罪があるわけで主人公にはそれぞれモデルがいる。が、はないが、「私は 5m 離れた写真には自それはあくまで外面的事実に関する部信がある」1m はやや苦手である。(ぐー 8 と近づけば … )そんなわけで、可愛い異をそれらの人物に振り分ける。邦人に見えたのであろう、中年の女性がそこのところが「命名はともあれ、将「こっちに来て、一緒に歌いましょう」来有望視されていた整形外科医師と書と手招きする。勘弁して、とサインを送くことで正体を明かす主人公が女性相るが繰り返し誘う。手に (作者の稼ぎのために )活動する」わが先輩渡辺氏と違うところである。単純に渡辺淳一氏だからこそ、許す日本人が根底にあるともいえるが。実際、延々と続けば、抗議するのもあほくさくなる。政権も公益法人も。多重相姦で頑張っている渡辺淳一氏の場合はそうはいかない。主人公を「伸夫」にしたところで、読む者は「将来有望視されている医師」の性的遍歴以外に「ヘミングウェイみたいになりたくなとるわけがない。いの、それに、いまヘミングウェイの悪ヘミングウェイが女性関係を告白暴口で忙しいの」と日本語で言う。露し始めたらパリの数十人の女性たち絶倫男ヘミングウェイが主人公になが悲鳴を上げる、続いて、何百人の男たると、話は単純なスキャンダル告白になちも飛びあがるであろう。自分の醜い内ってしまう。男性と女性の入れ替えであ部暴露は金にはなるであろうが、その結る。ヘミングウェイを女・ブレッドにじ果が暗殺・抹殺に終わることはよくあるつはこれにもうひとひねりを加えた。ことだ。したために、追及されなくなっている。文学における暴露当時のパリのモンパルナスを徘徊す我が文壇でも、このことはよくある。先る彼らの間では、愛憎・肉体関係の愛欲年、渡辺淳一氏の分野を引き継ぐと出版相姦は日常のことであった。社が期待している女流作家が『ぜひ、ブつまり、「目が合ったり手が触れたりすレイクしたい』と渡辺氏にどっかで助言れば性交するボルボ」に似ていた。を求めたところ、渡辺氏は「自分の中の陰りの見えたフィッツジェラルドの後醜いところを曝け出しなさい」と答えた。釜を創造する出版社編集者が練った構何と作家は持っていたのである! 図にヘミングウェイが乗ったのである。幼い顔をしている作家であるが「自分の 6 週間で書いたものを 7 ｹ月かけて直しなかの醜い話」って、言われたら「ハイ」た。「パリでは有名な人々を、行動・動と書きだしたのである。持っているので作・言葉で特定できるようにして、実際すね、隠してある面を… の愛と憎しみのゴシップを暴露する」こその話を聞いたら悲しむ母と死別したとと、彼らの内面感情の醜さは「ヘミン時点での大公開となった。グウェイの複雑怪奇な内部の醜い部分」「ダブルファンタジー」は「千葉の鴨川 9 という小さな町で、5 人以上の男と、1 その代わり多くのものを失った。第一に年間にわたり、繰り広げた欲情の実況報アメリカから一緒にきた妻ハドリーと告」である。パンプローナではカモフラ別れたことである。トランクいっぱいのージュされた愛憎劇以上のものが展開原稿を紛失した以外には、8 歳年上のハされている。ドリーに落ち度は言われている。小説は「インターネットで男を買った労苦を共にした最初の妻ハドリーとのけれど、払った金額に見合っていない内離別は、旧友たちとの離別をも意味した容」に腹を立てている場面のあと、初老そのために、売春婦レディ・ダフ・トワの演出家志澤とのメ―ル交換がはじまイズデンと同じようにモンパルナスにり、延々と続く。これに夫を (世の常識は出入りできなくなった。に従って )加える。毎日、下着などの脱着をしなくてはならないし、その場所探つづくしで、大変であろう。愛があれば、できるものなのかなあ。渡辺淳一氏が選考委員を務める賞を総なめにし、文学となった。押して押されたのが「男と女」であるので、さすがに、両者は照れているのではないかと思う。新聞・出版・書店・広告業界は、渡辺淳一氏が駄目になったところだったので、一斉に村山由佳文学に群がった。しかし、小さな町だから、ヘミングウェイのモンパルナス話と同じで、登場人物は簡単に特定されるでしょう。作家は賞を貰ってルンルンだけど男たちは、場所柄、懐に匕首や刺身包丁を持って探しているかも。それにしても、そういう話の後は、フィッツジェラルドと同じで、潮が引くようにその名が消えていくのではないか。頑張ってください。しかし、大成功であっても、モームに言わせると、「小説の寿命は 90 日」だそうである。事実、すでにこの小説、この作家を知っているものはごく少ない。一作で、富と名声を獲得したけれど、 10